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2016年10月29日土曜日

主張 クリントン当選を期待する国の存在がトランプへの一票を正当化する



報道界が必死になりクリントン優勢の機運を盛り上げてきたにも関わらずここに来てもクリントンのリードはごくわずか、というのは投票日当日に大きなどんでん返しがあっても不思議ではないということで、最初からクリントン優勢と信じ込んでいる向きには不安な気持ちが広がっているでしょう。
 20世紀政治の延長を選ぶか、21世紀になりあらゆる点で見直しを図るのかの選択で、米国からの便宜供与を受けている既得権層が自らの存続をかけ必死になるのは理解に堅くありません。
 果たしてその期待どおりに進むのでしょうか。


The National Interest


Foreigners Want Hillary Clinton for President: A Good Reason to Vote for Donald Trump

October 28, 2016


ヒラリー・クリントンは世界の大統領候補なのか。ある見出しは「世界はクリントンに期待」とある。

  1. 背景には醜悪とも言えるドナルド・トランプの大衆迎合主義がある。ただしアメリカだけの話ではない。フィリピンのロドリゴ・ドュテルテはトランプ以上に「トランプ的」である。ヨーロッパにも大衆の受けを狙った政党が乱立しており、一部政権に参画しているものもあれば次回国政選挙で政権奪取を狙う党もある。マリヌ・ルペンが大統領となればトランプよりも過激になるだろう。

  1. だがもっと大きな懸念事項は世界各国を支援する超党派政策をトランプが継続するとは思えないことだ。第三世界では米財政支援に頼り切る国が多い。トランプは「対外支援」の用語を口にしておらず、米国から雇用を奪い不法移民を流入させるような国には資金提供を打ち切る可能性が高い。

  1. 西側の経済援助が各国の開発に大きな貢献をしたと証明することは難しい。被援助国エリート層は恩恵を受けているが、豊かな国の貧困層から資金を調達したのが対外援助の本質で貧しい国の富裕層を肥やしているといわれてきた。その恩恵を受けてる側はアメリカにこのまま継続してもらいたいと考えている。

  1. もう一つ重要なのは米政策により先進国ほぼすべての国防が恩恵を受けていることだ。ヨーロッパ各国の経済規模、人口は全部合わせればいずれも米国を上回るのにワシントンが各国の防衛の盾を提供するのを当たり前に思っている。各国は軍備支出を節約し、福祉政策を賄っている。トランプが大統領になれば各国首脳は都合の良い政策を継続できなくなる。

  1. あるヨーロッパ関係者がニューヨーク・タイムズに語っている。「トランプが当選したら皆が困るんですよ」 フィナンシャルタイムズによればヨーロッパ各国大使館にはトランプ当選の場合の影響を探るよう指示が来ている。フランス大統領フランソワ・オランドは社会主義者であり他人の金を使うことが信条で、トランプには「吐き気を感じる」とまで発言している。

  1. 既存ヨーロッパ西側諸国には脅威はさほど大きくないが、東ヨーロッパにはロシアの脅威がひましに増えているのに西側の隣国は対応していない。そのため各国とも米国の救援を期待している。バラク・オバマ大統領はウラジミール・プーチンの謀略へ反応してきた。オバマ政権が各国に「再保証」を伝えたので、各国は米国からの支出増要求を無視して良いと理解している。ワシントンがいつも穴埋めしてくれならこちらの期待どおりに動く政治家などいない。

  1. アジアでも状況は大差ない。日本と韓国は米国の防衛約束を権利とみなしている。日本が世界第二位の経済規模を誇っていた間もそのままだった。たしかに日本が自国権益の保護のために自ら不利益を被るとは期待できない。これはアメリカの責務だ。

  1. 韓国の状況はもっと厳しい。韓国は北朝鮮に対しGDP40倍、人口でも2倍の規模だ。にも関わらずトランプは韓国が米軍の恩恵でぬくぬく暮らしており、その恩恵に値する費用をアメリカに返金すべきと主張し韓国報道界から一斉に反感を招いた。韓国左翼勢力も自国で大幅軍備増強をする必要はないとの主張では右派と同一意見だ。

  1. ごく最近までフィリピンは中国への対抗のため米国支援を取り付けるのに必死だった。フィリピン海軍は中国に対抗できない。そこでフィリピン政界は一致して米国をひきつけ米軍の力を借りて中国に対抗していこうとしてきた。デュテルテ大統領は全く違う姿勢を示しているが、中国寄り政策を任期満了まで継続できないだろう。

  1. 外交当事者にとって米国が国防で手を貸さない世界は想像がつかない。ニューヨーク・タイムズ記事では米選挙を目にしたヨーロッパに「静かなる絶望感が底流にあり」とし、「NATO加盟国間にとくに失望感」があるとの見方を示す人もいる。米国への依存度は「なみなみならぬ規模」とドイツ大使ピーター・ウィティッグは述べている。

  1. Die Zeit のジョセフ・ジョフェは「仮にトランプ大統領がNATOを解体すれば、いきなり寒風に晒されたヨーロッパ各国はロシアと和睦に走るだろう」と考える。代替策はある。ヨーロッパ各国が防衛支出を増額するのだ。だがジョフェはその可能性は検討に値しないと考える。これはヨーロッパ全体でも同じだろう。つまるところ、ヨーロッパは防衛はアメリカの責任と見ているのだ。これは変わらない。

  1. オバマ政権もクリントン候補の選挙運動もともにヨーロッパに対してアメリカはこれからも責任を果たすと述べており、とくに現政権はアメリカ自身より主要同盟国を重視している観さえある。端的に言えばアメリカは自らの防衛に悩みたくないヨーロッパ各国を甘やかす政策とはきっぱりと決別すべきだ。

  1. ジュリアン・スミスはクリントン選挙対策本部内部でクリントンが民主党全国大会で述べた「ヨーロッパ再保証」の主張を起草している。民主党副大統領候補ティム・ケインは共和党がNATO各国を「見捨てる」と非難している。マデリン・オルブライト元国務長官はトランプの恐喝で「友好国同盟国が離れる」と不満だが、施しに頼り切るよりもはるかに成熟した国の行動なのだ。

  1. 民主党全国大会でヨーロッパ各国が「安堵した」とニューヨーク・タイムズが書いたのはいかにもという感がある。イタリア外交団のひとりが同紙に「従来どおりの政策になるとわかった」とアメリカが各国の権益を今後も守ると示唆して、クリントン当選となれば世界は安心できるという。特にアメリカ軍の奉仕に頼り切った各国は安堵するというのだ。

  1. もちろんドナルド・トランプに反対票を投じる理由は数々ある。だがアメリカ納税者は同候補への一票で世界各国の恩恵を重視する勢力の期待を崩せる。

  1. 当選してもトランプがどんな大統領になるのか今は誰もわからない。同盟各国に防衛費用を請求するのは良い考えではない。米軍は傭兵ではない。にもかかわらずトランプは問題の本質を捉えている。防衛能力を整備できる国や地域はその通り実施すべきだ。全部が米国政府の責任ではない。

  1. バルト海で危険が叫ばれるとなぜいつもまっさきにワシントンが人的資源では困らないヨーロッパ大陸に先駆けて部隊を急派することを期待されるのか。なぜ米国が韓国の防衛に責任を有さなければならないのか。韓国政界は北朝鮮と同等の軍備整備を想定ていない。なぜ日本が攻撃下の米艦船を防御する方針をやっと昨年に決めたのか。もともと日本が攻撃を受ければ真っ先に対応するのが米軍である。中東でも同様でサウジアラビアはじめ湾岸諸国はイランよりはるかに巨額の防衛予算を執行しつつ米軍にはシリア、イエメン内戦に関与させ続けるのか。

  1. 米国民は投票に際して米国権益につながる一票を投じるべきであり、世界のための投票ではない。各国が好む候補があるということ自体その候補に投票しない強い理由になる。ワシントン政界が各国を念頭に置くのは結構だが、そもそも誰のために奉仕すべきか忘れてもらっては困るのである。  ■  
                                                             
Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute and a former Special Assistant to President Ronald Reagan. You can follow him on Twitter: @Doug_Bandow.
Image: Creative Commons/Flickr User Gage Skidmore.



2016年6月27日月曜日

ブレグジットとトランプ:なぜエリート層はショックを受けているのか



Why Do Brexit and Trump Still Shock National Security Elites?

Donald Trump supporters at a campaign rally at the Greensboro Coliseum in Greensboro, N.C., Tuesday, June 14, 2016.
BY KEVIN BARONEXECUTIVE EDITOR, DEFENSE ONEREAD BIO
8:29 PM ET
ブレグジットで判ったこと:結局、耳を傾けず、理解せず、意思疎通せず、説明もしていない。

LONDON – 6月23日の出来事を追っていただろうか。ブレグジットは関心を引いただろうか。この記事をご覧の皆さんは国家安全保障専門家あるいは外交政策にご関心の向きだろう。国民投票結果に恐れを感じ、トランプ候補のメッセージにも脅威を感じるのなら、大衆に非を求めるのはやめてご自分のことを考え直した方がいい。
  1. こんなのはいかがだろうか。もう一度各種記事を読んで米国人、英国人が安全保障の専門家知見から距離を置く理由を考えてほしい。その次にこのブログを閉じて周りの人に説明してほしい。どんな仕事をしていてどれだけ重要な仕事なのか。またその政策実施がどれだけアメリカを再び偉大な地位につけられるかを。これはトランプが実行していることだ。トランプは市井の人々を巻き込んでいる。あなたはしていない、あるいはしているつもりでも十分ではない。
  2. ロンドンでこの四月にアスペン安全保障フォーラムがあり、参加者のほとんどがEU離脱に反対の上、離脱の可能性はないとしていた。なぜ英国が世界規模の安全保障、情報利用の機会を放棄し再度自国で作り上げる必要があるのか。ブレグジットに一票を投じるのは自分の顔から鼻を切り取ることではないか。(鼻とは法執行、情報活動、軍事保安作戦の総称だ)
  3. ワシントンの国家安全保障専門家のほぼ全員がドナルド・トランプを最高司令官とすることに反対している。共和党指導部でさえトランプの安全保障観を憂慮している。イスラム教徒への態度、イスラム国へ核兵器投入を許容する姿勢であり、NATO解体もある。先週もネオコンの長老ロバート・ケイガンがヒラリー・クリントン支持に回り、保守派著述家のマックス・ブートもロサンジェルスタイムズ紙上でトランプに苦言を呈している。
「トランプは傲慢な扇動家で人種差別、女性蔑視、陰謀論へ誘導を図っている。貿易保護主義や孤立主義の第一人者だ。だがその考え方が大恐慌と第二次大戦につながったのを忘れてはならない。警察国家さながらに不法移民の一斉取り締まりを望み、イスラム教徒の入国禁止を主張する。支持者に反対勢力を襲うようけしかけ、批判勢力には訴訟や中傷をそそのかす。日本や韓国を見捨てて史上最高の同盟のしくみNATOを解体すると公言。その発言はまるでウラジミール・プーチンのような独裁者の観がある。
「ここまで不適格な候補者が大統領選に党大会で推挙された例は米史上にない。トランプ当選のリスクこそ米国にとって最大の国家安全保障上の脅威だ」

  1. まだそこまでいっていない。トランプは生きており、ブレグジットは起こった。
  2. 「トランプ現象とブレグジットは類似している」とスティーブ・カル(メリーランド大公共政策研究所長)は指摘する。「共通するのは利益を感じられない政策が決められているとの国民感情だ」としさらに「選択の絞り込み作業が民主的でないし、公共の利益の方を向いていない」ため国民の意見を反映していないとする。「そこで国民はトランプかサンダースかの選択に向かう」と政策こそ全く反対方向だが反体制派として共通する両候補に言及している。
  3. 言い換えれば、国民は政策に反対しているのではない。一度も意見を聞かれなかったことを問題視しているのだ。そもそも政策決定の仕組みに組み込まれていないのに負担だけ求められていると国民は感じている。エリート層はアメリカを世界を導く国にしておきたいと国民は感じとっており、意見を聞かれない間にグローバリゼーションは税負担増や歯止めのない移民受け入れ、国境警備の形骸化、失業、その他あらゆる不平不満につながると見ている。読者の中にはこれは孤立主義であり誤った主張だと一蹴する向きもあるかもしれない。
  4. 「国民の動向を孤立主義と片付けるのは正しくないでしょう。アメリカの特別視に反対しているのです」とカルは述べる。
  5. トランプへ票を投じる層はブレグジット同様に国粋主義の最右翼であり良き時代のアメリカが戻るのであればアメリカの力を一部放棄してもよいと考える。カルによれば調査対象のグループで「世界秩序の名のもとにあまりに多くの服従を強いられている」とか「本来より高い負担を強いられている」との主張が繰り返し見られるという。また「外交政策のエリート層の理想、アメリカの支配に対する自信過剰、強迫観念が結果高い出費につながっている」とも聞こえてくるという。
  6. 政界は今こそ目覚めるべき時だ。
  7. ご自分の国家安全保障観が正しいと信じるのであれば、国のためになっているということであり、全米有権者を納得させることができるはずだ。白書、会議、政策サミットなどの手段でワシントンなら有権者向きの仕事ができる。だがワシントンを一歩出ればだれも皆さんに耳を傾けない。国民に接触する方法が見つかれば国民の考えも変わるかもしれない。もっといいのは何もしないことだ。
  8. クルの調査チームは複雑な外交問題を一般大衆に尋ねても回答はほとんど無意味だと突き止めている。だがもし国民を教育すればその判断はエリート層の考えと同様になるとも判明している。クルは「市民内閣」を八州で組織し合計7千名を作業チーム同士の論争に参加させたところ良好な成果を得ている。
  9. 「参加者に争点を説明し、賛否の主張をすべて解説して総合的な観点で提言を求めた」のをTPPのような複雑な問題に応用した。その結果、クルによれば参加者は「実にうまく扱えること」ができたという。
  10. またこの手法を応用すれば真の世論の抽出に非常に有益だという。例としてイラン核交渉がある。クルによれば世論調査では「首尾一貫しない」回答が出ている。質問文を一言を変えるだけで回答結果は大きく変化したが、市民内閣で有権者は政策選択結果を信頼することが判明したという。
  11. この手法ならエリートがすべて決めているとの見方を解消できるのではないか。クルによればTPPでは「企業の利益の名目で中間層に犠牲を求めるのだから企業にとって都合のいいことに反対だ」との声があり、移民問題では米エリート層は低賃金労働で企業に利益を生み出す政策を作っているが、勤労家庭には益がない。だが一般国民に政策の背景を説明すれば、他国との協力も受け入れ、国連の仕組みを尊重し、他国が負担増を受け入れるのであればアメリカ第一の考えも一部放棄してもよい」と考えるようになるという。「トランプはこの手法を使って、有権者に話しかけている」とクルは述べている。
  12. たしかにそうだ。トランプは朝令暮改さながらに英国国民投票についての意見を変えている。「これは英国のヨーロッパ連合からの独立宣言であり、政策、国境、経済で主権を再び回復したのだ。来る11月には全米の有権者にも独立を再宣言する機会がやってくる。有権者は貿易、移民、外交それぞれで一票を投じることができ、国民第一が実現する。今あるルールは世界のエリート層がつくったがこれを白紙に戻し、国民の国民による国民のための政府を実現する機会がやってくる」
  13. お分かりだろうか。トランプは米国民に参加を求めているのであり、有権者には政策云々よりもこちらの方が重要なのだ。
  14. 「トランプの外交政策に有権者がそのまま賛成しているわけではない。アメリカ第一の姿勢は孤立主義の様相を秘めている」とクルは指摘する。「有権者はそれ以上を期待している。参加を望んでいるが、現状のやり方には満足していない。微妙な点です」
  15. 一部は可能だろう。今週末にTruConがある。毎年恒例のワシントンでの会合でトゥルーマン国家安全保障プロジェクトのメンバーが全国から集まり、政策目標を論じ、その後各地に戻り、リベラルより左寄りの外交、安全保障その他の政策を広めるのが目的だ。参加者はおよそ1,500名で次世代の公職者他指導層に福音を伝えるエリート層だ。左翼右翼を問わず国家安全保障問題を国民各層に伝える機会があることはいいことで、共和党OBのネットワークからかい離できるはずだ。だがそれだけでは十分ではない。
  16. もっと有益なネットワークがある。米軍である。軍が隊員勧誘に大金を使うのは理由がある。高校でのROTC勧誘、NASCARレース場、NFLの会場さらに全国各地の入隊勧誘事務所を通じ米軍の姿はどこでも見られるアメリカ精神を形作っている。これを安全保障でも行えないか。
  17. 全米児童は米政府の仕組みを学ぶ。だが米国のグローバルなリーダーシップを学ぶ機会はどこにもない。時事問題、外交政策、国際関係、世界のしくみ、NGO、中東問題、中国の台頭、経済問題、地球気候変動、海外市場、外交、外国の言語文化、限りなくリストはひろがるがすべて学習の必須項目に入っていない。
  18. クルの調査研究成果からもしアメリカ人が「市民内閣」を各種問題で経験すれば相当変化し投票行動も変わり安全保障のエリート層と近くなることこそあれ反発はなくなるという。
  19. そこで読者諸氏も驚いてばかりいるのはなく、ツィッター上で赤面するような意見を表明しEU離脱を求め読者の意見に反対するような有権者、あるいはトランプの視点でものごとを見る有権者を止めるべきだ。ツィッターは全米国民のほとんどは使っておらず、投稿することは自問自答するのと大差ない。
  20. 読者諸氏の安全保障面での指導性により多くの米国民(英国民)の信頼を集め関与させたいのなら、国民の基本的な考え方を変える何かを始めるべきだ。運動を始める、より効果的な発言をする、などだ。自説を強調し熱意をこめて話しかけるべきだ。だがこれは首都を離れた場所で行うことが肝要だ。いかにも驚愕しているとの演技はやめよう。■