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2025年2月6日木曜日

ミサイル防衛庁が産業界にアメリカ版「アイアンドーム」のコンセプトを要請(Breaking Defense)

 


Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor Northrop Grumman image

極超音速・弾道追尾宇宙センサー(HBTSS)の構想図(ノースロップ・グラマン)



MDAのRFIは、2026年から2年刻みで2030年12月31日「以降」に展開可能な能力を求めている。


サイル防衛庁(MDA)は、ドナルド・トランプ大統領が1月27日に発表した「アイアンドーム・フォー・アメリカ(アメリカのためのアイアンドーム)」大統領令を、国防総省のプログラムとしては驚くべき早さで実施するべく産業界からアイデアを募集している。

 情報提供要請書(RF)は、トランプ大統領が米国防総省に対し、米国本土へのあらゆる航空攻撃を撃退する包括的な「シールド」の開発を命じてからわずか4日後に出された。RFIは、関心のあるベンダーに対し、2月28日までに関連する情報を示し、説明するよう求めている。

 産業界への要請は、幅広いアイデアを受け入れるように構成されており、2年間の「エポック」(2026年12月31日まで、2028年12月31日まで、2030年12月31日まで、そして2030年12月31日「以降」)において、どのような能力を「提供または実証」できるか詳細を求めている。

 MDAは、「弾道ミサイル、極超音速ミサイル、巡航ミサイル、およびその他の高度な航空攻撃による攻撃の脅威を探知し、打ち負かすための革新的なミサイル防衛技術(システムレベル、コンポーネントレベル、アップグレード)のアーキテクチャ、コンセプト、および作戦概念(CONOPS)の特定を支援するための市場調査を実施している」とRFIは詳述している。

 MDAは、国土に対するいかなる外国の空中攻撃からも国民と重要なインフラを抑止・防衛し、安全な第2撃能力を保証する次世代ミサイル防衛シールドを展開・維持するための潜在的コンセプトについて、産業界と協力することを望んでいる。

 関連技術のリストは、トランプ大統領令の切り貼りのように読める:


  • 弾道ミサイル、極超音速ミサイル、高性能巡航ミサイル、その他の次世代航空攻撃に対する、同業者、それに近い敵対者、不正な敵対者からの米国の防衛;

  • 極超音速・弾道追尾宇宙センサー層の配備加速;

  • ブーストフェーズ迎撃が可能な宇宙ベースの迎撃ミサイルの開発と配備;

  • ブーストフェーズの迎撃が可能な宇宙ベースの迎撃ミサイルの開発と配備;

  • 増殖型戦闘員宇宙アーキテクチャー(Proliferated Warfighter Space Architecture)のカストディ層の開発と配備;

  • 発射前およびブースト段階でのミサイル攻撃を撃退する能力の開発と配備;

  • 次世代型のセキュリティと弾力性を備えた、すべてのコンポーネントの安全なサプライチェーンの開発と展開。

  • 弾道ミサイル、極超音速ミサイル、高性能巡航ミサイル、その他の次世代航空攻撃の運動論的撃退を補強する非運動論的能力の開発と展開。

 興味深いことに、RFIは、宇宙開発庁(SDA)ではなく、MDAが極超音速・弾道追尾宇宙センサー(HBTSS)の配備を担当することを示している。HBTSSの運命は、対ミサイル迎撃ミサイルに目標座標を提供することができる高精度のミサイル追跡を提供するために最適化された中視野カメラを使用し、2機関の間で長年綱引きの対象となってきた。

 MDAは当初、極超音速ミサイルを空から打ち落とすための新型迎撃ミサイル「グライド・フェイズ・インターセプター」の照準を合わせるためにこのセンサーを開発した。しかし、SDAは昨年2月に最初の2つの試験衛星が打ち上げられた後、HBTSSプログラムを事実上中止し、技術の一部を新しい「火器管制が可能な」赤外線センサーの設計に吸収していた。

 従って、トランプ大統領令はHBTSSプログラムに再び命を吹き込み、MDAはRFIでその管理権を取り戻した。

 しかし、現状では、SDAは2つのHBTSSセンサーを、増殖する戦闘員宇宙アーキテクチャの追跡層に統合する計画はない。HBTSSが開発されたら、SDAの追跡層の衛星や地上システムと連携するように、どのように配備・運用されるのだろうか?

 もうひとつの未解決の疑問は、アイアンドーム計画の一環としてMDAが開発する予定の宇宙基地型迎撃ミサイルと指向性エナジー迎撃を、国防総省のどの組織が運用するのかということだ。

 国防総省の地上配備型ミッドコース防衛システムの尖兵となる地上配備型迎撃ミサイルは、(アップグレードのための資金も含めて)MDAが「管理」しているが、米軍北部司令部を支援する運用管理は陸軍が行っている。さらに、空軍も現在の宇宙軍も、包括的なシステムのサポート機能を提供している。この長年の取り決めは、次世代インターセプターの代替プログラムにも適用される。

 しかし、米宇宙軍は現在、統一司令部計画のもと、宇宙空間での作戦に責任を負っており、その「責任範囲」は地球上空100キロから理論的には無限大に及ぶと定義されている。同司令部はまた、統合軍のグローバル・センサー・マネージャーとしての役割も担っており、ミサイル警戒衛星の現在の宇宙赤外線システム星座を運用している。そして、宇宙軍は作戦を遂行するために多くの人員をSPACECOMに供給しているが、他の軍も宇宙スペシャリストと能力を提供している。

 防衛界は答えを待つ必要はないかもしれない。この大統領令により、ピート・ヘグセス国防長官は3月28日までに「次世代ミサイル防衛シールドのための参照アーキテクチャ、能力ベースの要件、実施計画」を提出しなければならないからだ。■


Missile Defense Agency asks industry for American ‘Iron Dome’ concepts

The agency's RFI seeks capabilities that can be deployed in "epochs" starting in 2026, and running in two year increments to "beyond" Dec. 31 2030.

By   Theresa Hitchens

on February 03, 2025 at 2:44 PM

https://breakingdefense.com/2025/02/missile-defense-agency-asks-industry-for-american-iron-dome-concepts/


2023年4月1日土曜日

グアムを中国ミサイル脅威から守り抜くべく、米軍は懸命の努力を続けている

  • 西太平洋の拠点グアムを中国のミサイル脅威から死守すべく米軍は多額の予算を投じる

  • モデルはイスラエルの多層構造ミサイル防衛だ

  • ただし、異なるシステムの統合が課題

  • 中国は各種ミサイルによる飽和攻撃を狙っているのか



Aviationweek記事からのご紹介です。


アムの人里離れたノースウェスト・フィールド滑走路にあるサイト・アルマジロの朽ち果てた駐機場に、米陸軍の最新鋭ミサイル迎撃砲台が、弾道ミサイル攻撃から米領を守る唯一の存在として、ぽつんと立つ。

2015年に北朝鮮の弾道ミサイル実験に対応し、陸軍が終末高高度地域防衛(THAAD)砲台7隊の1つをマリアナ諸島に永久配備して以来、多くの変化があった。以来、弾道ミサイル能力は拡大したが、西太平洋における米軍の重要な作戦拠点であるグアムにとって、平壌は第二級の脅威と位置づけられている。

今や最大の懸念は中国だ。この8年間で、中国軍は極超音速滑空体(HGV)を搭載するDF-17ミサイル、DF-26中距離弾道ミサイル(IRBM)、空中発射のCJ-20陸上攻撃巡航ミサイル(LACM)など、グアムを標的に多様な新戦力を実戦投入してういる。複数の方向から数十発発射すれば、中国の兵器はTHAADバッテリーのTPY-2レーダーと迎撃ミサイル48発を圧倒できる。

コロンビア特別区の3倍の面積を持つグアム島をミサイル攻撃の前に難攻不落の要塞にするべく、数十億ドルをかけた取り組みが進行中だ。ミサイル防衛庁(MDA)は2024年末までに運用開始する第一層防衛の用地を選定した。MDAは、全方向からあらゆる種類のミサイル攻撃をはねのけることができるようになるまで、グアムで新しい防衛施設を追加していく。

さらに、MDAが選択したアーキテクチャは、陸上と海上のミサイル防衛への米軍アプローチで統一をめざしている。グアム防衛システムは、陸軍、海軍、MDAが数十年にわたり別々に開発してきたセンサー、迎撃ミサイル、コマンド&コントロール・ノードを統合する。その過程で、統合アーキテクチャは、軌道ロケットから発射されるHGV、ステルス巡航ミサイル、高高度気球など、国土に対する多様な新しい脅威に対処する新しいテンプレートを提供する可能性もある。

MDA局長ジョン・ヒル海軍中将は、3月24日に開催された戦略国際問題研究所主催のイベントで、「グアムの位置は戦略的な場所である。インド太平洋で起こるかもしれない小競り合いには欠かせない存在です」と述べた。

将来の防衛は、容量、カバー率、柔軟性など、現在のアーキテクチャの限界を解決する必要がある。アルマジロ施設のTHAAD砲台は、北西からの弾道弾の終末期には効果的な対抗手段となるが、あらゆる方角からやってくる高機動HGVやLACMなどの低空脅威にはほとんど抵抗できない。

大まかに言って、グアムの防衛計画は単純明快だ。海軍のイージス戦闘システムの陸上型が、DF-26や空中発射のDF-21といったIRBMやHGVの撃破に割り当てられる。遠い将来、MDAは、レイセオンSM-6迎撃ミサイルの特殊バリエーションに依存する既存のシーベースターミナル防衛を補強し、より効果的にHGVに対抗するためグライドフェーズインターセプター(GPI)を追加する予定だ。

LACMや長距離滞空弾を迎撃するため、MDAは中距離ペイトリオットミサイルバッテリーと陸軍の短距離間接火器防護能力(IFPC)インクリメント2の組み合わせを選択した。これはダイネティクスのエンデュアリング・シールドランチャーとレイセオンのAIM-9Xサイドワインダーの地上発射バージョンを組み合わせたものだ。

グアムにおけるMDAのビジョンは、イスラエルで展開されている多層アーキテクチャに似ている。イスラエルの国土はグアムの5倍もあり、地域およびローカルなミサイル攻撃という同様の360度脅威に直面している。

イスラエル航空宇宙産業ボーイングのアロー3および4迎撃ミサイルは、IRBM一斉発射に対する最前線の防御で、ラファエル/レイセオンのデイビッズスリングシステムは、短距離弾道ミサイルとLACMを打ち落とすスタナー迎撃ミサイルを装備している。最後に、米軍が2021年にグアムに実験的に配備したアイアンドームシステムは、ロケット弾や迫撃砲、滞空弾による攻撃からイスラエルを防衛している。

一見簡単そうに見えるが、MDAのグアム向けアーキテクチャには、完全解決まで数年かかりそうな統合の課題が多数ある。

グアムの弾道ミサイル防衛ソリューションの進化が課題を物語っている。2021年に米インド太平洋軍司令官を退任したフィル・デビッドソン海軍大将(退役)は、定置型固定サイト・イージス・アショア・システムをグアムに設置する選択肢を提唱していた。

しかし、バイデン政権が2023年度予算でグアム防衛システムの立ち上げを約束したころには、MDAは別のアプローチを選択していた。グアム南西海岸には標高1,000~1,300フィートの山が連なっており、1カ所で水平線まで360度カバーすることは不可能だ。代わりに、グアム政府関係者は、イージス戦闘システムの4つのSPY-6レーダーアレイを島内に分散させようとしている。レーダーはまた、固定プラットフォームから車両で移動され、システム名称をTPY-6に変更する。

イージス艦の迎撃ミサイルでは、長距離のSM-3と短距離のSM-6がIRBMとHGVに用意されているが、TPY-6はLACMの探知と追跡も提供する。LACMはペイトリオットとIFPCに搭載され、海軍のレーダーと陸軍部隊の間に統合が必要となる。

分散型センサーと異なるタイプの発射台の統合は、ミサイル防衛では新しい話題ではない。20年前から、海軍のCEC(Cooperative Engagement Capability)プログラムでは、地表と空中のセンサーをネットワーク化し、戦闘機や巡航ミサイルによる攻撃を撃退するための統合火器管制システムを構築してきた。最近では、陸軍の統合型航空ミサイル防衛戦闘指揮システムにより、THAADバッテリーのXバンドレーダーがペイトリオットバッテリーのCバンド火器管制システムに軌道を渡せるようになった。

グアム防衛システムの場合、MDAは、イージスシステムのSバンドTPY-6 レーダーからペイトリオットバッテリーの Cバンド MPQ-53 火器管制レーダーへ長距離目標追跡をどう引き継ぐかの決定を迫られる。アーキテクチャのレイヤーが増えるにつれ、MDAが提案する Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor、Space Development AgencyのTracking Layer、Space Systems Command の Missile Track Custody Program など、宇宙ベースのセンサーから導かれる GPI の到着でも同様の統合課題が残る。

MDAは、CECからペイトリオットバッテリーに巡航ミサイルの追跡データを引き渡す能力を実証中だ。2021年7月のJoint Track Management Capability (JTMC) Bridgeのテストでは、MPQ-53レーダーが妨害を受けていても、ペイトリオット部隊がミサイルを撃墜できた。

軌道レベルの情報を融合させることで、別の場所のセンサーが遠隔地のミサイル砲台に発射合図を出す、ローンチオンリモート機能が可能となる。

MDAは最終的に「engage-on-remote」能力の実現を目指しており、遠隔地センサーが発射後に追跡座標の更新を連続的に迎撃ミサイルに供給する。こうした継続的な更新は、弾道ミサイルの予測進路の迎撃には必要ないが、高機動のHGVやLACMの撃墜には必要となることがある。

「これは簡単ではない」とヒルは言う。「イージス艦から飛来する弾道は、ICBSでは見れない。そして、そのトラックとICBSのトラックを関連付けなければならないのです。重複になりかねません」。

2021年7月のJTMCブリッジのデモンストレーションは重要だったが、戦闘能力の証明には至らなかった。

「トラックピクチャーを使えると確信できるようになるには、作業が多数残っている」(ヒル)。

グアムでは、MDAのオプションとして、イージス艦とICBMSの間で直接、JTMCブリッジ機能を通じ間接的に、あるいは弾道ミサイル追跡をサポートする設計のMDAの既存の指揮統制・戦闘管理・通信(C2BMC)システムを通じ間接的に追跡情報を融合する3レベルのいずれかを選択している。

「では、どれがベストなのでしょうか?C2BMC、レーダーへの直接タップ、それともブリッジ経由?」 とヒルは選択肢を並べた。「いろいろと研究しているところです」。

短期的には、予算圧力のためMDAはC2BMに向かうかもしれない。

「我々は[2024年のフィールドスケジュール]を満たすために、今、既知の方法を実行し、その後、継続的に改善していく」「しかし、非常に困難なエンジニアリング作業で、最初のインスタンシエーション(実体化)になりそうもありません」。■

Multibillion-Dollar Guam Defense Poses New Missile Defense Challenges | Aviation Week Network


Steve Trimble March 30, 2023


Steve Trimble

Steve covers military aviation, missiles and space for the Aviation Week Network, based in Washington DC.


2021年6月24日木曜日

重要拠点グアムを中国、北朝鮮のミサイル攻撃からどう防衛すべきか、MDAが新たな体制を検討中。さらに高性能防衛体制としてMDAが考える優先事業とは。

 



THAAD Missile Battery. Missile Defense Agency Photo

 

国はグアム防衛のためハイブリッドシステムの導入を迫られそうだ。グアムの地形の複雑さとミサイル脅威の想定が多岐にわたる背景があるとミサイル防衛庁長官が述べた。

 

ジョン・ヒル海軍中将は山地が多いグアムの地形を「挑戦しがいがある」とし、弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速ミサイルからの防衛に言及した。

 

6月22日ヒル中将は戦略国際研究所イベントで最終判断について「聞いて驚く人はいないだろう」と述べた。

 

ヒル中将は「イージスの地下展開あるいは移動展開」がグアム島で想定されるとし、「レーダーと兵装を分離する新しい技術」で飛来するミサイル撃破が可能だと述べた。

 

「イージスアショア(ルーマニアで稼働中、ポーランドで建設中)では不十分かもしれない」

 

イージスアショアではアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦と同じレーダーと垂直発射管システム(VLS)を地上基地に配備する。ヒル中将はイージスシステムは中国やロシアの極超音速ミサイル対応にも改良済みと述べた。

 

ヒル中将はミサイル防衛庁のグアム防衛構想はペンタゴンが検討中とし、完了後に議会へ送付すると明らかにした。また、グアム防衛で中心となる軍の選択は未決定とも述べた。

 

陸軍は終末高高度広域防衛(THAAD)システムは2014年にグアムに展開し、北朝鮮の長距離弾道ミサイル試験に対応した。グアムには大規模な艦船修理施設、海兵隊・空軍の大規模プレゼンス、陸軍分遣隊がある。

 

グアムで最も効果が高い装備を検討し、北朝鮮や中国のミサイル攻撃からグアムで可能な限り広範囲な防衛を実現するのが目標だとヒル中将は述べた。

 

前インド太平洋軍長官フィル・デイヴィッドソン海軍大将はイージスアショアのグアム展開で現在投入中の駆逐艦三隻の任務を解くのが望ましいと3月に発言していた。

 

「人員、装備等の防衛体制の進化はグアムから始めるべきだ。高性能かつ高度に適応でき実証済み装備としてイージスがあり、グアムのような固定地点に配備すれば常時360度の統合防空ミサイル防衛能力を第二列島線で実現できる」(デイヴィッドソン)

 

USNI Newsの質問に対しヒル中将はディエゴガルシア(英領)にも将来的に統合アプローチが導入されるかもしれないとし、グアム同様に地形条件のため防衛が難しい場所と述べた。

 

ディエゴガルシアには海軍の大型支援施設とあわせ空軍基地があり、B-52運用に供している。

 

米本土のミサイル防衛でも同様に統合方式が可能かについて、ヒル中将は「グアムはごく小規模の事例」と答えた。北方軍司令グレン・ヴァンヘック空軍大将と同様にヒル中将も「センサー網の整備は今すぐ必要」と強調した。

 

ヒル中将は「互角の実力を有する敵国が戦略巡航ミサイル攻撃を実行する事態を覚悟する必要がある」と述べ、ロシア爆撃機に巡航ミサイルをロシア領内から発射し米国を攻撃する能力があるとのヴァンヘック大将の先週の証言内容に触れた。

 

ヒル中将は冒頭で戦闘司令官には探知、統制、交戦に資する「全ドメイン認識が必要だ」と述べ、敵が発射した脅威を識別する能力が必須とした。

 

将来を展望しヒル中将はMDAの予算要求89億ドルの8割を研究開発試験評価にあてると説明した。長官就任三年目のヒル中将は優先事項として極超音速弾道ミサイル追尾宇宙センサー(HBTSS)とスタンダードミサイル6があると述べた。

 

そのあとに控えるのが次世代迎撃ミサイルで、ヒル中将は滑空方式迎撃手段を三番目の優先事項に加え、満額予算の承認を議会に期待すると述べた。

 

現在の脅威は弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機、無人装備と多岐にわたる。抑止と防衛のため「脅威全体を俯瞰する必要があり、単純な時代は終わった」とヒル中将は述べた。■

 

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2020年11月23日月曜日

日米共同開発のSM-3がICBM迎撃に成功。ミサイル防衛体制整備にどんな影響が出る?

 現地時間(ハワイ)2020年11月16日にSM-3 IIAがICBM迎撃に成功しました。日米共同開発のSM-3はBMDでどんな役割を期待されるのでしょうか。Defense Newsが伝えています。

海軍がスタンダードミサイル-3ブロックIIA迎撃弾で大陸間弾道弾迎撃に成功した。米国および同盟国向けのミサイル防衛の実効性が向上しそうだ。

ミサイル防衛庁によれば「脅威対象」のICBMはマーシャル諸島ケジェリン環礁から発射されハワイに向かった。「ハワイ防衛」シナリオをシミュレートし、海軍は駆逐艦USSジョン・フィンのイージス弾道ミサイル防衛システムでSM-3IIA迎撃ミサイル一発を発射し、ICBMを撃破した。

米議会は北朝鮮のミサイル脅威の高まりを意識し2018年度国防予算認可法でMDAに2020年末までにミサイル迎撃実験の実施で、SM-3 IIAでICBM迎撃が可能か検証させることにしていた。

結果として議会は正しかったことになる。

北朝鮮は長距離弾道ミサイルの発射テストを一時停止中だが、陸上配備・海中配備ミサイルの開発は続けている。最近の軍事パレードに北朝鮮は最新鋭かつ最大のICBMを参加させた。このミサイルの飛翔テストは未実施だが、既知のKN-08、KN-14、火星-14、火星-15の四種類はICBMに分類される。

ここに火星-16が加わり北朝鮮はICBM5型式をそろえたことになる。

イランでも同様の脅威が増えており、同国が北朝鮮とミサイル分野で協力していることを米政府は把握し、代償を払わせている。

今年4月にイスラム革命防衛隊の航空宇宙軍が固体燃料二段式ロケットで初の軍事衛星打ち上げを実施した。

現時点でイランはICBMは保有しておらず、ミサイルに2千キロの射程上限を自ら課している。だがイラン関係者が豪語しているように現在の自己規制も終焉を迎える時が来る。すでにイランは短距離中距離弾道ミサイルでは中東最大の規模の装備をそろえている。2019年度ミサイル防衛レビューではイランが「米国に対する戦略手段取得に熱意を示しているなか、ICBM配備が実現する可能性があり、宇宙計画の進展でICBM実現も早まる」と述べていた。

そもそもSM-3 IIAは中距離ミサイル迎撃用に開発され、今回の迎撃成功はMDAが同ミサイルを使い、米国を不良国家のICBMから防衛しようとしていることを意味する。米国の現在の本土防衛体制では地上配備迎撃ミサイルが44基カリフォーニア、アラスカにあり、ICBMを中間飛翔段階で撃破する。つぎに最終段階高高度地域防衛システム(THAAD)は強力なレーダーで弾道ミサイルを追尾し、ICBMが自国内に落下する寸前で撃破を狙う。

SM-3 IIA迎撃ミサイルでICBMを撃破する可能性が出てきたわけで、国防総省発表の図式はこれも含めたミサイル防衛体制を示している。

(U.S. Defense Department)

ミサイル防衛手段が増えることはいいことだが、他方でミサイル防衛能力の整備が逆にロシア、中国との関係を不安定にすると心配する向きもある。

だがその根拠は疑わしい。米本土のミサイル防衛体制は比較的軽微の攻撃が北朝鮮あるいはイランから飛来する前提で構築されている。SM-3 IIAを追加しても米国のミサイル防衛体制はロシアや中国の大規模攻撃には対応できない。

中ロいずれかからの大規模攻撃で米ミサイル防衛は簡単に圧倒されてしまう。両国が開発中の極超音速ミサイルや巡航ミサイルを想定すればこの危惧は現実のものだ。

そこで米国は核の三本柱で中国ロシアからの攻撃を抑止している。

ロシア、中国も米国のミサイル防衛体制が能力向上されてもSM-3 IIAでは大規模ミサイル攻撃を防げないと承知している。それでも両国は米国の動きを非難しつつ、裏で自国のミサイル防衛体制を整備しており、ロシアが配備中の本土防衛迎撃ミサイル数は米国を上回る。

今週のテスト成功で議会はミサイル防衛体制関連の支出に十分な予算を付けるだろう。今回は米国のミサイル防衛の整備で好機であり見逃すべきではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。なるほど、BMDも重要ですが、もっと重要なのが抑止力の維持ということですね。

 

Successful SM-3 weapons test offers missile defense opportunity

By: Bradley Bowman and Behnam Ben Taleblu    13 hours ago

 

Bradly Bowman is senior director of the Center on Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies, where Behnam Ben Taleblu is a senior fellow.

 

 

 

 


2020年6月21日日曜日

イージス・アショア事業で日米の認識の差が深刻な問題に発展しないか心配です

米ミサイル防衛庁(MDA)、日本の防衛省(MoD)、米海軍が見守る中、
USSジョン・ボール・ジョーンズ(DDG-53)がハワイ西の沖合でスタンダード
ミサイル-3(SM-3)ブロックIIAの初発射に成功した。2月3日 MDA photo.

国軍部はスタンダードミサイル3ブロックIIA弾道ミサイル迎撃手段の開発は完了し、生産に移る状態と認識している。共同開発国の日本が陸上配備弾道ミサイル防衛施設で方向転換しても影響は出ないという。


日本はイージス・アショアBMD施設2箇所を設置する計画だった。今週に入り日本政府はSM-3ブロックIIAのロケットブースターが陸上に安全に落下し一般市民に損害を与えないと確信できないため計画を再考すると発表。


共同通信は「防衛省はロケットブースターは演習場付近に落下すると2018年8月から説明しており、付近住民の生命に危害がないとしてきた。だが米国との協議から近隣自治体の安全は保証できず、ソフトウェア改良のみでは技術課題が解決できないとの結論に至った」と伝えた。


USNI Newsはロケットブースター問題はSM-3ブロックIIA限定ではなく、イージス・アショアで運用する装備で共通の問題と認識している。


ミサイル防衛庁長官ジョン・ヒル海軍中将のSM-3ブロックIIAへの自信は十分だ。


「日本政府が問題提起したが、当方は日本と密接に連絡しながら懸念内容の解決に努力する」とイージス・アショアに言及した。


「SM-3共同開発とは別問題だ。有償海外援助の別問題だ。開発は完了している。SM-3ブロックIIAは生産段階に移る。あくまでも別問題だ。イージス・アショアで威力が強化される。日本側と協力の上、事業再開に向かいたい」


二箇所新設の計画が頓挫したことから地域大でBMD体制へ影響が出るかを問われ、ヒル長官は「日本政府に別の選択肢も近く生まれると見ている。また、くりかえすが、一時停止であり、一部に懸念もあるが日本と協力しつつ実現をめざす。米国防衛の観点では....日本が建設すればわが国が利用し、建設しないならわが国として別の選択肢をさがすだけだ」


ただし長官はイージス・アショアの決定は日本政府のものとしてこれ以上の質問に対応しなかった。


イージス・アショアで最初に完工したルーマニアではSM-3ブロックIBミサイルを供用中だ。ポーランド施設は新型IIAを使う。スタンダードミサイルのメーカー、レイセオンは以下説明している。


「ブロックIIAはヨーロッパ向けミサイル防衛装備の中心である。ポーランドに展開し欧州向け段階別適応型アプローチ事業のフェイズ3が完成する」「日本との協力では、レイセオン・ミサイル&ディフェンスが次世代のSM-3ブロックIIA迎撃弾を開発中である。同型は特徴が2つある。ロケットモーターが大型化し、弾道ミサイルの脅威から広範囲を守り、大型弾頭にも対応できる。迎撃ミサイルの運動性弾頭は大型化され、探査・識別・捕捉・追尾の各機能が充実し、今後登場する高性能脅威にも対応する」■



この記事は以下を再構成したものです。

MDA Director Says SM-3 Block IIA Ready for Production, Unrelated to Japan's Decision to Back Out of Aegis Ashore



June 19, 2020 12:24 PM • Updated: June 19, 2020 6:25 PM


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