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2016年8月28日日曜日

★★F-22によるシリア機迎撃の内情---ステルス機特性は発揮したものの....



なるほどステルス機の特性が発揮されたようですが、今後あえて存在を見せて事故を回避するのであればF-22を投入する意味はあるんでしょうか。微妙です。シリア上空の状況は日本にとって関心が低い事案のようですが、危機管理の意味からも目が離せません。


Exclusive: U.S. pilots provide first account of tense Syrian jet encounter

Jim Michaels, USA TODAY3:20 p.m. EDT August 26, 2016

AP F-22 RAPTOR I GUM(Photo: Airman First Class Courtney Witt, AP)
A MILITARY BASE IN SOUTHWEST ASIA — シリア戦闘機編隊を同国北部で先週迎撃した米空軍戦闘機パイロット二名によるとF-22はシリア機に気づかれることなく2,000フィートまで近て尾行したという
  1. シリア機がクルド人部隊に随行する米軍事顧問の付近に爆弾投下したことで緊迫度があがっていた。ペンタゴンはシリアに対し米軍は防衛行動を取る権限を与えられていると警告していた。シリアによる爆弾投下はなくなり、米軍も連続警戒態勢を解いていた。
  2. 「相手機は三回ループしましたが、毎回追尾していました」と38歳の米空軍少佐はUSA Todayに状況を初めて明かしてくれた。「こちらの存在はわかっていなかったようです」 保安上の理由で米軍パイロット二名の氏名は秘す。
  3. 「相手の行動は止まった」とチャールズ・コーカラン准将(第380派遣航空団司令)は語った、「こちらの狙い通りだ」 同航空団はイラク、シリアへの空爆を非公表拠点から行っている。
  4. 今回の事態はシリア国内での対イスラム国戦の複雑な状況を物語っており、誤爆による戦局拡大の危険を示している。
  5. 「誤解が大きな心配だ」とジェフリー・ハリガン中将(中東地区米航空作戦司令官)も認める。「双方で発生しかねない」
  6. 連合軍パイロットはシリア機、ロシア機から距離を取るのが通例だが、空域は混雑度を増している。
  7. 米主導の連合軍はシリア政府・ロシア側とは交戦せず、ペンタゴンはロシアと情報交換で空中事故を回避する合意を取り付けたものの双方は協力的ではない。
  8. 「わが方人員には注意を最高レベルで求めている。ロシア、シリアとは交戦状態になく、ロシア機シリア機の撃墜は想定外」(コーカラン准将)
  9. ロシアと米国は一部空域でロシア、シリアの機体は飛行禁止とする合意ができており、先週シリアが空爆したハサカはその対象。複雑な条件でパイロットはシリア上空の混雑した空域で飛行を迫られている。
  10. 「このシナリオでエスカレーションを避ける方策を考えており、作戦遂行中の安全確保がいつも頭にある」と二人目のパイロットも語っている。これは三十歳の大尉だ。
  11. 制限区域をシリアが空爆したことを受け米国は常時戦闘飛行をハサカ上空で実施し、シリアが米軍に攻撃を加えた際に対応する準備をパイロットに取らせた。
  12. 今回の事件は午后に入りシリア機がハサカ周辺の空域に侵入したと判明したのが出発点だ。哨戒中のF-22二機編隊が急行した。
  13. 大尉によれば共通無線周波数で接近するシリア機に識別と飛行意図を求めたが反応はなかった。
  14. 米司令部もロシア側に電話で情報開示を求めたが、ロシアはシリア側の行動を把握していなかった。
  15. 情報を得る唯一の手段は米機にSu-24フェンサーだと判別したシリア機まで接近させて武装・爆弾投下の有無を直接確認することだった。通常ならパイロットは事故防止の為ロシア機シリア機から一定の距離を取るよう求められる。
  16. 許可が下りた。F-22一機が監視する中、もう一機はシリア機後方から観察した。15秒ほど経過しシリア編隊は同地点を離れたが、尾行に気づいていないのは明白だった。
  17. 直後に別のリシア機が空域に入り米パイロット二名は同じ動作を繰り返す。シリア両機は兵装を搭載していなかったようだと両パイロットは述べた。
  18. 在カタールの司令部から中東の航空作戦を指揮するジェイ・シルヴェリア少将によればシリア機が連合軍に脅威を与える兆候を示せば撃墜命令を下す体制だったという。「地上部隊から攻撃を受けているとの一報があれば撃墜の必要があった」と同少将は述べた。「優秀な装備で命令遂行には最高の状態にあった」
  19. だが地上部隊報告や米軍パイロットからの連絡からシリア機の爆弾投下の事実はなく、空域を移動飛行中だと判明した。同地区にシリア航空基地があるが同地区上空では飛行させないのが普通だ。
  20. F-22はステルス機でパイロットは敵による視認を避ける訓練を受けている。今回の事件を受けてシリア側に意図を伝えるため今後は機体をあえて視認させる検討に入った。■


2016年8月16日火曜日

シリア内戦>F-22がSu-24を迎撃し、米特殊部隊を守る


US Dispatches F-22 Stealth Fighters to Intercept Syrian Aircraft

POSTED BY: BRENDAN MCGARRY AUGUST 20, 2016

An F-22 Raptor from the 43rd Fighter Squadron takes off in Savannah, Ga., during Sentry Savannah 16-3, Aug. 2, 2016. The F-22 is a fifth-generation, single-seat, twin-engine, all-weather stealth tactical fighter aircraft developed for the U.S. Air Force. (Photo by Solomon Cook/U.S. Air Force)第43戦闘機中隊のF-22ラプターがジョージア州サヴァナから離陸しセントリーサヴァナ16-3演習に参加する。2016年8月2日撮影。 (Photo by Solomon Cook/U.S. Air Force)


米軍が8月19日F-22ラプタ-ステルス戦闘機の二機編隊を発進させシリア空軍のSu-24フェンサーを迎撃させていたことがわかった。シリア機はハサカ近郊を飛行していた。匿名を条件のペンタゴン関係者が明らかにした。
  1. 米機からシリア機に交信を試みたが反応がなかったとCNNのバーバラ・スターが伝えている。
  2. ラプター編隊はフェンサー編隊を追跡し、該当地区で展開中の米特殊部隊を守ったが、武器は使用していないとロサンジェルス・タイムズのW・J・ヘニガンが伝えている。
  3. 前日にシリアSu-24編隊がクルド人部隊を空爆しており、米軍も戦闘機を緊急発進させている。空爆地点のそばには米特殊部隊がいたとMilitary.comのリチャード・シスクが報道している。
  4. シリア空軍機が20日にも問題のシリア北東部ハサケ市錦江の上空に現れ、米軍事顧問団への危害が発生しないよう警告を出したとAFPが報道している。
【危険なほど混みあうシリア上空と米ロの思惑】
  1. 今回の事件で改めてシリアの領空と戦場が混雑していることが明らかになった。五年に及ぶ内戦でシリア国内は大きく傷ついており、米軍、ロシア軍がそれぞれの思惑で空爆を続けている。米側はシリア反乱勢力と組んでイスラム国(ISIS)と連携した勢力を狙い、バシャル・アル-アサド大統領の放逐を狙うが、ロシアは同政権を支持している。
【F-22の投入事例】
  1. F-22はロシア空軍ツポレフTu-95爆撃機編隊をアラスカ、カリフォーニア沖合でそれぞれ2015年に迎撃出撃したことがあり、2013年には米軍MQ-1プレデター無人機が国際空域を飛行中に迎撃しようとしたイランのF-4ファントムに対して出撃したこともある。■

2016年7月17日日曜日

歴史に残る機体⑥ F-111 カダフィをあと一歩で殺害できた骨太爆撃機


ずっとなぜF-111はFなのか疑問に思っていましたが、この記事で疑問が解けました。F-117も同様の理由なのでしょうかね。ずっと期待され甘やかされながら活躍できず厄介者になりそうだったのが人生の後半でやっと真価を発揮したようなものでしょうか。でも人件費が高いので退職においやられた、そんな人生もありそうですね。

War Is Boring
ドロップアンドバーン」をするオーストラリアのF-1112008年 Allan Henderson/Flickr photo

The F-111 Was a Muscular Bomber That Nearly Killed Gaddafi

Aardvarks flew combat missions in Vietnam, Libya and Iraq

by SEBASTIEN ROBLIN
  1. 低空攻撃機ジェネラル・ダイナミクスF-111アードヴァーク(ツチブタ)は別の仕様を想定していた空軍と海軍に当時の国防長官が無理やり押し付けて誕生した機体だ。
  2. 開発中はトラブル続きだったが、高性能ハイテク夜間爆撃機として数十年に渡リ供用され、すっきり優雅な姿が特徴的だった。
  3. 米空軍は1960年代初頭には高高度飛行する爆撃機は低速でSA-2などレーダー誘導式地対空ミサイルから逃げられないと気づく。そこで小型長距離超音速爆撃機で地表すれすれを飛びレーダー探知を逃れる新構想が生まれた。
  4. 米海軍も空母防衛のため高速長距離迎撃機に空対空ミサイルでソ連爆撃機を遠方で排除させる構想の検討に入っていた。
  5. 新任の国防長官ロバート・マクナマラは共通機材にすれば両軍の要求を満足させつつ開発費用を大幅に節約できると信じ、空軍海軍は仕様面の妥協は本意ではなかったが、結局TFX事業へ協力せざるを得なくなる。1962年ペンタゴンはジェネラル・ダイナミクスに契約を交付する。
  6. 機体は空軍が望んだ戦略爆撃機より小さいため海軍が使う「攻撃機」の略称を避け、戦闘機の「F」がついた。

革新的な設計

  1. F-111は強力かつ燃料消費が優れたTF30ターボファン(アフターバーナー付き)双発機で、機体内部に爆弾を31千ポンドと作戦半径2,500マイル分の燃料を搭載し、外部タンクをつければ1,000マイル延長できた。空虚重量は20トンという大型機で完全装備するとこの二倍となった。
  2. F-111設計陣には一つ課題があった。飛行は超高速でも離着陸は短距離にする必要があったのだ。
  3. 主翼を小さくすれば抗力が減り、速度は高くなるが揚力が小さくなり離陸速度を早くする必要から長い滑走路も必要となる。当時の超音速戦闘爆撃機F-105サンダーチーフも主翼が小さく、離陸には1マイルもの滑走が必要で運用基地が制限されていた。
  4. そこでF-111では新技術の可変翼が採用された。離陸時は主翼を広げ最大限に揚力を得て、飛行時には主翼をしまい高速を得る。以前も試行はあったが実用化はF-111が初めてになった。
  5. 搭乗員二名はコックピットポッドに隣り合わせで座る。脱出時はロケット噴射でポッドを射出し、宇宙カプセルと同じように地上へパラシュート落下させた。
  6. 鍵となった技術革新は地形追随レーダーで機体前面の地形を把握し衝突回避できる飛行経路を自動形成するものだった。これによりF-111は地上200フィートを夜間や悪天候でも安全に高速飛行でた。
  7. 暗闇を物ともせず長い機首を地上スレスレに飛行することからツチブタの愛称が生まれた。
  8. 初期型は期待通り低空をマッハ1.2で、高高度ではマッハ2.5を出しながら着陸滑走路長はわずか2,000フィートで十分だった。また戦術機で初めて米大陸からヨーロッパまで無給油で横断飛行できた。
  9. だがF-111の基本設計は空軍の要求内容を重視していた。空母搭載迎撃機モデルF-111Bの公試結果はひどい有様でマッハ1を超えるのに苦労するほどだった。多額の出費の末の妥協の挙句、海軍型はスクラップにされた。ただし一部の機構はF-14トムキャットに引き継がれている。

  FB-111s. U.S. Air Force photo

アジアへの展開

  1. 空軍のF-111戦闘デビューは幸先悪いものだった。F-111A分遣隊がヴィエトナムに展開したのは1968年でうち3機がわずか55回の出撃で墜落喪失したのは主翼の安定機構の不良のためだった。空軍はF-111全機を飛行停止とし、解決に100百万ドル支出した。
  2. 1972年にラインバッカー空襲が始まるまで実力発揮の場がなかった。北ヴィエトナムのレーダー網をかいくぐりF-111は夜間空襲で飛行場や対空陣地を粉砕し、その後に続くB-52用に防空体制を弱体化した。
  3. アードヴァークは護衛戦闘機、電子支援、空中給油機が不要で悪天候でも稼働可能だった。ヴィエトナム戦で延べ4千回ミッションをこなしたが戦闘中喪失はわずか6機と当時の全機種で最低水準だった。
  4. F-111の東南アジア最後の実戦はカンボジアでクメール・ルージュがコンテナ船S.S.マヤゲスを拿捕した1975年5月だった。アードヴァーク2機が訓練飛行中で同船を発見し、その後1機のF-111が同船に随行していたクメール・ルージュ哨戒艇を撃沈した。
リビア空爆の準備をするF-111F,1986年4月 U.S. Air Force photo

派生型各種

  1. F-111は各型あわせ563機が製造され、A型に続くD型、E型は電子装備が充実し、エンジンの空気取り入れ口の変更と、推力がを増加した。
  2. FB-111は戦略爆撃機でエンジン性能を引き上げ全長を2フィート延長し燃料を追加搭載した75機が戦略航空軍団で稼働した
  3. F-111Cはオーストラリア専用に米国が売却したもので、FB-111とF-111Eの特徴を併せ持っていた。
  4. 決定版がF-111Fで推力35パーセント増のエンジン、性能向上型レーダー、ペイヴトラック赤外線目標補足ポッドで地上目標を捉え、精密誘導弾薬で攻撃可能だった。
  5. 1970年代中頃から42機のF-111Aが無武装のEF-111Aレイヴン(大カラス)電子ジャミング機に15億ドルで改装された。EF-111の中核装備はALQ-99Eジャミングポッドでレーダーを放射線で妨害し、味方機の探知を不可能にした。
  6. ジャマーの電流は機内に漏れて搭乗員の毛髪が立つほどでだった。このためレイヴンは「スパークヴァーク」の異名がついた。EF-111は尾翼上の受信用ポッドで識別が可能だ。
F-111F がマーク82爆弾を訓練投下している。1986年、 U.S. Air Force photo

エルドラドキャニオン急襲作戦

  1. F-111が世界史に再び現れたのは1986年でリビア工作員がベルリンのラ・ベルナイトクラブを爆破し米軍人2名が命を落とした事件の直後だ。
  2. レーガン大統領はリビアの独裁者ムアマール・カダフィの住居をトリポリ郊外で攻撃する命令を下した。作戦名はエルドラドキャニオン作戦とされ、国家元首を空爆で初めて暗殺する先駆けとなった。
  3. トリポリはSAMの25陣地で守られていた。F-111F一個飛行隊18機が攻撃の中心となり、4機のEF-111レイヴンが防空レーダーを妨害した。別に海軍がベンガジ付近を空襲した。
  4. ヨーロッパ各国が上空通過を拒否したためアードヴァーク各機は英国を離陸後、スペインへ迂回しフライトは13時間に及び空中給油を往復で6回行った。戦闘機の最長ミッション記録となった。
  5. 空爆は大きな効果を上げとはいうものの、F-111の作戦効果と作戦内容で不満足さが残った。F-111は1機を喪失。おそらくSAMによるもので乗員は死亡した。4機はエイビオニクス故障で兵装を投下できず、1機はエンジンのオーバーヒートでスペインに緊急着陸を迫られた。7機は目標を外し、爆弾数発が一般人居住地に落下し、危うくフランス大使館に命中するところだった。
  6. カダフィは空襲の直前にイタリア首相から警報を受け辛くも逃げ延びた。子ども8名と妻が負傷し、養子の幼児ハンナが死んだとされる。(ハンナの出生については謎があり、実際に生き残ったとも言われる)
  7. カダフィは衝撃を受けたものの、その後もテロ攻撃を継続し、中でもパンナム73便のハイジャック、スコットランド、ロッカビー上空でのパンナム103便爆破はよく知られている。
砂漠の盾作戦でのF-111F U.S. Air Force photo

イラク

  1. 1991年1月17日、砂漠の嵐作戦開幕の夜にアードヴァークは砂漠を低高度で縫うように飛び、イラクの防空、主要軍事施設をレーザー誘導爆弾で攻撃した。一方、EF-111レイヴンは連合軍部隊に随行しイラク国内深くに侵入し、イラク防空レーダーをジャマーで妨害した。
  2. 1991年のイラク戦に投入されたのはF-111Fが66機とF-111Eの18機でミッションは5千回にのぼった。
  3. 風説と違い、開戦初日のイラク空軍は無力ではない。F-111の2機がMiG-23の赤外線誘導式R-23ミサイルにより被弾した。MiG-29も別のアードヴァークをR-60ミサイルで被弾させている。頑丈なアードヴァークの面目躍如でこの3機は基地に帰還している。
  4. 2月にはEF-111でそこまで幸運でない事例が出た。敵機を探知後、回避行動中で地上に激突し、乗員全員が死亡した。
  5. ただしジェイムズ・デントンの操縦するレイヴンは尋常でない勝利を手にした。砂漠の嵐作戦初日にデントンのEF-111は早朝の暗さの中を高度400フィートで飛行し、F-15E戦闘爆撃機編隊と上空護衛するF-15C戦闘機編隊を先導していた。
  6. 飛行場H3を通過するとイラクのミラージュF1戦闘機一機が後方から迫ってきた。デントンは鋭い左旋回のあと右に方向を変えチャフを放出し、熱追尾ミサイルを回避した。イラクのパイロットはレイヴンの回避行動に対応する中で空間識を失い、地上へ激突した。無武装のレイヴンが空中戦勝利をあげ、F-111「戦闘機」となった。
  7. イラク防空網が弱体化すると、アードヴァークは地上攻撃に中心を移した。F-111Fのペイヴタック装備は「タンク・プリンク」すなわち赤外センサーによる装甲車両識別で効果を発揮し、レーザー誘導爆弾を頭上から投下した。F-111はイラク車両1,500両を識別した。
  8. その他の標的にサダム・フセインが妨害工作をした油田の連接管がありペルシア湾を汚染した原油流入を止めた。
  9. 砂漠の嵐作戦はアードヴァークの最後の現役活躍の場となり、F-111は1998年に米空軍から退役した。アードヴァークは効果は高いが保守点検コストが高く、空軍は短距離攻撃ミッションはF-15Eストライクイーグルで、長距離攻撃任務はB-1爆撃機が引き継げると判断した。
  10. 空軍にEF-111の交代機種がなく、ジャミング任務は海軍海兵隊のEA-6BプラウラーとEA-18Gグラウラーが今でも実施している。
オーストラリのゴールドコーストで「ダンプアンドバーン」をするF-1112008年.Simon Morris/Flickr photo

オーストラリア

  1. オーストラリアのF-111は2010年まで供用され、同国では愛情をこめ「ピッグ」と呼ばれた。
  2. 1973年受領のF-111C24機に加えFB-111を15機、F-111A4機をオーストラリアは運用した。戦闘投入は一回もなかったが、オーストラリアはF-111で兵力投射能力を確立し外交上の強みとなった。
  3. ピッグはオーストラリアの航空ショーの目玉で燃料を放出したところにアフターバーナーで点火する「ダンプアンドバーン」は有名だった。同国は対艦ミサイル運用の改修のほか、4機を偵察用に改造した。
  4. ただし運航コストが高く、F-18Fスーパーホーネット24機に交代させた。
  5. こうしてF-111は全機が退役したが、類似機種がまだ使われている。ロシアのスホイSu-24フェンサーはF-111の直後に企画され、驚くほど外観や任務が似ており、可変翼付きでもある。
  6. アードヴァークの航続力、速力、兵装搭載量には及ばないが、Su-24の生産数は三倍で、今日でも300機近くが稼働中だ。
  7. トルコ空軍のF-16が2015年にシリア上空で撃墜した機体もロシア空軍のSu-24で外交面で大事件になった。■

2015年11月25日水曜日

★Su-24撃墜事件は今後どんな影響を与えるのか



今回の撃墜はトルコとしては忍耐を試された格好ですが、NATO軍という文脈で見ないと事実が見えなくなりますね。禍を持って福となるのか、それともロシアが突っぱねるのか、この数日が注目でしょう。陸上選手のドーピング問題でもロシアは当初西側の勝手な理屈だと反発していましたし、エジプトでのロシア旅客機墜落事件でも西側による爆弾テロ説を露骨に退けていましたが、結果は皆さんご承知のとおりです。

Analysis: Implications of Turkish Shoot Down of Russian Warplane

By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
November 24, 2015 2:19 PM • Updated: November 24, 2015 3:08 PM
A Russian Su-24 Fencer shortly after its was shot down by a Turkish F-16 on Nov. 24, 2015.
トルコ空軍により撃墜されたロシアのSu-24フェンサー。Nov. 24, 2015.


シリア国内の戦闘が24日火曜日新しい曲面に入った。トルコ空軍ロッキード・マーティンF-16 がロシア空軍スホイSu-24フェンサー戦闘爆撃機一機を撃墜したとの報道が入ったためだ。フェンサーは搭載能力が高く、友邦関係にあるバシャ・アルーアサド政権の支援にロシア軍は好んで投入している。同機は撃墜前にトルコ国境付近の目標を爆撃していたと伝えられている。

  1. 少なくとも3つの点は確実だ。問題のフェンサーは少なくとも10回にわたりトルコ航空管制官から同国空域を退去するよう警告を受けている。トルコ側はばレーダー画面を公表し、同機がトルコ領空に侵入していた証拠を見せる用意があるという。またロシア機はシリア国内のラタキア地方の北東部トルクメン居住地を攻撃していた。
  2. ロシアとトルコは緊張を高めていた。先月はトルコ空軍F-16がロシアのMiG-29戦闘機をインターセプトしている。同機はトルコ領空に侵入していた。また先週もBBC報道によればトルコ外務省がロシア大使を呼び、ロシア空軍が直ちに「無害なトルクメン村落」の爆撃を中止しないと「深刻な結果」を招くと警告している。これは今回の墜落地点付近のバイル・ブサク Bayir Bucak にある村落を指す。トルコ軍はロシア機撃墜を受け厳戒態勢に入っている。
  3. ロシア国防相セルゲイ・ショーグは当初は同機は「地上砲火により」撃墜されたと発言し、トルコ空軍F-16の存在を言及しなかった。ただし発生後数時間してからの発言はトルコが領空進入への非難をそらす目的があったようだ。
A Russian Sukhoi SU-24 Fencer.
ロシア空軍のSu-24フェンサー

  1. 外交の世界でエスカレーションが続いている。ロシア機が地上に激突する映像を見たロシア大統領ウラジミール・プーチンはトルコを「テロリスト共犯者」と呼んだ。ロシア外相セルゲイ・ラブロフは予定されていたトルコ訪問を取りやめた。
  2. 今回の事件はパリ襲撃事件を受けシリア航空作戦が激化する中で発生した。米、ロ、各国による空爆にフランス原子力空母シャルル・ドゴールが加わり、地中海東部から作戦を開始した。これでシリア・イラクを空爆中の国が更に増えた。ロシアが反アサド陣営を空爆目標に加えていること(ISISは入っていない)ことからNATOは強く反発している。また数週間前から今回のような事故の発生は必然と言われてきた。
  3. 軍用機が誘導ミサイルで撃墜される事例はこれまでまれだったが、NATOとセルビア軍の間で発生した旧ユーゴスラビア国内の紛争事件がある。セルビア軍の背後にはロシアの支援があり、NATO軍は数機を喪失している。英空軍ハリヤー一機、F-16数機、ロッキード・マーティンF-117ナイトホークも一機撃墜されている。
An undated photo of a Turkish Air Force F-16D.
トルコ空軍のF-16D

  1. 今日のNATO軍とロシアが支援するシリア国内勢力の目標が衝突しているのはバルカン半島の情勢と類似している。またチェック=バランスが働いて事態発生後も自制している点も似ている。望むらくは今後も同様な自制が働くことを願いたい。
  2. だがシリアではロシア軍がNATO軍と同じ地域で直接作戦行動している点は今までの歴史では発生していない事態だ。今回のSu-24はNATO軍が初めて公然と撃墜した初のロシア機であることにも注目すべきだ。
  3. 現時点でトルコ報道によるとロシア乗員は脱出に成功し生存しており、シリア国内のトルクメン系反アサド勢力が身柄を確保したという。トルコは乗員解放を交渉中だという。もし今回の事件がきっかけとなりNATO軍とロシア軍の間の調整、協調に繋がれば、ダーシュ(ISIS)への対抗作戦で最善の結果が生まれるのだが。■