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2025年5月1日木曜日

SR-72ダークスターは新しい戦争では役に立たない機体になるのではないか(19fortytive)

 


SR-72 Artist Rendering. Image Credit: Creative Commons.

SR-72 Artist Rendering. Image Credit: Creative Commons.




SR-72ダークスターとは、未来派が夢見る存在だ。高速で、なめらかで、威嚇的で、飛行機雲が蒸発する前に中国のA2/ADネットワークの腹に飛び込むように作られている。

 ロッキード・マーチンのスカンクワークスは、冷戦時代にミサイルが捕捉できないほど高速だったSR-71ブラックバードの後継機として、この機体を予告している。 しかし、夢には金がかかる。防衛調達の世界では、SR-72ダークスターは高価なだけでなく、戦略的に支離滅裂だ。


SR-72ダークスターの夢

同機はマッハ6で飛行し、タービンベースの複合サイクルエンジンに依存し、偵察と攻撃の両方のプラットフォームとして機能することになっている。有人飛行も可能で、迎撃はほぼ不可能。理論的には、敵のレーダーが瞬きする間もなく敵の領空をすり抜けることができる。しかし、われわれは理論の世界に生きているわけではない。多極化、消耗戦、そして財政上の選別の世界に生きているのだ。そしてその世界では、SR-72は意味をなさない。

 ロッキード・マーチンは、初期の設計作業とエンジニアリング・プロトタイプにすでに数億ドルを投じている。本誌が最近報じたように、同社は2022年以来、このプログラムで大きな損失を計上してきた。

 それは危険な仮定だ。米軍はすでに調達難に直面しており、F-35フリートの維持、B-21レイダーの増産、NGADとF-47の開発--後者はより生存性が高く、消耗に強い第6世代戦闘機として機能することを意味する--のコストのバランスを取ることを余儀なくされている。

 その意味で、SR-72ダークスターは虚栄のプロジェクトである。航空戦力の革命を装った冷戦時代への逆戻りだ。国防総省が光り物に弱いことはめったにないが、戦略的環境は航空宇宙産業よりはるかに変化している。

 スピードはもはや、ハイエンドの紛争における決定的な変数ではない。冷戦時代のSR-71は圧倒的な速度でソ連の迎撃ミサイルや地対空ミサイルを打ち負かすことができた。しかし今日では、マッハ6の航空機が生き残る保証はない。ロシアのS-500や中国の拡大する対宇宙アーキテクチャーのような極超音速センサーや迎撃ミサイルは、最速のプラットフォームでさえも探知し、交戦する可能性がある。さらに、熱シグネチャー問題もある。マッハ6の航空機は、暗い部屋の照明弾のように赤外線で光る。ステルス性は忘れよう。これは地球低軌道の半分を照らし出すだろう。


ダークスターには問題がある

たとえ生き残ったとしても、SR-72には2つ目の問題がある。戦闘が数週間から数カ月に及ぶ太平洋での戦いでは、勝利するのは戦闘にとどまることができる側だ。ドローンならそれができる。人工衛星もそうだ。長い脚と豊富な燃料を持つ爆撃機ならそれが可能だ。

 SR-72ではそれができない。SR-72はマラソンではなくスプリント用だ。台湾海峡上空でミサイルが点滅するのを待つような軌道はとれない。持続的なISRも、電子戦も、戦闘被害評価もできない。できることは、敵陣深くでリスクの高い刺突を数回-一度か二度-実行し、その後、堅固な空軍基地と材料科学の博士号を持つメンテナンス・クルーのもとへ退却することだ。

 そしてこれが問題の核心に触れる。SR-72は、我々が戦う戦争のために作られたのではない。SR-72は、私たちが避けたい戦争、つまり、スピード、奇襲性、正確さが数日で勝敗を決するような、短く、鋭く、ハイテクを駆使した電撃戦のために作られているのだ。しかし、ご核戦力を有する相手との戦争はもはやそうではない。未来は消耗戦であり、兵站と冗長性によって定義される。極超音速機が重慶まで往復したからといって、中国が折れることはない。むしろ、そのようなプラットフォームはエスカレートを誘う。

 もしSR-72ダークスターが運動攻撃に使われることがあれば、ISRと先制攻撃能力の境界線はすぐに曖昧になる。率直に言おう。マッハ6の航空機が中国内陸部に向かって突進すれば、そのペイロードにかかわらず、先制攻撃に映るだろう。

 北京の誰も、ただ写真を撮っているだけだと冷静に考えないだろう。 そうして誤算が大火事になるのだ。

 一方、F-35は運用経費を浪費し続けている。F-47は、高強度でセンサーが飽和した戦場で主力機として機能することを意図しているが、消耗、冗長性、前方展開を可能にする数を調達する必要がある。これこそが真の抑止力であり、攻撃を受けてもその場にとどまり、作動し続けるプラットフォームなのだ。 レーダー・スクリーンに閃光を放ち、予算を吹き飛ばすだけのプラチナ・メッキの極超音速ジェット機ではない。

 極超音速技術が無意味なのではない。極超音速機はプラットフォームとして間違っているのだ。 極超音速ミサイルはすでに、標的を素早く、予測不可能に、スタンドオフ・レンジで攻撃する能力を提供している。 これらの兵器は小型で機動性があり、追跡が難しい。

 これと対照的に、SR-72は大型で固定基地に依存する航空機であり、大規模なロジスティクスの足跡を残す。中国やロシアとの戦争の初期段階では、空軍基地は直ちに脅威にさらされる。近代的なミサイルやドローンによる攻撃がインフラ集合体に何をもたらすかは、すでにウクライナで見たとおりだ。SR-72が軌道に乗ることはないかもしれない。

 それでもなお、魅力は消えない。ブラックバードを新時代のために復活させることには、何か酔わせるものがある。しかし、神話が戦争に勝つのではない。ロジスティクスだ。回復力だ。パンチを受けながら戦い続けることができるプラットフォームが勝つのだ。

 SR-72はそのどれでもない。SR-72は、よく言えば、非常に特殊でリスクの高い任務のために作られたニッチな能力である。悪く言えば、エスカレートを誘惑し、資源を流用し、見返りをほとんどもたらさない、予算の穴である。


映画には最適:結局、SR-72は必要ないのかもしれない

イノベーションを止めろと言っているのではない。 重要部分に革新を起こせということだ。群がるドローン、自律型ISRプラットフォーム、強化されたコマンドネットワーク、そして弾薬備蓄が次の戦争に勝つだろう。 SR-72は? リクルートビデオやトップガンの続編には映えるかもしれないが、太平洋戦争の結果を変えることはできないし、ロシアの進攻を阻止することもできない。


SR-72

SR-72. Image Credit: Artist Rendering from Lockheed Martin.SR-72


 ブラックバードはいらない。必要なのは、頻繁に飛行し、接触に耐え、醜い勝利を収めるプラットフォームだ。SR-72はいつか飛ぶかもしれない。マッハ6で飛ぶかもしれない。しかし、だからといって同機が必要だという意味ではない。■


The SR-72 Darkstar Is a Speed Demon Chasing the Wrong War

By

Andrew Latham

https://www.19fortyfive.com/2025/04/the-sr-72-darkstar-is-a-speed-demon-chasing-the-wrong-war/?_gl=1*11hksik*_ga*NDM5NzIyMDkxLjE3NDU1MzAxNzg.*_up*MQ..


著者について アンドリュー・レイサム博士

Andrew LathamはDefense Prioritiesの非常勤研究員であり、ミネソタ州セントポールにあるマカレスター・カレッジの国際関係学および政治理論の教授である。 現在は19FortyFiveのコントリビューティング・エディターとして、毎日コラムを執筆している。 Xでフォローできる: aakatham.



2024年8月23日金曜日

ロッキードのSR-72の製造が極秘裏に進んでいる可能性が浮上。米空軍はハーミウスのクォーターホース開発と二股掛けで次期高性能ISR機材を調達するねらいか。(Sandboxx News/Business Insider)

 ロッキード・マーティンの極超音速偵察機SR-72は極秘裏に製造されている可能性があることが、新たな証拠から示唆されている


  • ロッキード・マーティンの極超音速機SR-72が空軍予算の削減で、空を飛べなくなっている

  • SR-72はSR-71ブラックバードの後継機で、ロッキードは2022年以来、約3億3500万ドルをつぎこんでいる

  • 新たな証拠から、同機が今も秘密裏に開発中である可能性が出てきた


ッキード・マーティンの謎の極超音速機SR-72は、実用化に向けて着々と進んでいるように見えるが、このプログラムは米空軍のより広範な予算難の影響を受けないわけではない。

 Sandboxx Newsは、伝説のSR-71ブラックバードの後継機となるロッキード・マーティンの極超音速機SR-72の極秘開発と、それほど遠くない将来の就役に向けた潜在的な道筋について取り上げてきた。

 そして今、この奇抜な新型航空機プログラムが、複合的な予算不足に直面していることを示す新たな証拠が明るみに出た。これは、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、ステルス爆撃機、制空戦闘機など、注目度の高い多数の新規事業への資金調達方法を模索する空軍にとって、さらに事態を複雑にする可能性がある。

 SR-72はかつて、マッハ6以上の速度で飛行し、攻撃能力を備えた偵察機だと喧伝されていた。つまり、この高性能ジェット機は、前身機のように写真撮影だけに限定されることなく、極めて短い時間枠で、迎撃の可能性を最小限に抑えながら直接的に標的に対処できる能力を備えているということだ。

 最近の『Aviation Week』誌の報道によると、「高度に複雑な設計とシステム統合」を伴うロッキード・マーティンの極秘プログラムは、2024年第2四半期に予算をさらに4500万ドル上回った。ロッキード社の米国証券取引委員会への四半期ごとの提出書類によると、この不明瞭なプログラムに関連する同社の損失総額は、2022年以降、3億3500万ドルに上る。同書類では、同社が「前倒し調達コスト」に直面しているため、損失は今後も発生し続ける可能性があると推測している。

 これはすべて、Aviation Weekの防衛・宇宙担当編集者、スティーブ・トリムブルが「契約前の投資」と表現する、ロッキードによる投資を指している。また、同社は国防総省がこのプラットフォームの価値を認めるだけでなく、ロッキードが開発損失を回収できるだけの生産艦隊に対して十分な支払いに応じるだろうという考えに基づいて、開発資金を自己調達し続けていることも示唆している。

 これは、高額な航空機を開発するにあたってはかなり異例なアプローチのように思えるかもしれないが、歴史的に見れば、ロッキード・マーティンの伝説的なスカンクワークスでは、決して珍しいことではない。

 スカンクワークスの創設者ケリー・ジョンソンと、その後継者ベン・リッチによる書籍には、D-21超音速無人偵察機(ISR)など、スカンクワークスによるいくつかのプログラムについて記されている。これらのプログラムは、米軍や情報機関が使用する可能性が高いとロッキードが考えた優れたアイデアから始まり、その後開発が進められ、国防総省の意思決定者に提案された。


 しかし、より頻繁に、ケリー・ジョンソンのような人物と国防省高官の間で交わされる秘密の会話が開発努力を後押しし、スカンクワークスの集団意識が解決策を見つけ出す可能性に期待が寄せられた。

 有名な話だが、ジョンソンはこの方法でアメリカ初のジェット戦闘機を設計し、納入した。XP-80の正式な設計作業は、同社がジェット戦闘機の契約を獲得する4か月も前から開始されていした。

 しかし、官僚的監督と設計サイクルの長期化が常態化している現代において、最終的に空軍が費用を負担するという確固たる証拠がなければ、ロッキード・マーティンがSR-72の実現に全力を傾けることはなかったはずだ。同社の財務記録は、その可能性を裏付けている。

 「契約前費用の回収可能性を監視していきます。これは、プログラムの今後の段階に関する顧客の決定によって影響を受ける可能性があります」と、ロッキードは提出書類でこのプログラムについて述べている。

 SR-72の取り組みは2018年初頭から極秘裏に進められているようだが、今回の損失の発表と、ロッキード・マーティンのスカンクワークス施設の急速な拡大と人員増加を併せて考えると、テスト用ではなく、おそらく実戦配備を目的とした新型の極秘航空機の製造を示唆していると考えられる。


SR-72とは何なのか?

 ロッキード・マーティンは2006年にブラックバードの後継機となる極超音速機の開発に着手した。このプログラムは7年間秘密裏に進められ、2013年にロッキード・マーティンの極超音速プログラムマネージャーと、この7年間このプロジェクトを率いてきたエンジニア、ブラッド・リーランドへのインタビューを含むメディア宣伝活動により、正式に一般に発表された。

 「極超音速航空機と極超音速ミサイルを組み合わせれば、拒否された空域を突破し、大陸のほぼあらゆる場所を1時間以内に攻撃することが可能になる」と、リーランドはロッキード・マーティンのプレスリリースで発言を引用された。プレスリリースはその後削除された。「今後数十年にわたって発生する新たな脅威に対抗するための航空技術の進歩は、速度である。この技術は、ステルス技術が今日の戦闘空間を変えているのと同様に、戦域におけるゲームチェンジャーとなるだろう」。

 この新型高速航空機は、これまで実用化されたことのないタイプのエンジンを使用する。それは、あらゆる意味で、1つのエンジンに2種類(あるいは3種類)のジェットエンジンを搭載したようなものだ。

 リーランドの説明によると、この新しい推進システムは、Pratt & Whitney F100またはGeneral Electric F110のいずれかの従来型ターボファンエンジンをベースとしている。このターボファンエンジンにより、航空機は通常の戦闘機と同様に静止状態から離陸し、超音速まで加速するが、マッハ3に近づくと、エンジンの後半部分が轟音を上げて作動する。

 後半部分は、超音速で流入する空気の莫大な圧力と可変入口設計を利用して、意図的に圧縮用の衝撃波を発生させるデュアルモードラムジェット(デュアルモードスクラムジェットまたは超音速燃焼ラムジェットと呼ばれることもある)であると言われる。

 このエンジンにより、SR-71が記録したマッハ3.2の最高速度をはるかに超え、概念上の極超音速の壁であるマッハ5を超え、さらには映画『トップガン』に登場する架空の戦闘機「ダークスター」(スカンクワークスとの提携により製造されたことで注目された)のマッハ10さえも超える可能性がある。

 この種のエンジン設計は、その後一般的になったが、タービンベース複合サイクル(TBCC)エンジンと呼ばれている。ロッキード・マーティンが航空機の設計を主導する一方で、エンジン開発はアエロジェット・ロケットダインが担当した。

 当初マッハ6以上の航空機として計画されたこの新型機は、当初から攻撃能力を備えた情報、監視、偵察(ISR)機として計画されていた。つまり、この航空機は地上目標を攻撃するための兵器を含む、さまざまなペイロードを搭載できるということです。

 リーランドは、この新型航空機で極超音速ミサイル発射プラットフォームとしての使用に重点を置いていたが、この極超音速航空機には、極超音速で投下または発射するように特別に設計された低コストの弾薬が搭載される可能性が高い。米国が開発中の極超音速ミサイルにはさまざまな種類があるが、いずれも従来の兵器と比較すると非常に高価であると考えられる。

 高速飛行に特有の莫大な圧力と熱により、このような極端な速度で兵器を投下または発射するには、克服すべき大きな技術的課題が存在するが、克服できないものではない。ロッキードは、YF-12(SR-71の兵器化された兄弟機)でマッハ3を超える速度での空対空ミサイルの発射に成功しており、その実現性を証明していた。また、最近では、テキサス大学サンアントニオ校の超高速機および航空宇宙工学のディー・ハワード寄付講座教授であるクリス・コームズ博士が、この武器をはるかに高速で展開する可能性をSandboxx Newsで確認した。コームズ博士は、過去に国防総省と多くの仕事をしてきた。

 しかし、SR-72の攻撃能力の可能性だけが重要な問題なのではありません。地上のあらゆる目標に対して迅速な情報収集能力を持つ航空機は、21世紀の紛争、特に広大な太平洋地域における紛争において、米国にとって不可欠な存在となる。衛星が常に世界を見張っているという世間は思っているようだが、実際には、必要な場所すべてを監視できるだけの衛星が軌道上に存在しているわけではない。また、衛星の軌道は予測可能であるため、衛星の存在を秘密にしておくことは比較的容易はない。

 このことが、現代もISR航空機を数多く開発する原動力となり、当初は「グローバル・ウォー・オン・テラー(世界対テロ戦争)」のマスコット的存在であったMQ-1プレデターから、ノースロップ・グラマンが開発したRQ-180のように、まだ正式名称が明らかになっていない非常に変わった機体まで、各種航空機が開発されてきた。

 しかし、ここ数十年にわたってアメリカが偵察機に莫大な投資を行ってきたにもかかわらず、これらのプラットフォーム(我々が認識しているもの)はすべて亜音速で飛行するため、タイムリーな情報収集は地域性と機体の可用性に左右される。例えば、MQ-9は24時間以上空中に留まることができるが、標準巡航速度は時速230マイル(約370キロ)に過ぎず、ニューヨークからボストンまで1時間以上、全米横断には10時間以上かかる。

 一方、マッハ6、すなわち時速約4,600マイルで飛行する極超音速機であれば、ニューヨークからボストンまでは5分以内、ニューヨークからロサンゼルスまでは30分で飛行することができる。


SR-72の生産への道は2018年に始まった

 Sandboxx Newsが以前に報道したように、2017年6月、ロッキード・マーティンの副社長兼スカンクワークス事業部長のロブ・ワイスは、SR-72用のタービンベースの複合サイクル極超音速推進システムのテストが完了し、同氏がSR-72飛行研究機材(FRV)と表現したものの開発に「近づいている」とメディアに語った。

 この単発エンジンの技術実証機は「F-22ラプターと同程度の大きさ」と言われ、従来型ターボファンエンジンによる離陸、超音速までの加速、そしてターボファンエンジンから特殊なデュアルモード・スクラムジェットエンジンへの切り替えを行い、マッハ6をはるかに超える最高速度を達成する能力を実証することが目的だった。

 2017年9月までに、スカンクワークスが本拠を置くカリフォーニア州パームデール上空を飛行するこの飛行研究機材を目撃したという証言が浮上し始めた。

 航空専門誌『Aviation Week』は、これらのSR-72 FRVの報告を、当時ロッキード・マーティンの航空部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであったオーランド・カルバリョに伝えたが、同氏はこの報告を否定しなかった。

「詳細を申し上げることはできませんが、カリフォーニア州パームデールのスカンクワークスチームは、スピードへのコミットメントを倍増させているとだけ申し上げておきましょう」とカルバリョは述べた。

 2018年2月、ロッキード・マーティンの上級幹部で先進開発プログラム戦略・顧客要件担当副社長のジャック・オバニオンは、米国航空宇宙学会SciTechフォーラムで、SR-72 FRVはすでに飛行していると述べた。その後、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、「この航空機は、信頼性の高いエンジン始動により、極超音速でも機敏に飛行できる」と語った。

 しかし、SR-72の宣伝列車が駅を発車した矢先、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンが演説を行い、それ以来、現代の極超音速軍拡競争の幕開けとして知られるようになった。その演説の中で、プーチン大統領は、2種類のマッハ5以上のミサイルシステムを含む、ロシアの新型「終末兵器」が続々と実戦配備されることを発表した。

 プーチン演説のほぼ直後、ロッキード・マーティンは、同社のウェブサイトから話題沸騰のSR-72プログラムに関する記述をすべて削除し、上級幹部のコメントの引用もすぐに途絶えた。同社は、この計画の中止や中断の理由について一切発表していない。少なくとも公には、SR-72が存在しなかったかのように、通常業務を淡々とこなしている。以前の報道で、この劇的な変化は、プーチン大統領の発表を受けて国防総省が機密会計に介入し、機密保持の必要性が再認識された結果ではないかと推測されていた。

 しかし、今では、非公開の場で何か大きなことが進行中であったことが分かっている。翌年末までに、ロッキード・マーティンは巨大な新工場(のちに648棟となる)の起工式を行い、この新施設に勤務するスタッフの大量採用はそれよりも早くから始まっていた。


増え続けるSR-72関連の書類

 2022年第2四半期、ロッキードは包括的な見直しを終えたばかりの機密扱いの航空学プログラムについて、2億2500万ドルの税引き前損失を報告した。しかしその3か月後、ロッキード・マーティンの書類によると、この取り組みの顧客が契約の範囲と価格を修正する「覚書」に署名したことが明らかになった。これは、実際には契約が締結されている(おそらく固定価格インセンティブ契約)ことを意味し、ロッキード・マーティンがこれらのコスト超過を単独で負担する必要はないことを示唆している。予算超過が続き、現在では3億3500万ドルに達していることから、このプログラムの総予算ははるかに多いと推測される。

 しかし、米空軍向けに極秘裏に開発されている航空機を示唆する証拠はこれだけではない。実際、このプログラムは開発や試作段階を越えて成熟し、本格的な生産段階に入っていることを示す多くの証拠がある。 特に、カリフォーニア州パームデールにあるスカンクワークス本部の巨大な新生産施設、通称「ビルディング648」の建設がある。この施設では、何千人ものが…何かの製造に従事している。

 2021年8月、648号棟の建設が完了した。ロッキード・マーティンは、この215,000平方フィートの巨大建造物を、新しい生産ラインを立ち上げるために必要な時間と資金の大幅な投資を削減することを目的とした「インテリジェントで柔軟な工場」と謳っている。これは、高度な人工知能、拡張現実、そして「Combined Operation: Bolting and Robotic AutoDrill systems(COBRA)」として知られる大型で多機能なロボットを使用することで実現されると、ロッキード・マーティンは説明している。

 スカンクワークスが当時明らかにしたように、これらの新しいロボットの機能性は、X-59A Quiet Supersonic Transport testbed(X-59A 超音速輸送機テストベッド、通称QueSST)につながる技術テストベッドの製造で実証済みであった。しかし、その他の公開情報によると、スカンクワークスは648号棟で技術デモンストレーターを製造する以上のことを行っている。

 SR-72が姿を消した2018年2月から2023年9月の間に、ロッキード・マーティンは航空部門である先進開発プログラム部門の規模を75%も拡大し、5年間で2,300人以上の新規雇用を行い、キャリアページには数百件の求人情報が現在も掲載されている。

 また、スカンクワークス関係者による、何らかの低率生産が進行中であることを示す発言もある。

「 スカンクワークスでは低率生産が行われていると言って差し支えないでしょう」と、スカンクワークス総責任者のジョン・クラークは2022年に報道陣に語った。「私たちは複数の活動に携わっています。ですが、具体的に何をしているかを明らかにすることはできないでしょう。セキュリティ上の問題が生じる可能性があるからです。しかし、パームデールでは低率生産活動が行われています」

 さらに、クラークは、スカンクワークスは迅速な試作品製造能力で有名かもしれないが、秘密主義の組織であるスカンクワークスは、SR-71やF-117のような先進的な機体の製造センターとして常に機能してきたと述べ、スカンクワークスで働く自分のチームは、特殊な試作品の製造のみに専念しているのではなく、高性能な実用機も製造していると改めて強調した。

 「私は、単に1機だけのX-planeを作る以上のことをしているという考え方を強化しようと努めてきました」とクラークは語った。「航空工学の経営陣と協力することで、スカンクワークスを歴史的に成長させてきた方法で成長させるための、より多くの自由が私にもたらされました」


SR-72は間もなくベールを脱ぐのか?

 昨年末の「Defense & Aerospace Air Power Podcast」のエピソードで、Defense & Aerospace Reportの編集長Vago Muradianは、高高度ステルス偵察機RQ-180について言及した。この機体は、近年、飛行中の写真が数回撮影されているにもかかわらず、その存在を米国政府が認めていないほど極秘の機体だ。高高度飛行可能なRQ-180(正式名称は不明)は、今後数年のうちに、米国の老朽化したU-2偵察機やRQ-4グローバルホークに取って代わるものと見られている。

 しかし、ムラディアンはそこで話を止めなかった。

 「しかし、もうひとつ、スカンクワークスが生み出した、はるかに高性能な偵察機に関するプログラムがあります。それはロッキード・マーティンの航空機です。すでに納品されたものもありますが、そのプログラムには課題があったという記事もあります」と彼は述べた。

 「私の理解では、そのプログラムは再調整された。なぜなら、そのプログラムが要求する能力があまりにも野心的なため、次の段階の航空機開発に進むためには、少し再調整が必要だったからだ」とムラディアンは付け加えた。

 現時点では、ムラディアンの主張を裏付けるさらなる確認は得られていないが、彼の主張を信頼に足る情報源と見る向きも多く、また、彼が示したスケジュールは、ロッキード・マーティン社が予想外のコストを負担せざるを得なくなったことと、同社の事業拡大について我々が知る内容の両方と一致しているように思われる。

 ロッキード・マーティンのSR-72計画に関する噂は、航空業界では単なる空想に過ぎないとして一度は退けられたかもしれないが、この取り組みが始まって以来、この航空機を飛ばすために必要な技術は、SFの世界に限りなく近いものから、産業団地で新進気鋭のグループが成し遂げられるようなものへと変化した。これは誇張表現ではない。現在、アトランタを拠点とする新興企業Hermeusは、同社の飛行技術デモ機「クォーターホースMk 1」の地上試験を継続しており、プラットフォームの初飛行は間近に迫っている。


HermeusのQuarterhorse Mk 1は現在地上試験中であり、今後飛行試験が予定されている。Hermeus


 この無人航空機は独自の極超音速への野望を抱いており、推進力についても同様のアプローチでそれを実現しようとしている。Hermeusのキメラタービン複合サイクルエンジンは、J85ターボジェットとラムジェットで構成されており、2年ほど前に高速風洞内でターボジェットからラムジェットへの切り替え能力を実証した。同社はすでに、より大型の「キメラ2」の開発に着手しており、小型のJ85ターボジェットから大型のF100ターボファンに交換した。注目すべきは、ロッキード・マーティンが同様のエンジン設計のタービンベースとして特定したエンジンが1つあることです。

 Hermeusは、双発軍用機Dark Horseの配備に向けて開発を進める中で、毎年新しい技術デモンストレーターを実地配備する。Dark Horseが実用化されるのは、おそらく2030年代に入ってからだろう。これは、SR-72プログラムが暗礁に乗り上げる前にロッキード・マーティンの幹部が提示したスケジュールとほぼ同じである。

 2022年、空軍研究所はISRおよび攻撃任務用に、TBCCに非常に類似した「メイヘム」と呼ばれる機体を実用化するために、3億3400万ドルの開発契約をLeidosと締結した。しかし、その後、運用上の需要が不十分であることを理由に、同社は開発を中止した。その理由としては、国防総省の資金が投入されている類似した有望なプラットフォームがすでに2つ(SR-72とクォーターホース)開発中であることが挙げられる。

 2021年、プラット・アンド・ホイットニーは、従来のターボファンからスクラムジェットへの設計に頼らず、極超音速の壁のすぐ手前の速度を達成する、独自の高速空気呼吸ジェットエンジンシステムの導入に向けた取り組みを発表した。そして2024年1月、GEアエロスペースは、ターボファンエンジンと組み合わせることで、史上最小、最軽量、かつ最も強力なターボブースト・カンタムサイクル(TBCC)エンジンとなる可能性がある、回転爆轟式デュアルモードラムジェットの開発で独自の進展があったことを発表した。

 現時点では、米国がそう遠くない将来に再使用可能な極超音速機を実用化することはほぼ確実と思われる。その航空機がロッキード・マーティン、Hermeus、あるいは他の企業によって製造されるのかどうかは不明だが、現時点での証拠から判断すれば、ロッキードが圧倒的なリードを確保している可能性が高いと思われる。SR-72の低率初期生産がすでに開始されているとすれば、B-21レイダーと同様のスケジュールで、2020年代末に就役する可能性もある。■


Lockheed Martin's hypersonic spy plane, the SR-72, may be in production in secret, emerging evidence suggests

アレックス・ホリングス、 

Sandboxx News

2024年8月22日午前6時38分(日本時間)



https://www.businessinsider.com/lockheed-potentially-developing-sr72-hypersonic-spy-plane-secret-2024-8


2023年11月14日火曜日

SR-71はMiG-31でも迎撃不能だったのに、スウェーデンが意外な状況でインターセプトしていたという誰も知らないお話。

 伝説のISR機材SR-71ブラックバード(ハブ)を結局どの国も打ち上落とすことが出来ないまま、上空通過飛行を許していた...というお話です。そのSR-71の後継機がいつ生まれるのか、実はもう飛んでいるかもしれません。


(Lockheed Martin)


ロッキードの伝説的機体SR-71ブラックバードは、時代の最先端を走っていた。初飛行から約59年が経過した今日でも、史上最速の乗員付きジェット機という表彰台の頂点に挑む機体はまだ1機もない。ブラックバードはその30年間を通じて、4,000発を超えるあらゆる種類のミサイルを撃ち込まれたが、そのすべてを凌ぎ切ったことで有名である。

しかし、無敵の航空機など存在せず、ブラックバードも例外ではなかった。1971年にはMiG-25のようなソ連の迎撃ミサイルがマッハ3.2の速度を達成し、SA-2のようなソ連の地対空ミサイルはマッハ3.5を超えることが知られていたため、SR-71のマッハ3.2という最高速度は必ずしも競合機よりも速いとは言えなかった。

SR-71とはSFの世界が現実になった機体だった

有名な航空エンジニア、ケリー・ジョンソンが設計したSR-71は、初期のステルス性、綿密な任務計画、そしておそらく最も重要なこととして、圧倒的なパワーの組み合わせによって、だれも見たこともないような高性能な防空システムや迎撃戦闘機を打ち負かすように設計された。

SR-71は、おそらくケリー・ジョンソンが最も成功させた設計と見ることができる。ジョンソンは、第二次世界大戦のP-38ライトニング、アメリカ初のジェット戦闘機P-80シューティングスター、そして最も特筆すべきU-2偵察機といった過去のプロジェクトで、設計手腕は証明ずみだった。実際、U-2計画におけるジョンソンの努力は、今日私たちの多くがエリア51として知っている秘密軍事施設の設立につながった。しかし、ジョンソンのこれまでの努力は画期的なものであったが、アークエンジェル・プログラムが生み出したSR-71は別格であった。

SR-71のマッハ3.2という最高速度が注目されがちだが、ハブがこれほど素晴らしいプラットフォームとなったのは、速度だけではない。結局のところ、ロケットエンジンを搭載したノースアメリカンX-15がマッハ6.7を達成している。しかし、X-15が1回の飛行でカバーできる距離が240マイル程度で、1時間飛行するごとにエンジンの完全リビルドが必要だったのに対し、SR-71は何時間も何時間も弾丸よりも速く飛び続け、滑走路に安全に着陸して翌日の再飛行のために燃料を補給する設計だった。

「マッハ3.2を達成し、それを長時間維持するアイデアは、スカンクワークスにとって最も過酷な仕事であり、私のキャリアの中でも最も困難なものでした。「開発の初期段階で、私は簡単にできることを見つけた人に50ドルを約束した。1,000ドルを提供した方がよかったかもしれません」(ケリー・ジョンソン)。

Lockheed’s Kelly Johnson (Lockheed Martin)


マッハ3以上を長時間維持するブラックバードの能力は、大規模な温度変動に耐えられるエイビオニクス・システム用の新種のワイヤーを発明する必要性など、大量の工学的ハードルを生み出した。エンジニアたちはまた、地上と上空16マイルで機能する新しい油圧作動油を特別に調合する必要もあった。重量と温度の両方の要求を満たすため、機体構造の93%にチタンを使用することが決定された。そこでCIAは一連のペーパーカンパニーを設立し、チタンをソビエトから密かに調達した。

マッハ3の飛行が続くとガラスは半透明になり、パイロットの視界が遮られる。そのため、SR-71の窓は厚さ1.25インチの石英で作られ、音波で機体に溶着された。それでも飛行中、石英窓は非常に熱くなり、乗員は機内食を温めるため、窓から数インチのところに配給品を置いていた。

スピードとステルス性を兼ね備えたSR-71は、非常にタフなターゲットだった

SR-71のレーダー断面積は比較的小さく、スピードも非常に速いため、地上ベースの防空システムにとっては非常に難しいターゲットだった。報告によると、全長107フィートのブラックバードのレーダー断面はわずか22平方インチ(0.1メートル四方)であった。その時点で、最高速度がマッハ3.5でハブよりも速いSA-2ミサイルを発射しようとしても、事実上失敗に終わった。ミサイルが飛来する頃には、SR-71は射程圏外にいたのだ。

しかし1970年までに、ブラックバードは航空界の高速リーダーボードとソ連支配地域の上空で新たな競争相手を得た。

MiG-25は、当時アメリカが開発していた核搭載可能な超音速爆撃機への対抗策として、ソ連が秘密裏に開発したものだった。当時Ye-155として知られていたこの新型高速迎撃機の噂は、1964年には早くもアメリカに届いていたが、ソ連が時速1,441マイルで世界速度記録を更新したと発表したおかげで、この計画が表沙汰になった1965年に、注目を集めた。しかし、アンクル・サムがソ連の新型スーパーファイターを初めてはっきりと目にすることになったのは1967年のことだった。

巨大なエアインテーク、広大な翼、ピクニックができるほど大きな双発エンジンのアウトレットを備えたこの戦闘機を見て、アメリカの防衛機関はすぐに懸念を抱いた。そして、そこから悪化の一途をたどることになる。1971年、MiG-25は、イスラエル軍によってシナイ半島上空での偵察飛行中にマッハ2.5から2.83の速度を記録した。イスラエル軍のF-4が迎撃を試みたが、80,000フィート以上の上空を飛行していたミグがマッハ3.2を超えたと報告されている。

SR-71とMIG-25のマッハ3.2での飛行方法はまったく異なる

書類上では、MiG-25はアメリカのSR-71ブラックバードに匹敵するように見えたが...。

ソ連のMiG-25は、強力な(しかし気難しい)トゥマンスキーR-15ターボジェットエンジンに修復不可能なダメージを与えるような短時間の全力疾走で、マッハ3.2という高速を達成することができた。一方、SR-71は、冷気を直接アフターバーナーに送り込むバイパスチューブを備えた独自のプラット&ホイットニーJ58ターボジェットエンジン(J58は「ターボラムジェット」と呼ばれることもある)と、それまでのどのジェットエンジンよりも高温に耐えることができる世界初の方向性固化タービンブレードのおかげで、苦労せず何時間もその速度を維持することができた。

言い換えれば、MiG-25は大きな犠牲を払ってでもマッハ3を超えることができるかもしれないが、SR-71は楽々マッハ3で飛行していたのである。その結果、ソ連のパイロットがブラックバードが向かってくるという知らせを受けたときには、その機体が消えてしまう前に、自分たちの機体を空中に浮かせ、その尾を引くチャンスはほとんどなかった。

ソ連のMiG-25パイロット、ビクトル・ベレンコ中尉が1976年に西側に亡命した後に説明したように、MiG-25として知られるフォックスバットは、マッハ3以上の持続速度で叫んで通り過ぎるSR-71と接近できるほど速く上昇することができず、たとえできたとしても、空対空ミサイルには両者の距離を縮めるのに必要な推力が不足していた。SR-71に真正面からぶつかっても、ハブの接近率はフォックスバットの誘導システムには手に負えなかったとベレンコは説明した。

「ソ連機が到達できない高度まで上昇し、上空を悠々と旋回したり、ロシア機が追いつけない速度で颯爽と飛び去ったりした」とベレンコは説明した。

あるソ連のMiG-31パイロットがSR-71をロックオンしたと主張したが......

元ソ連軍パイロットのミハイル・ミャグキー大尉は、MiG-31でSR-71をロックオンすることに成功したが、航空機がソ連領空を侵犯していなかったため、撃墜しなかったと主張している。しかし、この証言はアメリカ側からは確認されておらず、ソ連のパイロットが射撃の判断に慎重なことで知られていたわけではないことは注目に値する。

たとえば1983年、大韓航空のボーイング747がSu-15に迎撃された。Su-15は機関砲で数発の威嚇射撃を行ったが、パイロットは民間旅客機であることをはっきりと認識できたにもかかわらず、情報を司令部に報告しなかった。実際、報告によれば、戦闘機は無線で旅客機に連絡しようともしなかったという。

「2列の窓を見て、ボーイングの民間機だとわかっていた。しかし、私にとっては何の意味もなかった」。ソ連のパイロット、ゲンナディ・オシポビッチ大佐はニューヨーク・タイムズ紙にこう語っている。「ボーイングタイプの飛行機であることを地上に伝えなかった」。

その後、オシポビッチは747の後方に位置し、2発のK-8赤外線誘導空対空ミサイルを発射、航空機を破壊し、乗客269人全員を死亡させた。当時のソ連指導部が、撃墜はアメリカが企てた挑発行為だと非難していたのを見ると、ソ連領空外でSR-71を確実にロックしたソ連の戦闘機パイロットが、突然国際法を完全に理解するようになるとは思えない。

SR-71をロックオンした唯一の外国人戦闘機はスウェーデン人だった

特別な訓練を受けたスウェーデン空軍のJA-37ヴィゲン・パイロットたちである。彼らは、比較的低速で飛行速度の低いヴィゲンがこの栄誉を得ることができたのは、その卓越した作戦計画と技術的スキルのおかげであると大いに称賛に値する。

しかし、これらの迎撃が可能だったのは、米空軍がスウェーデンを脅威として認識していなかったからであり、そのため、迎撃を防ぐ作戦計画をほとんど立てていなかったからだ、という見方もできる。言い換えれば、スウェーデンのヴィゲンは、必ずしも実際に回避しようとしていたわけではないブラックバードの迎撃に成功したということができる。実際、ほんの数年前まで機密扱いのままだったある事件では、SR-71を迎撃するために派遣されたヴィゲンが、SR-71のエンジンの1つが爆発したことに気づくと、すぐに護衛に移行した。ブラックバードが急速に速度と高度を失う中、2組のヴィゲンがローテーションで出入りし、味方空域に到達するまでソ連の迎撃から守った。

ヴィゲンのパイロットたちは、アメリカ軍機を即席で守った功績により、最終的にアメリカ空軍航空勲章を授与された。これは、軍用航空界で多くの人々を動かしている競争心でさえ、世界のトップエイビエイターが共有しているプロフェッショナリズムと相互尊重を克服することはできないという貴重な思い出となっている。■

Why Russia's Mach 3.2 MiG-25 couldn't catch the Blackbird | Sandboxx


  • BY ALEX HOLLINGS

  • NOVEMBER 9, 2023


2023年7月1日土曜日

ロッキードが極秘開発中のSR-72が姿を表す日が近づいてきた----ステルス極超音速大型機が航空機の概念を変える

 

SR-72. Image Credit: Lockheed Martin.


ロッキード・マーチンのSR-72「ブラックバードの息子」計画が実現すると判明する日が来るのだろうか



SR-72は、極超音速兵器含む投射物を運用する大型プラットフォームで極超音速に到達し維持する能力で極超音速飛行技術の新時代を切り開く野心的で驚異のコンセプトだ。有人または無人の大型完全極超音速偵察機は、極超音速飛行に関しては多くの課題があることから、おそらく驚異的な開発となる。 「境界層現象」のような複雑な気流と、前例のない高温で極超音速飛行を維持する熱管理はともに空軍の兵器開発者に大規模な焦点となっている。


SR-72の噂

史上最速の空気取り入れ型有人機として、SR-71偵察機は、国防総省で重要な役割を果たした、洗練された外観の高高度ステルス機として、航空史のあらゆる記録に永遠にその名を刻んでいる。

 1998年を最後に何度か退役したこの機体は、1960年代まで遡る。同機開発は、低視認性プラットフォームの構築を考えていたエンジニアたちが、早くから洗練されていたことを示唆している。

 ロッキード・マーチンの有名なスカンク・ワークス部門によって考案され、製造された同機は、時代を間違いなく先取りしていた。

 SR-71の機体は、鋭角のない丸みを帯びた胴体とわずかに湾曲した主翼のフォルムで、確かにステルスに見える。1964年に初飛行したこの航空機は、ロッキード・マーチンのエッセイ「ブラックバードの創造」によると、印象的なテクノロジー数点を備えている。同機のスペックには、マッハ3で飛行し、高度85,000フィートに達することができると記載がある。2006年に放送されたPBSドキュメンタリー番組では、歴史的なブラックバードはその比類なきスピードは地上のレーダーや防空網を凌駕したと説明されている。

 ブラックバードの乗員は2名で、高高度監視任務のためパイロットと偵察担当官が搭乗した。軍用機として活躍した後、ブラックバードは90年代後半まで長年NASAを支えた。『ビジネス・タイムズ』の興味深いエッセイでは、ブラックバードの任務は最終的に無人機や人工衛星に受け継がれたと説明している。


SR-72がまもなく登場?

しかし、ブラックバードのコンセプトは生き続けており、この有名なスパイ機の最も永続的な遺産は、その後継機である極超音速のSR-72の設計に現在急ピッチで進められている取り組みにインスピレーションを与えたことかもしれない。

 ロッキード論文によれば、「ブラックバードの息子」と呼ばれる新型機は2025年までに空を飛ぶ予定だという。極超音速飛行の可能性を可能にし、1960年代のブラックバードの登場以来数十年にわたる技術的ブレイクスルーを活用することを考えれば、ブラックバード後続機が無人であることは理にかなっている。

 1960年代のブラックバードのマッハ3という驚異的な速度が、その後続機のための舞台を整えたことは理にかなっている。極超音速のブラックバードの後継機であるSR-72が極超音速と認定されるには、単にマッハ5かそれ以上の速度まで伸ばす必要があるからだ。興味深いことに、オリジナルのブラックバードが純粋なスピードで防空を回避したのと同じように、極超音速弾は追尾が特に難しい。兵器やドローンのような物体は、あるレーダーの開口部や「視野」から別の開口部へと高速で移動するため、防衛側は「連続的な」軌道を確立できず、照準を合わられなくなる。

 極超音速ドローンの夜明けは、まさにパラダイムを変える画期的な出来事で、何年も前から空軍の科学者たちが予期していたことだった。元空軍主任科学者のグレゴリー・ザカリアスは数年前、極超音速の開発を階段状に進めることを想定しているとウォリアーに語っていた。約10年前だが、彼は2020年代に極超音速兵器が登場し、2030年代には極超音速ドローンが、2040年代には回収可能な極超音速ドローンが登場すると語っていた。

 ロッキードが2025年までに極超音速ドローンの製造に成功すれば、ザカリアスの予測を先取りすることになる。極超音速ドローンが、空戦と高高度偵察の戦術的方程式を根本的に変える可能性があることは想像に難くない。純粋なスピードで防空能力を凌駕し、前例のないスピードとスタンドオフ距離で前方偵察により敏感で危険性の高い地域を一網打尽にする能力は、確かにまだ存在しない優位性を提供する。ドローンが衛星、有人航空機、さらに地上管制ステーションとネットワーク化されている場合は特にそうだ。


未来はほぼ今...

SR-72の進歩は、熱管理の進歩により、ドローンのような大型プラットフォームが極超音速を長時間維持することを可能にする画期的技術と関係があるのかもしれない。極超音速飛行を実現する主な課題として、極超音速で発生する「熱」に耐え、発射体を取り囲む「境界層」すなわち気流を効果的に管理する能力がある。

 層流または「滑らかな」気流は、極超音速弾丸が目標までの軌道を確実に維持できるのに対し、分子が素早く移動する「乱流」境界層は、極超音速兵器をコースから外す可能性がある。プラットフォームが大きくなり、搭載ペイロードが増えれば増えるほど、空力的な課題と熱の課題を管理するのは難しくなる。

 熱管理、複合材料、冷却技術の分野でブレイクスルーがあり、ドローンなど大型プラットフォームが極超音速飛行を持続する日がくるかもしれない。■



Massive Breakthrough: Manned & Unmanned SR-72 "Hypersonic" Spy Plane by 2025 - Warrior Maven: Center for Military Modernization


by Kris Osborn, President, Center for Military Modernization


Kris Osborn is the Military Affairs Editor of 19FortyFive and President of Warrior Maven – Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2022年6月14日火曜日

トップガン:マーベリックに登場のダークスターはSR-72の存在を示唆するのか。ロッキードがダークスター製作に携わっていた。


Sandboxx Newsでは、『トップガン』に登場する極超音速航空機ダークスターの実物大モックアップ開発にロッキード・マーティンの伝説的なスカンクワークスが直接関与していたという話を伝えた。この記事は世界中で引用され、トップガンのプロデューサーとディレクター、ジェリー・ブラッカイマーとジョー・コシンスキーのインタビュー動画は、YouTubeだけで130万回以上の再生回数を記録している。



ロッキード・マーティンに同機に関し問い合わせたところ、同社は関与を認めたものの、スカンクワークスは秘密主義の評判にたがわず、ウィンクやうなずき程度にしか答えてくれなかった。


極超音速とは、マッハ5(時速3,838マイル)を超える速度の兵器や航空機を指す。極超音速ミサイルは、この速度と機動性で現在のミサイル防衛システムで迎撃は不可能と考えられている。


だが、ダークスターは架空の機体ではないかもしれず、ロッキード・マーティンはこのような航空機の開発に長い間取り組んできた。



トップガンに登場したダークスターはロッキード発表のSR-72想像図が原型なのか


Lockheed Martin SR-72 renderingLockheed Martin render of the SR-72.


『トップガン マーベリック』は36年たって制作された続編だが、ダークスターは、ロッキード・マーティンが開発した伝説のSR-71ブラックバードの後継機SR-72として期待されていた以前のレンダリング画像と酷似している。


当時、私たちはロッキード・マーティンがこの映画に関与していると知らなかった。しかし、垂直尾翼が1本から2本になったのを除けば、パラマウントが架空の航空機をデザインする際に、SR-72を念頭に置いていたと信じるに足る類似性がある。


Lockheed martin Darkstar toy and SR-72 rendering(上)ロッキード・マーティン発表のSR-72想像図、(下)『トップガン マーベリック』に登場したダークスターの玩具


問題は「トップガン」だ。マーベリックの舞台は架空の世界で、マーベリックのようなパイロットは、問題のある行動や安全規制の完全無視にもかかわらず、英雄として賞賛される。それだけでなく、ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは、ボーイングレイセオンと並び、再利用可能な極超音速航空機の開発に必要な専門知識を有すると考えられる数少ない企業として、空軍からリストアップされている。


さらに興味深いことに、ロッキード・マーティンは最近、映画のダークスターが活用したのと同じ種類の極超音速推進システムのテストに大きな成功を収めたと発表しており、マッハ10機の描写はSFというより、近未来を垣間見るような感じがある。


(Lockheed Martin)


国防総省予算を使った極超音速兵器プログラムの中でも、空軍研究本部(AFRL)の「メイヘム」は、一見するとミサイルに見えるかもしれないが、同プログラムは、極超音速飛行の聖杯の開発が目的だ。ただ、他の航空機と同様に離着陸できるデュアルサイクル・スクラムジェット推進システムを開発する。


スクラムジェット(超音速ラムジェット)は新技術ではない。何十年も前からテストされているが、今日までミサイルや航空機にスクラムジェットを実用化した国はない。超音速で噴射口に流れ込む空気の力でエンジン内の空気を圧縮し、燃料と混ぜて後方で爆発させて推進力を得る。ロッキード・マーティンによると、この取り組みにより、航空機をマッハ6、つまり時速4,600マイルを少し上回る速度まで持続的に推進できるという。


空軍が開発中の極超音速機は劇中のダークスターとそっくりなのか


(Lockheed Martin)



しかし、圧縮には高圧気流を必要とするため、離着陸時の低速では機能しない。そのため、現在テスト中の最新鋭のスクラムジェットでさえ、別の航空機で上空に運ぶ必要があり、ロケット発射してからスクラムジェットが始動する。


AFRの情報要求書(ROI)を見ると、メイヘムは乗員なしの再利用可能な極超音速無人機の実現をめざす可能性が高いと思われる。ROIでは、攻撃作戦と情報・監視・偵察(ISR)作戦という2種類の任務を遂行可能な無人機を要求している。言い換えれば、メイヘムは、通常のジェット機のように離着陸し、飛行の途中で極超音速を達成し維持できる航空機の実用化を目指している。さらにROIは、この新型機が搭載する2種類の兵装について、「地域効果ペイロード」と 「大型ユニットペイロード」と規定している。


しかし、メイヘムがめざすのは、スクラムジェットに切り替えるのに十分な高さと速度になるまで低速で機能できるデュアルサイクルエンジンだ。



NASA - How Scramjets WorkNASA発表の説明資料でわかるが、スクラムジェットには内部可動部品はないので効率は最高になるが、設計は極めて難易度が高い。



メイヘムの正式名称は最近、"Expendable Hypersonic Multi-Mission Air-Breathing Demonstrator" から "Hypersonic Multi-mission ISR and Strike" に変わり、"Multi-Mission Cruiser" とも言及されている。標的に向けて発射するだけのミサイルではないことを強く示唆している。「消耗品」という言葉の削除と「マルチ・ミッション」という名称は、メイヘムが世界初のデュアルモードまたはタービンベース複合サイクル(TBCC)極超音速推進システムを活用した再利用可能かつ自律運用可能な機体をめざしているのを示唆している。


前述したように、ロッキード・マーティンは空軍研究本部がこの課題を達成できると考えている数少ない企業の1つであるだけでなく、実際に数年前からダークスターに似た極超音速基SR-72の手がかりを残してきた。


ロッキード・マーティンは極超音速スクラムジェット運転に成功していた


2022年3月、国防高等研究計画局、エアロジェットロケットダインAerojet Rocketdyne、ロッキード・マーティンは、米露間の緊張を抑えるため翌月まで報告しなかったが、「Hypersonic Air-breathing Weapon Concept(HAWC)」の飛行実験に成功している。


同実験は、HAWC計画として実は2回目の成功であり、ロッキード・マーティンのスクラムジェットシステムとしては初のものであった。2021年9月の前回の成功もHAWCプログラムだったが、ノースロップ・グラマンのスクラムジェットを活用した。一連の成功は、米国が高速空気取入れ式推進システムを使用する兵器の実戦配備でリードしていることを示唆している。


米国は極超音速兵器を通常兵器に限定しているため、競合他社の抑止システムにない課題が多くある。核兵器は爆発半径が大きいので、低精度兵器でよい。通常弾頭の極超音速ミサイルは、標的を破壊するため要求される精度がはるかに高い。



HAWC missile renderingDARPAによるHAWC想像図


非核の極超音速兵器は戦略的価値がある一方で、非常に高価となるため、開発の意義に疑問を呈する声もある。極超音速兵器は防空能力を打ち負かせるが、同じ結果は低速、安価なシステムを大量使用することでも達成可能だ。敵の防空能力を圧倒すれば、トマホークのような亜音速巡航ミサイルでも、目標撃破が可能となる。


しかし、極超音速攻撃機があれば、迎撃を阻止できる。このような航空機は、低コストの通常兵器を投入した後、着陸し再武装して危険な場所からスクラム(噴射)できる。そうすれば、超音速の攻撃能力をすべて手に入れる上に、ピカピカのスクラムジェット機を標的にはりつける必要はない。


メイヘムは、より大きなペイロードを何度も飛ばすことができる、大型スクラムジェットの開発でロッキード・マーティンが大きく関与しているようだ。


ダークスターは映画だけの存在ではない?


lockheed martin darkstar(Lockheed Martin)


6月3日、ロッキード・マーティンのTwitterに、「ジム」とだけ名乗るスカンクワークスのコンセプトデザイナーが登場するダークスターに関する短い動画を投稿された。ジムは、自分が取り組んでいる「ほとんどのこと」について話せないと述べている。


30秒のビデオの最後の発言は、航空機設計の裏に真実があることを示唆しているのかもしれない。


「私の名前はジムです。ダークスター開発に携わり、ここロッキードマーティン・スカンクワークスで未来の構想を練っています」。


しかし、ジム発言を深読みされないように、ロッキード・マーティンのダークスターのウェブページは、ダークスターが実際の機密プログラムとDNAを共有している可能性について、多くを実行中と明言している。


「トップガンのマーベリックチームは、限界を超えたスピードに忠実に描こうとして、スカンク・ワークスが真っ先に呼ばれました。最速の航空機を開発してきたスカンク・ワークスの専門知識と航空宇宙の未来を定義する情熱とエネルギーがあれば、ダークスターは単なるフィクション以上のものになるはずだ......。現実となりうるのです...」(ロッキード・マーティンの「ダークスター」ウェブページ)


ウェブサイトでは、スカンク・ワークスがパラマウント社の制作チームに協力して、撮影用に実物大モックアップを製作したにもかかわらず、ダークスター自体は実在しない航空機と説明している。しかし、極超音速飛行が同社にとって重要分野だとも説明している。


「ダークスターは実在しないかもしれませんが、能力は本物です。極超音速技術、すなわち分速60マイル以上の飛行能力は、30年以上にわたる極超音速への投資と開発・試験の経験を活かし、当社チームが進化中の能力です」。


ヒントは数年前にあった

Darkstar Lockheed Martin(Lockheed Martin)


2018年に遡るが、ロッキード・マーティンの先行開発プログラム戦略・顧客要求担当副社長、ジャック・オバニオンJack O’Banionが、フロリダで開催された米国航空宇宙学会主催の「SciTech Forum」に登壇した。オバニオンは背後のスクリーンにSR-72のアーティスト・レンダリングを映し、あたかも同機がすでに存在し、試験で成功を収めているかのように語った。


「デジタル変革がなければ、この機体は作れなかった」と、オバニオンは2018年の聴衆に語った。「エンジンそのものを作れなかった。5年前に作ろうとしたら、溶けてしまっていただろう。しかし今は、エンジン素材に信じられないほどの高性能冷却システムを組み込んだエンジンをデジタルプリントしており、エンジンが日常運転を繰り返しても残っています」。


オバニオン発言は、SR-72が設計図上でしか存在しない航空機ではなく、ある程度のテストが行われた機体であると示しているように思えた。そして、その主張の証拠がある。


その1年前の2017年、Aviation Weekは、パームデールにある米空軍の42工場付近で、無人のサブスケールSR-72技術実証機と思われるものの飛行が目撃されていると報じた。スカンクワークスの拠点と同じ場所だ。Aviation Weekはロッキード・マーティンのオーランド・カルバルホOrlando Carvalho航空部門上級副社長に連絡を取った。


「具体的なことはお話できませんが、カリフォーニア州パームデールのスカンクワークスチームは、スピードへのコミットメントを倍増させているとだけ言わせてください」とAviation Weekに述べていた。


「極超音速はステルスに類似します。画期的な技術であり、ブラックバードの2~3倍の速度で飛行できるようになります...セキュリティ分類ガイダンス上では、速度はマッハ5以上としか言えません 」。


極超音速兵器に触れたプーチン演説の直後にロッキードはSR-72関連ウェブサイトを削除していた

lockheed darkstar SR-71 Blackbird2018年のロッキード・マーティンのSR-72のウェブページ。


ロッキード・マーティンは2013年にSR-72専用ページを開設し、2015年に更新した。同年、ポピュラー・サイエンスはこのプログラムをカバーストーリーにした。


2018年3月1日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、世界初の運用可能な極超音速兵器Kh47M2キンザルと、ロシアの核超音速ブーストグライド兵器アバンガルドの実戦投入計画を発表し、悪名高い演説とした。同演説が、極超音速兵器開発競争の始まりとされている。


キンザルは噂と違っていたが、プーチン発言は、世界中に、新兵器の能力に不安を抱かせることになった。


興味深いことに、プーチンがロシアの極超音速兵器を発表した直後、ロッキード・マーティンは自社ウェブサイトから極超音速航空機プログラムSR-72に関する記述をすべて削除した。しかし、Wayback Machine(古いウェブサイトを保存するインターネット・アーカイブ)を使えば、ページにアクセスできる。


削除されたSR-72のウェブサイトによると、ロッキードはスクラムジェットで飛ぶ航空機を2030年までに実用化可能と主張していた。そして、そのためエアロジェットロケットダインと協力中との記述が注目される。ロッキードが最近HAWCプログラム用のスクラムジェット試験を成功させたのと同じ会社だ。

「極超音速機は、高価で縁遠い存在ではありません。 実際、SR-72は2030年までに実用化されていてもおかしくありません。ロッキード・マーティン・スカンク・ワークス®はエアロジェット・ロケットダインと共同で、市販のタービンと超音速燃焼ラムジェット空気呼吸ジェットエンジンを統合し、静止状態からマッハ6まで航空機を駆動する方法を開発しました」と、ロッキードマーティンのウェブサイトは2018年に述べていた。


その結果、Aviation Week誌が「ブラックバードの息子」と呼んだSR-72は、高性能と手頃な価格のシステムレベルで最適化された統合エンジンと機体だ、とも説明した。


ダークスターは実在するのか

Lockheed Martin ダークスター render


ひとことで言えば、「ノー」だ。ダークスターはトップガンで特別にデザインされたフルサイズのモックアップだ。ジェリー・ブラッカイマーは、中国がスパイ衛星の向きを変えモックアップを間近で見られるようにした言っているが、ハリウッドの誇大広告かもしれない...あるいはダークスターは本物ではないが、それに似たものがあるかもしれない、との兆候かもしれない。


ダークスターとSR-72コンセプトの最も明らかな違いは、マーベリック自身だ。SR-72は、無人機として構想されてきた。極超音速飛行は人体の生理学上でも実現可能とはいえ、開発の際に現実的な課題がある。


SR-72 concept PACE2021年に空軍のProfession of Arms Center of Excellence (PACE)が公表した映像のスクリーンキャプチャ


商業・防衛用途で再利用可能な極超音速機の開発に取り組むハーマーズHermeusと話して分かったことは、極超音速飛行に固有のGフォースは、高いマッハ速度への遷移が緩やかなら、搭乗員に大きな問題にはならないだろう、ということだ。宇宙飛行士は、再突入時にマッハ25超となるが問題はない。最大のハードルは、高度10万フィート以上から時速4,000マイルを超えるスピードで放出されたときに、パイロットが生き延びる方法だろう。


また、パイロットを乗せれば、生命維持装置、制御装置、ディスプレイ、射出座席、コックピットキャノピーは重量増を生む。


しかし、もしロッキード・マーティンが空軍研究本部のメイヘムとしてSR-72のコンセプト研究を続けているとしたら、中国はダークスターを覗き見しようとしていたのかもしれない。結局のところ、ロッキード・マーティンが2018年から秘密裏にSR-72の作業を続けていたのなら、覗き見する価値がある。


SR-72はすでに存在しているかもしれないし......あるいは、まだパームデールのどこかの製図台上にしかないのかもしれない。いずれにせよ、ひとつだけ確かなことがある。ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは、映画作品上の極超音速飛行以上のものに目を向けているのだ。■


Is there a real secret aircraft behind Lockheed and Top Gun's Darkstar? - Sandboxx

Alex Hollings | June 6, 2022


Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.