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2025年3月21日金曜日

B-52エンジン換装計画内容が明らかに。ただし、やはり予定どおりの完了は無理な公算(The War Zone)


契約締結から15年後となる2036年までに、76機のB-52のエンジン換装が計画されている


いF130エンジンとその他アップグレードを施したB-52J最終構成のレンダリング。 ボーイング via Air & Space Forces Magazine

空軍は、76機のB-52爆撃機のうち最後の1機の再エンジン化を2035年までに完了させることを目標としてきたが、このスケジュールが1年ずれ込む可能性が出てきた。これにより、当初の商用エンジン換装プログラム(CERP)契約締結からアップグレード作業完了までの期間は、合計で約15年に延びるる。 CERPはすでに遅延とコスト増に悩まされているが、再エンジン化キットの中身について新たな情報も入ってきた。

 2021年、空軍はB-52Hを再設計するコンペティションの勝者としてF130を選んだと発表した。B-52のオリジナル・メーカーであるボーイングは、統合作業の主契約者であり、この作業には機体に多数の追加改造が必要となる。こうして完成した爆撃機は、他のアップグレードも施され、2050年代まで使用される見込みで、B-52Jと再指定されるB-52Hの最後の機体は1962年にボーイングの生産ラインからロールオフした。

 「B-52J CERP生産段階」には、「B-52機への新しいエンジンと関連サブシステムの取り付けをサポートするための航空機部品の調達および/または生産」が含まれる。 (最近の空軍の契約通知によると、「(エンジンは政府から別途提供される)」。「FY28(会計年度2028)から5年から8年の間に、追加スペアパーツ、生産工具、およびインストールをサポートするためのサポート機器を含む、最大76機のB-52H航空機の生産段階を通じて、必要に応じてティンカーAFB(空軍基地)または他の指定場所にて航空機改造キットを構築、保管、および配信する。

 2028会計年度から始まる8年間の期間は、2036会計年度に終了する。 2036年の会計サイクルは、2035年10月1日に始まり、2036年9月30日に終わる。2023年の時点で、空軍は2035年までにCERPを完了させたいと述べている。

 契約通知には、空軍の目標は2028年までに新エンジンを搭載した最初のB-52を2機保有することに変わりはなく、地上試験と飛行試験の目的で使用される予定と書かれてある。「B-52Jの生産段階に先立ち、ボーイング社は機体改造の取り付け図面を作成し、機体改造部品のサプライヤーを選定する。


B-52J CERP "改造キット” の内容も同通知でわかる:

  • エンジンストラット(OEM Spirit Aero)

  • 統合駆動発電機(OEMコリンズ)

  • 油圧ポンプ(OEM Parker)

  • エンジンナセルおよびフェアリング(OEM Spirit Aero)

  • ジェネレーターコントロールユニット(OEM Collins)

  • 油圧リザーバー

  • エンジンスロットル制御

  • 配電ボックス(OEM Boeing)

  • 電源配線

  • エンジンスタートスイッチ

  • エアスターター補助ユニット(OEMハネウェル)

  • 制御配線

  • エンジン計器ディスプレイ(OEM L3 Collins)

  • エアスターター補助ユニットコントローラー

  • アタッチメントハードウェア

  • エンジンデータコンセントレータユニット(OEM Boeing)

  • コックピットの油圧パネル

  • 空気圧プレクーラー

  • コックピット内電気パネル

  • 空気圧コンポーネントとダクト

  • 防氷システム(OEM Liebherr社製)

  • エアデータシステムプローブ(OEM Collins Rosemont社製)

  • 真気温センサー(OEM Collins Rosemont社製)


 CERPプログラムの中心は、現在B-52に搭載されている8基のTF33エンジンを1基ずつ交換することで、これはアップグレード作業のコストと複雑さを軽減するために行われた決定である。しかし、上記のリストは、この作業が単に爆撃機の翼の下にF130を取り付けるだけではないことを強調している。

 エンジン換装によって、爆撃機の燃費は大幅に改善され、メンテナンス需要も減少する。TF33は1950年代の設計で、1985年以来生産が中止され、現在では運用と維持に非常に高コストとなっている。


B-52HのTF33エンジンで作業する米空軍隊員。 アメリカ空軍


 CERPプログラムの完成時期が2035年から2036年にずれ込む可能性は大きくないが、それはこの取り組みが現在までにすでに直面しているより大きな問題を物語っている。このような困難は、B-52のエンジン換装で期待される効果にも影響する可能性がある 昨年、空軍がB-52Jによる作戦飛行を開始するのは2033年になるかもしれないことが明らかになった。また、改造キットの組み立てを支援する可能性のあるベンダーの検索を開始するなど、空軍とボーイングが現在とっている措置が、既存の遅れを軽減するのに役立つ可能性もある。一方で、このプログラムはまだ歴史が浅く、生産や飛行試験の結果、さらなる遅れが生じる可能性もある。ボーイングは近年、空軍向けの新型機エアフォース・ワンやその他の注目度の高い米軍プログラムなど、防衛・商業部門全体で深刻な混乱に見舞われており、数十億ドルの財務的損失につながった。

 現時点でCERPプログラムの総費用がいくらになるかは不明だが、すでに80億ドル前後からおよそ90億ドルに膨れ上がっている可能性が指摘されている。ボーイングは昨年末までに最新のコスト見積もりを空軍に提出することになっていたが、それが行われたかどうかは不明である。

 CERPはまた、空軍がB-52が今後数十年にわたり運用可能であり続けることを保証するために進めている数多くの近代化努力のひとつに過ぎない。これには主要なレーダー近代化プログラム(RMP)も含まれ、このプログラムも近年、遅延とコスト増に苦しんでいる。

 B-52の機械走査式レーダーAN/APQ-166を、レイセオンのAN/APG-79から派生した新しいアクティブ電子走査アレイ(AESA)に置き換えることは、特に重要なアップグレードとみなされている。新しいレーダーは、状況認識と対抗措置への耐性を向上させるとともに、航続距離と忠実度を向上させる。これらはすべて、潜在的に敵対的な航空機を含む目標の捕捉と識別に役立つだけでなく、長距離ネットワーク化された弾薬を使用する同機の能力を拡大するのに役立つ可能性がある。レーダーはまた、二次的な地上移動目標指示器(GMTI)と合成開口レーダー監視機能を持ち、電子戦や通信支援の追加機能を持つ可能性もある。

 空軍は、B-52を少なくとも2050年まで、太平洋における中国との潜在的なハイエンド戦も含め、核および通常長距離攻撃能力の重要な要素と見なしている。機体アップグレードに加え、核弾頭を搭載したAGM-181Aロング・レンジ・スタンド・オフ(LRSO)巡航ミサイルや将来の通常型極超音速兵器など、新兵器も導入される。

 いずれにせよエンジン換装はB-52にとって間違いなく最も重要なアップグレード作業であることに変わりはないが、作業完了までには最終的に少なくとも合計15年かかるかもしれない。■


B-52 Re-Engining Plan Comes Into Sharper Focus

Re-engining all 76 B-52 bombers is now planned for by 2036, 15 years after contract award.

Joseph Trevithick

https://www.twz.com/air/b-52-re-engining-plan-comes-into-sharper-focus


2023年4月7日金曜日

B-52エンジン換装機の制式名称がB-52Jに決定。2020年代末までに実戦運用を目指す

 

B-52H型全機はエンジン換装だけでなく電子装備なども同時にアップグレードされ、「100年爆撃機」になりそうですね。Air & Space Forces Magazine記事からのご紹介です。

空軍の2024年度予算案によると、新しいロールスロイスF130エンジンを搭載したB-52HはB-52Jの制式名となる。



 今回の決定は、B-52H型の61年の耐用年数で最も重要な改良を受けるにあたり、数年間議論されてきた問題を解決する。

 「新しい民生エンジンと関連するサブシステムで改造したB-52H機は、B-52Jと制定される」と、空軍は2024年予算要求文書で述べている。

 というのも、B-52は新エンジンに加え、新しいレーダー、新しい通信・航法装置、武器など、2050年代まで信頼性と能力を維持することを目的とした改良を受けるため、空軍は改良型ストラトフォートレスでさまざまな呼称を検討していた。

 このように変更点が多いため、グローバル・ストライク・コマンドは暫定的な呼称を使用することを検討していた。

 B-52の改良兵器の1つは極超音速のAGM-183 Air-Launched Rapid Response Weapon(ARRW)とされていたが、2024年予算で空軍は、あと数回のテスト後に同プログラムを「終了」させ、極超音速攻撃巡航ミサイル(HACM)に重点を移すと発表している。

 B-52エンジン換装プロジェクトの名称も、Commercial Engine Replacement Program(CERP)からRapid Virtual PrototypingのCERP RVPへ進化したと、空軍は予算要求で述べている。

 エンジン換装の取り組みは、時間を節約し、より早く能力を得るためて開始された。このプログラムは、RVPの取り組みが終了した時点で、Major Capability Acquisitionとなると空軍は述べている。

 アップグレードはまた、その他変更への扉を開くと空軍は指摘している。

「B-52 CERPでB-52にさらなる能力をもたらすにつれて、新たなセキュリティ/認証要件(核硬化、サイバーセキュリティ、プログラム保護など)にも対処の必要がある。B-52 CERPの期間中、アップグレードが同時に行われるため、仮設施設や施設のアップグレード/修正が必要になる可能性があります」。

 空軍は、将来数年の防衛計画全体で30億ドル近いB-52調達を求めており、2024年の6,582万ドルという控えめな金額から始まり、2027年と2028年には各11億ドル以上まで膨れ上がる。

 このうち、レーダー近代化プログラムだけで8億4590万ドル、27年には2億7195万ドルとピークに達する。調達勘定には含まれないが、レーダー近代化プログラムに関連する研究、開発、試験、評価は3億7100万ドルで、2026年に終了するよう要求だ。RMPの調達資金で、74のレーダーキット、3つの訓練システムキット、2つの技術・製造開発キットを調達する。

 新レーダーは、海軍のF/A-18スーパーホーネット戦闘機に使用されているアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダー、レイセオンAN/APG-79の亜種。このレーダーは、APG-166に代わるもので、空軍によると、「ベンダーがなくなる」深刻な問題や部品の問題で、2030年までに「サポート不可能」になるとしている。

 AESAは保守性を飛躍的に向上させるだけでなく、捜索、地形図作成、電子戦において重要な新機能を追加する。また、新型レーダーの物理的な設置面積は、現行システムよりもはるかに小さく、航空機の前部で成長能力が生まれる。B-52の機首に取り付けられている電気光学ブリスターは取り外され、新しいレーダーと新型レドームが設置される。

 再エンジン化プログラムは、RDT&E予算で25億6000万ドル、2025年に6億5000万ドルのピークを迎える。このプログラムでは、元の装備であるプラット&ホイットニー TF33エンジンをロールスロイスF130に置き換えるのが目的だ。F130はB-52に搭載される期間を通じオーバーホールの必要がないため、燃費が30%向上し、最終的にこの変更は元が取れると予想されている。

 「新エンジンとともに、CERPはエンジンストラットやナセル、発電システム、コックピットディスプレイなどの関連サブシステムを交換する」と空軍は述べている。「新しいエンジンと関連するサブシステムの開発、製造、設置は、76機あるB-52Hのレガシー機器と交換される」。

 これまでに支出された分を含め、B-52 CERP Middle Tier of Acquisitionの取り組みの総費用は、RDT&E含め13億2000万ドルと空軍は述べている。

 空軍は、新エンジンと新レーダーの両方を搭載したB-52Jが、2020年代末までに運用可能になることを期待している。■


It’s Official: The Re-Engined B-52 Will be the B-52J

April 5, 2023 | By John A. Tirpak





2022年8月14日日曜日

エンジン換装など性能向上改修後のB-52の制式名称がK型あるいはL型に変わりそう。

 

B-52Hは、新型レーダーと新エンジンを得て、B-52JまたはB-52Kと改名されるだろうが、プログラムの上級資材リーダー、ルイ・ラスセッタLouis Ruscetta大佐によると、空軍はB-52の新しい構成は未決定だという。

ラスセッタ大佐は、オハイオ州デイトンで開催されたAir Force Materiel CommandのLife Cycle Industry Daysカンファレンスで、レーダーとエンジンプログラムはB-52の「歴史中で最大の修正」と記者団に語った。B-52GからB-52Hへの1961年の変更は、TF33エンジン切り替えが主だったが、今回の新パッケージは、レーダー、エンジン、通信、パイロン、コックピットディスプレイ以外に、乗員ステーションが一つ削除され、新名称を持つことは「意味がある」(ラスセッタ大佐)。

問題は、新型APG-79B4レーダーの一部が、新しいロールスロイスF130エンジンの前に爆撃機に搭載されるため、2つの呼称がつくかどうかとラスセッタ大佐は発言。B-52のパイロット・オペレーション・マニュアルとメンテナンス・マニュアルは、新レーダーのバージョンに書き直され、エンジン変更でも書き直されると、ラスセッタ大佐は言った。

「空軍がグローバル・ストライク司令部と検討する必要があるのは、新型機をどう定義するかということだ」と述べた。決定は、今後2年以内に行われるはずだ。

特に空軍が爆撃機をB-21とB-52の2機種体制に移行する中で、新しいアクティブ電子スキャンアレイレーダーはB-52にとって「ゲームチェンジャー」となるとラスセッタ大佐は述べた。APG-79は事実上、海軍のF/A-18戦闘機の輸出版と同じレーダーで、アレイを「逆さま」にして、空を見上げるのではなく地面を見下ろすようにしたと、ラスセッタ大佐は説明。

また、爆撃機で同じセンサー形式を使うので、「他の連合パートナーとの」作戦がよりうまくいくようになるという。より遠くまでスキャンでき、「飛行中の武器を誘導」し、爆撃機の状況認識を向上させるという。B-52は現在も1960年代のメカニカルスキャンレーダーのまま飛行している。

レーダー交換は「数ヶ月前に重要設計審査に合格したばかりで、今は次の段階に入っています」と大佐は言った。それは、レーダーがB-52の他部品に影響を及ぼし、飛行試験に先立って新装置の有害性や意図しない副作用がないことを確認するための「システム統合ラボの構築」(SIL)だ。SILは、冷却装置を除くシステム全体を表現するもの。

新型レーダーはB-52の電子戦装備と「分離」されるが、新装備は旧装備より容積が小さく、EW機能の「拡張スペースができる」とラスセッタ大佐は述べた。

プログラム・オフィスは、レーダー、エンジン、その他の装備の設置をどのように段階的に進めるかに取り組んでいる。一部の爆撃機は新エンジンの前に新型レーダーを手に入れるが、その後、両方が利用可能になれば、通常のデポ訪問時に、同時に改造を行うことが望ましいと、ラスセッタ大佐は述べた。空軍グローバル・ストライク司令部で運用上必要な爆撃機の最低数を下回らないようにするため、ダウンタイムを最小限に抑える必要がある。

新装備をすべて搭載した機体が登場した時点で「回帰テスト」を行うかもしれない。しかし、その節目までにあらゆる問題を解決しておくことが目標となる。

ティンカー空軍基地のオクラホマシティ航空兵站施設は、年間約17機のB-52を送り出していると、ラスセッタ大佐は言う。

「そのため、デポ中にできるだけ多くの改造を一度に行う」(ラスセッタ大佐)。

新型レーダーの飛行テストは2025年後半に開始され、最初の量産型は同時期に製造される予定だ。このレーダーの初期運用能力(IOC)は、宣言に必要な資産として12機で構成されるとラスセッタ大佐は述べた。最初の機体が新エンジンを搭載し運用開始するのは、2030年頃の予定。

しかし、同プログラムはコスト見積りを作成し、それを空軍本部に提出し、「近いうちに」議会に提出する予定だと、ラスセッタ大佐は述べた。

CERPのコストが50%増加するという報道は、「文脈から外れている」とラスセッタ大佐は述べた。2017年に行われたビジネスケース分析は包括的ではなく、アップグレードのすべての影響を予想していなかったし、コスト見積もりモデルも更新されている。空軍はKC-135のリエンジニングをモデルとしたが、現在はより新しいC-5のリエンジニングをコストの目安としている。

ラスセッタ大佐は、「エンジン交換の関連プログラムで、オーバーランしているものは一つもない」と言い、「将来的にオーバーランすることはないだろう」と述べた。

後の電子メールで、ラスセッタ大佐は、2019年の最初の空軍独立コスト見積もり以来、このプログラムは「約12%のマイナーなコスト増を見た」と述べた。

「FY22のNDAAは、FY'20のコスト見積もりを使用して、CERPプログラムのコストベースラインを確立しました。現在、議会が定めたベースラインから3%の増加を推定しています」。

報告書は、「CERPの状況について議会に完全な最新情報を提供する」とラスセッタ大佐は述べた。B-52に必要な新型エンジン、制御装置、ディスプレイを統合する工程の複雑さにより、コスト増加がでてきた。

「新しいエンジンだけではありません。新しいパイロン、発電機、燃料パイプ、コックピットディスプレイなどがあります。それは「ロールス・ロイスよりもはるかに大きな努力」である。ボーイングがB-52の全アップグレードの統合業者となる。

「ロールス・ロイスでエンジン・サブシステムの予備設計レビューを行ったところ・・・非常に成功したイベントとなった」と述べ、ボーイングとの強いパートナーシップぶりを示した。システムレベルのPDRは今年後半に行われる。「設計はかなり安定している」(ラスセッタ大佐)。エンジンとレーダーのアップグレードは、ほとんど新規開発を必要としないことをめざした。

ラスセッタ大佐は、「COVID環境で管理するプログラム同様に」、プログラム・スケジュール上の大きな課題は、設計より、サプライ・チェーンだと付け加えた。■

B-52 Will Get at Least One New Designation With Radar, Engine Upgrades - Air Force Magazine

Aug. 10, 2022 | By John A. Tirpak


2022年4月13日水曜日

動き出したB-52エンジン換装事業。76機全機の作業完了は2035年ごろか。B-52は2050年まで供用される。



2050年代までB-52を維持する性能改修パッケージの目玉は、

新しいエンジンだ。


 

空軍がB-52エンジン8基の交換構想を始め40年、作業がついに実現する。エンジン換装で、ストラトフォートレス運用を20〜30年維持する。

 B-52商業エンジン交換プログラム(CERP)の契約は昨年秋に締結され、プログラムは迅速に進められている。新しいF130エンジン2基が製造され、開発と試験が計画通り進めば、最初の再エンジン搭載B-52は約5年後に運用開始となる。  

 空軍爆撃機プログラム主幹のジョン・P・ニューベリー准将Brig. Gen. John P. Newberryは、「2030年代に向けて、B-52の姿を決定付ける要素がすべて整った」と述べた。ニューベリー准将は、性能改修の内容として「新しいエンジン、新しいレーダー、超高周波および超低周波通信の改良、データリンクの更新、暗号の改良、およびいくつかの小さな取り組み」が含まれると述べている。 

 B-52はまた、米空軍初の極超音速ミサイルAGM-183 Air-launched Rapid Response Weapon(ARRW)の最初の搭載機となり、核兵器AGM-181 Long-Range Standoff(LRSO)ミサイルでも唯一の運用機になる。

 F130は、ロールス・ロイスの商用エンジンBR725の軍用化版で、空軍はC-37VIP輸送機やE-11 BACN(戦場空中通信端末)で供用している。ロールスはGEエイビエーションプラット&ホイットニーを抑え2021年9月に5億90万ドルの初期契約を獲得し、B-52搭載用のF130の開発・試験を開始した。ロールスは76機のB-52用にF130を650基提供する。F130エンジンは、プラット&ホイットニーTF33を置き換える。プログラム全体の評価額は約26億ドル。

 ロールスはエンジンを空軍に直接提供し、B-52の製造元であるボーイングが、新エンジンが既存または新規の機器の機能に悪影響を与えない形で、機体にエンジンを搭載する。アップグレードは、補修施設への回航の際に実施される。

 1月、ボーイングはアリゾナ州のデービスモンサン空軍基地の「機体の墓場」から退役したB-52機体をオクラホマシティの航空物流センターにトラックで運び、アップグレードのデジタル設計を検証している。

 オクラホマシティ航空物流センターの「ハイベイ」は、「このプログラムとRMP(レーダー近代化プログラム)のため特別に建設したボーイングの施設です」と、同社の爆撃機担当シニアディレクター、ジェニファー・ウォンは語った。「目的は、実物大のレプリカ、航空機のモックアップををエンジニアリングに利用することです」。

 また、B-52に「触れたり」「這い回ったり」した経験のないエンジニアへの実地体験も含まれ。「ハードウェアに触れることは、非常に大きな価値をもたらす」と、ウォン付け加えた。

 モックアップは、「CERPプログラムの一部である油圧部品の課題を解決する」ために、リスク低減にも使用されるとウォンは指摘している。

 F130は、燃費を約30%向上させ、メンテナンス時間を大幅短縮し、TF33の「ベンダー消失」というサプライチェーン問題を解消できる。燃料効率効果で、アップグレード費用は回収できる。新エンジンで推力や速度の変更はない。

 ロールス・ロイスのB-52プログラム・ディレクター、スコット・エイムズは、「重要なのはスケジュールを守ること」と述べている。最初の重要マイルストーンとなる予備設計審査は今年夏に予定され、地上試験は今年中に行われる。

 ボーイングはF130用の新しいエンジン・ナセルを設計し、エンジンのアップグレードが、横風時の挙動など、B-52の性能に意図しない影響がないことを確認すると、エイムズは述べている。

 現在と同様に、エンジン8基はナセル4つに搭載される。米空軍は大型商用エンジン4基案も検討したが、翼やコックピットなど大幅再設計を避け、リスクと遅延を最小にするため8基に固執した。   

 ロールス・ロイスは、インディアナポリス工場にB-52専用の6億ドルの生産施設を完成させ、雇用を開始している。

 試験エンジン2基は、ロールス・ロイスが屋外ジェットエンジン試験施設を持つ、ミシシッピ州のNASAジョン・C・ステニス宇宙センターで評価される。エイムズは「我々はエンジンをプロトタイプのナセル構成で運転し、操作性と横風効果をテストする」という。

 エイムズによると、次の大きなマイルストーンとなる重要設計審査は、2023年に行われる。それまでに、ボーイングのナセルを装着したF130と装着していないF130の物理テストにより、性能の新データが得られ、ソフトウェアモデルの予測値を更新する。データは、ロールスがボーイングと共同開発する制御システムに反映される。

 ボーイングとロールスはB-52主翼のデジタルモデルを共有し、同じベースラインで作業を行える。


「ボーンヤード」から引き出されたB-52の機体がオクラホマのティンカー空軍基地に移送され、ボーイング技術陣が新型エンジン含む装備の装着を試す。April McDonald/USAF


 デジタル設計と「絶え間ない統合会議」によって、部品同士が干渉せず、最終的な構成の維持が容易だと確認された。エイムズは「ステニスでは、2基のエンジンポッドとナセルをテストスタンドに取り付け、各種の出力設定、気象条件で運転し、エンジンの作動状況を把握するとともに、制御システムへのフィードバックも行う」と述べている。

 ボーイングは、コックピットとエンジンをつなぐ配線や油圧を担当する。

 ボーイングは、2024年に最初の2機のB-52HをF130エンジンで改造し、サンアントニオの改造施設で作業を行う。最初の8機は、カリフォルニア州エドワーズ空軍基地のB-52試験部隊に加わる。

 エンジン交換作業には「物理的な配線、油圧、出力更、冷却の変更」が含まれるとウォンは述べている。 

 制御装置は「機械式とデジタル式のハイブリッドスロットルシステム」になる。コックピットで機体を操作すると、デジタルとワイヤーが混在することになる。

 エンジンのテストに、新型レーダーのテストに、新型ARRWとLRSOミサイルのテストに各2機を割り当てる。

 ニューベリー准将によると、飛行試験は2025年から2026年にかけて行われる。飛行の安全性を実証後に、1機に新型レーダーを搭載し、両者の機能に関するデータ収集を開始する。

 その後、アップグレードを1つずつ追加する予定で、相互依存関係を考慮する。

 ニューベリー准将によれば、「我々は即応能力と一定数の航空機を運用することに留意しなければならないので、あまり長く時間をかけていられない」。 

 低率初期生産とマイルストーンC、つまり本格生産の決定がいつになるかを言うのは時期尚早とニューベリー准将は認めた。これらの決定で、改修作業のスピードが決まる。しかし、年10機から11機のペースとなると、76機すべての完成に2035年頃までかかることになる。

 構造的には、B-52は素晴らしい状態にある。60年前の爆撃機ながら、「素晴らしい整備計画があり、素材は陳腐化していない」(ニューベリー准将)。滑走路で長年にわたり待機していても、機体は摩耗していない。

 ボーイングは「機体構造に非常に自信を持っている」とウォンは言う。B-52は「構造的に余裕を持たせて」設計されている。

 ニューベリーは、B-52のCERPは、オールデジタル・アプローチによる取得を加速するための先駆けであったが、このプログラムは、今年中に標準的な技術・製造開発(EMD)に転換されると述べた。空軍は多くのお役所仕事を省いた。結局、このアプローチでスケジュールが圧縮され、「およそ3年」短縮できたという。

 初期契約では、エンジン24基の開発と生産が行われる。そのうち4基は地上試験用、20基は試験機と予備機用、とエイムズは言っている。この試験用エンジンが最終的にB-52の機体で使用されるエンジンに加わるかは、まだ明らかではない。最初のエンジンは計器類が相当搭載されるので、運用上で取り外すのはコスト的に不利になるかもしれない。

 生産契約は、EMD終了時になるだろうと、エイムズは言う。しかし、その前に、「生産率準備(PRP)という大きなマイルストーンがぶら下がっている」。PRRマイルストーンは、全サプライヤーと材料が生産のサポートで準備ができていると証明するものだ。

 整備要員用のシミュレーターやトレーニング機器については、「まだ早い」とエイムズは報告しているが、「拡張現実と仮想現実のツールを使い、空軍に提供可能なトレーニングパッケージのデモを行った」という。

 ロールス・ロイスは、「他のプログラムを活用し」、USAFに「メンテナンス、サポート、トレーニング用の素晴らしいソリューション」を提供する。2026年までに、同プログラムの生産と配備の姿が「もっと明確になるで」という。

 アップグレードされたB-52Hに新しい呼称B-52Jが浮上しているが、制式名称を論じるのは「時期尚早」で、「将来の話題」だとエイムズは言う。

 「呼称は、運用と訓練に関係する。飛行方法や使用方法に大きな違いがある場合、乗務員は十分に認識する必要がある」ため、呼称が重要になるのだという。

  ニューベリー准将は、B-52試作機の初飛行から4月で70周年を迎えたことに触れ、「B-52が2050年まで飛び続けるよう願う」とし、「B-52の歴史で最大の変更点」と述べ、長寿こそ同機の設計と価値の証だと指摘している。■


New Power for the B-52 - Air Force Magazine

By John A. Tirpak

March 23, 2022


2020年6月2日火曜日

B-52エンジン換装事業の背景と進捗状況




インド太平洋軍の爆撃機連続プレゼンス作戦の一環でB-52が二機太平洋上空に展開した。Photo: A1C Gerald Willis

B-52の最終号機がラインオフしたのは1962年だった。米空軍は2050年まで同機を供用する。そのため空軍はB-52のエンジン換装で整備性にすぐれ運用効率を高くする改修をめざしている。
同時にB-52エンジン換装事業は契約交付の短縮化を図る最初の事例ともなる。これまで綿密に細部まで打ち合わせ、書類多数を作成し各候補を比較してきたが、今回は「デジタルフライオフ」でエンジン候補をコンピュータ・シミュレーションにかける。比較項目は燃料消費効率、整備面の必要条件、各種条件での性能に絞る。
「この事業で学ぶべき点は多い」と空軍の調達トップ、ウィリアム・ローパーが述べていた。「デジタルエンジニアリングは紙の上の検討より優れた評価方法となり、システムのシミュレーションで採択案に絞っていきたい」
ローパーによれば契約事務工程が合理化され、さらにデジタルフライオフの採用で当初の工期10年を3.5年短くできる。
USAFは現在のプラット&ホイットニーTF33エンジンの代替候補を2018年10月に検討開始していた。
「既存エンジン改修は最初から検討対象から外した」とグローバル打撃軍団(AFGSC)広報官がAir Force Magazineに語っている。プラット&ホイットニーは既存エンジン改修を売り込んで新技術で効率の改良が実現し、整備時間も短縮化でき新規エンジン採用よりコストが低くなると訴えていた。
ただし、「空軍は既存エンジンのこれ以上の使用は無理と判断ずみ」とし、今のエンジンでは90年の稼働は不可能と考えている。
エンジン換装事業には後年度国防事業制度を使い15億ドルを投じる。だが総費用は公表されていない。2017年3月時点では70億ドルとの試算があった。
B-52は当初J57エンジンを搭載していた。写真は1950年代末のオファットAFBでの整備の様子。1961年にTF-33エンジンが導入された。Photo: USAF/AFA Library
USAFが2018年に作成した「爆撃機ベクトル」案ではB-52の供用期間延長事業はエンジン換装他も含め220億ドルとしていた。検討案では削減効果を100億ドルとはじき、「燃料費、整備費、整備人件費を2040年代まで積算した」との記述が文書にある。
公式にはB-52民生エンジン交換事業(CERP)の名称がつき、空軍は産業界と意見交換をしてきた。目標は「民生用の既成製品で生産中のエンジンを選定すること」と電子調達サイトにある。
76機あるB-52各機のTF-33エンジン8基の交換となると合計608基(さらに予備エンジンが加わる)となる。現行の双発用ポッドに格納する。
空軍は燃料消費効率で25ないし30%向上を期待し、航続距離が40パーセント伸びると期待する。また温室効果ガスの発生も減らせると期待している。
燃費効率が3割伸びる効果は「莫大」とローパーは述べ、コスト面に加え、航続距離や現場滞空できる時間が伸びる効果は大きいという。
コンピュータモデルによりコスト、性能の相互関係を比較できるとローパーは期待する。「ある企業から燃費3割改善だが価格が高い提案が出てきても他社案で効率はそこまで良くないが低価格提示があれば、選択は興味深い作業となる」
B-52エンジン換装は2007年に浮上。当時は同機を戦域大の電子戦に投入する構想で、スタンドオフジャマー(SOJ)としてでスタンドオフ兵器の発射後に機体を現場に残し、広域ジャミングを行わせ、海軍のEA-6やEA-8の投入を不要にする構想だった。新エンジンは航続距離とともにジャミング装備用の発電容量の確保で必要とされた。だがSOJ構想は結局実現されなかった。
2014年末に民生エンジンに換装すれば整備時間と燃料費を節約できるとわかり、空軍参謀副議長だったスティーブン・ウィルソン中将、AFGSC司令のロビン・ランド大将からエンジンのリース案が出てきた。
空軍はB-52のエンジン8基を大型ターボファン4基にする検討もしたが、技術面で課題がわかった。フラップや制御面との干渉、地上高の確保等の他、フライトテストも大々的に行う必要があり、兵装運用テストも必要となり、コックピットやスロットルが大幅改修され、ラダーも再設計対象となる。そこで8基のまま大型ビジネスジェット用のエンジンを選ぶことになった。
現在のエンジンは信頼性でTF-33よりはるかに優れ、一回搭載されれば途中で取り替える必要はない。対象となる規模のエンジンでは重整備平均時間は30千時間近くで、B-52に残る耐用期間を上回っている。
ルイジアナ州バークスデイルAFBでB-52エンジンを点検中。January 2018. Photo: A1C Sydney Campbell


長期間供用中のB-52では任務実施率は高く、各種兵装を搭載し高い効果を実現している。ただし、敵側に高性能防空体制がない場合には。ハイエンド戦でもB-52は敵の防空圏外からミサイル発射すればよい。また同機は核巡航ミサイル運用が可能な唯一の爆撃機であり、長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイルの搭載も当面同機に限られる。
B-1、B-2はそれぞれ22年、30年も若い機体だがB-52より先に廃止される。それには以下の理由があると爆撃機ベクトル研究がまとめた。
  • B-52のミッション実行率は60パーセントだが、B-1、B-2ではそれぞれ40パーセント、35パーセントにとどまる。
  • B-52の時間あたり運航経費は70千ドルだが、B-2はほぼ2倍になる。ただしB-52のエンジン換装前の数字だ。
  • B-52Hは供用時間の大半を核運用の地上警戒待機ですごしており、機体構造は堅牢で数千時間の飛行が可能。
ただしB-52改修費用のすべてが予算化されていない。AFGSCでは上層部と予算折衝を続けている。
だがB-52は2050年でも飛行可能なのだろうか。機体表面や構造部品が50年経っても堅牢なことに驚くとAFGSCは言っており、エンジンとレーダーの更新があれば十分実用に耐えるという。
レーダー換装について「防御装備はいつも高性能にしておきたい」とし、その他エイビオニクスでも対応が必要だ。
B-52の改修作業は以前からあり、 Link 16 の搭載が完了しつつあり、CONECT「デジタルバックボーン」も完了に近づいている。VLF、AEHF通信装置も搭載され、機体内部兵装庫の改修は終わっているし、その他の改修予定もめどがついているという。
Sources: Rolls-Royce, Pratt & Whitney, and General Electric. Graphic by Mike Tsukamoto

エンジンの選択
製造メーカーで長年機体整備を支援してきたボーイングが新エンジン搭載作業をまとめるが、エンジン選択は空軍が行い、ボーイングは飛行性能や兵装搭載への影響で助言を与える。

プラット&ホイットニーは空軍がTF-33以外のエンジンで「最良の選択」は同社のPW815改修型という。ガルフストリームG600ビジネスジェットに搭載実績がある。
「当社は同機のエンジン、出力要求を知り尽くしており、他社の追随を許しません」と同社はAir Force Magazineに語っている「当社の提案内容は推進力、燃料消費、発電容量の要求内容すべて実現可能です」
GEエイビエーションからはCF34-10と新型「パスポート」エンジンのニ案がある。最終要求内容から絞り込みたいという。.
「CF34の信頼性が実証済み」とし、26百万時間の稼働実績を誇る。パスポートでは「燃料効率、航続距離、滞空時間」で前例のない性能が実現するとする。USAFの要求内容を見て一形式にするという。
ロールスロイスはエンジン換装案の発表前から手を上げており、BR725(軍用型はF130)が理想的な選択肢になると2017年にはやくも売り込んでいた。同社はガ
ス排気を95パーセント削減しながらUSAFの求める航続距離と燃料消費効率が実現できると述べている。
F130はRQ-4グローバルホーク、E-11 BACN,新型コンパスコール機にも搭載されており、後者はガルフストリーム650の特殊作戦用機材で空軍が供用中だ。
噂とは裏腹に、空軍は性能のみでエンジン選定しないという。逆にコスト面で各種の比較検討で選定するという。問題は「どのくらいの頻度で主翼から外す必要があるのか。補給処に予備を置いておく必要があるのか」だという。
TF-33の補給処はオクラホマ州のティンカーAFBで同エンジンの整備保守経費はここ11年で急上昇している。■
この記事は以下を再構成したものです。
Jan. 21, 2019