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2025年5月16日金曜日

米国防総省のプログラムが原子力の新時代を切り開く(Defense One) ―小型原子炉へ警戒するのではなく、有事に既存電力供給網が敵の攻撃対象となる事態を軍が想定していることに注目すべきです

GETTY IMAGES / XIA YUAN


新しい原子力コンセプトへの投資家の需要をAIが牽引している。国防総省は、優れたアイデアに大きな後押しをする構えだ


たなAIの爆発的な普及は、原子力発電を含む、大量の電力を求める競争を促している。しかし、現実的で規制上の障害が投資家を阻害してきた。現国防総省の国防イノベーションユニットDIUは、国防総省の施設に小型の「マイクロリアクター」を建設する資格を持つ企業を新たに選定した。

 超小型原子炉は、米国のインフラに対する大規模な攻撃や、国家的災害による電力不足の際に、基地に信頼できる電力を供給する可能性がある。 しかし、この動きはまた、マイクロリアクター産業の基礎を築き、商業界に幅広い応用をもたらす可能性もある。

 先週のDIUの発表によれば、選ばれた企業にはジェネラル・アトミクス電磁気システムズ、カイロス・パワー、Xエナジーなどが含まれる。 DIUのエナジー・ポートフォリオ・ディレクター、アンドリュー・ヒギアーは、これらの企業はまだ契約には至っていないと本誌に語った。 「次のステップは、ベンダーが試作品提案依頼書と呼ばれるものを受け取ることである」。

 国防総省は何年もの間、さまざまな目的のためにマイクロリアクターに注目し、コンセプトを生み出してきた。しかし、電力を大量消費するAIツールに必要な電力需要が膨れ上がることへの懸念から、国防総省はこの分野に参入し、新たな産業の形成に貢献する機会を得た。

 「私たちが目にしているAIブームは、超小型・小型原子炉の業界全体を活性化させ、それ以上に、この技術に民間資本を投資し始めるきっかけとなりました。DIUがここに関与しなければならないと感じました。 アップル、グーグル、メタ、フェイスブックといった大企業が、原子力エナジーを利用したAIデータセンターに注目しています」。


 商業投資家はマイクロ原子力発電への関心を高めているが、この産業はまだ軌道に乗る態勢にはない。マイクロリアクターの製造方法だけでなく、莫大な需要を満たす低コストで迅速に多くのマイクロリアクターを製造する産業能力をどのように構築するかなど、大きな問題が残されたままだ。また、マイクロリアクターが機能すること、どのように機能すること、そして安全であることを示すために、企業がマイクロリアクターをテストできる場所を見つけるために、規制をどのように乗り切るかという問題もある。そこで、DIUと国防総省が大きな役割を果たすことができる、とヒギアーは言う。

 「DIUの契約能力で提供できるのは、全米の基地、そして将来的には米国外にも拡大できる可能性があるということです」。

 DIUはエナジー省、アイダホ国立研究所、オークリッジ国立研究所など、政府全体のパートナーと協力し、設計が安全で実際に機能するかを検証している。

 DIUはまた、1回限りの試作品だけでなく、陸軍や空軍のニーズを満たすため必要な数のモデルを生産できる製造プロセス全体を構築する指導を行うことができる。これは、企業が前進するために必要な商業投資を誘致する上で非常に重要である。「プロトタイプが承認されれば、彼らは政府から大規模な生産契約を得ることができます」。

 空軍と陸軍は、米国内の基地で新しい動力源を探している、と彼は言った。しかし、このプロジェクトの目標は、利用可能な電力を適度に増やすことにある。「我々は、1メガワットから10メガワットの範囲で探しています」。

 そうすることで、地元の発電所が崩壊した場合でも、少なくとも必要不可欠な活動に安定的かつ弾力的な電力供給を確保できる。 民間の電力インフラに対する中国のサイバー攻撃の増加や、紛争中の停電の可能性を当局者は警告している。

 マイクロリアクターはいずれ、エナジー供給ラインの脆弱性を減らし、海外の米軍基地に電力を供給する役割を果たすかもしれない。しかし、このプロジェクトのポイントは、「24時間365日のオペレーション、回復力のあるオペレーション、安定した電力を保証すること」だとヒギアーは言う。エナジーが途絶えた場合、海外での戦闘をコントロールできないという非常に大きな懸念があると言うのだ。

 DIUのシニア・プログラム・マネージャーであるジャック・ライアンは、「このようなチャンスは他に類を見ないが、DIUは新しいタイプでレジリエントな電力の需要を牽引する存在ではなく、「指揮官たちがエナジー・システムのギャップと潜在的な脆弱性を見抜いているからだ」と述べた。■


Pentagon program could kickstart a new era of nuclear power

AI is driving investor demand for new nuclear power concepts. The Defense Department is poised to give the best ideas a big boost.

BY PATRICK TUCKER

SCIENCE & TECHNOLOGY EDITOR

APRIL 16, 2025

https://www.defenseone.com/technology/2025/04/new-pentagon-program-could-kickstart-new-era-nuclear-power/404597/


 

2025年4月17日木曜日

米軍基地に電力を供給するマイクロ原子炉の「適格」企業8社が選定され、実現に近づく(Breaking Defense) ―『原子力アレルギー」の住民を抱える日本ではとても実現できるとは思えませんが技術は着実に進歩しています

 


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アイダホ国立研究所で試験予定のMARVELマイクロリアクターの完成予想図。 (エナジー省)


「海外への兵力投射の前に、自国内の電力確保が必要であり、このプログラムはその実現が目的」(DIU)


イクロリアクターの原子力エナジーで国土防衛施設を補強するため、国防革新ユニット(DIU)、空軍、陸軍の間で芽生えつつある取り組みが、国防総省がこの技術の実証で8社が資格を得たと判断し、前進している。

 先進的原子力発電施設(ANPI)構想の下で、DIUチームは、通常商用送電網から電力を得ている国防総省施設のエナジー源を補完し、領域横断的な活動を支援する原子力マイクロリアクターの実用化を目指している。

 エナジー省は、マイクロリアクターについて、1〜20メガワットの電力を供給する一方で、輸送可能な大きさ(輸送用コンテナに収まるようなもの)と説明している。ANPIの取り組みは、「固定式オンサイト・マイクロリアクター原子力発電システム」によって、軍事基地に強靭なエナジー・グリッドを構築することを目的としている。 DIUのリリースによれば、このプログラムは、「すべての重要な負荷の100%を満たす」ことができる「分散型でスケーラブルなマイクロリアクターシステムを実用化」し、マイクロリアクター技術の商業市場を活性化することを目的としている。

 4月10日付発表によると、ANPIプログラムでは8社が認定された。 

  • アンタレス・ニュークリア社Antares Nuclear, Inc

  • BWXTアドバンスド・テクノロジーズ社BWXT Advanced Technologies LLC

  • ジェネラル・アトミクス・エレクトロマグネティック・システムズGeneral Atomics Electromagnetic Systems

  • カイロス・パワー社Kairos Power, LLC

  • オクロ社 Oklo Inc.

  • ラディアント・インダストリーズ社Radiant Industries Incorporated

  • ウェスチングハウス・ガバメント・サービスWestinghouse Government Services

  • エックスエナジー社X-Energy, LLC

 DIUのリリースによれば、各社はそれぞれ、ANPIプログラムの「商業的に利用可能なデュアルユース・マイクロリアクター技術」の契約を受ける「資格」を有し、DoDと協力して「軍事施設に1基以上のマイクロリアクター原子力発電所を設計、ライセンス供与、建設、運転」する可能性がある。本誌はDIUの広報担当者へ詳しい情報を求めたが、すぐに回答は得られなかった。

 DIUのエナジー・ポートフォリオ・ディレクターであるアンドリュー・ヒギアーは、リリースの中で次のように述べている。 「マイクロリアクターの設置は、軍にエナジー優勢をもたらすため重要な第一歩となります。 この分野における民間企業の急速な進歩を利用することは、ここ数年のこの分野への多額の民間投資のために非常に重要です。 米国と国防総省は優位性を維持し、国家安全保障のために最高の原子力技術を活用しなければなりません」。

 このプログラムは、国防総省のエナジー源の強化で、国家安全保障を向上させることができると、この取り組みの支持者は述べている。■


DIU selects 8 ‘eligible’ companies for nuclear microreactors that could power US bases

“Projecting power abroad demands ensuring power at home and this program aims to deliver that,” said DIU’s Andrew Higier.

By   Michael Marrow

on April 14, 2025 at 4:32 PM

https://breakingdefense.com/2025/04/diu-selects-8-eligible-companies-for-nuclear-microreactors-that-could-power-us-bases/


2022年4月16日土曜日

ペンタゴンが軍用超小型原子炉の実用化にGoサインを出した



アイダホ国立研究所(アイダホ州アイダホフォールズ)のトランジェントリアクター試験施設(2017年11月14日)。国防総省は、アイダホ国立研究所に先進的な移動式核マイクロリアクターの試作型を建設したいと考えている。(Chris Morgan/Idaho National Laboratory via AP)

 

防総省はC-17輸送機で過酷地に搬送し、軍事基地で電力供給する超小型原子炉を建設すると発表した。

 


 国防総省の戦略能力室Strategic Capabilities Officeが4月13日発表した声明では、「プロジェクト・ペレ」の環境影響評価書作成作業を経て、建設とテストの決定を行ったと発表している。

 プロジェクト主幹ジェフ・ワックスマン博士 Dr. Jeff WaksmanBWXT Advanced Technologies LLC(バージニア州リンチバーグ), とX-energy, LLC(メリーランド州グリーンベルト)の二案を数週間で絞り込むとミリタリー・タイムズに語っている。

 

関連記事(2021年10月の記事)。

米軍の超小型原子炉テストにイールソン空軍基地(アラスカ)が選定された。軍用電力供給源として原子力の持つ意義とは。

 

 しかし、原子力科学者や監視団多数が装置に疑問を投げかけている。原子炉や核燃料が攻撃により破損したり、盗まれたり、壊滅的な故障を起こした場合の汚染の可能性について、厳しい内容のレポートや解説、分析結果を発表している。

 アラン・J・クパーマン教授Professor Alan J. Kupermanはミリタリー・タイムズ紙に「懸念は解消されないどころか増大している」と語った。

 2010年以来、コンセプトの図面段階は少しずつ進展しているが、最終設計と製造段階は始まっていない。

 政府文書によると、陸軍は2020年3月に3社と総額40百万ドルの契約を結んでいる。2020年度には、国防総省はプロジェクトに63百万ドル、さらに2021会計年度には70百万ドルを計上している。プロジェクト・ペレProject Pele報告書では、第4世代原子炉を商業運用に道をひらくものと歓迎している。

 「ペレ」の名称は、ブラジルの有名なサッカー選手ではなく、ハワイ神話の創造主であり、火と火山の女神である「ペレ」にちなんだものだが、プロジェクトの正式名称はPortable Energy for Lasting Effects(可搬型持続運用エナジー源)だ。

 計画では、20フィート輸送用コンテナ3〜4個に収まる40トンの原子炉を設置し、一度設置すれば、最長3年間、最高出力運転で1〜5メガワット電力を供給する。

 超小型原子炉は、アイダホ国立研究所でテストと実験が2024年に行われ、2025年までに実証実験するとワックスマン博士は述べている。

 「先進的な原子力技術は、国防総省と商業部門の両方で、戦略的ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています」「採用の前に実際の運転条件下で実証に成功しなければならない」(ワックスマン)

 


陸軍は、前方作戦基地での電力供給用に移動式原子炉を開発し、実戦配備を狙っている。図は装置が戦場に運ばれる方法である。(国防総省)

 

 しかし、懸念を抱くクパーマンはテキサス大学オースティン校の核拡散防止プロジェクトのコーディネーターとして、2021年に国防総省計画に対し報告書「提案中の米軍の移動式原子炉:コストとリスクは利益を上回る」を執筆した。

 憂慮する科学者同盟の原子力安全プロジェクト会員も、2019年にArmy Timesに、設計コンセプトに関して、陸軍自身が、超小型原子炉が「直接の運動攻撃を生き残ることは期待できない」としたことに大きな懸念を持っている。

 ワックスマンは今週、Army Timesへの回答でこの懸念に応え、超小型原子炉は過酷地点に使用されるとし、具体的な想定地点は2018年の陸軍G-4報告書「地上作戦での移動式原子力発電施設の使用に関する研究で確認されている。(下参照)

 次に、ワックスマンは、新設計原子炉「高温ガス炉」high-temperature gas reactorと、「高純度低濃縮ウラン三層構造等方性燃料」high-assay low enriched uranium tristructural isotropic fuelの両方で、旧世代の原子炉や燃料より安全対策を強化していると述べている。

 また、新設計には、機密扱いの保護機能が組み込まれているとワックスマンは言う。さらに、防護壁や原子炉を地下に埋めることで防護強化になると言う。

 さらに燃料が、もうひとつの防御層となる。

「ウランは直径1ミリ以下の何百万もの小石内に入り、それぞれカプセル化される」「燃料ペレット自体がバリアになる」(ワックスマン)。

 しかし、クパーマンやカリフォルニア大学バークレー校の原子力工学博士候補のジェイク・ヘクラJake Heclaのような批判派は、カプセル化に頼るのは危険だと言う。

 燃料ペレットは遠くまで飛散する可能性がある、とクパーマンは言う。「ペレットは基地内を飛び回り、放射能は被覆外へ漏出する」

 ヘクラは、核物質を封じ込める「最後の砦」としてカプセル化や被覆に頼るのは、「起こりうる事故による結果の現実」をないがしろにしているとまで言い切っている。

 陸軍G-4研究を推進した要素の1つは、2018年報告書によれば、前方作戦基地で超小型原子炉を使用することだった。イラクやアフガニスタンの作戦で見られた燃料消費と補給線への頻繁な攻撃を減らす期待だった。

 現在の試算では、ペレ超小型原子炉1台でディーゼル燃料を年間100万ガロン節約できると、ワックスマンは述べている。

 しかし、ワックスマンは、開発中の超小型原子炉は、戦術環境での使用は考慮されていないと付け加えた。

 戦略能力室の広報官ティモシー・ゴーマン海軍中佐Lt. Cmdr. Timothy Gormanは、過去の報告と現在の計画の矛盾について質問され、「どんな新しいシステムも『実現可能な成果』をターゲットにしなければならない」と答えた。

「海軍にとって、原子力でもっとも実現可能な成果は潜水艦です。陸上原子炉の場合、戦術地帯を移動させるのは実際的ではなく、新型原子炉の応用例になりません」とゴーマンは説明している。

 クパーマンとヘクラは、だからといって、将来の超小型原子炉が前線近くに配備され、敵攻撃の標的にならないとは言い切れないと指摘する。

 「この種の原子炉は、攻撃の格好の餌食になる」とクパーマンは言う。

 さらに、クパーマンは、前線基地から非戦闘地域の過酷地点での運用へと用途が変わることに、別の問題点を感じている。

 「移動式原子炉のきもは、戦地に迅速配備することだ」とクパーマンは言う。「遠隔地にある基地は長期に渡り存在して堅牢だ。そもそも原子炉を必要としない遠隔地の基地に移動配備用の高価で丈夫な原子炉を建設しようとしている」

 ゴーマン中佐は、この計画は島嶼部での原子力を想定し、陸軍用語では、超小型原子炉は「移動可能」ではなく「運搬可能」であると明言している。ペレが想定する試作型は迅速な設営とし、設営に2週間もかかる現在の大型ディーゼル発電機より優れている。

 

陸軍は前方基地に設置する移動型原子炉の開発をめざしている。図は Holosシステム (Department of Defense)

 

 「運搬可能発電の利点は、必要な場所に迅速に移動できることと、信頼性に欠ける過酷地でも設置できることです」(ゴーマン中佐)

 ヘクラも用途変更に戸惑いを感じていた。「本当に言葉が出ません。この数年、超小型原子炉の正当性を主張する発言をたくさん耳にしてきました」。

 小型原子炉は陸軍では半世紀前から使われているが、結果はまちまちである。原子炉はかなり古い設計のものであった。

 超小型原子炉のコンセプトと設計が10年以上前からペンタゴン内を駆け巡っている。

 冷戦時代の陸軍原子力計画は1954年から1977年まで実施され、小型原子炉8基を建設した。出力は1〜10メガワットであった。

 8基のうち5基は、次のように使われた。

 

  • PM-1型は1962年から1968年までワイオミング州サンダンスで使用

  • PM-2Aは1961年から1964年までグリーンランドのキャンプセンチュリーで使用

  • PM-3Aは1962年から1972年まで南極のマクマード基地で使用

  • ML-1は、1962年から1966年まで開発実験に使用

  • MH-1Aは、1965年から1977年までパナマ運河地帯で使用


 1961年、アイダホ国立原子炉試験場のSL-1炉で炉心溶融と爆発が発生し、運転員3名が死亡する大惨事が発生した。同試験場は現在、アイダホ国立研究所となっており、ペレ超小型原子炉の試験場に計画されている。

 南極、グリーンランド、アラスカに原子炉3基が配備されたが、いずれも「信頼性が低く、運転コストが高い」ことが判明した。ワックスマンは、旧型炉の設計に問題があったことを認めている。 「安全性に問題があった」。

 しかし、特に紛争地域を通る、長くて脆弱な補給線を不要にできる利益が、このプロジェクトの重要性に拍車をかけているという。

 2018年の陸軍G-4報告書では、超小型原子炉の設置場所の候補地として、以下が挙げられていた。

 

  • トゥーレ(グリーンランド)

  • クェゼリン環礁

  • グアンタナモベイ(キューバ)

  • ディエゴ・ガルシア島

  • グアム

  • アセンション島

  • プエルトリコ・フォートブキャナン

  • アフガニスタン・バグラム空軍基地

  • キャンプビューリング(クウェート)

  • フォートグリーリー(アラスカ)

  • アゾレス諸島・ラジェスフィールド

 

 2010年に国防高等研究計画局Darpaがマイクロリアクターに関し産業界へ情報提供を要請していた。Darpaは、プログラムコンセプト開発に2012年度に10百万ドルの予算を組み、6年間で150百万ドルを投入しての製造を提案していた。

 だが資金不足で計画は立ち消えになった。

 議会資料によると、2014年、議会は年次予算案に、前方または遠隔の作戦基地に電力を供給する「小型モジュール炉」報告書の文言を盛り込んでいた。

 


 国防科学委員会による2016年報告書では、原子炉の電力要件が示されていた。さらに、2018年の陸軍G-4報告書は、同技術を推進する科学委員会の勧告を採用していた。

 批判派は、数カ月で設計案を選択し、2年以内にテスト可能なマイクロリアクターと燃料を用意する現在のスケジュールは、拙速だと発言している。

 ヘクラによれば、このスケジュールは新型原子炉で使う部品の開発スケジュールよりも短いという。

 しかし、ワックスマンは、1970年代以来初めて米国内に建設される陸上原子炉は、十分な技術、支援、研究を背景に持っていると述べ、試作炉は、将来の小型原子炉の開発、実戦配備にかかる時間とコストを削減するのにも役立つ、と付け加えた。

 

Pentagon to build nuclear microreactors to power far-flung bases

By Todd South

 Apr 16, 12:46 AM

 

About Todd South

Todd South has written about crime, courts, government and the military for multiple publications since 2004 and was named a 2014 Pulitzer finalist for a co-written project on witness intimidation. Todd is a Marine veteran of the Iraq War


コメント 日本では2011年のメルトダウン事故が発生して以来、中世の魔女狩りのように原子力を悪者にし封印した異常な状態が続いていますが、その間にも原子力関連の新技術が着々と開発されています。さらに、究極の手段、核融合もいつか実用化されるでしょう。今冬は電力不足が現実になりそうになりましたが、いつまで原子炉の商用運転を凍結したまま我慢するのでしょうか。リスクのない完全無欠な技術は残念ながら存在しないのですが...


2021年10月22日金曜日

米軍の超小型原子炉テストにイールソン空軍基地(アラスカ)が選定された。軍用電力供給源として原子力の持つ意義とは。

 

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福島事故のため日本では原子力の活用については思考停止していますが、地球温暖化対策以外に伸びる一方の電力需要への対応では依然として原子力は有望な選択肢のままです。さらに今回米軍が進める超小型原子炉に注目したいところです。

 

A satellite image of Eielson Air Force Base in Alaska with an inset showing a notional small nuclear reactor design.

 LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY

 

空軍から発表だと、イールソン空軍基地(アラスカ)を新型小型原子炉のテスト実施場所になりそうだ。米軍とエナジー省は小型原子炉による電力供給で伸びる一方の電力需要に応える方法の実現を前向きに検討しており、同時に化石燃料依存を減らしコスト減と効率向上を狙っている。

 

空軍省はイールソン基地を試験炉の設置場所に選定したと10月18日に発表。同基地はアラスカ内陸部に位置し、フェアバンクス近郊で北極圏から110マイル南にある。同基地には354戦闘航空団が常駐し、F-35A共用打撃戦闘機やF-16ヴァイパーのアグレッサー部隊、アラスカ州軍航空隊の168給油航空団がKC-135を運行している。

 

「ミッションの継続実施のカギを握るのはエナジー供給だ」と空軍次官捕(環境安全インフラ担当)のマーク・コレルが発言している。「超小型原子炉は有望な技術でエナジー供給の復元力となり安定性を実現する。また国内軍事基地の電力需要や暖房を賄える。イールソンAFBが典型的な場所だ」

 

イールソン基地に設置される原子炉の諸元は不明だが、原子力規制委員会(NRC)が認証し、契約企業の所有で運用する構想で、臨界量にいつ到達するか、完全出力達成の日程もわからない。空軍からは2019年度国防認可法(NDAA)で2027年までに超小型原子炉を完全運用状態にする目標を実現するとだけ発表があった。

 

今回の原子炉は国防長官直轄の国防戦略能力整備室(SCO)が進めるプロジェクト・ペレの一部のようだ。その目標は小型原子炉で1から5メガワットの電力を実現することにある。これに対し民生原子力発電所は数百,数千メガワットを発電している。超小型原子炉のプロジェクト・ペレでは原子力潜水艦用原子炉よりさらに小型の原子炉での発電を目指す。ちなみに米海軍のヴァージニア級潜水艦はS9G原子炉で40メガワット出力を実現している。

 

プロジェクト・ペレの原子炉ではTRISO型被覆燃料を使う。「TRISOの粒子Iはウラニウム、炭素、酸素の燃料カーネル構造となる」とエナジー省が説明している。「カーネル炭素、セラミックの三層構造とし放射性分裂生成物の放出を封じ込める」。TRISO核燃料は従来型の核分裂物質より高性能を発揮しながら、安全に取り扱える。このため従来より小型でも信頼性の高い原子炉を実現できる。

 

今年3月に国防総省はプロジェクト・ペレ原子炉試作型の実現のためX-エナジーBWXテクノロジーズの二社に契約交付し、今後二年で完成させ、最終版を決定する。2022年度末に超小型原子炉の仕様が決まると期待されている。

 

空軍はイールソン基地選定の理由に触れていないが、国防総省、エナジー省、その他独立機関から超小型原子炉の試験設置場所の条件が以前から提示されている。立地条件と既存の電力施設がカギだという。

 

USAF

イールソン基地内の石炭火力発電所

 

同基地は遠隔電力供給の課題の典型で、補給兵たん活動や化石燃料依存の面でも課題を現している。特に後者に関し、米軍は世界規模の気候変動による安全保障リスクへ懸念を深めており、化石燃料依存の軽減策を検討している。気候変動によりこれまで使えなかった資源地帯へのアクセスや北極海航路が実現するが、すでに次の対決場所になるともみられている。つまり、イールソン含むアラスカの各米軍基地の意義が高まる。

 

イールソン基地では石炭利用が環境・経済面で重荷になっている。基地の発電施設やインフラがそこにからむ。空軍はディーゼル機関車数量を保有し、同基地へ石炭を輸送している。

 

USAF

空軍保有のEMD GP40-2型ディーゼル機関車がイールソン基地の運用を支えている

 

 

「冬季は電力需要が最大規模となり、13から15MWe(メガワット)で一日800トンの石炭を消費する」と2018年に独立系の原子力エナジー研究所(NEI)が指摘している。「同基地には90日分の石炭備蓄があり、石炭は解凍してから燃焼されている」

USAF

イールソン基地内に貯蔵されている石炭

 

イールソン基地の立地条件と同基地が空軍で主要な基地であることから安全面及び規制面で効果が期待される。「アラスカ初の超小型原子炉を軍事基地に設置するならイールソン空軍基地が最右翼との意見は幅広い関係者から出ている」とアラスカ大フェアバンクス校のアラスカエナジー電力センター(ACEP)が報告書で指摘している。

 

プロジェクト・ペレの目標は小型原子炉開発により既存施設の電力需要をまかなうことにあるが、同時に最前線など戦場にも配備可能とすることも含まれている。大量のガソリン、ディーゼル燃料などの供給に実戦部隊は依存したままだ。

 

DOD

戦場で移動型原子炉をどう活用するのかを説明する図

 

新型TRISO燃料の超小型原子炉による信頼性の向上が実現すると推進派は主張するが、安全面や安全保障面での懸念も存在する。たとえば、原子炉が敵の攻撃を受ける、あるいは敵勢力に捕獲されたらどうなるのか。TRISO燃料はメリットもあるが、環境問題に意識が高い向きからは核廃棄物問題で懸念する声もある。

 

あわせて、イールソン基地の19,780エーカー(約80平方キロメートル)に及ぶ敷地は米環境保護庁(EPA)によるいわゆる「スーパーファンド対象地」に指定されていることも重要だ。毒性化学物質で汚染され、「閉鎖系だが今も埋め立てが進んでおり、浅い溝にタンク内のスラッジが埋められ、ドラム缶貯蔵区もある、その他廃棄物が残る場所もある」とある。最近でも消火用泡に含まれるフッ素置換剤による汚染も見つかっている。

 

2021年1月のACEP報告書では超小型原子炉の設置場所をめぐっては「社会の感情が大きく決定に作用しそうだ」との指摘もあった。

 

イールソン基地に超小型原子炉を設置するのはまだ数年先のことだが、それまでに世論やその他条件が構想に影を落とし日程が影響される事態もありうる。同時に米軍全体として小型原子炉による大量のコスト競争力に富んだ電力が将来の戦場のみならず日常の軍の活動を支える可能性に期待が高まっている。■



This Alaskan Air Base Will Host An Experimental Mini Nuclear Reactor

The military hopes its new mini nuclear reactor will lead to new battlefield energy capabilities and help power its sprawling installations.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 20, 2021