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2020年3月2日月曜日

米空軍がMQ-9リーパー調達を終了する背景

米空軍がMQ-9リーパー調達を突如終了し、新型無人機調達に切り替えか
これまでジェネラルアトミックスが米無人機生産の中心だったが、戦術面の現実の前にこれも変わりそうだ。

第432航空団所属のMQ-9 リーパーと運行に当たる隊員がネヴァダの夕日の中に立つ。432ND WING PUBLIC AFFAIRS—PUBLIC DOMAIN


空軍の2021年度予算要求でMQ-9リーパー無人機の最終購入24機が盛り込まれている。これまで生産はまだ5年は続くと見られており、363機のMQ-9調達になると予想されていた。突然の変更には深い意味がある。まず、メーカーのジェネラルアトミックスには急な話でありとても歓迎できない話だ。二番目に空軍もやっと無人戦闘航空機の残存性に優先順位を認めたということだ。超大国間の戦闘で無人機にも大きな役割を期待される。 

MQ-9の生産継続に黄色信号がついたのをAir Force Magazineが2020年2月26日に伝えており、ジェネラルアトミックス副社長クリス・パーソンが同社の状況に触れていた。

「突然の生産ライン閉鎖ですが次への展望がないまま、情報偵察部門にも混乱が生まれます。この影響はゆくゆく戦闘の第一線に現れますよ。この機体は訓練用じゃないんです....当社は納入の22ヶ月前からリードタイムの長い部品を手当してるんです....衛星受信機やエンジンとか....政府にも最適価格を提供してきたんです」

サプライチェーンに投資する中で突然はしごを外された格好...生産画境中止になればすぐ影響が出ますよ。雇用にも。解雇やレイオフとなれば新機種を生産しようとしても必要な技能職がすぐ見つからなくなります」

ジェネラルアトミクスにはとても郎報といえない。同社にはリーパー派生型のスカイガーディアン事業もあり、通常の航空交通の中を飛び、40時間連続飛行や高度50千フィートまでの運用性能がある。だが、リーパー生産ラインが閉鎖されれば空軍の遠隔操縦機調達での同社の独壇場も終わりを告げることになる。MQ-9は空軍の戦闘用無人機部隊で中心的存在だ。


GENERAL ATOMICS
スカイガーディアン


また同社はエル・ミラージュに巨大な新設備を完工したばかりだ。新施設には120千平方フィートの大格納庫があり、スカイガーディアン事業のために建設したといわれるが、それだけでは大きすぎる規模だ。


GOOGLE EARTH
ジェネラルアトミックスのエルミラージュ施設。2018年撮影。巨大施設が同社事業所の東端に建設された。
PHOTO © 2020 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION


スカイガーディアンを現時点で発注しているのは英国空軍とベルギーで、オーストラリア空軍も導入の意向ありといわれ、その他数カ国も関心を示している。
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MQ-9では米海軍が2020年度予算で海兵隊向けに2機調達したのがめだち、2021年度にも3機を導入する予定だった。

同時に空軍は委託業者によるオービット、つまり無人機による常時上空飛行の回数も減らす。無人機4機と運用チームによるオービットは現行の70が60に減らされる。


USAF
ジェネラルアトミックス保有の MQ-9が米空軍向け委託事業でポーランドのミロスラヴィエック 航空基地滑走路をタキシー中。2019年3月撮影。

米陸軍向けMQ-1Cグレイイーグルもプレデター・リーパーファミリーの一部で同じく生産が終わりに向かっている。陸軍の調達は2020年度でわずか9機、2021年度はゼロだ。

MQ-9は米国税関国境防備隊も使っており、ジェネラルアトミックスが同機につけたプレデターBの名称をそのまま使っている。NASAでは科学調査用途に二機を運用している。Air Force Magazineでは同社は小口需要にはスカイガーディアンに変更してもらい、1機種の生産に集中することで性能、価格面で効果が生まれると希望しているとのことだ。

今回の米空軍の動きの背景には互角の戦力を有する相手との戦いで機材には十分な残存性が必要と判断していることがある。MQ-9は高性能無人機で兵器「トラック」になるが、低速で、敵防空体制の前に脆弱と指摘されてきた。非国家勢力が相手の場合でも同様だ。

MQ-9に残存性をもっと与えようと空対空ミサイル、電子戦装備、対地攻撃手段まで搭載する案が検討されてきたが、これらを搭載したところで、大国同士の戦闘では同機の性能に限定がつく。 


読者の皆さんはもうご存知だろうが、空軍は自律性能に優れ、高速飛行しながら探知されにくい戦闘無人航空機(UCAVs)の調達を2000年代初期からめざしている。だがステルスUCAVの構想そのものが最初からなかったようにも見える。

構想が極秘のうちに結果を生んでいるのか、中途放棄されたのかは不明だが、いずれにせよ未だに姿を見せていないのは米国の安全保障に大きな影響が出ていることを意味する。


BOEING
ボーイングX-45Cが当初大いに期待されながら採用されなかったのは、別の極秘機の性能がさらに先を行っているため、あるいは空軍がそもそも開発を取り消したためか。

米国の敵陣営も技術開発を続けている。地政学の要因と戦闘の様相が変化していることから空軍もついに残存性が高い戦闘無人機の開発に乗り出すことにしたようだ。ジェネラルアトミックスもこの変化に気づいており、次世代機の開発に乗り出しているようだ。

「MQ-9が現時点の機材なら、次世代機はもっと厳しい空域でも生き残れる機体にないrますよ。まだ正式要求はでていませんが、当然でてくると予測して手をうつことになります」とパーソンも語る。

Air Force Magazineによればパーソンは新型機構想があるのか明白に述べていないが、同社のQ-11つまりプレデターC別名アベンジャーより新しい構想になると述べている。


GENERAL ATOMICS
プレデターA、B、Cの各型。それぞれ、プレデター、リーパー、アヴェンジャーの名称もつく。 

アヴェンジャーは2009年初飛行しており、機体サイズが大型化しながら低視認性(ステルス)も兼ねそなているが、大口顧客の関心を集めていない。数機がアフガニスタンやシリアに投入されている。その際の評価は不明だが、残存性の高さが有効に活用された作戦があったようだ。

Q-11の運用面は極秘情報扱いだ。一部機材が中央情報局関連で運用されているようだ。アヴェンジャーの性能でも優秀な装備を運用する互角戦力を持った超大国相手では不足するので、ジェネラルアトミックスはアヴェンジャーを大幅に超えた新型機を登場させるようだ。

他方で消耗品扱いを覚悟すれば安価に調達できそうだ。低価格には魅力があるが、それでもある程度残存性があるのなら有人機との共同作戦に投入できそうだ。有人機を高高度高速飛行可能で長距離をカバーする兵装とセンサーの「トラック」にする。同社が次回に提示する新型機がこのすきま解決手段となるかもしれない。



USAF
重武装したMQ-9 が海外で運用されている。

ジェネラルアトミックスは海軍向けのMQ-25空母運用空中給油機(CBARS) の受注を逃したが、これまでの主力製品の調達をDoDが中止すれば、再度この分野の事業を立て直す必要がが出てくる。遠隔操縦機による戦闘作戦は同社が作ったと言っても過言ではない。このまま競合他社を前にしながら同社が姿を消すとはとても思えない。ロッキード・マーティンクレイトス他はこの機会を逃さないだろう。そこで同社が建設したエル・ミラージュ施設で機密性の高い事業が展開されるのではないか。

空軍がリーパー調達を打ち切りたいとしても議会承認が必要な点が重要だ。MQ-9各機は今後数十年にわたり重要な任務につく。

いずれにせよ、空軍の遠隔操縦機の重要な機種で生産が終わるというのはステルス無人航空機ほか残存性が高い機材の調達に空軍が本腰となったことを意味するのだろう。


この記事は以下から再構成したものです。
Abrupt End Of Air Force MQ-9 Reaper Buys Points To New Focus On Survivable Drones
General Atomics has supplied the backbone of America's drone force for decades. Now that may be ending due to stark tactical realities. 
BY TYLER ROGOWAYFEBRUARY 27, 2020
THE WAR ZONE

2018年7月2日月曜日

大西洋横断飛行に挑戦するMQ-9Bスカイガーディアン

MQ-9B SkyGuardian to Highlight Endurance With Trans-Atlantic Flight MQ-9Bスカイガーディアンが大西洋横断飛行で長時間飛行性能を実証へ


General Atomics’ MQ-9B SkyGuardian (Photo: General Atomics Aeronautical)
General Atomics’ MQ-9B SkyGuardian (Photo: General Atomics Aeronautical)

Military.com 26 Jun 2018 By Oriana Pawlyk

高度飛行用MQ-9Bスカイガーディアン無人機が初の大西洋横断飛行に挑戦する。これは7月のロイヤルインターナショナル・エアタトゥーに参加するためとメーカーのジェネラルアトミックスが発表した。

同社によれば遠隔操縦機(RPA)のスカイガーディアンは同社のノースダコタ州グランドフォークス飛行テスト施設から英国フェフォードRAF基地へ飛行する。

「RPA長距離飛行で新標準を示したい」と同社CEOリンデン・ブルーLinden Blueが述べている。

「RAF100周年に当社としてRAFのイノーベーションの戦闘を走る姿をこのフライトで祝いたい」

MQ-BとはジェネラルアトミックスのプレデターB型の派生機で海洋情報収集・監視偵察型のシーガーディアンの最新型だ。RAFはスカイガーディアンを導入予定と同社発表にある。

スカイガーディアンは最近のテストで連続48時間フライトに成功し、予定の40時間を上回った。

MQ-1プレデターやMQ-9リーパーとの比較ではMQ-9Bの時速は240マイルで損傷や悪天候に耐える設計となっており、飛行制御ソフトが一層強化されたのが特徴だ。

その一環でバードストライクや落雷でも飛行可能だ。

同機は英国航空当局や米連邦航空局の要求水準に合致しており、今後はNATO標準型式証明取得をめざす。

「型式証明取得は衝突回避システムの強化とともにあらゆる民間空域での無制限飛行に道をひらくことになります」と同社は発表している。■

-- Oriana Pawlyk can be reached at oriana.pawlyk@military.com. Follow her on Twitter at @oriana0214.

2017年8月20日日曜日

リーパー訓練基地を米空軍がメディアに公開した


いいな、こんな機会があって。こっちも見てみたいですが、どこまで現実に感じられるでしょうか。ドローンという表現は無人機(英語では人=男性)の言葉を嫌ったヒラリーが意図的に使ったことばで米空軍では一貫して遠隔操縦機と正式に読んでいます。ヒラリーが落選してもドローンはまだ残っていますね。当ブログではヒラリーが嫌いなこともありドローンの表現は使っていません。航空自衛隊は大型のグローバルホークをまず導入し、プレデターは使わないのでしょうか。朝鮮半島攻撃用に使い勝手のいい機材のはずですが、運用態勢の整備が大掛かりですぐには間にあわないでしょうし、パイロット頂点としたヒエラルキーにひびが入るのは組織上抵抗があるのでしょうか。今は遠隔操縦ですが、自律飛行の機種の登場も待ったなしで悠長なことは言ってられないのですけどね。

ニューメキシコの澄んだ青空から飛び出したMQ-9リーパーがホローマンAFBにいる記者の頭上を通過した。

Don’t Fear the Reaper: A Rare Look inside Remotely Piloted Aircraft Operations at Holloman Air Force Base 

リーパーを運用するホローマン空軍基地内の遠隔操縦機の運用状況を視察する貴重な機会を得た


 Aug 17 2017 - By Tom Demerly

 

  1. 何も聞こえなかった。雲一つない明るいニューメキシコ砂漠上空にバス車内からきらりと光るものが一瞬見えた気がした。もう一度眺めてみたが何もない。音もない。空には何もなかった。するともう一度光るものが見えた。今度は場所が分かった。だが遅すぎた。リーパーはすでに頭上にいた。
  2. ジェネラルアトミックスMQ-9リーパー戦闘航空機の飛行する様子は初めて見た。この経験はジェット戦闘機の雷鳴のような飛行、ターボプロップのうなりとは別格だ。わずか900馬力のハネウェル製ターボプロップの回転音はおもちゃのようだ。米軍装備で最高の威力がある機体の動力とは思えないほどだ。
  3. ホローマンAFBはニューメキシコにあり、米空軍第49遠隔操縦航空機(RPA)飛行団の本拠地だ。同隊には第6、第9、そして特徴ある第29攻撃飛行隊があり、MQ-9リーパー遠隔操縦機材の新規パイロット養成学校としてリーパー運用に必要なパイロット二人体制の初期資格につながる訓練を行う。第29攻撃飛行隊(ATKS)はMQ-9飛行要員の養成機関として全米唯一の存在と言われる。このため同隊は高い需要に対応している。
  4. 遠隔操縦機は誤解の対象となってきた。「ドローン」のフィクションや人的制御を離れて勝手に作動するとの危惧からだ。リーパーのような遠隔操縦機にフライバイワイヤで操縦する有人機以上の機能があるわけではない。
  5. 敵側が遠隔操縦機に電波妨害や制御を乗っ取りをしかける数少ない例が2011年12月に発生し、RQ-170センティネル遠隔操縦機をイラン軍が捕獲している。この事件は極めて異例で有人機のハイジャック(9/11米国襲撃事件など)のリスクの方が高い。
  6. 通信の保安措置により機体と飛行要員の接続状況は高度化し常に改良されている。遠隔操縦機が破壊されても操縦要員の生命に危害はない。この例が2009年のアフガニスタンで発生し飛行中に機体制御不良を起こした遠隔操縦機が米軍機により破壊されている。
  7. 先週のことTheAviationist.comはメディア向け視察の招待を受けてホローマン基地のRPA訓練運用施設を目にすることができた。同訓練校ではジェネラルアトミックスMQ-9リーパー各型を使い、プレデター運航要員の訓練を主に行っている。
ホローマンAFBで訓練ミッションに使うリーパー各機の遠景。

  1. 施設内見学では要員が各自の名札に半透明テープを貼り保安対策していた。訓練では現実世界を想定していた。プレデターパイロット向け訓練で正式な資格を取得したあとわずか37分後に実弾を戦闘地区内の実際の標的に向け発射すると教官が述べている。ここまでの戦闘即応度は現在の多術航空作戦で他に例がない。
氏名をテープで隠した米空軍MQ-9リーパーのパイロットがホローマンAFB上空を飛行する機体からのビデオ画像を説明してくれた。.
  1. プレデターの運用要員と機体は保安体制の上に保安措置を講じたニューメキシコ遠隔地の背後に配置されている。遠隔操縦機の投入で展開時間は限りなくゼロにちかづくため、ホローマン基地内の制御用コンテナにいると戦闘地区の前線滑走路の上に立つのと同じだ。
MQ-9機首下のセンサーボールの中に各種光学センサー、カメラが収まり、飛行要員んに飛行運用の様子を伝える

  1. ブリーフィングでは光学センサーや飛行制御計器のコックピット用画像情報が実際の飛行中機体からモニターに写されていた。軽飛行機のように見えるが実はステルスの戦闘航空機MQ-9プレデターなのだ。見ているとMQ-9は着陸アプローチ訓練をしており、パイロットの飛行制御入力に機体が反応する様子がわかった。これは実は高性能軽戦闘航空機なのだ。
MQ-9リーパー遠隔操縦機の「コックピット」を見るのは貴重な機会
  1. 2017年3月に米空軍ダリル・ロバートソン中将が空軍協会主催航空戦シンポジウムの報道円卓会議で「米空軍ではMQ-1プレデターやMQ-9リーパーの任務が他機種より多くなっている」と語ったとウェブサイトMilitary.comが伝えていた。
  2. 遠隔操縦機の運用拡大とあわせ飛行乗員の需要が高まることから第49飛行団が多忙な拠点になるのは当然だろう。■
運用上重要であることを反映してリーパー制御コンテナまわりの保安体制は厳重だ。