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2019年4月7日日曜日

F-15X導入方針に疑義をぶつける上院議員に米空軍はどんな説明をしたのか

コメントは下にあります


US Air Force defends F-15X buy to skeptical Inhofe, Reed

懐疑的な有力上院議員に対しF-15X導入方針の弁護に必死の米空軍


By: Joe Gould

米空軍のF-15Cイーグル。不朽の決意作戦の航空支援に投入された。 Feb. 11, 2019. (Staff Sgt. Clayton Cupit/U.S. Air Force)

空軍は第4世代機ボーイングF-15Xの調達を再開してもロッキード・マーティンF-35の導入に変わりはないと方針の正当性を強調した。
空軍の2020年度予算要求を検討する上院軍事委員会で空軍トップがF-15X8機の調達は短期つなぎだと述べた。またF-15C退役の穴を埋める方法としては費用対効果が最大の選択とし、ハンガー、機材、整備要員がそのまま使えるとした。
「F-35事業は軌道に乗っており、変更はない。F-35から一銭たりと予算流用はしない」と参謀総長デイヴィド・ゴールドフェイン大将がF-35を「統合侵攻部隊の主力」と述べた。
ゴールドフェイン大将はロッキードF-22ラプター調達中止の二の舞にならないと議員に保証した。また2040年代までに第5世代機を8割の機材構成にする方針には変更ないとした。
委員長ジム・インホフェ上院議員(共、オクラホマ)と有力議員ジャック・リード上院議員(民、ロードアイランド)から今回の空軍方針に疑問の声が出ていた。これまで長くF-15やF-16向け予算を要求していなかったのに突如2020年に11億ドルをF-15X用に求めてきたもので、2020年度予算要求ではF-35は48機、F-15は今後5年で80機を79億ドルで調達するとある。
「これまで第4世代機は消える存在と思っていたが調達再開のようだ」とインフォフェ議員は述べ、「F-22事例を忘れていないか、当初750機調達のはずが187機に終わったしわ寄せが今も残っている。こんな大失策は繰り返してはならない」
公聴会終了後にインフォフェ議員は空軍関係者は自ら納得していない方針を擁護していると報道陣に感想を述べた。「空軍も不本意なのではないか。それは当方も同じだ。第5世代機が第4世代機に逆戻りとなる、ということではないか」
リード議員は公聴会の席上でA-10、コンパスコール、U-2、グローバルホークで空軍が方向を急に変更したこととF-15Xを関連付け「これで正しい調達といえるのか」と問題提起した。
機材老朽化が進む中でミッション実施のため空軍は年間72機調達を必要とするとゴールドフェイン大将は議員に説明した。四機種ある第4世代戦闘機のうち三機種は2030年代まで稼働可能だが、F-15Cはここに含まれないという。
F-15派生型は第4世代機の供用継続で費用対効果が最大の機種と認められており、最近ではサウジアラビアとカタールが導入している。
さらにもうひとり懐疑的なタミー・ダックワース上院議員(民、イリノイ)からの質問に対しゴールドフェイン参謀総長はF-15Xは2万時間稼働が可能としつつ、F-35への影響は皆無と自信を見せた。
「F-15取得でF-35を犠牲にするのでは悪い選択になります」「F-15はF-35とは違いますし、絶対にF-35になれません」.
公聴会場を出たダックワース議員は国防予算が今後削減されればF-35よりF-15導入が魅力的になるのではと危惧していると記者団に語った。「今回の决定は過去二年間の予算動向を念頭にしているのではと危惧している。「数年先を考えると現実乖離の决定ではないか」(同議員)■

このブログの読者でもF-15の調達再開を疑問視する声が強いのですが、空軍内部の反対を押し切ったペンタゴンの考え方が正しかったという結論があと数年すれば出てくるのではないかと思います。ステルスは戦闘機サイズでは限界もあり、F-35に至っては戦力化した段階で使い出が限られる機体になってしまう危惧もあります。意見が別れるのはあまりにも第5世代と言う言葉に振り回されているからと思います。これもロッキードが売り込んだコンセプトなのですが。それよりも別記事にて紹介しますが、B-21の性能に期待が募ります。それにしてもさすが上院議員ですね。優秀なスタッフに支えられているのでしょうが、事実をもとにした見識を制服組に堂々とぶつけています。回答する側も真剣になり、言語による応酬が知的にくりひろげられているようです。

2019年3月29日金曜日

複座型F-15EXのみ導入し、後部座席は空のまま運用する米空軍方針が明らかになった

F-15X採用でこのブログ読者に戸惑い、疑問が噴出しましたが、産業構造維持という殺し文句で鎮静したようです。いろいろな意見はでましたがF-35一本ではやはり不安が残るというのが本音でしょう。米空軍もステルス命としていたのは予算の余裕がないことを自覚していたからにほかならなず、バランスを考慮する余地はあったはずです。まして今回の採用は国防総省の意向が大きく働いています。それにしても、1970年代初飛行の機体が進化するとはいえさらに30年供用するのは1940年代のマスタングが1980年代末に派生型になり、2010年代まで供用されるのと同じですね。イーグルがいかに費用対効果が高い設計の機材であることがよくわかります


Aerospace Daily & Defense Report

USAF Plans To Fly New F-15 With Empty Back Seat

新型F-15は後部座席を空のまま運用する米空軍の方針

Mar 27, 2019Steve Trimble | Aerospace Daily & Defense Report
F-15 2040C: Boeing


ーイングの複座F-15EXは現在単座F-15Cを運用中の飛行隊が後部座席を空のまま飛ばす方針を米空軍がAerospace DAILYに認めた。
米空軍はすくなくとも144機のF-15EXを導入し、うち80機は今後5年以内に調達しF-15Cの老朽化に対応する。
F-15EXはF-15Cと同じ制空任務、F-15Eの戦闘爆撃機任務の双方をこなす設計で、うち後者では後部座席で兵装システム士官が地上攻撃を担当し、パイロットは操縦や空対空戦に専念する。
F-15EXには操縦席がふたつつくがパイロットが空対空戦、空対地戦を一人で担当すると空軍は説明。F-15EXは現在F-15Cを運用中の飛行隊に納入されるが、兵装システム士官は搭乗せず後席は空とする。
「F-15EXを受領する飛行隊は現行任務を現行の搭乗員体制で行う」と空軍広報官がAerospace DAILY照会に回答した。
F-15CパイロットはF-15EXで期待される役割が拡大になるが転換訓練コストは増えないと空軍は見ている。「搭乗員訓練の要求項目は増えない」(空軍広報)
ボーイングはF-15C後継機としてのF-15Xで単座型はF-15CXとして提示している。だが空軍は複座F-15EXのみ導入することで導入関連経費を最小限とする。

F-15EXはカタール空軍発注のF-15QAの派生型だ。主翼を軽量化しつつF-15Eと同じ量の兵装とセンサーを搭載する。F-15EXにはその他にも2001年のF-15E登場後に利用可能となった性能改修が施されており、、フライバイワイヤ機体制御、イーグル・パッシブ・アクティブ警報装置、高性能ディスプレイコアプロセッサーIIミッションコンピュータ、大型ディスプレイ付き新型コックピットなどを採用している。■

2019年3月24日日曜日

シャナハン長官代行の倫理問題とF-15X導入は無関係? 産業基盤保護が動機と説明するDoD

この記事のとおりだったのか信じる信じないは自由ですが、産業基盤保護という言葉が出てくる米国の官庁はDoDぐらいですかね。かつては日本の産業政策を批判していたのが米国だったのですが....

Shanahan Ethics Agreement Out; How The F-15X Decision Was Made

シャナハン長官代行の倫理問題、F-15X選定の内幕

The Air Force wants more planes - and believes it has found a way to get them. 機数を増やしたい空軍が解決策を見つけたのか

By COLIN CLARKon March 22, 2019 at 7:33 PM
ンタゴンが発表した新規倫理規定によりパトリック・シャナハン国防長官代行はボーイングに一切関われなくなった。この措置はDoD監察総監からシャナハンの倫理違反嫌疑を捜査中と発表したのを受けてのこと。
ボーイングF-15X戦闘機導入で国防総省の決定にシャナハンが関与していたのかをめぐり論議が盛んだが、もともと同機は空軍が当初希望していなかった機材で、ボーイングの競合相手ロッキード・マーティンのF-35の継続調達を計画していた。
国防関連高官はシャナハンは同機導入で決定的な役割は何ら果たしていないと述べ、あくまでも決定は当時の国防長官ジム・マティスあるいはコスト評価事業(CAPE)室によるものと本日報道陣に述べた。同高官によればシャナハンはF-15X導入過程から「除外」されていたという。
本日の記者会見はペンタゴンの戦略的決定過程の内幕を覗き見る貴重な機会になった。発足9年目のCAPEでの審議内容が話題になるのも珍しい。その前身、事業分析評価室(PA&E)も同様であったが。
同高官はF-15導入の決定過程を簡潔かつ正確に紹介してくれた。それを聞いて2つの段階があったと判明。まず、2017年に議会への報告で米軍戦術機材で兵装を大量搭載可能な第四世代機とステルス機の混成編成が必要との指摘があった。第四世代機は基地、本土防空用の想定とともにスタンドオフ兵装機としてF-35から標的情報を入手して運用し、混成運用は2030年代にかけ必要という内容だった。
決定ではコストが重要要素だった。機体単価より維持運用費用が重視された。F-15Xは運用経費が低い。機体単価は大きな差はないといってよい。同高官によればCAPE試算でF-15Xは90百万ドルで、F-35Aはロット11で89.2百万ドル、さらに80百万ドルまで下がると事業担当部門とロッキード・マーティンは確約している。
もう一つは国内産業基盤の維持だった。第四世代機にはF-16もあるが、同機はロッキード・マーティンが生産しており、決定では産業基盤に競争状態を残すことを重視した。トランプ政権が重視する国内産業育成が決定に影響したのか尋ねると、同高官は「それは承知していない」と答えた。CAPEは前身時代から国内産業基盤維持を重視して決定してきた。
F-15X選定過程を簡単に言うとこうだ。予算案原案が8月末に届いた。9月中旬に第四世代機導入を提言。10月中旬までに空軍はデータを精査し、「分析結果に賛成した」(同高官)
先月の空軍協会冬のカンファレンスで記者は航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将に第四第五世代機混成編成が意味がある高層化聞いてみた。

「ACC司令官としてほしいのはもっと多くの新型機だ。機材の平均機齢の上昇を解決の必要がある」とホームズ大将は答えたがF-15Xは新型機材とは考えていない、予算対策でしかないと述べていた。「F-35を飛ばすほうが第四世代機より高くつく」と述べた。それで答えがわかるだろう。■

2019年3月16日土曜日

2020年度予算にF-15Xが正式に盛り込まれた。その他F-5の22機調達が目を引く


8 F-15Xs For USAF And 22 F-5s For Navy In 2020 Budget Request

2020年予算にF-15Xの8機と海軍用F-5の22機の要求

The F-15X is officially real and the Navy and Marines are set to get a fresh influx of badly needed aggressor airframes.

F-15Xが公式に実現し、海軍海兵隊には必要だったアグレッサー機材調達が実現

BY TYLER ROGOWAYMARCH 12, 2019
ンタゴンが次年度予算案を本日公開し、大枠だけがわかった。重要な内容はF-15X調達が公式になったこと、F-5E/Fの22機調達の2つだ。
F-15X調達は予想通りでその存在を昨年7月に初めて報じていた。今回は初回調達規模が明らかになり、F-15EX(単座型)8機を2020年中に概算11.174億ドルで導入する。予算には初期導入8機分以外にイーグル輸出仕様にない装備の統合開発経費の他、調達業務立ち上げと予備部品サポート分も含む。
同機の単価はUSAFがボーイングと確定契約を結ぶまで不明で上記金額は変更の余地がある。
USAF
整備場でF-15Cの主翼を取り外している。F-15C/D部隊の老朽化が進んでおり、今後も飛行可能に保つためには相当の予算が必要となる。

F-15X調達の追加はF-35のみを導入するとしてきたUSAF関係者の従来の言い分と異なる。その意味は明白だ。「F-35のみ」としてきたDoD路線は終わった。価格面ならびに各種機種を組み合わせた戦力構造で即応体制を引き上げると空軍は公言している。
これでバランスの取れた戦力構造に向けた調達が生まれる余地ができた。
USAF幹部が現実対応として考えてきた内容が二十年近く採用されないまま戦闘機調達と部隊編成されてきた。USAFは2020年にF-35を48機調達し、戦術戦闘機の柱として今後もその地位を守る。
F-15XとF-35の同時調達を企画する空軍だがF-15C/Dを運用中の部隊にF-35の導入予定はなく、予算案は議会承認が必要だ。F-35に特殊利権を有する議員がすんなりと承認しないのではないか。すでにF-15Xの小規模導入に反対の意向を示す議員も現れている。
話題を海軍に移すと、今回の予算要求に22機のF-5E/FタイガーIIがあるのが目を引く。機体はスイス空軍から購入し、敵機役を演じる支援任務にあてる。F-5N/F44機が海軍二個飛行隊、海兵隊一個飛行隊で供用中だがこれもスイス空軍の余剰機材だった。それも十年近く前のことで現有機材は老朽化が進む一方で需要は増加している。
USN
F-5N

一部需要は民間業者委託で埋めてきたが、海軍は現有F-5の全機退役は将来避けられないと機材補強を迫られてきた。F-5はアグレッサーとして運航経費とともに実績を実証ずみなので別機種に交替すれば経費は大きく増加してしまう。
このためペンタゴンがF-5を新たに22機スイス空軍から入手し、ノースロップ・グラマンのセントオーガスティン施設で再整備し今後もアグレッサー任務の継続を図るのはしごく当然のことだ。
民間業者TacAirが海軍の「第四世代」敵機契約を改修型F-5で獲得していることからF-5が民間企業でも引っ張りだこになるのは間違いない。
言い換えれば海軍はスイスのタイガーII機材が入手できるうちに手を付けたことになる。
再整備後の機材を海軍がどう運用するか不明だが、既存F-5部隊を補強し、飛行時間の節約効果をで供用期間を伸ばす狙いがあるのか、新規のアグレッサー部隊を編成するのだろう。以下の予算説明でこれ以上のことはわからない。
海軍省はF-5E/F機材をスイス政府より調達しUSNおよびUSMCの訓練用敵機機能をサポートする。F-5は敏捷かつ高度の操縦性があり信頼性の高い超音速戦闘機で高度の空力特性とエンジン性能、低運航経費を特徴とする。
海兵隊は先にF-5を20機余り追加し米国各地の訓練基地に分散配備することで空対空訓練需要の増加に対応したいとしていた。
USN

これまでハリヤーが空対空防御戦でこの任務についており、AV-8B+はAIM-120AMRAAMの運用が可能となっていた。海兵隊の旧型ホーネット部隊は対テログローバル戦争で対地ミッションにに酷使され、老朽化したホーネットでは空対空戦能力は見劣りがしていた。
F-35B/Cには高性能センサー融合とステルス能力がつくが、パイロット訓練に敵役の機材がどうしても必要だ。USMCに残る後期型ホーネットには高性能のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーが搭載され空対空戦訓練では敵機役機材に需要が増えている。その背景にはペンタゴンが大国間武力衝突に再び焦点を当てており、空対空戦訓練に以前より高い優先順位がついていることがある。このため供用中機材とあわせ委託業者の機体で対応する。
以上を念頭にスイス空軍の余剰F-5の調達は予算上で合理的選択となる。
今回対象の機材に予備部品等をつけても総額は39百万ドルとF-35C一機の三分の一以下だ。機体単価は1.8百万ドルということだ。ただし米本国に回送するとそれなりの費用がかかる。前回のスイスF-5各機は海軍海兵隊のKC-130Tに搭載され大西洋横断した。
各機がエイビオニクスの大幅改修を受け構造補強も施されるかは興味深い点だ。海軍はTacAirと同様に既成品を使うオープン・アーキテクチャアを採用し新型センサーやレーダーを搭載するのではないか。海軍のアグレッサーF-5部隊が新型レーダーやIRSTを搭載しており、ヘルメット搭載画像装置をつけ今後も長く供用に耐えるはずだ。
以上の調達について今後詳しく見ていく。ペンタゴンの2020年度希望リストは未公開だが今後お伝えする内容は続々と出てくるはずだ。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

2019年3月10日日曜日

F-35かF-15Xかの議論にミッチェル研究所の結論は...F-35増産に絞るべき

デプチュラ中将が所長を務める空軍協会のミッチェル研究所による論考です。F-15Xをゴリ押ししたのは国防総省であり空軍には不要の存在との主張ですが、さすがに空軍の現場感覚を残すデプチュラ中将らしい論調ですが、予算案はすでにできあがっており空軍省では期待できず、議会に待ったをかけてもらいたいとの主張ですね。逆に言えばF-15Xはそこまで実現が近づいているということでしょうか。


Mitchell Weighs In: More F-35s or New, Old F-15s?

ミッチェル研究所の見解 F-35増産かF-15新規生産機か

Fifth gen or fourth gen? F-35A or F-15X. Stealth, sensors and fusion or lots of missiles? Lockheed or Boeing? See what the Mitchell Institute says. 

第5世代課題4世代か。F-35AそれともF-15X。ステルス、センサー融合機能か大量ミサイル搭載能力か。ロッキード、それとボーイングか。ミッチェル研究所の答えを御覧ください。


By DAVID DEPTULA and DOUG BIRKEYon March 04, 2019 at 4:41 PM

388戦闘航空団の第四戦闘機隊のF-35Aがレッドフラッグ2019でネリス空軍基地を飛び立つ。 Feb. 6.
空軍はもっと多くの戦闘機を必要とする。機材不足のまま稼働期間が増えている米空軍の戦闘機部隊は投資を先送りしてきた商品のようなものだ。調達を早期取り消しした2009年決定でF-22は必要機数の半分以下となりF-35生産は予定通りになっておらず、1970年代製のF-15C合計234機で耐用年数の終わりが2020年代にやってくる。世界各地で脅威が広がる中で対応不能は許されない。2020年度国防予算案の公表が近づく中、議会が今後の方向性に大きな役目を果たす。
議論の一つにF-35増産がある。
逆の議論が2020年度予算案に盛り込まれた。国防長官官房が空軍に働きかけF-15Xを既存機種の新規生産分として予算要求させている。
F-35の増産か、F-15Xを導入するのかとの議論から細かい論点が生まれ、何れの選択肢にも効果が期待できるが、パトリック・シャナハン国防長官代行はF-35を低評価する発言をしていると伝えられ、同機は「性能向上の余地が多い」とまで言ったという。
対照的にF-35を実際に操縦した空軍関係者は戦闘を一変させる存在だと述べる。ひとりは「今まで不可能だったことがF-35で当たり前のことになった」とまで述べている。
論議の最終結果が見えないが、議会は国防総省(DOD)と共に空軍が正しい道をたどり2018年版国家防衛戦略を実現できるよう導くべきだ。米国の航空優勢に挑戦すべく開発中の敵機に勝てる性能を有する機材を導入して米航空戦力の近代化をすすめ、また装備調達で多数の重要案件がある中で調達予算の効率よい執行も求められる。その意味でF-35の調達増加が最善の策であり、新規生産ながら旧式のF-15に予算追加するより優れている。

予算の現実
F-15X導入を支持する国防関係者にはF-15XはF-35と対抗する存在でないとし、F-35導入に影響は生じないと繰り返し主張している。その言い分に誠意が感じられるものの予算の厳しい現実ではF-35と小規模とはいえF-15新規生産の双方を調達する余地はない。国の借金が増え、金利が上昇する中で米国にこれ以上の国防予算の負担余地はないとの声がある。トランプ大統領もこの懸念を示し、下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は国防費増額に反対で2020年度予算で減額を求めてくる可能性がある。
2020年の大統領選挙の結果次第で新政権が誕生すれば国防予算の大幅削減もありうる。その場合は空軍は予算減の中で装備更新をする事態に陥りかねない。反動として事業打ち切りやF-35調達数の削減など有害な効果が生まれかねない。F-15XとF-35の予算獲得合戦となれば、後者は典型的な死のスパイラルに陥り、機数が減れば単価が上昇し調達がさらにカットされる。この場合は米空軍が高いリスクを負う。同時にF-35で戦力増強を狙う空軍以外の組織や同盟国にも影響は必至だ。
空軍の調達予算に新規事業を追加する余地はない。今でさえF-35、B-21、KC-46、T-X、UH-1後継機、新型核ICBM、宇宙サイバー装備と重要案件でいっぱいだ。

F-15

F-15X整備案の詳細は不明のままだが調達対象機種の追加になれば予算全体でリスクが数年にわたり現れるのは必至だ。作戦実行で意味のある機数のF-15Xとなれば100機は必要だが、F-15Cの現有機材と一対一の更改となれば234機のF-15Xになる。報道にある2020年に8機、以後20機ずつの調達だとF-15X導入は10年以上かかるがその間の国防予算が相当厳しくなることは容易に想像できる。
報道どおり空軍がF-15X導入予算は別枠で確保できてもシャナハン以降のDoDトップが変更する可能性は残る。歴史を紐解けば過去にも「保証付き」の取扱が短期のうちに覆された事例はある。ロバート・ゲイツ国防長官がF-22生産を終了させ空軍の要求機数の半数の調達になったのはF-35があるのでリスクを下げれると長官が判断したためだった。
F-35はF-22より10年ないし15年新しい機材で多様な兵装を搭載できる。F-22のほぼ半額で大量生産による量産効果も期待できる。今後5年間で500機導入を予定し、全体では2,400機超の調達となる。2020年には米国の有人機は各種合わせ2,500機となる見込みだがうち1,100機が第5世代戦闘機のF-35とF-22になる....
ゲイツの楽観的な見通しは実現しなかった。2020年まで10ヶ月を切ったが、空軍にはF-22が186機、F-35が175機未満しかない。ゲイツ長官の誤った判斷、その後の長官各位による優先順位の変更、状況の変化、さらにF-35生産の遅れが重なり米国の航空優勢能力は危険水域になり、世界各地の司令官が望ましい戦力との差に悩んでいる。
機材更新が予定通り行えなかったため空軍に残ったのは機材数が少ない割に高い維持費がかかる事態で、各機種専用の支援体制が必要となる一方で経費そのものの改善に手をつけてこなかったためこうなった。そこにF-15Xの小規模部隊を加えれば問題は悪化するだけだ。F-15Xは旧型機の設計を継承するがF-15CやF-15E用のサブシステムは使えない。機体には新設計装備がつくため変更点が多い。そもそもエンジンが異なる。F-22の小規模部隊、相互互換性のないF-15各型、F-35が共存すれば不必要な維持費がかかる。供用期間中の経費を下げるためには機材の大量導入が必要で、初期型を早期退役させ、近代化改修を少しずつ進める必要もある。
F-15Xの第一陣を空軍が導入すれば作戦上意味を生む機数になるまで調達が続くはずだ。シャナハンの後継者が違う見方をして調達を中止させるかもしれない。反対にF-35調達を絞り他事業への影響が出ないようにするかも知れない。新規生産ラインでそのような柔軟対応はできない。

航空機材の進化
F-16のエレファントウォーク。韓国群山基地にて。
F-35批判には軍用機開発の歴史を振り返ることで見えるものがある。現在の各機種は険しい道をたどって今の実績をつかんだものばかりだ。F-16が供用開始したころを回想しパイロットが次のように述べている。「初期のF-16は墜落が多かった。ネリスで44日間で4機喪失した。編隊長は一ヶ月続ければ幸運だった。当時のジョークだが新型機を導入したら1エーカーの土地を滑走路端に確保しておけ、と言っていた」初期トラブルが多発したのはF-16だけではない。B-52、F-4、F-15、A-10、B-1、C-17他で皆経験している。歴史から見ればF-35は非常に上手く行っている方だ。昨年、F-35Bで一機喪失事案が発生したのが唯一の事故というのは従来の機材調達の実績と対照的だ。
運航コストは技術の成熟とともに性能拡大で下がるのが常だ。F-35の総合費用評価がこの点を見落としている。分析では何年も前の初期データを将来に当てはめることが多すぎる。最初にロールオフしたF-35と現在の機体では根本的な違いがあり、後者ではこれまでの知見が活用されている。この傾向により機体の性能は向上していくのだ。
現時点のF-35の機数が少ないことから相当数の機体は初期生産分でデータがゆがんでいるといえる。正確な評価には初期生産機材の比率を小さくする必要がある。これはF-35に限った問題ではなく、F-22でもデータのゆがみが発生したがF-35への懐疑的な見方で特に注意が必要だ。また初期生産型のF-15やF-16を空軍が実戦運用しなかった理由がある。訓練や評価用に使い、新型が稼働開始すると早々に退役させている。空軍はこの教訓を再度思い出すべきで、空軍を管轄する議会も同様だ。

情報時代の戦闘とは
F-35が必要とされる理由にF-15Xにない性能がある。将来を見据えれば空での勝利にはパイロットのデータ収集・合成能力、行動につながる情報への変換能力、僚機とのリアルタイム協力を適時適地に実施する能力が必須だ。軍事戦略でこうした能力を何世紀にわたり夢想してきた。実現できるようになりその規模と範囲が新しい。スマートフォンの登場でコミュニケーションと情報入手が一変したようなものだ。情報収集、処理でパイロットに正しい状況がわかるようになり、戦闘空域全体で味方と協調出来るようになり戦闘を一変させる効果がある。第5世代機で一年未満の経験しかないパイロットが何十年もの経験を有するベテランと同じ効果を引き出せるのだ。
直近2019年2月のレッドフラッグ演習は最高の難易度と現実的なものとなり388作戦群司令のジョシュア・ウッド大佐は初心者F-35パイロットが第4世代機で経験豊かなパイロット以上の働きぶりを見せたと紹介している。
これは第4世代機のF-15、F-16、F/A-18と大きく異なる。こうした機材のパイロットは大量かつ未整理のままの情報の洪水に見舞われるが長年の経験がないと対処できない。空軍パイロットのひとりは次のように述べている。
第4世代戦闘機ではパイロットは機体装備の取扱いをマスターするとミッション訓練に移り装備の活用を完璧に体得する。この訓練で戦闘空間を三次元的に把握する経験を積み効果的な連絡方法を学ぶ。すべてのシステムを使いこなすのにパイロットは数年間を要し、ウィングマンから先任パイロット・編隊先任パイロット、教官パイロットを経て指揮官になる。高度の経験を有する指揮官でもパイロットとして自機センサーを使いこなしつつ時宜にかなった決断を戦闘状況で下す必要がある
だが第5世代機は大きく異なる。F-22パイロットの言葉を聞いてみよう。「第5世代戦闘機で飛行技術を習得すれば、訓練の中心は交戦中の意思決定に移る。戦闘空間はデータ融合で表示されているから」 新旧機の大きな違いはパイロットにできることだ。F-22パイロットによれば「若手ウィングマンでも戦術判斷できるが第4世代機では先任パイロットになるぐらいの経験がないとできない」 第4世代機パイロットが何年も経験を積む内容を第5世代機パイロットが一年で習得できるのだ。
F-15XのシステムはF-15C、E型から継承発展しているが、機体の進化にも限界がある。第5世代機の情報技術で重要部分は一から設計して機体に搭載したものだ。センサーの数、統合、パイロットへの表示、僚機への接続機能のすべてでF-35は優秀さを示す。情報時代の戦いでこの違いは大きい。

ステルスがなければ
F-35とF-15Xの比較ではステルス性能がF-15Xにないことに意味がある。F-15Xが非ステルス機のため作戦範囲に制約が生まれ国家防衛戦略の実現に役立てない。ロシア、中国の防空装備は第4世代機の撃墜を主眼にしていたが、ここに来て米空軍が共用監視攻撃レーダーシステム(JSATRS)の機材更新を断念したことに注意すべきだ。その理由に敵防空能力の向上があり航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将も「将来の脅威環境でこの機体では何もできない」とする。スタンドオフ機材のJSTARSでさえ生き残れないのなら、非ステルスのF-15Xが敵地に飛び込む想定は正しいと言えるか。
旧型非ステルス機導入で効率的な予算執行になるという向きが理解していないのはミッション達成に機材がもっと多く必要となる点だ。F-15Xが高度脅威空間で生き残るためには護衛が必要となる。レーダー妨害機能、敵戦闘機の制圧、地対空ミサイルを無効にする機能を果たす各機も必要だ。各機運用にパイロット・支援人員が多数必要で空中給油機も基地機能整備も求められる。F-15Xを攻撃投入すれば全体コストは第5世代機より大幅に増える。
砂漠の嵐作戦でF-117ステルス機は一機で非ステルス機19機分の仕事をこなした。空軍参謀総長は「予算さえあれば、F-35を年間72機調達したいが総合的に見る必要がある。F-15はF-35に絶対になれない。だが機材が必要だ」と述べている。「同じ予算ならF-35より多い数のF-15が手に入る」としているが、F-15Xで同じミッションを実施すると支援機材がたくさん必要となる点を無視している。結論としてF-15XでF-35と同じミッションを高度脅威下で実施すれば費用がもっと高くなる。
「第5世代機が第4世代機をもり立てる」というのは正しいが、逆の意味もある。第4第5世代機の混合運用は第5世代機の利点をわざわざ劣化させることになる。というのは第4世代機の防御に多大の時間を使われるためだ。現時点の第5世代機がF-22の186機、F-35が175機と小規模であるため今でも厳しい状況の部隊運用はさらに苦しくなる。航空優勢確保があらゆるドメインでの軍事作戦成功の必要条件と考えると、空軍だけの課題にとどまらない。統合部隊運用に大きな影響が出る。この解決で必要なのは第5世代機の追加であり、第4世代の新造機材ではない。

空軍の望ましい姿
F-15Xが威力を発揮できるミッションもある。巡航ミサイル迎撃では大量搭載可能なミサイルで対応できるし、大型兵装も搭載し、本土防衛や厳しくない環境なら敵地攻撃も可能だ。F-15X推進派がこうしたミッションをさっそく前面に出しているが、同機がこうした任務を上手くこなせるのは間違いない。ただしこの理屈だと部隊の分断化につながり、F-15Xが投入できるのは脅威度の低い空域のみとなる、あるいは高度脅威の場合は追加護衛支援機材の投入が必要となる。現在の空軍が1947年の創立以来最小規模になっていることを考えると、この形では実際的ではない。空軍には高度脅威空域での作戦投入に必要な機材が不足している。このため空軍長官ヘザー・ウィルソンは386飛行隊体制を求めているのだ。空軍には戦闘構想を実施する余力が残されていない。現時点での要求に答える能力自体が不足しているのだ。
第5世代機は広く薄く展開して各種ミッションに投入されそうだ。F-22で戦闘投入可能機材は123機しかなく、F-35では48機に限られるがこれでは一度に二箇所での有事に対応できない。ミッションのサイクルで出撃する機材、ミッション実施中の機材、帰投する機材にわけるとミッションに投入できるのはわずか数十機の第5世代機になる。
複数方面で同時進行で部隊が必要となったり、太平洋のような広大な地区で有事となれば投入できる機数がさらに減る。機材不足のためF-15Xが前線に駆り出されるだろう。同機には大きなリスクとなり、第5世代機投入が早期に必要となるはずだ。中国は統合防空体制の整備を太平洋で続けており、第一列島線から第二列島線までを範囲に収めようとしている。欧州では相当の部分がロシア防空網の脅威にさらされるシナリオだ。F-15X導入への資金分散はこうした大国に好都合な結果を生む。
また今日の空軍は縮小した規模のため戦争損失からの回復力に限界がある。F-15Xが敵地に侵入すれば損失は更に増える。高性能戦闘機材の大量生産は困難だが本当の制約条件は人員だ。パイロット供給が厳しくなっており平時でも不足を補うのが難しい。パイロット養成制度は硬直しており戦時損耗の補充は期待できない。
さらに事態を複雑にしているのが有事対応案で州軍航空隊、空軍予備役も「総合戦力」の一部と想定している。戦略航空戦闘予備役の存在はこの十年間で消滅し現役機材も予算削減で処分されている。時計を逆回ししてこの状況を脱することなどできない。予備航空戦力を機材、人員あわせ再構築する予算はない。次の本質的な疑問が出てくる。州軍航空隊、空軍予備役のパイロットがミッション実施し無事帰国出来るチャンスを減らしていいのか。戦略道義の双方で予備役等にも第5世代機を供与すべきだ。

未来志向になれ
議会の空軍予算要求精査では、「安物装備で戦って勝った国はない」との英航空界の基礎を作ったサー・フレデリック・ハンドレイ・ペイジの言葉を思い出してもらいたい。「節約の余り敗戦になればこんなに高くつく結果はない。可能な限り低予算で空軍活動をまわすのに一番簡単な方法は機材の標準化だがこれでは戦時に使い物にならない」とも述べている。米国が冷戦終結後に享受した安全環境は終了している。ロシア、中国その他イランや北朝鮮の脅威は現実的のものだ。
米国の中核国益のため戦力構造は現実の脅威から決定しておく必要がある。第5世代機の技術がそこまで重要ではないとする向きがあるがそうだとしたら敵対勢力が第5世代機を開発しているからだ。相手側もF-22やF-35の性能は理解しており、匹敵する機材を作ろうとしている。F-22生産を再開してもおそすぎるし、指導層は同機の早期生産停止の誤りから学ぶものがあるはずだ。国防部門トップは技術にこだわるべきであり技術で今後の脅威に対抗すべきであり、過去の脅威を対象にするべきではない。F-15は例がないほどの成功を前世紀に達成した戦闘機である。しかしいまは次世代技術に資金を投入して先に進むべきときである。F-15が成功作だったことは認める。1960年代1970年代に制空戦闘機に必要な投資をして画期的な戦闘機が誕生した。そのまま長年に渡り同機が活躍しているのは同機の性能が重要なせいもある。
ワシントンDCの国防関連企業が第4第5戦闘機のメリットの議論を続けているが、決定的評価を下すのは実際に機体に乗り危険な任務に赴く人たちである。第5世代技術を経験すれば以後はその信奉者になる。F-35パイロットがこんなことを言っている。「5年やそこら前だったら機体は20機30機の第4世代機で敵の新鋭地対空ミサイルへの対応が大変だった。いまは同じミッションをもっと自信を持って実施できる。F-35数機で足りるし、その他の任務も同時にこなせる」現場の声ほど信頼に足る材料はない。上層部は現場の声に耳を傾けるべきだ。
空軍で実際に生命を賭すのは飛行要員だ。敵地に飛ぶ前にF-15XとF-35を選択できればF-35を即座に選ぶだろう。
国家防衛戦略の目的を実現できない装備を導入する余裕は空軍にない。F-35増産を進めるべきで限られた予算を新造とはいえ過去の課題に対応した旧型戦闘機に投じるべきではない。F-15Xで部分的とはいえ価値が生まれるのは確かだが導入すれば空軍全体の機材更新に悪影響が出る。いまでさえ空軍には装備近代化予算が不足している。そこに機材を追加すれば予算の食いつぶしとなり死のスパイラルにおちいるだけだ。F-15Xを導入してもKC-46、B-21、T-XさらにF-35の調達が減れば何の得にもならない。第5世代機による航空優勢確保への努力を薄める余裕はアメリカにない。
2020年度予算の組み直しには遅すぎる。今や議会が監督権を行使し長官官房の圧力でF-15Xを盛り込んだ予算要求を覆すべきである。空軍上層部が毎年72機のF-35調達を堂々と求めることは正しい。今日、明日の脅威環境から必要となる機材はF-35であり、米国は他国の追随を許さない航空戦力の優位性の実現を未来からの視点で進めるべきだ。過去からの延長ではだめだ。■

David Deptula is a retired lieutenant general who flew F-15 in every rank from lieutenant to lieutenant general. He is currently Dean of the Mitchell Institute for Aerospace Studies. Doug Birkey is executive director of the Mitchell Institute and an expert on military aviation.

2019年2月26日火曜日

F-15Xが必要な理由を米空軍退役大将が説明しています

記事を前にF-35支持派等に困惑と疑問が広がっているようですが、以下退役空軍大将の論調には一定の説得力がありますのでご覧ください。一部読者のご指摘にあるようにF-15Xと航空自衛隊はつながりが薄いように思えますが、今後F-15Xが中進国等に普及する可能性もあり、F-15は100年近く供用されるかもしれません。

Why the Air Force (As In the F-22 and F-35) Needs Boeing's F-15X Fighter 
米空軍がボーイングF-15X戦闘機を追加する理由
Unfortunately, today’s fighter force mix, despite increasing numbers of F-35s over time and upgraded F-22s, will likely not be enough to meet future needs. America needs the F-15X. 残念ながら現行の戦闘機ミックスでは将来のニーズに対応できなくなる。アメリカにはF-15Xが必要だ
February 21, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15XMilitaryTechnologyWorldF-35F-22
メリカの安全は航空戦力にかかっている。航空戦力は抑止力の裏付けであり、抑止力が機能しない場合は最小限の犠牲で勝利をおさめる選択肢を政策決定層に提供する。
米航空戦力の中核は戦闘機部隊だ。歴史を見れば戦闘機の開発から独特な部隊構成や戦術が作られてきたとわかる。現在の技術水準や作戦構想 (CONOPs)、戦術・技法・手順  (TTPs)により米戦闘機の戦力は非常に高い水準に上り詰めた。
米空軍には第4世代、第5世代の戦闘機が在籍する。第4世代機にはF-15、F-16、A-10があり高性能かつ部隊の中心的存在だ。第4世代戦闘機は戦闘司令官が投入できる機材の大半で本土防空から遠征部隊まで世界各地で姿を見られる。小規模の第5世代戦闘機にはF-22(187機)とF-35(150機超)があり、少数だが需要は高い。ステルスとセンサー融合技術により各機は最も威力の高く生存性の高い戦闘機になっている。空軍はF-35の年間48機調達をしながらF-22の性能改修を続ける。少数派の第5世代機に多数の高性能第4世代機を組み合わせて運用するのが戦場ニーズに合致していることは証明済みだ。
残念ながら今日の戦闘機部隊構成のままではF-35の実数が増え、F-22が性能改修しても、将来のニーズに対応困難になる。より具体的には、
  1. 現時点の作戦テンポでは戦闘機投入は常に高く維持する必要があるが代替機材がない
  2. 将来投入可能な戦闘機数は今より減るか厳しくなる。F-22や初期型F-35で改修が必要となるためだ  
  3. 第4世代機の整備運用コストは上昇の一途で改修は高費用かつ長時間がかかるため費用は負担に耐えられないほど高くなる
  4. 敵対勢力も第5世代機の探知、捕捉、交戦に必要な技術開発に注力しており、今日の一方的な優位性は維持できなくなる
  5. 第5世代機の機内兵装搭載量に限界がある
  6. 第5世代機調達は製造・予算両面の制約を受け、特に短期的に制約は大きい
  7. 第5世代機の飛行時間あたり経費(CPFH)に比べるとF-15Xは大幅に低いが、第4世代機のCHFHは機体の老朽化に応じ大幅に高くなる
こうした課題の前にボーイングF-15Xを加えることが解決策となる。DoDはF-35のIOC確立と機数増加に注力中だが、ボーイングは史上最も成功した戦闘機F-15の性能と発展性を伸ばしてきた。F-15Xは第4世代機ながら4++といってよくセンサー能力、兵装搭載量、データリンク信頼性、航続距離がいずれも改良されている。さらにF-15Xがあれば第5世代機をステルス機能が不要な任務から外せる。
F-15Xは現時点、将来いずれの戦闘機部隊の制約へ極めて常識的な回答となる。次にその理由10点を述べる。
  1. すぐにでも稼働でき、妥当な価格で搭乗員や整備要員の追加訓練なく活用できる機材だ
  2. 戦場での実績に裏付けされ2万時間の耐久性も実証済みの機体だ
  3. 第5世代機は兵装搭載量が制約されるが、ハードポイント数を増やし大量の兵装を運ぶことが可能
  4. 既存インフラを流用でき新規整備が不要
  5. F-15XのミッションコンピュータはLink 16データリンクに即座に処理、データ受け渡しが可能。これにより敵勢力の欺瞞妨害戦術を減じる事が可能。Link 16ネットワークを利用して友軍・同盟国・協力国の機材とデータの共有・統合・拡大も可能
  6. F-15XのEPAWSS(イーグルパッシブ-アクティブ警戒生存装備)は高性能電子戦(EW)および統合対抗装備(ICS)でF-15Xは単独で残存性を高められる。さらに第5世代機のEW戦術を高める効果ももたらす
  7. F-15Xにより戦闘機数の余裕と能力追加が実現し敵勢力が第5世代機の能力を下げてきても対応可能
  8. F-15Xの性能で戦力構造に選択肢が広がり、CONOPsやTTPsも同様で各種作戦の立案が捗る。敵勢力は対応が困難になるはずだ
  9. 第5世代機は価格で導入できない同盟国協力国にもFMS制度を利用しF-15Xを通じ協力関係を強化できる
  10. F-15Xで戦闘機製造ラインを温存すれば産業基盤を多様化のまま製造能力を維持でき、国家防衛戦略(NDS)が想定する大国、国力が拮抗する敵対勢力の打破に貢献できる
現行の第4第5戦闘機ミックスにF-15Xを加えることは妥当かつ予算的にも実行可能で将来の戦闘機部隊の戦力、活力の維持につながる。これ以上の機種追加は負担できないと主張する向きがある。しかしながらF-15X追加は現行の第4第5戦闘機ミックスが将来も必要な戦闘能力を維持することを意味する。NDSが中国あるいはロシアとの直接対決の可能性が厳に存在するとする中でこれ以外の選択肢はない。■
General Frank Gorenc USAF (Ret.), is a four-star general who served as Commander of Allied Air Command, NATO and U.S. Air Forces in Europe.
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