ラベル #B-1 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル #B-1 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年10月25日土曜日

B-1爆撃機がヴェネズエラ沖を飛行(TWZ)―米軍が着々と対策作戦の実施に向け準備を深めていますが、日本は相変わらず全く関心を示していませんね

 

B-1爆撃機がヴェネズエラ沖を飛行(TWZ)―各軍の部隊装備が着々と対策作戦の実施に向け準備を深めていますが、相変わらず日本は全く関心を示していません

ニコラス・マドゥロ政権への米軍の圧力が高まる中、米空軍の爆撃機がヴェネズエラ近海を飛行したのは2週間で2度目となった

B-1B爆撃機のストック写真。

USA

空軍のB-1B爆撃機が、ヴェネズエラ沿岸およびカリブ海に浮かぶ同国領の離島付近を飛行した模様だ。先週には、B-52爆撃機3機が同じカリブ海地域で確認された。米軍はその後、これらの出撃を確認し、爆撃機には米海兵隊のF-35B ジョイントストライクファイターが随伴したと発表した。米政府は、違法薬物取引対策を理由に、ヴェネズエラの強権者ニコラス・マドゥロ圧力をかける大規模な取り組みを進めており、同国内の標的に対する直接的な軍事行動の可能性が高まっている。

オンラインの飛行追跡データによれば、本日早朝にテキサス州ダイス空軍基地から少なくとも2機のB-1爆撃機が離陸した。約90分後にはフロリダ州マクディル空軍基地からKC-135給油機も追跡された。その後、コールサイン「BARB21」と「BARB22」を使用するB-1爆撃機と見られる機体がヴェネズエラ近海を飛行しているのが確認された。オンライン上の追跡データ(完全な正確性を保証しない)によれば、爆撃機はヴェネズエラ沿岸から約50マイル(約80km)まで接近し、ロス・テスティゴス諸島にはさらに接近した可能性がある。

飛行追跡データと公開されている航空管制音声も、ヴェネズエラ近海カリブ海上空で他の米軍航空機活動が活発だったことを示しており、KC-135給油機やRC-135偵察機(情報収集・監視・偵察機)も確認された。当該海域に展開していたRC-135の機種は不明だが、過去にはRC-135V/Wリベット・ジョイントがこの海域で確認されている

加えて本日、米空軍のE-11A戦域空中通信ノード(BACN)機がプエルトリコ方面へ飛行中と捕捉された。同地には米軍が相当な軍事能力を配備している。この飛行任務がカリブ海南端における他の米軍航空活動と直接関連するかは不明だが、本機の存在は特に注目に値する。戦域の大部分における通信・データ共有を可能にし、複雑な軍事作戦を唯一無二の能力で支援する。切迫した「顧客」への情報中継、各種データリンク波形からのデータ融合・再送信を実行するのだ。特に、地上から空中の航空機や戦闘空間周辺の他のプラットフォームとの通信を可能にし、特殊作戦任務を支援するのに有用だ。

E-11 BACN(空軍曹ベンジャミン・ゴンシエ撮影)

ウォール・ストリート・ジャーナルは、匿名の当局者を引用して、B-1の出撃を確認した。しかし、ドナルド・トランプ大統領の発言も、混乱を引き起こしている。

「米国がヴェネズエラ付近に B-1 爆撃機を派遣し、軍事的な圧力を強めているという報道がある。これは事実か、またその任務について詳しく教えてほしい」と、記者が今日の記者会見でトランプ大統領に質問した。

「いいえ、事実ではない。それは誤りだ」と彼は答えた。「しかし、我々は多くの理由でヴェネズエラに不満を持っている」

本誌は、国防総省、米国南部軍(SOUTHCOM)、米国戦略軍(STRATCOM)、および空軍グローバルストライクコマンド(AFGSC)に、説明と詳細情報の提供を求めた。STRATCOMは国防総省に問い合わせるよう求めてきた。

いずれにせよ、先週のB-52出撃後に本誌が指摘した通り、カリブ海における麻薬対策作戦に空軍爆撃機を投入す前例は存在する。B-52とB-1が有する航続距離と標的捕捉能力は、疑わしい麻薬密輸船の発見・追跡に活用可能で実際に活用されてきた。

先週と同様、オンラインの飛行追跡データは少なくともヴェネズエラを標的とした武力示威を明確に示している。米軍自身も先週のB-52飛行を「爆撃機攻撃実証任務」と説明した。

先週の「爆撃機攻撃実証任務」中に共同飛行するB-52とF-35B編隊。USAF

米軍がヴェネズエラに対して取る可能性のある直接行動には、B-1爆撃機やその他プラットフォームからのスタンドオフ攻撃が含まれうる。爆撃機はまた、そのような作戦の一環で、陸上および海上の標的を他の通常兵器で攻撃することも可能だ。ヴェネズエラ軍は防空能力が限られているが、本誌が以前詳細に分析した通り、依然として現実的な脅威となりうる。

つい昨日、マドゥロ大統領は明確に主張した。自国軍が国内の「主要防空拠点」に5,000基のイグラ-S携帯式短距離地対空ミサイルを配備していると。ロイター通信も昨日報じた。この主張を裏付けると思われる文書を確認したと。しかし同記事は、実際にミサイルを発射するために必要な「グリップストック」と呼ばれる部品が、ヴェネズエラ軍には1,500個しかないと理解されているとも記している。

以下の2009年の動画は、ヴェネズエラ軍が運用するイグラ-S肩撃ち式地対空ミサイルを示している。

その他のヴェネズエラの防空資産が前線配備位置で確認されている。

ヴェネズエラ軍のその他の地上・航空・海軍戦力も同様に限定的だが、米国による武力介入が発生した場合、一定の脅威となり得る要素もある。ロシア製Kh-31空対艦超音速巡航ミサイルの保有がその一例であり、本誌が今週指摘した通りである。

今日のヴェネズエラ沖での航空活動は、昨日トランプ大統領が陸上の麻薬カルテルへの攻撃を命じる可能性について発言したことを受けたものである。これは、麻薬密輸船と疑われる船舶に対する攻撃という現政権の現在の作戦が、カリブ海から東太平洋へと拡大したことを受けたものである。

トランプ大統領は昨夜、ホワイトハウスで訪問中のマルク・ルッテ NATO 事務総長と共同記者会見を行い、陸上のカルテル組織に対する攻撃の可能性に言及した。大統領の最初のコメントは、東太平洋における船舶への攻撃に関する質問に直接答えたものである。国防総省は、その日早くに、同海域における初の攻撃を発表していた。トランプ大統領がルッテ事務総長と共同記者会見を行った数時間後、米国当局は 2 回目の攻撃を公表した。

「現在漁船も、その他の種類の船も含め海上を航行している船はほとんどない。だから、彼らは陸路で入ってくることになる…その程度は少ないが」とトランプ氏は述べた。「そして、彼らは陸でも攻撃されるだろう」。

トランプはこうした攻撃を行う法的権限について質問を受けた。麻薬密輸に関与したとされる船舶への米軍による攻撃の合法性や、その根拠となる情報について既に疑問が出ている。米軍は9月以降継続中の作戦の一環として、少なくとも8隻の小型船を標的にしたとされている。内訳はカリブ海で6隻、東太平洋で2隻である。

「そう、我々には法的権限がある。それを実行する権限がある。陸上で攻撃する場合、議会に報告する可能性はある。だがこれは国家安全保障上の問題だ」とトランプは述べた。「彼らが陸路で侵入してきた場合、非常に厳しい打撃を与える。彼らはまだそれを経験していないが、我々は完全に準備を整えている。陸上で行動を起こす際には、おそらく議会に戻り、我々の行動を説明するだろう」。

トランプは、麻薬カルテルを標的とした陸上攻撃がどこで行われるかについては詳しく述べなかった。

大統領の昨日の発言は、米国政府がヴェネズエラのマドゥロ政権に特に圧力をかける最近の取り組みという広い文脈で広く受け止められた。しかし、ヴェネズエラは米国と陸地で接しておらず、東太平洋沿岸も持たない。メキシコは、他の国々と同様に、それらを持っている。また過去には、トランプ政権がメキシコの麻薬カルテルに直接行動を検討しているとの報道もあった。その可能性は残るものの、それ自体が特有の複雑さとリスクを伴うだろう。

同時に、米国政府が西半球全域で展開する表向きの麻薬対策作戦において、依然としてヴェネズエラは焦点となっている。

本日のB-1爆撃機やその他の航空機の飛行に加え、同地域では大規模な米軍増強も進行中だ。有人・無人航空機を含む多数が配備されている。例えばF-35BAC-130も前線配備されている。米海軍艦隊には、海兵隊を多数搭載した揚陸戦闘群(ARG)が展開している。その中心にはUSS硫黄島が位置し、数隻の駆逐艦、巡洋艦、原子力潜水艦が随伴している。特に目立つのは、特殊作戦母艦とされるオーシャン・トレーダーの出現だ

米陸軍精鋭部隊である第160特殊作戦航空連隊のヘリコプターも、ヴェネズエラ近海を飛行しているのが確認されている。

こうした動きは、米軍がマドゥロ政権に対する秘密作戦を開始する準備を整えているとの報道と時期を同じくしている。先週、トランプ大統領はCIAに対しヴェネズエラでの秘密活動実施を承認したとの報道を認めた。

「CIAがマドゥロを退陣させる権限を持っているか? そんな質問に答えるのは馬鹿げているだろう」とトランプは先週の記者会見で述べた。「だが他の多くの国々も同様にヴェネズエラは圧力を感じていると思う」。

特筆すべきは、トランプがここ1週間ほどコロンビアのグスタボ・ペトロ大統領と応酬を激化させている点だ。ペトロは米国政府を「殺人」と非難し、麻薬密輸船とされる船舶への攻撃を批判した。これに対しトランプ氏は週末、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でペトロを「違法薬物の首謀者」と呼んで応酬した。

米軍がヴェネズエラ国内や西半球の他の地域で、麻薬カルテルの標的とされる地上施設に対して実施する作戦の規模や範囲は、まだ明らかになっていない。遠隔ミサイル攻撃など選択された作戦内容によっては、米軍が地上に一時的であれ展開する必要はない可能性もある。

「政権内部の審議に詳しい複数の関係者によれば、初期の陸上攻撃はマドゥロ政権打倒の直接的な試みではなく、麻薬密売組織の拠点や秘密飛行場を標的とした限定作戦となる可能性が高い」とワシントン・ポスト紙は昨日報じた。「米軍の展開やボート攻撃は、ヴェネズエラ軍内部の分裂を促すか、マドゥロの退陣を促すための心理戦だという見方もある」。

しかし同紙は「麻薬テロリストとの戦争を宣言し、マドゥロを少なくとも組織の首謀者と指定した以上、『マドゥロが実質的に権力を失わない限り、後戻りは不可能だ』と、本記事の取材に応じた関係者の一人は語った。この人物も他の関係者同様、機密事項について匿名を条件に発言した」と付け加えた。「結局のところ、カルテルの運び屋を排除する権限があるなら…カルテルのボスも排除できる」とこの人物は語った。

本日のB-1爆撃機の出撃と、昨日のトランプ大統領の発言は、ヴェネズエラのマドゥロ大統領や地域の他の勢力に対する米軍の軍事作戦がさらに大規模にエスカレートする可能性への懸念を強めるだけだ。■

著者への連絡先:joe@twz.com


B-1 Bombers Fly Off Venezuela’s Coast

USAF bombers have flown near Venezuela for the second time in two weeks as U.S. military pressure builds on Nicolas Maduro.

Joseph Trevithick

Published Oct 23, 2025 5:43 PM EDT

https://www.twz.com/air/b-1-bombers-fly-off-venezuelas-coast

ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭から『The War Zone』チームの一員である。それ以前は『War Is Boring』の副編集長を務め、Small Arms ReviewSmall Arms Defense JournalReutersWe Are the MightyTask & Purposeなど他の出版物にも寄稿している。

2021年1月11日月曜日

歴史に残らなかった機体21 なぜこの機体は採用されなかったのか----戦略空軍でつなぎ機材として導入されたFB-111のストレッチ版とB-1の関係

 歴史に残らなかった機体21

FB-111H concept Art

GENERAL DYNAMICS

 

FB-111Aは戦略空軍用のF-111アードヴァークで人気を呼ばない機材だった。戦術用途のF-111は投入当初こそ問題があったが最終的に冷戦時の最優秀機材とまで評価される機体になった。一方でFB-111は戦略空軍で補完的な存在の機体で76機が製造され次世代爆撃機が登場するまでのつなぎだった。

だが当初構想のB-1が1977年に開発中止となると、FB-111にチャンスが急遽開けた。大型で高性能のB-1の後釜として空軍は改良型「スーパーFB-111」の可能性を検討し始め、B-1がレーガン政権で復活する1981年まで構想は残っていた。再開したB-1は今日のB-1Bランサーである。

FB-111Aのメーカー、ジェネラル・ダイナミクスでは1974年から同機の改修を検討しており、航続距離とペイロードの不足分は同機が戦略用途を想定していなかったためで、戦略空軍も意思に反して同機を運用していた。

U.S. AIR FORCE

76 機導入されたFB-111As がフライトラインで点検を受けている。

 

ストレッチ型FB-111AはFB-111Hと呼ばれ、ジェネラル・ダイナミクス社内で秘密のうちに開発構想を固める一方で、空軍はB-1に注力していた。同社は自社資金10百万ドルを投じた研究を開始し、風洞実験は800時間に及び、縮小モデルでレーダー断面積の測定までフォートワース(テキサス州)で行っていた。

ジミー・カーター大統領は1977年6月にB-1開発事業をキャンセルし、「非常に高価な兵器」で「今必要な機材ではない」としたのは「巡航ミサイルの最近の進歩」が理由だとした。敵地侵攻型爆撃機構想では速力を重視しており、スタンドオフ地点からの巡航ミサイル運用は想定していなかった。

空軍はB-1が消えたことで航続距離、搭載量をともに二倍にする大胆な改修案に注目した。

下院歳出委員会も代替策を模索し始めた。リストにはB-1再開、完全新型B-X侵攻型爆撃機、B-52の新型侵攻型案、既存B-52を巡航ミサイル母機にする、民間ワイドボディ機を巡航ミサイル発射機にする案、さらにFB-111H案があった。

下院はB-1を支持していたが、1977年9月に上院軍事委員会は1978年度にFB-111H検討を提言した。同機はB-1とほぼ同じ機能を実現できるが、兵装ペイロードはB-1の半分程度になるとあった。

FB-111H初号機は供用中のFB-111Aを改装すればよいので二年で運用開始できるとあり、試作2号機はその半年後に実現するとあった。

U.S. AIR FORCE

標準型FB-111Aが編隊飛行中。

 

ジェネラル・ダイナミクスは二機のテスト案を作成し、1号機で推進系含む性能と安定性、制御、フラッター、運用荷重等を、2号機は電子関係、地形追尾レーダー、航法爆撃制御をテストする予定だった。

性能で問題なければ、65機をFB-111A仕様から改装し、ジェネラル・ダイナミクスは生産ラインを再開し100機を新規製造する構想だった。

167機合計で総額70億ドルとの試算があり、機体単価は42.1百万ドルとB-1Aの半分未満だった。さらにFB-111Hの追加発注で、戦略空軍で老朽化してきたB-52の後継機種にもする目論見もあった。

 

U.S. AIR FORCE

FB-111H想像図では空気取入口、尾翼の設計変更部分がわかる。 

 

FB-111Aと構造が43パーセント共通でサブシステムの79パーセントも類似性があるH型は基本形アードバークと外観が大きく異なるはずだった。胴体を延長し新型エンジンを格納し、燃料搭載量が増え、兵装庫を拡大したため降着装置を再設計し、空気取り入れ口は別形状になる。F-111/FB-111独特の搭乗員射出モジュールはそのまま採用された。

エンジンはジェネラルエレクトリックF101ターボファン二基で、B-1Aまたその後のB-1Bと同じでアフターバーナーを使い各30千ポンドの推力を生むはずだった。

U.S. AIR FORCE

B-1Bが搭載する F101 ターボファンエンジンを見る見学者

 

F-111の可変翼構造はそのままだが、後退角はFB-111Aの72.5度が60度になった。これは低空での超音速「ダッシュ」飛行が不要となったためで、H型は海面上でマッハ0.95を出せるはずだった。

その他性能ではFB-111Hは高度36千フィートでマッハ1.6が最高速度で巡航速度はマッハ0.75、低空侵入速度は高度200フィートでマッハ0.85の想定だった。後者はFB-111のマッハ2.2より低速だが、かわりに航続距離や兵装搭載量が増えるはずだった。

胴体は104インチ伸び、全長88フィート2.5インチとなり、FB-111Aの73フィート6インチより大きくなる。機体重量も増え、空虚重量は51,832ポンド、最大重量は155千ポンドとなった。FB-111Aはそれぞれ116,115ポンド、122,900ポンドだった。戦略的な意味を与えるため、機体内部燃料搭載量が二倍の64千ポンドに増やす必要があった。

FB-111Hの真価は飛行距離だった。FB-111Aの5,300カイリに対し、FB-111Hは44%増の7,632カイリの予想だった。空中給油が前提で、低空で時速1,200カイリのダッシュ速度を示し、機内に核爆弾二基を搭載する。さらにFB-111HはFB-111Aと同じ飛行距離ならペイロードが三倍になるはずだった。

 

U.S. AIR FORCE

509爆撃航空団のFB-111がKC-135ストラトタンカーから空中給油を受ける。Pease Air Force Base, New Hampshire上空。

 

機内兵装庫は二倍に広がり、核兵器も4ないし5発まで収納可能だった。機外ハードポイントも12点に増え、うち6点は空気取り入れ口の下部、側部になるはずだった。FB-111Aも最大6発の核兵器を搭載可能だったが、H型は15発で、自由落下式爆弾、AGM-69短距離攻撃ミサイルの選択が可能で、後者は冷戦時の制圧兵器だった。

FB-111Hのエイビオニクス、機体防御装置はB-1用に開発された装備を流用し、AN/APQ-144レーダー、AN/APQ-134地形追尾レーダー、AN/APN-200ドップラー速度センサー、AN/AJN-16とSKN-2400の慣性航法装置、CP-2Aコンピューター二基、AN/ALQ-131と AN/ALQ-137電子戦ジャマー、AN/ALQ-153/154後部警戒レーダー、AN/ALR-62レーダー警報受信機、AN/ALE-28チャフ・フレア放出機となるはずだった。

FB-111Hを魅力ある選択肢にする別要因はペイロードだった。FB-111Aは戦略空軍所属だったが戦略機材の区分でなく、FB-111Hが実現していれば同じ扱いになっていただろう。そのため戦略兵器制限交渉(SALT)の対象から外れると見られていた。ソ連がTu-22Mバックファイヤーは非戦略機材と主張していたが、米国もFB-111HはFB-111の派生型と発表していたはずだ。

だが上院委員会がB-1ではなくFB-111H導入を決めると下院歳出委員会は不満を表明した。カーター政権に対し同機では期待される戦力とならず、別の機体で侵攻任務を行わせるべきと告げた。1977年10月末に下院は上院提案のFB-111H研究予算を却下し、B-1復活を提案した。

ただしFB-111Hはこれで息の根を止められたわけでなく、再度予算化されれば復活は可能との合意が議員間に見られた。

当時の国防長官ハロルド・ブラウン博士はFB-111Hについて以下記している。「当方の分析ではB-1に対し費用面の優位性は見つからなかった。このため、不確実性もあり、開発に要する時間も考慮すれば、既存機とほぼ同じ水準の性能を有する機体を今から調達する意義がない。ただし、B-1開発を取り消したことで、今後数年たつとFB-111の派生型を整備する方がB-1より安上がりになる可能性は残っている」

 

U.S. AIR FORCE

B-1A試作機がF-111チェイスプレーンと飛行した。January 1983

 

その後の予算にFB-111Hを求める動きはなかったが、1979年末に空軍はFB-111改良型のFB-111B/C構想に関心を示した。

これもFB-111Aのストレッチ案で燃料、兵装を増やし、エンジン換装をF101にする案だった。FB-111Bの離陸重量は140千ポンドになるとされた。予想兵装料はFB-111H案とほぼ同じだった。いずれも敵領空を高度200フィートでマッハ0.85で突破する構想だった。

再度の提示案ではFB-111Aの66機を新仕様へ改装し、F-111Dも89機改装するとあった。後者は戦術空軍から移籍して同様の改装を施す予定だった。FB-111B/Cは1983年以降に戦力となり、改修作業は1985年に完了するとあった。

FB-111B/C構想では新規製造機体を想定せず、FB-111H事業より予算規模は縮小し、戦略空軍司令リチャード・エリス大将は「侵攻型爆撃機の直近の解決策として最善の策」と評していた。

FB-111B/C構想は1981年でも検討課題に残っていたが、同年10月にロナルド・レーガン大統領がB-1事業復活に踏み出した。低空飛行ミッションに最適化したB-1Bとしてであり、B-2ステルス爆撃機開発にも予算を投入した。

U.S. AIR FORCE

B-1Bの生産機体一号機がロックウェルインターナショナルコーポレーションのパームデイル工場のハンガーから姿を見せた。

 

FB-111の敗北はB-1の勝利であり、今日でもB-1は空軍の働き手として残っているが、これまで数回に渡り廃止案が出ている。FB-111HあるいはFB-111B/Cが採用されていれば、どんな働きを長期的に示したが不明だが、B-1Bが証明した通常型兵装の大量搭載能力は実現できなかっただろう。

FB-111派生型が低コストで多数調達できれば長距離兵力投射任務をこなしていたはずだ。B-1Bが冷戦後は通常兵器を搭載し今日もこれを定期的に果たしている。長距離運用可能な「域内爆撃機」になっていれば冷戦後の世界でも有効活用されただろう。

とはいえ、今から見ればFB-111は冷戦時の爆撃機で空軍の戦略部門での位置は不動のものでなかったことがわかる。

この記事は以下を再構成したものです。

This Stretched Super FB-111 Was A Low-Cost Challenger To The B-1 Bomber

BY THOMAS NEWDICK JANUARY 8, 2021


2019年11月19日火曜日

B-21導入まで米爆撃機各型はこうして運用される。B-52、B-1Bを中心に動向を解説

Air Force Maps it Future Path to 100 New B-21 Bombers

by
B-52に長距離核巡航ミサイルを搭載、B-2には最新の防空体制を突破させ、B-1Bは極超音速兵器を運用する....これは空軍が今後数十年にわたる運用構想が現実となった場合の話だ。
空軍の装備開発部門は各爆撃機が今後も戦力として活躍できよう懸命に企画中だ。兵装追加、エイビオニクスやネットワーク技術の導入に加え新型B-21の実戦化も課題だ。
上層部が『爆撃機不足』と呼ぶ現状への対応が企画の中心で、供用中機材の性能を最大限活用させるのがねらいだ。
「西側に爆撃機は156機しかなく、全部米国の保有機だ。長距離打撃能力の要求拡大に対応していく」とグローバル打撃軍団のティモシー・レイ大将が空軍協会主催のイベントで9月に発言。
現在B-2は20機あり、B-21は100機を導入する。
「B-21導入に向かう際の問題はどう実現するかだ。ロードマップはあるのか。今後数ヶ月、データをにらみながら可能な策を考える。保有機材の多くで今後は維持管理が課題となるので、費用対効果が最大な形で維持できるよう分析が必要だ」(レイ大将)
B-21の導入の進展が不明なままでは詳細面が決まらないが、構想では75機あるB-52は2040年代まで供用し、B-1は最低でもあと10年あるいは20年残し、B-2は大幅改修するとある。
「現時点ではB-21を100機とB-52の75機を想定する。昨年はこの構想が実施可能かをずっと検証してきた。B-1にも新装備を搭載すれば、B-52の負担が減らせる。問題は現有機材を賢く運用しながらロードマップを準備し規模拡大にそなえることだ」(レイ大将)
構想が成功するかは現有機材の近代化改修にかかっているとレイ大将は述べ、センサー、エイビオニクス、兵装、通信技術で就役後数十年経過した爆撃機を次の10年も活躍できるようにすることだという。
「B-21の機数が十分揃うまでは現有機材をうまく稼働できると信じる。外部ハードポイント追加、爆弾倉拡大が実現できるとよい」(レイ大将)
通常の整備に加え新規装備の統合に向けた努力も並行して進んでいる。空軍研究本部で空軍科学技術戦略をとりまとめるティム・サクリッチがWarriorに紹介してくれたのは空軍の科学技術部門では新技術の導入を加速化しつつ既存機材に応用する姿勢で、例として軽量複合素材、レーザーや極超音速といった新兵器、次世代ネットワーク装備等がある。
B-2とB-52で近代化改修が進んでいるのはこの構想の一部で、旧型機を全く新しい機材にする。自律化運用とAIを既存機種に折り込めば機能面で全く違う機体になり、残存性が高まり、攻撃方法にも選択肢が広がる。
「ネットワーク化兵装やシステムを有人・無人機混合運用で使う際はAIに依存することになる。運用面で違いが生まれるかを実証中だ。ネットワーク化兵装を実地運用し、戦闘状況で標的に向け発射し通信機能、最適化効果を見ているところだ」(サクリッチ)
B-1の今後
空軍はB-1に2つの方向性を想定し、機体改修案とB-21導入に伴う即時退役も考えている。
この2つは一見矛盾しているようだが、同機の威力を最大限にしつつ、B-21への機種転換の負担を軽減するねらいがある空軍関係者がWarrior Mavenに語ってくれた。B-21の就役は2020年代中頃の想定だがはっきりきまったわけではなく、B-1の完全退役は2030年代になりそうだ。またレイ大将からはB-1Bの爆弾倉で極超音速兵器を運用する実証の話題が出ている。
関係者はB-1史上で最大規模の技術改修が進行中とし、兵装運用能力の拡大とともにエイビオニクス、通信機材、エンジンを更新するという。エンジンについては当初の性能水準を維持し、標的捕捉機能、情報機能を新型にするという。
統合戦闘ステーションには乗員用画像装置、通信リンクがあり、飛行中にデータ共有できる。これと別に完全統合型標的捕捉ポッドがあり標的捕捉ポッドの制御と画像フィードをコックピットに送る。また500ポンド級兵装の搭載量を6割拡大する改装を行う。B-1の実戦デビューは1998年の砂漠の狐作戦で、JDAM数千発をイラク、アフガニスタンで投下した。高度40千フィートでマッハ1.25まで出せる同機の実用高度上限は60千フィートだ。搭載可能爆弾はJDAMの他、GBU-31、GBU-38、GBU-54がある。また小口径爆弾GBU-38も運用可能だ。
B-52は2040年まで供用 
B-52全機にデジタルデータリンク、移動式地図表示機能、次世代英日にオニクス、新型通信機をそれぞれ搭載し、さらに機内兵装搭載量の拡大と新型ハイテク兵装の導入が進んでいる。.
レイ大将はエンジン換装に向け作業が進んでおり、新型かつ燃料消費で優れたエンジンが各機に搭載されると強調。
B-52の機体構造が頑丈にできており2040年代更にその先までも飛行可能となるため空軍は最新式エイビオニクスや兵装など技術導入で十分な戦力を維持する。
またB-52の兵装搭載量も増加させるべく技術面で進展が進んでいる。
内部兵装庫改修(IWBU)により最新「Jシリーズ」爆弾を最大8発まで搭載しつつ、主翼下に6発を取り付ける。IWBUではデジタルインターフェースで回転式発射装置を運用し、ペイロードを増加させている。
B-52は以前からJDAM兵器を外部搭載してきたが、IWBUにより機体内部に最新式精密誘導方式のJDAMと共用空対地スタンドオフミサイル等を搭載可能となる。
また内部兵装庫の運用能力が拡大することで燃料効率の妨げとなる機外搭載を機内へ移し抗力が減る。
IWBU改修ではレーザー誘導JDAMの運用が最初に実現する。次に共用空対地スタンドオフミサイルJASSM運用が始まる。JASSM射程拡大型(ER)とミニチュア空中発射型囮装置(MALD)が続く。MALD-J「ジャマー」もB-52搭載されれば敵レーダー妨害に役立つはずだ。
ヴィエトナム戦争での爆撃ミッションが有名だが、近年もアフガニスタンで地上戦支援を行っており、この際はグアムから発進していた。
B-52も砂漠の嵐作戦に投入され、空軍は「B-52が敵兵力集中、固定目標、地下掩壕の広範囲に及ぶ攻撃に投入され、イラク革命防衛隊は戦意喪失した」とまとめている。

2001年の不朽の自由作戦のアフガニスタンで近接航空支援にB-52を投入している。イラクの自由作戦では2003年3月21日、B-52H編隊で約100発のCALCM(通常型空中発射巡航ミサイル)を夜間ミッションで発射している。■