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2020年4月29日水曜日

最長供用期間を更新するU-2の最新改修内容について

U-2スパイ機は現時点でも米史上最長の供用機材だが、追加改修で将来の戦場でも実力が発揮できるようになる。

ロッキード・マーティンU-2の初飛行は1955年で、冷戦時にドラゴンレイディのあだ名が付いた。搭載装備の更新で将来の戦闘場面でも十分に情報収集可能となる。

ロッキード・マーティン広報資料にはスカンクワークス事業部が米空軍向けに今回の改修を行うとある。改修で搭載電子装備を一新し、パイロットのディスプレイを換装し負担軽減と意思決定が楽になる。▶「エイビオニクス装備を一新し、搭載システムも近代化し新技術を導入する。ミッションコンピータも空軍のオープンミッションシステムズ(OMS)標準となるのでU-2は陸海空さらにサイバーの各分野で高度のセキュリテイで活動可能となり、コックピット改修でパイロット負担を減らしながら収集したデータの表示方法を改良し、これまでより迅速かつ良質な意思決定が可能となる」

オープンミッションシステムズ
OMS改修に最大の意義がある。OMSは情報の標準インターフェースであり、戦闘空間のデータ収集を各種機材に可能とする。OMSの狙いはデータ収集から送信までの時間を最適化し、戦闘空間内の各機にリアルタイムで情報の更新を可能にすることだ。

OMSさらに情報収集について「共通メッセージインターフェースでレーダー、通信装置等のサブシステムに応用し、さらに自動飛行経路決定や戦闘管理に応用する」と報告書にあり、戦闘空域に入る各機にOMS標準を応用するとある。「OMS標準のミッションシステムと機能が各機材で再利用できる。さらに機材への搭載時間を大幅に短縮でき、新機能が経済的に利用可能となる」▶オープンミッションシステムズはB-2ステルス爆撃機、グローバルホーク偵察無人機ですでにテストが始まっている。▶2021年中のテストを経て、ロッキード・マーティンはU-2改修を「2022年初頭」に実施したいとする。

重要性は変わらない

偵察衛星のカメラは高精度だが、地球周回軌道の制約を受ける。衛星の次回上空到達は予め計算でき対象を隠すことが可能だ。U-2ならこの問題はない。▶U-2が今後も機能を発揮していくのは、情報データ収集のスピードによるところが大きい。偵察対象を与えれば、U-2は上空まで到達できる。OMSの導入でドラゴンレイディはさらに長期間供用となるはずだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

How long will the famous spy plane fly on?
April 21, 2020  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: U-2Spy PlaneAmericaU.S. Air ForceDragon Lady
Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture 

2019年4月13日土曜日

航自F-35捜索にU-2も投入

コメントは下にあります。


High-altitude US recon plane joins search for F-35 and missing Japanese pilot 

F-35捜索に米軍が高高度偵察機を投入




U-2 ドラゴンレイディ偵察機がアラブ首長国連邦アル・ダフラ航空基地で発進に備えている。 March 15, 2019.GRACIE I. LEE/U.S. AIR FORCE

By SETH ROBSON AND HANA KUSUMOTO | STARS AND STRIPES
Published: April 12, 2019


YOKOTA AIR BASE, Japan —
4月12日、在日米軍は米空軍所属U-2ドラゴンレイディ戦術偵察機が消息不明の航空自衛隊細見彰里3等空佐操縦のF-35AライトニングII戦闘機を捜索に投入したと発表した。

同機は9日午後7:30ごろ三沢航空基地の東方およそ85マイル地点で墜落した。捜索で機体の左右方向舵を事故発生から二時間後に回収したと航空自衛隊が発表している。

今回の事故はF-35Aで世界初の喪失事故となった。海兵隊所属のF-35Bでは昨年9月にサウスカロライナ州内の海兵隊航空基地近くで墜落事故が発生している。

細見3佐は飛行時間3,200時間のベテランでF-35Aでは60時間飛行していると航空自衛隊が10日に発表している。

米海軍は捜索救難に艦艇一隻と哨戒機一機を派遣した。

「日本政府の要望により米軍は日本主導の捜索活動を支援していく。このためUSSステサム(誘導ミサイル駆逐艦)、P-8Aに加えU-2の支援も提供する」と在日米軍広報官ジョン・ハッチンソン空軍大佐がメールで知らせてきた。

航空自衛隊はUH-60Jヘリコプター、U-125を計11機を投入し、海上自衛隊も艦艇及び航空機による捜索を事故直後から展開している。海上保安庁も艦艇を現場に派遣した。

「在日米軍司令部は第五空軍と連絡調整を密にし日本政府の要請に応え米軍SAR活動を自衛隊と分担しておこなっている」

「在日米軍は防衛省や自衛隊各部隊と連携し捜索救難支援を続け、機体改修も要請あれば対応する」(同大佐)■


一日も早い発見を願わずにいられませんが、これを機に安全保障に無知な向きからためにならない主張が出てこないか心配です。しかし、相変わらずメディアではF35などと平気で記述していますなあ。

2018年1月18日木曜日

歴史に残る機体16 U-2

歴史に残る機体16はU-2です。現役の機体ですのでまだまだ歴史を作りそうですね。



No Plane Has Made More History Than the U-2 (And It Never Fired a Shot)

U-2を上回る歴史を刻んだ機体はない(しかも一発も発射せずに)
January 16, 2018

U-2スパイ機は今も世界の空を飛んでいるが、もともとCIAで供用開始して60年以上たつ。世界史でここまで影響を与えた機体はない。米外交に有益な情報を提供しただけでなく、高高度飛行は期待通り妨害を受けなかったためだ。

高高度を飛ぶスパイグライダー機
チャーチルが有名な「鉄のカーテン」が東欧に下りたと述べた時点でその向こうを覗く米スパイ機は文字通り生死をかけていた。写真偵察機の有効性は実証済みだったがソ連ジェット戦闘機がレーダー誘導で運用開始するとソ連領空への侵入は自殺行為になった。
スパイ機がソ連MiG戦闘機の追撃を回避する方法はないのか。米空軍は解決策は高高度飛行と考え、レーダー探知も回避できると想定した。ソ連の初期型レーダーは大戦中に米国が与えた装備で最大探知高度は67千フィートと想定されたためだ。RB-57Dがこの任務用に改装されたがこれだけの高度は不可能だった。
ロッキードの伝説的設計者ケリー・ジョンソンから1953年にCL-282スパイ機提案が空軍に届いた。グライダーに近く長い胴体ととんでもなく長い主翼が特徴だった。CL-282は機体重量を極限まで下げて降着装置さえ省き胴体着陸の想定だった。空軍は採用しなかったが、CIAが関心を示しロッキードに構想研究の継続を求めた。
ロッキードはU-2になったこの機体開発を完全秘密体制で進めた。機体呼称の「U」は多用途機の意味で偵察機としての目的を隠ぺいするためだった。ロッキードは協力企業には高高度気象観測機と説明していた。
ドワイト・アイゼンハワー大統領が同機運用に直接関与したのはソ連上空に軍人を乗せた機体を送り込むのは政治的に危険との助言を考慮したためだった。U-2は当初非米国人で運用する想定だったがCIAは退役空軍パイロットをCIAに「運転手」として雇い入れる形を思いつく。CIAと空軍の共同事業には「ドラゴンレイディ」のコードネームが尽き、以後同機にこの名前がついてまわることとなった。
細長い胴体と80フィートの主翼で高度72千フィートに到達した。この高度では宇宙空間に近くなりパイロットは部分与圧服を着用した。高高度飛行のストレスでパイロットは一回8時間のミッションで体重6ポンド減らすほどだったが、液体食をヘルメット直結チューブからとれた。
エンジンはJ58ターボファン一基で特殊JP-7燃料が高高度でも蒸発しない形にされていた。最高速度は430マイルで大戦中のP-51マスタング並みだった。後期のU-2CはエンジンをJ75に換装し、最高高度75千フィートに引き上げた。ここまでの高高度では失速速度は最高速度から10マイルしか違わず、パイロットは常時注意を払う必要があった。
搭載カメラは180インチのフォーカルレンス式レンズで地上の高解像度写真を撮影可能だった。その後通信情報収集装置が加わった。
CL-282原案と異なりU-2には降着装置が付いた。離陸時に投棄する「ポゴ」車輪二基もついた。主翼は異例なほどの揚力を生んだ反面、着陸が極度に困難になったのに加えコックピットの視界は極度に悪く、地上で誘導車による無線指示が必要だ。良い面では高度と揚力の組み合わせで長距離の滑空が可能となり、エンジン故障になった一機は300マイルを滑空してニューメキシコに着陸している。
60年間にわたり同機操縦資格を得たのはわずか950名で女性9名も含む。「怪しい伝説」でU-2は「操縦が一番難しい機体」だったのか検証し、車輪投棄、与圧服、高高度飛行の様子とともに誘導車を引き連れての着陸の様子が放映されている。
ロシア、中国、キューバ上空のドラゴンレイディ
アイゼンハワーはU-2上空飛行で戦争が誘発されないか心配していたが、ドイツに展開したCIA分遣隊A所属のU-2が東欧上空を初飛行したのは1956年6月20日でソ連上空飛行は7月4日だった。
ソ連レーダーではU-2探知は不可能との甘い期待はすぐに裏切られた。だがMiG-15や-17戦闘機ではU-2の飛行高度まで到達できなかった。米国はその後もU-2を英空軍パイロット操縦で送り出しており、英国内基地の設置の代償としてさらに収集情報量を増やすためだった。
CIAはプロジェクトレインボウでU-2を低レーダー断面積化によるステルス機改装に取り組んだ。ただし、結果は芳しくなくロッキードはA-12事業に取り組むことになった。これがSR-71ブラックバードになった。
U-2の写真偵察がすぐに効果を発揮した。当時の米軍指導部はソ連との「爆撃機ギャップ」に憂慮させられていた。U-2の上空飛行により新型長距離M-4戦略爆撃機は実際に作戦基地に配備されていないと判明した。中東上空ではスエズ危機での英仏軍の作戦状況を米国はつぶさに見ることができた。結果として英国は介入を断念させられた。
にもかかわらずアイゼンハワーはU-2フライトのリスクを認識しており、運用を取り消したり再度承認することを二期目に繰り返していた。1950年代末にソ連は地対空ミサイルの配備を増強しCIAは高高度でU-2を捕捉する可能性を認識していた。ただし当時のペンタゴンは今度は「ミサイルギャップ」がソ連首相フルシチョフが豪語したICBMで生まれていると恐怖に駆られ、アイゼンハワーはあらたにこの脅威の実態をさぐるべく新規ミッションを承認した。
最後のミッションは1960年5月1日まで延期された。ソ連では休日で通常は探知を遅らせる効果のある民間航空の稼働が低下する日である。CIAパイロットのゲイリー・パウワーズがトルコ・インチルリック基地を離陸すると即座にソ連レーダーに捕捉され三発のSA-2ミサイルが発射された。うち一発は迎撃に出撃したロシア空軍MiG-19に命中しパイロットは死亡した。もう一発は命中しなかったが三発目が機体近くで爆発した。パウワーズは機外脱出し墜落したが機体は意外にも損傷少なかった。
CIAはU-2喪失に備えてあらかじめカバーストーリーを準備していた。U-2は高高度気象観測器で「行方不明になった」というものだった。ソ連はアイゼンハワーに釈明の機会を与えてから翌週になってパウワーズの身柄を確保したと発表しアイゼンハワーの体面をつぶし5月に予定されていたパリ首脳会談は大荒れになった。バウワーズ逮捕にCIAは恐慌する。U-2の高高度で撃墜されて生存は不可能と考えていたためだ。パウワーズはソ連スパイと交換で帰国しU-2のロシア上空飛行は取りやめになった。
それでもロッキードは機体改良を続けた。U-2A、U-2Cに空中給油能力が追加されU-2E、U-2Fになった。飛行距離は9,200マイルに延長された。U-2GとU-2Hは空母発進にして海外国内の基地依存を減らそうとした。空母発艦は成功したが海軍艦船からのスパイ機運用は実施されていないといわれる。
パウワーズ事件を受けて海外展開していたU-2分遣隊は撤収したが、今度はキューバ上空の飛行を始めた。1962年10月14日、リチャード・ヘイサー少佐操縦の機体がソ連製中距離弾道ミサイルの展開状況の撮影に成功し、キューバミサイル危機が始まった。米ソ関係でふたたびU-2が重要な存在になった。危機を通じて上空飛行は続き、10月27日にはルドルフ・アンダーソン少佐操縦の機体がまたもやSA-2に撃墜され、少佐は死亡した。
アンダーソン少佐撃墜のあと、空軍は徐々にCIAのU-2各機の管理を強め戦略偵察飛行隊を創設した。その後、タイ、日本、フィリピン、インドの各地に展開し、北ヴィエトナムの防衛体制の様子、北朝鮮やインドネシアの兵員輸送状況、中国国境の警備体制強化等の写真撮影にあたった。中東でもアラブイスラエル間の衝突の動向を監視した。
また中華民国(台湾)と分遣隊Hを共同運用開始したのは1960年代前半で、黒猫飛行隊として知られた。台湾パイロットが中国本土を北西では蘭州、南西は昆明まで飛行したが、不幸にも台湾運用のU-2も地対空ミサイルを逃れることはできず、5機が撃墜された。台湾のU-2ミッションは合計104回実施された。残るU-2は1974年に撤収された。ニクソン訪中で米中国交が成立したためだ。

現在のU-2、そして将来は?
最後の機体が生産ラインを離れたは1989年で104機のU-2が製造された。現在のU-2はすべてU-2Rの系列で胴体は30%延長され、主翼幅は100フィートを超え燃料搭載量が増加している。
1981年には新型U-2Rに特殊偵察ポッドと側面監視空中レーダー(地上スキャン用)がつきTR-1A(戦術偵察機)と改称された。
U-2とTR-1は防空体制が整備された場所での深度侵入飛行はおこなっていない。衛星により人命喪失を心配せずに行える任務だ。だがU-2は脅威がない場所なら高高度飛行を安全に行い高精度画像を衛星では得られない柔軟度で提供できる。
冷戦終結に伴い、U-2RやTR-1はU-2Sに改修され現在も31機が供用中だ。U-2Sは推力増加F118エンジンで時速500マイル超となり、センサー性能も向上しGPSも搭載する。2012年に同機はCARE事業で改修されキャビン与圧を下げ排尿回収も快適となりパイロットの肉体的負担を軽減した。
ここ数年は第9偵察航空団所属のU-2が最長12時間に及ぶイラク、アフガニスタン上空飛行を実施し、ISISやタリバンの動向を詳細に写真偵察している。
空軍は当初はU-2を2014年に退役させRQ-4グローバルホーク無人機に交替させる予定だった。だがU-2は大型で高品位センサーが積める点でRQ-4よりすぐれていること、また飛行運用費用も半額程度で済む。さらに空軍将官のひとりはRQ-4がU-2と同じ量の偵察を実施するまでにまだ10年かかるとも述べている。
結局のところ対ISIS戦で偵察機需要が高いためU-2運用予算は少なくとも2019年まで確保された。
ロッキードはTR-Xスパイ機の提案をしている。これはU-2を遠隔操縦機つまり無人機として高リスク空域での運用を目指すもので、ペンタゴンは40億ドルかけて30機ないし40機の非ステルス偵察機を配備すべきか検討中だ。

ただし今のところ旧型U-2が引き続き任務にあたりそうだ。機体が老朽化しても搭載センサーは別でドラゴンレイディは地上の様子を高高度から米国に伝える目の役割を提供している。■


Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

2016年8月15日月曜日

★TR-XはISR機材として採用をねらうロッキードの高高度ステルス無人機構想



ここで言っているTR-XはU-2無人機版としてロッキードが提唱していたコンセプトの発展形でしょう。供用期間の途中で大幅にステルス性能などを引き上げていく(当然同社には改修費用が収入源となる)という同社にとって虫のいいお話になります。実現するか未定ですが、予算危機とはいえ、大事なISR機材を調達できないくらいアメリカは弱っているのでしょうか。短期的なつじつま合わせでなく情報収集手段として今後稼働できるのならいい買い物になるのですが。

Aviation Week & Space Technology

Lockheed’s TR-X Reconnaissance Aircraft Will Have Stealthy Shape, Skin

Lockheed Martin is pitching TR-X, a stealthy, high-flying UAS, to replace U-2 and Global Hawk
Aug 12, 2016 Lara Seligman | Aviation Week & Space Technology

  1. ロシア、中国がミサイルを高度化する中、米空軍のロッキード・マーティン有人U-2およびノースロップ・グラマンのグローバルホーク無人機は敵国境線へ接近が困難になりつつある。
  2. ロッキード・マーティンは自社のスカンクワークスならこの課題を解決できるとし、これまで公開していなかった無人TR-X提案のステルス性能を今回明らかにした。高高度飛行しステルス性の外装およびレーダー波吸収表面で敵領空深くへ侵入できるようになるとロッキードでU-2事業開発部長を務めるスコット・ウィンステッドが述べている。

ロッキードの考えるステルス偵察機開発案
  • 初期型TR-XはU-2の高性能センサーを搭載した低視認性機体とする
  • ステルス性能は機体のステルス形状とレーダー波吸収表皮で実現する。
  • ロッキードが開発中の極超音速SR-72を補完する役割も期待
  • 初期型30機を38億ドルで7年以内に稼働開始させる

  1. ロッキードはTR-Xコンセプトを昨年の空軍協会の年次総会で発表し、U-2とグローバルホークの後継機として今世紀一杯稼働できるとうたった。その際にTR-Xは低視認性機体だと述べていたがステルス性能の詳細には触れていなかった。
  2. 今後は相手領空上空への侵入が出来なくなるのが普通となり、高性能センサー、高高度飛行、長距離飛行性能にステルスを加えてISR情報収集監視偵察任務での優位性が実現するとウィンステッドは述べている。高性能センサーの例が電子スキャン方式アレイレーダーで、現行のU-2やグローバルホークに搭載すれば敵領土奥深くまで侵入できるが、機体表皮そのものを全く新しくしないとレーダー探知からは逃げられないとウィンステッドは指摘する。
ロッキードTR-X構想では最終的にステルス機体となりレーダー吸収被膜とすることで敵地億副区に侵入可能となる。Credit: Lockheed Martin Concept
  1. 「そうなると敵はレーダー出力を上げないと探知できなくなり、こちら側はそれだけ接近でき戦時に有利になります」
  2. TR-Xの空軍採用を期待するロッキード・マーティンは二段階の開発をする。第一段階は低視認性機体で当面の必要条件に答え、その後、ステルス性を高めた機体としてレーダー吸収表皮を追加する。
  3. TR-Xはノースロップの極秘RQ-180とロッキードが開発中の極超音速SR-72に加わり、空軍の求める侵攻型ISR機材の一角となる想定だ。一機種ですべてを実現するのではなく、複数要求に選択肢複数とし、脅威環境の変化に対応する考えだとレベッカ・グラントIRIS独立研究所の社長が解説。
  4. SR-72がマッハ6で飛行すれば速度と残存性が武器となる。理論上は同機は危険空域でも存分に活動でき、敵の地上移動目標が隠れる前に探知し、高速で帰還し、途中でネットワーク有効範囲に入れば情報を送信する。
  5. 将来において空軍はステルス高高度飛行のTR-Xと極超音速のSR-72双方を運用する必要に迫られるはずとグラントは言う。TR-Xは常時滞空する空の目となり、変化を見逃さず、現在のU-2の役割を果たすというのだ。何らかの変化の兆候が見つかれば、あるいは具体的な脅威の兆候が見つかれば、SR-72が出動し、データを迅速に収集する。
  6. TR-Xは当面はU-2と同じ非ステルス性機首に合成開口レーダーあるいは強力なSYERS-2電子光学赤外線(EO/IR)カメラを搭載して空軍にISRを提供するとウィンステッドは語り、初期機材のTR-Xはまっすぐな主翼構造でステルス機の特徴と反するが、機体構造は低視認性だという。
  7. 高高度飛行はU-2から、長時間飛行はグローバルホークから引き継ぎTR-Xは一つの機体にする。無人機であるためU-2より航続距離が延びる。24時間連続飛行が可能で、空中給油でさらに伸びる。グローバルホークは28から30時間連続飛行できる。U-2と同じ強力なジェネラルエレクトリック製F118エンジンを搭載し、高度70千フィート飛行が可能で、グローバルホークより10千フィート高く飛びながらペイロード5千ポンドを搭載する。
  8. 空軍の予算執行案ではU-2は2019年に退役し、グローバルホークにU-2のセンサーを搭載した改良型を後継機とする。だがTR-Xの方が短期ISR需要にはコストパフォーマンスが高いとウィンステッドは説明。ロッキード試算では初期30機の機材をそろえるのに38億ドルで、7年間で稼働開始できるという。これに対しグローバルホーク改修案では35億ドルで「U-2性能の80%相当にしかならない」という。
  9. TR-Xの初期機材は敵防空網の境界部分なら活動できるが、敵領土奥深くへ侵入できない。「それでも生き残り、気づかれない」とウィンステッドは以前述べていた。
  10. その先に来るのが最終案TR-Xでステルス性能を完全に実現するという。レーダー波吸収式の表皮塗膜と構造材料に加え、一体型ステルス設計の機体でレーダー波を反射する。
  11. ロッキードはTR-X最終型の費用、所要時間を確定していない。機体構造改修を行いステルス性能を実現する妥当な時期は機材の定期点検改修時だとウィンステッドは述べる。U-2の場合は6年周期で重点検を受ける。30機のTR-Xをすべて改修するのか一部にとどめるのかは空軍が判断すればよいというのがウィンステッドの言い分だ。
  12. ロッキードは空軍上層部にTR-Xおよび発展型を事前説明しており、新型機は来年再来年にも実現できると同社は述べ、ボブ・オットー少将(ISR担当副司令官)は同社構想に「興味をそそられた」というが、航空戦闘軍団はTR-X導入の予算はないとし、他に近代化の対象となる重要案件B-21爆撃機、F-35、KC-46給油機などがあるとする。
  13. だがウィンステッドに落胆の様子はなく、ステルス高高度ISR機材の必要性はすぐにでも明白になるという。「最大の障害は調達部門で新規事業が必要となるはずなのに構想を巡らす余裕がないこと」とし、「でも性能検討でニーズを見れば、ニーズが増える一方だと分かり優先順位も高くなるはずです」■


2015年8月21日金曜日

★スカンクワークスがU-2後継機を準備中


U-2と限りなく近い形状の機体でステルス性が発揮できるのかわかりませんが、下に出てくるオースティン部長はLO(低視認性)技術の専門家とのことなので、考えがロッキードにあるのでしょう。スカンクワークスがもう一度仕事ぶりを発揮することになりそうです。

Skunk Works Studies Stealthy U-2 Replacement

Aug 19, 2015 Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

ロッキード・マーティンのスカンクワークスがU-2の後継スパイ機の検討をしている。伝説的なU-2のうち最良の部分を無人機ノースロップ・グラマンRQ-4Bグローバルホークの良いところを合わせた機体を目指している。
  1. U-2はこまめな改良を経て2050年までの寿命が残っているが、米空軍は2019年までに退役させる予定で、RQ-4Bが任務を引き受ける予定だ。ただし、ロッキードによればRQ-4Bは敵領空を戦時には飛行できないとし、次世代のU-2がその「穴」を埋めるISR機材になれるという。
  2. 「U-2、RQ-4Bはともに平時に高高度飛行でISR任務を実施する想定です」とロッキード・マーティンでU-2戦略開発事業を率いるスコット・ウィンステッドは言う。「空軍予算が削減されている中で、戦時用の機材を調達するのは困難で平時用の機材といえども多数を保有するのが難しくなっている。そこで検討しているのはその両方をこなせる機材です。グローバルホークとU-2から最良の部分をつなぎあわせて新しい機体にする。ステルス型のU-2といったところです」
  3. 新型機は有人操縦に切り替えが可能となる。運用地まではパイロットがフェリーして、平時は有人飛行、無人操縦でもっと危険な空域を長時間飛行させることが可能となる。機体案はとりあえずRQ-Xの名称で、無人型U-2用にスカンクワークスが検討してきた技術を盛り込む。無人型U-2の提案は直近では2014年にあり、胴体と主翼を延長し燃料搭載を増やし、無人機に必要なサーボモーター他すべてを搭載する案だった。
  4. ロッキードによればこの案で将来の長期間偵察任務で柔軟な対応を可能にし、同社が提案中の極超音速SR-72構想と共通部分があるという。
  5. 現行のU-2は非ステルスの機体のまま1955年初飛行時から大きく替わることなく今日に至っているが、次世代機には「低視認ステルス機の性能を盛り込む」とウィンステッドが言う。ロッキードによればこれまでもU-2のシグネーチャーを減らすべくレーダー吸収塗料材で、現行機は黒色に塗色されているが現在は特別な扱いは受けていないという。
  6. 開発費用を削るため設計案ではジェネラル・エレクトリックF118ターボファン(U-2/TSR-1で換装エンジンとして採用)を使用する。「大変高性能かつ比較的新しい。エンジンを替えないのはコストもあるが、90,000フィート飛行の要求が出てきたら別エンジンに変えれば良い。その際はその他にも再設計が必要になるでしょうがね」(ウィンステッド)
  7. 設計案では実用速度もU-2の 475 mph (マッハ0.58)近くとする。「今の段階ではこれ以上のスピードは不要との解析がありますが、高高度では速度があがります。空気が薄いですから」(ウィンステッド) 現実的な選択肢として「大型エンジン搭載で高度80,000フィートまでの上昇が可能となり、地上速度より50から60マイル早く飛行できます。スピードや後退翼を選ぶことも可能ですが、コストが増える効果があります」
  8. もうひとつコスト削減につながるのが現行U-2と同じセンサー一式を搭載することだ。「グローバルホークの多機種共通レーダー技術導入プログラム(MP-RTIP)を搭載する可能性はあります。強力で高性能なレーダーですから」とウィンステッドは言う。RQ-4BのレーダーはU-2搭載が最近認められたレイセオンの高性能合成開口レーダーシステム(ASARS-2B) に匹敵するという。「どちらが優れているか知りたいので使って見るわけです」 新型機は米空軍のオープンミッションシステム(OMS)機体構造標準で作る。
  9. 機体寸法、重量、出力で現行U-2から大きく外れることはないだろう。「機内発電容量は45kVA以上とし最適規模を検討します。その容量はU-2と同等ですがステルス機体で主翼を延長し、滞空時間を伸ばし、グローバルホークと同等にする他、燃料搭載量を増やします」(ウィンステッド) 具体的な寸法は示されていないが、現行機の翼幅103フィート、全長63フィートが参考になろう。
  10. U-2後継機の開発大日程案は全く不明だが、ロッキードによれば開発工程の重要部分は機体設計で要求内容を実現することだという。「U-2で実現されている最良の部分とグローバルホークが優れている点を合わせた設計になります」とウィンステッドはいい、さらにロッキードは「ノースロップ・グラマン、ボーイング、ジェネラルアトミクスと競合すると予想しており、当社より優れた設計が他社から出てくるか見ものだ」という。
  11. ロッキードはU-2を1950年代に迅速に設計して「スカンクワークス」は困難な事業を短期間かつ極端に低予算で実施できると定評が立った。「初号機を作るのが簡単だった理由として簡潔かつ明瞭な要求内容があり、途中で変更されなかったことがあります」とU-2事業部長メラニ・オースティンは語る。「当社は自由にやらせてもらい、予算はここにあるから短期でどこまでできるかやってみろといわれたわけです。同じ環境ができれば、また要求内容を明確にしてもらえば、また途中変更がなければ、開発は迅速に完了し費用対効果が高くできます」■


2014年11月27日木曜日

★ロッキードが提案する無人機版U-2はグローバルホークを凌駕できるか



ISR機材のお話です。グローバルホークに軍配を上げたペンタゴンは省内の検討でも僅差だったといいますが、ISR機材を複数維持する余裕がない、とせっぱつまった状況だったのですが、これで黙っているようなロッキードではありません。U-2が無人機グローバルホークに負けるんだったら、U-2を無人機にすればいいと提案にまとめてきました。議会にはU-2といいA-10といい特定の機種に肩入れをする議員が多いので、意外な反応を引き起こすかもしれませんね。一方でU-2の操縦は思ったより難しそうですね。

Lockheed Updates Unmanned U-2 Concept

U-2 advocates push optionally manned variant as a rival to Global Hawk
Nov 24, 2014 Amy Butler | Aviation Week & Space Technology

ロッキード・マーティンから予算節約型の「有人オプション」のU-2提案が出てきた。議会が高高度偵察機材をノースロップ・グラマンのグローバルホークに一本化していいのか悩むなかで新しい選択肢が生まれた。選択式で有人操縦が可能なU-2には同機の愛称ドラゴンレイディの支持派からRQ-4Bグローバルホークの飛行時間に匹敵する機体との声がでている。ただし、議員連が納得してもペンタゴンが採用に踏み切るのは困難だと見られる。
  1. 国防総省は10年以上も態度をあいまいにしたあげくU-2の全機引退の道筋を2015年度予算で示し、グローバルホークだけで編成する偵察機部隊の実現に道を開いた。だがU-2支持派も性能上の優位性にペイロード5,000-lb.(グローバルホークは3,000 lb.)、実用高度限界70,000 ft. (グローバルホークは60,000 ft.)があると黙っていない。特に高度差はそれだけセンサーの有効範囲が変わることになり、U-2の勝ちである。
  2. ペンタゴンの最終裁定はグローバルホークに18億ドルでU-2とほぼ同等の性能となる改修を実施する選択だった。議会への報告書で4月に空軍は91億ドルをグローバルホーク関連で支出し、45機調達するとし、7機がベースラインとなるブロック10機材、6機がブロック20仕様(一部に戦場空中通信ノード中継装置を搭載)、21機がブロック30(画像信号情報収集能力を付与)、さらに11機がブロック40(レーダー搭載)となる。

  1. もともとは国防高等研究プロジェクト庁による安価な無人航空機システムとして開発されたグローバルホークが支援ミッションに投入されたのは9/11テロ攻撃の後である。中東、アジアで支援ミッションを展開し、実地使用の経験則を獲得したが、アフガニスタンでの作戦がなかったら同機の将来はなかったかもしれないが、その同機がU-2の後継機種として地位を獲得したのだ。
  2. U-2に対する最大の長所は飛行時間。グローバルホークの最大滞空時間は24時間超だが、U-2ではパイロット規程でコックピット内12時間が上限だ。U-2パイロットは与圧服の着用が必要でアフガニスタン作戦では長時間飛行で乗員が潜水病と同じ症状を訴える例が発生。油圧制御がないため、U-2操縦は難易度が高いことで知られ、パイロットは強風に文字通り筋力で立ち向かっていた。着陸も揚力性能の余裕がなく、危険と背中わせだった。
  3. だがロッキード・マーティンによればU-2の「無人化」の方がグローバルホーク改修よりはるかに安価に実施できるという。一部新設計で総額700百万ドル、オプションで3機のU-2を有人操縦化し、地上支援設備も二組確保できるという。地上設備と言っても小型ラックとプロセッサーだけなので、事実上世界のどこでも展開できる。機体単価は35ないし40百万ドルだという。.
  4. 新設計では中央ウィングボックスを金属製主翼の中央に追加し、10フィートの幅延長となる。またコックピット後方に機内のアクチュエーターと連結する接続ケーブルのスペースを設ける。「パイロットは電子式にアクチュエーターを切り、あとはケーブルで飛行できる」とロッキード社は説明。この設計でコックピットは有人飛行モードでも改良が不要となった。
  5. 機首を上下させるトリムが発生した場合にパイロットはおよそ75 lb.の力を操縦桿にかけて飛行を続ける必要があった。これは長時間ミッションが終わりに近づく中耐圧服を着ながらでは大変な仕事だ。「オートパイロットを作動させ、そのまま着陸まで持っていけるようになった」とロッキード社はいう。
  6. 中央ウィングボックスの追加スペースにはフルモーションのビデオセンサーを搭載できる。ウィングボックスを活用することで尾部にかけて再設計が不要となる。ロッキードは2012年にも構想案を提出しているが、今回はこれを手直ししている。2012年案では 全幅140フィートの主翼を複合材で準備し、燃料搭載量を確保するとしていた。.
  7. 現時点でロッキードは初期設計を完了しているが、同社提案でU-2全面退役に不信感を抱く議会メンバーが興奮するだろう。U-2の最終号機は1989年完成で、各機の構造寿命はまだ残っている。むしろグローバルホークの改修作業の方がリスクを生む。
  8. ペンタゴンの高高度偵察案も二転三転している。2012年にはグローバルホークのブロック30を全廃し、U-2を維持するとしたが、今年に逆転している。■


2014年6月15日日曜日

U-2全廃してもグローバルホークに19億ドル改修しないと使いものにならないのか


予算が潤沢であればミッションごとに複数の機種を維持できたのですが、昨今の予算環境では贅沢なことは言えなくなっています。しかし海軍と同様に政治が機種選択にいらぬ口を出してくると空軍も大変ですね。ISRは大変重要な分野なので、超高度を飛行できないグローバルホークを残し、U-2を全廃することで禍根を残さないことを祈るばかりです。

Global Hawk Needs $1.9 BN in Upgrades Before U-2 Can Retire


UAS Vision, 11 June 2014

RQ-4_Global_Hawk_Block_40

ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク無人偵察機が現行のロッキードU-2の全ミッションを引き継ぐには総額19億ドルの性能改修が必要と判明した。米空軍はU-2全機を退役させて予算節約を期待している。

「高高度ISR用には一機種しか維持できない」とロバート・オットー中将Lieutenant General Robert Otto(ISR担当副参謀総長)は語る。「もしグローバルホーク改修予算がないと各現場司令官に同機の利用を理解してもらえない」と同中将は空軍協会のイベントで話している。

改修内容は地上局以外に通信・画像送信能力、また機体に搭載された気象レーダーも含む、と同中将は話している。米空軍によるとすべての作業を完了するには6年かかり、費用は19億ドルだという。

空軍は今年早々に2012年に決定していたグローバルホークのブロック30機処分方針を撤回し、逆にU-2を全廃しようとしている。

わずか二年前には米空軍はグローバルホークの運用費用が高いとしていたが、その時点で同機をモスボール保存する案には議会の強い拒否反応が示されていた。

オバマ政権の2014年度予算要求では国防総省からRQ-4の運航コストの削減ができたとの報告があり、同機を温存し、U-2を全廃したいとしている。チャック・ヘイゲル国防長官によればこの決定は僅差で決まったという。■



2014年3月13日木曜日

論説 それでもU-2を退役させるのか


Editorial: U-2 Has The Edge Over Global Hawk

Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com March 10, 2014
Credit: U.S. Air Force


先週発表された2015年度予算案の説明席上でチャック・ヘイゲル国防長官がU-2対グローバルホークで熱い対立があったとの内幕を示した。予算が厳しいので高高度飛行の情報収集偵察監視(ISR)用途の機材として両機種の維持は困難であるのはだれにでもわかる話だが、両論の対立を最新派と回顧派の戦いとみることもできよう、無人最新鋭機とパイロット付きの冷戦時の遺物の対立ともいえる。ヘイゲル長官は「機齢50年のU-2よりも無人機グローバルホークを優先し」2016年からU-2の退役を始めると発言したが、両機種の比較はあまりにも単純化ししすぎで、そもそもその選択があやまりだ。
  1. ヘイゲル長官が「きわどい差」と表現したのは実に率直な言い方だった。両機種の運用費用はほとんど差がない。.
  2. U-2の方は米国史に確固たる位置を占めている。伝説のスカンクワークスでクラレンス・「ケリー」・ジョンソンのもとで生まれたU-2が東欧で情報収集を始めたのは1956年で、その後ソ連、中国他各国上空を飛行した。キューバでソ連ミサイルの存在を撮影した画像は1962年のキューバ危機で重要な転回点となった。
  3. もし現在のU-2が当時と同じ機体であればヘイゲル長官の判断は正しい。だが、今日のU-2特に最終形のU-2Sはロッキード・マーティンの生産ラインを1980年代に離れたもので、もっと重要なことに搭載するセンサーは電子光学式赤外線カメラ、レーダー、通信傍受用アンテナなどさらに性能が向上している。.
  4. さらにU-2は高性能の防御システムを搭載し、最新鋭のS-300やS-400といったロシア製防空ミサイルにも対応できるが、グローバルホークにはそもそも防御装備はついていない。グローバルホークは長時間飛行性能で優れているが、U-2は高度(70,000 ft.以上を飛び、グローバルホークは55,000-60,000 ft.が上限だ。そのためU-2はより大きな傾斜角度範囲でセンサーを作動できる。またペイロードでもU-2の搭載量が大きい。(5,000ポンド対3,000ポンド)また機内発電容量も大きい。グローバルホークは無人機であり、海外配備の難易度が高く、機体運用の立ち上げ、実施も難しい。同機には着氷防止装置がついていないので太平洋での運用信頼性は天候条件に左右され低くなる。
  5. だからといってノースロップ・グラマンのグローバルホークに価値がないわけではない。同機の出自は国防高等研究プロジェクト庁がUASの開発運用が経済的に実施可能と証明しようとしたことにさかのぼる。ただし、グローバルホークはそもそもU-2のミッションを肩代わりすることを想定した設計ではない。むしろ空軍が同機の長い主翼を見て偵察任務が生まれたというのが経緯だ。
  6. 9.11テロ攻撃を受けて、グローバルホークはU-2を補完するデータ収集任務に就いたのが出発点で、画像信号を収集し、地上あるいは水上の目標を対象にレーダー情報を集めた。海軍も同機を使い、ペルシャ湾地区での船舶の動きを監視する実証をおこなっている。
  7. その後13年近く同機は素晴らしい働きぶりをしているが、その中でペンタゴン上層部が同機ならU-2の役割を肩代わりできるのではと考え始めた。しかし、各地の司令官がU-2をどれだけ重宝してきたかは無視している。今週になりペンタゴンからU-2と同等の性能を実現するには19億ドルかかるとの発表があった。この金額はU-2を退役させて浮く金額とほぼ同額だ。
  8. では両機を比較すれば、本誌は長官の決断は間違っていると断言する。U-2は今でも性能上の優位性があるのだ。本誌の見解は新旧の対立という単純なものに写るかもしれないが、有人機対無人機と言う比較ではない。
  9. 本誌も無人機の可能性を信じるものである。RQ-180は本誌がその存在を明らかにしたのが昨年12月のことで、同機がU-2の後継機種になるのかもしれない。ただ、国防の歴史を見れば時期尚早で採用された機材がいっぱいあることがわかる。なかんずく本誌はUASで誤った決断がなされる事例を恐れており、グローバルホークをU-2の後釜にすえるのは誤りとみる。そこでU-2を当面は温存すべきと考える。■