2019年8月28日水曜日

日本向けSM-3ブロックIIAミサイル売却案件を米国防安全保障協力庁が公表

Japan – Standard Missile-3 (SM-3) Block IIA Missiles


Media/Public Contact: 
pm-cpa@state.gov

国軍事装備販売として成立可能性のある日本政府向け73本上限のスタンダードミサイル-3(SM-3)ブロックIIA総額32.95億ドルの案件を国務省が承認する決定をした。国防安全保障協力庁が8月27日に本件を議会に通知する。
73本上限でスタンダードミサイル(SM-3)ブロックIIAミサイル購入の要望が日本政府から出ている。売却はMK29キャニスターを含み、梱包・取り扱い・貯蔵・輸送(PHS&T)キットも合わせて導入し、特殊任務空輸ミッション10回の費用も負担する。米政府と契約企業が技術支援・兵站業務を提供する。
今回提案の案件は英国の外交政策並びに国家安全保障に資するもので主要同盟国の安全保障状況を引き上げるクカあり、アジア太平洋地区の政治経済面での安定発展に資する。日本の防衛力整備は米国の国益上で死活的な意味を有する。
今回の提案案件が実現すれば日本の弾道ミサイル防衛能力が向上し、日本本土に加え日本駐留米軍将兵の防衛に役立つ。日本には追加ミサイルの運用は技術的に何ら支障はない。
今回の装備品販売で地域内の軍事力均衡が崩れることはない。
SM-3ブロックIIAの主契約企業はレイセオン・ミサイルシステムズ(アリゾナ州ツーソン)である。MK29キャニスターおよびPHS&Tの主契約企業はBAEシステムズ(ミネソタ州ミネアポリス)で、今回の売却提案で裏契約はない。
売却の実施には米政府および主契約企業代表者による技術審査、支援、実施状況視察のための来日がおよそ5年に渡り毎年実施される。
今回の売却で米国防の即応体制に悪影響は発生しない。

ここで示した売却の可能性のある案件公示は芳の定めにより必要とされたものだが売却が成立しているわけではない。■

2019年8月25日日曜日

いずも、かが艦上での米海兵隊F-35B先行運用案は本当だった

Marines Considering Flying U.S. F-35Bs Off of Japan’s Largest Warships 米海兵隊F-35Bの日本最大級の艦船での運用を検討中

August 23, 2019 10:51 AM

本が保有する最大級の艦船で米海兵隊のF-35B戦闘機の運用を日本側から要請されたと米国防関係者が金曜日USNI Newsに確認した。
海兵隊はがSTOVL型の同機をJSいずも(DDH-183)JSかが(DDH-184)という排水量24千トンの大型デッキ型揚陸艦で運用する案を検討する。
両艦とも当初は対潜ヘリコプターを運用し、人道救難や災害援助に投入する構想だったが、昨年12月に安倍晋三首相がF-35運用対応の改装を了承するとともにF-35Bの42機導入を決めた。
今年3月に当時の海兵隊総監ロバート・ネラー大将に海兵隊機材のF-35Bをいずも、かがで運用できないか日本政府が検討を要請していたと朝日新聞が今週記事を出した。
要請を受け、海兵隊は自衛隊向けF-35Bの配備前に米軍F-35を両艦で運用するべく技術検討チームを編成し作業を開始した。
いずも、かががSTOVL運用も考慮して建造しているとしても、米側が自軍のF-35を両艦で運用するとなると別個に決定すべき事項がある。
例として米ワスプ級大型強襲揚陸艦ではAV-8BハリヤーからF-35Bへの機種切替時に飛行甲板の強化策および特に耐熱処理が必要となった。海兵隊はすでにF-35の前方配備部隊を日本に展開しており、海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA)121「グリーンナイツ」がワスプ揚陸即応集団で第31海兵遠征部隊の一部となっている。
海兵隊は類似した対応を英海軍で行っており、F-35B一個飛行隊を新造空母HMSクィーン・エリザベス(R08)に搭載している。
日本の観点では今回の動きは中国の海軍力の増強を睨んだものだ。
「中国の海軍力は着実に成長してきており、今回の展開は日米同盟の強化で大きな意味がある。日本がF-35Bを調達することで海上航空戦力が拡張され日米両国の軍事部門の相互運用能力が高くなる」と米海軍協会編 Combat Fleetsの著者エリック・ワーサイムがUSNI Newsに語ってくれた。
中国はこれに対し両艦に戦闘機を搭載する日本の動きを批判しており、実現すれば攻撃手段となり戦後日本の平和憲法に違反するとしている。
前国家情報局長で太平洋軍司令官を務めたデニス・ブレア海軍大将はF-35をいずも、かがに搭載するのは防衛手段だと持論を展開している。

「巡航ミサイルを搭載した敵機から海自艦艇を守る課題のため、いずも級をSTOVL型F-35B運用対応させるのが重要となる。対艦ミサイル、迎撃ミサイルの有効射程は平均でおよそ100マイルのためだ」と退役大佐クリストファー・ロードマンが海軍協会紀要に寄稿している。「短距離対艦ミサイルをF-35Bに搭載すれば、小型舟艇や海上民兵を大量に投入する戦術へ有効な対応策となる。島しょ奪回シナリオではF-35Bは局地制空権の確保で重要な機能を果たし、日本が発足させた揚陸連隊による奪回作戦の鍵となる」■

2019年8月19日月曜日

米海軍のレイルガン開発は意外に順調に進んでいるようだ:艦載実証テストの目処がついた様子


The Navy's New Railgun Is A Step Closer to Sinking Your 'Battleship'

Or just a dream? 
August 17, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: RailgunMilitaryTechnologyWorldU.S. NavyNavy

海軍の電磁レイルガンは水上艦艇での実証を前に「事実上の試運転」を実施中と関係者が述べており、一時は行き詰まりといわれていたレイルガンだが実用化のめどが見えてきたようだ。
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海軍水上戦センターがホワイトサンズミサイル試射場に分遣隊をおいており、艦載用戦術実証装備として5億ドルを投じたスーパーガンの政策が進行中だ。

「レイルガン設置は今年早々に始まっており、ガン本体、出力制御装置、画像表示装置や各機能の統合を進めている」と現地責任者ジョン・ウィンステッドが発表。「テストの目的は新規設置の砲台と電源コンテナーや制御装置の完全性能の試運転にある」


公式発表ずみのテストは5月15日が唯一の例で4発を発射し、「実証とデータ診断を完全に」行ったと海軍は発表している。「テストは成功をおさめ今後の搭載および実証に向けテスト条件を確認できた」

海軍が「試運転」と静かに発表したのは海軍研究本部がレイルガンを艦艇搭載に向け前進する中でのことで、海軍技術陣が艦艇搭載の課題とともに連続発射で必要な「パルス出力アーキテクチャ」も解決したことを示している。

5月に海軍が発表した環境インパクト評価では「運動エナジー兵器(レイルガンのこと)は水上艦艇でテストし、爆発性、非爆発性双方の発射体を空中または筋状目標に向け発射」を米北西部太平洋上で数ヶ月のうちに実施するとあった。

「システム変更は2分間で完了し、1秒未満で発射できる」と同評価は述べている。「システムはシールドを施し艦載装備に影響を与えない。装備が放出する電磁エナジーは低く抑えかつ水上艦の外に出ない」

海軍が搭載および電源システムを重要視しているのは電磁レイルガン実用化でよい兆候と言える。Task & Purpose が2017年12月に掲載した記事ではレイルガン推進派は予算重点の変化で戦術用途向け実証機の完成が遅れると見ていた。ペンタゴンが超高速発射体(HVP)を重視しはじめたためで、既存の艦砲で発射でき効果が大きいと見られていた。

最近では2019年2月に海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将はレイルガンを「今回のプロジェクトから多くを学んだ。電磁エナジーを手段とする技術の実現は課題だった」とし、「まだ開発は続く。艦艇への搭載があるし、その後も開発テストがある。兵装としては画期的性能となりぜひ実用化したい」


レイルガン推進派は予算優先順位問題をとりあえず棚上げしていい。海軍の2020年度予算要求では昨年より7.6百万ドルを上積みし開発を継続することになっている。また戦術実証装置の計画も実体化しつつあるようで、スーパーガンは懐疑派を一掃する効果を発揮するだろう。■

2019年8月18日日曜日

ヘッドラインニューズ8月18日

台湾の国防予算が史上最高レベルに

2020年度国防予算が承認された。TWD4,113億ドル(131億ドル)は前年比5.2%増となった。GDP比率では2.26パーセント相当となる。予算案は立法院を通過する必要があるが、与党民進党が多数となっており、成立は確実と見られる。

コメント:来年の総統選挙を控え、国防力増強をしゃにむに進める蔡英文背政権には時間がなくなりつつあるという切迫感があるのでしょう。北京は例によってノイズを出していますが、トランプ政権は全く気にしておらず、中国は苛ついているはず。早く「一つの中国」原則を破棄し台湾を独立国として認めるといいのですが。



A-10主翼交換作業が完了

ヒルAFB(ユタ州)で162機、オサン基地(韓国)でも11機の主翼が新品に交換された。主翼交換により1万飛行時間の供用が可能となった。機齢40年超のA-10では一部退役機材からも一部部品を流用した。

コメント:それでも空軍は同機完全退役を狙っているようです。



ハンビー後継車として海兵隊のJLTV調達が急増

共用軽量戦術車両(JLTV)の発注を15千両と当初の倍とする米海兵隊はハンビーの更新を進める。陸軍との共同開発によるJLTVは防御力が不足するハンビーの欠点を克服する。今後10年で現行ハンビーの6割と交代する。


米第二艦隊が正式に発足

担当区域を米東海岸から北極までとする第二艦隊はロシアの動きを睨んだもので、初期作戦能力を獲得した。北極海の氷の減少やバルト海情勢の進展で第二艦隊への期待が高まっている。


謎の爆発事故の治療にあたった医師に放射能の危険は伝えられていなかった

Moscow Timesによれば、白海沿岸ニョノクサで発生した爆発事故に対応した医師には患者の放射能障害の可能性が教えられず、FSB(連邦保安局)により機密保持誓約書へのサインが求められたという。またFSBにより病院内の記録は全部抹消された。

コメント:ロシア特有の情報管理、情報操作の匂いがします



トランプ大統領「グリーンランドを購入したい」

デンマーク自治領のグリーンランドにはチューレに空軍基地があるが年間の大半は氷結している。同基地は米国へのミサイル攻撃の早期警戒拠点となっている。ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。

コメント:大統領の真意がわかりません。

2019年8月17日土曜日

中国がロシアからSu-35完成機の輸入を続ける理由について


Why Does a Superpower Like China Need Russia's Su-35 Fighter Jet?

Simple. 
August 11, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35Su-35MilitaryTechnologyWorld

性能ステルス戦闘機を開発中と自慢する中国にロシアからの軍用機調達が必要と言うのはどういうわけか。
モスクワからSu-35戦闘機の追加販売申し出があり、中国メディアは北京がこれを了承する可能性があると報じている。
中国はSu-35を24機導入済みだ。冷戦時のSu-27フランカーを性能改修した同機の販売規模は2015年当時で25億ドル相当とTASS通信が伝えていた。「ロシア製新規兵器、軍事装備品の販売としてSu-35の追加販売を提示している」とロシアの軍事装備品輸出組織が同通信に語っていた。
その二日後に中国の軍事TVチャンネルから旧型機更新のためSu-35追加購入に向かうと伝えた。中国には軍用機3千機近くと米空軍に匹敵する機数があるが、うち1,700機が戦闘機だ。だが大半は冷戦時の老朽機材でロシアのMiG-21をコピーした機材も数百機含まれる。このため中国が第5世代機のJ-20を配備しても人民解放軍空軍には旧型機多数の運用で課題が残る。
国家統制を受ける環球時報も中国軍事筋の話としてSu-35導入には別の理由があると伝えている。それによればSu-35追加購入は旧型機の代替用ではない。代替用機材は国産機になるはずというのだ。
「Su-35を購入しても中国には同機の技術面から学ぶ側面は多くない」と同筋は述べる。購入は中露の関係強化のため政治経済的な意味があるという。つまり中国の購入でロシア航空工業が潤うというのだ。
この指摘は的を得ている。各国の空軍は第二次大戦から冷戦にかけての大量機材運用から少数ながら高性能かつ高価な軍用機の整備に方向を切り替えている。もし中国がSu-35を24機購入した際の価格が25億ドルならJ-7やJ-8数百機をそのまま買い換えれば財政的に破滅してしまうし、数の上で過剰調達となる。だが関心を呼ぶのはSu-35調達がロシア航空産業界を支えるとの論調であり、ロシアは経済は不振だが軍事研究・生産能力には依然高いものがある国だ。
それでも中国が経済力の高まりと軍事力の増強を誇示していることからまたステルス戦闘機含む高性能装備品を開発する力があることから、中国が軍用機、ジェットエンジン、対空ミサイル他を輸入する必要を感じていることに驚きを感じ得ない。中国のGDPはロシアの9倍近くになっている。
現時点では中国がロシア戦闘機を輸入することは理屈に合う。両国はかつて国境問題で戦っており、共産ブロックの覇者をめぐっても対立したものの現在は友好関係を享受している。だが中国の野心を考えると、一部には中国は自国調達に向かうはずと指摘する見方もある。■


Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook

台湾向けF-16新造機売却を歓迎する

USA approvals sale of F-16s to Taiwan F-16の台湾向け売却を米国が承認



16 AUGUST, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES
ランプ政権はロッキード・マーティンF-16V新造機の台湾向け売却を承認した。長く検討されてきた案件だが台湾を自国統治下に復帰させようとする中国とは関係悪化につながりそうだ。.

USA approvals sale of F-16s to Taiwan F-16の台湾向け売却を米国が承認



16 AUGUST, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES
ランプ政権はロッキード・マーティンF-16V新造機の台湾向け売却を

USA approvals sale of F-16s to Taiwan F-16の台湾向け売却を米国が承認



16 AUGUST, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES

USA approvals sale of F-16s to Taiwan F-16の台湾向け売却を米国が承認
16 AUGUST, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: GARRETT REIM
 LOS ANGELES
ランプ政権はロッキード・マーティンF-16V新造機の台湾向け売却を承認した。長く検討されてきた案件だが台湾を自国統治下に復帰させようとする中国とは関係悪化につながりそうだ。
報道では66機で総額80億ドルと匿名筋の発言を引用している。下院外交委員会委員長エリオット・エンゲル(民主党)と有力委員マイケル・マッコール(共和党)が共同声明を発出し売却に賛成している。
「F-16の台湾向け売却はインド太平洋内の安全保障および民主体制への米国の肩入れで強いメッセージとなる」と共同声明は表明。「下院外交委員会の中心メンバーとして我らは政権がこの売却案件を進めていることを嬉しく思い、本件は超党派、行政立法両府の支援を得られると確信している」
Asset Image
Dutch F-16
Anno Gravemaker
案件は未公表のままだが報道ではマイク・ポンペイオ国務長官の承認を受けて米議会に事前通告されたとある。両党所属の下院外交委員会の有力議員の共同声明から売却へ党派を超えた支持が広がっていることがわかる。
「(中華人民共和国が)域内で軍事力を増強している中、こちらは世界各地の友邦国の支援を出来る限り進めなければならない。売却は台湾総統蔡英文とニューヨークで先月会見した後のことで、深く長く続く台湾との協力関係を強調する意義がある」と両議員は述べている。
F-16売却が承認されても実際に成立するとは限らない。機体の最終仕様が決まってから台湾政府が署名して初めて成立する。■

コメント  香港の状況を見ると中国は次に台湾を狙い、圧力をかけるのは必至と思われます。台湾もそれを察し、史上最高額の国防予算を計上している他、新装備の導入を進めています。F-16新型機の導入はオバマ前政権が棚上げし先送りしてきた経緯があり、台湾としては今回の動きを歓迎しているはずです。日本としても香港、台湾の問題は看過できるはずがなく、当然そのあとは沖縄へと中華思想の攻撃が予想できるからです。

2019年8月13日火曜日

8月8日謎の爆発事故はやはり原子力巡航ミサイル「ブレヴェストニーク」関連と考える理由

先にコメントを。先日の記事に対して読者の方からInterfaxから別の説明が出ている、調べずに(ロシアを)叩くのは止めてもらいたいとのご意見がでていますが(この方はロシア関係者?)、①ここのブログオーナーはロシアを信用していない ②それはチェルノブイリ事故や潜水艦事故等々でのロシアによる情報操作のせいでもあるのでInterfaxがいかにロシア政府から独立していようとこのバイアスに変わりはない ③本ブログは個人のものであり、記事の選択、論調などはいっさい個人の主観でしており、「公平性」「中立性」とは無縁の世界、このためむしろロシア批判を続けたいと思います。原子力推進ミサイルの存在そのものが不快なことは当初から一貫した主張です。そこで前回の記事の続きがでていますのでご紹介することにします。不愉快な方やロシア擁護派の方はこれ以上読むのを止めてください。


Evidence Grows That Russia's Nuclear-Powered Doomsday Missile Was What Blew Up Last Week (Updated)

Seven personnel from a major nuclear weapons research laboratory died in the mysterious incident at a test site in northwestern Russia.

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 12, 2019

週ロシア北西部で発生した放射線事故をめぐり噂と観測が渦巻いている。本日は関係者が事故犠牲者の葬儀も行っている。事故では少なくとも7名の科学者他が命を奪われた。各人は国営原子力研究施設で従事し、小型原子炉も作業のひとつだった。同じ研究所が核推進巡航ミサイルのブレヴェストニーク開発にもあたっており、米情報筋ではこうした兵器のひとつ、あるいはテスト機材が今回の惨事のもととなった爆発の原因との見方を強めている。


8月11日にロシア連邦原子力センター・全ロシア実験物理学科学実験研究所(RFNC-VNIIEF)の所長バレンティン・コスチュコフが科学主任ヴャチェスラフ・ソロヴィエフ、副科学主任アレクサンドル・チェルニシェフとテレビ記者会見を行い事故について説明した。RFNC-VNIIEFはロシアの原子力トップ企業ロサトムの傘下にあり、ニョノクサのミサイル試射場で発生した事故について同社は関与を認め、8月9日に原子力「アイソトープ動力源」の作業中に爆発が発生したと述べていた。

「当社職員の死亡は原子力センターのみならずロサトムに手痛い喪失。研究者は国家英雄だ」とコスチュコフは述べ、死後に国家勲章の栄誉を与える推薦をしたとも述べた。「ロシア連邦原子力センターのエリート研究員として極めて困難な状況でテストを実施してきた」
コスチュコフはじめRFNC-VNIIEF関係者からは研究員がどんな対象に取り組んでいたのか具体的な言及はまったくなかった。「研究対象のひとつに熱あるいは電気エナジーで放射性物質を取り扱うことがあり、核分裂物質やラジオアイソトープも取り扱っている」とソロヴエフは述べ、小型原子炉も含むとした。
ソロヴエフは研究は軍事民生双方の応用可能性として地上や宇宙空間が舞台に想定していると述べた。米NASAによるキロパワープログラムを非軍事面での取り組みとして紹介した。米軍も小型原子炉を将来の戦場における電力源として検討中であることをThe War Zoneは以前詳しくお伝えしている。
VNIIIEFが小型原子炉開発に取り組んでいるのは確実だ。キロパワー事業を参考にすれば、「アイソトープ動力源」がラジオアイソトープ発電装置あるいは小型原子炉で衛星または宇宙機用のものである可能性がある。液体燃料ロケットモーターが今回の爆発事故での中心部分と伝えられる。新型発電装置または反応炉の設計が打ち上げ時のストレスに耐えられるかのテストだった可能性もある。
ただし正体がはっきりしないブレヴェストニーク開発につながる追加情報がある。米情報機関はこの観点を強めていると、ニューヨーク・タイムズは8月12日に伝えている。
ロシア大統領ウラジミール・プーチンが同兵器(NATO名称SSC-X-9スカイフォール)を2018年3月の演説で公表した。その後の報道では米情報機関筋の話としてロシアは同ミサイルのテストを少なくとも2017年から開始したがすべて失敗に終わっており、同国の北極圏にあるかつての核兵器実験場ノヴァヤ・ゼムリーヤが実施場所だという。
ブレヴェストニークの詳細はほとんどが不明だがもっとも有力な説は主推進力を原子力ラムジェットだとするものだ。この仕様だとロケットモーターに液体燃料を使い、今回の爆発事故の説明もつくが、初期飛翔時にこれを使い、一定の速度になるとラムジェットを作動させる。原子炉に空気が送られると加熱されて排気ノズルへ送られ推力となる。
この仕様だと同兵器は事実上無制限の飛翔距離を実現し、飛翔時間も数日から数週間に延長できる。別の可能性に原子力熱ロケットを推進力に使い、液体燃料を空気の代わりに使うが空気吸い込み式よりは飛翔時間が制限される。燃料搭載量に限界があるためだ。「液体燃料」の報道は液体燃料反応炉につながる。
いずれにせよRFNC-VNIIEF関係者によれば準備作業がニョノクサで進行中だった。これについて商用衛星画像を使いカリフォーニア州モンテレーのミドルベリー国際研究所も確認している。
衛星画像ではロシアがノヴァヤゼムリーヤブレヴェストニーク関連テスト施設の解体を始めているのがわかる。プーチン演説でクレムリンが公開したミサイルのテストはノヴァヤゼムリーヤで2018年7月から8月に実施されている。これと酷似した施設がその後ニョノクサに現れた。
このことからブレヴェストニーク、あるいはテスト用機材が今回の事故の原因だとわかる。原子燃料運搬船セレブリャンカが事故当日に近辺に停泊していた。原子力燃料棒や類似貨物の運送が任務の船舶だ。ブレヴェストニークの搬送にうってつけだ。またロシアは同船含む船舶数隻を2018年に動員しノヴァヤゼムリーヤ付近で水中に没した同ミサイルの捜索回収を試みている。


An August 8 image from @planetlabs showing the Serebryanka, a nuclear fuel carrier, near a missile test site in Russia, where an explosion and fire broke out earlier. The ship's presence may be related to the testing of a nuclear-powered cruise missile.
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それでもテスト内容と事故の規模で不明点が残る。一時的にせよ放射線レベルが急増したとの報道があり、モニタリング地点では核兵器テストの兆候が探知された。ロシア国防省は一貫して放射線漏れは発生していないと主張し、現地当局に対して住民の不安を煽るのを中止するよう求めている。これまでのところその他のモニタリング機関から報告は入っていない。


In response to media queries, and to meet civil society expectations on applications of #CTBTO data beyond the Treaty, we confirm an event coinciding with the 8 Aug explosion in #Nyonoksa, Russia, was detected at 4 #IMS stations (3 seismic, 1 infrasound).
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ブレヴェストニーク開発の進展は不明のままだ。兵器システムとして実用化できるかわからない。米国も同様のコンセプトを冷戦時に実験したが原子炉の小型化が進まないこと、設計上の危険性が排除できないことから計画を放棄した。最大の難関は原子炉で小型化しても遮蔽できないため兵器として目標に向かい飛翔の過程で放射性物質をまきちらすことが欠点だった。
「ロシア国防産業の官僚組織でだれかが技術に詳しくない上層部を説き伏せこれが優れた構想だと信じ込ませたのかもしれない。だが米国が以前試し、リスクと制約にすぐに気づいて中止させた経緯がある」と米国科学者連盟の原子力専門家アンキット・パンダがニューヨークタイムズに語っている。クレムリンとしてはブレヴェストニークを使える兵器として開発を開始したのかもしれないが、将来の米国との軍事力管理交渉での取引材料になる可能性がある。
今回の事故にブレヴェストニークが関与していたのか否かは別にして、クレムリンは同事業に関する批判の山に直面しそうだし、原子力関連のその他プロジェクトも同国のお粗末な安全実績から同様に批判対象となりそうだ。ロシアは原子力動力魚雷や民生用の浮かぶ原子力発電所の開発にも取り組んでおり、ともに議論の対象となっている。発電所アカデミク・ロモノソフはロシア極東部ペヴェク市に向け移動中との報道がある。
ロシア政府は今回の事故に関しごく僅かな量の情報しか明らかにしていないが、クレムリンには軍事事故に関し秘密主義の伝統があり、とくに原子力が絡むとこの傾向が強い。最近の例では2019年7月1日に発生した原子力スパイ潜水艦ロシャリク艦内で発生した火災事故で情報共有に及び腰だ。またこれと別にソ連時代に沈没した原子力潜水艦が多量の放射能を漏らしていると見られていたが、これについては深度と位置から影響は限定的なようだ。
事故の実態が明らかになるのに数十年かかるかもしれない。本当に事故だったとしても。
Update: 6:30 EST—
米大統領ドナルド・トランプは米情報機関がブレヴェストニーク核動力巡航ミサイルまたはその試作型が先週の事故と関連しているとの見方を認めているようだ。トランプはツイッターで事故について8月12日に投稿し、NATO名称「スカイフォール」を使っている。米およびNATO関係者がこの名称を公に使ったことはなく、大統領のソーシャルメディア投稿は本件で正式なブリーフィングを受けたあとのことと示している。
The United States is learning much from the failed missile explosion in Russia. We have similar, though more advanced, technology. The Russian “Skyfall” explosion has people worried about the air around the facility, and far beyond. Not good!


Trump also said that the United States possessed "similar, though more advanced, technology," though it is not clear whether or not he was referring to an active nuclear-powered missile program or the Cold War-era U.S. experiments with the concept.
Contact the author: joe@thedrive.com