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2024年12月26日木曜日

中東の武器市場で中国が得をし、米国が損をする構造になっているのは米国が自ら課した政策が原因だ(Defense One)

 In this 2019 photo, Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman (R) attends a meeting with Chinese President Xi Jinping (L) at the Great Hall of the People in Beijing.

2019年、北京の人民大会堂で習近平国家主席(左)との会談に臨むサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(右)。 




敵対的な周辺国に対するイスラエルの軍事優位性qualitative military edgeを保証した2008年政策がその他安全保障パートナー向け軍事装備品販売に足かせとなっている


国の武器販売に占める中東のシェアは過去10年間で低下しているが、これはイスラエルの軍事的質的優位を確保するという米国の政策のせいである。

 2024年のSIPRI報告書によれば、2014年から18年と2019年から23年の5年間で、米国の武器輸出に占める中東の割合は50%から38%に低下した。 この減少の主な要因は、QMEに関連した制限である。

 2008年以来実施されているこの法的義務化された政策は、イスラエルが敵対的な近隣諸国に対し技術的・戦略的優位を確保することに米国を縛り付けている。このアプローチは、この地域の他の米国の安全保障パートナー、例えばエジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦との関係を緊張させた。こうした国々は中国等の供給国に目を向けている。

 米中央軍司令官はこうなるかもしれないと2020年に警告していた。 「中東における米国のパートナーが)中国に目を向けることは避けたい。 ケネス・マッケンジー元司令官は、「我々は、彼らがシステムの購入でロシアに頼ることは望んでいない」と語った。


 世界がますます不安定になる中、各国が国防支出を急増中の今、より広範な地域的パートナーシップよりイスラエルのQMEを優先させるというアメリカの政策により、中国が中東の武器市場で手強い競争相手となり、パワーバランスを大きく変化させる可能性がある。すでに中国は、欧米サプライヤーに代わる柔軟で現実的な選択肢として自らを位置づけており、政治的・作戦的なしがらみの少ない競争力のあるソリューションを提供している。


この地域の主要国の武器プロジェクトを見てみよう:


エジプト

エジプトのフランス製ラファール戦闘機は、先進的ではあるが、メテオール空対空ミサイルのような重要な長距離システムなしで納入された。イタリアとのユーロファイター・タイフーン24機(30億ドル相当)の交渉や、アメリカとのF-15ストライク・イーグルの潜在的な契約も、同様の制約に直面しており、イスラエルのQMEを維持するため長距離攻撃能力が省かれている可能性が高い。長距離兵器に関する西側制限に不満を募らせたエジプトは、代替となるサプライヤー、特に中国を求めるようになっている。北京は超音速巡航ミサイルHD-1Aを提供し、カイロの長距離能力のギャップを補っている。射程距離が290キロを超え、精密照準が可能なHD-1Aは、エジプトの攻撃能力を高める可能性がある。統合されれば、イスラエルのQMEに挑戦することになり、地域のパワー・ダイナミクスを変えることになる。


サウジアラビア

サウジアラビアは、この地域で最大の米軍兵器の購入国であるが、先進システムの取得に関して制限に直面している。MQ-9リーパー無人機へのアクセスを拒否された後、サウジアラビアは中国のCH-4とウイング・ルーン無人戦闘機(UCAV)を購入した。これらの無人機は、特にイエメン上空での作戦で広範囲に配備されている。サウジアラビアは、段階的に廃止されたMQ-1プレデターに匹敵するウイング・ルーンII無人機も取得している。

 リヤドはDF-3やDF-21といったモデルを含む中国の東風(DF)弾道ミサイルを獲得している。イランのミサイル計画に対抗するため、サウジアラビアは中国から技術支援を受けて固体燃料弾道ミサイルの国産化も始めている。

 また報道によると、サウジアラビアは中国北方工業集団公司(Norinco)と、スカイセイカーFX80UAV、CR500垂直離着陸(VTOL)UAV、クルーズ・ドラゴン5や10のような浮遊弾などの先進システムを調達するために話し合っているという。


アラブ首長国連邦

2016年のトランプ政権下の画期的な武器協定には、230億ドルのパッケージの一部として、UAE向けのF-35ステルス戦闘機とMQ-9リーパー無人偵察機が含まれていた。この契約は、UAEがアブラハム合意に基づき2020年にイスラエルとの関係を正常化した後に正式締結され、地域の防衛力学に変化をもたらした。 しかし2021年12月、UAEはF-35の使用と統合に関する「主権的な運用上の制約」を理由に、バイデン政権との交渉を中断した。トランプ第2期政権下で交渉が再開されれば、UAEはイスラエルに次いで中東で2番目のF-35運用国となる。

 その間、UAEは代替案を模索してきた。例えば、中国はウイング・ルーンII UCAVを提供している。米国とのF-35契約の中断後、UAEは空軍を近代化し、軍事力を向上させるための代替案を追求した。 UAEは2021年、ラファール戦闘機80機のためにフランスと190億ドルの契約を結んだ。これらの先進的な4.5世代航空機は、UAEの老朽化したミラージュ2000を置き換えると同時に、米国製のF-35ステルス戦闘機に代わる近代的な選択肢を提供する。

 さらに、UAEは中国との機会も模索している。報告によると、Hongdu L-15新型練習機はすでに納入されており、成都J-20ステルス戦闘機など、より洗練された中国のプラットフォームがUAEの希望リストに載っている可能性があるとの憶測を呼んでいる。■



China gains, US loses ground in Mideast arms market

The 2008 policy that guarantees Israel an edge over its hostile neighbors is annoying other US security partners.

By Aja Melville

Weapons Editor, Military Periscope

December 2, 2024


https://www.defenseone.com/business/2024/12/us-israel-china-and-shifting-arms-trade-middle-east/401379/?oref=d1-homepage-river


2022年6月30日木曜日

イスラエルを軸にした中東湾岸の取り組みは歴史を塗り替えるか。イランの脅威を前にゆるやかな集団安全保障体制が生まれる可能性が出てきた。

 

Elta Systems



ニー・ガンツBenny Gantzイスラエル国防相が中東防空同盟Middle East Air Defense Alliance(MEAD)と呼ばれる新しい地域共同防空ネットワークの存在を6月20日発表したが、参加国、協定の規模など詳細はほとんど明らかにしていない。



イランのミサイルやドローンの脅威に対抗するため、イスラエル製センサーを自国領土に設置する希望がある国々と協議を続けているようだ。


イスラエルとサウジアラビア、カタール、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン、ヨルダンを結ぶ同協定の策定を支援する原動力は米中央軍CENTCOMだった。イスラエルは現在、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンと外交関係を結んでいるが、サウジアラビアとカタールとは国交がない。


ウォール・ストリート・ジャーナルによると、このグループの最初の公式会合はエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで行われた。イスラエル国防軍の参謀長アビブ・コハヴィ中将 Lt. Gen. Aviv Kohaviがサウジ軍参謀長ファイヤド・ビン・ハメド・アル・ルワイリ大将Gen. Fayyadh bin Hamed Al Ruwailiと出席したという。(米中央軍の広報担当者はWSJに対し、「地域協力を強化し、わが軍と地域のパートナーを守るための統合的な防空・ミサイル防衛アーキテクチャを開発する確固たる約束を維持している」とだけ述べた)。


イスラエルの防衛関係者によると、協定は作業部会がまとめる途中だが、一般的なアイデアは、参加国が配備するすべての早期警戒センサーをつなぐ統一通信システムを構築するねらいがあるという。このシステムはCENTCOMが監督し、武装UAVや弾道ミサイル、巡航ミサイルなどの空からの脅威をリアルタイムで早期警告できるようになる。


協定が正式になれば、イスラエル製の長距離早期警戒レーダーを購入する国も出るだろう。イスラエル軍との関係が歴史的に緊張してきた各国に、イスラエルの防衛技術が入り込むわけで、状況によっては、イランの脅威よりもセンサーでエルサレムに送られるデータを気にする国もあらわれるかもしれない。(検討中のセンサーの種類は不明だが、情報筋によれば、イスラエルのEltaが開発した長距離システムが選択肢の一つだという)。


Breaking Defenseは、サウジアラビアとUAEがイスラエル製の防空装備に暫定的ながら関心を寄せていると伝えたが、おそらくこのネットワークに統合されるのだろう。


具体的には、イエメンの一部でありながらUAEの実効支配下にあるソコトラ島 Socotra Islandをセンサー設置場所として利用する可能性が取りざたされているが、何も決定していないと情報筋がBreaking Defenseに語っている。


ソコトラ島は、魅力的なポイントだ。2020年、The Middle East Monitorは、UAEとイスラエルが同島にスパイ基地を設置する案を策定していると報じた。その後、情報筋は、詳細を明かさず、イスラエルが同島に「何らかのプレゼンス」を持っているのを確認した。


来月、イスラエルとサウジアラビアを公式訪問するジョー・バイデン大統領にとって、新しく結成された連合は、この地域に到着した際の論点になると予想される。イスラエル紙Haaretzは今月初め、バイデン大統領の訪問中にサウジアラビアが連合加盟を公にすることを望む声があることを報じた。


中東メディア研究所の報告によれば、「バイデンはまた、2015年核合意への復帰に向けて、停滞しているイランとの交渉が再開される可能性について湾岸諸国の懸念を和らげようとするようだ」。さらに、アラブの報道では、バイデンと各国指導者は、イランを筆頭とする安全保障上の共通の脅威に立ち向かうため、イスラエル含む地域各国間でNATOに似た軍事同盟の形成について話し合うと予想があるという。


NATO加盟国は、加盟国が攻撃された場合、互いに助け合うことを義務付けられており、中東では政治的利害が絡み合っているため、事実上不可能だが、地域大国が防衛関係を強化する必要があるとの結論に達したのは明らかだ。防空連合は出発点に過ぎないかもしれない。■


Gulf states willing to host Israeli sensors for air-defense network: Sources


By   ARIE EGOZI

on June 29, 2022 at 3:03 PM


2021年1月2日土曜日

1月のイランによる不穏な動きを牽制する米軍部隊の動きに注目。1月3日ソレイマニ殺害から一周年。

 A U.S. Air Force B-52H Stratofortress from Minot Air Force Base.

 

米空軍B-52Hストラトフォートレス(ノースダコタ州マイノット基地)がKC-135ストラトタンカーから米中央軍管轄区域上空で空中給油を受けた。Wednesday, Dec. 30, 2020. (Senior Airman Roslyn Ward/U.S. Air Force via AP)



空軍戦略爆撃機がペルシア湾上空を12月30日に飛行し、12月で二回目の展開となった。力の誇示で米国はじめ中東同盟国へのイランの攻撃を抑止する狙いがある。


今回のB-52二機による飛行は、イランが数日以内にも米国等の攻撃準備に入ったとされる中での対応と匿名米軍高官は解説した。


B-52編隊はノースダコタのマイノット空軍基地を離陸し、周回飛行し帰投した。イランが2020年1月3日のカセム・ソレイマニ司令官殺害の報復軍事行動に踏み切る事態を米国は危惧している。当時は殺害の5日後にイランはイラク国内基地を弾道ミサイル攻撃し、およそ100名の米軍人が脳震盪を訴えた。


緊張をさらに高めたのがイラン支援を受けたシーア派戦闘員が在バクダッド米国大使館を先週ロケット弾攻撃したことで、死傷者は発生しなかったがトランプ大統領はツイッターでイランに以下警告した。


「イランに忠告する。米国人が一人でも死亡すれば、イランの責任である。よく考えることだ」


エスカレーションで大規模戦に発展する可能性があるため、米国はイランを抑止することとした。双方の戦略をさらに複雑にするのがワシントンの政権移行で、次期政権がイランには新しい対応を模索する可能性がある。バイデンは米国を2015年核合意に復帰させるとしている。


今回の爆撃機飛行について米中央軍は防御的な対応と説明している。

「米国は戦闘態勢を中央軍管轄地区で維持しており、いかなる敵対勢力も抑止する。また米国あるいはその権益を攻撃する動きがあれば即座に対応できる態勢にある」とあり、イランを名指しで呼んではいない。


この発表に先立ち、匿名の米軍高官は米情報機関がイランによる「相当の脅威」の兆候をつかんでおり、ソレイマニ殺害一周年にイラク国内の米関係施設へのロケット攻撃を行う計画があるという。


イラク駐留米軍は2,500名に縮小中でトランプ大統領は1月15日までの実施を求めている。米国は同時にイランが「より複雑な」攻撃を中東各地の米国関連施設に対し計画中との兆候を掴んでおり、ソレイマニ殺害後でもっとも深刻な事態だと米軍高官は述べている。イランの高性能兵器がイラクへ搬送されており、シーア派指導者がイランのクッズ部隊関係者と会見したと同高官は説明。ソレイマニが司令官だった部隊だ。


また同高官は経済面の目標にイランが注目しているとも語り、2019年9月のサウジアラビアの石油精製施設へのミサイル・無人機攻撃に言及した。イランは当時関与を否定したが米国はイランを攻撃の主犯として非難した。


米軍はここに来てイランの動きを抑止する各種動きを展開しており、イランを挑発することは念頭になく、また指示設けていないと公式に説明している。


先週は米海軍の誘導ミサイル潜水艦一隻がホルムズ海峡を通過している。ルイジアナのバークスデイル空軍基地からB-52が二機ペルシア湾上空を飛行し、米軍は「プレゼンス」ミッションであり、攻撃ミッションではないと説明していた。こうした動きは米国が同地域を重要視しているあらわれであり、今週再びB-52が投入されたわけだ。


イランとの緊張を高めた事件として11月のモーセン・ファクリザデ殺害事件がある。西側はファクリザデを制裁対象の核兵器開発の中心と認識していた。イランは殺害をイスラエルによるものと非難したが、米国は米国関連施設へのイラン報復攻撃を懸念していた。■


この記事は以下を再構成したものです。


US Bomber Mission over Persian Gulf Aimed at Cautioning Iran

The Associated Press | By Robert Burns 30 Dec 2020

This article was written by ROBERT BURNS from The Associated Press and was legally licensed through the Industry Dive publisher network. Please direct all licensing questions to legal@industrydive.com.

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2020年9月26日土曜日

中東での米軍プレゼンスは減少中.....少なくとも海軍・海兵隊関係では

 

家防衛戦略構想が20181月より実施され三年近くになるが、国防長官もジム・マティスからマーク・エスパーに代わり、大国間競合に焦点を当てる構想で米軍の優先順位はどう変ったのだろうか。

この疑問に答える一つの方法が海軍省配下の装備の配備状況だ。特に空母打撃群と揚陸即応集団ならびに海兵遠征部隊が拡大ペルシア湾にどう展開してきたか。これまでの二十年は米軍並びに政策はこの地域に重点を置いてきた。バラク・オバマ大統領は「再バランス」としてアジア太平洋へ転換を図ろうとしたが、ロシアがクリミアを併合した2014年にヨーロッパへ再び注意を寄せた。ドナルド・トランプ大統領はこの筋道をさらに進め国防戦略構想をまとめ、中国、ロシアを明確に重点対象とした。マティス、エスパー両長官はこれに呼応した。

とはいえ、国家防衛戦略構想で米国防総省の兵力配備状況がわかるのか。つまるところ、同盟国および密接な安全保障上の協力国合計60か国を抱えた米国は多数の地域で多大な責任を課せられている。中でも中東にはどうしても多くを向けざるを得ない。

だが海軍関係の配備状況だけに目を向ければ、答えはイエスだ。ある程度までは。根本的な変化とはいえないものの、米海軍は中東への配備を減少させている。

2017年央以降の米海軍艦艇の配備状況を毎月まとめた米海軍協会の「フリートトラッカー」データベースを見れば、空母打撃群、揚陸即応集団の動きが従来のパターンと変化していることがわかる。相違点は二つで、これまで海軍はアデン湾から北インド洋までの範囲に空母打撃群を一個配備してきた。

2018年春から空母打撃群の配備が同地区にない期間が発生している。これは以前と異なる動きで国家防衛戦略の直接の影響と言われる。ペルシア湾に配備されるはずだった空母はバルト海へ向き、マティス長官のいう「戦略的には予測可能だが作戦上は予測不可能」な米軍の動きとなった。

ところが2019年にイランとの緊張が高まるとペルシア湾地区に空母戦力が不在な状態では不安となった。同年の冬、秋には不在だったが、6月に常時展開を再開した。国家防衛戦略の起草に携わったフランク・マッケンジー大将が米中央軍司令官となり空母プレゼンスを求めたためだ。今も重要なことでは変わりないが、重要度が下がってきた中東地区の実態は戦略構想と食い違うことがある。

その意味もあってか、中東地区では2019年冬から海兵隊の艦上待機はなくなっている。カシム・ソレイマニを殺害した2020年春に海兵揚陸集団一個を派遣したものの数か月で撤収させ、その後の配備はない。この部隊の航空支援兵力は空母打撃群の三分の一程度しかないが、二千名規模の海兵隊員を展開した。ミッションによっては意味のある兵力で海上石油施設や小艦艇の制圧にペルシア湾広域で効果を発揮するはずだ。このため、CENTCOM隷下の中東地区に次回揚陸集団が配備されても驚くにあたらない。

総体としては国防総省には二つの意味で賛辞を送りたい。ひとつは世界規模のコミットメントと同盟関係のある中で意味のある展開を維持していることであり、中東地区が戦略的な意味があるとはいえ、艦艇派遣を23割と減らし国家防衛戦略に対応すべく戦力展開に工夫していることだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How the U.S. Military is Prioritizing Great-Power Competition

September 25, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Tags: PentagonMilitaryDefense DepartmentNavyObama

by Michael O'Hanlon 

Michael O’Hanlon is a senior fellow and the director of research of foreign policy at the Brookings Institution.

Adam Twardowski is a senior research assistant at Brookings, where he assists O'Hanlon with his work on U.S. defense and foreign policy, as well as Brookings' Project on International Order and Strategy, which focuses on multilateralism and great power competition. He is a graduate of the Security Studies Program at Georgetown.

 

2014年12月7日日曜日

★主張:イランは米国の同盟国に復帰できる



なるほど面白い観点ですが、イスラムの宗派の違いを無視していますね。ただし、イスラムとはイデオロギーよりも実は実利を重んじる考えのはずなので、イランをカウンターバランスとして米国が重視する可能性も排除できません。イラク領土内でイラン空軍が作戦を展開している事実も(国内向けに)イランは否定しているようですが、意外に早く事態が急変するかもしれませんね。原油価格低下とともに米国としては中東湾岸地区の安定を早く回復したいと思っているはずなので。こうなるとイスラム国は一層孤立感を覚え自暴自棄になる、それで滅亡が早まる、と言うシナリオなのかもしれません。

Opinion: Iran — America’s Old/New Ally

By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
Published: November 24, 2014 4:14 PM • Updated: November 24, 2014 4:15 PM

Behesht-e_Zahra,_Tehran,_Iran_(5072246576)
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ジュネーブで本日、関係六か国はイラン核問題協議を7か月延長すると決定した。

ジョン・ケリー国務長官は各国の気持ちを代弁した。米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシアとイランだ。「一年でここまで来たこと、特にこの数日での進展を見ると、ここで決裂しては元も子もない」


交渉先送りする間に米国はイランを巡り新しい国家戦略目標を探る時間がとれるだろうか。こんな仮説はどうか。イランをペルシア湾岸における主要な戦略関係国にもう一度復帰させるのだ。

今になって振り返るとペルシア湾岸地方で安定が失われたのは米国の同盟国としてのイランを失った1979年のパーレヴィ国王の退場以降である。その後の米国は新しい同盟関係の構築に走り、巨額の予算と国民の生命を犠牲にして新しい勢力構図を作ろうとしてきた。イランに制裁措置をしてきたが、歴史から見れば、3,000年の歴史と文化を有する国が相手なのだ。


一見、米イラン接近は非常識に見えるが、歴史と地理の教訓からこの発想が実は理不尽ではないことがわかる。

まずイランは第二次世界大戦終結から1979年まで米国の主要戦略同盟国だった。イラン革命が終止符を打った。地理と文化的条件からイランは地域内で主導的立場を数世紀にわたりとってきた。直近の34年間がいかに混乱していたとはいえ、もっと長期視点からすれば例外的な期間であり、イランの地理文化的条件を直視すべきだ。

シャーが国王の座にあった時代を思い返してみよう。1979年までのイランは地域内で突出した軍事力を保有していた。第二次大戦後は英国に代わり我々がイランを同盟国の地位に押し上げたのである。そのため、当時の先端装備、F-4、F-14、ホークやハープーンミサイルを供与してきた。

現在のアメリカがイランを語る際は底流にある文化面を無視している。イランの有利な地理条件、65百万人の人口、そして古代文化が同国の地位を重要にする要素だ。石油は問題ではない。

二番目に同地域で発生した三つの危機状況で、イランは米軍作戦を妨害していない。

ひとつめが砂漠の嵐作戦で、イランの宿敵イラクを相手とした米国はペルシア湾に4個空母打撃群を投入したが、イランは干渉しなかった。2001年9月11日以降はアフガニスタンのタリバン勢力排除にイランは協力している。さらに現在進行中の対イスラム国作戦でイランと米国は共通の利害関係を見出している。

米・イラン関係はとげとげしく、上記の三例をもってイランとの関係を単純化するつもりはない。だが、事例は米国、西側諸国が危機に直面した1991年、2001年、2014年のいずれにもイランは米軍作戦を妨害しなかっただけでなく、一定の範囲で米国を助けていたのである。

三番目に地域内の9・11以降に現れた敵に米国の同盟各国が資金、人員、イデオロギーをそれぞれ供給していたという事実がある。9・11実行犯19名のうち、15名はサウジアラビア、2名はUAE、残りはエジプトとレバノン一名ずつだった。イラン出身者は皆無、またイランが資金援助した事実もない。

現在進行中の対ISIS作戦は第三次イラク戦争と言ってよく、ISISに資金・人員を提供するのは地域内の諸国だが、ここにイランは含まれていない。

イランには独自の代理テロリスト集団があり、レバノンのヒズボラは1983年に米海兵隊退舎をベイルートで爆破している。

ヒズボラやイランのQudsのような遊撃隊が代理勢力になっていることが今後の問題となるが、イラン関係の正常化がすすめば非対称的なそのような脅威勢力は不要となるのではないか。また地域内の同盟各国はたとえ国民の一部が航空機をハイジャックし、米国内で力の象徴に突入させてもやはり同盟国だと証明している。そうなると米国が各国に寛容になる余地が出てくる。

イランに何が起こっているのだろうか。イランが各国との外交関係を構築しようとしてるのは自ら課した外交的孤立を終えようとしている証拠ではないか。いかにも脅威を与る姿勢を示してきたイランはとてつもない経済的犠牲、地政学的犠牲を払ってきた。とくにアフマディネジャド政権下がひどかった。今のイランはこの孤立を終える寸前にあり、米国や西側各国との信頼関係を再構築する寸前でもある。

核協議の延長が決まったことで、将来の米イラン関係はこの段階では先が読めず、これまでの経緯から筆者の仮説はいかにも先走りしすぎとの観を与えるかもしれない。

しかし最後に付け加えたい。過去の世代では日本とドイツがアメリカで最重要の同盟国になるとは想像さえできなかったはずだ。両国とは全面戦争しているが、イランとの対立は比較すれば一度は友人だった二人が頑なに反目しあっているようなものだ。歴史と地理を注意深く観察すれば、筆者はイランとの関係正常化が米国の目指す方向であると楽観視している。