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2025年4月4日金曜日

F-35:新ソフトウェアを導入するも、フルアップグレードは未定(Defense One) ― 政権が計画を見直す中、ロッキードは問題点を今年中に洗い出そうとしていると苦慮している模様

 An F-35A taxis at Hill Air Force Base, Utah, Feb. 18, 2025

ユタ州ヒル空軍基地でタキシングするF-35A(2025年2月18日撮影) U.S. AIR FORCE / SENIOR AIRMAN NICHOLAS RUPIPER




ッキード・マーティンは米F-35戦闘機に新ソフトウェアを今夏リリースすることを目指している。

 ロッキード航空部門の責任者グレッグ・ウルマーは、「顧客の評価と、完全な戦闘能力を持つ納入品として承認されるかが重要だ」と語った。「完全な戦闘能力と呼べるものを得るために、当社は引き続き取り組みます」。

 テクノロジー・リフレッシュ-3(TR-3)と呼ばれる新しいスイートは、ブロック4の改良に必要なソフトウェアとハードウェアのアップグレードで、当初は2023年4月に完成予定だったが、ソフトウェア開発で何度も延期され、ロッキードと国防総省は、完全版の納期をまだ確定していない。

 ロッキードは、TR-3の能力を提供するために「98%完了」しているが、アップグレードで機密部分についてまだ作業が残っていると、ウルマーはAFA主催のシンポジウム会場で本誌に語った。

 ソフトウェア開発はF-35プログラムで茨の道であり、ソフトウェアの不安定さが同機の性能に影響を及ぼしている。 国防総省はこうした問題や遅れのため、新型F-35の受け入れを1年間停止した。

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F-35プログラムのソフトウェア開発は改善されていないことが国防総省の報告書で判明

 F-35のフルアップグレードパッケージは今年中に実現しないかもしれないとロッキードが見解を述べた。

 ウルマーは、TR-3ソフトウェアは「非常に強力」で、初期のTR-2ソフトウェアより安定していると述べた。

 ロッキードがTR-3の開発を終え、ブロック4の機能を展開し始めるにあたり、同社は「より多くのリソースを投入している」とウルマーは述べた。ロッキードが国防総省と交わした、TR-3の全機能を持たずに納入されたジェット機を対象に相殺された資金を回収する取引の一部である。

 同社は、レイセオンノーストロップ・グラマンBAEといった、このプログラムの主要下請け会社との協力関係を、デジタル・ツイン・モデルを共有することで改善し、ハードウェアを入手する前に問題を解決している、とウルマーは言う。

 「ハードウェアを手に入れる前に行っている統合作業の量は、F-35の過去の経験から何倍も改善されています。経験から左から右へと発見を進めています」。

 ロッキードがF-35の将来のアップグレードに取り組むなか、同社は新政権が購入計画を縮小するかどうか注視している。国防総省が今後5年間の予算の8%を別の構想に振り向ける計画であり、ホワイトハウス顧問のイーロン・マスクによるF-35批判と相まり、将来の受注に深刻な影響を及ぼす可能性が生まれている。

 ロッキードの工場は年間156機を製造する体制にあり、購入総額が削減されれば、機体価格に影響するだろうとウルマーは言う:同社は海外注文でギャップを埋めようとするだろうが、それはタイミングとどのようなバリエーションに左右される、という。

 欧州でのF-35の将来は、ドナルド・トランプ大統領の欧州大陸からの撤退や、米国依存を減らそうとする欧州諸国の努力から影響を受けるかもしれない。

 ウルマーによれば、欧州諸国はF-35をまだ欲しがっている。その理由のひとつは、同盟国間の相互運用性と空の情報ハブとしての能力だ。

 しかし、もし米国が欧州撤退を続け、同盟国との情報共有の量も変えていけば、F-35プログラムへの影響は未知数となる。

「それは政府に聞いてもらいたい質問です」(ウルマー)。■


F-35 to get new software this summer—but there’s no date yet for planned full upgrade

Lockheed is hoping to wring out problems this year as the new administration revisits purchase plan.


BY AUDREY DECKER

STAFF WRITER

MARCH 6, 2025


https://www.defenseone.com/business/2025/03/f-35-get-new-software-summer-theres-no-date-yet-planned-full-upgrade/403536/?oref=d1-topic-lander-river


2025年2月13日木曜日

難航するF-35プログラムのソフトウェア開発で改善が見られないと国防総省の報告書が指摘(Defene One)

 A U.S. Air Force pilot assigned to the 115th Fighter Wing, Wisconsin National Guard, prepares for take-off during exercise Sentry Savannah 25-1 at the Air Dominance Center, Savannah, Georgia, Jan. 24, 2025.

2025年1月24日、ジョージア州サバンナのエア・ドミナンス・センターで行われたセントリー・サバンナ25-1演習で、離陸準備をするウィスコンシン州兵第115戦闘航空団所属の米空軍パイロット。 GETTY IMAGES / TECH. SGT. サラ・M・マクラーナハン



国防総省の兵器試験機関DOT&Eによる新たな報告書は、複数のソフトウェア問題を「同時に」修正できないと指摘している


防総省のテストオフィスが最近発表した報告書によると、F-35プログラムは依然としてソフトウェアの開発とテストに苦戦しており、課題の根強さが浮き彫りになった。

 1月31日に発表された年次試験評価報告書によると、プログラムは「欠陥に対処し新機能を追加するために設計されたソフトウェアを開発しテストするスケジュールとパフォーマンスのタイムラインを満たすことで改善が見られない」という。

 開発で問題となっているのは、ブロック4の改良に不可欠なソフトウェアとハードウェアのアップグレードであるテクノロジー・リフレッシュ-3だ。当初は2023年4月に完成する予定だったが、アップグレードは何度も延期され、関係者は完全な戦闘能力を発揮する日を確定するのをためらっている。ソフトウェアの問題により、国防総省はロッキードからの納入を1年間停止した。その後、納入は再開されたが、新型機はTR-3の「切り捨て」バージョンを搭載している。

 DOT&Eは、TR-3エイビオニクスのアップグレードに必要なソフトウェアを開発しながら、現行のTR-2システムのソフトウェア問題を解決するというプログラム課題を「同時に解決することはできない」と述べた。

 TR-3開発の遅れは、既存のTR-2仕様機に新機能を装備する計画にも影響を及ぼしている。

 「TR-3エイビオニクスのアップグレードに伴う開発および試験における課題は、TR-2構成の航空機にブロック4の機能を提供するための計画スケジュールにさらなる遅れをもたらしている」と報告書は述べている。

 さらに報告書は、F-35統合計画室がTR-3の戦闘試験について「適切な計画を立てていない」こと、そしてTR-3の完全な「運用試験」は来年まで行われないことを明らかにした。

 「DOT&Eは、これらの航空機の専用運用テストは、現場への配備が開始されてから約2年後の2026会計年度半ばから後半まで行われないと評価している」と報告書は述べている。

 運用試験が2026年に延期される一方で、兵器プログラムは完全な運用試験が完了する前にシステムの実戦配備を開始することができるため、TR-3仕様機が今年中に配備される可能性もある。

 F-35統合計画室JPOは、2025年にTR-3の戦闘能力を提供するために、既知のリスクを克服することに集中している。 F-35プログラム・エグゼクティブ・オフィサーのマイケル・シュミット中将の声明によれば、「将来の紛争で勝利するため必要なものを確実に手に入れるために、将来のロットで能力は改良され続けるだろう」と述べた。

 DOT&E報告書は、ソフトウェアやテストの遅れに加え、ロッキードの生産ラインから出荷される機体の品質欠陥も指摘し、機材全体のサイバーセキュリティの脆弱性に対処するため、広範なテストを行うよう求めている。■

The F-35 program’s software development isn’t getting any better, Pentagon report finds

A new report from the top DOD weapons tester noted the program can’t "simultaneously" fix multiple software problems.

BY AUDREY DECKER

STAFF WRITER

FEBRUARY 4, 2025 12:32 AM ET

https://www.defenseone.com/technology/2025/02/f-35-programs-software-development-isnt-getting-any-better-pentagon-report-finds/402725/?oref=d1-homepage-top-story


2023年6月17日土曜日

(修正)F-35完成機体を引き渡しできなくなる事態が今夏発生する。エンジン換装問題はじめ課題も山積み。TR-3やBlokc4の実現がなかなか進まない事情とは....


防総省は今夏のF-35ステルス戦闘機納入を停止する一方、将来の改良に必要な技術リフレッシュ3(TR-3)ハードウェアを備えた量産機を確保する



幅に遅れているTR-3アップグレードは、JSFのブロック4近代化のサポートに不可欠だ。過去のコンカレンシー(すべての機能が完全にテストまたは検証される前にF-35が製造される、開発と製造の複合プロセス)の問題が、このアプローチを後押ししているようだ。国防総省で最も高価な兵器システムであるステルスジェットのタイムラインに、どのような影響が出るかはまだわからない。

F-35A Fort Worth

テキサス州フォートワースからテスト出撃するF-35Aステルスジェット。ロッキード・マーチン ロッキード・マーチン


国防総省は来月、ロッキード・マーティンのフォートワース工場(テキサス州)で生産ラインから出荷される一部新造F-35の受け入れを停止する予定だと、Breaking Defenseが初めて報じた。その理由として、TR-3ハードウェアの未熟さがある。このため、TR-3対象機材は第一線に納入されず、フォートワースに一時保管される。TR-3問題が解決され、引き渡しが可能になるまで2024年の春までかかるかもしれない。

 TR-3を搭載した最初の量産機は2月に形を整え始め、7月末に完成する。

 F-35合同プログラムオフィス(JPO)は、TR-3の遅れのため、新規製造機体がその間保管されることを意味するとDefense Newsに確認した。

 「この夏の終わりから、TR-3のハードウェア搭載のF-35は、戦闘能力がユーザーの期待に答えられるか検証されるまで引き渡しを止める」と、JPOのスポークスマンRuss Goemaereは述べている。「JPOとロッキード・マーティンは、これらの航空機が[受け入れ]が行われるまで、安全かつ確実に保管されることを保証する」と述べた。

 TR-3を搭載したF-35は一時的に保管されるが、TR-2ハードウェアを搭載したF-35は通常通り納入され続ける。

 現時点でどれだけのF-35が影響を受けるかは不明だ。

 ディフェンス・ニュースによると、ロッキードは、F-35を何機保管しなければならないかを言うのは時期尚早で、同社は今年のTR-3の生産数に関する当初の計画についてコメントしなかった。しかし、TR-2とTR-3の合計で、ロッキードは2023年に約150機を納入する予定だった。

 ロッキードは月曜日、今年これまで45機以上のF-35を納入し、現在さらに約50機のTR-2 F-35を製造中であると発表した。

The F-35 production line at Fort Worth. <em>Lockheed Martin</em>

フォートワースのF-35生産ライン。ロッキード・マーチン

 TR-3は、F-35のコアプロセッサー、メモリーユニット、関連エイビオニクスを大幅に強化するものでこの変更により、F-35は、新型レーダー含むブロック4近代化プログラムで計画されている新機能をサポートできるようになる。TR-3アップグレードが施された最初のF-35(特別装備飛行試験機)は、今年1月6日、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で初飛行した。

Glowing cockpit instrumentation of an F-35.&nbsp;<em>Photo by In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images</em>

F-35のコックピット計器が光っている。写真:In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images

 TR-3は、今年4月から納入の予定だったが、すでに遅れていた。現在の計画では、米軍がTR-3を搭載した新型F-35を受け取り始めるのは、開発テストがすべて完了した後となる。

 TR-3が実証されれば、F-35はブロック4の近代化を受ける準備が整うことになります。ブロック4では、搭載可能な精密兵器が増え、電子戦能力が大幅に強化され、目標認識能力も向上する。

 最善のシナリオでは、TR-3は今年12月に準備完了を宣言するが、2024年4月までかかる可能性があり、これだと以前の予想より12ヶ月遅れる。

 昨年、米政府会計検査院は、TR-3開発の課題が、2021年にブロック4全体の近代化努力のコストを3億3千万ドル増加させ、プログラム遅延の一因となったと報告していた。1月にTR-3による最初の飛行試験出撃を発表した際、JPOは、「TR-3プログラムは、ハードウェアとソフトウェアに関する技術的複雑性の課題を克服し、現在は能力を提供するための軌道に乗っている」と述べている。

 今年初め、F-35プログラムエグゼクティブオフィサーのマイケル・シュミット中将は、下院軍事委員会の戦術航空・陸軍小委員会で、TR-3ハードウェアの開発が遅れており、生産スケジュールに影響を及ぼしていることを明かした。同中将は、信頼性を含む改善が見られるものの、ソフトウェア統合に問題が残っていると述べた。

 シュミット中将は、下院軍事委員会の戦術航空・陸上部隊に関する小委員会で説明した。

 F-35納入を一時停止することは、ペンタゴンが「適切な戦闘能力」を持つジェット機を受け取る点では、長期的には理にかなっているかもしれないが、1年ですでに2度の生産停止を経験している同プログラムにとっては、良いニュースとは言い難い。

 昨年9月、F-35の納入は、部品に中国製材料が含まれていることを当局が把握したため、保留となった。この部品はF-35のターボマシンポンプの磁石で、「情報を伝達したり、完全性を損なったりするものではなく、この問題に関連した性能、品質、安全、セキュリティのリスクはない」とJPOは当時、声明で述べていた。セキュリティの見直しを経て、10月に納入が再開された。

 ついで昨年12月、納品前の受入れ飛行が一時停止され、引き渡しがストップした。これは、12月15日にフォートワースで起きた納品前のF-35B事故に対応したもので、後にエンジン振動が原因であることが判明した。その後、修正プログラムが導入され、再び納品が再開された。

 現在、今回の納入停止で何機のF-35が影響を受けるかは不明です。ロッキード予測では、TR-3のテストは今年12月に完了するとされ、最良のシナリオでは、少なくとも約5カ月間、一部の機体が保管されることになる。

 一方、悲観的なシナリオでは、TR-3の完成が来年4月になるとのJPOの予想に基づき、一部ステルス機は約9ヶ月保管されることになる。

 いずれにせよ、2023年4月にTR-3を搭載した機体を顧客に引き渡す従来の計画からすると、大きな後退となる。

 また、さらなる後退の頭打ちもあり得る。

 今年3月、米軍高官は、下院軍事委員会の小委員会で、エンジン・コア・アップグレード(ECU)の取り組みを進める計画概要を説明しながら、F135エンジンの限界を語った。

 JPOによると、F-35全機種に搭載されているプラット・アンド・ホイットニーF135ターボファンは、「仕様が当初から決まっている」ため、米軍はF-35全機種のエンジンアップグレード計画を重要視しています。これは、エンジンが想定以上の高温で日常的に運用されていることを意味し、メンテナンスとロジスティクスの負担を増大させ、F-35全体の即応性を低下させることにつながる。

F135 engines.&nbsp;<em>Pratt &amp; Whitney</em>&nbsp;F135のエンジン。プラット&ホイットニー 

 ECUのアップグレードは、TR-3とブロック4にも関連する。追加電力が必要となり、冷却ニーズが高まるが、ECUは電力・熱管理システム(PTMS)の改善を通じこれに対処することを目的としている。

 GAOは先月、F-35のコスト増とエンジン近代化に関する報告書の中で、「エンジンと冷却改善のオプションを評価したが、航空機が将来必要とする冷却量の要件を完全に定義していない」と述べている。報告書は、国防総省が「異なる(エンジンと冷却システムの)オプションのコストと技術的リスクを完全に評価するなど、いくつかの重要なステップを踏んでいない」と付け加えている。

 GAOは「議会はF-35プログラムのエンジン近代化を別プログラムとして管理する指示を出すよう検討すべきだ」と勧告した。GAOは、[国防総省]がGAO勧告と一致する別個のエンジンプログラムにコミットしていないため、議会に対してこの問題を追加した。直近では、米空軍、海軍、海兵隊がそれぞれ独自要件を立案する計画が浮上した後、F-35で別の冷却アップグレードを選択することになるかもしれないと明らかになった。そうなると、必然的にコストが上がり、さらなる遅延の可能性も出る。

 エンジン・コアのアップグレードの状況はF-35全般にとって重要だが、その遅れは、すでに遅れているTR-3プログラムや、それに依存するブロック4の近代化にも非常に大きな影響を与える可能性がある。

 最終的には、F-35の性能パラメータを満たすエンジンの確保は、特に電子パワーと冷却で要求が高まっる場合、今夏実施予定の最新の納入停止よりも大きな問題になる可能性さえある。■


2023年3月12日日曜日

ブロック4の前にTR-3改修でF-35の性能はここまで拡大する。1機あたり25百万ドル、合計150億ドルの予定

 

ッキード・マーティンF-35ライトニングII、通称ジョイント・ストライク・ファイターが機密扱いのアップグレードを受ける。改良には、17の新しい武器システム、強力な新型レーダー、電子戦能力の強化、推進力のアップグレードなどが含まれるが、多くは膨大な機密のベールに包まれたままだ。



 F-35は技術的な後退やコスト超過に悩まされ、しばしばプラットフォーム自体に影を落としてきた。しかし今、F-35は新たな機能強化の数々を搭載し、ついに、このプラットフォームに対する批判的な声を黙らせ、データを駆使する空中戦の強豪を生み出すかもしれない...ただし、すべて計画通りに進んだ場合の話だ。

F-35は最も成功したステルス戦闘機だ

f-35 upgrade(U.S. Air Force photo/Senior Airman Christine Groening)


20年以上にわたるF-35プログラムは、長い間、2つの非常に異なるレンズで見られてきた。ある人は、F-35の調達プロセスの大失敗が、F-35そのものを定義するようになり、度重なる技術的な後退、予算超過、機体維持に関わる膨大なコストなどが、この機が戦いにもたらす能力に影を落としていると考える。

 しかし、F-35に搭乗している人たちの話は、まったく違う。彼らはしばしば、F-35を航空戦力の革命にほかならないと喧伝し、多くの外国政府もそれに同意しているようだ。現在、16カ国がF-35の納入を待ち、890機以上が生産されており、F-35はその他第5世代戦闘機(F-22、J-20、Su-57)の合計よりも多く就役している。

 批判勢力は財政的な失敗を強調しているが、共用打撃戦闘機という大失策が生み出した航空機は、客観的には地球上で最も先進的で幅広い能力を持つ戦術戦闘機で、情報、監視、偵察から電子戦、戦域管理まで、各種軍用機の役割を同時に果たすことができる。F-35はしばしば空のクォーターバックと呼ばれ、戦いの最中に司令部レベルの認識と驚くべき生存能力を提供する。

 しかし、今日のF-35がいかに高性能でも、20年以上前のシステム・アーキテクチャの上に構築されているため、先進的とはいえ、今後20年間に出現する課題に追いつけるのか。

 F-35は現在も空で最も先進的な戦闘機かもしれないが、F-35プログラムオフィスは、そうでなくなる日のため計画をすでに立てている。そこで、F-35のテクノロジー・リフレッシュ-3(TR-3)とブロック4のアップグレードが登場する。


テクノロジーリフレッシュ-3で F-35 に新しい頭脳が生まれる

f-35 upgrade


ブロック4アップグレードの前に、コアコンピューティング能力の大幅な刷新が必要だった。今日、F-35は現役戦闘機各種の中で最も先進的な戦闘機であることに変わりはないが、コンピューティングの観点から見ると、F-35の搭載システムには20年以上前のものもあり、2023年時点で最高級とは程遠い。

 しかし、TR-3の取り組みは、今後の大規模なアップグレードで土台作りとも言えるが、実はこの取り組みだけで、戦闘機の能力は飛躍的に向上するのだ。

 ある意味、TR-3は、計算能力とメモリストレージを飛躍的に向上させ、搭載されているほぼすべてのシステムの機能を改善するだけでなく、将来の改良にむけたプロセスを合理化する新しいシステムアーキテクチャとともに、戦闘機の脳移植とみなすことができる。

 「テクノロジー・リフレッシュ3は、F-35の計算機コアを近代化するもので、新しいハードウェアとソフトウェアは、同機の機能に影響を与えます」と、第461飛行試験飛行隊司令官でF-35統合試験軍ディレクターのクリストファー・キャンベル中佐は1月に説明していた。

 TR-3の新しいコンピューティングコアは、現在F-35の処理能力の25倍という驚異的な性能で、請負業者であるL3 Harrisによれば、最終的には他の改良と組み合わせて、驚くべき「37倍の処理能力向上」を達成する。プロセッサーのアップグレードは、レーダー処理、分散開口システム、電子戦スイート、通信、誘導など、搭載システム多数に影響を及ぼすと言われている。この新しいパワーを支えるのは、20倍に増加したデータストレージです。

 F-35のパノラマコクピットディスプレイも大幅にアップグレードされ、ディスプレイ処理能力が5倍に向上し、左右のコクピットディスプレイの「クリティカルディスプレイプロセッサー」が、何らかのシステム障害が発生した場合に冗長性を発揮する。

 先月、Steve TrimbleがAviation Weekで報告したように、これらの新システムは、生産中のブロック15のF-35ですでに組立ラインで生まれているが、来年のブロック16からのTR-3アップグレードに、現行システムの3倍の能力を提供する改良型電子戦プロセッサーも搭載される。さらに2025年から、ブロック17に、敵レーダーやその他の信号伝達の位置を検知して三角測量できる電子戦用レシーバーが20個以上搭載される。現行機はレシーバーを5個しか搭載しておらず、能力が75%増となる。

 しかし、これらのアップグレードは印象的かもしれないが...実はすべて、さらに本質的なアップグレードの下準備に過ぎない。



スーパーライトニング II登場か?


 TR-3アップデートは、関係者間ではブロック4F-35の「ITバックボーン」として知られており、現行機から約75点の主要アップグレードを含む。アップグレードはすべて、長年にわたって親しまれてきたF-35A/B/C各型に組み込まれるが、システム改善と追加機能は非常に劇的で、新型戦闘機を能力の低い兄弟機と区別するため新名称が必要かもしれないとさえ考えられている。

 しかし、ブロック4の内容の多くは謎に包まれたままだ。この取り組みに携わる請負業者は、どのようなシステムが改良されるのかについて一般的な説明は行うものの、具体的内容は語ろうとしない。75点以上のアップグレードがブロック4.1、4.2、4.3といった単位で展開されることは確かで、アップグレードの多くは、すでに存在するハードウェアやアップグレードの初期段階で追加されるハードウェアの能力拡張用のソフトウェア調整に基づくと分かっている。

 また、ブロック4は最も野心的なアップグレードだと統合開発室が説明していることも分かっている。その他、確実な情報を以下お伝えする。


ブロック4は合計17種類の兵装を搭載する

ブロック4アップグレードの大部分は、新たに統合された武器の形で行われる。一部報道で、ジョイント・ストライク・ミサイル、スタンドオフ・レンジで敵の防空を狩るAGM-88G Advanced Anti-Radiation Guided Missile Extended Range (AARGM-ER)、高性能なヨーロッパのメテオ空対空ミサイルなどが含まれる。しかし、新兵器がすべて「キネティック」つまり従来型弾薬ではなく、ブロック4アップグレードには、まだ公開されていない電子戦の新機能も数多く組み込まれそうだ。

 おそらく最も重要なのは、ブロック4がF-35の機内兵装搭載能力の拡張を含むことだ。現在のF-35は、ステルス性を維持しながら最大4点を機内収納し飛行しているが、ブロック4では6点まで増やす。


強力オンボードレーダーと分散型開口システムも導入する


現行型F-35は、ノースロップ・グラマンが開発したAN/APG-81アクティブ電子走査アレイレーダーを搭載し、戦術戦闘機のレーダーシステムの中で最も強力で高性能なものとして広く知られている。このシステムは非常に強力で、地表や空中のターゲットを識別・追跡するだけでなく、飛行中に敵のレーダーアレイを妨害する電子戦アセットとしても活用できる。しかし、AN/APG-85と呼ばれるさらに強力なレーダーアレイに交代する予定だ。

 ノースロップグラマンは、新型レーダーシステムについて、「利用可能な最新技術を取り入れ、航空優勢の確保に役立つ」とだけ述べている。この新型レーダーはGaN(窒化ガリウム)ベースのTRM(送受信モジュール)を活用するのではないかと、多くが推測している。新しいTRMは、電子対抗措置と競合しても、電力伝送と透明度が大幅に向上し、熱管理も優れているため、目標捕捉と電子戦の両方の任務で、より多くの電力を送り込むことができる。

 Aviation WeekでSteve Trimbleが報じたように、新レーダーは、同じ出力と同じサイズのアレイでF-35の目標検出範囲を2倍にする可能性があり、目視範囲を超えた交戦でF-35に際立った優位性を与える。

 国防総省は、「より大きなピクセルのフォーカルプレーンアレイ」と「より高い動作温度」で性能と信頼性を向上させる「次世代」分散アパーチャシステムが、搭載レーダーから得られるデータの大幅な増加に追加されると述べている。このアップグレードはレーダーほど注目されていないが、同じく重要だと考えられる。

 F-35の既存のAN/AAQ-37電気光学分散開口システム(DAS)は、パイロットが機体周囲に取り付けられた赤外線カメラ6台で周辺状況を把握できるだけでなく、赤外線サーチ&トラック(IRST)機能の進化形として、遠距離のステルス敵を熱信号で識別しターゲットにするのも可能だ。F-35が最も高度な敵を前に手強い空対空戦闘機となるのはほぼ間違いない。


電源強化、航続距離拡大、推力増加

(U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Nicolas Myers)

こうした新システムを動かすため、F-35はエンジンのアップグレードが必要だ。このテーマは、GEとF-35の現在のエンジンメーカーであるプラット&ホイットニーのエンジンプロバイダー間の争いに発展している。先週、国防総省はプラット・アンド・ホイットニーとロット17までエンジンを供給し続ける契約をまとめた。これはTR-3の残りの期間にも及び、同社がブロック4の改良型エンジンを供給し続ける最有力候補となりそうだ。

 一方のGEは、次世代戦闘機用に設計された新しいアダプティブサイクルエンジンを提案しており、航続距離、推力、出力が大幅に飛躍するものの、より高いプレミアムが付く。

 プラット&ホイットニーは、既存のF135エンジンの推力を10%向上させ、燃費を5%改善し、航続距離を7%向上させる進化型ECU(Engine Core Upgrade)を提案している。GEは、燃費を25%向上させ、推力を20%向上させ、熱管理を2倍にし、航続距離を35%向上させるXA100アダプティブサイクルエンジンを提案している。

 このアダプティブサイクル・エンジンはF-35に搭載されることになるが、GE提案に従うと、ブロック4の導入に関連するスケジュールとコストが延びる可能性があり、より予算的で控えめな改良のプラット&ホイットニー提案に関係者を向かわせそうだ。


これだけではない…

A list of some F-35 upgrades expected in Block 4.


F-35のブロック4アップグレードは、10年以上の工期で約150億ドルかかると推定されるが、中には、外から見ている私たちが決して知ることのできない、秘密または機密の改良が数多く含まれている。例えば、レーダー誘導ミサイルを混乱させるチャフが、従来型と大きく異なるため、独自の呼称を持つようになったという報告もある。

 ブロック4のF-35アップグレードには、センサーや武器システムなど、他の資産と積極的にネットワーク化し、国防総省が「キル・ウェブ」と呼ぶ効果を作り出す能力の大幅向上も含まれている。F-35のMADL(Multifunction Advanced Datalink)を、NATO戦闘機が使用するリンク16データリンクや、上空の衛星と互換性を持たせるとともに、地域の友軍にライブ映像を直接配信する機能も追加される。

 リストは、意図的に曖昧にされているため、評価するのは難しいが、航空機の能力セットのほぼすべてに何らかの調整、調整、改良が施されてるのは確かだ。改良は非常に広範囲に及び、1機あたり約2500万ドル(平均機体単価の約25%)と言われる。

 しかし、ここまで多額の投資によって、F-35の空対空および空対地戦闘能力は飛躍的に向上し、電子戦とセンサーフュージョンの能力も大幅に向上する。完成すれば、ブロック4のF-35は従来型よりはるかに高性能になり、同機を激しく批判する人々でさえ自分の立場を見直す立場に追いやられそうだ。■


The F-35 is getting a $15 billion upgrade that'll make it a whole new beast - Sandboxx

Alex Hollings | March 8, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.



2020年7月23日木曜日

2030年のF-35はここまで性能強化される(はず)

ッキード・マーティF-35にはこれからの10年で以下が期待されている。

  • 世界各地で2千機超が供用され、さらに増える。機体販売単価、運航費用双方で第四世代機をわずかに上回る程度になれば販売に拍車がかかる。最新のブロック4仕様では現行型のコンピュータ処理能力の25倍になり、機内のデータ融合エンジンでアクティブ、パッシブ双方のセンサーのデータが有効活用可能となる。
  • コックピットの状況認識機能が向上し、パイロットは各種兵装を選択可能となる。ロッキード・マーティンAIM-260あるいはレイセオンAIM-120高性能中距離空対空ミサイル6本を機内搭載する、洋上標的攻撃に共用打撃ミサイル、新型長距離打撃ミサイルのスタンドイン攻撃兵器 (SiAW) を機外に搭載する。極超音速巡航ミサイルの外部搭載の可能性もある。ロット22機材がロッキード組立ラインを離れる2030年には新型空中発射回収式装備により探知能力が向上し、兵装搭載量もミッション内容により倍増する。
  • F-35の役割も制空攻撃任務から広がる。陸軍、海軍ともにF-35のセンサーデータで迎撃ミサイルを遠隔制御している。空軍の分散型指揮統制体制ではF-35の処理能力、センサーデータや通信能力で各ドメインで広範な攻撃効果を上げるのが狙いだ。F-35は空軍が通常使用する範囲を超えた役割を果たしそうだ。

U.S. Air Force F-35A
米空軍のF-35Aが5月にネリスAFBで飛行テストに供されたが、GBU-49レーザー誘導爆弾を搭載していた。性能改修でレイセオンGBU-53/Bストームブレイカーの運用が可能となる。Credit: Airman 1st Class Bryan Guthrie/U.S. Air Force

10年先といっても決して遠い先のことではなく、実現は大いに可能だろう。10年前のF-35は危機的状況にあった。飛行テストは2009年に停止され、サプライチェーンは混乱していいた。当時国防総省で調達・技術導入の責任者だったアシュトン・カーターは状況説明を受け事業中止を提案していた。

ロッキードはF-35の500機超を9か国に引き渡しずみで、さらに三カ国が導入を決めた。2022年にロット14生産が始まると機材単価は77.9百万ドルまで低下する。

ただし同機開発のこれからの10年では、初期と同様の苦しい状況が予想される。

F-35共用開発室(JPO)はブロック4追加改修策でハードウェア・ソフトウェア66点の改修が必要と把握し、2019年5月に議会に報告していた。まず改修8点が2019年中に実施の予定だったが、実現したのは自動地上衝突回避システム一点のみだった。フルモーションヴィデオ機能を海兵隊向けF-35Bに搭載する構想もハードウェア面で予定より遅れていると会計監査院(GAO)が報告している。

JPOではブロック4開発の迅速化対策も採用した。性能改修は4回の主要改訂で実現するべく、ブロック4.1、4.2、4.3、4.4と六か月間隔で性能向上をめざすとし、継続性能開発提供 Continuous Capability Development and Delivery (C2D2)と呼ぶ。ロッキードでは30P5ソフトウエア開発が今年第三四半期内に完成する予定だ。この後、30P6が2021年第一四半期に登場する。この迅速開発体制は遅延の影響を縮小するのが狙いで、従来は大型ソフトウエア改修が二年おきにリリースされ都度遅延が発生していた。だがC2D2がテストに入ると、新たな問題がみつかった。たとえばブロック4のソフトウェアコードでブロック3Fで問題なく作動した機能が「問題」になったとGAOは指摘している。

ブロック4で次の大型改訂は2023年の予定で、ブロック4.2では Technical Refresh 3 (TR-3)ハードウェアがはじめて扱えるようになる。ここでは新型統合コアプロセッサ、機内記憶装置、パノラマコックピット表示が含まれる。ブロック3i(2016年)以来初のコックピット内演算処理となるTR-3でセンサー能力は一気に向上し、とくにBAEシステムズ製ASQ-239電子戦装備の利用が注目される。

F-35 panoramic cockpit display
F-35ではパノラマコックピット表示に加え、TR-3で新型統合コアプロセッサが導入され、処理能力が一気に25倍に増強される。Credit: U.S. Air Force


ただしTR-3改修にも開発面で課題がある。JPOは2021年度に42百万ドルを追加投入しTR-3の「技術的複雑性」の打開を目指すとしている。

「ハードウェア-ソフトウェアをひとつにとらえた開発日程の課題にサプライヤー各社が苦労している。このためハードウェアの暫定発表によりリスクを減らしつつソフトウェアを並行開発する」と空軍は2021年度予算説明書で述べていた。

F-35の特定調達報告書selected acquisition report (SAR)最新版を国防総省は7月初めに公表し、TR-3について同様の記述があり、とくに新型プロセッサ用のゲートウェイで課題の複雑さのため追加支援がサプライヤー一社で必要となったためのコスト上昇に触れている。コアプロセッサと機内記憶装置の開発も遅延中と同SARにある。

TR-3を搭載したブロック4.2仕様が配備されればF-35のパッシブセンサー能力は大きく向上する。またこの性能向上でBAEの電子戦装備特にジャミング発生装置がラック2A、2Bを有するASQ-239で使用可能となる。主翼前縁部に搭載の帯域2、3、4向け受信機、また帯域5用受信機により低周波から超高周波に至る無線信号受信を可能とする向上策もBAEが検討している。TR-3の強力な処理能力が加わればF-35は未遭遇の信号に対しても有効なジャミングが可能となる。敵対勢力がソフトウェア依存の無線交信や周波数変更方式のレーダー装置に切り替える中で認知電子戦cognitive electronic warfareといわれる分野が重要性を増している。

現行日程のままならTR-3とブロック4.2改修はロット15機材で間に合う。ロッキードは機内兵装庫改修に取り組んでおり、レイセオンAIM-120ミサイル搭載量を6発に増やす。ロッキードのAIM-260が実用化されれば外寸が同じなため6発搭載できながら射程は大幅に伸びる。

兵装庫改修で空軍の新型SiAWミサイル運用も可能となる。これは海軍の高性能対放射線誘導ミサイル射程向上型に新弾頭をつけるものだ。イスラエル資金を導入し主翼に燃料タンクを追加すれば有効距離は25%増加する。ただし、これは機体のレーダー探知特性を重視しなくてもよいミッションの場合だ。

2020年代末までにF-35の運用実態は1990年代末の設計段階と大きく異なるはずだ。空軍のスカイボーグ事業は地上及び空中から発射する各種無人機開発で、自律飛行可能なウィングマンの実現を目指している。F-35パイロットにはスカイボーグ自律装備の運用技量の訓練を意味し、各種ミッションを実施させることにつながる。米空軍はF-35パイロットにスカイボーグを再利用可能装備として運用させたいとする。いいかえればいったん発射したミサイルを標的が無価値と判明すれば回収して再利用するのと同じだ。

20年前に設計陣が想定したF-35は当初予定より遅れ調達運用経費は上昇しととはいえ、実戦機材として利用可能となった。次の10年でJPOとロッキードは利用可能となった新たな性能を追加し、さらにスカイボーグやSiAWといった最新技術の導入も図る。F-35の歴史を特徴づけるのは過大な期待と開発期間中の低い実績だ。ブロック4開発が構想段階から現実に移行する中でこれまでの過ちの繰り返しは避けるべきだろう。

 

【これからどうなる】

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楽観視だと

  • 一時的に停滞したものの世界各国の防衛支出は拡大に戻り、ロッキードは4千機の販売に成功する
  • 懸念は残るもののロッキードはブロック4改修化を予定通り予算内で実現する

中立的見方

  • 各国の防衛支出は2040年まで増加せず、事業には逆風となる
  • ブロック4近代化改修は遅延し予算超過するものの調達に悪影響は出ない

悲観視すれば

  • 各国の国防支出は減少を長期間続け、戦闘機分野は1990年代同様の「調達閑散期」に入る。
  • TR-3リフレッシュとブロック4は大幅に遅れ、大幅予算超過で調達予算がさらに削減される。

この記事は以下を再構成したものです

 

Lengthy F-35 Upgrade List To Transform Strike Fighter's Future Role


Steve Trimble July 20、 2020