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2019年3月30日土曜日

F-117が開いたステルス機の歴史と今後の展望

コメントは下にあります。




Sad Stealth: Was the Lockheed Martin F-117 Nighthawk Retired Too Soon? 悲運のステルス、ロッキード・マーティンF-117ナイトホークの退役は早すぎたのか

Or was it too old to be a threat?
March 24, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-117F-35F-117 Stealth FighterMilitary

空軍で今後の戦力構造の検討が進む中、ステルスの進化過程をふりかえるのに意味があろう。はじまりはロッキード・マーティンF-117ナイトホークだった。同機は2008年に退役したが今日でも有効活用できるだろうか。
中程度の脅威として例えばイランが相手なら可能だ。だがハイエンドのロシア、中国相手では疑わしい。技術はF-117の構想時から相当進歩している。
1970年代に開発が始まり、1983年に極秘裏に作戦投入可能となったF-117が新時代の扉を開き、その後数十年にわたる航空優勢を米国に確保した。皮肉にもナイトホークを実現した理論のルーツはソ連論文「ゆがみの物理理論における末端波形」であった。この論文はロシア人ピョートル・ヤコヴレヴィッチが1962年に発表したもののその後忘れられていた。ロッキードのスカンクワークス技術員デニス・オーヴァーホルサーがロシア物理学者の方程式の潜在可能性に着目した。
オーヴァーホルサーからスカンクワークスが絶望のダイヤモンドと呼ぶコンセプトが生まれた。その形状で驚くほどレーダー断面積減少効果があると判明した。そこでペンタゴンはロッキードに即座に契約を交付し、実証機ハブブルーHave Blueを製造させ高度残存可能試験機Experimental Survivable Testbed (XST)の実現をめざした。ペンタゴンはワルシャワ同盟軍による防空体制の突破方法を模索していた。冷戦が第三次世界大戦になればNATO空軍部隊が大損害を被る予想が現実になりそうだったからだ。
ロッキードは絶望のダイヤモンドでフライ・バイ・ワイヤ技術も投入した。その結果生まれた機体は敵レーダー波を反射するべく多様な面がつき、F-117の縮小版の様相で初飛行は1977年12月だった。試作機2機はともに全損したがハブブルーは成功作とされ空軍は次の段階としてF-117開発を決断した。
F-117の初飛行が1981年で供用開始は1983年だ。ロッキードは利用可能な既存部品を使い短期間で機体を完成させた。フライ・バイ・ワイヤはF-16の流用で、エンジンはF/A-18のジェネラル・エレクトリックF404ターボファンからアフターバーナーを外した。さらにF-117では後のステルス機と異なり、航空機用アルミニウムを多用し製造を容易にした。ロッキードはF-117Aを59機、試作用YF-117Aを5機製造した。
F-117の実戦デビューは1989年のパナマだったが成果はぱっとしなかった。だがF-117は1991年の第一次湾岸戦争のイラクですばらしい成果を示した。その後発生した第二次湾岸戦争、イラクの自由作戦にも投入された。空軍はF-22ラプターの予算捻出を優先し2008年に経費節減のためナイトホークは退役した。空軍はF-22ラプターとF-35が加わればF-117は不要となると説明していた。
F-117の供用期間中で喪失機はデイル・ゼルコ中佐操縦の一機だけで1999年3月ユーゴスラビア上空でコソボ紛争に介入した連合国軍作戦の最中だった。ステルスも無敵ではないとの印象が一般国民に広まったが、安全保障専門家はそんな幻想を一蹴した。ただ1990年代に低視認性機材への過信が生まれたのは確かだ。ステルス機も兵装投下することで姿を探知される。ステルスは魔法の透明マントではない。
だが米空軍はステルスが透明、無敵の存在ではないことを常に意識していた。砂漠の嵐作戦では一般大衆の認識と違い、イラクに最初の一撃を加えたのは米陸軍のAH-64アパッチガンシップ部隊であり、F-117ではない。攻撃ヘリはVHF、UHFを使うイラク軍の低周波早期警戒レーダーの排除を命じられた。こうしたレーダーはC、X、Kuの各バンドでステルス機も探知する。アパッチ隊がF-117に道を開き、探知されずにイラク国内奥深くへ侵入できたのだ。
その後登場したステルス機のF-22やF-35は高周波火器管制レーダーに対して有効な設計だ。第5世代戦闘機の設計思想はF-117戦術ステルス攻撃機をそのまま継承しており、敵はなにかいると認識する状況を前提とする。ただし敵は手が出せないという前提だ。だが公表情報と異なり空軍のステルス機は海軍の電子戦機材のプラウラーなどがいない空域には一度も投入されていない。
これに対してB-2のようなステルス戦略爆撃機は潜水艦と同様の運用で存在を全く認知されない。大型爆撃機には「広帯域全方位」ステルス性能があり、低周波レーダーでも探知されず、ノイズやクラッターに隠れる。それでも空軍はロシアや中国が低周波レーダーでB-2も探知する日が早晩来ると見ている。「こちらはB-2機内で防御統制システム(DMS)で相手の脅威を特定だきる」と空軍関係者は述べる。「だがEW(電子戦)の進歩は待ったなしでDMSを向上させないと対応できない」だがB-2は相手側脅威に合わせた性能向上をしておらず、このため空軍はLRS-BとしてB-21新型爆撃機で低周波探知装備に打ち勝つ必要があるのだ。
だが空軍発表ではF-117がハイエンド戦に耐えられないと強調されている。同機は高周波レーダー対策が主で、F-22やF-35のリアルタイム被探知回避や脅威発生源の探知はできない。また一旦探知され対抗手段が向けられれば生存出来るだけの性能がない。
これがF-22やF-35が有するF-117より有利な点だが、ロシアのPAK-FA(Su-57)や中国のJ-20、J-31も同様だ。F-117は脅威対象を回避する自動飛行経路作成能力に完全依存していた。だがF-22やF-35はリアルタイムで脅威源を把握しパイロット関与を不要としており、さらにF-35がラプターより一歩先を行く機体になったのは技術進歩の恩恵を受けているからと言える。
広範囲の周波数各種でのレーダー断面積でラプターがF-35より小さいと空軍は2014年までは説明していた。だが新型機のほうが電子戦装備の進歩で探知特徴をよりよく管理できる。このため航空戦闘軍団司令官を務めたマイク・ホステジ大将が「F-35ではF-22波の高高度性能や速度は出せないが、ステルスではF-22に勝つことが可能だ」とBreaking Defenseに言ったのだろう。「可能だ」と言う言葉が問題だ。現役のACC司令官ホーク・カーライル大将はNational DefenseでF-35は「相手を探知するパッシブ性能と自機の被探知特徴の管理で一歩先を行く」と述べている。
結局のところ、米国が数十年と巨額の費用を投じて養成したパイロットのインターフェイスがロシアや中国が慌てて整備中の対抗策への優位性を実現する。米国は優位性を維持するためにも新しい技術開発を続けてていかねばならない。■

F-117は退役したことになっていますが、西部に飛行隊分の機材を温存しており、ときおり飛行しているところが目撃されていますし、海外に投入されたとの未確認情報もあります。記事の説明にあるように相手によってはまだまだ有効な攻撃手段になるのでしょうが、支援機材が必要で単独投入できる機材でないこともわかりましたね。しかしその機材維持運用費用はどこから出ているのでしょうか。

2018年11月24日土曜日

★YF-23はなぜ神格化されるのか

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us 

YF-23では救われなかったはず

Stop mythologizing Northrop Grumman's old airplane

ノースロップ・グラマン製同機の神格化やめよう

The YF-23 Stealth Fighter Won’t Save Us

1994年、NASAドライデン施設に到着したYF-23 NASA photo


WIB AIR November 16, 2018 David Axe


1994年以降飛んでいないステルス戦闘機実証型がここにきて存在感を強めている。
だがYF-23が再び脚光を浴びるのは米国の国防力を弱めかねない有害な神秘思考が裏にあるからだろう。
YF-23はノースロップ・グラマンが空軍の高性能戦術戦闘機競作で提案したF-15後継機を狙う機材だった。
ノースロップは尾翼二枚、双発の実証機を二機製造し、ロッキード・マーティンのYF-22実証機と競合し、1990年から1991年にかけ評価に臨んだ。1991年8月に空軍はYF-22を採択。ロッキード・マーティンはYF-22からF-22を開発し、2005年に実戦配備が始まった。
ノースロップはYF-23両機をNASAに寄贈し、その後機材は博物館入りした。両機がドライデン飛行研究センター(カリフォーニア州)まで飛行移動した1994年が最後のフライトだった。
それから二十年余たち、YF-23は「あのときもしも」の分野で人気を集める存在になっている。「専門家の中にはノースロップのYF-23の方が優れていたと主張する向きが多い」とカイル・ミゾカミがPopular Mechanics記事に書いている。「F-23になっていればどんな姿だっただろうか」とデイヴ・マジュンダーがNational Interestで問いかけている。
YF-23の仮想記事で究極の存在がThe War Zoneのタイラー・ロゴウェイがデジタルアーティストのアダム・バーチとともに実戦仕様の「F-23A」想像図を見事なアートとして紹介した記事だ。
マジュンダー、ミゾカミ、ロゴウェイともにプロだ。筆者の同僚であり友人でもある。非難するつもりはない。ただYF-23を求める声づくりに寄与しているだけだ。
YF-23 and YF-22. U.S. Air Force photo


YF-23の神格化は上記三名の責任ではない。むしろ米国文化に広く根付き、とくに軍事関係者で見られる危険思想の象徴だ。
この技術なら国が助かる。あの技術では役立たない。間違った技術を開発してしまったからだ、というのだ。「技術から思考が生まれる。技術が思考になる」と空軍を大佐で退役したウィリアム・アスターが書いている。
F-22はあきれるほど高価であるが高い効果を発揮している。同機は数千回といかずとも数百回の実戦フライトをこなし、シリアのイスラム国戦闘員を攻撃した。ロバート・ゲイツ元国防長官が2009年に下した187機でのF-22生産終了の決定に今でも疑問を抱く向きがある。空軍はもっと多くの機数を希望していた。
だがF-22でテロ活動に終止符を打てない。周辺地区に進出したロシアが過去の戦争の記憶を呼び起こすのも止められない。中国の経済拡大や軍事拡張主義も止められない。米軍のイラク侵攻の破滅的結果を逆行させることもできないし、20年にわたるアフガニスタンでの米軍作戦行動を終わらせることもできない。
これだけのハイテク、これだけの時間、熱意と予算をかけて米国が開発したF-22でも解決策になっていない。
そうなるとF-22が正しい選択肢だったのか疑問が出るのは当然だろう。おそらく、F-23でもF-22と同じだったはずだ。では空軍が別のステルス戦闘機を採用していたらどうなっていただろうか。米国の軍事力がもっと強大だったらどうなっていたか。もっと安全な環境だったらどうなっていたか。世界全体が今とちがう姿になっていらどうなっていたか。
アスターはさらにこう述べている。「米国人は技術を万能薬と見る傾向がある」 自然と歴史が証明するように技術は万能の解決策ではない。地球は温暖化にむかい、他者を隔てる壁を作っており、人間の世の中で意思決定を動かすのは恐怖だ。米国人はある技術を批判し、別の選択肢を求めようとする。
長く地上にとどまったままの試作機に過去の歴史を見つめ同機が採用され現在よりマシな世界になっていたはずと想像したところで、あるいは世界がもっとマシな姿になっていたはずと想像してなんになるのか。
YF-23も解決策になっていなかったはずだ。■


下は記事で言及しているCGの無断借用です。F-22よりもF-23に魅力を感じる向きが多いのでしょうか....




2018年6月10日日曜日

F-117にみるステルス技術の「神話」と現実

よくあることなのですが、記事のタイトルと内容特に結論が乖離していますね。たしかにF-117は退役後も米国西部にこっそりと温存されていますが、投入できる範囲は限られるでしょう。戦闘機の分類ながら空戦能力が皆無で対地攻撃機に使うのが本領の同機ですがなぜF-117になったのでしょうね。戦闘機と言いながら爆撃機というのはF-105サンダーチーフの例が前にもありましたね。



Could the F-117 Nighthawk Make a 'Stealth' Comeback? F-117ナイトホークが「ステルス」カムバックする可能性はあるのか



June 5, 2018

ッキード・マーティンF-117ナイトホークは伝説の機材だ。2008年に退役したF-117は今日でも有効な戦力になれるのか。
その答えはイランのような中距離程度の脅威を有する国相手なら間違いなくイエスだ。だがロシアや中国と言ったハイエンド脅威国が対象となると怪しくなる。F-117が「ステルス戦闘機」として開発が始まって以来の技術進歩には相当のものがある。
F-117の開発
1970年代に開発が始まり、秘密のうちに供用を開始した1983年、F-117は米国による戦闘の独壇場を開いた機体となった。皮肉にも米国がナイトホークを開発した出発点はソ連でピョートル・ヤコブレビッチ・ウフィムツェフが1962年に執筆した論文だ。折角の構想をソ連は非実用的と無視したが、ロッキードのスカンクワークスのデニス・オーバーホルサーがロシア物理学者の論文に実用的な意義を見出したのだ。
オーバーホルサーの研究からスカンクワークスで絶望のダイヤモンドと呼ばれたコンセプトが生まれた。だがすぐに不格好なダイヤモンド形状がレーダー断面積削減に大きな効果があることが判明した。そこでペンタゴンは直ちにロッキードに契約交付し実証機ハブブルーの作成にあたらせた。これは生存可能試験機(XST)事業の一環だった。ペンタゴンは当時ワルシャワ条約軍の防空体制が実効力を強める中で対策に全力を尽くす必要に迫られ、第三次大戦勃発となればNATO空軍部隊は多大な損害を覚悟せねばならない状態だった。
ロッキードは絶望のダイヤモンド機の設計から辛うじて飛行可能な機体製作に向かった。そこから生まれた機体は多数の面で敵レーダーを無効にする設計でF-117の縮小版の様相で1977年に初飛行した。試作型二機は喪失したが、このハブブルー事業は驚くほどの成功を収めた。このため空軍は後継機としてF-117開発を進めることとした。
F-117は1981年初飛行し1983年に戦力化した。ロッキードがここまで早く作戦機材を開発できたのは他機種の既存コンポネントを流用したためだ。フライバイワイヤはF-16から、エンジンはF/A-18AのジェネラルエレクトリックF404ターボファンからアフターバーナーを省いたものだった。さらにF-117は通常型の航空宇宙用アルミニウム製で、その後のステルス機と一線を画し、製造が容易だった。ロッキードは合計59機のF-117AとYF-117A開発試作型5機を製造した。
F-117の戦歴
F-117の極秘戦闘デビューは1989年でパナマ侵攻作戦だったがその実績は精彩を欠くものだった。ただしF-117は第一次湾岸戦争(1991年)ですばらしい働きをイラクで示し続く第二次湾岸戦争のイラクの自由作戦(2003年)でも同様だった。空軍は予算節約のためとしてナイトホークを2008年に退役させロッキード・マーティンF-22ラプターの予算をねん出した。その時点での空軍見解は航空優勢が主眼のラプターの登場でF-117の出番はなくなったというものだった。
供用期間を通じ機体喪失は1999年3月にユーゴスラビア上空で撃墜されたデイル・ゼルコ中佐操縦の機体一機のみで、コソヴォで発生したこの事件はステルス機といえども無敵ではない、レーダーや赤外線の前にステルス機も探知可能と広く知らしめることとなった。もともと国家安全保障関係者や軍内部でそんな幻想を抱くものは皆無だったが、1990年代から低視認性機の性能を過信する傾向が生まれていた。ステルスは探知追尾を遅らせるだけであり、敵に見つかる前に運んできた兵装を投下するのが基本コンセプトだ。ステルスは機体を透明化にする魔法ではない。
空軍はステルス機が探知不可能であり無敵だとは一貫して考えてこなかった。砂漠の嵐作戦では米陸軍AH-64ガンシップがイラクで初めて戦闘投入されており、そのミッションはイラクの低周波早期警戒レーダーを排除することだった。各レーダーはVHF、UHF帯域を使用していた。こうしたレーダーはF-117の探知追尾が可能だ。アパッチ部隊がステルス機に侵入経路を作りイラク内部へ探知されずに移動できるようにした。同機はC、X、Kuの各帯域でステルス性を発揮できる設計だ。
その後登場したF-22やF-35も高周波火器管制レーダーに有効なステルス性能を有する。第五世代戦闘機はF-117直系といえるが、敵も何かが飛んでいることは察知できる。ただ存在が分かっても打つ手がないはずというのが理論上の説明だ。だが空軍がステルス機を運用する際は海軍の電子戦機がある場合に限っている。
ステルス戦略爆撃機のB-2は潜水艦同様で飛行中に存在を探知されない。大型爆撃機は「広帯域全アスペクト」ステルス機で、つまり低周波レーダーをもってしてもノイズと乱反射に隠れ探知されない。それでもペンタゴンとしてはロシアや中国がここまで早期に低周波レーダーを開発しB-2にも脅威になる事態が来るとは予測していなかった。「B-2の脅威をリアルタイムで予測すべく国防管理システム(DMS)を利用したが、B-2でさえ脅威の進展についていけなく事態が来るとは正直想定できなかった。このため新型LRS-B(B-21)では低周波レーダー対抗を最初から盛り込んでいる」と空軍関係者が述べている。
F-117の限界とF-22を上回るF-35のステルス性能
この空軍関係者の話でF-117が高度のハイエンド戦に対応できないことの説明がつく。亜音速軽爆撃機のF-117が高周波レーダー対策に特化していることはF-22やF-35のようにリアルタイムで脅威発生源を探知したり敵発信の特徴の把握はできないことを意味する。ましてや探知されたり空中で敵に遭遇すれば生き残るのに必要な性能が足りない。
じつはここにF-22やF-35の長所があり、F-117はおろかロシアのPAK-FA(Su-57)や中国のJ-21やJ-31でさえもこの水準に及ばない。F-117の場合は各ミッション実施前に脅威対象を回避するコース設定が必要だった。F-22、F-35では侵入コースがリアルタイムで設定でき、パイロットに情報を提供するインターフェイスが備わる。この関連で共用打撃戦闘機はラプターよりさらに一歩先の性能で、開発時期の差から生じた技術進歩を反映している。
空軍や業界の複数筋からラプターのレーダー断面積はF-35より大きいとの情報があるが、今後の新型機はさらに進歩した電子戦装備のおかげもありステルス性能が向上する。航空戦闘軍団(ACC)司令官を退いたマイク・ホステージ大将がBreaking Defenseに語ったことばを思い起こさせる。「F-35は高度性能がなく速力も劣るが、ステルス性能でF-22を上回る」と述べていた。現ACC司令官ホーク・カーライル大将はF-35のパッシブ性能が優れ自機の出すシグネチャの管理能力は高い、とNational Defense Magazineで述べていた。
そうなるとロシアや中国への優越性はこれまで多額の費用を投入してきた機体とパイロットのインターフェースにかかる。カーライル大将も何年か前に筆者に同じことをペンタゴンで語っている。にもかかわらず米国が技術面で優位性を確保するには新技術の開発に今後も尽力する必要があるのは明らかだ。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

2018年5月13日日曜日

アラスカ付近までベア編隊を飛ばすロシアの狙い

US F-22s intercept Russian strategic bombers flying in international airspace near Alaska アラスカ近くの国際空域を飛行中のロシア戦略爆撃機を米軍F-22が迎撃


Bill Gertz,

f22F-22 Raptors fly in formation over New York, August 21, 2012.US Air Force
  • ロシアTu-95「ベア」爆撃機二機がアラスカに接近しF-22が迎撃した
  • 核攻撃能力を有する同爆撃機は米加領空には侵入していないと軍当局が発表
  • 米国を狙ったロシアの恫喝の一部とみる専門家もいる



シア戦略爆撃機二機がアラスカの防空識別圏に侵入したため米F-22編隊がこれを迎撃した。5月11日金曜日のことで米北方軍司令部が発表した。
Tu-95ベア爆撃機二機はべーリング海上空に設定の防空識別圏に金曜日早朝に侵入してきたと北方軍および米加共同北米防空司令部(NORAD)広報官スコット・ミラー海軍大佐が発表。
「東部標準時10 a.m.ごろアラスカ配備のNORAD所属F-22戦闘機二機がロシアTu-95ベア長距離爆撃機機二機を目視で確認した。ロシア機は房区識別圏内でアラスカ西海岸沖合からアリューシャン列島北部を飛行していた」と大佐はワシントン・フリー・ビーコンに伝えてきた。
ロシア機は米加いずれの領空も侵犯していないと大佐は付け加えている。
また今回の迎撃で異常な動きは見られるz、F-22隊と爆撃機編隊で交信も発生していないという。
核運用可能な爆撃機は国際空域を飛行し「国際規範に従って飛行した」という。
「NORADは今後も空の上の動きを注視していく」(ミラー大佐)
ただし大佐はロシア爆撃機のミッションに関してこれ以上の詳細には触れていない。今回はロシアが米国を狙って行う力の誇示の最新事案となった。
「プーチンのロシアは核の恫喝を行い、爆撃機に無駄に燃料を消費させ、その他空中給油や整備作業を行わせてまで長距離飛行させこの一環としているのです」とペンタゴンで戦略兵器分野の専門家だったマーク・シュナイダーが解説する。「核兵器で脅しをかけるのロシアの得意分野です」
Tupolev_Tu 95 russian bear bomberA Tu-95 Bear bomber.Wikimedia Commons
一年以上前になるがやはりベア爆撃機二機がアラスカのADIZ内を飛行しており、この際はSu-35フランカー戦闘機編隊も随行していた。
アラスカにはペンタゴンも戦略ミサイル防衛拠点をフォート・グリーリーに置いている。
フォート・グリーリーには地上配備迎撃(GBI)ミサイル44発が配備されICBMに対応する。その他カリフォーニア州ヴァンデンバーグ空軍基地にも同じ装備が展開している。
ウラジミール・プーチン大統領の反米姿勢で米ミサイル防衛をやり玉に挙げているのは、ロシア軍ミサイルへの対抗手段と受け止めているからだ。
ペンタゴンの説明では米ミサイル防衛体制の対象はロシアではなく、北朝鮮のICBMや今後登場するイランの長距離ミサイルだ。
ベア爆撃機にはKH-55空中発射式巡航ミサイルや最新かつ最強のKH-101・102(通常弾頭・核弾頭)が搭載される。
2012年6月にロシアは大規模戦略核部隊の演習でアラスカの米ミサイル迎撃基地への模擬攻撃をしている。
前出のシュナイダーは近年のロシア爆撃機には戦闘機の護衛がつくときとつかないときがあると述べている。「それはともかく、プーチンが2007年から始めている『戦闘哨戒飛行』は訓練ではなく核の恫喝が目的でしょう」
「KH-55、KH-101,KH-102といった巡航ミサイルは射程距離数千キロで、何もわざわざ迎撃を受ける地点まで接近させる必要はないはずです」

ロシア軍がADIZ内飛行に踏み切るのは接近しなければ『恫喝効果』が生まれないからでしょう」(シュナイダー)■

2018年5月2日水曜日

★F-22生産早期終了の裏側に新型爆撃機実現に注力する米空軍の決断があった

F-22の話題がここにきてでてきていますが、戦闘機命の米空軍主流派に対して新しい潮流を当時のゲイツ国防長官が断行したことが分かります。というか、F-22よりも新型爆撃機がどうしても必要だったのですね。以来戦闘機派の不満がくすぶるなかで今回降ってわいたような日本の資金負担によるF-22生産再開が実現すれば米空軍にはまさしく濡れ手に粟でしょう。ゲイツ長官の決断が本当に愚かであったのかは歴史が証明するでしょう。


Retired General Says F-22 Production Was Killed So That A New Bomber Could Live F-22生産中止は新型爆撃機実現のためだったと当時の空軍トップが回顧

Other revelations include the Next Generation Bomber was to be armed with air-to-air missiles and the B-21 is indeed one part of a family of systems.その他判明したこととして次世代爆撃機構想には空宅空ミサイルでの武装の想定があったこと、B-21が各種システムのファミリー構成の一部であることなど。



USAF
BY TYLER ROGOWAYAPRIL 28, 2018




空軍参謀長を務めたノートン・シュワーツ退役大将がこのたび刊行された回顧録でF-22生産を必要機数の半分以下で終了させたのは当時の国防長官ロバート・ゲイツの愚かな決断で理由は新型ステルス爆撃機の生産を承認したことと指摘している。
Air Force Magazineが同大将の新著“Journey: Memoirs of an Air Force Chief of Staff”内の問題個所を最初に伝え、F-22生産継続をめぐる戦いの展開の詳細とともに次世代爆撃機開発再開の議論の流れにも触れている。
USAF
ノートン・シュワーツが空軍のトップになったが戦闘機以外のパイロットの就任は1982年初のことだった


舞台裏ではシュワーツの前任者マイク・モスレー大将は「なんとしてもF-22の381機調達の原則を絶対断念しなかった」と同書にある。だがこの決意はモスレーの更迭に繋がり、同時に空軍長官マイク・ウィンも職を失った。この後制服組は新型爆撃機の重要性を悟り、F-22と爆撃機の両方をゲイツに納得させるのは困難と考えるようになった。ゲイツは高価格装備でもイラクやアフガニスタンで役に立たないものは意味がないと頑なに反対の姿勢だった。
シュワーツはF-22生産機数を削減した場合は国防長官に受け入れられるかを知るべく、外部評価を行わせ243機のF-22が空軍が勝利を収める際の最小必要数との結果を得る。だが、ゲイツはこの規模も却下した。
LOCKHEED MARTIN


このことからシュワーツ他はF-22生産をめぐる論争を断念してしまう。ワシントンDCの力の哲学に従いシュワーツ大将も結局ボスにはいかに間違った判断とは言え逆らえず、ラプターの運命が決まったのだ。
新型爆撃機が調達面で最高の優先事項となりそのためしわ寄せが他の装備に生まれたと言えシュワーツはじめ空軍将官は爆撃機の実現に注力せざるを得なくなった。だがそれでも当時の状況下で文民トップに新型ステルス爆撃機の必要性を訴える必要があった。ゲイツは次世代爆撃機(NGB)構想を葬った前歴があったからだ。ただしシュワーツはその決断には「合理性」があったと認める。
Air Force Magazineは以下述べている:
「NGBは『機体が大きくなりすぎ』て実施可能なミッションは広範となり要求性能も多岐にわたった。自衛用に空対空ミサイル運用も想定され、シュワーツが明らかにしたようにそうした要求内容は「必要不可欠な内容ばかりではなかった」。当時はNGBでは「コストは重要でない」とされながらゲイツの世界観にあわず、「そのため中止させた」というのだ。
議会と報道陣に対しNGB開発中止の説明をしたゲイツはB-2の機体単価があまりにも高くなり調達取りやめとなった事例に触れたが、これは話が全く逆だった。132機調達計画のB-2を20機にしたため単価が膨張したのであり、研究開発コスト全額を六分の一になった機数で負担したためだ。
実態は一部は真実である。機体単価に研究開発コスト全額は含まないが、B-2の単価が膨張したのは事実だ。にもかかわらず、ヘリコプターと輸送機パイロット出身のシュワーツにとって爆撃機は「疑問の余地のない必要装備」で将来の大統領が「作戦実施とともに抑止効果でも」使う装備と映ったのだ。そこでゲイツ長官に爆撃機は妥当な価格かつ次世代爆撃機関連の開発リスクをくりかえさずにに実現すべきと進言していた。その一つとして要求性能を固定化し、既存サブシステム他部品の流用でコストを抑え、その他ジャミング機材を同時に飛ばすことで「各種システムのシステム」を実現することがある。
Air Force Magazine記事の末尾は同大将の所感を再度引用している。
最終的にゲイツが折れ、「空軍としてもそのような機体を一定の原則のもと配備できるはず」との主張が本人を説得したようだ。シュワーツはドンレーとともに「ゲイツ説得に成功し」B-21ではこれまで見たことのない原則で後継者にその実現を託すこととした。また機体には既製品のセンサー、ジャマー他装備品の搭載を極力進めコストダウンをシステムのシステムとして実現することになった。
この展開にはいろいろな理由で興味をそそられる。まずF-22生産中止ではゲイツに責任があるとこれまで広く信じられており、近視眼的決断が批判のためで米国に準じる実力を有する敵対勢力の対応を楽にしてしまった。特に中国のステルス戦闘機開発の動きを軽視したことがゲイツの最大の誤りとも言われる。
DOD
元国防長官ロバート・ゲイツ


その他にも在任中に北朝鮮やロシアの動きを予見できなかった。イラク、アフガニスタンに焦点を当てすぎたのは理解できることだが、このためローエンド敵対勢力を唯一の脅威ととらえ米国の国防体制をこれに合わせたため影響がその後に残った。当時でも議論の種となった考え方だが今日そのツケを支払わされていると言える。
言い換えれば、ゲイツが選ぶ馬券は買いたくないものだ。
Air Force Magazineも同じ考えで以下述べている。
ゲイツは自身の回顧録“Duty”でF-22はアフガニスタンやイラクの戦闘員相手では役立たずの冷戦の遺物と述べ、中国のステルス戦闘機は2020年代までは実戦化されないと見ていたため、躊躇なくF-22を切り捨てたと主張。事実はF-22はシリア作戦で不可欠な存在となり、中国はステルス戦闘機の初部隊を2017年に編成している。ゲイツ以降の航空戦闘軍団の歴代司令官は口をそろえてF-22が需要に対して少なすぎると不平を述べている。
F-22生産をめぐる物語の先にUSAF爆撃機開発の一端を目にする貴重な機会があり、B-21レイダーの誕生がある。次世代爆撃機構想は当時も現在も厳重な機密情報のままだが、今回その一端が明らかになり、自衛用空対空兵器の搭載が当時真剣に考えられていたことが浮き彫りになった。
B-21ではNGBよりはるかに容易にこの機能が実現するかもしれない。と言うのは既存装備の導入が極力推奨されているからで、おそらくF-35で実現した機能が応用されそうだ。空軍はひそかに超長距離空対空ミサイルを開発中であり、B-21が搭載して戦闘投入された場合、敵標的捕捉はネットワーク接続されたステルス戦闘機に任せればよい。
ノートン将軍の指摘でこれまで解明できなかった点が見えてきた。B-21とは大規模な秘密機材の系統の一部で敵大国への奥地侵攻能力が新型爆撃機と並行して開発が進んでいる。おそらくここにすでに存在が知られている戦略偵察機で非公式にRQ-180と呼ばれる機体が加わり、敵地上空に滞空しながら探知されず標的情報や電子偵察情報をリアルタイムで提供しB-21の侵入経路決定や攻撃に活用するのだろう。
NORTHROP GRUMMAN/THE DRIVE
B-21レイダー
戦術無人戦闘航空機はセンサー機としてさらに電子攻撃機としても活用され、動的攻撃機にもなるシステムファミリーの一部の位置づけだろう。B-21を支援し敵地深部への攻撃ミッションを達成させる。新型ステルス巡航ミサイルがそこに加わり、弾頭は通常型になるのはほぼ確実となる。これはLRSOとして現在開発中のものだ。そうなると現時点のB-21は照明を落とした舞台で目立つ主役で暗闇の中では数々の機関が同機を主役の座につけようと懸命に動いていると考えてはどうだろうか。
アシュトン・カーター前国防長官がそうした存在を一度ならずとほのめかしていた。B-21がエドワーズAFBに到着する日が遠からず生まれるが同機が各システムで構成するファミリーの一部として同基地でテストを「プログラムのプログラム」の傘の下で受けるのは確実と思われる。こうした装備がすでに知らないうちに稼働している可能性があるがB-21が初期作戦能力を獲得する2020年代中頃にはその存在がおのずと明らかになるだろう。
USAF
C-130を操縦するノートン・シュワーツ.


B-21に必要な各種システムファミリーが実現されれば、B-2の前例から問題視されているB-21の機体単価も比較的低く維持できるはずだ。闇の予算を利用した下位装備品の開発が進めば、そうした装備は公式にはB-21とは無関係とされているため「安価な」B-21の生産が可能となる。USAFが爆撃機の中心的機能を分散化しつつ予算執行も分散化させることで同機は戦場でも議会の場でも残存性を高めるはずだ。

シュワーツ大将の回顧録全文に目を通し、これまで知られていなかった細かい情報が見つかることに期待したい。その節は読者各位に全体像をお伝えしたと考えている。■