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2021年9月10日金曜日

JDAMで対艦攻撃が可能となった。第四世代戦闘機にさらなる攻撃力が生まれる。中国海軍をにらんだ安価な攻撃方法を目指す米空軍。

 


 

GBU-31

F-15Eストライクイーグル三機が第85試験評価飛行隊からQUICKSINK共用性能技術実証テストに投入された。 Aug. 26, 2021. (U.S. Air Force photo by 1st Lt Lindsey Heflin)

 

GBU-31の試射で共用直接攻撃弾を「移動中並びに静止海上目標」に投入する道が開いた。

 

第85試験評価飛行隊のF-15Eストライクイーグル3機が2,000ポンドGBU-31JDAM改修型のテストを2021年8月26日に実施した。

 

実施した第53航空団は空軍研究本部(AFRL)とともにF-15Eで改修型GBU-31運用の戦術、手順を編み出し、移動海上目標、静止海上目標の双方に試した。テストの目的は「空中発射弾を艦船に向け発射し、これまでの対艦攻撃の体系を変えること」だったという。

 

「大型で航行する艦船へ空軍は2,000ポンドレーザー誘導式GBU-24を主に使っている」と同飛行隊のウェポンズシステム士官アンドリュー・スワンソン少佐が説明している。「ただし、同装備は理想的と言えないだけでなく、運用機の生存性を下げてしまう。そこで今回はこれを一新できるか試した」

 

JDAMは誘導式空対地兵器で各種弾頭に変更できる。2,000ポンドのBLU-109/MK 84、1,000ポンドのBLU-110/MK 83あるいは500ポンドのBLU-111/<K 82を装着できる。誘導では尾部の制御機構とGPS式のINSを使う。航法制御では位置、速度ベクトルを機体から与える。

 

米空軍が公表したGBU-31の写真はGBU-31(V)1/BのようでMK-84に誘導キットを装着している。広報資料にある「修正」について興味深い点がある。JDAMで「移動海上目標」を攻撃する方法だ。というのはJDAMはレーザー誘導方式ではないためで、(ただし後で述べるレーザーJDAMは別にある)もともとは固定静止目標を念頭に開発されたからだ。

 

第85試験評価飛行隊は空軍研究本部とともにF-15Eストライクイーグルに改修型2,000ポンドGBU-31JDAMを搭載した。テストの目的は空中投下爆弾で艦船攻撃を可能とし、対水上艦攻撃の体系を一変させることにあった。

(U.S. Air Force photo by 1st Lt Lindsey Heflin)

 

 

LGBs(レーザー誘導爆弾)を水上航行中の目標に投入するシナリオは以前からあるが、LGBのシーカーヘッドは悪天候、霧、煙などに影響を受けやすい。そのため効果が減少しかねない。また内部シーカーで標的を追尾する設計だが、レーザーで照準を合わせる。赤外線が主に使われ、正確な軌跡で目標に向かう。

 

同兵器の飛翔経路は光に沿うもので、標的自体ではない。そのため標的を別光源で照射する必要がある。地上部隊や、攻撃機が搭載するポッド、あるいは別の支援機が必要だ。一部のLGBではバックアップのGPS誘導が使えるが、GBU-31ではGPS座標と標的座標を自動的に参照して誘導する。

 

標的座標は離陸前に機体にロードする。その後乗員が発射前に手動調整する。あるいは機内センサーを介し自動修正する。もっとも正確なモードを使えばJDAMは誤差5メートル以内で命中する。この場合はGPSデータが使えることが条件だ。だがGPSが妨害された状況では誤差が30メートル以内になる。

 

レーザーJDAMはレーザーシーカーを先端につけ、JDAMで移動目標対応を可能とするものだ。GBU-56(V)2/BではMK-84 2,000-lb爆弾とDSU-40/Bセミアクティブレーザー(SAL)とKMU-556/B誘導装置を組み合わせる。

 

いずれにせよ、第53航空団が行った昨年テストではB-52HストラトフォートレスがJDAM数発を投下して水上攻撃の効果を試したが、今回のテストはQUICKSINK共用性能技術実証として実施され、低コストで魚雷同様の対艦攻撃能力を実現するのが目的だ。米海軍潜水艦なら魚雷一本で敵艦を撃破する能力があるが、発射により自艦の位置を露呈してしまう。■

 

F-15E Strike Eagles Tested Modified 2,000-pound GBU-31 JDAMs On Maritime Targets

September 2, 2021 Weapons

DAVID CENCIOTTI


2019年5月2日木曜日

4月30日、F-35Aが初の攻撃ミッションをイラクで実施



USAF F-35As Flew First-Ever Combat Strikes With Radar Reflectors And Sidewinders Fitted 米空軍F-35Aが初の実戦攻撃任務を実施 レーダー反射板とサイドワインダーミサイルを外部装着

The F-35As flew in a less than stealthy configuration as the aircraft's low observable capabilities weren't needed—at least not yet.

サイドワインダー等を搭載しステルス性を犠牲にしたのは必要がない状況だったため


BY TYLER ROGOWAYAPRIL 30, 2019


KC-10 supports F-35A's first air interdiction
U.S. AIR FORCES CENTRAL COMMAND—PUBLIC DOMAIN


空軍所属のF-35Aが初の兵装投下をした。UAEのアルダフラ航空基地を離陸したF-35Aの2機編隊は2019年4月30日イラク上空に到達し、GPS誘導方式の共用直接攻撃弾JDAMをISISの武器貯蔵地下トンネルがあるハムリン山地に投下した。この施設は連合軍に危険な存在でISISの再生の鍵になると見られていた。
388戦闘航空団、418戦闘航空団の所属機が今回投入されユタのヒルAFBから2019年4月15日に中東に移動していた。中東へのF-35A配備は今回が初めて。イスラエル、USMCがともに中東でF-35I, F-35Bをそれぞれ戦闘投入しているが、今回は9月以来初の戦闘投入になった。
第4戦闘飛行隊司令ヨセフ・モリス中佐がUSAF公式発表を以下伝えている
「相当の量の情報を収集、融合、共有し各機の残存性と戦力を高めている。...F-35Aは各所にセンサーを搭載しており、高性能レーダーがあり、戦闘地点の情報をリアルタイムで全て収集し融合できる。さらに集めた情報を僚機のF-35のみならず第4世代機と共有できる。...低視認技術がここに加わり統合軍部隊を補完し、AOR緊急事態の支援を常に行える」
USAF
KC-10から今回の戦闘任務で空中給油を受ける。AIM-9Xがパイロンにつき、レーダー反射板が垂直尾翼前に見える。


以上は正しいとは思うが今回の生来の決意作戦での戦闘ミッションではF-35は低視認(ステルス)性能を使用していない。今回の機体にもAIM-9X空対空ミサイルを主翼パイロンに装着しており、機体上部と下部にレーダー波反射装置をつけていた。この状態だとレーダー上で大きな姿をさらけ出すがイラクのような戦場では低視認性に大きな意味はないのでこれでいいのだ。
F-35Aを非ステルス機で運用すればAIM-9Xの外部装着も当然だろう。米軍戦術機が自機防御のためサイドワインダーを搭載するのは普通のことでアフガニスタンのように危険度が低くても搭載している。F-35はAIM-120AMRRAM二発を機内兵装庫に搭載できるが、視程内空戦ではAMRAAMはAIM-9Xの性能にかなわない。
非ステルス仕様でF-35を飛ばしたわけだがシリア上空への展開やこれまでF-22が果たしてきた「クォーターバック」任務をこなせば状況は変わるはずだ。完全低視認性の状態が必要になるのはロシアのような大国への投入時で最高性能の防空電子装備が配備されている空域への突入時で、相手方も同機の低視認性能を探ろうと躍起になるはずだ。ただし同じロシアでも東側となればここまで深刻な状態ではなくなる。
USAF
今回の中東ミッションでKC-10と並行して飛ぶF-35A編隊。AIM-9Xが主翼翼端パイロンについていることと機体下部のレーダー反射装置が視認できる

事実、対戦闘員攻撃ミッションでのF-35Aの威力はF-16より劣る。電子光学式標的捕捉装置EOTSを機首に装着しているがすでに15年前の技術であり、最新のスナイパーやライテニング照準ポッドをつけた第4世代機より見劣りがする。F-35のEOTSは実施未定のブロックIV改修で性能向上される予定で、ソフトウェアと一部部品を交換する。
USAF


ではF-35に高性能版のスナイパーポッド搭載が当面の近接航空支援任務や戦闘員掃討作戦で意味があるのではないか。今回の初の実戦任務でF-35Aは事前設定標的をJDAMで攻撃したが、これならEOTSを使うまでもない。今後も投入が続けば同機が航空支援に使えるかがわかるが、非ステルス仕様で飛ぶのなら第4世代機で威力のある照準ポッドを使うほうが理にかなっている。
つまりF-35を投入するミッションはステルス性能が不要な場合が大部分だということだ。そうなると共用打撃戦闘機の海外展開では外部兵装搭載の形で飛ぶ事が普通になりそうだ。

とはいえ、今回の任務達成はUSAFやF-35事業には大きな出来事になり、運に恵まれればF-35の中東での活躍ぶりを眼にすることも増えそうだ。ただしそのためには同機が現地の戦況に適合しつつミッションテンポが上向きになる必要がある。■