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2022年8月12日金曜日

PLAによる台湾占領は非現実的と判明したCSISによるウォーゲーム結果。

 


CSISはウォーゲームで中国・台湾・米国が衝突した場合に起こりうる結果を探った (Original image of wargame map courtesy of CSIS; original photograph by Ashley Pon/Getty Images)


ワシントンDCのシンクタンクによるウォーゲームの初期結果は、米国は中国から台湾を防衛することで勝利を収めるが、ロシアやイランからの新たな脅威に大きな犠牲を払うと示唆している



湾南部に駐留する米海兵隊沿岸連隊は、台南市付近で水陸両用の侵攻を行う敵対勢力を食い止めている。同連隊の陸上対艦ミサイルは、中国艦隊の進撃をかなり遅らせているが弾薬が不足しており、早急に補給しなければ撃退が困難な状況である。


アメリカは、海兵隊の貴重なミサイルを補給するためにC-17グローブマスターを送り込んだが、中国軍に撃墜された。しかし、米中初の大規模戦争に突入し、何万人もの命が費やされている今、厳しい現実が待っている。誰にとっても後戻りはできない。


ワシントンDCのシンクタンク、戦略国際問題研究所が8月初旬に開催したウォーゲームは楽しい光景ではないが、現実的なものだ。ウォーゲームの目的は、中国が軍事力で台湾を奪おうとしたらどうなるかを見極めることで、アメリカの安全保障体制にとって実存的なものであると同時に、意図せずしてタイムリーなものとなった。

 このシミュレーションはいくつかの重要な仮定を置いているが、これまでのところ、米国が介入すれば、完全な占拠を防ぐか、少なくとも膠着状態に陥る可能性が高いという結果が得らた。しかし、成功しても、艦船、飛行機、潜水艦、そして最も重要な人員で、両陣営が大きな損失を被る。

 「台湾が抵抗し、アメリカが台湾援助すれば、中国の成功可能性は極めて低くなる。しかし、米国は大損失を被る...ゲームで、米国は世界の戦術的航空隊のほとんどすべてを失うことがわかった」と今回のウォーゲームを進めたCSISのマシュー・カンシアンMatthew Cancian述べた。

 CSISは、ゲーム各回で喪失した被害総額を計算し終えていないが、一般的に、プロジェクトのスタッフによると、米国は通常、ゲームごとに約500機の航空機、の水上艦20隻、空母2隻を失ったという。空母の損失だけでも、アメリカは合計11隻しか持っておらず、それぞれ少なくとも5,000人の兵士を乗せているので、海外に兵力投射する国家能力に悲惨な結果をもたらす可能性がある。

 シナリオは、CSISが今年、様々な防衛専門家、退役軍人、元国防総省職員らと22回にわたり試行したもので、12月に公開報告書としてまとめ、国会議員や国防総省に説明する。

 このような実験は、通常、ワシントンDC環状線内の関係者しか関心を持たないが、今回のCSISのウォーゲームは、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が、北京からの敵意むき出しの発言にもかかわらず台湾を訪問し、世界的に話題になった際に進行していた。ペロシ訪台とその後の中国の反応により、米国が島嶼民主主義国家たる台湾を積極的に防衛すべきかという問題が、緊急性を帯びている。

 8月3日、Breaking DefenseがCSISを訪問した時点で、第17戦の真っ最中で、中国は台南市付近で攻撃を開始したが、内陸部ではなかなか前進できないでいた。一方、アメリカ側はお得意の空中発射式長距離対艦ミサイルが不足していた。その結果、戦局は早くも血で血を洗う戦いになった。

 「結果はゲームによって違うし、初期条件にも大きく左右される。しかし、ほとんど変わらないのは、血みどろの混乱であり、双方がひどい損失を被るということだ」と、この日ウォーゲームに参加したランド研究所上級政策研究員のブラッドリー・マーティンBradley Martinは言う。


ルール 慎重な日本、麻痺した台湾、核兵器は不使用


 ほとんどのウォーゲーム同様に、CSISは、各ゲームのオープニングターンと各チームが自由に使える資産を定義する狭いルールセットをプレーヤーに与えた。各ゲームに登場する兵器、艦船、潜水艦、飛行機は、各国が2026年に利用可能になると公言しているものを反映している。

 ゲーム開始前に、中国は台湾を侵略すると公言し、米国は台湾防衛に介入すると決定した。台湾軍は首都台北に集結したが、最初のターンで麻痺され、中国が紛争開始時に行うと見られるインフラへのサイバー攻撃などをシミュレートし、対応が遅らされた。



CSISのウォーゲームで、米国の損失が拡大していることを示す写真 (CSIS)


 日本軍は米国と基地共有協定を結んでいるが、直接攻撃されない限り積極的に戦争に介入しない。

 1ターンはおよそ3~4日の戦闘に相当し、ほとんどのゲームは6~8ターンで行われ、1ゲームはおよそ3~4週間の戦闘をシミュレートした。

 最後に、核兵器の使用はテーブルから取り除かれた。 報道機関向けに公開されたルール説明の文書では、ゲームデザイナーは、両大国間の紛争における核兵器の重要性を認めた上で、ゲームの範囲を通常戦に限定することにしたとある。

 CSISのウォーゲームに参加し、新アメリカ安全保障センターのゲームラボを率いるベッカ・ワッサーBecca Wasserは、この決定はゲームプレイの観点からは「非常に理にかなっている」と指摘した。

 中国は先制不使用を明言しているが、核兵器を「潜在的な互角戦力を有する敵との対決で活用できる重要手段」と考えており、核戦力増強は軍事的近代化の中心となっているという。

 「このことは、米国にとってこの問題を難しくしている要因の一つでもある。核保有国が2つ集まり、潜在的な対立の中で戦うという事実は、非常に大きなものだ」とワッサーは言う。「CSISは、この問題をテーブルから取り除き、垂直的エスカレーションの機会を減らし、米国ができると感じたこと、中国ができると感じたことをゲームに反映させました」。

 限られたルールにもかかわらず、参加者は通常戦がどのように展開されるかから貴重な教訓を見出した。ランド研究所のマーティンは、ゲームの設定は、中国のような他の超大国との紛争において、消耗率が重要であるかを示していると、Breaking Defenseに語った。

 ゲームは続いているが、先週、Breaking Defenseが参加者と話をするまでに、明確な収穫があった。以下がその主な結果である。


戦闘開始前に、米海兵隊を事前配置できるかは「大きなif」だが、陸上からの艦船攻撃能力が大きな違いを生む

 Breaking Defenseが見たゲームでは、台湾に海兵隊沿岸連隊MLRがいることで、プレイヤーは紛争半ばでの補給任務の難しさに直面した。ゲーム終盤では、MLRの最大の貢献は、陸上対艦ミサイルで中国海軍を撃退することだった。ミサイルが足りなくなると、台湾地上軍を支援して、海岸に援軍のための安全地帯を作ったり、台北に進攻する中国を防いだ。

 同シンクタンクが行った他のゲームでは、米国は開戦前に台湾に海兵隊を配備することも、中国艦隊が台湾を包囲し始めたら上陸できなくなると想定し、台湾防衛で理想的と言えない状況を想定していた。



2022年7月27日、台湾・新北市で行われた中国人民解放軍の侵攻を想定した軍事演習「漢江」で、爆発が起きている。 (Annabelle Chih/Getty Images)


 CSISの上級顧問で、ウォーゲームを監督するマーク・カンシアンは、米国政府が開戦前に海兵遠征大隊MEBを台湾に配備することは「大きなif」であり、開戦後は「不可能だ」と指摘した。(マーク・カンシアンは、このゲームの裁定者であり設計者の一人であるマシュー・カンシアンの父親)。

 ほとんどのゲームでは、「挑発しすぎるから」米国が海兵隊の前線基地を作らない前提でシナリオが組まれている。

 「この24時間から48時間の出来事で、それが良い仮定だと確信した」と、マーク・カンシアンは先週、プレイヤーが地上戦シミュレーションに使う台湾地図を見ながら、Breaking Defenseに語った。「ナンシー・ペロシの台湾訪問が巨大な緊急事態を引き起こしたら...海兵隊旅団を動かすことで何が生まれるだろうか」。


中国侵攻は、台湾軍の配備が薄い南方から始まる可能性が高いが、米海兵隊と同様に、中国も水陸両用軍への補給に困難を感じる

 中国側の視点では、台湾侵攻を開始する上陸地点はプレイヤーの裁量に任された。カンシャン親子によると、台湾軍は北部の台北を守る体制が整っていたため、ほとんどのプレイヤーが南端を好んだ。北から攻め込んだプレイヤーもいたが、すぐ撃退された。

 「台湾は台北の周辺に多くの戦力を抱えているため、中国にとって最適なのは南方からの侵攻だ」と若いカンシアンは言う。

 しかし、南方侵攻も確実な戦略ではない。十数回の対戦で、赤軍が内陸進攻するのが難しかったのは、海戦と空戦が繰り広げられ、必要な補給能力が不足したためだ。

 戦略レベルでは、Breaking Defenseが見たゲームは、これまでのゲーム同様に進行していた。多数の中国の揚陸艦が沈められ、防衛力の低い飛行基地で米軍の数百機が破壊され、結局、アナリストが恐れる長引く血生臭い戦いが始まる素地ができた。


台湾を侵攻するのなら中国は軍隊を全面稼働させなければ、アメリカに圧倒される

 Breaking Defenseが見ていない、同じプレイヤーが参加した別のゲームでは、紛争は素早く、「壮大に」米国に有利に終わった。

 そのシナリオでは、中国は大陸を守るため部隊を保留する一方、台湾攻撃を開始するために限られた部隊を前進させた。問題は、米国が時間をかけずに戦術空軍を使い、可能な限りの水陸両用艦船を攻撃したことだった。



2022年7月28日、台湾・屏東で行われた中国人民解放軍(PLA)の侵攻を想定した軍事演習「漢江」で海を渡る台湾の水陸両用強襲車「AAV7」の操縦。(Annabelle Chih/Getty Images)



 米国が短時間で航空優勢を確保したため、中国の立場は急速に悪化し、米国は迅速な勝利を主張した。

 中国プレイヤーは「本土を守り、(港を)守ろうとした。まあ、中国がそんなことをしたら、顔面から転げ落ちるわけですが...1ターンのプレイで、中国は完全に敗北しました」とマシューは述べてる。


中国の揚陸艦隊が同盟国軍の目標となるのは確実。米国の潜水艦や戦術航空から揚陸艦を守れるかが、成功を左右する

 ワッサーはCNASのウォーゲーム専門家で8月4日にCSISのウォーゲームに参加し、レッドチームの一員として行動した。この演習で中国は、グアムや日本の米軍基地を突如空爆し、台湾へ水陸両用侵攻を開始する攻撃的な戦争計画を展開した。

 しかし、最終的には日米の潜水艦が中国の揚陸艦に反撃し、中国の陸上部隊戦力に影響を与え、台湾を支配しようと戦う地上部隊への補給にも支障をきたすことになった。

 最終的に、日本を攻撃するというレッド・チームの決定は、中国にとって破滅的となったかもしれない。米軍は、高度な能力と訓練された部隊を戦いに提供することを望む同盟国を得た。

 「日本を攻撃すると決めたら、日本全土を攻撃し、徹底的に叩きのめさなければならない。一度だけ攻撃して、自衛隊を投入して暴れさせることはできません」と、マシュー・カンシアンは日本との交戦を選択したことについて述べた。

 このゲームでは、3週間から4週間の戦闘をシミュレートしていているが、ゲーム終了時には、中国が米国の空母打撃群を撃沈し、台湾の約3分の1を保持することに成功し、双方に相当の損失が生まれた。しかし、中国は兵力補給ができず、米国がさらに兵力を地域に投入する構えを見せたため、こうした利益は最終的には短命に終わっただろうとワッサーは考えている。


核兵器は、全員の考え方を変える

 今年、台湾侵攻のシナリオを描いたシンクタンクは、CSISが初めてではない。今回のゲームでは、米国を演じる青チーム5人が、中国を演じる赤チーム5人による台湾占領を阻止しようとする。このウォーゲームは、「Meet the Press」の撮影で一度だけ実施された。

 CSISとは異なり、CNASではプレイヤーに核兵器の使用が認められており、それが両チームの行動を形成する上で強力な役割を果たした。赤チームの最初の動きは、「ウクライナでのプーチン大統領を見習った」もので、西側が台湾に関する「内政問題」に干渉することになれば、中国が核兵器を使用すると脅した。ブルーチームは、米国の核兵器の規模が中国の核兵器使用を抑止すると考えていたが、「中国政権を脅かす可能性のあるターゲットへの攻撃は避けるよう注意した」と、CNASはこのゲームに関する報告書で述べている。

 しかし、青チームはゲームの最後の一手で間違いが証明された。赤チームはハワイ付近で核のデモンストレーションを行い、人命が失われない程度に遠かったが、脅威の信憑性を示すには十分な距離だった。



2022年7月27日、台湾・新北市で行われた中国人民解放軍の侵攻を想定した軍事演習「漢江」で、CM-25装甲車を運転して道路を横断する台湾軍関係者たち (Annabelle Chih/Getty Images)


米国勝利に終わっても、別の場所の戦いで準備不足を露呈する可能性がある

 ゲームの仕組みに重要な違いがあるものの、CSISとCNASのゲームは非常によく似た結論を示しているとワッサーは言う。例えば、元米国インド太平洋軍司令官フィル・デビッドソンなど米国当局者は、中国が2027年までに台湾を侵略する能力を獲得することを望んでいると議員に警告したが、この時間枠で設定したウォーゲームは、中国が軍の近代化を計画通りに進めても、揚陸侵攻を行うことが困難であるのを浮き彫りにした。

 「そのため、2030年、2035年、あるいはそれ以降を視野に入れる必要があるかもしれません」とワッサーは言う。「とはいえ、中国にとって非常に難しい問題なので、おそらくもっと近いうちに、中国が他の形の強制力を行使できる事態を考える必要があります」。

 そのような事態には、台湾封鎖も含まれる。今月初め、中国が実践したシナリオでは、中国の艦艇と飛行機が台湾を包囲し、台湾の周辺海域にほぼ12発のミサイルを発射し、5発が日本の排他的経済水域に着弾した。

 両ウォーゲームとも、バージニア級攻撃型潜水艦を中心とする海中戦力の重要性を強調しており、中国の揚陸艦艇が陸上に兵員を展開する前に排除するために使用されるほか、長距離精密誘導弾を大幅に購入する必要があるとワッサーは指摘している。

 「台湾をめぐり米中が衝突するたびに、アメリカは優先弾薬を使い果たしています。十分な量がないのです」「紛争が長期化する可能性を考えれば、米側が戦闘初期にPGMを消費し、紛争が延々と続けば、我々にとってあまり良いことではないでしょう」。

 そして、その戦いが終わっても、まだ他の戦いが迫っているかもしれないと、マーク・カンシアンは言う。飛行機何百機が撃墜され、艦艇十数隻が沈む可能性があり、米国の前方兵力投射能力は大きく低下する。

 「生産レートが低いため、米国が戦力を再構築するのに何年もかかる。ロシアやイランなどは、米国の弱みにつけこむかもしれない」とカンシアンは言う。「さらに、高価な勝利は、米国国民を第一次世界大戦後のような孤立主義に向かわせるかもしれない」。

 2つのゲームのもう一つの共通点は、最終的な結果だ。中国が台湾全土の占領に成功する可能性は低いとはいえ、米中が長期戦に突入し、開戦後数週間で双方が装備と人員を大幅に失う、第二次世界大戦以降の紛争にはなかった壊滅的なシナリオとなる、という状況だ。

 「互角の戦力を有する相手と戦うのは、イラクやシリアでISISを爆撃し服従させたのとは信じられないほど違う。そして、米軍の作戦方法を変えるだけでなく、米軍のリスクへの考え方も変える必要がある」とワッサーは述べた。「大規模な人命の損失が発生し、海底に沈む船も出てくる。このような事態を目の当たりにする一般アメリカ市民にとっても、軍にとっても、アメリカ人の心理に大きな変化が生まれる」と語った。■


‘A bloody mess’ with ‘terrible loss of life’: How a China-US conflict over Taiwan could play out


By   JUSTIN KATZ and VALERIE INSINNA

on August 11, 2022 at 2:45 PM


2019年6月9日日曜日

(時間に余裕の有る方向け)戦略ボードゲームの傑作はどれか 

コメントは下にあります。

Check Out the Very Best Wargames Ever (And What We Can Learn From Them) ウォーゲームの最高傑作はどれか(プレイして何がわかるのか)

June 8, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: War GamesSimulationsMatrix GamesU.S. MilitaryScenarios


危機状況で交渉の腕を試したい?アフガニスタンから米軍をどうやって撤退させる?戦闘より多国間外交が重要視される中で国家安全保障を実現する自信があるか?戦略ボードゲームなら気軽に自分の政治力、軍事力をためすことができる。同時に政策決定層には選択肢が限られているとわかるはずだ。
長く軍事教育では19世紀流の軍事基本原則の理解のため机上演習をおこなってきた。プロシア軍が先鞭をつけ、参謀本部は個々人の将校が軍事基本原理を理解していても実戦で敵と向かえば知識をどう応用したらいいのかわからなくなると危惧した。そこで机上演習が終了してからどの要素に大きな意味があったのか、参加者の選択がどう影響したかを分析した。
1920年代30年代の米海軍は机上演習で敵との作戦案を練り上げた。第二次大戦が始まるとチェスター・ニミッツ提督は開戦前に海軍大学でくりかえした机上演習と異なる実戦場面には遭遇せず、神風のみが例外のまま終戦に向かったと回想している。
ウォーゲームが安全保障の動的側面の理解に役立つのは今も変わりない。バルト海地方へのロシアが侵攻の想定や無人装備中心の戦闘技術が実用化されれば軍事危機が減ることもウォーゲームで示されている。筆者は「低頻度多要素」事態の安全保障シナリオして全面的サイバー戦が米中間で勃発した場合のように可変要素が多数ありながら実施が困難、あるいは一回も実現したことのない事態の理解をウォーゲームで進めている。
ウォーゲームにより政策決定者はプレッシャー下でも理性的な判断が容易になる。問題の理解はできても演習で兵力を投入するとなると状況は複雑になる。ノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングも「未経験の事態への対応策をリスト化刷るのは実行不可能」と述べている。よくできたウォーゲームで敵勢力と対峙すれば政治軍事両面の相互作用への理解が進み、厳しい環境で選択を下す際での条件のやりくりがうまくなるはずだ。
.以上を念頭におすすめのウォーゲームを紹介する。プレイヤーはプレイに没頭するのみでなく現代の安全保障問題の本質の理解促進にもなる。プレイヤー数、時間、複雑度で点数化した。(比較のため「モノポリー」は5点満点で1点)各製品のメーカーと筆者の間には金銭上、職業上の関係はない。選定はあくまでも筆者の個人的好みでおこなった。
非対称戦「Washington’s War」
プレイヤー2名、2-3時間、難度2.5


大国と小国との戦闘は計画立案部門の思惑どおりに進まない。例としてトランプ政権がイランに強硬策を採り開戦の可能性が高まっている。だが巨人のような米国が自動的に勝利する保証はなく侵攻側に有利な状況がいつもあるわけではない。「Washingnton’s War」では英国側プレイヤーが兵力、資金ともに有利で植民地勢力の一掃は可能だし勝利条件は厳しくない。「Washingnton’s War」は戦役とはつまるところ国内国際両面の政治支援であり、正しい指導力とヒットアンドラン戦術があれば弱小プレイヤーも勝利は可能と示してくれる。
核戦争一歩前の状況、「13 Days」
プレイヤー2名、45分、難易度2

北朝鮮やロシアの脅威を米国が引き続き懸念するのは核兵器による大量破壊が今も現実であるためだ。だがこの脅威には複雑な面がある。全面核戦争になれば自殺的な損害が避けられないことを考えると核兵器の脅威がなぜ当たり前に受け止められるのか。「13 Days」でこの答えがわかる。ソ連か米国としてキューバミサイル危機で政治、軍事、報道の各面を掌握し最終的に自国の権威を失墜させることなく終わるにはどうしたらよいか。ただ上記の三分野でやりすぎると核戦争に一気に進むことになるので要注意。


近代地上戦「Combat Commander: Europe」
プレイヤー1-2名、2-4時間、難易度4

第二次大戦が舞台だが、このゲームではプレイヤーは戦術戦の混沌とした状況が体験できる。ドイツ軍指揮官として120名ほどの部隊を率い戦闘に臨む。「Combat Commander: Europe」には現代の戦闘の要素が盛り込まれ、火力制圧、迫撃砲、狙撃兵、機関銃陣地、煙幕弾、砲兵隊や指揮命令系統の混乱を体験できる。ルールは複雑だが明快かつ論理的だ。両陣営の戦力の長所短所が再現されている。例えばソ連側は攻撃的だが待ち伏せ攻撃を受けやすい。結局、手持ちの装備人員で戦わざるを得ず、願望では解決しないことがわかる。
対ゲリラ戦 「A Distant Plain」
プレイヤー1-4名、4時間、難易度5

.タリバンとの交渉にもかかわらず米史上最長の戦闘からの撤兵は容易でない。なぜか。元CIA工作員がつくった「A Distant Plain」が答えを示す。プレイヤーはカブールのアフガニスタン政権、地方民兵組織、タリバン、米主導のNATO軍のいすれかをプレイし、各種戦闘状況や連関した困難な状況を体験する。民兵組織が交通の妨害をしないと約束すれば地方政府はケシ生産を認めるべきか。タリバンが内部にさらに勢力を伸ばしパキスタン国境地帯に勢力を維持すればどうなるか。連合軍は地方の治安安定を図りながら派遣兵力を削減する目標を達成できるか。極めて複雑なゲームであり初心者にはおすすめできないが、このゲームで「もぐらたたき」戦術が有効ではないことが明白になる。
二極体制を試す「Twilight Struggle」
プレイヤー2名、4時間、難易度3.5

ウォーゲーム愛好家の多くがこの作品を最高傑作と呼ぶはずだ。米ソ両国は40年近く世界をどれだけ多く支配できるかを争いつつ直接対決を避けてきた。この過程を初期、中期、冷戦の三段階としプレイヤーはクーデーター、共産革命、マーシャル・プランによる援助、代理戦争、石油危機、宇宙競争や更に重要な中国カードから歴史の教訓を学べる。「DEFCON」が引き上がると核戦争を甘受しないかぎり変更の余地が減っていく。おそらく80年後には「Twilight Struggle」は米中の対決として再発行されるのではないか。■
This article by David Banks first appeared in 2019 in The Conversation via Creative Commons License.

ご紹介したのはボードゲームでコンピュータでプレイできないようですが、国内にも愛好家は多いようですし、対面式なので時間に余裕の有る方、ひきこもりになりたくない方には最適ではないでしょうか。時間数も英語プレイですので日本の方ではより長く掛かりそうですね。

2018年6月9日土曜日

北朝鮮侵攻作戦シナリオの最新検討内容から見えてくるもの

いよいよ迫った米朝首脳会談が吉と出るか凶と出るか世界が注視する中、シンクタンクRANDコーポレーションがウォーゲームで北朝鮮との開戦シナリオを検討し驚くべき結果がでました。しかしホテル代もなく、自国機材で会場移動もできない国がここまでこけおどしで各国をさんざん振り回したことの落とし前はどうつけたらよいと皆さんは思いますか。


A New Study Says a War with North Korea Could Be Hell (And Start a U.S.-China War) 北朝鮮との開戦になればこんな惨状になるとの新規検討内容が出た(米中開戦にもつながる可能性)


June 8, 2018


朝鮮と開戦になれば米軍は数々の問題に直面することがRANDコーポレーション実施の一連のウォーゲームで判明した。
北朝鮮へ進軍し金正恩の核兵器撲滅あるいはソウルを狙う砲兵陣地を制圧しようとすれば米軍韓国軍兵力を薄く延ばすだけではなく、中国の軍事介入のきっかけになりかねない。
今回のRAND研究では米軍特に発注元米陸軍の実戦能力に中心をおいた。北朝鮮の核兵器による脅威、北朝鮮通常戦力の実効力、北朝鮮外交による課題、さらに北朝鮮核兵器の制圧がどうなるかを北朝鮮体制崩壊、さらに国内が内戦状態になる場合を想定して検討している。
「北朝鮮各地に点在する核兵器を捜索制圧する兵力が足りませんしその他にも戦後処理あるいは政権崩壊シナリオでの各種ミッションでも人員不足です。さらに完全に任務を行うためには迅速に北朝鮮へ進軍する必要がありますが、これを行う能力がありません」とRAND研究員マイケル・マザーがNational Interestに語っている。
このうち核兵器について同報告では核兵器保有量が大きいため北朝鮮侵攻制圧が事実上不可能と指摘する。「5年から8年で北朝鮮がさらに核兵器製造に向かえば攻撃を受けても十分な核兵器を温存し、北朝鮮侵攻は画期的な核兵器対策手段が生まれない限り高くつく選択肢になる」とし、米政策の方向如何にかかわらず日本、韓国は北朝鮮による核報復攻撃の可能性により政策の幅を狭められる。
北朝鮮砲兵隊(1万門もの火砲があると伝えられる)でソウルが火の海になるとの脅威についてRANDでは空爆ないし砲撃により火砲をノックダウンする、または限定的国境線内侵攻作戦でケソン高地を制圧し火砲を破壊する作戦を検討した。空爆・砲撃攻撃では重度に防御された火砲の制圧に数週間かかる一方で地上侵攻は北朝鮮の核兵器投入のきっかけになりかねないとわかった。
大きな問題は限定的にせよ地上侵攻するには大規模兵力が必要なことで韓国陸軍二個軍団を想定している。また韓国がこの兵力を維持できるかも疑問だ。「今回のウォーゲームでは開戦後一週間で一個軍団が殲滅される犠牲が発生してやっと一か所から侵攻に成功という異例の結果になり、死傷者数万名ということになった」とRANDは記している。「これだけの死傷者規模となると韓国軍のその後の作戦に支障が出るはずで、南北統一やWMD拠点制圧が困難になる」
今回の結論はシナリオから得られたもので重装備防衛の狭い地点を攻撃しながら北朝鮮は化学兵器で防戦しており、ウォーゲーム関係者は「韓国軍は消耗してやっとケソン付近に侵攻するのがやっと」だと分かったのだとマザーは言う。「それでもROK(韓国)にはまだ余力が残りますが、防衛線制圧には足りません。大規模作戦の視点から見ればこれは高く評価できない内容です。個人的な感想ですが、ROKは平壌進軍の前に立ち往生してしまうと思います」
北朝鮮核兵器の制圧に関してはRANDは数種類のウォーゲームを実施しており、前提は金正恩死亡後に米軍が北朝鮮各地に進出し核兵器を確保するが、北朝鮮内部は内戦状態になっているというもの。だが毎回のゲームからわかったのは北朝鮮指導部の後継者は政治権力基盤として核兵器の掌握に動くはずで同時に核兵器を秘匿しようとすることだ。空軍力だけで全部を破壊しきれないのはイラクでのスカッド狩りの事例からもあきらかだ。
「米国・ROK両国が核兵器を捜索できなくするため北朝鮮は簡単に核や核物質を隠すことができるというのは驚き」とRANDでゲーミングを担当するステイシー・ペティジョンがNational Interestに感想を述べている。
金正恩体制を転覆すれば事が終わると信じる向きには今回のRAND報告書を見てもらいた。「毎回のウォーゲームで少なくとも一回は北朝鮮が核兵器を投入してきた。米国にとって北朝鮮核兵器制圧は限定ミッションとの観があるが、北朝鮮内勢力の役をしたウォーゲーム関係者は米国の介入は南北統一の前兆ととらえる傾向があり、北朝鮮国体への脅威と見ることがわかった。このことから体制保持の最終保証手段樽核兵器を使わないと敗戦するとの見方につながった」
さらに中国の問題が加わる。RANDウォーゲームでは中国軍が北朝鮮国内に侵攻し中国北朝鮮国境地帯を制圧したほか、北部の核関連施設も確保している。さらにケソン高地の砲兵部隊制圧で米韓地上部隊が展開すると中国国境への数少ない侵攻経路にもつながる。1950年に同じ状況が中国を刺激し中国軍が大量展開したが、同じ状況の再発可能性がある。
ただし、マザーは実際の展開は状況により大きく変わると釘をさす。「今回のゲームでの中国の動きから見えてきたのは中国政府は米朝対決からなるべく距離を置いておきたいと考えることです。中国としても影響力を増大させながら状況を追い求めていくはずなので重要な段階で自国の立場を弱める選択はしないはず。そこでもし北朝鮮がソウルを砲撃した場合にケソン高地制圧作戦の実施に移っても中国がおじけつくことはないはずです。ではこちらから先制攻撃し北朝鮮が反撃を迫られる状況の場合はどうなるでしょうか」■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Flickr

2018年3月24日土曜日

TOAW IVは最新の陸戦作戦レベルのウォーゲーム。プレイしてみてわかったこと

久しぶりのゲームレビューです。作戦レベルのウォーゲームhe Operational Art of War IVですがむかしあったAncient Art of War とつながっているのでしょうか。インターフェースは机上軍事演習のようでとてもハードな感じです。Harpoonは面白かったですね。アイスランドをソ連攻撃から守るシナリオが一番面白かったですが、この新しいゲームはどうでしょうか。

I Invaded Grenada in ‘The Operational Art of War IV’ ゲーム「The Operational Art of War IV」でグレナダ侵攻をしてみた

Gamers have their pick of 20th century battles in TrickeySoft's 2017 sim TrickeySoft販売の同ソフトで20世紀の戦闘を再現できる

I Invaded Grenada in ‘The Operational Art of War IV’

March 23, 2018 Robert Beckhusen



番尋常でないシナリオを選んだ。1983年にハドソン・オースティン率いる軍事政権がグレナダ軍少数とキューバ軍事顧問で米海兵隊、陸軍レンジャー部隊、海軍SEALチームの侵攻に抵抗し、その後カリブ海各国が派遣した平和維持部隊と対戦した事例だ。しかも一貫して米空軍が支援していた。
数ターンで終了した。レンジャー部隊がポートサリネスを占拠し幽閉されていた米大学生集団を保護した。この解放がシナリオで重要な目的だ。わがレンジャー部隊と海兵隊は士気が低下したグレナダ軍を中央の山地に閉じ込めた後で制圧した。今回の侵攻作戦はマップ上の数ボックスを移動するだけで終わってした観がある。
これがThe Operational Art of War IV (TOAW IV)で2017年11月にTrickeySoftから発売開始されたコンピュータゲームで、2006年のカルト的前作に続くものだ。シリーズは1990年代にさかのぼる。
TOAW IVにはちょっと変わった点がある。それはゲームの視点で普通のウォーゲームでは三つの「レベル」がある。戦術、作戦、戦略だ。軍事理論では19世紀プロシアの将軍クラウゼヴィッツの大著にならい戦争をこの区分で概念化している。
ウォーゲームのほとんどは戦術レベルでCall of DutyCombat Missionがその例だが、プレイヤーは戦場で敵に攻撃を与える。ミッションでは目標の占拠、敵文書の奪取あるいは塹壕にひそむ敵部隊の掃討となる。戦略ゲームの例がHearts of Ironシリーズで一国の資源全部が関係し戦術は全く関係なくコンピューターがすべてを抽象的にデータとして準備する。
その中間が作戦レベルだ。また中間だからこそウォーゲームではいろいろな要素が含まれることが多い。たとえばHearts of Ironでは戦略と作戦の両方が含まれる。
エジプト軍とイスラエル軍、六日間戦争開始時。TrickeySoft capture


The Operational Art of War IV では作戦を中心としこれまでのゲームより圧倒的に細部にこだわっている。プレイヤーは師団、連隊、大隊をそれぞれマップ上で四角アイコンで表示して移動させる。ボードゲームでの移動と同じだ。ターン制で敵と交互に動かす。地形、天候、補給が重要な要素で前進できるか、足を阻まれるかが変わる。
だがTOAW IVが本当にすごいのは陸上戦の市販ソフトの中で最も興奮させられる内容があることでそれには二つの理由がある。
TOAWシリーズでは20世紀の戦闘を主にあつかい、シナリオには世界大戦時のものもある
TOAW IVにはあまり著名でない武陵衝突事例も含まれ、その例として1972年のトルコによるキプロス侵攻、1995年のロシアによるチェチェン侵攻、ユーゴスラヴィア内戦があるが、さらに架空シナリオとしてヨーロッパでの第三次世界大戦、1962年の米国によるキューバ侵攻もあり、後者ではソ連部隊が実際よりやや強く設定されており侵攻は簡単ではない。
キューバとソ連側のプレイヤーは米軍侵攻を完全に防げないが腕がよければ侵攻軍をシエラマエストラで釘付けにできるだろう。筆者はグレナダ侵攻軍でプレイしたがハドソン・オースティンの政府軍には運がなかった。
同様の内容のゲームを多数知ってしるわけではないがTOAW IVのシナリオ集は作戦レベルに相当こだわっていると断言できる。また1960年代に通用した軍事原則が1940年代でも通用する。さらにさかのぼれば19世紀もあるがゲームのエンジンは正確にモデル化していない。逆に21世紀に限ればCommand: Modern Air / Naval Operationsの方が優れているだろう。このゲームではロシアのカリバー巡航ミサイルがカスピ海からシリアに向けて発射されたりする。
だがTOAW IV は20世紀に関する限りほとんどの場合忠実に再現している。
TOAW IV に興味を覚える二番目の理由はその設定にある。時間の設定だ。
戦闘の勝敗はいかに統制するか並びにテンポ次第だ。ただしターン制のウォーゲームの大部分では時間の再現が弱い。
一般のウォーゲームを見てほしい。プレイヤーがターンで大隊を攻撃に向けると、コンピュータがデータで戦闘を発生させる。
プレイヤーが戦闘に勝利すると、大隊は自動的に敗れた敵がいた場所へ移動する。大隊は「ポイント」を使い果たしもう動けないし攻撃もできないターンは一日に相当する。
これはこれで理屈に合う

第一次大戦中の東部戦線。TrickeySoft capture

だがプレイヤーがここで二番目の大隊を選択して攻撃に向かわせたらどうなるか。あらたに空いた場所の先に移動させて敵に圧力を加えるとする。ターンが終わるまでこれを繰り返し大隊全部を動かす。
一見するとわかりにくいが実はここに概念上の問題がある。
最初の戦闘がいつまで続いたのか。実際には午前中に決着がつかず午後さらに夜に伸びていたかもしれない。だがゲームでは二番目の大隊の「ポイント」が全部残っており移動したり戦闘するのは最初の戦闘が終わってからなのだ。
その結果として一日かかる戦闘もあれば三時間で片が付く戦闘もあり、補給が行き届いて疲れていない部隊なら敵陣内を12時間移動できるだろう。作戦レベルのゲームの大部分でこれが可能だが全力移動だと理屈にあわないこともある。
そこでTOAW IVではややこしいがそれよりはましな仕組みになっている。
ターンは10ラウンドに分かれる。大隊に10ラウンド分の移動を命じると攻撃できなくなる。別の部隊に攻撃を命じるとボックスが画面に出てきて敵兵力を考慮した戦闘時間がわかる。実際には敵部隊が戦闘するつもりなのか、撤退するかで長くかかることもある。
また戦闘をあまりにも早く決着させるかわりにTOAW IVではプレイヤーはターン中に次の戦闘の作戦の立案が可能となっている。5ラウンド分の戦闘は戦場全体で計画可能で「解決」ボタンを押してもまだ5ラウンドを移動や戦闘に使うことが部隊すべてで可能だ。
以上はごく簡単な説明で筆者もゲームの仕組み全体をまだ理解できていない。だが12時間かかるところを3時間ですますのはこのゲームでは不可能だ。The Operational Art of War IV では各ラウンドをうまく立案する必要がある。だから筆者はグラナダを選んだ。最小限の抵抗しかないからで一回目のシナリオとして最適だ。

どうでしょうか、このゲームは以下のURLでダウンロード購入が可能で4500円くらいだそうです。
興味のある方は試されてはどうでしょうか