2020年5月31日日曜日

パンデミック後のPRC⑦ 解放軍予算は最低の伸びとはいえ7%弱増、台湾へ圧力をかける



 

全国人民代表会議には習近平主席も参加し2020年5月22日に北京で開幕した。 (Kevin Frayer/Getty Images)


国は今年の国防予算を前年比で6.6パーセント増と30年で最低の成長率と発表した。

金額で昨年の1670億ドルが1782億ドルになる。この規模は米国に次ぎ第二位。伸びは最低とはいえ、110億ドルの予算増は中国のこれまでの実績でも第5位の規模だ。▶背後には人民解放軍PLAにCOVID-19パンデミックの影響を与えない意図が見える。中国経済は2020年第1四半期に対前年比で6.8パーセント縮小した。▶李克強首相は実質は政府のいいなりの人民代表会議開幕で演説し、PLAへの悪影響を否定した。▶「国防体制と軍の改革を進め、補給活動を強化し、革新的国防関連技術の開発を強化する」(李)。

李首相は台湾にも触れ、「独立を志向する分離主義の動きには断固反対しこれを抑える」とし、台湾住民に「本土に加わり、再統一の動きに合流せよ」と訴えた。▶意図的なのか李首相は台湾再統一で「平和的」との表現を避け、これまでの中国指導部が全人代で台湾に関し発言する際の常套句を使わなかった。中国は台湾再統一に際し武力行使を放棄していない。

李首相発言と同時に米国防長官マーク・エスパーは台湾を支持する米国の立場を再確認した。長官は米国は「台湾支持の公約を確実に守る」と述べ、台湾関係法の縛りもあり、台湾に必要な防衛装備を供給すると発言。▶米国務省は台湾向け潜水艦用大型魚雷18本を180百万ドルで売却する案件を21日木曜日に承認した。Mk 46 Mod 6高性能技術魚雷は台湾海軍潜水艦に搭載される。2017年には同様の兵装48点の売却があった。

台湾報道では台湾周辺で中国軍がパンデミックと無関係に活動を続け、中国艦艇航空機が国際空域、海域で定期的に活動している。中国は通常の訓練とするが、台湾政府は台湾への脅迫と見ている。■

この記事は以下を再構成したものです。


China announces $178.2 billion military budget


By: Mike Yeo    7 hours ago

米海軍:X-37で軌道上から地上へ送電の実験を行う


米海軍は巨大な太陽光パネルから地球上への送電を試行する。

国防総省発表に米宇宙軍がX-37B再利用可能スペースプレーンで宇宙空間実験を行うとあり、種子への放射線の影響を見る実験と、注目すべき内容ではない。

一方で、さりげなく目立たない形で海軍研究本部が太陽光エナジーを地球に送る活用方法を模索すると記述がある。マイクロウェーブエナジーに変換し地上へ送信すると広報資料にある。▶太陽光パネルをX-37Bに搭載し軌道上で太陽光エナジーを集めて地球へ送る構想だ。

宇宙からの送電実験

十分に作動する設計なら太陽光を収集し、莫大な量のエナジーを地球に送れる。宇宙空間なら雲に遮られることもなく発電効率が上がり、パネル上に埃もつかないはずだ。▶集めたエナジーは地球にマイクロウェーブとして転送する。エナジー収集のしくみは緊急時電源としてさらに軍事用途にも使える。▶移動困難地に展開する地上部隊も理論上は制限なしで莫大なエナジーが使えるようになる。燃料補給装備のトラック、タンク等が不要になる。▶さらに太陽光エナジーは軌道上の宇宙ステーション、スペースプレーンや衛星等に電源供給できる。

課題は

ただし、実現までに克服すべき課題がある。海軍研究本部のポール・ジャッフェ博士の説明では宇宙空間への打上げる費用が高額なことが一番だ。重量がかさめば多くの推進剤が必要となり費用も上がる。重量を最小限にするには内部部品を小型軽量化する必要があり、技術面で難易度が上がる。▶その他として太陽光収集だけの問題ではなく、衛星全般に共通する要素がある。いったん打ち上げれば、軌道周回中の衛星の速度は相当早くなる。別の軌道から地球上の任意地点にエナジー送信するのは難題となる。この目論見が実現可能となるかはわからないし、コストと技術上の課題も残る。■

この記事は以下を再構成したものです。


May 22, 2020  Topic: Technology  Region: Space  Blog Brand: The Buzz  Tags: AmericaU.S. NavySpace ForceSunSunlightSolar PowerSpace

Yes, the U.S. Navy Wants to Harvest the Sun’s Energy



Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

2020年5月30日土曜日

主張 少ないF-22「最重要航空機材」をフル活用すべき米空軍

    

デプチュラ退役中将とバーキー両名が「最重要軍事装備」と呼ぶF-22 (Air Force)




5月15日に訓練中のF-22ラプター1機の喪失事故が発生し、同機の配備規模で警鐘となった。

アフガニスタン、イラクでの対戦闘員作戦を重視しすぎたあまりF-22調達は187機と小規模で終了した。空軍の要求は381機だった。今や、両国での戦闘は過去となり、新しく国防戦略構想が出た中で、F-22の性能がさらに重要度を増している。

第5世代機の同機こそ最重要軍事装備であり、今回の事故喪失でF-22の性能向上改修には予算を全額計上し実施の必要を痛感している。これからもF-22に匹敵する性能を有する機材は米国でも他国でも生まれない。同機に関する予算管理、機材管理には現実を反映させねばならない。

F-22の主要任務は航空優勢の確保にある。これが軍事作戦の成功に不可欠なことは言うまでもない。同機は地上目標も精密攻撃可能な性能を有し、敵が優勢の環境でも情報収集監視偵察任務もこなせるが、なんといっても空対空戦の王者だ。各種の性能を実施でき、その全貌は公開されていないが、F-22はわが国の通常抑止力で最大効果を発揮する。他機種より小規模な部隊編成だが、他機種と比べようのない戦闘効果がF-22から生まれる。

ステルス、センサー技術、処理能力、卓越した飛行性能でF-22は他機種の追随を許さない。一部の機能だけ有する機体はあるが、F-22のように全て包括した機体は存在しない。ステルスにより敵機は接近攻撃がきわめてむずかしい。センサーと処理能力で戦闘空間の把握は驚くほど精密になる。速力と操縦性で同水準の機体はない。F-22の真価に疑問を呈する向きには同機の水準に近づこうと必死な各国の姿を見てもらいたい。いかにF-22が画期的かがわかる。

わが国にF-22がもっと多く必要な事実は実に単純明快だ。だがF-22生産ラインは閉鎖され数年が経過し、生産再開は容易ではない。F-35はもともとF-22の補完用であり、対地攻撃能力を充実させ、同機も今後の航空戦力整備で不可欠な機体だ。F-22配備数が小規模のため、F-35の年間調達規模が一層重要になっている。今後登場する制空戦闘機構想はなんとしても進める必要がある。

ただし、COVID-19関連の予算制約により新型機開発の遅れは必至だ。パワーポイント上ならいくらでも展開できるが、そんな理論面での作戦構想で具縦的な作戦能力に混乱を来してはならず、現在将来の課題に答えねばならない。F-16やF-15といった旧設計機へ資金投入しても、最新の要求水準に対応できない。こうした機体も重要な存在とはいえ、運用上の有益度で今後低下が止まらない。安全保障面の課題に答えられなくなるからだ。

このため制空権確保でF-22が重要手段となる。敵と武力衝突となればF-22が最前方に投入されるのは明らかだ。だからこそラプターの性能改修で予算確保が必要で、今後も同機の性能を維持する必要がある。F-22部隊の戦力維持で費用対効果が最大になるのは訓練や試験に投入されている最古参のF-22ブロック20の33機を実戦対応機材にすることだ。これで最小の予算投入で一個飛行隊の新設効果が生まれる。費用面を重視する向きには、F-22全機がフルに性能を発揮できない場合に代償を払う覚悟があるのか問いたい。代償とは戦略目標の放棄であり、深刻な戦力低下であり、国民多数の生命の喪失だ。

F-22生産の打ち切りは悲劇であり、その影響を今後も痛感していくことになるだろう。ただし、今の時点で重要なのは現在あるF-22の活用だ。旧型ブロック20各機の性能改修で完全な戦闘可能機体にすれば敵に大きなメッセージとなる。すべてはF-22の性能に行きつく。数字を最適化しよう。今日明日の安全保障面の課題から現状を下回る機数では許されない。■

この記事は以下を再構成したものです。

The F-22 imperative

Commentary

By: David A. Deptula and Douglas Birkey, Mitchell Institute 

David Deptula is a retired U.S. Air Force lieutenant general with more than 3,000 flying hours. He planned the Desert Storm air campaign, orchestrated air operations over Iraq and Afghanistan, and is now dean of the Mitchell Institute for Aerospace Power Studies. Douglas Birkey is the executive director of the Mitchell Institute, where he researches issues relating to the future of aerospace and national security.

地磁気減少と国家安全保障の関係:地球環境に大きな変化が起こる前兆か

大西洋上の問題だからと安閑としていられません。この惑星上の生命を守っているのは放射線から守るシールドがあってこそで、地磁気の減少でこのシールドが弱まれば、まずガンの発症が増えたり、地震が増えるでしょう。あるいは磁極逆転になるのか。人類の存続があやうくなるのでは

大西洋上空に地磁気が弱い箇所があり、ここ50年で規模を拡大しながら年間12マイル西に移動している。

南大西洋上空異常現象と呼ばれ、地球を守る磁場が消えれば、危険な太陽放射線にさらされる危険事態が発生しかねない。▶欧州宇宙局ESAは異常現象がここ5年で二方向に分離したと報告。一つがアフリカ南西の洋上で、もうひとつは南アメリカ方面だ。▶「南大西洋上空異常現象の東側部分は10年前に登場し、最近は大きく発達している」とドイツ地球科学研究所が指摘している。▶地磁気全体は200年でおよそ9%減少しているとESAはまとめている。▶異常現象が二分化した理由は科学陣でも解明していない。地球内部の核の動きとの関係の解明が急務という。

磁場の衰弱は衛星や宇宙機にも影響を与える。▶太陽光中の高電荷粒子が増えれば地球を守るシールドを通過しやすくなる。▶低地球軌道上の宇宙機や衛星が粒子を浴びればハードウェアの損傷や故障発生につながる。また内部の電子装備の機能が低下し、重要なデータ収集機能が遮断されたりコンピュータ部品の劣化が進む原因となる。

さらに国際宇宙ステーションの問題がある。2018年度の研究報告によれば異常現象部分を通過するとステーション内部の人員は「強度の放射線に数分間被爆する」とある。

地球の磁場は地表1800マイル下にある外核の流体状の鉄の渦巻移動が生んでいる。▶変化を正確に観測するためESAはSwarm衛星3機を利用している。■

この記事は以下を再構成したものです。
May 29, 2020  Topic: Space  Region: Space  Blog Brand: Techland  Tags: SatellitesSpaceSpace ForceMagnetic FieldEarthOrbit



Ethen Kim Lieser is a Science and Tech Editor who has held posts at Google, The Korea Herald, Lincoln Journal Star, AsianWeek and Arirang TV. He currently resides in Minneapolis.

2020年5月28日木曜日

パンデミック後のPRC⑥ 科学技術振興で反撃に出る米国

 

(Mark Schiefelbein/AP)



見対立があたりまえの米議会も中国への怒りで団結している。

米議会は1,000億ドルを全米科学財団に投じ人工知能、量子コンピュータ、高度通信技術、ロボット工学他の研究を促進させる。超党派提案で上院の民主党議員トップが仕切っている。
上院の民主党院内総務チャック・シューマー議員がまとめた無限のフロンティア法案では全米科学財団を全米科学技術財団に改名し、「DARPA並みの権限」を有する技術局を創設し研究開発契約を交付させる。5年間で1,000億ドルを投じる。
普段は分断ばかり目立つ議会だが、中国への怒りでひとつにまとまってきた。下院は水曜日にイスラム少数民族の人権抑圧に対し中国関係者を制裁する法案を、上院は香港で取締りを強める中国への懲罰を検討した。
シューマー法案にはトッド・ヤング(共、インディアナ)も共同発起人だ。下院版は下院軍事委員会メンバーのロー・ハナ(民、カリフォーニア)、マイク・ギャラガー(共、ウィスコンシン)両議員の共同提案。
「歴史的低金利の時代に官民連携で科学技術の大幅な進歩をめざし連邦政府に研究開発事業をさせる」と上記4名の議員はUSA Todayに意見表明している。
「わが国が回復に向かう中、中国が力をつけてきたのを意識すべきだ。強権的政治思想の中国指導部はこの機会を捉え米国を追い抜こうと技術革新へ支出を増やしており、米国民の将来の安全繁栄が脅かされかねない」
法案内容のまとめを見ると、提案にある技術局は以下の技術分野に重点的に資金を回す。
  • 人工知能と機械学習
  • 高性能コンピュータ処理、半導体、高性能コンピュータハードウェア
  • 量子コンピュータ、情報システム
  • ロボット工学、自動化、高性能製造技術
  • 自然環境災害の予防
  • 高性能通信技術
  • バイオテクノロジー、合成バイオロジー
  • 高度エナジー技術
  • サイバーセキュリティ、データ保存管理技術
  • 素材工学、その他重要分野に関連が深い工学や採掘技術
法案では100億ドルで国内少なくとも10箇所の技術ハブを選定し「中核技術の研究開発・製造のグローバルセンター」にするとある。
シューマー議員は原案を昨年11月に提示し、中国を意識した技術の「壮大なる挑戦」としてドナルド・トランプ大統領や上院多数派院内総務ミッチ・マッコンネル(共、ケンタッキー)の支持を得ていたものの、「全面的支援」ではなかったという。
議員スタッフによれば法案提案では2021年度国防認可法(NDAA)に同じ内容を盛り込ませようとしている。上院では6月初めに原案を準備する予定になっている。
シューマーは中国に厳しい態度で臨むトム・コットン上院議員ほか上院軍事委員会メンバーと国防認可法にフェンタニル制裁法を盛り込むことに成功した。同法のねらいは中国含む外国がフェンタニル等合成麻薬を蔓延させた際への対抗にある。
同法案が上程された2019年4月に上院版のNDAA法案もあり、ともに一ヶ月後に通過している。2020年度版NDAAは2019年12月に可決しているがやはりこの内容が盛り込まれていた。
同法案にはハンディキャップがいくつもつく。まず7,000億ドルというNDAA法案の値札を見れば進歩派民主党議員も保守派共和党議員同様に意気消沈するはずと議会スタッフのひとりは述べている。一方でCOVID-19関連対策を見れば議会も大盤振る舞いを許す姿勢を示している。
「現時点で1兆から3兆ドルを口にしており、1,000億ドルなど大金ではない」と同上議会スタッフは述べているのだが。■

この記事は以下を再構成したものです。

By: Joe Gould 

2020年5月24日日曜日

中国を制圧する海軍力のカギは各国が運用するF-35B空母だ


 この記事は日本含む「連合国」の視点ですが、見方を変えると包囲され封鎖される中国にとっては不安で仕方ないでしょうね。F-35Bを各国が供用すれば大きな効果が生まれそうですね。日本についてはいずも級で知見を積んで更に大型艦の建造に進むのか、注目です。

F-35Bは短距離離陸垂直着陸(STOVL) 性能を有する第5世代共用打撃戦闘機(JSF)だ。B型はF-35AやC型と異なり、リフトファンと推力偏向エンジンで短い滑走路で離陸し、垂直着陸できる。このため小型空母や強襲揚陸艦でも運用できる。

JSFは大量配備の第5世代戦闘機として世界唯一の存在だ。第5世代機は敵機を先に探知しながら敵に探知されない点で従来型機材と一線を画し、大幅な戦力増強が期待できる。敵を目隠しして戦うようなものだ。

第5世代機の戦力と柔軟性を組み合わせ連合国側の航空戦力運用艦船数は三倍となる。ここから中国への海軍戦力の優位性が生まれる。F-35Bは当初AV-8Bハリヤー後継機として近接航空支援用と見られていたが、同機の性能は底にとどまらず、航空、海洋両面で優勢確保に投入してこそ真価を発揮できる。

ステルス性能、長距離センサー性能に加えレイセオンのAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを機内搭載し世界最高の制空戦闘機となる。ただし、F-22には劣る。共用打撃ミサイル(JSM)、ロッキードの長距離対艦ミサイル(LRASM)がF-35Bに長距離対水上艦、対地攻撃能力を付与する。JSMは機内兵装庫に搭載可能でステルスを犠牲にしない。

AN/APG 81は戦闘機搭載レーダーとして最高性能で、電子スキャンアレイで海上捜索から空中での敵機捜索まで各種用途に使える。ソフトウェアの継続改良で能力拡張する。高高度でF-35のセンサーは水平線超え探知が可能で、水上艦を上回る探知距離が実現する。長距離攻撃手段と長距離を見通す目が組み合わされF-35Bは敵より先に探知し撃破できる。

米国の原子力空母ニミッツ級10隻はカタパルト発進と拘束ワイヤー着艦対応のF-35Cを運用する。各艦は圧倒的戦力を有する。ただし原子力空母部隊の整備には巨額予算が必要で、米国以外の各国では実現が困難だ。この敷居をF-35Bが下げ第5世代機の艦艇搭載を実現できる。

米海軍にも通常型の強襲揚陸艦9隻があり、STOVL戦闘機運用が可能だ。原子力空母の半分の大きさしかなく、航空戦に特化していないが、各艦で米海軍戦力を大幅増強できる。F-35Bは2015年に初期作戦能力を獲得し、米海軍は第5世代機運用空母が10隻から19隻へ倍増できることを理解できた。

各国の合計11隻の海軍艦艇で第5世代戦闘機運用が可能となる。下にSTOVL運用艦のリストを示す。

  • 日本* 2
  • イタリア* 1 (さらに建造中1)
  • スペイン 1
  • オーストラリア** 2
  • 韓国 1(さらに海上公試中1)

* F-35B引き渡しが始まっている、あるいは発注中
** F-35B運用に艦艇改修が必要

F-35B運用艦の実現は困難でなく、シンガポールでさえ導入を検討中だ。同国はF-35B十数機の導入を発表し、STOVL空母の国内建造もしたいとする。人口五百万の都市国家でも実施可能ということは同機導入で戦力整備の様相が一変することを意味する。

ここには中国が発足させたばかりの空母部隊が影響を与えている。中国は中型空母二隻を運用するが、発艦方式、機関ともに最低水準だ。

米国の大型空母と違い、中国空母にはカタパルトがない。第4世代のJ-15艦載戦闘機は短距離離陸性能がなく、アフターバーナーをフル稼働させランプから離陸する。このためペイロードと航続距離が制約され、F-35Bの戦闘半径より相当短い距離しか対応できない。中国空母は複雑かつ面倒で低効率の石油燃焼ボイラーを使うため航続距離に制限がつきながら、人員多数を投入する非効率な運用となっている。こうして中国艦は低性能なのに高価格の空母になっている。これでは連合国側の第5世代機運用艦隊に対抗すべくもない。中国が連合国側の空母搭載機に対峙すれば、機体の作戦距離、速力、センサー性能で一方的な戦いになるだろう。

また連合国側のSTOVL運用艦の新鋭推進方式は長期間稼働しながら整備や大修理は最小で収まる。中国艦は連合国側の3割4割の稼働しかできない。この差により米国や同盟国側は中国経済の存続を否定する戦力を今後も維持できる。

中国経済にはペルシア湾からのエナジー、アフリカの資源、欧州米国の輸出市場が不可欠だ。とくにペルシア湾のエナジーがなければ中国経済は数週間で崩壊する。有事の海上輸送を確保するため、中国海軍は西太平洋、インド洋双方で支配権の確立が必要だ。この任務達成はかなり困難で、連合国艦艇の一部が出動するだけで不可能になりかねない。

ヨーロッパ艦艇5隻がインド洋にローテーション配備され、ディエゴ・ガルシアやペルシア湾の基地が支援すれば、創設から日が浅い中国外洋部隊に手に余る存在となる。ヨーロッパ各国が艦艇派遣しなくてもニミッツ級空母打撃群単独で同じ効果を生む。他方で東アジア4カ国のF-35B運用艦が東シナ海への侵入経路を封鎖すれば中国で最重要の海上交通路が打撃を受ける。さらにオーストラリアの二艦でマラッカ海峡の海上交通を遮断する。こうした作戦は南シナ海や中国の沿海部に進入せず中国の戦術機の挑戦を受けずに達成できる。

各国SVOTL艦艇の2割だけ出動しても中国海軍へ対応は可能で、太平洋から紅海に至る中国海運を寸断すれば同国経済は崩壊する。

F-35開発テストの進捗がなかなか完了しないことで複雑な機構のSTOVL型機にこれだけの時間と費用をかける価値があるのか疑う向きもある。ただし、同機でしか得られない効果を考えると連合国側のSTOVL運用艦で10機といわず30機あるいはそれ以上を搭載すれば真価を実証するはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaJetsF-35Xi JinpingNavy


Merrick "Mac" Carey is a former senior Capitol Hill aide who is now CEO of the Lexington Institute, a public policy think tank in Arlington, Virginia.

パンデミック後のPRC⑤ 中国は超大国の座につく試験に不合格

日本国内では緊急事態宣言の解除、営業自粛の撤廃など身近な問題に議論の焦点があるようですが、全く異なる地図になった世界情勢には関心を払う余裕がないようです。こういう事態だからこそ余裕ある向きには未来を設計する能力を発揮してもらいたいものです。

世紀にわたり驚異的成長を達成してきた中国は超大国へあと一歩に近づいていたが、コロナウィルスの犠牲になったようだ。パンデミックは中国に責任ある超大国の姿を示す絶好の機会のはずだったが、目論見は未達成に終わった。
世界がコロナウィルス危機発生前より強い敵意を示すのに中国は気づいている。原因の多くは中国自身にあり、対策の誤りや初期段階で情報を抑制し、他国に責任転嫁し、影響力を誇示するような稚拙な対応も一因だ。▶昨年12月初旬にウィルスは把握されていたようだが、中国官憲は新型ウィルスを話題にした医師団を処分し、標本は破棄させた。▶発症の中心地武漢に厳しい移動制限を課した時点で百万単位の住民がすでに移動していた。

中国は全面的プロパガンダ工作を開始し、自らの過ちを隠し無責任対応から目をそらせるべく、米国が発信元だと世界に告げてしまった。▶世界は中国が無実と信じず、逆に米国は対応を硬化し中国は敵対勢力だとの確信を深めた。中国の大失態やその後のプロパガンダ工作は米国でもまれな超党派合意を生んだ。▶共和民主両党は中国には強硬な態度で臨むしかないと理解し、中国当局は信頼できず、パンデミックは中国に責任があると共通認識に至った。ハード、ソフト両面で大幅な余力がある米国は独裁的な敵勢力に極めて危険な存在だ。


米国外に目を転じると、中国は自国イメージ改善を試みたものの失敗している。ヨーロッパでは中国提供の医療物資で不良品が多数見つかった。オランダはマスク数十万点を受取り拒否した。スペインも検査キットで不良品が相次ぎ返品している。

中国人主人公が米国傭兵を撃破する人気映画にあやかり中国の積極的外交姿勢は「戦狼」と呼ばれるが、対外関係で裏目に出ている。オーストラリアがウィルスの発生原因を尋ねたところ、中国国営メディアはオーストラリアは「中国という靴の底に張り付いたガム」と表現した。オーストラリアが中国との通商関係を悪化させようとしており、「オーストラリア産ワインやビーフはもういらない」とまで駐オーストラリア中国大使に発言させた。これでは戦狼というよりマフィア流の外交ではないか。

中国は米国と親密な協力国の怒りを買ってしまった。ドイツ紙ビルドが中国に賠償金数百億ドルを求め、ベルリンの中国大使館はドイツ国民から白い目で見られる存在になっている。フランスでは中国外交官が同国では介護施設で高齢者を意図的に死亡させていると批判しフランス当局が譴責処分を与えた。

中国国内で外国排斥の動きが高まりアフリカ諸国との関係で悪影響が出ている。広州でパンデミック最中にアフリカ国民排除の声が高まった。アフリカ各国の関係者が警戒の声を上げている。

外交面では中国は世界の大勢と反する動きで悪い結果を生んできた。中国最大の情報機関で習近平の直轄機関といわれる国家保安省とつながる中国シンクタンクの報告書では反中国感情は1989年の天安門事件並のまで高まっていると指摘している。

トラブルは外交面にとどまらない。経済は50年で初の縮小となり、2020年第1四半期は6.8%減少に終わった。小売販売と工業出荷はともに大きく前年比で縮小し、失業率が上昇中だ。経済刺激策があっても今年の経済成長はよくて低調といったところだろう。

低成長が政治安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。中国共産党の統治モデルは経済拡大と生活水準の安定的向上で正当性を維持することにある。経済悪化で国内不満が高まれば、兵力投射も成約を受けかねない。

パンデミックが数ヶ月経過する中で、中国は自国のソフトパワーが減退し、経済が悪化しながら世界が非友好的になってきたのを自覚している。端的に言えば、中国は指導的立場につく試験に不合格となり、超大国の地位を目指す動きも頓挫したのである。

外交では不合格となったが次の課題は中国経済の回復が米国・米国の同盟国より先行し、世界経済を牽引できる強さを示せるかだ。だが世界経済の回復を牽引するため海外で指導力の発揮が必要だが、中国は準備不足を露呈している。■

この記事は以下を再構成したものです。

May 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: CoronavirusChinaEconomic GrowthPandemic

Jeffrey Cimmino is a program assistant in the Global Strategy Initiative in the Scowcroft Center for Strategy and Security at the Atlantic Council. His writing has appeared in the National Interest, National Review, the Washington Free Beacon, the Washington Examiner, Spectator USA, and other publications.
Image: Reuters.