2013年9月23日月曜日

米空軍は発想の転換を 低コスト機の開発を真剣に考えるべき

       

Editorial: USAF Should Be Open To Low-Cost Aircraft

Source: Aviation Week & Space Technology
aviationweek.com September 16, 2013
Credit: USAF

1947年の創設以来一貫して米空軍はハイエンド機機材を求めてきた。発足時の第一線機は軽量P-51マスタングとF-86セイバーだったが、その後重量級F-105サンダーチーフ、F-106デルタダートそしてF-111(正式名称なし)へと変遷していく。
  1. ベトナム戦争では機関銃を装備した高機動戦闘機が必要と痛感されたが、空軍の理解は重量級双発F-15イーグルとして実現した。この裏では通称「戦闘機マフィア」の空軍将校および民間人アナリストが一緒になり、軽量級戦闘機の必要を訴えていた。
  2. その結果生まれたのがF-16で最も成功した戦闘機という評価もあるが、同機はローエンドとしてF-15とのハイローミックスで生まれたもの。だが空軍はすぐ昔どおりのやり方に戻り、ステルスだが大重量で高価なF-22ラプターを開発し、同機のハイローミックスのローエンドがF-35共用打撃戦闘機となるはずだったが、F-35はとても軽量とは言えず、戦闘機というよりも攻撃機の性格が強い。
  3. F-22調達は190機弱に削減され、F-35はコストと日程で大きなプレッシャーを受け続けている。一方で空軍はアフガニスタン上空でF-15、F-16やB-1を周回飛行させて情報収集監視偵察任務に投入することで数百万ドルを毎日支出している。今こそ空軍の思考型式を再構築すべきではないだろうか。
  4. 空軍の元将官、元将校が業界の「一匹狼」テキストロンと組んで、新思考で自費開発を低運行費の戦闘航空機開発を開始している。同機はスコーピオンの名称で近接航空支援機としてA-10やF-16に替わるものとなるが、軽量攻撃機スーパートゥカーノやISR機材キングエアよりは上位の位置づけになる。
  5. 同じような事例があった。60年代初頭に海兵隊の一部将校が対ゲリラ戦機材を提唱し、これをノースアメリカンがOV-10ブロンコとして実現、同機は成功事例とされる。70年代初頭に戦闘機マフィアがF-16、F/A-18を生んだ。ジェネラルアトミックスはプレデター原型機を入手し、空軍とペンタゴンに無人機運航を忍耐強く説得し、その後戦闘のあり方を変ええている。
  6. 一方で内部外部から考え方を変えようとする試みには失敗例も多くある。80年代初めにノースロップは自社費用でF-20をF-5発展系として開発したものの、政府がF-16輸出を解禁したことで頓挫している。80年代なかごろにはボーイングがアレス低価格攻撃機を提唱し、今回のスコーピオンと似た構想だったが結局失敗している。
  7. では今回は退役将官とビジネスジェット機、ヘリコプター、ゴルフカーとノ生産で知られる民会会社のチームが過去にうまく行かなかった試みを成功させられるだろうか。課題は空軍に過去の経験を学ばせて再度ハイローミックスを戦闘の実態に合う形として実現できるかだろう。
   

       
上記記事に対するオリジナル読者コメント
  • この案件でメーカーは固定価格を提示すべきだろう。コスト上昇分を政府が全部負担した時代は去り、新兵器の購入は新車購入と同じく買い手は正価を払うべきだろう。議会は兵器システムのコスト超過事例にうんざりしており、米空軍は確実な固定価格を提案すべきだ。
  • 国防産業を存続させるためにも大手業者は自社費用による開発を行い、成果物を完成させてから軍に売り込みをかけるべきではないか。まさしくこの方法で海外政府は米国製防衛装備を購入しているのであり、米国は例外というのは認められない。
  • DoDが過剰性能の案件すべてに過剰支出するようなことはもうやめるべきだ。これでは米国は破産に追い込まれる。
  • F-15,F-16,F-18でそれぞれ近代化改修の提案があり、電子装備、ステルス性の向上がうたわれているが、各機はすでに世界最高級の機材であることは証明済みであり、各機の生産継続には意味がある。第三世代、4.5世代機に改修を加えれば2020年代までは十分通用するのではないか。
  • 米空軍以外は単一目的の機材を発注しているが、米空軍は多用途機を発注して価格、性能への影響を無視する過ちを繰り返している。
  • 低コスト機を米空軍が開発するのであれば第五世代機でなくてはならない。つまり、最低限でも全領域ステルス性、兵装内部搭載、センサー融合,AESAレーダーが必要。つまり第四世代機を改修しても敵が第五世代機を配備した環境では優越性を確立できない。仮に米空軍がF-35を中止しても中国、ロシアがそれに応じて自国の第五世代機開発を中止することはない。仮に米空軍がF-35を中止しグリペンを採用するのであれば、70年代にF-16を取りやめてヴィゲンを導入するのと同じだ。米空軍、NATO双方に良い結果をもたらすとは思えない。
  • ダグラスA-1スカイレイダーは傑出した安価な地上攻撃機だった。アフガニスタン戦役の後半に同じ構想で設計した機材を投入できればよかったのだが。実際には空軍も海軍も第一線ジェット機を石器時代の軍事技術を用いる敵に投入している。F-18を地上攻撃に使って何十億ドルを浪費してきたのだろうか。
  • 米空軍はどんどん空っぽの組織になってきた。機材の平均機齢は高くなる一方だ。ごく少数で使用自体がリスクになる高価格の機体しか配備されないとどうなるか。F-22は一回も実戦投入されていない。非常に低価格だが高性能のグリペンの発注に賛成だが、土壇場でスペックを変更してそれまでの努力を無駄にすることは避けたい。(大統領専用ヘリでのばかげたスペックとコスト上昇の例がある)
  • 同時進行する多方面戦闘では一番状況が厳しい戦線に最優秀機材を投入し、そうでない方面に低価格機材を配備すべきだ。低脅威の戦場に高価格機材を投入し続ければ破産してしまう。あるいはいつも最悪のシナリオを想定していても同じだ。海軍にはF-18の三ないし四飛行隊が改修を待ち、稼動していない状態で各機1ないし3百万ドルかけ機体寿命延長を待っているが予算不足あるいは人員不足で計画通り進んでいない。新型F-18EF調達を毎年2機削れば既存F-18C/D/E/Fが40から50機改修する予算が捻出できるのだが。
  • アフガン戦線でT-6、トゥカーノのどちらが優れているか論争があるが、なぜOV-10のエンジン換装型を投入できないのかどうしても理解できない。未整地飛行場での運用性と単純な機構により同機はアフガニスタンの作戦環境に合うはずだ。
  • スコーピオン構想は低脅威ミッションで異なる状況に柔軟対応できそうだ。機体を複雑な構造にしても低脅威ミッションでは決定打になない。むしろ柔軟性が肝要だ。今日の機体そのものがコンピューターの格納容器になっているのが現状だ。
  • A-10の代わりになる機材はひとつしかない。A-10を増産すべきだ。F-35はあまりにも高価であるが、既存機材に匹敵する性能はない。ではF-15等の改修はどうかというと、はるかに安価でそれでも相当の性能を実現できる。F-22の役割は開戦時に航空融雪製を確保することでその後は安価で作戦に適応した機材を投入すべきだ。その意味でA-10の代わりになる機材はない。
  • 家計収入支出の基礎講座をアナポリス、ウェストポイント、空軍士官学校では勉強していないようだ。
  • ハイローミックス構造は常に有効。ローエンド機材に対する航空優勢確保は過剰投入になる。第五世代機による航空優勢確保には利点があり今後も米空軍の基本となろう。しかし、ローエンドもしっかりとデマケされて今後も成長していく。 AT-6/A-29なら過去20年で発生した紛争の大部分で有効な攻撃支援機材となる。A-10は基本的に対戦車攻撃任務の地上支援機材であり、その設計思想は次の機材に一部継承されようが、新型機はフルダ渓谷で敵戦車を釘付けにする必要はもはや存在しないのだ。精密兵器と目標捕捉技術の進歩で搭載兵器を目的地に運び、自機を防御することだけすればよくなった。一機ですべての任務を果たすのは不可能。
  • はっきりさせよう。機材はアメリカ製にすべき。
  • 第五世代機がステルス性を維持できるのは兵装、燃料を着たい内部に搭載してこそ。中国のJ-20は十分な機体寸法があり、Su-50も機内搭載で空対空任務をこなす設計だ。一方F-35はこの点で機体が小さすぎ、爆弾投下も風量が低いことが条件なので、視認誘導のSAMの標的になろう。低コスト機材の役割は①防御的正確の短距離交戦 ②ステルス機の模擬飛行特性再現 とし第五世代機のライフサイクルコストを節約すべきだ。

イージスBMDテストで初の連続発射で迎撃に成功

Aegis Intercepts In First-Ever Salvo Test

By Amy Butler abutler@aviationweek.com, Michael Fabey mike.fabey@aviationweek.com
Source: AWIN First
September 19, 2013
Credit: MDA

.米ミサイル防衛庁 (MDA) がSM-3 Block IBミサイルによる初の連続発射によるミサイル迎撃に成功した。迎撃はこれまでの最高高度で実施された。
  1. 一発目のSM-3 Block IBは目標を捕捉。この目標は短距離弾道ミサイルで「これまででもっとも複雑な迎撃目標」とレイセオンが説明している。
  2. 二発目は2分後に一発目が失敗した場合に備え確実な目標破壊のため発射された。一発目がすでに迎撃に成功したため、破片がとびちる中を飛翔した。
  3. 目標補足したのはイージス巡洋艦USSレイクエリーのSPY-1レーダーで同艦がミサイルを発射。同艦のイージスシステムはBMD4.0ウェポンシステムで、SM-3 Block IBにはミサイルには二元赤外線追尾装置および高性能方向変換高度完成機能がついておりIAから改善されている。
  4. 同艦には第二世代イージスBMDウェポンシステムが搭載されており、火器管制の解を出しSM-3ミサイル二発を発射している。この第二世代では交戦距離が拡大しており、高性能の弾道ミサイルにも対応できるようになった。
  5. 今回のテストデータはシステム評価に活用される。レイセオンによると二発目のSM-3 IBの飛翔データから連続発射方法を確立していくという。
  6. 「今回のテストは実戦を意識したもので、標的の発射時刻や方位は事前に知らせておりません。また標的はこれまでで一番難易度が高くなっていました」と海軍が発表。
  7. 今回のテストはFlight Test-Standard Missile-21 (FTM-21)と命名され、これでSM-3ブロックIBはイージスBMD4.0ウェポンシステムを使いテストに四回連続成功したことになる。.
  8. 「今回は初めてUSSレイクエリーの乗員がBMDウェポンシステムを使い解析、発射、管制を同時に複数のミサイルを対象に実施したもの」とイージスの主契約社ロッキード・マーティンは説明。
  9. イージスBMD計画は2002年より発射テストを開始しており、今回のFTM-21は33回中27回目の迎撃成功となった。
  10. SM-3は数週間内で再度テスト発射が予定され、次回も成功すれば、本格生産が開始の運びとなる。

2013年9月22日日曜日

ボーイングC-17生産は2015年に終了

Boeing To End Production Of C-17 In 2015

By Jen DiMascio
Source: Aerospace Daily & Defense Report
aviationweek.com September 19, 2013

海外発注の低迷および米国防予算削減に伴う不確実性を理由に、ボーイングはC-17生産ラインを2015年に閉鎖する。同社が発表した。
  1. 「生産終了は困難だが必要な決断」とボーイング防衛部門の社長CEO、デニス・ムレンブーグ Dennis Muilenburg は声明文を発表。
  2. ボーイングは海外顧客複数が発注している22機を完成させてから生産ラインを閉じる。
  3. 今回の決定で影響を受けるのは3,000人規模で、多くがカリフォーニア州ロングビーチの同社最終組立工場で働いている。発表はセントルイス、メイコン(ジョージア州)、メサ(アリゾナ州)の同社事業所にも同時中継され従業員が聞いた。従業員削減とサプライチェーンへの影響が発生するのは2014年以降とC-17担当副社長ナン・ブーチャード Nan Bouchard が発表。ブーチャードによればロングビーチ工場ではこれ以外の生産予定はないという。
  4. これから生産する22機のうち、2機は非公表国向けで7機がインド向けだ。インドは10機発注。
  5. 「インドには追加発注を打診しています」とブーチャードは語り、インド政府の追加発注の決定を引き伸ばし手も受け入れるつもりだという。ただし残る13機については発注が確定していない。
  6. 先の未公表の発注元について同副社長は語ろうとしないが、可能性のあるのはクウェート、アルジェリア、サウジアラビアだろう。ボーイングはすでに同機を導入しているオースラリア、カナダ、インド、カタール、UAE、英国および12カ国構成のNATO平和のための戦略空輸能力構想への追加販売もありうる。
  7. ボーイングは米空軍と製造後契約を取り交わしており、同機の製造工具類を保持し予備部品供給を継続するこれにより米空軍向けにC-17 生産再開も可能だが、ブーチャードは「その予定はない」と語る。
  8. またロングビーチ工場はボーイング所有の施設のため閉鎖費用の一部しか空軍が負担しないという。.
  9. グローブマスターの初飛行1991年からの累計は2.6百万飛行時間に上る。空軍は223機を購入したほかボーイングは上記各国への機材引渡しをしている。

コメント: 発注元がなくても機材の生産をしてしまうところが民間航空との違いでしょうか。日本も貿易黒字だったらトラブル続くC-2ではなく売り先のない機材をまとめて購入していたかもしれませんね。

2013年9月21日土曜日

F-35 購入機数を減らしたオランダの決定

Netherlands To Buy Fewer JSFs

By Anthony Osborne tony.osborne@aviationweek.com
Source: AWIN First

aviationweek.com September 18, 2013

オランダ政府は共用打撃戦闘機導入をついに正式決定したが、当初よりも少ない機数の購入になる。
  1. 同国政府によると当初の85機ではなく37機を購入する。F-16ファルコン更新機材導入予算が45億ユーロ(60億ドル)と規定されており、これを遵守する必要があるため。
  2. 「F-35なら軍の求めるオプションの大部分を実現できる」と国防相ジャニン・ヘニス=プラシャート Jeanine Hennis-Plasschaert は発言。「同時に今後の発展の可能性も高く、とくにネットワーク状態での作戦が期待できる。また国際協力を訓練、保守点検、配備で実施する機会になる可能性も重要」
  3. オランダの計画ではF-35国防省2019年にF-16と平行して開始する。同国国防省は「財政事情のため」追加購入はないとしている。ただし、国防力整備を展望する同国政策文書ではJSF購入をめぐる不満を記述しており、結果として予算措置では導入、運用の10%分を「リスク予算」として追加計上している。
  4. 国防省は「37機の購入相当の予算措置は十分」とし、これを根拠に今後同機共同開発国に導入規模変更を通知する。
  5. 政治論争や計画反対派により最終決定がここまで遅れてしまった。実際には同国はすでに分担金を10億ユーロも負担しており、開発機材としてF-35Aを2機購入し、現在は米国において運用評価試験に使用されている。
  6. .うち一機はエドワーズ空軍基地で保管中で、残りはフォートワースのロッキード・マーティン工場にあり、飛行中である。■


2013年9月20日金曜日

米海軍の次期無人艦載機UCLASSはローエンド性能機になってしまうのか

Pentagon Altered UCLASS Requirements for Counterterrorism Mission

By: USNI News Editor                        
USNI website, Thursday, August 29, 2013
                                                 
Chief of Naval Operations (CNO) Adm. Jonathan Greenert, left, and Secretary of the Navy (SECNAV) Ray Mabus observe an X-47B Unmanned Combat Air System (UCAS) demonstrator make an arrested landing on July 10, 2013. US Navy Photo

ペンタゴンが米海軍の次期無人機の要求性能について当初の海上から数千マイル離れた地点を攻撃するというものから、テロリスト狩りに軸足を動かしていると判明した。

無人空母発進監視攻撃機 Unmanned Carrier-Launched Surveillance and Strike (UCLASS) の開発はペンタゴンの合同要求性能管理協議会 Joint Requirements Oversight Council (JROC) の担当で、コストダウンとともに無人機によるテロ対策ミッションを海外基地を利用せずに実現しようとしている。

UCLASSは当初空母艦載航空団に編入して有人戦闘攻撃機と共同で防護硬い目標の攻撃に投入する構想でF-35Cと同等のペイロードを想定していた。同時にステルス性を生かし長距離飛行による情報収集・偵察・監視(ISR)任務に投入し、空中給油で飛行時間を延長する構想あった。

ところがこのたび入手した資料によるとUCLASSの現時点での概念設計は当初想定した兵装を一部は搭載するものの、ステルス性は低くなり防衛体制の整った空域内の作戦はできないものになっていることが判明した。

UCLASSの誕生は共用無人戦闘航空機システム(J-UCAS)が取りやめになったことで実現したもの。J-UCASは米空軍、海軍が共同で開発するはずだった。
Distances in the Pacific Ocean. CSBA Illustration.



新構想で海軍は空母搭載型UAVを開発し、長距離誘導ミサイルの脅威にさらされる空母群に新たな作戦意義を与えることになっていた。一方、空軍は長距離爆撃機開発を継続する。

「UCASはISR能力に加え兵装投下機能を持つはずだったが、同時に長時間滞空し、敵防空網を突破するISR機となるはずだった」と元米海軍作戦部長、現ノースロップ・グラマン取締役のゲアリー・ラフヘッド提督 Adm. Gary Roughead は本誌取材に答えている。
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そこでノースロップ・グラマンはX-47Bを製作し、基本性能試験に投入した。

「無尾翼の無人機を空母に無事着艦させる技術実証が目的だった」とボブ・ワーク元海軍次官(現新アメリカ安全保障研究所CEO)Bob Work が本誌取材に答えている。
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ノースロップ・グラマンはテスト機を2008年にロールアウトし、2011年に初飛行させている。今年7月に同機は USS H.W.ブッシュ (CVN-77) への完全自動着艦に成功している。

このUCAS-D初飛行の年にUCLASS構想がペンタゴン内部で変質を開始している。

2011年に国防長官官房Office of the Secretary of Defense (OSD)がJROCと共同でUCLASS開発を牛耳るようになった。UCLASS予算はOSD経由で海軍予算に組み入れられた、とワークは証言。「OSDが予算を握り要求性能に口を出すことになった」

OSDの横槍で構想内容は対テロ作戦遂行に中心が移り、強固な防空体制への進入構想と離れていく。

対テロ作戦は現在は空軍のMQ-1プレデターやMQ-9リーパー無人機が実施しており、主眼は捜索追跡および「高価値」のテロリストの抹殺で、米国の対テロ作戦の重要な要素になっている。実際にテロリスト集団指導者数名が殺害されている。

 
MQ-9 Reaper UAV. US Air Force Photo

ただし合衆国がこういった作戦を実施するにあたっては緊急性とともに外国政府の承認が前提となっている。

「海外基地からの作戦実施には海外政府は好きなだけ制約を加えてきます。政策上の制約条件という意味です」とチャールズ・ダンラップ空軍少将Maj. Gen. Charles Dunlapが本誌取材で発言している。「制約は公海からの運用ならずっと少なくなります」

複数筋からホワイトハウスが対テロ作戦飛行の実施に空母を利用すれば海外基地を使う必要がなくなると関心を有していることがわかった。

空軍スポークスウーマンのケイティ・ホーグ中佐 Lt. Col. Catie Hauge は本誌取材に対してホワイトハウスからUCLASS性能要求水準になんらの指示はないとし、ホワイトハウス安全保障スタッフスポークスウーマンのケイトリン・ヘイデンCaitlin Hayden はコメントを拒否。

ワークによるとOSDが取り仕切るようになってから「きわめて健全な討議」がUCLASS要求性能内容をめぐりかわされたという。「一方は『すでに800機もの無人機があり、制空権が確保された空域で作戦実施できる』と発言していた。」

「ただ不足しているのはステルス機による敵地進入能力だ。そこで、もう一方は『対テロ作戦と非正規戦ミッションは当分続き、陸上基地発進だけでは頼りない』と発言していた」

「この私が退官する際も議論はまだ決着していなかった。」ワークが公務を退いたのは去る5月のこと。「統合参謀本部の関心はシステムの下部レベルであったが、これを強硬に推進していた。これに対し海軍は交渉に柔軟な態度で『少なくともその分野での実施能力を上げる必要はある』としていたと思う」

本誌問い合わせに海軍とOSDからそれぞれ文書の回答があり、そこにはUCLASSミッションに対テロ作戦が含まれる、と書いてある。

ワークは対テロ作戦に中心をおくことには同意しかねるという。「空母は100億ドルの浮かぶ資産で60億ドル相当の航空機を搭載しているんです。アフリカ沿岸に空母を移動させてテロリストを捜索させるなんてことはおかしいでしょう」

オバマ大統領が署名した予算統制法 Budget Control Act では国防総省の一律1割予算削減が決まり、2013年早々から実施されている。政権側、議会側からそれぞれ既存プログラムの見直しがかかっているが、一番の焦点は各プログラムの必要額だ。

8月初めにペンタゴンで無人機作戦およびISRを担当するダイク・ウェザリントンDyke Weatherington からUCLASSの要求性能見直しでは予算制約が大きな要因となっていると発言。国防総省は「終了しきれないプログラムを開始する余裕はないし、結果を示しきれないプログラムを開始する余裕もない」という。
ただしUCLASSの機数はごく少数にするというのが当初の23億ドル相当のプログラムの内容であった。
 
An illustration from the 2008 CSBA  paper: Range, Persistence, Stealth and Networking: The Case for a Carrier-Based Unmanned Combat Air System by Thomas P. Ehrhard and Robert O. Work


「当初は空母に分遣隊機能を付与することとしており、各空母が任務に順番について西太平洋であれ中東地区であれ、一定の能力を提供する予定だった」

これに対しウィネフェルド提督が提唱したのが最大限の利用可能機で空母周辺の周回飛行を実現することで、これでは当初のUCLASS費用積算の根拠が変わってしまう。

与えられた予算で何回の周回飛行が実現できるかがUCLASSの最大の優先事項だ、とウィネフェルド提督は書いているという。

改定指導内容に照らしあわせ、JROCは国防長官官房の費用分析計画評価室に3月31日までに代替手段の比較検討をすませるよう提言し、審議会がUCLASSの要求性能として提示したものを反映するよう求めたとの報道もある。

新しい基本性能の指標key performance parameters (KPPs),として機体単価(研究開発費、運用費、維持費を除く)は150百万ドルを超えな
いものとした。
 
Proposed operational ranges of UCLASS. US Naval Institute Illustration


周回飛行がまず想定されるが、その他のKPPには攻撃ミッションの飛行半径2,000海里が含まれる。

海軍は単価150百万ドルで最低2機の購入を期待する。

今回の方針変換で当初の目標だったUCLASSを有人機と同等の戦力として一体化させる内容が薄まる。現在の案はUCLASSを空母から発進させるが、有人機が飛行しない時間に限るというものだという。
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「UCLASSを通常の航空作戦が終了してから発進させ、次のサイクルが始まるまでのギャップを埋める存在にできる」と海軍作戦部長の下で無人機システムの要求性能を取りまとめるクリス・コーナティ大佐  Capt. Chris Corgnati は語る。

ワークは空母航空部隊関係者の中には有人機と無人機の統合には口を重くする傾向が強いという。

それではUCLASSを当初のUCAS構想のレベルまでどれだけ近づけることができるのかはいたってペンタゴンが海軍が9月以降に発表する提案依頼書(RFP)をどのように系統付けられるか次第だろう。

「RFPはそもそも性能内容を定義づけるもの。今のRFPがどうなっているか不明だが、予算強制削減の影響は避けられないだろう」とワークは言う。

UCLASS製作に関心を示す四社、ロッキード・マーティン、ボーイング、ジェネラルアトミックス、ノースロップ・グラマンはそれぞれ新構想を元に独自の新しい視点を模索する必要がある。

「RFPは性能を伸ばしていくことが最低限必要だ。すべてはコストの問題になる。ローエンドのシステムに当然向かうことになる。でもこれでは実戦部隊が求めるものでなくなりますね』(ワーク)

海軍はUCLASSを2020年までに配備する予定。.■


2013年9月19日木曜日

A-10が予算削減のためモスボール保存になりそう

DoD BuzzがA-10が予算削減のあおりで現役を退くことになりそうと伝えています。

Air Force Mourns Likely Passing of A-10 Warthog

By Richard Sisk Wednesday, September 18th, 2013 4:46 pm

NATIONAL HARBOR, Md. —A-10ワートホグ(イボイノシシ)近接支援・戦車キラー機で自身も操縦経験があるスタンリー・クラーク中将が悲しげに同機部隊がモスボール保存になりそうだと語った。

  1. これは空軍協会による航空宇宙会議の席上のことで、聴衆から「A-10を救えないのか」との質問が出た.
  2. クラーク中将は州軍航空部隊の司令官であり、この質問に婉曲に対応した。同中将はA-10サンダーボルトの操縦を心からほれ込んでいたと答えた上で、搭載するGAU-8 Avenger30ミリ回転機関砲は「地上部隊にとって大切なもの」と表現した。
  3. ただし、米空軍は「単一ミッションしかこなせない機種は削減する方向で検討中」とし、予算強制削減のもと、「予算がまわってこない。A-10存続のオプションはない」
  4. 空軍は「第五世代機の配備を念頭においており」A-10はステルス性能もなく飛行速度も遅い。
  5. 「2023年の空軍をめざしており」A-10は未来の空軍に残る場所がないという。
  6. 空軍参謀長マーク・ウェルシュ大将も自身がA-10飛行時間が1,000時間あり、同機への愛着を口にしている。「醜いやつですが愛着があります」
  7. しかし、同大将も空軍が一兆ドルの予算削減を今後10年で実現する必要があると説明。その予算環境ではウォートホグの維持はできなくなると発言。
  8. A-10はフェアチャイルド・リパブリックが1970年代に開発し、第一次湾岸戦争ではイラク戦車900両以上を破壊し、その後のイラク、アフガニスタン戦役でh近接航空支援の中心だった。
  9. ウェルシュ大将はA-10がまな板の上におかれているのは「単一ミッション機材であることが大きい」とし、いっそう厳しさを増す作戦空域では生き残りが難しいことを理由に挙げる。
  10. 「予算節約の方策はすべて検討しており、近代化改修・機体再生化もその対象だ。複合ミッション機材でそこそこにミッションをこなせるのであればいいが、単一ミッション機はまず削減の対象に上げられるだろう」

この記事に対するオリジナルの読者コメント


  • 実現の可能性はないだろうが、陸軍が同機を運用したらよいと思う。4ないし5飛行隊を陸軍が維持するのだ。パイロットを見つけるのはそんなに難しくないはず。ウォートホグパイロットで同機に愛着を持つものは多い。ただし陸軍が固定翼機を運用すると空軍には面白くないだろうし、陸軍が空軍パイロットを横取りしたらもっと怒り狂うだろう。
  • A-10退役は最低の軍事選択肢。愚かとしかいいようがない。
  • 今回の愚行は1962年のバーミューダ三軍会議までさかのぼり、東南アジアでのミッションを小分けした結果、恐ろしい事態が発生している。F-100で近接航空支援をした。さらに1967年のAX構想につながっている。米空軍がA-10生産を中止したのは固定翼機による近接航空支援が不要と考えたのではなく、他軍にその役割を与えたくなかったからだ。陸軍が開発したグラマンOV-1モホークがどうなったかを見ればわかる。A-10の開発元フェアチャイルドでは同機が陸軍の元だったら4,000機は販売できるとのジョークがあったほどだ。
  • イスラエルに販売すればよい。対戦車攻撃機が必要で、戦闘が発生するのは確実だから。   
  • 今回節約してもあとで血の代償になりかえってくる。大統領以下指導部に失望   
  • ではウォートホグにかわってどの機種が地上支援、戦車攻撃をするのか。F-35が全部できるとは思えない。
  • これでは米空軍の死亡と同じだ。
  • 空軍はすでにC-17生産を終了させ(緊急兵力輸送力の不足となろう)、陸軍のC-27Jを中止させ、今度はA-10タンクバスターか。こうなれば過去の決定を覆し、陸軍に地上攻撃用ガンシップとなる固定翼機を運用させるべきではないか。
  • 同機は近接航空支援用途では最高の機材だ。空軍は地上部隊を犠牲にして予算を節約するつもりなのか。30mm 機関砲だけで敵は震え上がる。空軍上層部はこれを手放すというのは軍人としての思考方法を放棄しているのか。