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2025年7月25日金曜日

ロシアを交渉のテーブルにつかせる方法がある(The Natinoal Inteest)


制裁の強化は万能薬ではないとしても、プーチンに圧力をかけ和平交渉に真剣に取り組ませることはできるはずだ

ランプ大統領はメッセージの送り方を知っている。「アメリカを再び偉大に」というスローガンや、新たに復活した「力による平和」がこれほど力強く響いたのは、トランプ有権者が実際に、世界の舞台で偉大なアメリカを望んでいるからだ。彼らはまた、平和を達成するためには、時として決定的な力の誇示が必要であることも認識している。

 意外なことに、トランプ大統領は、「自制」を装ってアメリカの衰退という誤った物語を押し付けている孤立主義の識者よりも、有権者のことをはるかによく知っていることがわかった。トランプ大統領は、和平を拒否し続けるロシアのプーチン大統領にどう対応すべきか思案しているが、プーチンを交渉のテーブルに着かせるため断固とした行動を取ることを有権者が支持しているのを確信すべきだろう。

 イランの核開発プログラムへの攻撃が成功した直後、バンデンバーグ連合は、世界におけるアメリカの役割と大国の敵がもたらす脅威について、トランプ支持者の見解を分析する世論調査を実施した。その結果、トランプ支持者は、世界におけるアメリカの強く、原則的で、積極的なリーダーシップを圧倒的に支持していることがはっきりした。注目すべきは、世論調査の対象となったトランプ有権者のさまざまなグループの中で、「MAGA」を自認する有権者が、伝統的な保守派や穏健派を自認する有権者よりも、このアプローチを支持していることである。

 世論調査ではまた、トランプ支持者が、中国、ロシア、イランという大国の敵から米国が直面している大きな脅威を認識しており、米国が世界の支配的な大国であり続けることを強く支持していることを示している。

 トランプ支持者は、米国の外交政策がイラクのような「終わりなき戦争」シナリオや、さらに悪いことに第三次世界大戦につながるという考え方に振り回されているわけではない。民主主義の促進といった漠然とした目的のためにアメリカ人の命を危険にさらすような長期戦は支持しなくても、トランプ支持者は、アメリカの利益と自由を守るためには、脅威を無力化するために敵対国に対して断固とした行動をとることが必要だと理解している。

 ありがたいことに、軍事力が常に必要とされるわけではないが、トランプ大統領のイラン攻撃の場合、トランプ有権者は、オバマ政権やバイデン政権が主宰した10年にわたる交渉よりも、アメリカの賢明な自己利益を守るために一晩で多くのことを行ったと認識している。トランプ支持派は、世界とは敵対的な場所であり、アメリカは外部の脅威から身を縮めていては偉大で強くなれないことを知っている。

 トランプ大統領は就任当初、ウクライナでの戦闘を終結させるための交渉による解決を優先させた。そのようなシナリオには満足できない人もいるかもしれないが、交渉による解決が最も可能性の高い結果であることに変わりはない。ウクライナはすべてを手に入れることはできないだろうが、現実的に可能ならすべて手に入れることができるだろう。

 問題は、ウラジーミル・プーチンが戦闘を終わらせる意欲を見せていないだけでなく、戦場での領土獲得はわずかであるにもかかわらず、暴力と残虐性をエスカレートさせていることだ。2024年12月から2025年5月までの間にウクライナの民間人死傷者が37%増加し、2025年6月にはロシアは過去最多の無人機と330発以上のミサイルを発射した。

 プーチンの無慈悲な人命軽視は自国民にさえ及んでおり、ロシア軍の死傷者は現在、毎月約4万人に達し、2022年以降は合計で100万人に達している。このような苦しみの中で、ロシアは2024年にウクライナの領土のわずか0.4%、2025年にはわずか0.2%を獲得するにとどまっている。

 ロシアを交渉のテーブルに着かせ、プーチンの無用な暴力を止めるために、トランプ大統領は「制裁による平和」戦略を追求すべきだ。 ロシアはこの戦争と戦うために経済を再編成し、影響力のある人々や産業界にプーチンの継続的な残虐行為を支持する経済的インセンティブを作り出してきた。こうした経済的インセンティブを逆転させることは、プーチンに和平交渉に真剣に取り組ませるための重要なテコとなる。

 ひとつの明確なチャンスは、ロシアの石油・ガス部門への制裁を強化することである。2024年時点で、石油・ガス部門は約1200億ドルの収入を生み出し、ロシア連邦予算の約30%を占めている。2024年のロシアの国防予算が約1400億ドルであったことを考えれば、この収入源を揺るがすことは、プーチンの戦争マシーンに資金を供給し続ける能力に大きな影響を与えるだろう。

 そのためには、現行の制裁をはるかに積極的に実施するだけでなく、ロシアの石油やガスを購入する国々に二次的な制裁を課す必要がある。 現在、これらの購入の70%は中国とインドからのものである。ロシアは、石油の原産地を偽装する石油タンカーの「影の船団」のような戦術を使って、制裁を回避する方法を見つけることに長けている。

 しかし、制裁が意味のある影響を与えることも分かっている。今年初め、米国はロシアに関連する183隻の石油タンカーを制裁対象とした。その後、ロシア産原油輸送のためのシャドータンカーの使用率は、2025年1月の81%から4月には65%に低下した。

 はっきり言って、制裁は特効薬ではないし、ウクライナに無条件の勝利をもたらすものでもない。しかし、和平交渉に真剣に取り組むようプーチンにプレッシャーをかけることはできる。トランプ大統領が最近、ロシアの石油やガスを購入する国に対する二次的制裁を含め、対ロ制裁の強化を支持する発言をしたことは、明るい兆しである。 そして、有権者がトランプ大統領のタカ派志向を支持していることを考えれば、トランプ大統領は、有権者の圧倒的多数が、プーチンの殺人を阻止するためにより積極的な措置をとるトランプ大統領を支持することを確信するはずだ。

 トランプの有権者がバイデンの失敗したウクライナ政策を拒否したからといって、彼らがトランプ大統領にロシアの破壊戦争に終止符を打つことを望んでいないわけではない。トランプ有権者支持派は、世界におけるアメリカの強力で原則的なリーダーシップが必要であること、ロシアがアメリカの利益を脅かす存在であること、ロシアが誠意ある和平交渉を拒否していることは強力な対応に値することを信じて疑わない。  ウクライナの和平が実現するためには、今こそトランプ大統領が制裁の鉄槌を下す時なのだ。■


How to Force Russia to the Negotiating Table

July 23, 2025

By: Corban Teague

Increased sanctions are not a panacea. But they can put meaningful pressure on Putin to begin taking peace negotiations seriously.

https://nationalinterest.org/feature/how-to-force-russia-to-the-negotiating-table


著者について コーバン・ティーグ

コーバン・ティーグは、ヴァンデンバーグ連合のシニア・ポリシー・ディレクターであり、アメリカ全土のアメリカ人の関心に応える強く誇り高いアメリカの外交政策を推進するための政策努力を指揮している。 それ以前は、アリゾナ州立大学マケイン研究所の人権・自由プログラムのディレクターを務め、アメリカの大国敵対勢力の抑圧的な体制に対抗するために尽力した。また、慈善団体や非営利団体で人身売買撲滅のための政策プログラムを主導し、モーガン・グリフィス下院議員とトッド・ロキータ下院議員の事務所で議会スタッフを務めた。


2022年6月22日水曜日

リトアニアがカリニングラードのロシア飛び地への貨物搬送を規制する理由とは

スウォーキーギャップは、リトアニアとポーランド国境に続く、ベラルーシとロシアのカリーニングラード間の回廊。

 


トアニアは土曜日、EU制裁対象のロシア製品の通過禁止措置をとり、ロシアの飛び地であるカリーニングラード州を切り離した。

 同州のアントン・アリカノフ知事によると、この禁止措置で、同州に入る全商品の半分が遮断され、大半は鉄道を経由して運ばれるという。また、カリーニングラード州で唯一のロシアからの石油パイプラインも遮断される。

 この動きは、4月に行われたロシア公認の航空会社21社に対するEUの飛行禁止措置の上に行われ、同様にカリーニングラードへの物資輸送を阻止するものだ。同領域への輸送方法は、国際海域を通る海路のみとなった。

 これに対してロシアは、リトアニアが「深刻な」不特定の結果に直面することになるだろうと述べている。

 リトアニアはNATO加盟国であるため、ロシアが直接軍事行動を起こせば、条約第5条が発動され、同盟国全体がロシアと戦争状態になる。バイデン米大統領は一般教書演説で、NATOの領土を「隅々まで」守ることを誓った。3月にはリトアニアへの駐留を強化し、駐留軍を約1,000人にまで増やした。


カリーニングラード州はどこにあるのか?

南はポーランド、東と北はリトアニアに挟まれたバルト海沿岸に、山のくぼみのように孤立した港町、カリーニングラードがその名の由来である。


なぜカリーニングラード州はロシアの一部なのか?

カリーニングラード州は、ロシア領だ。首都モスクワから約680マイル離れた飛び地である。

 第二次世界大戦終結後、ポツダム会談でソ連はカリーニングラード領の支配権を得た。1991年のソ連崩壊後もロシア連邦に属し、周囲には新たに独立した国々が生まれ、西側と密接な関係を持つようになった。ポーランドとリトアニアがNATOに加盟した。


なぜカリーニングラードは重要なのか?

カリーニングラードは、バルト海で唯一、年間を通した不凍結港であり、ロシア海軍の重要な拠点である。北極海を通る北方航路で北欧を一周する必要がないため、戦略的に重要な位置にある。。

 カリーニングラードは、ロシアがNATOの戦線の背後に海軍の艦艇を駐留させていることも意味する。

 リトアニアによると、ロシアは艦隊とともに、核兵器も領土内に駐留させている。ロシアは3月、「わが国に対する攻撃的な発言」を行うNATO諸国からの圧力が高まっているとし、核戦力の厳戒態勢を命じた。

 NATO領域内に配備された短・中距離弾道ミサイルに搭載された核弾頭は、欧州の目標に到達するまでの時間が限られているため、ロシアにとってより確実な先制攻撃となる。


ロシアの反応は?

ロシアはリトアニアの動きに憤慨し、リトアニア国民が痛みを感じる形で対応すると宣言しているが、それをどのように達成するかは明言していない。

 ロシアは、通過禁止を「封鎖」と呼び、この動きは国際法違反だと述べている。カリーニングラードは、商品や資材をロシアからの輸入に大きく依存する。

 リトアニアは、2月末のウクライナ侵攻以来、ロシアに実施中のEU制裁を遵守するための措置に過ぎないと擁護している。

 リトアニア外務省は声明で、「リトアニアを経由するカリーニングラード地方への旅客および非制裁物資の通過は、途切れることなく続いている」と述べた。「リトアニアは通過に対して、一方的、個別的、あるいは追加的な制限を課していない。リトアニアは、EU制裁を一貫して実施している」と発表。■


Why is Lithuania risking Russia's wrath over Kaliningrad?

By Ryan White

 Jun 22, 05:06 AM

 


About Ryan White

Ryan White is a reporting intern at Sightline Media. He is currently a senior at The University of Maryland, College Park studying journalism.


2022年6月9日木曜日

制裁措置はロシアに対する経済戦争だ。冷戦時を思わすその効果でロシアの軍民両部門は今後苦しむことになりそう

 

Russia Sanctions

Russian military drilling with artillery. Image Credit: Creative Commons.

 

対ロシア技術戦争の行方

ロシアがウクライナ侵攻を開始した直後、米国はじめ各国は、モスクワに対して史上最も積極的な技術的制裁を開始した。

 ある意味で、冷戦時代にロシアの技術を締め上げた努力に類似している。冷戦時代、ソ連を国際的な技術開発から切り離すことが、米国の大戦略の中心だった。ソ連を孤立させるのが、米国による封じ込め政策で一貫した要素の1つだった。

 

冷戦型制裁で崩れるチップの信頼性

トルーマン政権やアイゼンハワー政権は、ロシアを技術から切り離せば、ソ連の経済力、ひいては軍事力に長期的な悪影響を与えられれるとの結論した。今回の制裁措置は、ロシアの科学技術発展を長期的に阻害するねらいがある。

 ウクライナで捕獲・破壊されたロシア製兵器を分析した結果、ロシア製兵器は西側コンピューターチップに強く依存している実態が明らかになった。自立した国で最も自立した産業であっても、統合と相互依存は避けられない。ロシアの軍事力への影響は重要だが、それは本筋ではない。

 ロシアは戦場で失った分を新規生産で補うことは不可能だろう。そのためロシアの戦車製造が遅れても決定的な要素ではないだろう。もっと重要なのは、ロシアの技術的な競争力に出てくる長期的な影響だ。影響は、軍事分野より、民生分野に強く出てくるはずだ。ロシアの航空業界は制裁を受け、今後数カ月はスペアパーツが不足し、メンテナンスに時間がかかるため、大きく打撃を受ける可能性がある。

 

中国が助けてくれるかも

もし中国が、西側諸国との関係を犠牲にしてまでもロシアを支援すると決意すれば、ロシアの技術的な問題の一部を解決できるだろう。しかし、中国は西側制裁の標的になることに強く敏感さを示してきた。中国のテクノロジー企業は世界経済と深く結びついており、世界市場から切り離されては困る。

 中国政府と技術部門の民間企業間の関係は複雑だ。中国政府がロシアを支援したくても、業界を強制的に動かせるかは明らかではない。ロシアと世界の二者択一なら、中国は世界を選んでもおかしくない。最後に、中国はロシアのテクノロジー企業をハッキングし、ロシアの状況を利用することを躊躇していない。

 

ロシアは深みにはまっていく

ロシアは、国際的な知的財産保護義務を放棄することで、自らを苦しめている。短期的には、西側の知的財産を流用するとの約束は、ロシア人にとって非常に魅力的に聞こえるだろう。一挙にモスクワは西側を攻撃し、西側のテクノロジー企業を傷つけ、コネのある企業に利益を分配することができる。しかし、ロシアが頼りにする中国企業は、ロシアによる知的財産権の侵害に対しユーモアのセンスは絶対にないだろうし、モスクワが知的財産保護に無頓着であるとわかったため、中国ハイテク企業はロシア市場に関わることを考え直すかもしれない。

 冷戦時代のソ連への科学的消耗戦は、物理的・知的レベル双方で戦われ、ソ連の学生、科学者、エンジニアが米国や他の西側諸国で学ぶ能力に大きな制限を加えた。米国の政策立案者は、特にハイテク分野で中国人留学生のビザ発給制限を示唆したため、米国の大学多数が中国との協力関係を縮小する措置を取ったのは確かだ。

 ロシア人留学生(約5000人が米国で学んでいる)を米国から追い出す提案をした議員があらわれたが、ほとんどフォローアップがないままだ。前述の航空会社の問題で多くのロシア人にとって海外渡航は物理的に難しくなっているが、正式な方法には制限されてはいない。もちろん、今はデータの流れがはるかに容易で、特定の場所に行くのは、冷戦時代ほど重要ではない。ロシアの学生、科学者、技術者を西側から排除して、リベラルかつコスモポリタンな価値観の基本的な放棄でないとしても、あまり意味がない。

 この戦争の意味についてロシアの考え方は、まだはっきりしない。モスクワは、西側の制裁の規模を予想し、侵略の代償とした上で、利益がコストを上回ると判断したのだろうか。プーチンは、戦争は短期終結し、西側諸国が忘れると考えたのだろうか。それとも、ロシアは制裁を巧みに利用し、国内の能力を高めつつ必要な技術にアクセスするつもりなのだろうか。 短期的には答えが出てこない問題だ。■

 

America Is Using Sanctions to Wage a Technology War on Russia - 19FortyFive

ByRobert Farley

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).