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2025年5月13日火曜日

トランプ政権にカタール王室が豪華ボーイング747-8を贈呈(Simple Flying)

 


Photo: Dirk Daniel Mann | Shutterstock


以下ははT1 T2共通記事です。


数の報道によると、トランプ政権はカタール王室からの贈り物として豪華なボーイング747-8を受け取る準備を進めている。このジャンボジェットを受け取った後に法的な問題が指摘されているにもかかわらず、新たなエアフォース・ワンとして使用するためにアップグレードされる見込みだと報じられている。

 ボーイングが、大幅に遅れている次世代エアフォース・ワンの引き渡し時期として2027年を提案した数日後のことである。大統領は、当初2022年に予定されていた引き渡しが遅れていることに怒っていると伝えられている。


正式発表はこれから

Exterior of a 747 on the tarmac.

写真:ボーイング


 カタールの747-8が新エアフォース・ワンとなることについての詳細は、日曜日時点では明らかにされていない。しかし、トランプ政権はすでにL3Harrisに、大統領専用機の要件を満たすためのオーバーホールを依頼している。

 この取り決め案を直接知る高官はニューヨーク・タイムズに同機は大統領の任期終了後にトランプ大統領図書館財団に寄贈され、私人として使用できるようになると語った。

 ABC Newsによると、この豪華な贈り物は、トランプ大統領が2期目最初の外遊となる来週カタールを訪問する際に正式に発表される見込みだという。大統領は2月にパームビーチ国際空港(PBI)に駐機中の同機を見学ずみと報じられている。その贅沢な機能と豪華な構成から、747-8は "空飛ぶ宮殿 "と呼ばれている。


贈与は合法


 アメリカ政府が受け取った外国からの贈答品としては、過去最大となる可能性が高い。しかし、この航空機の記念碑的価値を考えると、その手配をめぐる倫理が注目されている。本誌は以前、新型機747-8のコストが4億ドルを超えると報じた。また、大統領退任後に大統領自身がこの航空機を使用することが合法かどうかも疑問視されている。

 トランプ大統領はすでに、"トランプ・フォース・ワン"と呼ばれるプライベート757-200を所有している。老朽化した機体は2010年に1億ドルで購入された。747-8が寄贈されれば、757の後継機となる可能性がある。

 ABCニュースによると、ホワイトハウスの顧問弁護士事務所と司法省の弁護士は、贈与は合法であると結論づけた。国防総省が航空機を受け取り、それを後にトランプ図書館財団に譲渡することは、贈収賄を禁止する法律や、アメリカ政府高官が "いかなる王、王子、外国からも "贈り物を受け取ることを禁止する憲法の名誉条項には違反しないとされている。

 パム・ボンディ司法長官とホワイトハウストップのデイヴィッド・ワーリントン弁護士は、トランプ大統領の任期終了前に大統領図書館に航空機を寄贈することは "法的に許容される"と述べたと報じられている。 報道によると、747-8は計画通りであれば、遅くとも2029年1月1日までに譲渡される。さらに、関連費用はすべて米空軍が負担する。


ボーイングへの発注の可能性を集めるトランプ大統領の中東歴訪


 トランプ大統領の今回の中東歴訪は、航空を含むいくつかの分野に広く影響を及ぼすと予想されている。 米大統領はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールを訪問する予定だが、これら3カ国はいずれもトランプ大統領のご機嫌を取ろうと必死になっている。

 直近では、カタール航空がボーイングから100機という驚異的なワイドボディ機を購入する契約を結ぶ予定が明らかになった。これにより、ボーイングの中東での優位性はさらに強固なものとなり、米国の雇用は今後何年にもわたって維持されることになる。情報筋がブルームバーグに語ったところによると、この発注は主にボーイング787とボーイング777Xで構成されるという。これとは別に、格安航空会社のフライドバイも、今後導入予定の787ドリームライナーに搭載する70基のGE製エンジンを探しているようだ。

 トランプ大統領の訪問中に、この地域で他の航空会社がボーイングと契約するかどうかは、すぐにはわからない。サウジアラビアでは、新興企業のリヤド航空が最大50機のワイドボディ機を求めているようだが、これらは必ずしもボーイング向けではない。 また、情報筋がブルームバーグに語ったところによると、エミレーツはボーイング777Xの増機を検討しているとのことだが、このような発表はドバイ・エアショーで行われるのが通例だ。

 このような合意は、ここ数週間、地政学的な不安定さに関連した一連の問題に直面しているボーイングにとって、大きな勝利となるだろう。 最も顕著なのは、先月から続いている関税貿易戦争の影響で、中国政府が航空会社にボーイングの納入を停止するよう命じたことだ。■


Trump Administration To Be Gifted A Luxury Boeing 747-8 From The Qatari Royal Family

By 

Channing Reid

 & 

Dillon Shah


https://simpleflying.com/trump-administration-gifted-luxury-boeing-747-8-qatari-royal-family/?utm_medium=newsletter&utm_campaign=SF-202505120750&utm_source=SF-NL&user=bmFvc2hpbWl3YUBnbWFpbC5jb20&lctg=b5fc42e5d3d56717f18d5a31f72403caf2d11ce650555377a5d5f99b966a56b9



2019年5月19日日曜日

事実の記録のため 米イラン緊張の高まりの中でトランプ政権のとった動き

Report to Congress on Current U.S.-Iran Tensions

米イラン緊張状態の現況を米議会に伝える報告書の内容

May 17, 2019 9:56 AM

2019年5月16日付で議会調査部がまとめた米イラン緊張のエスカレーションに関する報告書をお伝えする。

報告書より

米イラン間の緊張がここ数週間で緊張しているのはトランプ政権がイランに「最大限の圧力」をかけるべく施策を実行してきたためでイラン指導部も対応策を発表している。米側の動きにはイラン革命防衛隊(IRGC)の海外テロリスト集団(FTO)への指定、イラン産原油購入国への制裁再開、イラン核開発で認められている部分を援助する国への制裁適用猶予の廃止、イラン産品取引への制裁措置がある。米政府関係者はイランとつながる脅威が米軍及び米国権益に発生する可能性があるため追加軍事力派遣に踏み切ったと説明している。ただし5月16日付け報道ではドナルド・トランプ大統領はエスカレーション回避に外交手段を優先する姿勢だという。


米イラン間の緊張増大に関し議会から追加情報開示を求める声が出ている。議会はより広範な視点で対イラン政策を検討するかイランへの軍事力行使の可能性を検討するだろう。

イランへ圧力をかける政権の動き
イランの経済、行政に圧力を増大すべく政権が示してきた動きを以下列挙する。

  • 2019年4月8日、政権はIRGCを外国テロリスト組織(FTO)に指定し、イラン国会はこれに対し在中東の米中央軍(CENTCOM)及び関連部隊をテロリスト集団と指定する法案を可決した。
  • 2019年5月2日、政権はイラン原油購入への米制裁の適用例外扱いを終了し、イランの原油輸出を「ゼロ」にするとした。
  • 2019年5月3日、政権はイランの自由及び拡散防止法 (IFCA, P.L. 112-239)でJCPOAが認める備蓄上限を超える分のイラン製重水や低濃縮ウラニウムの移動を認めてきた措置を終了した。
  • 2019年5月5日、イランが協調勢力に米軍人や装備集積地を襲撃する準備をさせているとの報道を根拠に国家安全保障担当大統領補佐官ジョン・ボルトンからUSSエイブラハム・リンカン空母打撃群の現地派遣を前倒しするとともに爆撃機部隊もペルシア湾岸に展開すると発表があった。
  • 5月8日に大統領は大統領令13871を発出し政権が指定するイランの鉄、鉄鋼、アルミ・銅製品の取扱が大きい個人団体の在米資産を凍結すると発表。対象製品はイラン輸出のおよそ1割を占めるが、域内企業が製品大部分の仕向地となっており米制裁措置の適用は容易ではない。
報告書全文は hereをクリックしてください。

2017年7月4日火曜日

中国に愛想をつかしてきたトランプ大統領の次の手は?


習近平が訪米で示した対応力・応用力のなさは驚くべきで、内弁慶タイプの指導者かと思ったほどでしたが、北朝鮮を巡り各方面の国内要素をはかりにかけて身動きが取れなくなっているのか、一度は約束しても最初から実施するつもりはないという確信犯なのでしょう。トランプ大統領もビジネス経験から中国人との付き合い方は体得しているはず。今後は現実を重視したアプローチに双方が収れんしていくでしょう。

 

Trump Cools on China 中国に冷静になってきたトランプ

The Trump administration is losing patience with Beijing and adopting a tougher policy. トランプ政権は北京に忍耐を失い、強硬政策をとりつつある
U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017.
The National Interest June 30, 2017


  1. トランプ政権が中国に忍耐心を失いつつある。先週は鉄鋼製品へ関税適用をちらつかせ北京へ衝突姿勢を示した。当初の対中国姿勢と真逆で、中国をパートナーととらえ北朝鮮問題の解決をめざすアプローチは過去のものとなった。
  2. 大統領選中のトランプは中国に厳しい姿勢だった。2016年5月のインディアナ州選挙集会では対中貿易赤字に触れ「このまま中国に勝手にさせておけない」と述べている。選挙運動中のトランプは当選の暁には中国を出し抜くと述べていた。「抜け目なく立ち回れば中国に勝てるはず」と2015年7月にサウスカロライナで述べていた。
  3. 大統領に就任するとトランプは北京と対立するより協調を優先した観があった。4月初めの習近平主席との会談後、トランプは北朝鮮問題、貿易問題共に一緒に解決できると楽観視していた。前向きな言葉と裏腹に選挙運動中の厳しい提言は棚に上げて、中国との協調関係作りを優先した。中国を通貨操作国と批判せずに北朝鮮問題で同国の支持取り付けを優先した。
  4. 北朝鮮問題解決を中国に期待すること自体が大きな賭けだ。中国は北朝鮮に実効力のある圧力をかけることに乗り気ではない。なぜなら北朝鮮現政権の存続に中国にとって戦略的な意味があるためだ。エリック・ゴメス(ケイト―研究所の国防外交政策専門家)は「北朝鮮はちょうどよい緩衝国として在韓米軍と中国国境の間に位置している」と述べている。安全保障上の関心から中国は北朝鮮の崩壊はおろか不安定化につながる動きをとりたくないのだ。
  5. さらにこれが正しくないとしても中国にはトランプが期待するような北朝鮮への影響力は実は有していない。ゴメスは「中国が金正恩を平和裏に米国の望む方向へ導く力があると信じるのは現実とかい離しすぎの見方だ」 2013年の金正恩の叔父で北京寄りの張成沢処刑は北朝鮮が最大の後援国に堂々と反抗する史背の表れに他ならない。中国は強い圧力をかけると裏目に出ると見ているのではないか。つまり北朝鮮が完全に制御不能になると中国は計算しているのだ。
  6. トランプ政権が望む形では中国が北朝鮮を扱えないと露呈すると、大統領は中国への失望を隠せなくなった。オットー・ウォーンビアの死亡を受けてトランプは中国の北朝鮮問題への支援ぶりについてツイッターに6月20日投稿している。翌日、レックス・ティラーソン国務長官も大統領に同じ感想を述べ、報道陣に中国は「外交的責任がありこれ以上のエスカレーションを回避したいのなら北朝鮮に経済外交上の圧力をもっとかけるべき」と報道陣に語っている。
  7. トランプ政権は非難と別に中国の神経を逆なですること疑いの余地のない手段も実施に移している。昨日財務省から中国企業一社、中国人二名が北朝鮮とつながりがあるとして制裁措置を適用した。さらに財務省の金融犯罪対応ネットワークが北朝鮮の外貨獲得を助けたとして中国の銀行一行に罰金を科すと述べた。直前に国務省から中国の人身売買取締まりが実効性を上げていないとし、中国が北朝鮮労働力を利用していることを決定の大きな背景とした。
  8. 現政権も前政権と同じく中国の域内ライバルと関係強化を狙っている。トランプのインド首相ナレンドラ・モディとの首脳会談の前に政権チームはMQ-9Bガーディアン無人機22機の売却を承認し、インド洋上の中国の動きを監視させるねらいがある。また中国を怒らせているのがトランプ政権による台湾への総額14億ドル武器売却だ。
  9. ただしトランプの地政学的な動きは武器販売にとどまっていない。モディ首相との共同記者会見でトランプはマラバール海軍演習に米国が日本とインドに加わると述べ、ティラーソン国務長官と同様に戦略的忍耐の段階は終わったと公言した。オーストラリア国立大の国家安全保障研究部門の主任研究員ディヴィッド・ブリュースターは同上海軍演習は「三カ国間の協調体制が強まり重要であることの実際的かつ象徴的な存在」だが「封じ込めをねらう演習」ではないと強調し、中国がこれ以上「ルールに基づく秩序を傷つけようとすればするほど三国の結束を強めるだけ」と警句を述べている。
  10. だが同時にトランプは中国との協調の可能性を放棄していない。楊潔チ国務委員との6月22日会合でトランプ大統領は一帯一路構想で中国への協力への関心を表明している。対中姿勢をがらりと変更した前歴のあるトランプが再度姿勢を変えてもおかしくない。ただし今のところ、新しい政策アプローチは明確な主張にとどまらず実際にトランプ政権が実行に移しているのはあきらかだ。■
Dimitri A. Simes is a reporter-intern at the National Interest.
Image: U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017. REUTERS/Carlos Barria.


2017年4月13日木曜日

★金正恩暗殺が本当に実施されたら



なるほど金正恩暗殺には法的な問題も事後の問題もありますね。筆者のいうように中国を米国が受け入れられる形で関与させる企みの一環なのでしょうか。一方でオサマ・ビン・ラディン殺害を実施したのも米国ですが(死体は信奉者が出るのを防ぐため海中に投棄)北朝鮮で強固に守られて怯えて暮らす北朝鮮指導者はバンカーバスターを投入してもを一人殺害できるのかもわかりません。

The National Interest

What If America Assassinated Kim Jong-un?アメリカが金正恩を暗殺したらどうなるか。

Nobody knows whether cooler heads in North Korea would prevail after Kim Jong-un's death. 冷静な後継者が現れるのか不明だ

April 10, 2017


  1. サリンガス攻撃の様子がホワイトハウスの緊急事態対策室に流れると、ドナルド・トランプ大統領は国家安全保障会議NSCに翌日までに具体的対策案を出せと求めた。国防長官ジェイムズ・マティス、安全保障担当補佐官H・R・マクマスター、統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードはその通り行動し、トランプ大統領は米海軍に巡航ミサイル59発の発射を命じ、ガス攻撃の出撃基地攻撃を狙った。
  2. 同時にNSCは北朝鮮政策見直しも検討している。シリアとちがい、大統領は安全保障専門職に長い時間を与え、より柔軟に対応策を検討させた。これに先立つ3月にウォール・ストリート・ジャーナルが「正当派から外れる選択肢も検討」せよとの国家安全保障補佐官補K・T・マクファーランドの指示が出ていたと報じている。
  3. その際の選択肢がいかに異例の内容だったが今はわかっている。韓国への核兵器再展開、金正恩および司令部上層部の殺害もその一部だ。「この20年間外交と制裁を繰り返した結果は失敗で北朝鮮の動きを止められなかった」と情報機関高官がNBCニュースに語っている。その言葉の真意を読めば、トランプ政権のメッセージが見える。北朝鮮は長年に渡る問題国であり、今こそ同国指導体制を崩し別の可能性を探る時期だ。
  4. 外国指導者の暗殺が米安全保障政策上で重要要素だった時代がある。冷戦中は米国の政策目標への支持が不十分な指導者またはソ連と親しい指導者はいずれも排除対象だった。キューバのフィデル・カストロ、コンゴのパトリス・ルムンバ、ドミニカ共和国のラファエル・トルヒーヨ、グアテマラのジャコボ・アルベンスの面々はCIAの暗殺リストにあり、リビアのムアマル・エルカダフィは国際テロ支援のため何度も攻撃対象となった。1986年にロナルド・レーガン大統領はカダフィの居住地への空爆を命令し、本人が屋内にいるよう祈った。国家安全保障の官僚層の取材でニューヨーク・タイムズは「リビア空爆の主目標はカダフィ暗殺だった」と突き止めた。
  5. ただし冷戦が終結して25年になる。外国指導層の殺害は今や人気のない選択肢であり実施できる状態ではない。事実、ジェラルド・フォード大統領の時代から米国が絡むと疑われる暗殺の企てはできなくなっている。フォードの大統領令はきわめて簡潔だ。「合衆国職員はだれも政治的暗殺への関与、謀議に与してはならない」 これに対しレーガン大統領は独自に大統領令12333で「合衆国政府に雇用されるあるいは代理で動くいかなるものも暗殺への関与あるいは関与しようと謀議することは許されない」と再定義、これは拡大解釈の余地を残したともされる。
  6. したがって金正恩暗殺および北朝鮮指導部の斬首を狙う政策は41年間続いた米政策の大転換となる。もちろん政策や大統領令、行政命令は変更修正されたり書き換えられたりできる。また合衆国大統領が外国指導者を殺害する命令を出すことを禁じる制約はない。米国法典第18部1116条により米市民が外国指導者殺害を試みれば訴追対象となるが、これは殺人が米国内で実施された場合または該当指導者が「自国外」で殺害標的となった場合である。トランプ大統領が以前の大統領令を修正するつもりなら、同政権は金正恩殺害を決行しても刑事訴追の対象にならない。
  7. もっと重要な問題は金正恩や核・ミサイル開発に関与した将軍連を抹殺するのが果たして賢明な政策なのかという点だ。トップを排除すれば残る悪者も怯え心を入れ替え新政権は一夜にして人権を守る民主国家に変身すると信じがちだ。前例がある。イラク軍事作戦開始の数字前にワシントンはサダムに巡航ミサイルを発射し、イラク政権はこれで大規模開戦は避けられると見ていた。サダムは攻撃を生き延び、バース党政権が連合軍に降伏したが、戦闘は終わらなかった。
  8. 北朝鮮は2003年のイラクとは全く異なる状況で、金正恩の権力基盤は盤石であり政権のじゃまものはすべて粛清し(叔父および異母兄弟含む)脅威度が低くても例外としていない。イラク軍は1991年の湾岸戦争とその後の制裁措置で士気戦力ともに低下していたが、北朝鮮は核兵器保有国であり、弾道ミサイルもあり、韓国を圧倒し、米軍基地も狙う戦力を有している。金を殺害すれば政権が変わると考えるのは未実証仮説だ。70年間に渡り保持してきた体制を簡単に手放すだろうか。北朝鮮は人的諜報活動でブラックホールであり、金正恩の後継者になりうる人物が誰なのか簡単に推察できないが、金正恩同様に腹黒い予測不可能な人物ではない保証はない。国家指導者の暗殺は戦争行為そのものと解釈され、平壌にもう少し冷静な人物が現れ、報復行為の主張を押しとどめる可能性があるのか誰にもわからない。
  9. 金正恩殺害は国家安全保障会議がトランプ大統領に提出する唯一の選択肢だが、いかにも通常の選択肢から外れ、大統領補佐官も大統領に断念させようとするかもしれない。北京の反応は迅速で主張を曲げないだろう。韓国、日本両国は北朝鮮が予測できる国になることを期待したいところだ。両国としてもトップ層排除で期待通りの結果が得られるとは思っていないはずだ。
  10. この話題は中国を米国寄りの協力姿勢に追い込むための政治ゲームであると期待したいところでありそれ以上の何者でもない。
Daniel DePetris is a fellow at Defense Priorities.
Image: A U.S. Air Force B-2 Spirit bomber aircraft approaches the rear of a KC-135 Stratotanker aircraft before refueling during a training mission over the Midwest in August 2013.​ Flickr / U.S. Department of Defense / Airman 1st Class John Linzmeier​.


2017年3月4日土曜日

★米国は北朝鮮攻撃に踏み切るのか 考えるべき4つの要素



キチガイに刃物。北朝鮮が常軌を逸した行動に出ているのはそれだ危険を感じているからでしょう。人類史上の汚点、とよくぞ言ってくれたと思いつつ、トランプが強い姿勢を見せつつ対話に金正恩を引きづりおろせるのかきわめて疑問です。本人は米軍攻撃を恐れて逃げ回り、過食でストレスを解消しているとのことですが、オサマ・ビン・ラディン同様に仮に特殊部隊が狙えば、個人崇拝をたちきるためにも写真を撮影した後遺体は処分されるでしょう。当然北朝鮮攻撃に踏み切れば日本も無傷ではいられないはずですが、これまで放置してきた代償と考えるべきかもしれません。


The National Interest Would America Really Invade North Korea?


March 3, 2017


  1. トランプ政権は北朝鮮攻撃を本当に検討中なのか。
  2. どうもそうらしい。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば「ホワイトハウス内部で対北朝鮮戦略の見直しが進んでおり、軍事力行使あるいは政権交替により核脅威を取り除く可能性が浮上していると内部事情に詳しい筋が語っている」
  3. 国家政権の交替を始める方法はいろいろあるが、こと対北朝鮮軍事作戦に関する限り、選択肢はひとつしかないようだ。平壌は世界経済とつながっておらず、制裁措置で屈服させるのは不可能で、国際社会が非難を強めたところで効果は薄い。そうなると現時点では効果の上がる手段は軍事力しかないようだ。
  4. ではDPRK相手の軍事作戦はどんな形になるか。現代戦で確実なことはないのが事実だが、一つ確かなことがある。北朝鮮を攻撃し、世界最悪の政権を除去しようとすれば大災害発生はあきらかだ。
  5. 2014年に指摘しているが、政権転覆を目指し北朝鮮を攻撃すれば正気の沙汰ではない4つの理由がある。
  6. まず、金正恩はこの20年の歴史を勉強しているはずだ。
  7. ワシントンが平壌の悪漢を処分する決定をしたらどんな進展になるだろうか。北朝鮮の軍事装備の大規模破壊で始まるだろう。空母打撃群複数が投入されるはずだ。地上侵攻を狙い、韓国に部隊が集結するはずだ。地上運用の航空機が増強され、韓国、日本、米軍基地のミサイル防衛が強化される。多くの点で1991年の湾岸戦争の前例が注目され、攻撃部隊を増強してから敵を圧倒する。いかにも簡単である。
  8. 問題はこれだけの規模の軍事力は秘密裏に集結出来ないことだ。北朝鮮は即座に状況を知るはずだ。平壌は生存をかけ猛攻撃を仕掛けてくるはずだ。サダム・フセインの愚かさは連合軍が世界最強の軍事力を自分の足元で編成するのを許したことだが、金正恩は唯一の可能性は軍事力増強の事実を知った段階で全力で攻撃することだとわかっているはずだ。
  9. 二番目に北朝鮮が核攻撃に踏み切るのは必至だ。
  10. エチオピアより貧しい国が巨額予算で核兵器取得に走る理由は何か。答えは単純だ。政権転覆を狙う勢力にリスクを感じさせることだ。ワシントンが真剣に北朝鮮転覆を狙うのなら、平壌がそのまま静観するはずがない。北朝鮮ミサイルに米本土を確実に攻撃できる性能や精密度があるのか議論があるが、ソウルや東京なら十分攻撃できるとみられる。そうなれば原子の惨状が生まれる。金正恩は連合軍侵攻には勝てないことを十分承知しており、できるだけ多くを道連れにする決定に走るだろう。
  11. 三番目に金正恩は我々が忘れている別の大量破壊兵器を投入する可能性がある。
  12. 米国防総省の2012年度報告では「北朝鮮は化学兵器(CW)開発を長年に渡り進めており、神経ガス、びらん剤、血液剤、窒息剤の製造備蓄能力を有している。北朝鮮は通常兵器に手を加えCWを投入できるはずで火砲、弾道ミサイルを利用するだろう」 一部報告書では北朝鮮の化学兵器備蓄を5,000トンと試算している。
  13. では生物兵器はどうか。評価はわかれるが、同報告書は可能性が高いと指摘しており、「北朝鮮はバクテリア、ウィルス研究を続けており、攻勢の際に投入することを想定している。同国には必要な施設と軍需産業がすでにあり、生物戦の実施能力は高い」
  14. 悪夢のシナリオとなる化学兵器あるいは生物兵器の投入可能性が皆無とは言えない。少量でも投入されればソウルではパニックが発生し、その規模は9/11どころではない。民間人相手に恐ろしい攻撃が加えられることは回避しなければならない。
  15. 四番目に予知出来ないことがあまりにも多すぎる。
  16. 北朝鮮潜行工作員がシャルリ・エブドのような襲撃事件をソウルにとどまらず日本でも実行することがある。あるいは軍部が核ミサイルで対象地区を汚染することだ。北朝鮮再建の費用推定は考えるだけで恐ろしいが、中国には事態に介入する強い理由があるはずだ。
  17. 北朝鮮は人類史の汚点であり、抹消すべき存在だ。だが北朝鮮政権はこれまで60年以上も侵攻に備えている。このことは忘れてはならない。
  18. 公正な立場で言えば、トランプ政権は以上の選択肢を示してなんらかの対話を金正恩に求めるべきだと思う。まさしく取引を目指す「ドナルド流」だ。これにはアジア各国も異論はないはずで、朝鮮半島の緊張緩和はだれもが望むところだ。2017年にこれが実現するよう祈る。北朝鮮で危機状況が発生すれば考えるだに恐ろしい。
Harry J. Kazianis (@grecianformula) is Director of Defense Studies at The Center for the National Interest and Fellow for National Security Affairs at the Potomac Foundation. Kazianis also serves as Executive Editor of The National Interest.


2017年2月14日火曜日

トランプ政権はISIS壊滅に向けてどんな動きを示すだろうか


トランプ政権が発足してから変化の流れが早くなっている気がします。以下ご紹介の記事でも前提としていたフリン補佐官が辞任してしまいました。ISISとの戦いはまだまだ続きそうですが、新政権の新思考で事態をうまく展開してもらいたいものです。

The National Interest

Here's How Trump's Pentagon Could Take On ISIS

February 7, 2017


ドナルド・トランプ大統領は国防長官および統合参謀本部議長にイラク・シリアのイスラム国(ISIS)に猛然と対決する案の作成を求めている。また大統領執行令では案の提出は2月末締切となっている。
電話一本で済む指示をわざわざペンタゴンまで足を運んで署名式を開催したのは大統領がISIS問題を真剣に捉えていることの現れだ。新政権の中東政策はまだ固まっていないが、いかなる政策になろうともISIS打倒が最上段に乗るのは間違いない。選挙運動中は「奴らをふっとばす」と主張していた大統領の公約はISISには海賊集団の末路を準備する(つまり壊滅)として政策に落とし込むとする。
ペンタゴン上層部にはオバマ政権時からの選択リストがあるが、前大統領も対ISIS作戦としては有効とは見ていなかった内容もある。ダンフォード統合参謀本部議長はISIS問題でトランプ大統領、ペンス副大統領と繰り返し会見しており、ホワイトハウスにもペンタゴンから出てくる提案内容は察しがついているようだ。いずれにせよ国家安全保障会議は今後30日間で考えられる選択肢全部を深く検討するだろう。
提案内容はおおむね以下に要約されるはずだ。
1. 戦術裁量権を拡大する
世界共通の交戦時の指揮命令系統の原則があり、武力衝突では敵側が民間人を利用する傾向がある際には特にこれが重要だ。ISISはこの戦術を多用している。モスルでのイラク攻勢が長引きイラク治安維持部隊に多大な損害が生まれたのはおよそ百万人の住民が戦闘の真っ只中にいたためだ。ISISは抜け目なく米軍は多数の住民がいれば空爆を実施しないと踏んだのだ。
ISIS掃討作戦をモスルで加速すべく、ペンタゴン上層部は交戦規則の変更を命じることができたはずだ。イラク治安維持部隊と共同作戦中の特殊部隊にもっと裁量を与えるとか、支援航空隊に現在は禁じられている民間人被害のリスクを承知で攻撃させるとかだ。残念ながら目標リストが拡大すれば民間人殺傷のリスクも増えることになるのは特に人口密度の高い都市部にあてはまる。トランプ大統領が米主導の空爆で数百名の現地市民の犠牲もやむを得ないと判断すれば、モスル解放はもっと早く実現し、作戦展開ももっと激烈にできていただろう。
2. 地上部隊を増強する
6千名の米軍隊員がISIS攻撃の顧問ならびに特殊部隊として現地にいる。これは2006年から2008年の最盛期の150千名体制とは大違いだ。当時はイラクはばらばらになりそうな状況だったがこれがオバマ政権で甘受できる最大値だった。オバマ大統領は国内政治の風向きからイラク・シリア派兵はこれ以上無理と判断していた。またオバマは千名単位で米軍を増派し、最前線近くに送っても効果は少ないと強く信じていた。現地友邦勢力を増強すればよいのであり、米兵が戦い命を犠牲にする必要があるのか。
ただしオバマ政権時の前提は消えた。保安官が変わり、新保安官は結果を求めている。しかも迅速に。CNN報道ではペンタゴンは12千名までの追加部隊をシリアに投入する提案をする可能性がある。ISISが自称する首都ラッカの陥落のためだ。米特殊部隊が攻撃の先頭に立つだろう。残りの部隊はラッカ近郊に展開し、航空部隊に攻撃目標を指示する。これで米軍がISIS領土深くに進軍することになり、前政権の方針とは大きく変わる。シリア民主部隊含む現地友邦勢力が米軍部隊を助けるだろうが、その逆はない。
3. クルド人部隊に武器をもっと供与する
米軍はシリア民主部隊のうちアラブ人部隊をシリア北部で何度となく空中物資投下で支援してきた。この根底にはシリア国内のクルド人勢力がトルコに衝突するのを回避する意義があった。トルコはシリア国内クルド人勢力を徹底して憎んでおり米国政府はあぶなかしいバランスをとってNATO主要加盟国のトルコを怒らせず、トルコ国内のインチリック空軍基地から米軍機を引き続き運用可能とし、地上で実力を三年間にわたり実証済みのクルド人勢力にも良い顔をしなければならない。トランプ大統領は外交上の配慮など無視するかもしれない。もしシリア国内のクルド人戦闘部隊がISIS地上作戦で一番有効な勢力だとわかれば、米国はクルド勢力が求める武器を配布するだけの思慮があっていいはずだ。
4. 敵の探知、捕捉、壊滅
スタンリー・マクリスタル、マイケル・フリン両将軍が特殊作戦、情報収集をイラク・アフガニスタンで指揮していたころ、米軍はテロリスト拠点への強襲作戦を毎晩実施していたものだ。強襲して大量の情報を回収し即座に司令部へ送り分析され、さらに強力な戦闘集団への作戦に応用されていた。この動きはF3EADと呼ばれ、find探知し、fix目標をおさえ、finish全滅させ、exploit情報を回収し、analyze分析し、disseminate次回作戦に応用するとの意味だ。このやり方でイラクのアルカイダは2010年にほぼ壊滅状態に追い込まれた。
マイク・フリンはこのF3EDづくりに一役買っており、今やトランプ大統領の国家安全保障担当補佐官である。一般閣僚が堆積したあとで大統領と直接協議できる立場だ。フリンはF3EADの復活を主張し、情報収集面を強調する形に変える可能性がある。その目的はISIS指導部を根本から壊滅することだ。
トランプ大統領はどんな選択をするだろうか。国内政治面での逆効果をあえて甘受しても数千名の追加派兵をイラク、シリアで命じ、米軍の死傷者増加を受け入れるだろうか。あるいは前任者の政策を継承し、地上戦は現地軍に任せ、米軍は空爆を強化するだろうか。最高司令官の検討課題は多いようだ。■
Daniel R. DePetris is a fellow at Defense Priorities.
Image: U.S. Marine Pfc. Garrett Reed during a security patrol in Garmsir, Afghanistan. Flickr/DVIDSHUB

2017年2月11日土曜日

★★米海軍の将来戦力構成でCSBAが抜本的改革案を提言



どこでも海軍は保守的な組織で思考方法もともすれ固まりがちです(以前は大艦巨砲主義、今は巨大空母第一主義でしょうか)トランプ政権でこれまでの縮み志向から一気に拡大するチャンスが来た米海軍ですが戦力編成に悩んでいるようです。そこでシンクタンクCSBAが思い切った提言を議会に提出したようです。果たして海軍の本流思考にはどう受け止められるのでしょうか。

Big Wars, Small Ships: CSBA’s Alternative Navy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 09, 2017 at 12:16 PM

Wikimedia CommonsCSBAはスウェーデンのヴィスビ級に類似したコルベット艦40隻の導入を提言。
WASHINGTON: 米海軍には小規模艦船を多数整備した大規模艦隊が必要なのであり、戦力構造検討結果とは違う形にすべきだと議会委託の戦略予算評価センター(CSBA)が独自の検討内容を発表した。
CSBAも海軍には対テロ作戦やプレゼンス示威から大規模戦闘の抑止任務(必要なら戦闘する)への切り替えが必要だとの米海軍の主張では同じだ。ともに攻撃潜水艦を現行55隻から66隻に増やし、ミサイル潜水艦12隻の整備が必要とまでは共通している。ただしCSBA提言では水上艦艇で内容が大きく異なっており、内容は上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン議員の私案に近い。
「戦闘部隊」を構成できるのが大型艦だけと定義すると、CSBA案は340隻で海軍案(355隻)より僅かに少ない。(現在の戦闘部隊は274隻で構成)だが小排水量の哨戒艇まで入れると海軍案の368隻に対し、CSBA案は382隻になる。DARPAが開発中のシーハンターのような無人艦艇も入れるとCSBA構想は更に増えて462隻になる。海軍案ではこの種の艦艇はまったく入っていない。
Sydney J. Freedberg Jr. graphic from CSBA data

分野別でCSBA提言ではいろいろな違いがある。
  • 航空母艦:海軍CSBAともに原子力空母12隻が必要だと一致している(現在は11隻)が、CSBAはスーパー空母をより小型の通常動力「軽空母」(CVL)10隻で補完させる点が違う。CVLは現行の「大型」強襲揚陸艦を発展させ、航空機運用のため揚陸艇運用は犠牲にする。マケイン議員も軽空母構想を推すが、海軍・海兵隊は大型空母の柔軟性を好み、この構想に懐疑的だ。
  • 巡洋艦・駆逐艦:海軍案では「大型水上戦闘艦」つまり巡洋艦・駆逐艦を104隻体制にするとあるが、CSBAは74隻で十分とし、全部駆逐艦であり、巡洋艦は不要とする。報告をまとめたCSBAのブライアン・クラークは記者に大型巡洋艦は無駄な存在で高性能の無人装備や新しい作戦概念である「分散型攻撃力」では小型艦艇により多くのミッションが実施できるとする。たとえば空母打撃群に巡洋艦を対空装備の中心艦とするかわりに、CSBA提唱の重フリゲート艦(下参照)を中心にするとする。この新フリゲート艦は同時に低脅威も担当し、駆逐艦に強度の戦闘任務に専念させる。
  • フリゲートおよびLCS: 海軍は一貫して「小戦闘艦艇」52隻が必要と主張し、問題多い現行の沿海戦闘艦と今後登場する「フリゲート」拡大版を想定している。各艦は3,000トン超の大きさだ。CSBAはこれに対して小艦艇がより多く必要とする。新設計のフリゲート(4千から5千トン規模)が71隻でLCSには不可能な機能を実現する。例えば多目的ミサイル発射管のVLSによる広範囲の防空任務がある。大型フリゲート艦は空母護衛の中心であり、揚陸艦や補給部隊も支援する他、無人艦艇や有人哨戒艇と行動をともにする。新企画のフリゲート艦建造は2020年に開始する。マケイン議員も同様にLCSを「超えた」多機能艦が「なるべく早く」必要だと主張。
  • 哨戒艇:現在はサイクロン級哨戒艇13隻があり、300トンの小艦艇だが「戦闘部隊」の勘定に入っていない。単独で大洋横断できないためだ。CSBAはそこでやや大きい規模の艦艇を多数整備すべきと主張し、600トン程度40隻が必要と算出した。コルベットとも言うべき艦となりスウェーデンのヴィスビをCSBAはモデルとしている。コルベットは外国海軍で多用しているが、米海軍には歴史的に異例な存在だ。マケイン議員も排水量(800トン未満)の哨戒艦の建造を2020年に開始すべきと主張している。
  • 無人艦艇:海軍も無人水上艦(USVs)や無人潜水艇(UUVs)の試験をしているが、戦闘部隊の一部とは位置づけていない。CSBAは逆に「超大型」USVを40隻と「超大型」UUV40隻の整備を主張。有人艦艇の代わりとするのではなく、消耗品に近い扱いで高リスク任務に投入する。偵察や電子戦や機雷敷設だ。海軍の遠征派遣用高速輸送艦(旧名称JHSVs)は無人艦艇の母艦に任務変更する。
内容を見た議会スタッフの一人が「これまで30年間の艦艇建造の流れを大きく変化するもの」「艦隊規模を現実的に引き上げる唯一の方法だろう」と感想を述べている。「軽空母」がこの中で一番大きな変化とし、「空母中心主義」の海軍がどんな意見を言うのか読めないとしつつ、歴史を見れば各種規模の空母を運用した前例はあると指摘した。
CSBAのもう一つの提言に艦隊構成を2つに分ける変更がある。艦艇の大部分は「抑止力部隊」としてあらたに編成する10個部隊に所属し、地域別に任務海域を割り当てる。各部隊は大規模戦闘が発生した場合、第一線部隊となる。予備部隊は世界規模の「消防隊」であり、米国に配備する「派遣部隊」とし、ハイエンド機能の艦艇として原子力水推進スーパー空母二隻と護衛部隊を常時展開可能として保持する。
DARPA's Sea Hunter (ACTUV) unmanned ship
DARPAがすすめるACTUV「シーハンター」無人艇
費用はどうなるか。CSBA試算での取得費はオバマ政権が残した2017年度建艦案に年間35億ドルの追加が必要で、18パーセント増となる。(197億ドルから232億ドルへ) 作戦運用維持費で訓練、燃料調達に追加19億ドル(14%増)の165億ドルが必要となる。予算管理法ではこれだけの金額を上乗せするのは困難だが、トランプ大統領は同法を終わらせ国防予算は大幅増とする公約しており財政赤字の増加も甘んじる姿勢だ。■



2017年1月25日水曜日

何が起こっても不思議はないトランプ政権の国防政策をあえて予測すると


大統領選挙というルールあるゲームでの勝者を認めない、というのがよくわかりません。自分が選んだ候補じゃないから認めたくないというのでは話になりません。移行期間が終わり、すでに新政権が始まっていますが、初めての21世紀型大統領に期待できることと失望させられることが混じり合うのではないでしょうか。ひょっとするとレーガン時代が再来するのかもしれません。ここに掲載したのは大西洋協議会という超エリートの観点ですが、現実を受け入れてよく見ようとしていますね。さすがです。

Aviation Week & Space Technology

Opinion: Under ‘High-Beta’ Trump Presidency, Anything Could Happen

Jan 20, 2017Steven Grundman | Aviation Week & Space Technology

ドナルド・トランプ政権が国防政策でどんな前兆を見せてくるだろうか。国防予算は増額されるのか。軍の規模、構造、性質を変えるのか。重要な調達事業を取り消すのだろうか。今のところは「そうなるかも」としか言えない。トランプの選挙運動では国防については注意深く政策を検討した効果が出ており、政権移行中も予測のブレを示す兆候はほとんど皆無だった。
新政権から出てくる可能性はきわめて幅広く、予測を試みるのは無謀と言わざるをえない。よくトランプのペンタゴン変革の方向性を聞かれるが、著者は毎回ため息をついて「何が起こっても不思議はない」と答えている。あるいは機関投資家から「トランプの行っていることは『ハイ・ベータ』(ベータとは株式の変動を示す用語で分子生物学や高血圧症でも使う言い得て妙の表現だ)」との発言も耳に入ってくる。
ここまで不確実性がある中で著者は予測を断念し、変化の兆しとなる現象を直視することとした。以下は新政権の方向性を図る意味で著者が今後フォローする指標というべきものである。
国防支出: トランプ政権の提言は総額方式(基本国防予算に『海外緊急作戦(OCO)予算を加える)でオバマ政権と比較するとどうなるのか。2017年分としてオバマ政権は総額5,890億ドル(基本5,240億ドル+OCO650億ドル)を要求した。2018年は基本5,570億ドルと見られ、ここに著者は620億ドルがOCOとなると試算して総額は6,190億ドルに膨れ上がると見ている。新政権は国防支出案を公表すると前政権が残した総額1.208兆ドルの2017年度から2018年度にかけての合計予算が変わるはずでその中で新政権の国防支出の方向性が反映されるだろう。
国防体制: アフガニスタンの米軍部隊はどうなるだろうか。昨夏にオバマ大統領はアフガニスタン駐留部隊を8,400名に再設定した。これは同年で二回目のペンタゴンによるホワイトハウスへの要請でアフガニスタン撤兵のペースを落とすことになったものであり、当初官邸側は「大使館警備」程度の規模にしたいと希望していた。自由の前哨作戦はそれでも依然として米軍の海外展開で最大規模の緊急作戦である。トランプ政権がアフがニスタンにどこまで介入する意図があるかで展開部隊の規模も変わってくる。アフガニスタンでは米軍は約6千名のNATO部隊と共同作戦を展開していることもトランプのアフガニスタンでの決定に影響するだろう。
調達事業: F-35Aで機体単価が低率初期生産ロット10(2018年から90機生産)の交渉でどうなるのだろうか。トランプはツィッターでボーイングとロッキード・マーティンを非難したことが調達方針よりは国防支出を巡る戦いに影響を及ぼしそうだ。トランプは価格を真正面から取り上げ調達事業の変化の争点にした。F-35事業推進室長のクリストファー・ボグデン中将は昨年12月に「ロット10では6%ないし7%は機体価格が下がるのではないか」と発言しロット9と比較していた。つまりロット10では一機95百万ドルを下回る(あるいは上回る)ことになり、そうなれば新大統領の姿勢でペンタゴンの調達事業も本当に変わるきっかけになるかもしれない。
その他まだわからないこともある。ドナルド・トランプは政治駆け引きの才能があるが、公共政策分野は帰納法思考では対処出来ないほど広範囲に及ぶのであり、国防政策の内側にどれだけ近づけるかで生計を立てる筆者含むわれわれとしては風評と事実を区別するためにも意味のある道標がほしいところだ。
Steven Grundman is the principal of Grundman Advisory and Lund Fellow at the Atlantic Council. His views are not necessarily those of Aviation Week.

2016年12月4日日曜日

トランプの台湾電話会談の次に何が来るのか


南シナ海、東シナ海で現状維持に堂々と挑戦する中国がトランプ次期大統領の突然の台湾総統との電話会談で現状が破られることを危惧するのはなんという皮肉でしょうか。台湾の独立と繁栄を守るのが米国の大きな目標です。台湾内部の意識変化もあり、そろそろ台湾に国ではない扱いをするのを変える時期に来ているのでしょう。台湾が台湾としてのアイデンティティーを持てば(中国が一番忌避する考え)、一つの中国原則はそのままで、誰もが得をする結果になるのですが、計算高い中国人がこれに気づいていないはずはないのです。台湾侵攻のシナリオはたしかにありますが、何ら生産的な結果を招かないことも自明の理です。建前と本音をうまく使い分けられる中国人と台湾人がうまく並列できるといいですね。しかし今回の電話会談で一番びびったのは外交官僚であり親中派だったのは痛快ですね。

The National Interest

Donald Trump Talks to Taiwan: What Happens Next?

December 3, 2016


ドナルド・トランプ次期大統領が台湾総統蔡英文と12月2日に電話会談した。その事自体になんら誤りはなく、むしろ今後のアメリカの台湾政策で良い兆候となるだろう。
  1. 米台関係には中国と取り交わした3文書による一つの中国政策から制約を受けている。一部は1979年に正式に中華人民共和国を承認するため必要だったが、残りは必ずしも必要ではない。
  2. 新政権は両国交流に塞がる成約を見直し緩和にもっていくべきである。
  3. 台湾に親しみを感じる勢力がこのことを長年提唱してきた。マルコ・ルビオ上院議員(共フロリダ)やスティーヴ・チャボット下院議員(共オハイオ)はともに煩雑な制約に手をつける法案を提出しており、上院版の2017年度国防予算認可法案でも同じ内容が盛り込まれている。
  4. 米台関係では他の課題も目白押しだ。たとえば台湾向け潜水艦、戦闘機の調達は待ったなしだ。台湾関係法の理念を再度確認し、レーガン大統領が1982年に台湾に約束した「6つの保障」も活かすべきだ。
  5. また台湾の国際社会での地位拡大も模索すべきだ。これは議会が長年懸念している。
  6. 両国の軍組織の間には装備品の統合化が極めて重要でこれがないと中国の侵攻から台湾の防衛がままならい。
  7. トランプ政権は閣僚級高官を台湾に政権一年目に送り、今回の電話会談が偶発の結果ではなく今後を象徴する意味があったと証明すべきである。閣僚級人物が訪問した事例はある。迅速に行えば政策優先事項を米国が急いで見直そうとしているとがわかるはずだ。
  8. 今回の両者電話会談では同時に両国関係に制約条件も生まれる。
  9. 米国が堅持してきた一つの中国政策で手直しが必要だとしても廃止はすべきではない。これまでの中国との安定関係の礎になってきたからだ。安定は東アジアの平和と経済成長を下支えし、米国も大きく恩恵を受けている。
  10. 今後両首脳が再び電話をくりかえすとしても、あるいはその他政策変更が生まれても現状変更にはそのままつながらない。また台湾とはまだまだ実行可能な課題が多くあるのだ。■