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2025年1月29日水曜日

ブームの XB-1デモ機が超音速飛行に成功(The War Zone)―ターミナル1(民間航空)、ターミナル2(軍用航空)共通記事とさせていただきます

 

ブーム・スーパーソニックのXB-1デモンストレーターが今日11分余りで超音速に達した。YouTubeのスクリーンショット


音速超えのマイルストーン達成は重要な進展で、ブーム・エアロスペースは超音速民間機を飛ばした初の民間企業となった


ーム・スーパーソニックのXB-1実証機が音速の壁を破り、オーバーチュアとして知られる55人乗り超音速旅客機の設計につながる取り組みで大きなマイルストーンとなった。同社のプログラムは民間航空のみならず、軍事的にも重要な意味を持つ可能性がある。


ブーム・スーパーソニックのXB-1デモンストレーターが初めて音速の壁を越え、超音速に達した。 YouTubeのスクリーンショット


 同機は、元米海軍の飛行士でブームのテストパイロットであるトリスタン・"ゼペット"・ブランデンブルグによって、カリフォルニア州モハベ航空宇宙港を離陸し、マッハ1.1の速度を記録した。 飛行中、XB-1はA.J. "フェイス "マクファーランドが操縦するATACミラージュF1とT-38タロンの2機の超音速ジェットに随伴された。飛行中、XB-1は3回超音速領域に突入し、30分強の飛行の後、モハベに無事着陸した。


テストパイロットのトリスタン "ゼペット "ブランデンブルグが操縦するXB-1は、本日カリフォルニア州モハベ航空宇宙港から離陸した。


YouTubeスクリーンショット追撃機ミラージュF1を従えたXB-1。 



1947年10月、世界で最も有名なテストパイロット、チャールズ・E・"チャック"・イェーガーが人類で初めて音速の壁を破ったX-1ロケット機にちなみ名付けられたベルX-1超音速回廊の地図。 アメリカ空軍


 XB-1は、X-1、ノースアメリカンX-15、ロッキードSR-71ブラックバードなどの歴史的な初飛行を基に、"テストフライトバレー"で飛行する最新の超音速プラットフォームとなった。

 最終的に、XB-1の最高速度はマッハ2.2(時速1,687.99マイル)程度になると予想されている。

 「ベビーブーム」とも呼ばれるXB-1は、オーバーチュアの3分の1スケールの技術実証機である。2024年3月22日にモハベで初飛行を行った。その飛行中、XB-1は最高速度238ノット(時速273マイル、マッハ0.355)で飛行し、高度7,120フィートを達成した。その際、チーフ・テストパイロットであるビル・"ドク"・シューメイカーが操縦し、T-38タロンのチェイス機を操縦する "ゼペット"・ブランデンブルグが飛行をモニターした。

 ブーム・スーパーソニックは2020年10月7日、米国の民間登録コードN990XBを持つXB-1を発表した。同社は2016年11月、オーバーチュア計画を発表して約8カ月後に、このデモンストレーターを開発していると初めて発表した。

 XB-1は全長62.6フィート(約1.6メートル)、細長いデルタ翼の平面形状で翼幅は21フィート(約1.6メートル)である。炭素繊維複合材、高度なエイビオニクス、デジタル最適化されたエアロダイナミクスなど、洗練された技術がふんだんに使われている。


テスト飛行中のXB-1。 ブーム・スーパーソニック


XB-1はまた、超音速領域へ推進するための一風変わった推進システムも備えている。3基のジェネラル・エレクトリック製J85-15ターボジェットで合わせて12,000ポンド以上の推力を発揮する。広く使われているJ85は、ノースロップF-5やT-38などにも搭載されている。XB-1が発表されて以来、J-36との仮称で中国に先進無尾翼戦闘機として別の3発機も登場した。

 XB-1に比べ、オーバーチュアは全長201フィート(約1.6メートル)で、巡航速度はマッハ1.7(時速1,304マイル)、最大速度はマッハ2.2を達成する。 航続距離は最大4,500海里を見込んでいる。


Boom Supersonic社の旅客機Overtureの完成予想図。 ブーム・スーパーソニック


 マッハ1達成は同社にとって大きな成果であり、将来の超音速旅客機オーバーチュアにつながる重要な意思表示でもある。

 超音速旅行をより多くの旅行者に手頃な価格で提供することを目的として過去に成功した事業者はない。大洋横断路線の所要時間を大幅に短縮することを意図したこの航空機は、「航空会社にとってファーストクラスやビジネスクラスと同様の運賃で採算が取れるよう......設計されている」と同社ウェブサイトは記している。このようなパフォーマンスを有償で利用できたのは、英仏のコンコルドが最後だったが運賃は同等のビジネスクラスの何倍もした。そして、2003年末に商業的な超音速飛行から引退した。


British Airways Concorde taking-off with undercarriage retracting and afterburners. (Photo by: aviation-images.com/Universal Images Group via Getty Images)

ブリティッシュ・エアウェイズのコンコルドが、アンダーキャリッジを格納し、アフターバーナーを点火して離陸する。


 コンコルドに先立ち就航したソ連のツポレフTu-144は、世界初の民間超音速輸送機として1975年に運航を開始した。 しかし、わずか100回ほどの商業飛行を行っただけで、乗客を乗せていたのはその半分にすぎない。同機はその後、NASAの委託を受けるなど、超音速研究機としてキャリアを終えた。

 ブームは過去に、オーバーチュアの1機あたりの製造コストは2億ドルと主張していた。さらに同社のウェブサイトには、「オーバーチュアのオーダーブックは130機に達し、アメリカン航空、ユナイテッド航空、日本航空からの予約も入っている」と記されている。

 ブームによれば、2026年に最初のオーバーチュアを完成させ、2027年に試験飛行を開始、2029年までに型式証明を取得する予定だという。 この計画は非常に野心的であり、さらに多くのハードルを越えなければならない。

 商業市場以外では、オーバーチュアの軍事用途の可能性も見逃せない。2020年からブームは高速エグゼクティブフライト用のオーバーチュアの可能性を視野に入れ、米空軍と協力してきた。政府高官を超音速で移動させることはユニークで非常に名誉ある能力だが、オーバーチュアのデザインは、人員だけでなく貨物の迅速な輸送の可能性も提供する。

2022年7月、ノースロップ・グラマンとブームは、米軍と同盟国軍のために特別にオーバーチュア派生型を開発する協力を発表した。当時ブームは、軍用型は "迅速な対応ミッション "に理想的と指摘していた。


チーフフライトテストエンジニアのニック・シェリカがナレーションを担当した、XB-1の10回目のテストフライトでこう語っている:

「特殊な能力を備えたこの航空機は、医療物資の運搬、緊急医療避難、あるいは従来の航空機よりも高速で広大な地域を監視するために使用することができる。「特殊任務用のオーバーチュアは、様々なシナリオにおいて、他の航空機や地上資産を調整するためにも使用できる」。

 それ以来、オーバーチュアの「軍用型」の開発を進める努力が続けられている。 2023年9月、ブームはノースロップ・グラマンとの協力関係を基に、防衛アドバイザリー・グループの発足を発表した。このグループは、航空機が投入する「国家安全保障任務」の特定を支援することが目的だ。

 しかし、オーバーチュアの商業用途と同様に、軍事化されたバージョンを軌道に乗せるという見通しにも困難が伴う。

 とはいえオーバーチュアの成否を分けるのは商業市場である。先行プログラムの歴史は、商業的な超音速飛行を現実のものにすることがいかに難しいか、特に手頃な価格で実現することがいかに難しいかを示している。しかし、それがブームの最大の目標であることに変わりはない。

 XB-1で音の壁を打ち破ったブーム・スーパーソニックの功績を振り返る価値は大いにある。この野心的な計画に何が待ち受けているにせよ、このエキゾチックなテスト機は、それ以前に登場した超音速のパイオニアたちと同様に想像力をかき立てるのは間違いない。■


Boom! The XB-1 Demonstrator Jet Has Gone Supersonic

Hitting the Mach 1 milestone is an important development and makes Boom Aerospace the first private company to fly a supersonic civil jet.

Thomas Newdick

https://www.twz.com/air/boom-the-xb-1-demonstrator-jet-has-gone-supersonic


2022年7月20日水曜日

新興企業ブーム社の超音速旅客機にノースロップ・グラマンが参画。空軍での用途に着目か。米空軍は人員貨物の超音速移動に関心を示している

 Boom’s Overture Supersonic Airliner Gains Northrop Grumman As Military Partner

Boom Supersonic

 

 

超音速旅客機「オーバーチュア」は、民間向けに構想されたものだが、ノースロップ・グラマンが軍事用途に注目している。

 

 

ースロップ・グラマンブーム・スーパーソニックは、将来の超音速旅客機「オーバチュア」の派生型を、米軍および同盟軍向けに開発するため協力すると発表した。契約合意は、英国で開催中のファーンボロ国際航空ショーで最終決定されたが、両社パートナーシップは、ブーム・スーパーソニックにとって民生・軍用ニーズの超音速飛行を進めるため米空軍と協力したことはあるが、防衛産業と直接つながる初めてのケースとなる。

 ノースロップ・グラマンが発表した公式発表によると、今回の共同契約は、米軍と同盟国に新しい超音速航空機を提供することが目的とある。特殊任務用航空機は、ブームのオーバチュア機を出発点とし、ノースロップ・グラマン製の空中防衛システムを搭載する予定である。発表では、オーバーチュアは「即応性」のある任務で必要な速度を軍に提供できるとしている。

 「特殊機能を備えたこの航空機は、医療品配送や緊急医療避難、あるいは従来機よりも速い広域監視に使用できるだろう」と発表されている。「また、特殊任務用のオーバチュアは、各種シナリオで他の航空機材や地上資産を調整するのに使用される可能性もあります」。 

 

Breaking Defense誌もこの共同研究を報じており、ノースロップ・グラマンの航空システム担当社長であるトム・ジョーンズTom Jonesに取材している。ジョーンズは、オーバチュアの積載量が大幅増加を高く評価している。しかし、ジョーンズは、このようなプログラムの要件がまだ理解されていないことを自ら認めた上で、次のように述べた。

 オーバーチュアの軍用任務は、広範囲に及ぶはずだ。このことは、ブーム・スーパーソニックと軍の関係がつい最近開花し始めたことも重要な点だ。コロラド州デンバーを拠点とする新興企業の同社は2014年に設立され、超音速飛行の研究開発を中心としており、オーバチュアのコンセプトは商業市場向けを主にに開発されている。「ベイビーブーム」と呼ばれる「オーバーチュア」の3分の1スケールの飛行プロトタイプ機が2020年10月には、初めて公開された。

 

 

 

「Overture」旅客型のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

CEOのブレイク・ショールBlake Schollが設立したブームは、移動時間を実質的に半分にすることを目標としている。ファーンボロ国際航空ショーでのショールの発言によると、同社の旅客機コンセプト(65〜85人乗り)は、洋上でマッハ1.7、陸上でマッハ0.94で飛行し、航続距離は4,250カイリになる。しかし、今回のノースロップ・グラマンとの契約が成立する以前からオーバチュアには米空軍が関心を寄せていた。

 

 

Credit: Boom Supersonic

 

空軍はブーム社と2020年2月より提携し、特に政府の幹部飛行を目的としたオーバーチュアを検討していた。超音速機は、莫大な金額を支払ってプライベートフライトを利用している世界の富裕層にとって、時間を節約する点で非常に魅力的であるため、この提携は大きな驚きを呼ばなかった。空軍は、オーバーチュアを利用して、政府要人を現在使用中の既存旅客機型よりはるかに速く世界各地に移動させることができる。実際、空軍はこの潜在的な能力に非常に興味を持ち、エアフォース2後継機計画からこの研究に資金を振り向けた。

 

 

「Overture」の以前のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

2017年、ロッキード・マーティンエアリオン(当時はブームの競合企業と見られていた)と手を組み、超音速ビジネスジェット機「AS2」を開発した。その後、ロッキード・マーティンはエアリオンとの提携を更新しないことを決め、ボーイングがその座に就いた。

 これらの提携には、現在のノースロップ・グラマン社とブームの提携を彷彿とさせるものがある。ロッキード・マーティン=エアリオン提携が発表されたとき、軍事的応用の可能性には、似たようなものがあったためだ。AS2を軍用化する計画はなかったが、マッハ1.4の速度と流線型の機体は、現在オーバチュアが潜在的に提示している速力と監視・電子戦能力の余地を軍に提供できたはずだった。しかし残念ながら、2021年、エアリオンはAS2計画を進める資金の調達に苦戦し、同社を清算することが発表された。

 ロッキード・マーティンがエアリオンと協力すると発表されたとき、本誌は超音速輸送機の軍での活用で多くの方法を提示したが、ノースロップ・グラマンとブームの連合が提唱する潜在的用途と一致している。

 今回の発表で示唆された軍用仕様「オーバーチュア」の高速輸送用途には、空軍の主要目標である貨物や人員の高速輸送が含まれる可能性がある。空軍は、有事の際に人員や貨物を世界中に素早く移動させる能力を実現するために、Space-X社の垂直離着陸型などのロケットに注目しているが、オーバチュアのような長距離超音速航空機は、需要の一部を、実現する可能性がある。

 

 

「Overture」の以前のレンダリング画像。Boom Supersonic

 

オーバチュア商用機は2024年に生産開始、2026年に飛行試験開始、2029年に乗客輸送開始の予定だが、特殊任務仕様のスケジュールは明らかにされていない。しかし、この分野の航空宇宙開発は、リスクと技術的なハードルが高く、極めて資本集約的であることを忘れてはならない。こうした要素のため、飛行テストはおろか、生産仕様のオーバーチュアが製造にさえたどり着いても、実戦配備のスケジュールに影響を与える可能性がある。ノースロップ・グラマンは、複雑な航空機を大量生産できるアメリカの大手航空機製造会社であるため、関係の進展次第では、より深いパートナーとなる可能性がある。

 ブームによれば、民間旅客機は1機あたり約2億ドルで、これは楽観的な数字とも言われており、軍用機となればもっと高くなることは間違いない。また、ブームのショールCEOは、軍向けオーバーチュアは基本的に平和利用されると主張しており、現時点では兵器搭載の可能性は否定している。

 

 

ブームのXB-1実証機、初飛行に向け準備中。Boom Supersonic

 

オーバチュアの魅力は、航続距離、積載量、速度で、限りなく既存機材にちかくなることが防衛分野でのセールスポイントだ。ノースロップ・グラマンが加わるのは、野心的な新興企業にとって有望な兆しだが、同じことは、エアリオンにロッキード・マーチン、さらにボーイングが参加したときにも言われていた。コンコルド以来となれば20年不在だった超音速旅客輸送が実現し、そして既存機材では対応不能な任務を担う軍用機の可能性を再び享受できるよう、ブームには多くの点でうまくやってほしいものである。■

 

Boom's Overture Supersonic Airliner Gains Northrop Grumman As Military Partner

BYEMMA HELFRICHJUL 19, 2022 10:00 PM

THE WAR ZONE


2021年6月6日日曜日

米空軍エアフォースツーC-32A後継機は一気に超音速機になりそう。新興企業による技術ブレイクスルーに期待する米空軍。

 US Air Force Boom VIP

BOOM SUPERSONIC

 

 

空軍は超音速あるいは極超音速人員輸送機の開発で、現行のC-32A特別空輸機(原型は生産終了済みボーイング757-200)と大幅に異なる後継機の実現を目指す。C-32Aは副大統領の搭乗時のコールサイン「エアフォースツー」のほうが有名だ。

 

英仏共同開発のコンコードが2003年に運行停止した以降、高速飛行性能と低水準運行経費の両立が難題になっている。ただし、ユナイテッドエアラインズがマッハ1.7で飛行可能なオーヴァーチュア旅客機をブーム・スーパーソニック社から15機導入する基本合意ができたと本を発表したことで、空軍が目指す技術が現実に近づいてきた観がある。

 

TYLER ROGOWAY

米空軍はC-32A特別空輸機を4機運用中だ。

 

 

空軍の2022年度予算案ではC-32高官輸送機再生事業が消えており、2021年度に同事業に計上されていた6.2百万ドルが浮く。

 

C-32A再整備事業の削除で特に関心を呼ぶのは空軍がその分の予算を高速輸送機の研究にす流用していると明らかにしている点だ。空軍の供用中VIP機材は既存型の旅客機やビズジェットを大幅に改装したものだ。

 

「2020年以降の予算は高性能高速輸送機材の評価、技術成熟化に投じられており、C-32A後継機を適切な時期に実現するべく国防産業基盤の強化に充てている」と空軍の予算文書にある。

 

空軍はC-32A(現有4機)と同水準の機材を後継機にすることに関心をなくし、かわりに高速高官輸送機材に焦点をあてている。

 

実際に作業は小規模ながら進んでいる。空軍は新興企業三社に契約を昨年交付し、高速高官輸送機材への応用を検討している。そのうち、前述のブーム・スーパーソニックはXB-1「ベイビーブーム」超音速実証機を昨年10月にロールアウトさせた。XB-1テストからオーヴァーチュア旅客機を誕生させる狙いがある。100%再生可能燃料を使い、乗客65-88名のオーヴァーチュアは2026年に路線就航する予定だ。

 

 

残る二社は同じく超音速機開発をめざすエグソソニックExosonicと極超音速機の実現にとりかかるハーミウスHermeus Corporationだ。

 

C-32Aは後継機種がないまま、航空機動軍団で2040年まで供用されると予算資料にあり、平均18年の耐用年数が残っている。C-32Aの就役開始は1998年で第89航空輸送団の第一空輸飛行隊がアンドリュース共用基地(メリーランド州)で運用している。

 

C-32Aでは改修作業も予定されており、2022年度には1.9百万ドルが計上されているが、2021年度の2.9百万ドルより減っている。予算資料では「プログラム管理装備(PMA)、助言支援機能(A&AS)、システム統合作業、訓練機器、その他政府関連費用に加え、高官用通信装備の更新を行う」とある。

 

さらにC-32A改装では機内意匠を「エアフォースワン」VC-25Aの大統領搭乗区画に近づける「内装リフレッシュ」作業も続いている。うち一機の内装改装が2018年に16百万ドルで発注されている。

 

 

その他の改装作業にコックピットのエイビオニクス改修、機体防御装備、通信機能の大幅向上がある。

 

これまで空軍は海軍とC-32A高官空輸機(EA)のみならず、E-4B国家空中作戦センター(NAOC)通称「審判の日」機、E-6B空中指揮命令所(ABNCP)、通信中継機(TACAMO)まですべて単一機材に更新する大胆な構想を進めてきた。空軍は現有の各機材は「老朽化し運用がどんどん難しくなっている」としている。

 

構想は各機の頭文字をとりNEATと呼ばれてきたが、昨年9月に中止となった。そこで空軍はE-4B後継機の検討を始め、海軍はC-130Jを次のTACAMO機候補としている。

 

となると、空軍が模索する高速高官空輸機はどうなるのか。新興企業三社向けの進展は予測不能だ。ただし、これまでの契約実績は研究中心で規模も少額であることに留意すべきだ。たとえば、ハーミウスには2百万ドル未満しか交付されていない。

 

HERMEUS CORPORATION

極超音速旅客機を空軍仕様にした想像図

 

 

そこで要求性能水準と実用性が問題となる。高官を乗せ世界各地を高速移動しつつ運航効率が高い、長距離を短期予定で移動できる性能は歓迎されるだろうが、単一機種として調達すれば非常に高額な装備になりそうだ。また、運行面では大陸上空の超音速飛行は米国、欧州で依然として禁止されたままであり、機体性能を活用できない。これは軍用、民生用共通だ。

 

一方で、超音速機がこの機体サイズで実現すればその他任務にも投入できる。例として情報収集監視偵察(ISR) 、さらに攻撃任務も想定できる。ごく少数の人員や機材を長距離かつ高速に移動させられる。高速輸送機は搭載力が限られるとしても魅力ある選択肢に残る。 


うまく調整すればその他予算項目からの流用も可能になるのではないか。であればC-32A近代化改修は終了となりそうだ。

 

そうなると、C-32Aの後継機種がないまま、将来の「エアフォースツー」に高官が乗り超音速、あるいはそれ以上のスピードで移動する日が来るかもしれない。大手エアラインが信頼を示したことで空軍にもVIP高速輸送の夢が近づいたのではないか。■

 

次期大統領専用機VC-25Bの供用開始が遅れ気味になっています。一方で、超音速VIP機が空軍に納入されれば、副大統領が高スピードで移動し、大統領はゆっくり移動することになるのでしょうか。大統領の移動となると随行員や装備の関係で小型機では対応できないので、やはりこのままなのでしょうかねユナイテッドのブーム機材購入の話題はT1でお伝え済みです。

https://aviationspacet1.blogspot.com/



 

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmailまでご連絡ください。

 

'Air Force Two' Replacement Dropped With Funds Redirected To Supersonic Transport Research

BY THOMAS NEWDICK JUNE 3, 2021


2020年10月10日土曜日

ブームの超音速エアライナー実証機XB-1がロールアウト! 米空軍が関心を示す

 (ターミナル1・2共通記事)エアライン業界は大変保守的で既存機種を最大限に使うビジネスモデルにしがみついています。その結果、半世紀で機種の変更こそありましたが、基本的に性能は進化していません。ここに果敢に挑戦する新興企業数社が米国に生まれています。はたしてその試みが成功するか注目です。機体が登場する3年後に現在の航空不況が克服されているかもありますが、ビジネスジェット分野なら可能性はありますね。超音速性能をいかんなく発揮できるのが海洋上空など限られるのが制約ですが、もともとコンコードを警戒した米議会が陸上上空の超音速飛行を禁止したのでは。軍用用途にした場合、大統領専用機もいいですが、ISR機材はどうでしょう。今回はThe War Zoneからのご紹介です。


ーム・スーパーソニック(本社コロラド州)がXB-1超音速実証機をロールアウトした。同機は開発を目指す実機の縮小版で「ベイビーブーム」と呼ばれる。飛行開始は来年の予定で、55席の超音速旅客機「オーヴァチュア」Overtureの実現を目指す。

 

同機には民間機登録番号N990XBがつき、COVID-19流行のためヴァーチャル発表式典で2020年10月7日に執り行われた。

 

XB-1は全長71フィートで長く伸びたデルタ翼の全幅は17フィートあり、「離着陸時の低速安定性と高速飛行時の効率性を両立させた」とブームは報道資料で説明。機体は炭素複合材料を大量に使い、「超音速飛行時の高温ストレス環境でも強度と剛性を確保した」という。実証機はオーヴァチュアの三分の一の大きさだ。

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ジェネラルエレクトリックJ85-15ターボジェット三基で推力合計12千ポンドを発生する。最高速度マッハ2.2程度をめざす。同エンジンは米空軍で供用中のT-35タロン練習機に搭載されている。

 

BOOM SUPERSONIC

 

空気取り入れ口、排気口はともに可動式でオーヴァチュアでは「コンコードの三十分の一の騒音」になるという。また空力学的に洗練された機体形状でソニックブーム発生も変わるという。

 

XB-1の胴体部分は細長く、機首を延長しているため操縦時に視野が制限されるが、英仏合作のコンコードでは着陸時には機首を下げる複雑な機構を採用していた。ベイビーブームでは遠隔画像システムによりパイロットが機首の先を「見る」ことが可能。これはロッキード・マーティンがNASA向けに製造したX-59静かな超音速輸送 (QueSST)実証機に採用したのと同じ機構だ。

 

ブームはオーヴァチュア投入で民間航空に一石を投じるとする。マッハ2.2は最高速度で巡航飛行時はマッハ2未満となるが、最大航続距離は4,500カイリで、同社は運航効果が見込める路線は500を超えると見る。その一つがニューヨーク=ロンドン線でかつてコンコードも飛行していた。ソニックブームによる騒音問題はまだ未解決だが、同社は高人口密度地帯上空はコンコード同様に亜音速飛行するとしている。

 

この方法でオーヴァチュアは既存亜音速機種に代わる低コストかつ高信頼性の選択肢となる。「シートマイル費用で見ればオーヴァチュアは亜音速ワイドボディ機より低水準です」と同社ウェブサイトにあるが、フライト時間当たりの経費では数字を出していない。ブームは既存機種のビジネスクラス並みの料金を実現するのが目標としている。

 

BOOM SUPERSONIC

オーヴァチュアをエアライナーにした場合の想像図

 

 

ブームは機体価格を200百万ドル程度にするとしており、ここには内装他オプション部分は含んでいない。このとおりなら既存ワイドボディ機より低価格となるが、一方で既存機種の輸送力は大きい。2018年にエアバスは売れ筋のA330-200の平均価格は238.5百万ドルと発表していたが、同機は最大406席の輸送力がある。ボーイングも767-300ERの平均価格を217.9百万ドルと発表しており、300席の旅客を収容できる。

 

それでもオーヴァチュアは各方面から関心を集めており、ブームによればヴァージン日本航空も含めエアライン業界から76機の導入意向が寄せられている。ヴァージングループはブームの大株主でもあり、傘下のスペースシップカンパニーが機体製造テストを支援するとの報道が前に出ていた。

現実にプライベートジェット部門ではオーヴァチュアのような機体に大きな需要がありそうだ。大企業や大富豪など文字通り時が金につながる層には高速移動で時間を稼ぐのは当たり前になっている。マッハ2移動は当然関心を呼ぶ。ブームの提示価格が現状のビジネスジェットの二倍近くになっても同機を求める流れは変わらないだろう。同機が究極のステータスシンボルになる可能性もある。

 

超音速旅客機は軍用転用も可能で、The War Zone はブームの競合相手になるエアリオンAS2超音速ビジネスジェットの話題を前からお伝えしている。ブームは米空軍から契約交付を9月に受けている。これは超音速大統領専用機構想の検討がないようだ。空軍は同じく極超音速分野の新興企業ハーミウスコーポレーションHermeus CorporationエグゾソニックExosonicにも同様の研究を委託している。

 

BOOM SUPERSONIC

ブーム・オーヴァチュアを米空軍で供用する構想の想像図では機体に747原型のVC-25Aエアフォースワンと同じ塗装が施され、超音速大統領専用機となっている。

 

 

ブームはXB-1のテストとオーヴァチュア開発を並行実施すると発表している。まずベイビーブームの地上テストを完了し、飛行テストを2021年に開始する。同社の新工場が2022年に完成し、オーヴァチュア生産を開始し、3年後にロールアウトする。

 

ただし、XB-1、オーヴァチュア双方で遅延が発生している。XB-1の飛行テストは今年末開始の予定だったが、機体安定性強化システムで離着陸時の安全確保で対策が必要となり先送りされた。オーヴァチュアでも2017年時点で路線就航は2023年とされていた。

 

とひえ、XB-1実証機が完成し、テストも数か月後に実際に始まると思うと興奮してくる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Boom Rolls Out Its XB-1 "Baby Boom" Supersonic Demonstrator Jet

BY JOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICK, TYLER ROGOWAY

OCTOBER 7, 2020


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