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2024年9月24日火曜日

米空軍の軽戦闘機構想、ひいてはNGADが抱える問題―長期間稼働を前提とした高性能機材から短期の稼働期間を前提に次々と機材を更新する調達へ根本的に変革ができるかが鍵だ(The National Interest)

 Light Fighter

Image Credit: Creative Commons and or Shutterstock. 



空軍参謀長デビッド・オールヴィン大将は、費用がかかり、長期にわたる次世代空優勢戦闘機(NGAD)にかわり、適応性が高く、小型で安価なモジュール式航空機を推奨しているが、同構想の実現の可能性はどこまであるのだろうか。


概要:

  • デビッド・オールヴィン大将空軍参謀総長は、次世代制空戦闘機(NGAD)のような費用がかさみ、長期にわたる戦闘機プログラムから、より適応性が高く、小型で安価なモジュール式航空機への移行を推奨している

  • 軽戦闘機プログラムにおけるF-16の成功に触発されたもので、将来のアップグレードを容易にし、維持コストを削減できるオープンシステムアーキテクチャを優先する。

  • この考え方は、開発サイクルを短縮し、変化していく戦場で常に有効性を維持することを目的とした「デジタル・センチュリー・シリーズ」などの以前の提案を反映している

  • しかし、このモデルへの移行には、政治的にも産業的にも大きな課題がある


NGADはどのように軽戦闘機に置き換えられるのか? 

米空軍高官の一部は現在、次世代のステルス戦闘機(NGAD)に代表される高コスト・高機能なプラットフォームの開発を棚上げし、将来的な新たな課題に対応するため小型・軽量かつ安価な機体を開発するという、次期ステルス戦闘機プログラムにおける劇的な転換を指摘している。

 この「軽戦闘機」のコンセプトは、7月下旬にロンドンで開催された英国の航空宇宙パワー協会による「グローバル航空宇宙長官会議」で、米空軍参謀総長デビッド・オールヴィン大将によって、米国の航空戦力の将来に関する議論の最前線に突如登場した。

 オールヴィン大将はプレゼンテーションの中で、半世紀以上運用することを前提とした、高度で非常に高価な新型戦闘機の配備による長年にわたる「長寿命化」設計アプローチを廃止し、新型戦闘機の配備に対する米国の開発アプローチを大幅に転換することを提案した。代わりに、オールヴィン大将は、新しい戦闘機は「適応性を重視する」べきだと提案し、長期的な耐久性より21世紀の戦場における絶え間なく変化する課題に対応するために素早く簡単に修正できる高度なモジュール設計に重点を置くべきだと主張した。

 オールヴィン大将はスピーチではNGADプログラムに言及しなかったが、空軍が設計と運用モデルの大幅な見直しを検討しているため、新しい制空権確保戦闘機計画は戦略的に一時停止状態にあるという他の関係者の意見と一致する。


オールヴィン構想に付けられた「軽戦闘機」対「重量戦闘機」という名称(氏はこの名称を自ら使用していない)は、当時非常に高価だったF-15イーグルの低コスト僚機としてF-16を開発した軽戦闘機計画を彷彿とさせる。F-16設計の焦点は、もちろんモジュール性や技術適応性ではなく、しかし、曲技飛行性能におけるエネルギー操縦理論の重視とフライ・バイ・ワイヤ制御の初めての採用により、画期的なものだった。

しかし、F-16が重要な技術的躍進をもたらした一方で、その真の名声は、同クラスの戦闘機よりはるかに低価格で戦える能力にあった。1機あたりの価格は、大型のF-15の半額強だった。これにより、米空軍は一般的に「ハイ/ローミックス」と呼ばれる戦闘機の組み合わせを採用することが可能となった。このアプローチは、長年にわたって変化を遂げ、F-15とF-16を「ローエンド」戦闘機、F-22とF-35を「ハイエンド」戦闘機と位置づけるようになった。

 オールヴィンは、開発に長い時間を要し、高額の調達費用とさらに高額の維持費用がかかるという、戦闘機設計に対する米国の既存のアプローチは、「根本的な前提」で、戦闘機が技術的に十分な期間、関連性を維持し、プログラムが費やす莫大な資金投入を正当化できるという考えに基づいていると主張した。しかし、現在では多くの国が独自のステルス戦闘機を配備しており、人工知能など新技術が防空システムの能力をかつてないほど向上させると期待されているため、オールヴィン大将は「基本的な前提」はもはや真実ではないと考える。

 「その命題は足かせになる可能性があります。機能はしていますが、以前ほど効果的ではありません」と、オールヴィン大将は耐用年数が過ぎた高性能戦闘機について語った。


軽戦闘機構想とデジタルセンチュリーシリーズ

F-22やF-35といった現在の米国のトップクラスの戦闘機のように、開発に着手してから実戦配備まで20年以上を要する長期の開発スケジュールを繰り返すのではなく、オールヴィン大将は、オープンシステムソフトウェアアーキテクチャや、旧モデルと共通のシステムを共有する新しい設計に切り替えて、迅速にアップグレードまたは廃棄することさえ可能な、極めてモジュール化された設計に傾倒することを呼びかけている。

 これは米空軍にとって新しい概念ではなく、実際、すでに10年以上にわたって何らかの形で進行中の次世代制空戦闘機プログラムに関連する、あるいは関連しない形で、近年、このテーマは何度も議論されてきた。オールヴィン提案は、多くの人々から「新しい概念の軽戦闘機」と呼ばれているが、非常に似たコンセプトが、2019年に空軍の調達責任者ウィル・ローパーによって「デジタル・センチュリー・シリーズ」として提案されていた。

 この名称は、もちろん、1950年代に急速に変化した戦闘機の設計を総称する「センチュリーシリーズ」から着想を得たものです。1954年に就役したノースアメリカンF-100スーパーセイバーから、1959年に就役したコンベアF-106デルタダートまで、6種類の戦闘機が含まれる。

 航空技術が急速に進歩した同時代において、オリジナルのセンチュリーシリーズは、1960年のランド・コーポレーションの分析で「最先端の技術と、開発された航空機サブシステムを当初の設計とは異なるシステムにも採用できる柔軟性を体現する航空機を開発する」試みとなるように重点を置いていた。

 つまり、当初のセンチュリーシリーズ戦闘機は、それぞれ全く新しいハードウェアを考案する必要はなく、ある程度モジュール化された航空電子工学システムやその他の搭載機器を使用することで、その後の航空機設計に再利用できる技術を迅速に進歩させることを目指していた。 

ローパーによる「デジタル・センチュリーシリーズ」は、そのコンセプトをさらに進化させ、デジタルエンジニアリングと仮想テスト環境を活用して、近代的なモジュール式戦闘機での運用に向けて戦闘機設計とサブシステムの成熟を迅速に進める。

 また、オールヴィン大将は当時、ローパーの提案を積極的に支持し、「『長持ちするように作られた』という言葉は20世紀のバンパーステッカーのようなもので、その前提は、長持ちすれば適切であるというものでした。それはもはや真実ではないと思います」と述べていた。

 2021年には空軍参謀総長(現統合参謀本部議長)であったチャールズ・「CQ」・ブラウン大将も同様のコンセプトについて議論し「第5世代マイナス」と呼ぶ戦闘機設計に転換することを提案していた。これは、F-22やF-35用に開発されたものをベースにしたモジュラーシステムを活用し、耐用年数が短く低コストの航空機に搭載するものだ。

 これにより、航空機設計と性能の急速な進歩が可能になる。なぜなら、新型戦闘機の改良型は、前の設計での経験から培った一連の改善を施したもので、前の設計と類似しているからだ。パイロットや整備士は、機種変更の際にも、システムや機体の機能の大半が同じであるため、訓練上の課題は最小限で済む。

 10年ごとにゼロからの設計を採用するのではなく、前の機種から次の機種へと、戦闘機機体やシステムの大部分が維持され、アップグレードや変更が必要な設計要素や内部コンポーネントのみが交換される。ステルス性、航続距離、滞空時間の向上を目的とした異なる主翼や尾翼の設計が採用される可能性がある一方で、コックピット、エイビオニクス、その他の搭載機器は変更されない可能性もある。モジュール式のエイビオニクスシステムは、既存のジェット機から単に交換されるか、次の機種で交換される可能性があり、その結果、訓練やメンテナンスの都合上、互いに非常に類似した戦闘機が入れ替わり立ち替わり配備されることになるが、敵対国の防衛力の進歩を相殺する目的で、新しい技術や設計手法が継続的に導入される。


戦闘機産業に新たな活力を吹き込め

戦闘機の耐用年数を短縮することは、最新鋭の戦闘機技術を確実に空に投入することよりも、さらに多くの利益をもたらす可能性がある。また、衰退しつつあるアメリカの戦闘機産業を活性化させ、近代的な戦闘機プログラムの最も高価な部分である長期維持費を劇的に削減することも可能である。

 現在、戦闘機事業を継続している米国の大企業は、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ボーイングの3社のみであり、新規戦闘機プログラムが非常に少ないため、今後新規企業が参入する見込みはほとんどない。ロッキード・マーチンがF-22とF-35の両方の契約を確保しているため、同社の「スカンクワークス」部門以外で設計された完全新設計の戦闘機が米軍に配備されると実に40年以上ぶりとなる。次世代の航空優勢競争ではロッキード・マーチンが有力候補と見られているため、ロッキード・マーチンが半世紀以上にわたって新戦闘機設計の独占を維持する可能性は十分にある。

 戦闘機の契約の機会が少ないため、他企業が戦闘機市場に参入しようとする機会はおろか、その動機すら存在しない。

 しかし、10年ほど運用する戦闘機にシフトするということは、現行の戦闘機が就役し次第、次の戦闘機の初期開発に着手できることを意味する。また、どの企業が開発したコンポーネントやシステムも、他社が開発したシステムと統合しシームレスに動作することを保証するオープンシステムソフトウェアアーキテクチャを使用することで、各新型戦闘機の設計は、コストを抑えるために旧式システムを維持しながら、アップグレードされたシステムに交換するだけで済みます。これにより、小規模な企業でも同じオープンフレームワークを使用して独自のモジュール設計を提出することが可能になるかもしれない。

 戦闘機の運用寿命を60年以上から10~20年程度に短縮することは、F-35のような素晴らしいジェット戦闘機に資金援助するよりもさらに高額になるように思えるかもしれないが、長期的には実際にははるかに低コストになるという主張もある。


新型戦闘機製造を頻繁に行えばコストが本当に抑えられるのか?

現在、戦闘機開発プログラムの総コストの大半は、長期的な維持に関連するものとなっている。つまり、航空機の運用、維持、修理、耐用年数にわたるアップグレードのコストだ。

 例えば、F-35プログラムは、2兆ドル規模とよく言われるが、この莫大な数字は、これらのジェット機の研究、開発、調達にかかる高額な費用と言われますが、実際には、その数字の1兆6000億ドル、つまり総費用の80%は、ステルス戦闘機を2080年代まで有効に保つために必要な維持管理費の予測額に由来している。

 大幅に単純化して計算すると、65年間運用される2,500機には、約2兆ドルが必要となる。つまり、65年間にわたって1機あたり約8億ドルが投資され、うち約6億4,000万ドルが維持費に充てられ、1機あたりの研究開発費および調達費は約1億6,000万ドルとなる。

 維持費は時が経つにつれて増加する傾向にあるが(古い車を走らせ続けるには費用がかかるのと同じ)、計算を単純化してF-35の耐用年数にわたる予測費用を平均化すると、維持費だけで、同等の新型戦闘機の設計の研究、開発、調達を16.25年ごとに実施できることになる。さらに、その後の各設計にはすでに生産されているモジュール式システムを使用し、機体別の修理基地などを建設する必要性を排除することを考慮すれば、10年から15年ごとに新型戦闘機を配備したほうが、低コストのオプションとなる可能性さえあることが分かる。

 もちろん、その可能性にはかなりの数の前提条件が伴う。例えば、主要コンポーネントの修理基地は戦闘機の更新の間に大幅なオーバーホールを必要としないという考え方や、戦闘機の改良のたびに大幅なオーバーホールが必要になることはないという考えや、新技術がF-35プログラムの度重なるコスト超過をほぼそのまま繰り返すだろうという考えなど、だ。そのため、このより頻繁な取得モデルへの移行にかかる実際のコストは、我々の見積もりよりも大幅に高くなるか、あるいは低くなる可能性がある。そして、そこに問題がある。


適応性を重視すれば不確実性を重視することでもある

米空軍が軽戦闘機またはデジタルセンチュリーシリーズに移行する最大の課題は、現代においてこのようなモデルが試みられたことが一度もないということだ。そのため、最も効果的な進路を評価しようとしても、信頼できるデータがほとんどない。いずれの決定も、21世紀末までずっと影響を及ぼす新たなコストのレバーの支点となるため、現在の段階での些細な誤算が、数十年後には乗り越えられないほどの予算不足に急速に発展する可能性がある。

 空軍の調達は産業および経済の両面で巨大な存在であり、巨大企業であれば、このような劇的な方針転換を行うには、その部門内、そしてさらに可能性が高いのは、米国の産業基盤内の文化的な惰性を克服する必要がある。ロッキード・マーティンのような企業にとって、長期にわたる維持管理を含む戦闘機の契約を獲得することは、事実上、半世紀以上にわたり莫大な収益を確保することを意味する。影響力のある巨大企業であれば、議会の承認を得るために戦う可能性が高い。

 しかし、頭上に多くの疑問符が残ったままそのような転換には深刻な政治的課題が待ち受けていることはほぼ確実であるため、すでに開発中の戦闘機にこの変更を強制しようとするのは、単に遅すぎると合理的に主張もできる。戦略的に必要なスケジュールで、まったく新しい調達モデルで新型ジェット機を就役させるには、航空軍、産業基盤、設計そのもの、そして空軍の訓練理論のすべてに、こうした抜本的な変更を即座かつ一斉に実施する必要がある。その一方で、空軍はすでに進行中のB-21レイダーやLGM-35AセンチネルICBMといった他の注目度の高い事業に予算と重点を分散させている。

 はっきりさせておくと、これは単に、刺激的な新コンセプトに穴を見つけようとしている皮肉屋の研究者の評価ではない。実際、これを昨年、フランク・ケンドール空軍長官が主張した。

 デジタルエンジニアリングと仮想テスト環境への移行が、ウィル・ローパーが提案したデジタル・センチュリー・シリーズ」アプローチをどのように可能にするかについて直接尋ねられたケンドール長官は、同様のアプローチで設計されたAI搭載のドローン僚機を実戦配備するという空軍の現在進行中の取り組みの黒幕と目されており、このアイデアへの高まりつつある熱狂を鎮めようとし、さらに「過剰に宣伝されている」とまで述べた。

 「ウィル・ローパー氏を非常に尊敬しています。彼と何度も一緒に仕事をしてきました。彼は本当に興味深いアイデアを持っていると思います。しかし、それらのアイデアを適用する場所については注意が必要だと思います」。

 ケンドール長官によると、戦闘機設計におけるデジタルエンジニアリングとモジュール性の向上は、開発コストとスケジュールに多大な影響を与える可能性があるが、現実的には、航空機調達に革命をもたらすよりも、それぞれを約20%(それでも顕著な)削減する可能性がある。また、ケンドール長官は、モデリングに利用できる適切なデータが存在しないため、この20%という数字についても確信が持てないことを明らかにした。ただし、オールヴィン大将が指摘しているように、ノースロップ・グラマン社のB-21レイダーステルス爆撃機とロッキード・マーチン社の新型メイコ極超音速ミサイルは、いずれもデジタル環境で設計およびテストが行われており、将来のプログラムの模範となる可能性がある。

 しかし、ケンドール長官は、デジタルエンジニアリングに関する同様の主張がF-35の開発サイクル中にどのように行われたかについても指摘し、明らかに予測通りに実現しなかったと述べた。

 「デジタルエンジニアリングは魔法ではありません」と、ローパー氏も同意している。「デジタルエンジニアリングを使用しているからといって、調達に関するすべての問題が解決するわけではありません」。

 空軍は新しいミサイル、新しい爆撃機、新しい戦闘機を必要としているが、その予算捻出に苦労している

 昨年、ケンドールは少なくとも当面の間は、このコンセプトの追求を中止するつもりであるかのように見えたが、それ以来、空軍の今後数年にわたる経済見通しは確実に変化している。それどころか、今年生産契約が結ばれる予定であった次世代制空戦闘機プログラムは現在、再評価されている。

 LGM-35A センチネル大陸間弾道ミサイル(ICBM)のような、失敗が許されないプログラムが81%も予算超過する中、空軍は近い将来の計画で数十億ドルの損失を補うために調整を余儀なくされ、すでにこれらの新型ミサイルやB-21レイダーの新型ステルス爆撃機に関する契約が締結されているため、現在、削減対象となっている大型予算項目は、アメリカの次期制空戦闘機のみとなっている。

 米国が航空優勢を今後数十年にわたり維持できるよう、現在、さまざまな選択肢が検討されているが、当初の予想よりも大幅に少ない予算で実現できる見込みだ。すでに数十億ドル規模のアップグレードが実施されているF-22ラプターの耐用年数を延長することも含まれる。

 F-22の設計は1980年代後半にさかのぼるが、この航空機は依然として、今後何年にもわたって競争優位性を維持するステルス性と曲技飛行能力を備えている。しかし、ラプターの生産は186機で打ち切られ、実際に戦闘任務に就いたのはそのうち150機のみであったため、空軍は実用的な代替機が配備される前に機体が老朽化して使用できなくなるリスクに直面している。

 協調戦闘機、つまりAI搭載の無人機の僚機に重点が置かれる中、ブロック4のF-35には、RQ-180やB-21のような他のステルス機に搭載された先進的なセンサーを補いながら、これらの無人機群を単独で管理するのに必要なオンボードコンピューティングパワーが備わっているため、新たな最上位戦闘機が必要なのかどうか疑問視する声もある。

 そしてもちろん、耐用年数よりも適応性を重視する軽戦闘機構想もある。これは、F-15EXのように6,000時間、8,000時間、あるいは20,000時間も飛行する戦闘機ではなく、4,000時間未満の飛行を想定した戦闘機を米国が配備するという構想だ。各新型戦闘機が運用可能になると同時に、すでに後継機の設計が進められていく。

 このモデルには、アメリカが世界で最も最新かつ高性能な戦術航空機のみを配備することを確実にするための大きな可能性がある。これは航空戦のすべてを変える可能性のある航空機設計のアプローチである。しかし、それは今日の長期にわたる取得モデルよりもさらに大きなリスクを伴う。また、今日のNGADの苦境は、少なくとも部分的には新型ICBMに関連する超過分に起因しているが、防衛予算で代替システムを10年ごとに実際にオンライン化できると想定することに伴う危険性については、現在のICBM艦隊を見れば明らかである。


戦闘機か「ミニットマンIII」の製造

現在、アメリカが地上配備型核抑止力として運用しているLGM-30G ミニットマンIII大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、1970年に耐用年数10年の想定で就役を開始した。つまり、1980年からより新しく近代的な兵器に置き換わる予定だった。後継機として開発されたLGM-118Aピースキーパーは、1983年になって初飛行に成功し、1986年に最初の10基が配備された。

 しかし、1991年のソビエト連邦崩壊とそれに続く1993年の第二次戦略兵器削減条約(START II)の締結により、地政学的な状況が変化したため、結局、ピースキーパーの製造さは50基にとどまり、それらはすべて2005年までに退役した。その結果、米国は老朽化したミニットマンIIIを本来の耐用年数を超えて使用可能に保つため数十億ドルを費やしてきたが、今ではその使用の継続がもはや不可能な段階に達していることを認めている。

 その結果、空軍は、このプログラムの予算がここ数年でほぼ2倍に膨れ上がっているにもかかわらず、当初は約10年間の使用を想定していたミサイルが60年を超えてもなお現役であり続けるという理由から、このプログラムで膨れ上がるコストを飲み込む以外に選択肢がない状況だ。

 ミサイルと戦闘機はまったく異なる種類のプログラムだが、耐用年数の短い戦闘機に関する決定を下すためのデータが不足しているため、ここ数十年の空軍調達の範囲外で検討できる余地はほとんどない。もちろん、これらの決定は、それらを取り巻く現代の政治情勢の影響を受ける。

 実際のところ、戦闘機(あるいは、実際には、軍事プラットフォーム)の生産契約を結ぶことは、ある程度はギャンブルだ。国防総省は、プロトタイプや技術デモンストレーターの性能については把握しているかもしれないが、予定コストで同じ性能のものを大量生産できる能力があるという点で、受注企業を信頼しているにすぎない。プラットフォームが現場に届いた後、重大な予期せぬ技術的課題が発生しないことを期待し、生産期間中も国防優先が継続されることを期待している。そして、おそらく最大の賭けは、紙の上の設計が運用可能なプラットフォームの部隊として成熟するまで、何年、あるいは何十年にもわたって政治的支援が継続されることを期待していることだ。

 10年ごとに捨てられることを前提とした迅速に適応可能な戦闘機設計というアイデアは、非常に有望に聞こえるが、ここまで劇的な調達方針の転換を実際に実行するには、膨大な政治的および産業的な支持が必要となる。しかし、たとえ2030年代初頭に新型の制空戦闘機を配備できるほど迅速に実現できたとしても、その時点ではアップグレードされたF-22ですらかなり老朽化が進んでいるだろう。それでも、課題がすべて解決したわけではない。

 2040年代には、空軍はほぼ必ず、新たな戦闘機群の購入を正当化するための議論を迫られる。議員たちは、耐用年数がわずか10年の戦闘機を本当に買い換える必要があるのかと疑問を呈し、多くの議員は、競争力を維持するにはモジュラーシステムの交換で十分だと主張するだろう。そして、2050年代、2060年代と、その都度そのコンセプトの有効性が危ぶまれながら、議論は新たに開始されることになる。

 当初は10年間の耐用年数とされていたミニットマンIIIとは異なり、LGM-35Aセンチネルは半世紀以上は現役であり続けると予想されている。なぜなら、空軍はこのような長距離兵器に関して同じ過ちを二度と繰り返すつもりはないからだ。10年後に交換が必要になるICBMを配備するということは、その交換用兵器の予算も確保できると想定しているが、今日の政治情勢では、それは非常に大きな想定である。

 にもかかわらず、センチネルの莫大なコスト超過により、NGADプログラムは今、戦闘機版ミニットマンIIIそのものになる危険性がある。ミニットマンIIIは本来10年間の使用を想定したシステムだったが、当局や議員が代替システムの導入による高額な請求を回避しようとして、他に選択肢がなくなるまで何十年も先延ばしにした結果、システムが数十年にわたって使用されることになってしまった。

 そして、最初の航空機が納入される前に、そのプログラムが予算を81%もオーバーした時点で、国防当局者は、戦略的な観点から、コスト超過による経済的影響よりも代替品の必要性が上回るという同じ主張を繰り返さざるを得なくなるでしょう。


戦闘機ビジネスにおける文化的な惰性

では、低価格戦闘機をより頻繁に配備するというこの考え方は理にかなっているのでだろううか? 多くの点で、間違いなく理にかなっている。はっきりさせておくと、これは現在、実用化に向けて開発が進められている協調戦闘機(CCA)のような無人プラットフォームの設計方法論として広く採用されている。

 しかし、戦闘機、爆撃機、軍艦などの高額な兵器の調達は、軍事的な考慮事項以外にも、数十年にわたる国民の厳しい監視や立法者の議論の対象となる。世論の場においては、10年後どころか、今週末以降の保証もない。

 このような構想が実現する可能性はゼロではない。そして、もしアメリカ政府がそれを成し遂げることができれば、この世界がかつて目にしたことのないような信じられないほどの戦術機シリーズが誕生するかもしれない。

 しかし、今日の政治の世界では、議員たちが集まり、制空権を確保する戦闘機のような基幹プログラムへの資金提供に合意することは奇跡に近い。そして、新型戦闘機の開発が開始されるたびに、その奇跡がスケジュール通りに何度も起こることを期待するのは危険なように思える。

 最も最適な解決策は、おそらく「軽戦闘機」という用語自体の系譜に見出されるのかもしれない。この用語は、空軍が戦略上のニーズを満せる機数のF-15を調達する余裕がないことが明らかになった際に、アメリカに十分な戦闘機能力を提供するための手段として、F-16プログラムに由来するものである。当時、F-16での軽戦闘機プログラムの成功により、それを補うはずだったF-15がキャンセルされたわけではない。また、NGADプログラムを補うはずだった新たな「軽戦闘機」も同様の利益をもたらす可能性がある。

 この可能性については、ジェームズ・M・ホームズ退役空軍大将(2021年当時、空軍の航空戦闘司令部のトップ)が示唆している。同大将は、NGADプログラムから誕生する戦闘機の派生型として、最終的には2つのタイプが配備される可能性があると述べていた。太平洋上空での長時間交戦を想定した航続距離とペイロード容量を強化した機体(2つのうち高価な方となる)、そしてヨーロッパでの短距離作戦を想定した小型(すなわち軽量)の別設計の2種類である。モジュール式システムとオープンシステムソフトウェアアーキテクチャを採用すれば、機体間の共通性を大幅に高めることができ、2つの別々の戦闘機生産ラインを維持するコストを削減できる。しかし、資金難に苦しむ空軍にとっては、これは大きな課題である。

 F-35は現在も生産中であるため、計算はさらに複雑になる。F-35自体は、現在、平均8,250万ドルであり、新型のF-15EXよりも約750万ドル低い。これは、NGADの機体あたり3億ドルの予想飛行費用と比較すると、「低価格」の役割を担う位置づけにあると合理的に主張する人もいるかもしれない。結局のところ、8,250万ドルは高額に聞こえるかもしれないが、これは、F-14トムキャットのような過去の時代の最高級プラットフォームの調整価格よりも大幅に低く、F-14はインフレ率で調整すると、1970年代の単価が1億2,100万ドル近くだったことになる。

 しかし、筆者が生きている間だけでもステルス機は、少数のブティックや専門企業が極秘裏に、しかも夜間のみに運用していた機体から地球上で最も広く運用されている戦闘機の一つとなり、1,000機以上が納入され、需要に応えるために2040年代まで生産が継続される見通しの状況にまで変化すた。物事が変化していることは否定しようがなく、しかも急速に変化している。

 そうなると筆者もこの文化の一部であり、ここまで重大な計画が成功するためには、それを克服する必要がある。■



The U.S. Air Force's Light Fighter 'Dream' Has Problems

Air Force Chief of Staff General David Allvin has suggested a shift away from the costly, long-lasting fighter programs like the Next Generation Air Dominance (NGAD) fighter in favor of more adaptable, smaller, and cheaper modular aircraft.

by Alex Hollings

September 5, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: DefenseNGADAir ForceStealth FighterMilitaryLight Fighter


2023年3月4日土曜日

NGADの実態が一枚のパッチからわかった...?ボーイングがNGADで主導的な立場になっているのか 新センチュリーシリーズでF-101へのオマージュが登場

 


ーイングのファントムワークス部門から出た風変わりなパッチが、空軍の次世代戦闘機のカーテンの裏側を初めて垣間見せてくれたのか...少なくとも可能性はある。

火曜日に、Aviation Week Defense and Spaceの編集者Steve Trimbleは、記事を投稿し、「Voodoo II」と書かれたパッチと「2-o-hunder」とあるパッチの画像2枚を添付した。素人目には、フリーマーケットやミリタリーサープラスストアに散乱している航空パッチとよく似ているが、トリンブルのユニークな経験則からすれば、パッチはかなり多くの情報を提供している。

「Aerospace DAILYは3つの事実を明らかにできる:ここにあるVoodoo IIパッチは合法で、パッチは本物のファントムワークスプロジェクトを表し、プロジェクトは過去4年以内に行われた」とトリンブルは書いている。「プロジェクトの性質も説明できる:Voodoo IIは、ファントムワークスが風洞試験した次世代戦闘機コンセプトの構成だ」。

 さて、トリンブル自身は、このパッチがファントムワークスが毎年行うラピッドプロトタイピングの一つに過ぎないかもしれないと警告しているが、Voodoo IIがそれ以上かもしれないという考えにも、妥当な論拠を述べている。実際、トリンブルの調査によれば、このパッチでアメリカの次期制空戦闘機NGADを初めて本格的に垣間見ることができるかもしれない。

 しかし、この可能性はどこまで信じていいのか、さらに、それが本当なら、NGADプログラムでどんな意味を持つのだろうか。


 Voodoo IIで判明していること


このパッチやNGADプログラムとの関係の可能性はすべて一人の記者から得ている。スティーブ・トリンブルだ。もし読者が航空オタクで、トリンブルの名前を知らなくても、ほぼ間違いなく本人の仕事を目にしているはずだ。防衛ジャーナリズムにおけるキャリアは数十年に及び、1997年にArmy Timesでスタートし、2000年にはMilitary.comの立ち上げに貢献した。2001年には、国際的に評価の高い Aviation Weekに加わり、Jane's Defence WeeklyやFlightGlobalといった他の有名な出版社でも執筆している。

 トリンブルは数々受賞しており、2022年には航空報道部門で最も優れた記者に贈られるDefence Media Awardを、ご存知の方も多いであろうもう一人の航空ジャーナリスト、つまり筆者と分け合うなど、その活動は多岐にわたる。

 トリンブルは非常に信頼できる情報源だが、絶対的ではない。彼は、このパッチとその潜在的な意味合いについて興味をそそる詳細を述べているが、あくまでも大きな「もしも」の話である。

 トリンブルによれば、Voodoo IIの開発は、ボーイングのファントムワークス(ロッキード・マーチンの有名なスカンクワークスに相当)で、過去4年間秘密裏に行われてきた。

 目的は、F-35やF-22のような第5世代戦闘機が4万時間の風洞テストを要するのに対し、4,000時間未満で飛行可能な第6世代戦闘機を開発することにあった。

 トリンブルによると、同社はその実現に成功した。

 しかし、Voodoo IIという名前はどうか。トリンブルは、1954年に初飛行したマクドネルF-101ブードゥーにちなんでおり、当時のいわゆる「センチュリーシリーズ」の2番目の戦闘機を示唆している。ウィル・ローパー前空軍次官補(調達・技術・物流担当)は、2019年に「デジタル・センチュリー・シリーズ」を立ち上げ、デジタルツールを用い、先進的な新型戦闘機の実戦投入のコストと時間を削減すると明言しており、説明は非常に理にかなっている。

 そのため、パッチは、オリジナルの「センチュリーシリーズ」のマクドネル(後にマクドネル・ダグラスとなり、1997年にボーイングと合併)を彷彿させるデジタルセンチュリーシリーズの先進戦闘機の配備を目的としたファントムワークスプログラムと考えても、大袈裟ではないようだ。


エリア51上空を飛行するボーイングのYF-118バード・オブ・プレイ(ウィキメディア・コモンズ)


ステルスで真っ先に思い浮かぶ会社ではないが、ボーイングの低視認性の実績は、競合他社よりも前にさかのぼる。ボーイングは、F-35と契約を争ったX-32を開発しただけでなく、90年代にはYF-118Gバード・オブ・プレイを製造・テストし、エリア51上空でのみ飛行するステルス技術実証機とした。しかし、同社の最も初期のステルス機の設計で、ほとんど忘れ去られている853-21型クワイエットバードは、F-117ナイトホークより10年半近くも前に存在していた。

 ファントムワークスは昨年、アリゾナ州メサに20万平方フィートの巨大な複合材製造施設を新設したが、今のところ、同施設で何を作るかはまだ明らかにされていない。このことは、フランク・ケンドール空軍長官がNGADプログラムは「事実上」エンジニアリングと製造の開発段階に入ったと述べたことと合わせ、ボーイングのブードゥーIIがNGAD契約を勝ち取り、すでに飛行している可能性があることを示唆している。

 しかし、これはトリンブルの憶測であり、事実と異なる可能性があることを再確認しておく必要がある。


センチュリーシリーズ」には、F-100スーパーセイバー、F-101ブードゥー、F-102デルタダガー、F-104スターファイター、F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートといった戦闘機がある。


新生センチュリーシリーズ



初代センチュリーシリーズの各戦闘機は、画期的な航空機だった。1954年に就役したF-100から1959年就役のF-106まで、アメリカ初の超音速戦闘機、初めてマッハ2を達成し、初めてレーダー、武器、能力を考慮したシステムとして設計され、初めて核兵器を搭載した戦闘爆撃機もあった。各機は、今日のデジタル・センチュリー・シリーズのように、積極的な技術アプローチで生まれた。

 しかし、2つの戦闘機シリーズのつながりは別にある。1960年、ランド・コーポレーションは、リーランド・ジョンソンによる「センチュリー・シリーズ・ファイター」と題した研究を行った。ジョンソンは、初代センチュリーシリーズの戦闘機に顕著な特徴2点を指摘している。1つ目は、真に最先端技術を活用した戦闘機を実用化する際に内在する不確実性の高さで、これは今日のプログラムとほぼ同じだが、2つ目は、空軍と海軍が次世代航空支配プログラムで議論していることに直接つながるもので、ある戦闘機で開発した部品が「当初計画していなかった機体にうまく使用できることが多く非常に柔軟である」事実だ。

 ジョンソンは、センチュリーシリーズ戦闘機用に開発されたサブシステムが、しばしば他のシステムで高度な「適用性」を示したと説明し、場合によっては、技術的課題を克服したシステムが各種プラットフォームで活用できるようになるまで、サブシステムを独自に開発する方が理にかなうのを証明したと付け加えている。

 NGADは、新型の航空優勢戦闘機の実戦配備を目指すだけでなく、F/A-XXで開発中の海軍戦闘機まで視野に入れた取り組みであることを読者はご承知だろう。

 空軍と海軍は、それぞれのニーズに合わせた別の戦闘機を配備する意向だが、国防総省関係者は、全体コストを削減するだけでなく、将来の改良を合理化するため、モジュール式サブシステムを多数共有すると繰り返し述べている。


Image courtesy of Rodrigo Avella



NGADについて、どこまでわかっているのか?


 

 アメリカ空軍のNGADは、次世代の航空優勢戦闘機の開発をめざしている。目標は、今後数十年にわたり敵空域を支配できるプラットフォームを開発することだが、より直接的な意味では、伝説のF-22ラプターをしのぐ戦闘機の開発を意味する。

 空軍当局は1997年から飛行しているラプターが、能力向上の点で限界に近づいていると認めている。空軍当局は、ラプターとNGADのギャップを埋めるため約110億ドルを投じてアップグレードを続けているが、F-22は早ければ2030年には過酷空域で生存が不可能になると見ている。

 「この問題から逃れるためのF-22の近代化は不可能...」と、空軍将来装備担当の副参謀長S.クリントン・ハイノート中将は説明した。

 F-22の後継機として、「Air Superiority 2030」や「Penetrating Counter-Air」などが、2014年まで遡り、多様な呼称で行われてきたが、2018年には、プログラムの前提が、生産機に先立つ研究開発のに集中したコンセプトに煮詰まり、NGADの名称が誕生した。それ以来、この取り組みは秘密のベールに包まれたまま継続されており、空軍関係者はなかなか手の内を見せず時折最新情報を提供している。

 しかし、秘密主義にもかかわらず、NGADプログラムは全速力で進展している。2018年から2022年の間に、空軍はプログラム開発に25億ドルを投資したと報告されており、2025年までに90億ドルに増加する。

 世界最高峰の戦闘機の性能を超えるのは容易ではないが、NGADは斬新なアプローチをとっている。空軍は、1対1のドッグファイトでラプターに勝てる戦闘機を1型式導入するのではなく、高能力の搭乗型戦闘機とAI対応のドローンウィンマン群を組み合わせた「システムファミリー」導入を目指している。

 しかし、国防総省資料によると、このドローンウィングマンは、NGADの包括的目標の4分の1に過ぎないとある。残る3つは、先進的な推進システム、新複合材料、先進センサーだ。

 過去数年間に空軍や防衛関連企業が発表したレンダリング画像から、新型戦闘機は、垂直尾翼含む古典的な戦闘機の設計要素を省略していることもあり、現行ステルス機を上回るステルス性があると見られる。言い換えれば、NGADの有人型戦闘機は、現在のドッグファイターより、新鋭ステルス爆撃機とのほうが共通点が多いかもしれない。

 これは、アメリカの次期トップクラスの戦闘機において、ダイナミックなドッグファイト性能より、センサーリーチ、データフュージョン、高度な武器能力へのシフトが重視されるのを示唆しているのか。米国議会調査局が昨年作成したNGADプログラム報告書が、まさにそのように説明している。

 「B-21のような大型機は、戦闘機のような機動性はない。しかし、指向性エネルギー兵器を搭載し、その兵器のために大電力を生み出す複数エンジンを備えた大型機は、多くの空域で制空権を獲得すできる」。(「空軍次世代航空支配計画」議会調査局著、2022年6月23日)


(U.S. Air Force render)



NGADはドッグファイターでなくても、ホットロッドになる可能性はある


 新型機は推力偏向制御のF-22ラプターのようにダイナミックな航空ショーは行えないかもしれないが、だからといって新型戦闘機が性能面で劣るというわけではない。

 2020年、前述のウィル・ローパーは、空軍がNGAD戦闘機の「フルスケール飛行実証機」を飛行させていると世界に明らかにした。ローパーは詳しく説明しなかった、その航空機が「記録多数を破った」と付け加えていた。

 しかし、NGADや海軍のF/A-XXのようなプラットフォームが克服すべき課題を考えれば、記録の一部は候補になる。最たるものが、太平洋上での戦闘での「距離の暴力」への懸念だ。

 つまり、次に登場する戦闘機は、間違いなく戦闘半径が大幅に拡大されるはずだ。そのため、効率的な新型エンジンと、大きな機体、多くの燃料を貯蔵できる機体が必要となる。

 しかし、航空優勢戦闘機には長距離性能だけでは不十分で、高速で相手との距離を縮めることも必要だ。スーパークルーズは、燃料を消費するアフターバーナーを使わず超音速を維持する能力を指す。ラプターはマッハ1.5超でスーパークルーズすると言われているが、より長い距離で効果を発揮するために、NGADはそれ以上の速度を発揮できるようになりそうだ。また、高速機と相性の良い、超高度飛行も可能になるはずだ。

 そのため、ローパーが言及した記録は、このクラスの航空機の無給油航続距離、超低空飛行の持続速度、上昇限界、あるいは最高速度..もっと劇的な、空気取り入れ指揮航空機全般の記録であったのかもしれない。

 もちろん、供用中機材の記録とは大きな違いがある。史上最速のアメリカ軍戦闘機はF-15Cで、公開されている最高速度はマッハ2.5以上、上昇限界は65,000フィートだ(ただし、F-22がいずれかを上回っている可能性もある)。しかし、どのアメリカ機にも勝つということは、SR-71の最高速度マッハ3.2以上、使用高度85,000フィートを上回るということだ。

 それは...ありそうでなかった...しかし、楽しみではないか。


テキサス州バーグストローム空軍基地のマクドネルF-101A(S/N 53-2425)。(米空軍撮影)


Voodoo 初代機から何を読み取れるか


 もしボーイングがNGADをVoodoo IIと名付けたのであれば、決定はマーケティングを念頭に置いたもので、歴史的な言及をストーリーテリングのツールに使い、設計の強みや能力を強調することと思われる。では、ボーイングが宣伝材料として国防当局や議員の心に刻みつけたいと思うような、オリジナルのブードゥーの決定的な長所や能力は何だったのだろうか。

 F-101ブードゥーは、1948年に登場したマクドネルXF-88ブードゥー試作機を改良したものだ。当初は爆撃機護衛を目的としていたXF-88は、燃料貯蔵量を増やすため胴体を長くし、大型ターボジェットエンジンのためにエンジンハウジングとインテークを再設計するなど、大幅改良された。F-101ブードゥーは、爆撃機の護衛から核爆弾の運搬まで、さまざまな任務が期待できる「戦略戦闘機」に分類され、1954年9月に供用開始した。

 ブードゥーの2番目の生産型F-101Bは、内部のロータリーベイに非常に興味深い空対空兵器を搭載した2人乗りモデルで2発のAIM-4Aセミアクティブ・レーダー誘導ミサイルと2発のAIM-4B赤外線誘導兵器を搭載して飛行した。ミサイルが発射されると、ロータリーシステムが反転し、次のミサイルが発射位置に配置される。

 しかし、この装備は後にAIM-4C赤外線誘導ミサイル2発とAIR-2ジニー核ロケット2発に変更され、間違いなく、米国やその同盟国が実戦投入した中で最も非常識な空対空兵器となった。この核ロケットは、ソ連の爆撃機編隊を一度に破壊する狂気の装備だった。

 しかし、F-101Bが敵機に核ロケットを発射する能力ではなく、ボーイングはVoodooの画期的で記録を打ち立てるスピードスターとしての評判を利用している可能性が高いようだ。これは、NGAD飛行実証機がすでに「多くの記録を破った」というウィル・ローパーの主張にさらなる意味を持たせています。

初代のVoodooは、1957年にロサンゼルスからニューヨークを7時間以内で往復する大陸横断速度記録を樹立した。その約1ヵ月後、別のF-101Aがカリフォルニアのモハベ砂漠上空で1,207.6mph(時速1943.4km)の絶対世界速度新記録を樹立した。

 ボーイングのウェブページに掲載されているブードゥーの歴史的なスナップショットにあるように、新しいファントムワークスのパッチに直接言及されている「ワンオワンダー」というニックネームは、この素晴らしい高速性能と評判から生まれたものだ。



(Voodoo II patch image used with permission from Steve Trimble at Aviation Week)


ファントムワークスのパッチに話を戻すと


 そこで、オリジナルのセンチュリー・シリーズが今日のデジタル・センチュリー・シリーズにどう反映されているのか、また、F-101ブードゥーは「ワンオワンダー」というニックネームを持つ記録的なスピードの悪魔だという新しい理解を得た上で、スティーブ・トリンブルのファントムワークスパッチを再度見てみよう。

 パッチ上部には「ブードゥーII」の名がはっきり記されており、トリンブルはすでにボーイングのファントムワークスの第6世代戦闘機計画を連想した。また、下部に書かれた "two-o-hunder "は、初代のブードゥー、特に記録破りのスピードスターとしての評判にちなんだものだ。

 トリンブルは、このプログラムは過去4年間、つまりおよそ2019年から2023年まで(あるいは2018年から2022年まで)行われたとしており、2020年にはウィル・ローパーが、空軍がNGADプログラムの技術実証機を飛ばしていると明言し記録を更新していたと明かしていた。

 その元となったワンオワンダーの愛称は、F-101の最高速度がマッハ1以上であることを指して語られることが多く、時には最高速度が時速1,000マイル以上であることを指して語られることがある。そのため、Voodoo IIの「トゥー・オー・ハンダー」は、初代の2倍の速度を指している可能性がある。おそらくマッハ2以上のスーパークルーズ能力だろうが、より興味深い可能性として、最高速度が時速2000マイル、つまり適切な高度なら記録的なマッハ2.6だろう。

 デジタルセンチュリーシリーズにおけるブードゥーIIの役割は、センチュリーシリーズにおける初代ブードゥーと同じく、他の機体、特に海軍の次期F/A-XXに搭載されるサブシステムを搭載している可能性がある。ボーイングのファントムワークスは大規模な新しい複合材建設施設で作業を開始しており、複合材はNGAD開発の4大プロジェクトの1つだ。

 情報を総合すれば、ボーイングのブードゥーIIは、NGADプログラムで開発されるアメリカの次期制空戦闘機のベースになっている可能性が高いとことになる...しかし、はっきりさせておきたいが、まだ状況証拠に過ぎないだ。

 ボーイングがアメリカの最新戦闘機開発で主導権を握っている可能性は確かだが、解決したとは言い切れない。

 とはいえ、トリンブル自身の言葉を借りれば、「空軍のNGADプログラムの勝者の正体は、依然として謎のままだ。その間はVoodoo IIを思い出してください」。■


Voodoo II: Could a simple patch give us a sneak peek at NGAD? - Sandboxx

Alex Hollings | March 2, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.


2020年9月12日土曜日

F-15EXは米航空宇宙産業の新しい発展に道を開く存在になる----ヒント デジタルセンチュリーシリーズ

 ーイング、国防総省、米空軍は旧型機により米航空宇宙産業に新しく学習させられるだろうか。

 

空軍はF-15EXの大規模調達を複数年度で実施すると発表した。F-15EXはF-15C/D型の更改機材とみられていたが、最新報道によればF-15Eの後継機にもなるという。

 

F-15EXは旧型F-15の機体に技術革新を盛り込む構想だ。機体こそF-15だが、内部にこの30年間にわたる改良点が見られる。

 

F-15生産は海外向け販売でここ数年維持してきたが、連続生産が可能となり生産ラインを維持できる。F-15Eに交代する構想では以下が盛り込まれている。

 

- F-15とF-35で重複するミッションもあるが別個のミッションもあり性能も異なる。

- F-15EXの性能は既存F-15各型を大きくしのぐ

- 高額出費につく耐用年数延長改修が不要となる

 

F-15EXにより米空軍はF-15旧型の任務を新型かつ高性能の機材で引き続き実施できる。

 

興味を感じさせるのがF-15EXがデジタルセンチュリーシリーズ(DCS)へ道が開く可能性だ。これには空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパーが絡み、画期的な機材を少数生産で多数型式そろえる構想で、オープンアーキテクチャアを採用する。ローパーは以前のセンチュリーシリーズを振り返り、性能面で凡庸な機体が相次いで登場し、F-4ファントムIIを待つしかなかったこと、有人機偏重の傾向を踏まえ、DCSでは無人機に重点を移すと表明している。

 

DCS構想の中心にデジタルエンジニアリングがあり、設計と製造を分離し、3Dプリント他の高度製造技術で補修部品や整備の問題を解決できる期待がある。もっと重要なのが新技術の継続的採用で、これに対しステルス機では緻密な要求を設定したため調達が遅れてしまった。「デジタルセンチュリーシリーズ」は従来の機材調達の考え方を一新させ、米航空宇宙産業の実質的な再編の可能性を秘める。

 

とはいえ、F-15EXはDCSの第一弾ではない。F-15EXにはDCSが想定する技術手段多数が使われているのは事実で、高性能コンピュータモデリングの採用やモジュラー構造機体になっているが、DCSと別の存在だ。知的財産の取り扱いでも異なり、ボーイングはF-15EXの知的所有権大半を保持するが、DCSでは空軍が知財を完全所有する形になる。

 

だが、だからといってF-15EXがDCSのテスト例にならないわけではない。ボーイングからはF-15EXでは迅速改修に道を開く設計上の特徴が盛り込まれており、新型戦闘管理システムも採用しているとの説明が出ている。特に後者はDCSの中核部分だ。

 

無視できないのはF-15EXによりボーイングは今後も戦闘機ビジネスに残ることだ。ローパーがDCSで狙う一つに業界寡占化を食い止めることもあり、1990年代から顕著になった合併統合の流れを逆行させたいとする。DCS支持派には軍用航空宇宙作業の一部で国有化を主張する声もあり、ソ連時代の国営設計局と製造拠点の分離状態を思わせる構想だ。米国防産業の経緯や米国の政治体制を踏まえると、さすがにこれは行き過ぎだろう。とはいえ、デジタルツールを駆使しF-15EXの設計製造をこなすボーイングの実力を見れば、空軍の次期機材開発でも同社が重要な存在になりそうだ。

 

F-15EXは決して安価な機材ではなく、F-35Aの機体価格を上回りそうだ。空軍は悩みの種だった既存機材と技術進歩のバランス問題を解決できそうだ。F-15EXの教訓をDCSに生かし、空軍の有する各機材に高度技術を逐次導入する課題が解決できる。しかし、この実施は未経験分野であり、超大国間対決が中心課題に戻ってきた現況で旧型戦闘機の生産を続けることの是非は長期間にわたり有効な装備品を実現する能力が米国航空宇宙産業にあるのかという公然たる疑問につながるはずだ。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Could the F-15EX Transform the U.S. Defense Industry?

September 11, 2020  Topic: Technology  Blog Brand: The Buzz  Tags:

by Robert Farley 


Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005.  He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.