2013年7月6日土曜日

F-35実戦化はさらに遅れる 何が問題なのか。どうしたらいいのか考えましょう

きわめて深刻なF-35開発の進捗状況です。何度も当方が主張しているように西側各国はこれだけ問題の多い機体に今後の防衛を託す決定をすでにしてしまっていますので、早急に際決断をする必要があると思います。それが計画の打ち切りなのか、新型機の開発なのか、はまだわかりませんが、仮にこのまま開発を進めるとしても抜本的な開発体制の見直し、として各国が単に発注分の引渡しをふんぞり返って待つのではなく、得意分野を共有しながらロッキードの開発をもっと現実的に支援する必要があるのではないでしょうか。なお、面白いので原文の読者のコメントを追加しています。

More F-35 Delays Predicted

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology

aviationweek.com July 01, 2013

本来なら現時点で初期作戦能力獲得を実現しているはずのF-35統合打撃戦闘機の開発でペンタゴンが工程表integrated master schedule (IMS) を作り直してから2年たらずで、この改訂版も実現が怪しくなっていることが国防総省の武器装備試験のトップから明らかになった。

  1. 海兵隊が目指す限定つき初期作戦能力獲得の目標期日に間に合わせるためのソフトウェア自体が8ヶ月遅れになっていると、マイケル・ギルモア(ペンタゴンの運用テスト評価部長 Michael Gilmore, director of operational test and evaluation (DOT&E) が上院軍事歳出小委員会で6月19日に明らかにしている。レーダーや電子光学系システムの問題により兵装統合が遅れ、そもそも設定してた時間余裕を食いつぶしたという。バフェット振動と亜音速での機体制御 wing-drop が「作戦能力(IOC)獲得上の懸念で残っている」とのこと。
  2. 何がソフトウェア開発を遅らせているのか。プログラムのテストで追加が発生しているためだ。その原因はギルモア部長によるとヘルメット搭載ディスプレイシステムhelmet-mounted display system (HMDS) の回帰テストで、変更内容が問題を発生させないことを確認する回帰テストだけで2013年中に試験項目363点の追加になったという。
  3. ブロック2Aの飛行テストは昨年3月に始まっており、非戦闘用ソフトウェアとして最後の版となる同ソフトのテスト完了目標は今年2月だったが5月末現在で35%しか完了していない。海兵隊にはブロック2Bを初期作戦能力獲得用に使うのが工程表の内容だったが、現時点では2014年4月以降にずれ込む見込みで、初期作戦能力獲得までわずか6ヶ月しかテストに使えなくなる。テストはプログラムの動作を確認し性能評価をする必要があり、海兵隊の目標が2015年7月から12月までのIOC確立なのでそれまでに完了しなくてはならない。
  4. 日程にあわせるためにブロック2Bの性能を落とすことは望ましくない、とギルモア部長も指摘し、「ブロック2Bの想定能力を実現しても運用上は他の戦闘機の支援が必要で、しかも制空権が確保されて、協力的な脅威の想定 threat is cooperative での話し」というのがその理由。
  5. ブロック3i が空軍のIOC目標(2016年8月ー12月の間)の前提となるが、これも日程は極めて厳しいとギルモアが説明。レーダーの仕様変更と関連して、電子戦、通信航法識別プロセッサーとの関連もあるという。(ただし報道された統合コアプロセッサーではない) 第6生産ロットのF-35の引渡しが2014年に始まるが、新型ハードウェアが搭載されブロック3i ソフトウェアがないと飛行できない。「ブロック3i 対応のハードウェア、ソフトウェアの成熟度が今後12から18ヶ月の課題です」とギルモアが注意を喚起してる。
  6. 同部長からはさらに2018年時点でJSFの戦闘能力について「最大の不確実性」は実用に耐えるブロック3i と平行してブロック3F が開発できるかだという。同ソフトウェアが2001年に設定した基本性能を実現する役割を持つ。
  7. ロッキード・マーティンからは「ソフトウェア開発日程を順調に完了することに自信を持っている」とし、ブロック3Fの基本開発は41% 完了している、という。
  8. HMDでトラブルが続いているが、そのテスト結果は「ばらついており、テストパイロットのコメントも分かれている」とギルモア提出の報告書が記述している。たとえば電気信号上の変動 jitter を低減させるソフトウェアは作動したが、逆に別の安定作動が犠牲になっており、コードでは「swimming」と表現されている。光源の漏れ対策としてパイロットは環境に合わせディスプレイを「微調整」しなくてはならなくなった。
  9. 日程で心配になる要素は兵装品の統合で、ギルモアが「きわめて遅い」と表現している。合成開口レーダーでは不正確な座標が出ており、電子光学目標捕捉システム electro-optical targeting system (EOTS) で追尾できない場合が見つかっている。これらを兵装テストが開始になる前に一つ一つ解決する必要がある。
  10. レーダーおよびETOSの問題は解決したが、IMSで設定した時間余裕はブロック2B、3Fの双方ですでに使い切っており、ギルモアは「ブロック3Fの最終兵装統合テストは当初の2016年でなく2017年末になりそうである。これによりブロック3Fの運用テスト開始を2018年に実現することは困難」と記述している。
  11. 現時点での兵装テストにはAIM-120誘導発射テストを2013年11月(ソフトウェア改修を前提)、GBU-12レーザー誘導爆弾テストを10月、統合直接攻撃弾薬 Joint Direct Attack Munitionの誘導投下テストを12月としている。
  12. 高速方向転換での振動および亜音速下の機体制御低下にはショックウェーブが関連しており、JSF各型で解決を迫られている。今年内に飛行テストでこの問題を解決する予定だが、現在の制御方法では限界に来ているとギルモアは見る。
  13. 以前のテスト評価部長報告書ではF-35が事故あるいは戦闘で受ける損害に耐えられるか批判的であったが、最新版も踏襲している。ギルモアが見るところ落雷耐久性テストは未完了であるが、すでに実際に落雷を受けた機体の点検が必要としており、落雷耐久性のあるファスナーを使用していないので機体表面でどこまで落雷の影響があるか点検したいといしている。従来型のファスナーは機体重量軽減化のため使われていない。ロッキード・マーティンによると飛行中の落雷対策は承認済みで設計審査も終わっており、今年後半にテストを集中的に行うという。
  14. ギルモアからは機体機能異常予知システムはF-35Bのリフトファンシステムの戦闘中破損を手際よく探知できないといい、垂直着陸への切り替え時に「パイロットが適切な対策をとれずに致命的な結果につながるかもしれない」という。ロッキード・マーティンからは「その故障の確率は低いが、パイロットは自動脱出できる」とコメントしている。■

オリジナル版の読者からのコメント(個人の意見です)

Superraptor

惨憺たる内容だ。希望が見えない。今こそF-35打ち切りの決断をし、もっと使いでのある機体開発に乗り出すべきだ。F-35は技術史で失敗作となっている。

Yodelling Cyclist

「制御方法の限界に来ている」

これが意味するのは構造的な変更が空力特性上の表面効果を出すために必要ということで、おそらく重量増(表面面積の増加により)となる。テストは規模を拡大することになる。あるいは西側諸国は亜音速では急方向変更できない戦闘機を配備することになるということ。

IOC予定時期について各軍から発表があったばかりで、今度は実はその期日がきわめてあいまいであることが暴露された形だ。悪い知らせを報じた者とは別に大嘘をついている者がいるということか。

Raptor

ソフトウェア開発が遅れているとは何ということか。LM社は米国以外に多くの諸国にとってF-35が最優先事項の開発案件であることがわかっているのか。

自身もプログラマーなので期日に合わせて複雑なソフトウェアの開発が大変であることは重々承知しているとはいえ、最重要国防案件に従事しているのにソフトウェア会社は発注者からお小言を受けないのか。

本来開発は二三年前に完了しているべきもので、今からではプログラマーが熟達するのに時間が足りないのでもう遅い。

またLM社ほどの大企業が納期にあわせるべく50人や100人のプログラマーを探巣のが困難とは信じられない。

フライトテストに関しては兵装投下テストはしているとは思うが、もし完成機が特定の兵装を投下できないことが判明したら格好悪いことこの上ない。

こう考えるとC型への悪影響が一番少ないようだ。同型がIOC獲得に到達するのが一番遅いから。

haavarla

バフェット振動と亜音速機体制御の低下について、なぜLMはスホイがSu-34でできたことができないのか。同機も主翼バフェット問題を抱え、とくに重装備で顕著だったが、スホイはこれにとりくみ、一日で解決策を考え、一週間で改修している。安上がりかつ効果的な方法だ。
だが、だめ、LMにはこれは簡単すぎるのだろう。同社はペンタゴンからもっと資金を引き出そうというのだろう

wuzafan

リフトファン破損を探知したらパイロットを自動射出脱出させるとは そんなひどい設計だったのか、なんという会社なんだ
一番いいのはすべてを終了してSu-35を購入することだろう。これ以上貴重な血液をこのような失敗作につぎこめばどうなるか。

SlowMan

F-35の中止は今からでも遅くない。二機種開発し、ひとつはステルス機でA型C型のかわりに、ハリヤーの後継機がB型にかわるもの。あ、ロッキード・マーティンは主契約会社にしないように。

制服組とDOTE文官組織で同機の現状をめぐり大きな断絶が存在している。もし、USAF/USMCの上層部の説明を聞けばすべてがすばらしく進展していることになる。だがF-35では数多くの問題が明らかになっており、LM社から報酬を得ている400名もの議員をかかえたまま、同機開発は結局進まないだろう。

Yodelling

「脅威が協力的」

脅威が協力的になることはない。何かが協力的だとしたらそれは脅威ではない。本当に「協力的な」脅威であれば小型機を投入すればことは足りる。なぜ超音速ステルスジェット戦闘機で垂直離陸機機能があるものを投入する必要があるのか。

ギルモアがいおうとしているのは「軽武装のゲリラを航空援護なしで攻撃するだけだったら、どうか神様われわれを危険地に送らないでほしい」ということなのだろう。

Tanker0316

なんと言う浪費。この失敗作はここでとめて次はもっとよい機体をつくるべし。アメリカがこんな機体しか作れないはずがない

Hardcore

もともと同機は西側の戦闘機需要を独占して他のメーカーの仕事を奪うのが目的だったのだろう。それが今では逆に米国のノウハウを危うくしている。F-35が長い時間をかけて実用化すると、ロシアや中国のジェット戦闘機はもっと先を行っているはずだ。グリペンNGも就役しているだろうし、その他のプロジェクトも出てくるだろう。トルコ、韓国、日本はもうその準備をしているようだ。するといつ日かEUもラファールトタイフーンの後継機種を求め始めるだろう。その時点で米国から提供できる機体が存在しているのだろうか。

Geogen

「IOC」どうのこうのではなくジェット機を「欠陥のあるまま」購入して格納庫にしまっておいたら?

大事なのは雇用の確保と産業間のシナジー効果なのでは。F-35が使える形になっても再作業改修に6年も7年もかけるのではないか。

JeffB
作成すべきソフトウェアの量が巨大なのだろう。テストチームも数百あって徹夜しても問題点を解明しようとしている。これだけの組織を統括するだけでもひとつの大プロジェクトだ。作業も長期間になり、技術開発が進んでくると新しい解決方法も視野に入るはずで、ソフトウェアを書き換えるのか、ハードウェアが追いついてくるまで待つのか。

IOCが2020年になるのではなく、「完全性能」とすべきだ。ブロック2Bと3Iのハイブリッド版が2017年ごろにはできるはずで、そうなると2002年時点で宣伝していた機能の7割が実現する。それでいいのではないか。F-16.netでバフェットとロールオフを指摘したら嘲笑を受けたが、どっちが正しかったのかわかるだろう。

royal

これだけの変更点や遅延は中国がハッキングや古典的諜報活動をしたための対応だろう。次回は米国企業・米国下請け企業とだけ取引すべきだ。

RunningBear

「プログラマーとして納期にあわせて複雑なソフトウェアを作成するのはとても困難な仕事と理解している」

おっしゃるとおり。ただ報道内容が古い。現時点でLRIP4ブロック2Aの32機中20機が飛行中で、残る12機も今年中に非公開視する。2A搭載一号機BF-19は海兵隊ユマ航空基地で飛行中だ。LRIP5の32機が来年引渡しになる。ブロック2Bへのソフトウェアアップグレード版がエドワーズで飛行中で、、2A搭載機すべてがアップグレードされる。ブロック3i へLRIP4/5の64機が後日更新される。システムアップグレードすべてでセンサー/ハードウェアのアップグレードが必要となるわけでない。

Hobart
二十年も前に海軍大学校で米空軍と米海軍がF-22とF-35、スーパーホーネットとF-35をそれぞれどちらを選択すべきかの議論があった。現在でもF-22もF-35も一発も実戦で発射していない。わが国はこれからどの国と一戦を交えることになるのか。両軍通じてもっとも優秀なウェポンシステムはA-10でUSAFは同機に消えてもらいたいと願っていたのだ。ところで米海軍用F-35Cは機関銃を搭載しない。F-4のベトナムでの教訓はどこに消えてしまったのか。

JOHN HANSEN

記事は60年代のTFX開発のように見える。

Patagonia

記憶が正しければ米海兵隊は総額200百万ドルで英国からハリアー149機および装備品を購入している。F-35Bの単価は135百万ドルといわれるので、ハリアーの耐用年数延長のほうが賢い選択ではないか。F-35B数機の値段で短期間で完了するのでは。もちろん航空機メーカーはこの案を受け付けないだろうが、米国の納税者としてはぜひ検討してもらいたい。

2013年7月5日金曜日

インド初の国産空母の進水近づく

India’s First Indigenous Aircraft Carrier Near Completion

By Jay Menon
Source: Aviation Week & Space Technology

July 01, 2013
Credit: Indian Defense Ministry

海軍力拡張を目指すインド初の国産航空母艦indigenous aircraft carrier (IAC) の進水は8月になりそうだ。

海上公試はその10ヵ月後とインド政府高官は発言。それでもINSヴィクラントVikrant (同国が運用した初の空母の艦名を継承)とすでに命名されているIACの艦隊編入は5年後の見込みだ。建造はコチンで進水は8月12日を予定し、その後作業を続け2014年6月に艦体は完成する。

海軍への引渡しは2018年1月までに行う。排水量は45,000トンで建造費は50億ドル。契約交付の2007年から工期は6年以上かかっている。IACの当初の艦隊編入は2014年の予定だったが、ロシア製鋼板の不足、ギアボックスの技術問題当で遅延したもの。

旧ロシア海軍のキエフ級空母アドミラル・ゴルシコフはINSヴィクラマディチャVikramaditya(45,000トン)として公試中であり近日中に就役中の唯一の空母INSヴイラット Viratに加わる予定。

インド洋におけるインド海軍力の整備は海賊対策の上でも有益とインドの国防研究研究所 Institute for Defense Studies and Analysesは見ている。■

2013年7月3日水曜日

米空軍 B-52を2030年代末まで運用する

B-52s to receive communications upgrade
USAF websiteより
Posted 6/28/2013  by Mike W. Ray
72nd Air Base Wing Public Affairs

6/28/2013 ティンカー空軍基地、オクラホマ州---長年にわたり供用中のB-52ストラトフォートレス爆撃機部隊の通信機材更新が7月より当地で開始される。

戦闘ネットワーク通信技術システム Combat Network Communications Technology,CONECT により乗員は情報の送受信を衛星経由で行えるようになり、ミッションプランの変更や目標の再設定が飛行中に可能となる。さらにパイロットは僚機との通信に加え地上部隊との交信も双方向で可能となる。現状ではミッション情報をフライト前に毎回アップロードしている。

その他の性能向上内容として最新鋭のコンピュータ・ネットワークに各自のワークステーションでアクセスできる他、デジタル式機内通話にノイズキャンセル機能を加え乗員はヘッドセットで会話ができる。

CONECT改修は総額76百万ドルでボーイングが実施し、ティンカー空軍基地でCONECTキットの生産、保守部品、維持管理を行なう。キットは低率初期生産分8セットでロット1とし生産の基盤を作り実用テストの後で本格生産に移る。最終的にB-52H全機にCONECTが搭載される。

7月に定期点検でティンカー空軍基地に到着する機体がCONECT搭載一号機となる。定期点検の標準工期は9ヶ月で終了は来年4月。

1961年から62年にかけ納入されたB-52Hは計画的改修で運航されてきた。たとえばGPSを航法システムに1980年代末に搭載している。

空軍は技術検討の結果から同機を最低でも今後25年間は運航できると考えている。■

米海軍の次期艦載機材選びに考慮すべき要因 F-35Cは本当に必要なのか

                              

Defining U.S. Navy TacAir Choices

By Bill Sweetman
Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com June 24, 2013
Credit: JSF Program Office



米海軍が将来の航空機構成で決断を迫られている。現行のF/A-18E/F スーパーホーネット、EA-18Gグラウラーの戦術航空機構成をF-35Cに円滑に移行させつつ新開発の空母運用型偵察攻撃UAVを購入する資金を確保できるのか。


F- 35Cの更なる遅延にも手を打つ必要がある。同機はまだ空母着艦能力を実証していないが、着艦フックの設計変更をし2014年に公試に臨む。海軍は初期作 戦能力は暫定的なブロック3Iソフトウェアでは獲得できないとし、ブロック3Fの利用開始を待つこととしたため、開発日程管理のリスクが増えている。 2015年に最小限のF-35B/Cを購入し(引渡しは2017年)、2016年は18機、2017年は28機と順次増やして、2018年以降は40機を 調達する。


一 方でスーパーホーネット購入予定は2014年になく、21機のEA-18Gで組立てラインを維持する。今後の海外販売の動向で生産活動は左右されそうで、 オーストラリアからのEA-18G12機発注が一番確実だが、その他ブラジル、デンマーク、アラブ首長国の動きも目が離せない。海外発注数が増えれば、海 軍にとってF-35のIOC時期確定までのオプションが有効になる。


ボーイングジェネラルエレクトリックよ り高性能版スーパーホーネットの提案があり、F-35Cとの比較で類似点がかなりあることがわかる。F-35の長所はステルス性が高いこと、2,000- lb.級爆弾を2発搭載してステルスモードが可能だという点だが、ボーイングはレーダー断面積削減と電子戦システムで生存性は十分あり、しかもF-35C より安価と主張している。


も ともとF-35Cはスーパーホーネットやグラウラーとの交代を想定していないし、F-35C開発が予定通り進展すれば同機の本格生産は2032年まで続 く。つまりその年がF/A-18 後継機の引渡しが最短で開始する年になる。ただ海軍はスーパーホーネット、グラウラーの耐用年数を延長すべく作業中で、2035年までの供用を実現しよう としている。F/A-18E/F 各機の実飛行時間累計は設計上の6,000時間の3割に相当、と海軍は発表しているが、耐用年数延長で低リスクで9,000 時間実現が目標。


耐 用年数延長には空母運用方法を変更し自動着艦、飛行誘導技術をX-47B無人戦闘航空機システムの実証結果を流用すれば可能だ。共用精密接近着艦システム Joint Precision Approach and Landing System (Jpals) の空母搭載が予定され、期待が高まっている。F/A-18に搭載された同システムの実験ではタッチダウンで縦方向10-12-ft. 横方向 9-in.の着艦精度を実証した。


自 動スロットル制御、飛行制御システムを搭載した機体での自動着艦そのものは米海軍にとって目新しい技術ではない。ただ現状では米海軍の自動着艦システムは レーダーを使用するもので空母の位置を誤って伝え、一機ずつしか誘導できないのが制約条件になっている。これに対してGPS応用のJplasは短距離狭帯 域のデータリンクを使う。


自動着艦は機体寿命に重要な要素で、着艦発艦はきびしいストレスを機体に与えるので耐用年数を短くしてしまうのだ。X-47Bの初の空母発艦を5月に実施し たことから、海軍首脳部から自動着艦への関心が再度高まり、高精度誘導を有人機にも提供し、空母着艦訓練回数を減らし、着艦フックの使用を減らすことが期 待される。現状ではパイロットの技能維持のため訓練を実施している。


そうなるとスーパーホーネット、グラウラーの退役予定は2035年より先になる。これによりジェネラルエレクトリックの新型エンジン提案およびボーイングの 一体型燃料タンクとステルス性能向上策への注目を高めそうで、耐用年数が増えれば投資効果も高まり、同時に運用条件が厳しくなるからだ。ALQ-99ジャ ミングポッドや外部燃料タンクを搭載して大重量高抗力の条件で日常的に運用されているグラウラーでは一体型燃料タンクと出力増の恩恵を受けるはずだ。


海軍は米空軍からの依頼で各種のミッションをこなしているが、両軍で思想の差が浮き出ている。海軍作戦部長ジョナサン・グリーナート大将は米海軍協会紀要 U.S. Naval Institute's Proceedings magazine に昨夏掲載された論評記事に注目している。ステルスの真価に疑いを提起した記事だった。本当に重要なのはペイロードの活用で既存機種の性能を追加することだ。


海軍の対水上艦戦 anti-surface warfare (ASuW) 技術の開発でこの傾向は明らかで、センサー類に加えいわゆる「ネット運用可能」兵装 “net-enabled” weapons がここに含まれ、目標探知と命中に他のセンサーを利用するミサイルを想定している。ただしこれは通信が確立されている場合で有効な技術だ。レイセオン製高性能空中センサー Advanced Airborne Sensor のレーダーが新型ボーイングP-8A海洋パトロール機に搭載されており、海上目標の探知、分類、識別を離れた地点から行い、ネット利用可能兵装にデータを提供する。


新しいASuW兵装には空中あるいは海中発射のボーイングのハープーン、スタンドオフ長距離陸上攻撃ミサイルの後継型もある。その候補となるのがレイセオンの共用スタンドオフ長距離兵器 Joint Standoff Weapon-Extended Range だ。長期的には海軍と国防高等プロジェクト研究庁で共同開発する長距離対艦ミサイル構想があり、ロッキードのAGM-158共用空対地スタンドオフミサイ ルを開発しようというものだが、シーカーはパッシブ方式高周波センサー技術と画像処理赤外線端末センサーを組み合わせている。このセンサーの公試が 2012年5月にはじまっており、今夏には実弾発射試験を開始する。


こういったスタンドオフ兵器ではステルス機の投入は必要なく、発射したあとの兵装はレーダーを使用せずに目標に接近できるので、敵の対空システムの犠牲になる可能性が減る。■




参考 F-35Cと高性能版スーパーホーネットの比較表

F-35C
Advanced Super Hornet
初期作戦能力獲得予想年
2019
2018
2012年度ドル換算取得コスト
$115 million
$88-92 million
機体構成
Clean
CFTs / Weapon Pod
ステルス度
High
Moderate
電子戦有効範囲
Forward aspect X-band
All-round, multi-band
デコイ牽引
No
Yes
作戦空虚重量
34,800 lb.
32,650 lb.
内部搭載燃料
19,750 lb.
18,450 lb.
内部搭載兵装重量
4,700 lb.
2,700 lb.
推定離陸重量
61,000 lb.
55,000 lb.
最大推力(通常)
27,000 /43,000 lb.
29,500 /44,000 lb.
最大推力(緊急時)
NA
35,400 / 52,800 lb.
翼面積(総合計)
680 sq. ft.
500 sq. ft.
翼面積(正味)
376 sq. ft.
400 sq. ft.
推力(通常)、重量比
0.44 / 0.70
0.54 / 0.80
推力(緊急時)、重量比
NA
0.63 / 0.96
翼面荷重(総合計、正味)
90 / 162 lb. / sq. ft.
110 / 138 lb. / sq. ft.
搭載燃料の機体最大離陸重量比率
0.32
0.34
最高速度(マッハ)
1.6
1.6
加速性能 Mach 0.8–1.2
greater than 100 sec.
less than 50 sec.
最大G
7.5
7.5