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2025年10月3日金曜日

ロシア国内の重要エナジー施設攻撃のため米国がウクライナに情報提供へ(TWZ)

 

この動きは、トマホーク巡航ミサイル含む長距離兵器のウクライナへの供与をワシントンが検討している中で出てきた

Reports indicate that the United States has agreed to provide Ukraine with targeting intelligence for its long-range missile strikes against Russian energy infrastructure. For many months now, Ukraine has been waging a campaign to degrade Russia’s oil industry, depriving it of critical resources for its offensive in Ukraine as well as revenue from energy exports.

via X

道によれば、米国はロシアのエナジーインフラに対する長距離攻撃で標的情報をウクライナに提供する方針を固めた。ウクライナは数か月前から、ロシアの石油・天然ガスインフラを破壊する作戦を展開しており、ロシアがウクライナでの攻勢に必要な重要資源とエナジー輸出による収入を奪っている。

ウォール・ストリート・ジャーナル記事(匿名の米国政府当局者を引用)およびロイターによると、この新しい政策は、同じ種類の目標、そして場合によってはロシア深部のその他目標にも使用できる長距離かつ強力な武器の移転に先立って採用されているという。


WSJでは当局者によると、ドナルド・トランプ大統領は最近、ウクライナの攻撃に関する情報共有に合意したが、エナジーインフラへの攻撃のみを対象とするという重要な条件が付いているという。標的となるデータは、米国情報機関および国防総省からキーウに提供される。一方、米国当局者は NATO 加盟国にも同様の対応を求めるよう働きかけているとされる。

少なくとも公式には、トランプ政権がウクライナに長距離攻撃のためのこの種の情報を提供するのは今回が初めてとなる。

一方、ウクライナは、長距離の片道攻撃ドローン、そして少ないが自国設計の巡航ミサイルを繰り返し使用し、前線をはるかに超えたロシアの製油所、パイプライン、発電所、および関連インフラを攻撃している。

米国が新たに提供する情報により、こうした攻撃の破壊力がさらに増すことが期待されている。

同時に、ウクライナ代表団が今週ワシントンに到着し、トランプ政権との新たな合意に向けた協議を開始した。この合意では、キーウがドローン技術を米国と共有する代わりに、対価として現時点では未定の補償(追加兵器供与の可能性あり)を得ることになる。

米国が提供に同意した場合、より長距離・高威力の兵器として次に何が提供されるかについては、トマホーク対地攻撃巡航ミサイルが含まれる可能性が高いとの憶測が広まっている。ウクライナが、1,000 ポンドの単弾頭弾頭を搭載し、約 1,000 マイルの距離にある目標を攻撃できるトマホークを入手する見通しに親クレムリン派の軍事ブロガーの間ですでに警戒感を引き起こしている。

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領にトマホークミサイルの提供を要請したことを確認した。その後、J・D・ヴァンス米国副大統領は、米国がウクライナの要請を検討中であると述べた。

しかし、ウクライナへのトマホークの移転が承認される保証はない。現状では、この高精度で高価な巡航ミサイルは、ごく一部の国々に、かつ艦艇および潜水艦発射型のみが輸出されている。

A Tomahawk Weapon System fired from HMAS Brisbane off the coast of San Diego, USA, moments before impacting it's target. Screenshot from video capture.

オーストラリアの軍艦から発射されたトマホーク巡航ミサイルが、目標に衝突する直前の様子。米海軍 

同じ当局者は、トマホークは検討中の選択肢の 1 つに過ぎず、他にも アンドリルのバラクーダなどがある、と説明している。同社はこれを「消耗型の自律飛行体」と表現しているが、本質的には低コストで、モジュール性の高い、空気呼吸式の精密スタンドオフ兵器だ。例えばバラクーダ-500は最大射程500マイル(約800km)、最大100ポンド(約45kg)の弾頭を搭載可能。現在は空対地専用だが、地上発射への適応も設計されている。

当局者は「射程約500マイルの他の米国製地上発射・空対地ミサイル」も検討対象だと述べた。


ワシントンは既に数千発の長射程攻撃弾薬(ERAM)のキーウへの移送を承認している。これも新型で比較的低コストのスタンドオフミサイルだが、キーウが新兵器でロシア深部目標を攻撃できるかは不明だ。以前、匿名米当局者は、米国が供与した陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)については、そのような標的は米国製兵器の使用対象外であると示唆していた。

射程150~280マイル(約240~450km)のERAMは少なくとも初期段階では航空機発射式とされ、既にウクライナへ到着している可能性がある。初回分840発は2種類の設計に分割され、それぞれCoAspireとZone 5 Technologiesが製造を担当しており、2026年10月末までに納入される予定だ。

ATACMSについては、バイデン政権下でウクライナに初めて提供されたが新規供給をトランプ政権が停止した。現在、ウクライナによるATACMSの使用には厳格な管理が課されており、各攻撃にはワシントンの承認が必要となっている。ロシア国内の標的に対する使用要請の少なくとも一部は却下されているが、ウクライナ国境に隣接するクルスク地方で顕著な使用実績がある

追加の米国製長距離ミサイルの供与やロシア深部目標への使用許可がなくても、追加の諜報情報はウクライナに非常に有用である。特に、ウクライナが大型弾頭を搭載した先進巡航ミサイルではなく、片道攻撃ドローンのような低威力・低性能兵器に依存し続ける場合、ロシアのエナジーインフラで最も脆弱な部分を特定することが極めて重要となる。

非米国同盟国によるウクライナへの長距離兵器供与の可能性は依然残されている。

例えばドイツは、トーラス空対地巡航ミサイルのウクライナへの移転と一貫して関連付けられてきたが、これまではベルリン政府によって拒否されてきた。それでもドイツ軍当局者は、キーウにこの種の兵器を供与する構想を支持している。

「ウクライナがロシアの侵略に対抗する上で必要な支援は、防空能力、前線維持能力、ロシア深部への攻撃能力という三つの主要分野だ」と、ドイツのウクライナ軍事支援責任者ヨアヒム・カシュケ准将は説明する。「ウクライナ防衛軍が数的に優位な敵と対峙する場合、戦線を越えて戦闘を展開せざるを得ない」。

これまで英国、フランス、イタリアはウクライナにストームシャドウ及び類似のSCALP-EG空対地巡航ミサイルを供与しており、これらは広範に使用されている。

キーウはロシアのエナジーインフラ攻撃に、自国開発の長距離片道攻撃ドローンを多様に使用している。

また、対艦ミサイル「ネプチューン」の陸上攻撃型を射程延長した「ロング・ネプチューン」も保有している。ウクライナは2022年、ネプチューンミサイルでロシア海軍のスラヴァ級巡洋艦モスクワを撃沈したことで有名であり、2023年には陸上攻撃型の開発を開始したと報じられている。ただし、同ミサイルの数は非常に限られているとされる。

ゼレンスキー大統領はロング・ネプチューンの射程が約620マイル(約1,000km)で、既に実戦試験を実施済みと発言している。

この種の攻撃でより関連性が高いのは、8月に公開された国産フラミンゴ地上発射型長距離巡航ミサイルで射程は1,864マイル(約3,000km)、強力な2,535ポンド(約1,150kg)の弾頭を備え、ウクライナが現在保有するあらゆるミサイルやワンウェイ攻撃ドローンよりもはるかに射程が長く破壊力が高い兵器である。同様に重要なのは、ウクライナが今年10月までに1日7基のフラミンゴを生産する製造能力の拡大を目指している点だが、生産拡大目標の実現可能性には疑問が残る。

Ukraine is hoping to see production of its Flamingo ground-launched long-range cruise missile, which just broke cover this past weekend, ramp up significantly by the end of the year.

フラミンゴ巡航ミサイルの発射。via Ukrainska Pravda via Ukrainska Pravda

片道攻撃ドローンや、非常に大型で比較的粗雑なフラミンゴ巡航ミサイルの生存性に疑問が呈されているものの、少なくともこれらはロシアの逼迫した防空体制にさらなる頭痛の種となり、こうした攻撃の相当数がエナジーインフラへ損害をもたらしていることは明らかだ。

興味深いことに、ここ数週間でロシアもウクライナのエナジーインフラへの攻撃を強化している。これは新たな冬季攻勢の始まりを示唆しており、過去数年間のロシアの戦術を繰り返す可能性がある。

新たな情報共有政策と、キーウへの新型長距離ミサイル供与の可能性は、トランプ政権のアプローチの変化を示している。

トランプ大統領は1月の就任後、停戦仲介に努めた。しかし、プーチン大統領に経済的・商業的インセンティブを提供したにもかかわらず、これは進展せず、ロシアと米国の指導者間の会談も成功しなかった。

現在、トランプはプーチンに対して新たな強硬路線を取っている。

先週、トランプはソーシャルメディアで初めて、ウクライナがロシアに奪われた全領土を奪還する可能性があると表明した。

さらに欧州のNATO同盟国に対し、ロシア軍機が同盟空域に侵入した場合、撃墜するよう呼びかけた。

スウェーデン国防省が公開した写真。先月エストニア領空を侵犯したロシア軍MiG-31フォックスハウンド迎撃機の一機。スウェーデン空軍

ロシア軍の戦況が緩慢な進展に留まる中、トランプ大統領はプーチン大統領への圧力を強めている。この点については過去に詳細に論じた通りである。

もちろん、長距離兵器の追加供与を承認すれば、さらに大胆な行動となるだろう。

クレムリン当局者は、トマホークがキーウに到着する可能性に言及している。「疑問は残る:たとえキーウ政権の領土に届いたとしても、誰がこれらのミサイルを発射できるのか?」とクレムリン報道官ドミトリー・ペスコフは今週初め述べた。「ウクライナ人だけが発射できるのか、それとも米軍がするのか?これらのミサイルの標的指定は誰が行うのか?これは非常に綿密な分析を必要とする」。

ワシントンが長距離兵器に関してどのような決定を下そうとも、キーウとの情報共有拡大は、米国がウクライナに対し、モスクワが重視するエナジー生産能力を狙ったロシア深部への直接攻撃を含む、さらなる支援を提供する意思があることを強調している。これはまた、トランプがこれをロシアを交渉の席に着かせるための次の圧力手段と見なしている可能性を示唆しているかもしれない。■


U.S. To Give Ukraine Intel For Attacks On Critical Energy Targets In Russia: Reports

The move comes as Washington considers the transfer of longer-range weapons to Ukraine, including Tomahawk cruise missiles.

Thomas Newdick

Published Oct 2, 2025 1:09 PM EDT

https://www.twz.com/air/u-s-to-give-ukraine-intel-for-attacks-on-critical-energy-targets-in-russia-reports

トーマス・ニュードック

スタッフライター

トーマスは防衛分野のライター兼編集者で、軍事航空宇宙トピックや紛争を20年以上取材してきた。数多くの書籍を執筆し、さらに多くの書籍を編集。世界の主要航空出版物に多数寄稿している。2020年にThe War Zoneに参加する前は、AirForces Monthlyの編集者を務めていた。


2025年9月12日金曜日

プーチンはウクライナの領土を求めていない。ウクライナ自体を消し去りたいのだ(National Security Journal)

 

ウクライナに戦争終結の選択権はない。プーチンと西側にある

ーバード大学ダグラス・ディロン政治学教授、グラハム・アリソンが語る時は、たとえ論旨が間違っていても耳を傾けるのが賢明だ。

そして『The National Interest』誌に最近掲載された記事は、彼がどれほど誤った見解を示すかを如実に示している。

論旨は明快だ:ウクライナは、平和と引き換えに自らが支配するドネツク州の一部を譲渡することを検討すべきだという。「ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が今直面している問題は、戦争を早期に終結させる選択肢(それに伴うあらゆる責任を伴う)を受け入れるか、それとも戦い続け、より多くの戦士、市民、領土を失うリスクを冒すかである」。

選択がそこまで単純であればいいのだが。

ロシアの非合法な大統領、ウラジーミル・プーチンは、ウクライナの降伏と非軍事化されたロシア語圏のモスクワの属国化以外には一切受け入れないと明言している。彼の子分たちも同様の主張を繰り返している。

ウクライナ戦争の真の目的

つまりプーチンの戦争は、領土問題などではないし、最初からそうではなかった。ロシアが領土を十分に有していることは周知の事実だ。むしろこの戦争は、民主的で親欧米的なウクライナのアイデンティティとその担い手であるウクライナ人という存在そのものが、ロシアにとって容認できないという本質的な問題なのである。プーチンにはウクライナは必要でもなく、欲してもいない。ただウクライナ人がいなくなった状態を望んでいるのだ。

戦争を「早期に」終結させることは不可能だ。なぜならプーチンは、ウクライナ「問題」が最終的に解決されるまで戦争を終える意思がないからだ。

アリソンは次に、ロシア占領地域をアメリカ北東部の地図に重ね合わせ、その範囲がニューイングランドからニューヨーク南部まで及ぶことを指摘する。別の地図では、ウクライナが支配するドネツク州をデラウェア州に重ね、その意図は、このような細長い領土のために戦う価値はないという点にある。

領土の罠

すべてを領土問題に還元することで、アリソンは自ら設けた罠に陥る。結局のところ、その土地には少なくとも216,000人のウクライナ人が住んでいるのだ。

ロシア占領を歓迎する者もいれば、いかなる代償を払ってでも平和を受け入れる者もいるだろう。しかし多くの人々は、ロシアによるウクライナ人(すなわち彼ら自身)へのジェノサイド政策の可能性に確実に絶望するだろう。

アリソンは彼ら全員をプーチンの支配下に強制的に置けと勧めているのか?それは虐殺の容認であり、モスクワ・北京・平壌以外の政策立案者にとって選択肢になり得ない。

それともウクライナ人の強制退去を勧めているのか?それは民族浄化の容認だ。

これらがウクライナが直面する選択肢である。

結局のところ、アリソンの分析の問題点は、平和の是非をウクライナの選択として位置づけていることだ。しかしウクライナが攻撃されることを選んだわけではないのと同様に、単に「平和を選ぶ」ことで平和を実現することもできない。

残念ながら、選択権はプーチンと西側にある。プーチンは将軍たちに電話一本で戦争を終結させられる。そして西側諸国は、クレムリンがロシアにとって戦争が勝ち目がないと悟るまで、ウクライナを支持し続けることを明確にすることで、プーチンにその電話を早めさせることもできる。

これらの結果のいずれかが実現するまで、ウクライナに残った選択は生き延びることだけである。■


Putin Doesn’t Want Ukraine’s Land. He Wants to Erase Ukraine

By

Alexander Motyl

https://nationalsecurityjournal.org/putin-doesnt-want-ukraines-land-he-wants-to-erase-ukraine/

著者について:アレクサンダー・モティル博士(ラトガース大学)

アレクサンダー・モティル博士は、政治学教授としてラトガース大学ニューアーク校に在籍している。ウクライナ、ロシア、ソ連、ならびにナショナリズム、革命、帝国、理論の専門家であり、著書としてノンフィクション10冊を出版。主な著作に『帝国の終焉』(2009年)、『帝国の道』(2004年)、『帝国の終焉:帝国の衰退、崩壊、復興』(2001年)、 『革命、国家、帝国:概念的限界と理論的可能性』(1999年)、『独立のジレンマ:全体主義後のウクライナ』(1993年)、『右派への転換:ウクライナ民族主義の思想的起源と発展、1919-1929年』(1980年)などがある。また、15冊の編集者であり、その中には『ナショナリズム百科事典』(2000年)や『ホロドモール読本』(2012年)が含まれる。さらに、学術誌や政策誌、新聞の論説ページ、雑誌に数十本の寄稿を行っている。また、週刊ブログ「ウクライナのオレンジ・ブルース」も執筆している。


2025年9月1日月曜日

西側がウクライナへ与える安全保障保証とはどんな形になるのか(Defense One)

 U.S. President Donald Trump meets with Ukrainian President Volodymyr Zelensky at the White House on August 18, 2025, in Washington, D.C.

2025年8月18日、ワシントンD.C.のホワイトハウスで、ドナルド・トランプ米大統領がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。ANNA MONEYMAKER/GETTY IMAGES


和平合意には少なくとも五つの構造が必要となる。

週、トランプ大統領がホワイトハウスでゼレンスキー大統領や欧州諸国の指導者らと行ったハイレベル会談を受け、和平合意が成立した場合のウクライナに対する安全保障の具体像に注目が集まっている。ウクライナが、紙の上では強固に聞こえるが実際には無意味となる保証に警戒するのは当然だ。1994年のブダペスト覚書——ウクライナが世界第3位の核兵器を放棄する代わりに得た約束は、2014年にロシアによって破られた——は今も戒めとなっている。

ウクライナの長期的な安全保障最も効果的に保証できるのはNATO加盟だ。しかし短期的には、トランプ大統領が繰り返し表明している通り、米国はこの構想を支持せず、米軍のウクライナ駐留にも同意しない。この政治的現実を踏まえ、政策立案者はウクライナ安全保障の多層的アプローチを検討すべきだ。単独の措置では不十分だが、組み合わせれば現時点で可能な最も強固な保護を提供できる。

第一段階として、和平合意後もロシア軍がウクライナ領内に残留する場合に備え、占領線の両側をパトロールできる民間監視団を設置する。信頼性を確保するため、ウクライナとロシア双方が受け入れ可能な組織が主導する必要がある。トルコ系諸国機構や湾岸協力会議は、いずれも地政学的な役割拡大を志向しており、実行可能な選択肢となり得る。このような監視団が全ての紛争を解決するわけではないが、脆弱な停戦を安定させ、戦闘再開のリスクを低減させる助けとなるだろう。

第二の要素は、欧州の有志連合の創設である。つまり、抑止力として、またウクライナの主権に対するコミットメントを可視化する手段として、ウクライナに部隊を派遣する意思のある欧州諸国による連合部隊だ。英国、フランス、カナダ、トルコ含む複数の国が、部隊派遣の可能性を示唆している。部隊は輪番制で展開し、占領線からは離れるが、将来の侵攻ルート沿いに配置さればよい。さらに連合は、ポーランドとルーマニアの基地から運用するウクライナ領空警備任務を確立すべきである。黒海での海上パトロールも不可欠だ。安全で開放された黒海は、ウクライナ経済だけでなく広範な地域安定にとって重要である。

第三の層は米国に関わる。ウクライナに米軍を駐留させなくとも、ワシントンは不可欠な役割を果たせる。米国は欧州連合を支援するため、空中給油、情報共有、航空・海上哨戒といった「遠隔作戦能力」を提供すべきだ。ウクライナ国外に米軍を事前配置し、迅速な展開を可能にすれば抑止力はさらに強化される。米国はまた、ウクライナとの州兵州間協力プログラム(SPP)を再開すべきだ。1993年以来、カリフォーニア州兵はSPPを通じウクライナと軍事相互運用性の向上に取り組んできた。しかしこれらの取り組みは2022年以降中断している。政策立案者はこのプログラムを復活させ、米ウクライナ軍事関係を深化させるべきだ。

もう一つの重要な分野は防衛産業協力である。戦争はウクライナの防衛部門、特に無人システム分野の発展を加速させた。より緊密な協力は、米国企業に最先端技術へのアクセスを提供すると同時に、ウクライナの国内能力を強化するだろう。

何よりも、米国の軍事支援は和平合意後も継続されねばならない。ウクライナ軍は最終的に同国安全保障の主要な担い手であり、ロシアは休戦期間を再軍備に利用することはほぼ確実だ。ウクライナが回復力と能力を維持することは米国の利益にかなう。

第四の層として、ウクライナによる欧州大西洋地域への関与深化を図るべきだ。NATO加盟は現時点で困難で、EU加盟プロセスも長期化するが、ウクライナを近づける実践的措置が必要だ。NATOはウクライナに現代戦センター・オブ・エクセレンスを設置し、同盟国がキーウの戦場経験から学ぶ手助けができる。ウクライナは再びNATO即応軍への貢献が可能であり、国内に同盟の足跡を残さずとも相互運用性を高められる。全てのNATO首脳会議ではNATO-ウクライナ理事会のセッションを組み込み、適切な場合には他のハイレベル会合にもオブザーバーとしてウクライナを招請すべきだ。こうした措置は、将来の加盟の可能性を残しつつ、ウクライナの欧州大西洋家族における地位を制度化するものである。最後に、NATOがウクライナ軍を訓練する任務を承認する可能性は低い。国内・国外を問わずだ。しかし欧州連合(EU)は共通安全保障防衛政策枠組みの下で介入できる。ウクライナ西部のヤヴォリフ戦闘訓練センターにおけるEU・ウクライナ共同訓練作戦は、規模は小さくとも重要な象徴的・実践的価値を持つ。

最終段階として、NATOの東部戦線で強化が必要だ。これらの措置はウクライナの安全を直接保証しなくても、地域の安定とNATOの抑止態勢強化には不可欠だ。和平交渉後も、ロシアが東欧への脅威を継続することは歴史が示している。NATOは強化された前方展開を維持すべきであり、核負担分担におけるポーランドの役割拡大を真剣に検討すべきだ。数十年にわたり、複数のNATO加盟国は米軍のB61核爆弾を配備し、これを投下可能な核・通常両用航空機を運用してきた。ポーランドをこのグループに加えることは、強力な抑止メッセージとなる。同様に重要なのは、欧州における米軍兵力の維持だ。政策立案者は、停戦を兵力削減の理由と解釈する誘惑に抵抗すべきである。過去の撤退は侵略者を大胆にするだけだった。

トランプ大統領には、正しいビジョンと政治的勇気、外交手腕をもって、平和構築者としての自らのレガシーを確固たるものとしつつ、ウクライナ及び広範な大西洋横断共同体の長期的な安全保障を保証する結果を形作る機会がある。安全保障に対する多層的アプローチは、不完全であっても、ウクライナがNATOの正式加盟国として正当な地位を占めるまで最善の道筋を提供する。■


What Western security guarantees for Ukraine might look like

At least five layers will be required for any peace deal.

BY LUKE COFFEY

SENIOR FELLOW, HUDSON INSTITUTE

AUGUST 25, 2025 04:29 PM ET