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2025年10月20日月曜日

ガザ和平の実現にハマスの武装解除拒否が大きな障害だ(National Security Journal)

 

ガザ和平合意で重大な障害:ハマスの武装解除が実現しない(National Security Journal)―ハマスは弱体化しておらず、ガザでハマス以外に有効な統治機構がないジレンマが現実です


アルジャジーラ

要点と概要 – 米国が支援する新ガザ和平合意がはやくも危うい状況だ。人質解放は成功したものの、次の重要な段階であるハマス武装解除に重大な障害が立ちはだかっている。

 – ハマスは反体制派に対する「恐怖政治」で支配権を再強化中で、武器放棄は公に拒否している。

 – イスラエルがパレスチナ自治政府による統治を拒否しているため、実行可能な代替政府が存在しないことも計画をさらに複雑にしている。

 – 武装解除のための明確かつ実行可能なプロセスと、権力の空白を防ぐ計画がないと、停戦は崩壊する可能性が高い。

ガザ停戦が始まってもハマスは支配権を再確立している

米国が支援する合意によるガザ戦争終結の鍵はハマスの武装解除だ。

10月9日にエジプト・シャルムエルシェイクで調印された合意の第一段階は、10月13日にハマスが生存していたイスラエル人人質20人を解放したことで順調に始まったかのように見えた。

しかし合意は障害に直面しているようだ。ハマスはガザで再び勢力を拡大し、地元の反体制派を標的に恐怖政治を開始した。

ハマスを武装解除し、ガザにおける統治組織と置き換えるには、時間と労力を要する。

ハマスの武装解除

和平合意を維持するため、ハマスをイスラエル及び地域の安定に対する脅威として復活させてはならない。ハマスが2023年10月7日に開始した戦争は、レバノンからイエメンに至るイランの代理勢力を巻き込み、甚大な破壊をもたらした。

地域を巻き込み2年間続いた戦争の後、ガザの破壊は甚大だ——再建に何年もかかる。ガザには約200万人が住んでいるが、地域が再建される頃にはその数はさらに増えるだろう

住民が普通の生活を送るには、機能するインフラと確かな平和が必要だ。2007年以来ハマスがガザを支配してきたため、この地域はほぼ20年間平和と無縁だった。イスラエルによる封鎖が続き、ほぼ毎年、戦争や衝突が繰り返されてきた。

10月14日に公開されたCBSのインタビューで、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、ハマスが合意に基づく義務を履行し、武装解除するよう要求した。ドナルド・トランプ大統領も、ハマスは武装解除すべきだと述べているが、その時期については柔軟な姿勢を見せている。

トランプは、ガザにおけるハマスによる取り締まりは、現在、地元のギャングを対象としている述べている。「彼らは、非常に悪質なギャングを排除し、ギャングメンバー多数を殺害した。正直言って、私はそれをあまり気にしていない」と彼は語った

ハマスの武装解除問題は、合意が進むにつれて、ガザに重くのしかかることになるだろう。

例えば、米中央軍は 10 月 15 日、ハマスは「暴力を停止」し、「完全に武装解除し、トランプ大統領の 20 項目の和平計画を厳格に順守し、遅滞なく武装解除することで、平和のための歴史的な機会をつかむべきである」と述べた。これでハマスに和平合意の受諾と武装解除を促すことになるだろうか?たとえハマスが武装解除を望んだとしても、それをどのように実行すればよいのだろうか?

権力の空白は許されない

武装解除の課題は多層的だ。第一に、ガザには代替治安部隊が即座に必要だ。様々な民兵組織や部族が権力を争う状況はガザの利益にならない。ハマスが10月7日の攻撃を単独で実行したわけではないことを思い出すべきだ——パレスチナ・イスラム聖戦などの他のテロ組織と連携していた。

したがってハマスを武装解除することは、ガザの過激派から武器を取り除く一環に過ぎない。権力の空白地帯に飛び込もうとする他のグループが存在するのだ。

武装解除のもう一つの課題は検証と定義である。ハマスは10月7日の戦争開始時点で数万発のロケット弾とミサイルを保有していた。24個大隊の兵士を擁し、大量のRPG(対戦車ロケット砲)やその他の弾薬を備えていた。ハマスは戦闘員多数を失ったとはいえ、依然として膨大な戦力を保持している。

重火器を放棄する代わりに小銃や拳銃の一部を保持することを意味することが武装解除だろうか?

仮に重火器やロケット弾を引渡しても、その過程が完全に履行されたと誰が検証するのか?ハマスがこれらの武器をイスラエルに引き渡す可能性は低い。武器を受け取る治安部隊が必要と思われる。

もう一つの課題は、ガザの民間人にハマス影響下から解放された環境を提供する必要性だ。2年に及ぶ戦争中、イスラエルは民間人が自由に居住できる区域を封鎖しなかった。これはテロ組織や反乱勢力に対する他の成功した戦争との違いである。

例えばモスルでのISISとの戦闘時、イラク軍はISISを体系的に都市から駆逐し、イラク民間人が一時避難キャンプへ移動し、後に自宅へ帰還することを可能にした。ガザでの2年間の戦争中、市民はハマス支配地域への避難を求められ、結果的に同組織の権力を固定化してしまった。

イスラエルは、ヨルダン川西岸を統治するパレスチナ自治政府にガザの統治権を移譲することに反対している。パレスチナ自治政府は西岸地域において、ハマスなどのテロ組織を概ね抑制し、武装解除を進めてきた。しかしイスラエル当局は、これをガザのモデルとは見ていない。

しかしガザを統治する権威や信頼性を持つ組織はハマス以外に存在しない。

地域の合意形成

武装解除は、武器回収という実務的問題であると同時に、武装勢力の縮小と民間人からの隔離プロセスでもある。成功すれば、組織が武器を放棄し活動を政治に限定するか、あるいは組織は解散する。

1990年代後半の和平合意後の北アイルランドなど、成功例もある。しかし他地域では、このプロセスは迅速に進んでいない。例えばクルディスタン労働者党は武装解除を約束しているが、実際には象徴的な式典で武器を焼却しただけだ。

ガザの平和と安定への道は長い。

目的がハマスがガザ支配を再開し兵器庫を再構築するのを防ぐなら、明確な武装解除プロセスを確立する必要がある。これには周辺諸国はもちろん、米国やイスラエルからの強い支持が不可欠となる。■


The Gaza Peace Deal Has One Huge Problem: Hamas Won’t Disarm

By

Seth Frantzman

https://nationalsecurityjournal.org/the-gaza-peace-deal-has-one-huge-problem-hamas-wont-disarm/


著者について:セス・フランツマン

セス・フランツマンは著書『10月7日の戦争:ガザにおけるイスラエルの安全保障をめぐる戦い(2024年)の著者であり、民主主義防衛財団の客員研究員である。エルサレム・ポスト紙の上級中東アナリストを務め、現在はナショナル・セキュリティ・ジャーナルの寄稿編集者でもある。


2025年10月15日水曜日

ハマスには選択肢はない(Defense One-The Conversation)―ガザ住民の苦難には同情しますが、原因を作ったのハマスは英雄ではないのです。パレスチナ住民にも嫌われている事実は日本メディアにとっては都合が悪いのでしょうね

 Smoke billows above Gaza City after an Israeli strike on October 2, 2025, as seen from Nuseirat in central Gaza.

2025年10月2日、イスラエル軍の攻撃を受けたガザ市上空に煙が立ち込める様子(ガザ中部ヌサイラートより撮影)。オマル・アルカッタ/AFP(ゲッティイメージズ経由)

ハマスには選択肢はない(Defense One-The Conversation)―ガザ住民の苦難には同情しますが、そもそも原因を作ったのはハマスで、同テロ組織は英雄ではないのです。パレスチナ住民にも嫌われている事実は日本メディアにとっては都合が悪いのでしょうね

ハマスの存続は今やトランプ案の受諾と政治改革にかかっている。

事的に弱体化し特にガザ地区住民の間でパレスチナ住民からの支持が低下しているハマスは、かつての過激派組織の影のような存在になっていた。そして、ドナルド・トランプ大統領の和平計画が持ち上がった。

2025年10月3日、ハマスは、ガザ地区の管理を独立したパレスチナ人技術者団体に引き渡し、残りのイスラエル人人質をすべて解放することなど、20項目の提案の一部を受け入れると発表した。

これらの人質は、2023年10月7日の攻撃で拉致された252人のうち、最後に残った者たちである。この事件は、2年経った今、いわばハマス勢力の絶頂期を表す出来事といえるだろう。パレスチナ人の政治的態度に関する専門家として、筆者は、この組織が生き残るための選択肢はもはやほとんど残されていないと考える。

過去の和平プロセスにおける旧抵抗組織のように、武装を放棄し純粋な政党へ転身する道もある。しかしそのためには、トランプ案の他の部分への対応、国内での不人気、硬直したイデオロギーという三つの主要な障壁を乗り越える必要がある。

圧倒的な軍事力を持つイスラエルによる2年間の攻撃の結果、ハマスがどれほど衰退したかを検証する価値がある。

多くの情報報告によると、ハマスは、その軍事部門であるアルカッサム旅団の上級指揮官の大半を失った。現在の司令官であるイッザ・アルディン・アルハダッドは、2025年5月に殺害されたモハメッド・シンワル(10月7日の攻撃の首謀者であるヤヒヤ・シンワルの兄弟)の後継者と思われるが、生き残っている。しかし、彼が統率する軍隊は衰退の一途だ。

トランプ氏が 10 月 3 日、Truth Social で、ハマスが 25,000 人の戦闘員を失ったと述べたのは、誇張ではないかもしれない。同組織の損失に関する推定値は様々だが、それは戦争開始時に保有していた戦闘力の 半分以上に相当する可能性がある。

ハマスは新たな戦闘員の募集に成功している。しかし、これらの新兵の多くは戦死した兵士たちに相当する能力や経験がない。新兵が持つ唯一の動機は、イスラエルに対する憎悪と怒りだけだ。

ハマス政治指導部も壊滅状態だ。イスマイル・ハニーヤサレフ・アル=アロウリヤヒヤ・シンワルら主要政治指導者全員が殺害された。

事態はさらに悪化する可能性もあった。2025年9月にカタールのドーハで実施されたイスラエルのハマス政治指導部への攻撃が成功していれば、同組織にとって壊滅的な打撃となっていた。しかし作戦は主要標的を逃した。

戦争の惨禍が深まるにつれ、パレスチナ市民によるハマスへの圧力は高まっている。

現地保健当局によれば、67,000人以上が死亡し、169,000人以上が負傷した。ガザ地区の大部分は瓦礫と化し、人口の90%以上が複数回にわたり避難を余儀なくされている。現在、住民の大半はテントで生活している。国際機関はガザの一部地域で飢饉と飢餓が発生していると報告している。

ハマスは現在イスラエル支配下にある地域で権力と影響力を失った。イスラエル軍と情報機関は、民兵支配地域において、現地のパレスチナ部族や民兵組織の一部のメンバーに協力を提供するよう働きかけている。

こうした地域では、ハマス戦闘員が他のパレスチナ組織と頻繁に衝突し、死者多数を出しているほか、ハマスに対する反感が高まっている。

ハマスによるイスラエル協力の疑いのあるパレスチナ人への処刑や拷問は状況をさらに悪化させ、ガザ各地で混乱と無法状態を招いている。

したがって、2025年5月に実施された最新の世論調査で、ガザ地区のパレスチナ住民の半数が反ハマスデモを支持すると回答したのも不思議ではない。実際、戦争の進展に伴い、ガザとヨルダン川西岸地区双方における同組織への支持は低下を続けている。

継続する戦争とガザの現地パレスチナ人が直面する非人道的な日常は、市民の間に疲労と倦怠感をもたらしている。

ソーシャルメディアでは、多くのパレスチナ人がトランプ案を支持し、自らの苦難に終止符を打つようハマスに対し求めている。

ハマスは、計画の全20項目を受け入れるか否かを判断するにあたり、自らの立場から、非常に悪い結果を受け入れることが代替案よりましかどうかを秤にかけねばならない。トランプは、合意に至らなければハマスが「地獄のような事態」に直面すると警告していた。

ハマスは既に残るイスラエル人人質の解放と、ガザの権力を技術官僚的なパレスチナ委員会に委ねることに合意している。計画が全面的に承認されれば、戦争は終結し、イスラエル軍はガザから段階的に撤退する。パレスチナ人のガザからの追放は行われない。

エジプト、カタール、トルコはハマスが計画に回答する手助けをしている。そして、この合意を成立させるための地域的・国際的な圧力は非常に大きい。

しかし、この合意はハマスに武装解除を強制し、トンネル、武器製造施設、残存ロケット弾を含む軍事インフラの破壊を監視するため、国際的・地域的な部隊のガザ地区への進入を認めることを求める。この最新の計画の点について、ハマスはより受け入れを渋っているように見える

残存するハマス戦闘員の扱いは、計画全体が崩壊する可能性のある難点である。

そして、ハマスに責任を帰せられる計画拒否は、間違いなくイスラエル極右勢力に歓迎されるだろう。ベンヤミン・ネタニヤフ首相の連立政権内の強硬派は代替案を掲げている:ガザを完全占領し、パレスチナ人を追放し、ガザにイスラエル入植地を再建するというものだ。

おそらくハマスにとって最も現実的な選択肢は、政治政党へ変貌することだろう。しかしそのためには、組織構造だけでなくイデオロギーの改革も必要となる。

政治的勢いは再び二国家解決案へと向かっている。フランスとサウジアラビアは最近、国連でこの目的に向けた新たな推進を主導し、多くの西側諸国が初めてパレスチナ国家を承認した。ハマスは長年抵抗してきた二国家解決案を最終的に受け入れる圧力を感じるかもしれない。一方、トランプの計画はパレスチナ人の国家への「願望」に言及する曖昧な主張に留まっている。

純粋な政党への変貌がハマスに課せられた運命であるならば、同組織は手際よく迅速に戦略を練る必要がある。パレスチナ解放機構(PLO)は1982年のベイルート撤退後、この過程を経て、最終的に武装抵抗よりも政治と外交を優先した。カタール、トルコ、エジプトもハマスが姿勢を穏健化するのを支援できるだろう。

ハマスの硬直したイデオロギーが依然として障壁のままだ。1987年の結成以来、ハマスは強硬なイスラム主義イデオロギーに縛られており、イスラエルの承認や世俗国家としてのパレスチナ建設といった問題で根本的な妥協を許していない。

しかし最近のシリアの事例では、長期独裁者バッシャール・アサド政権が崩壊した後、主要なイスラム主義武装組織が政治路線へ転換し、国際社会から称賛された。

ハマスがそのような変革に成功できるかどうか(そもそも試みるかどうかさえ)は、まだわからない。そして最後の難題がある:たとえハマスが最新の和平提案を受け入れたとしても、ガザ地区の他のパレスチナ武装組織が受け入れず、プロセス全体を妨害しようとする可能性があるのだ。■

本記事はThe Conversationよりクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと再掲載されています。原文はこちらをご覧ください。

Hamas has run out of options

The group's survival now rests on accepting Trump’s plan and political reform.

BY MKHAIMAR ABUSADA

VISITING SCHOLAR OF GLOBAL AFFAIRS, NORTHWESTERN UNIVERSITY

OCTOBER 6, 2025 03:00 PM ET