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2021年8月5日木曜日

改オハイオ級SSGNは大量のトマホーク巡航ミサイルを敵地に放り込む最強の潜水艦、だが供用期間に限りがある。後継艦は....?

 

 

 

隻供用中のオハイオ級SSGN潜水艦は世界最強の巡航ミサイル搭載艦で接近阻止領域拒否をとる敵への対抗で強力な選択肢になる。

オハイオ級弾道ミサイル型潜水艦(SSBN)は核戦争で敵都市や軍事集積地の破壊を目的に建造されたが、より正確に言えば敵が開戦に踏み切るのを抑止するためだった。ただし、冷戦が終結すると米海軍は核抑止ミッションで同級18隻は必要ないと判断した。

 

海軍は最初に建造した4隻を廃艦予定だったが、かわりにトマホーク対地攻撃巡航ミサイル(TLAM)搭載艦に転用する大幅改修を各艦700-900百万ドルで行った。対象艦はオハイオ級誘導ミサイル潜水艦(SSGN)に変更され、通常弾頭による対地攻撃を任務とした。まず、オハイオ、フロリダが核燃料交換、大修理を受け同時に兵装転換作業を2003年に開始し、2006年に現役復帰した。続けてミシガン、ジョージアが2008年に改修を完了した。

 

オハイオ級SSGNはトライデント弾道ミサイルの発射管(直径88インチ)24本を活用し最大規模の通常攻撃能力を有する艦となった。発射管22本がトマホーク発射用のキャニスター運用に改装され、各7発を運用するのでトマホークは合計154発となった。

 

単価150万ドルのトマホークは千ポンド弾頭を最大1千マイル先の標的に向けGPS誘導で発射する。となると改オハイオ級は最大2億ドル相当の兵装を搭載することになる。

 

オハイオ級SSGNは多任務艦でもある。発射管で残る2本は特殊水中ロックに改装されネイヴィーSEAL60名を特殊作戦で発進させる。また、水中無人機(UUV)、SEAL搬送機(SDV)、小型潜水艇、ソナーブイ他の水中センサーを運用できる。

 

トライデント運用艦のように姿をひそめる必要がなく、2010年にオハイオ、フロリダ、ミシガンの各艦は中国のミサイルテストに対抗し、ディエゴガルシア、フィリピン、南朝鮮の沖合にほぼ同時に浮上し存在を誇示した。2011年のオデッセイ・ドーン作戦支援でUSSフロリダはリビア防空施設に93発のミサイルを発射したが、命中したのは3発のみだった。とはいえ反カダフィ勢力によるリビア上空の航空作戦に道を開き、オハイオ級ミサイル原潜で初の実戦となった。

 

では大型巡航ミサイル発射潜水艦の投入目的はなんだろうか。水上艦で長距離トマホーク攻撃すればいいのではないか。あるいは空母から航空機を発艦させれば、安価な精密誘導弾投下が実現する。端的に言えば、ステルスSSGNsは探知されずに敵沿岸へ接近でき、内陸部への攻撃、大規模攻撃を実施しつつ、水上艦や航空攻撃のように姿を露呈することはない。

 

新型長距離対艦ミサイルの例にロシアのカリブル巡航ミサイルがあり、陸上、空中、水上から発射が可能なため、大型艦艇の沿海域運用を困難にし、航空母艦やミサイル巡洋艦に影響が出る。空母搭載機材でも敵の対空母兵器を考慮し空母が敵国沿岸部から800マイル以内に近づけないと攻撃効果が減る。

 

これに対し原子力潜水艦の探知追尾が極めて困難なのはひとえに低ノイズのまま長時間潜航できるためだ。敵がオハイオ級SSGNを探知できるのはミサイル発射後で、その時点で潜水艦側は深く潜航し静寂を守り敵の報復を避ける。

 

ただし、オハイオSSGNの強大な火力が利用可能なのは残り10年程度に限られる。オハイオ級は全艦が新型コロンビア級弾道ミサイル潜水艦に交代する。通常型対地攻撃任務はヴァージニア級攻撃型潜水艦がヴァージニアペイロードモジュールを搭載してトマホーク50本を発射することで引き継ぐ。計算上はヴァージニア級4隻でオハイオ級一隻と同等の火力となるが、反面攻撃力を分散させることで実戦で有効性を発揮するはずだ。

 

だがそれまではオハイオ級SSGN各艦が世界最強の巡航ミサイル搭載艦の座を守り、接近阻止領域拒否体制を整備した敵へのけん制、対応で強力なツールのまま残る。■

 

Ohio-Class Submarines: How Joe Biden Could Order A Nuclear War

by Sebastien Roblin

July 30, 2021  Topic: military  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologySubmarinesSubNavyU.S. NavyCruise MissileTomahawk Missile

 

Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

This article was first published in January and in 2020. 

Image: U.S. sailors aboard the guided-missile submarine USS Georgia. Wikimedia Commons/U.S. Navy


2016年8月8日月曜日

★2030年代に空母は無用の長物になるのか



海軍航空戦力の将来像がピンチという話題の続編です。なるほどこれだけの巨費をかけながら期待するような攻撃力を加えられないのなら空母は不要だ、というわけですか。短絡気味ではありますが、確かに10万トンの巨艦はかつての戦艦と同様に予算ばかり食う存在になっているのでしょうか。そこに空母=ステータスシンボルと勘違いなことを考える国があらわれているわけですが。

We go to war so you don’t have to
共用基地パール・ハーバーに到着したUSS ジョン・C・ステニスAugust 2016. U.S. Navy photo

Aircraft Carriers Could Be Obsolete in the 2030s Even With F-35s

That is, if flattops continue to lack long-range strike capabilities

by DAVE MAJUMDAR


ハイエンド戦の初日にもし米海軍に空母航空隊投入するつもりがない、あるいは投入できないとしたら、納税者の130億ドルもの巨費を投じたフォード級空母の意味がなくなってしまうではないか。
  1. ワシントンの海軍関係アナリストたちがこう問いかけており、海軍には選択肢が多数あると強調し、ステルス長距離無人攻撃機や潜水艦部隊の増強もそのひとつだとする。
  2. だが現行のボーイングF/A-18ホーネット中心の航空戦力は航続距離が短く、2030年代には適応できなくなる。たとえ若干長距離のロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機が加わったとしても。
  3. 「開戦初日に空母がA2/AD内で有効な攻撃ミッションを実施できないのなら130億ドルで何が手に入ったと言えるのでしょうか」と新アメリカ安全保障センターのジェリー・ヘンドリックスがThe National Interest取材で述べている。
  4. 「こんな主張をする人がいますよ。『一日目にできる仕事はない』というのなら、値段にあった仕事ができないとことになりませんか」
太平洋でカナダ海軍フリゲート艦HMCSカルガリーがUSSジョン・C・ステニスに随走する。U.S. Navy photo
  1. 高額な空母予算を正当化し、戦力として活用するために米海軍には空母航空隊を再編し、接近阻止領域拒否に対応できる戦力にする必要があるというのがヘンドリックスの主張だ。
  2. 海軍に必要なのは長距離無人攻撃機なのは明白ではないか、とヘンドリックスは問いかける。「長距離攻撃を空母から実施する機材を作らないのなら空母予算は他に使うべきではないでしょうか」
  3. ブライアン・マクグラス(海軍関係コンサルタンシー、フェリブリッジ専務)もヘンドリックスと同意見だ。
  4. 「海軍が空母航空戦力の将来に腰が重いままだと空母の存在価値が脅かされます」とThe National Interest誌にに語っており、長距離無人攻撃機の開発を提唱している。
  5. 「これはいつも忘れないでください。空母は浮かぶ空港です。航空機材がカギです。航空隊の構成を誤ればCVNへの投資は意味がなくなります」
  6. 海軍上層部はこの点は理解している。ロッキード・マーティンF-35Cの開発が長引き高額になったことで海軍は慎重になっている。
  7. 「F-35調達で海軍の航空調達に悪影響が出ています。UCLASSがステルス攻撃機ではなく給油機兼ISR機材になった理由を調達部門が説明するのを聞くと背筋が寒くなります」(マクグラス)
  8. 「空中給油やISRは確かに重要ですよ。でもあくまでも付随機能です。機材構成に欠けているのは高機動セミステルス長距離攻撃能力です。全く不足しています
  9. 「ISR/給油機の方が技術課題の垣根が低いのは事実で、調達部門には高い目標に挑戦する意欲というか食欲という何かが欠けています」
  10. F-35で海軍は無人攻撃機開発の意欲が萎えてしまっただけではくF/A-XXも構想が後退し今や「スーパーな」スーパーホーネットという存在になっている。
  11. 「F-35でこりごりしてF-35の再来はもうごめん、というのでしょう。でもこれではF-35から誤った教訓を得ることになってしまいます」(マクグラス)
  12. 「F-35で学ぶべきは『一つで全部』の解決方法でミッションすべてを全条件でこなす機体は実現できないことです。だからこそ無人セミステルス長距離艦載機は空母航空部隊専用に作るべきなのです」
USSドワイト・D・アイゼンハワーから発進する第131攻撃戦闘機隊ワイルドキャッツのF/A-18C。 U.S. Navy photo
  1. ただし、もし海軍が長距離侵攻攻撃機の開発に乗り出さないと言うのなら最低でも新型空中発射式巡航ミサイル(最終段階で超音速とするのが望ましい)で有効射程500カイリ以上の開発が必要となる。
  2. このミサイルはスーパーホーネットあるいはF-35Cに搭載し、600マイル以上飛行してから発射する。
  3. ヘンドリックス、マクグラスの両名は空母にはどうしても給油機で攻撃隊を支援する必要があるという。
  4. 「3万ポンドの給油能力が必要ですが、少なくともKA-6(26千ポンド)と同等の給油が必要です」とヘンドリックスは言う。
  5. 米海軍が米国と同等の戦力を有する国を相手にした開戦初日に空母を投入しないのなら、130億ドルを投じたフォード級空母の意味がなくなるというのがヘンドリックスの主張だ。
  6. 代替策としてフォード級の建造を中止し、安価なニミッツ級空母建造の再開すればよいとし、ヘンドリックスの試算ではニミッツ級最終艦のUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)は建造費が最高規模だったがそれでもUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78)の半分程度だという。
  7. 別の代替策は60,000トンのフォレスタル級並みの小型艦としカタパルト数や高額な装備をあきらめることだ。
  8. 「空母を70機搭載とすれば設計もかわるはずです」とヘンドリックスは指摘し、10万トン級のニミッツやフォード級は90機以上搭載を前提にしていると指摘する。
  9. 選択肢はまだある。空母建造そのものを取りやめ、潜水艦建造に集中すればステルスで妨害をうけない運用能力が増強できるとヘンドリックスは言う。
  10. フォード級空母の予算でオハイオ級後継(ORP)弾道ミサイル潜水艦二隻あるいはヴァージニア級攻撃潜水艦四隻が調達できる。
  11. こうすれば海軍が必要とするオハイオ級弾道ミサイル潜水艦の後継艦作りにはずみがつき、攻撃潜水艦不足も迅速かつ予算的に無理なく解消できる。
  12. さらに攻撃潜水艦がヴァージニア・ペイロードモジュールでトマホーク巡航ミサイル40発を搭載すれば相当の攻撃力となる。
  13. ただし、ヘンドリックスはOPR潜水艦をまとめ買いで倍増し、半分はSSGN(巡航ミサイル搭載潜水艦)にし、トマホーク112発を各艦が搭載できる案を提唱している。
  14. 「空母航空隊で開戦初日に精密攻撃できないのならSSGN部隊が代わりを務めればよい」とヘンドリックスは述べた。■