2014年7月26日土曜日

新型海軍用レーダーAMDRはAESA方式で電子攻撃も可能


Raytheon Enters New Phase of Next Generation Radar Development

By: Dave Majumdar
Published: July 24, 2014 7:30 AM
Updated: July 24, 2014 7:30 AM
Artist's concept of a DDG-51 Flight III with AMDR. Raytheon Photo
Artist’s concept of a DDG-51 Flight III with AMDR. Raytheon Photo


レイセオンは対空ミサイル防衛レーダー Air and Missile Defense Radar (AMDR) の事前設計審査preliminary design review (PDR) を完了したと発表。AMDRはフライトIIIのアーレ―・バーク級誘導ミサイル駆逐艦に搭載される。

同時に同システムの統合基本審査も完了したと発表し、PDRが完了したことで同社は技術生産開発 engineering and manufacturing development (EMD) 段階へ進む。

「技術開発段階で技術リスクを解決しており、コスト削減策も実施されていることで、当社はAMDRの生産に本格的に取り組むことができ、技術生産両面の開発の完了をめざします」と同社のけヴィン・ペップ Kevin Peppe,副社長(シーパワー装備システムズ事業部)が発表している。

AMDRレーダー開発が完了すれば、2016年度に建造されるバーク級駆逐艦二号艦から装備される。AMDRは全長14フィートあり、艦橋に現行のSPY-1Dレーダーと同様に取り付けられる。ただしAMDRの性能は革命的と言われる。
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AMDRはアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーであり、窒化ガリウム送受信部を使う。海軍はAMDRの出力をSPY-1Dの30倍、電子インプットは約2倍と期待している。窒化ガリウム技術によりレイセオンはバーク級の船体が有する電力発電量と冷却能力を犠牲にせずにAMDRを搭載できるとする。
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またAMDRではデジタルビームを形成することも可能で、これまで以上に正確な追尾が可能だ。さらにそのままで電子攻撃の道も開ける。これは現行の海軍艦艇には未装備の能力だ。

AMDRの有利なところは縮小拡大が自由な設計なので他の艦艇にも搭載できること。モジュラー構成で送受信モジュールを組み合わせてレーダーにすることが可能かつ用途に応じてへんせいできる。しかし、現時点で海軍にはAMDRを他の艦艇に搭載する予定はない。■


2014年7月25日金曜日

マラバール演習:日米印三カ国海軍演習が25日開始されています


Naval Ships From US, India and Japan To Start War Games

Jul. 24, 2014 - 02:19PM   |  
By AGENCE FRANCE-PRESSE  

TOKYO — 米、印、日の三カ国が一週間にわたる海軍演習を開始する。各国間の連携を深め、自己主張を強める中国の軍備増強を横目に見る中での実施だ。
三カ国の艦艇は25日から合同演習を開始する。前日に佐世保海軍基地で式典が行われている。
マラバール演習Malabar Exerciseの名称でこれまでインドと米国間で実施されてきたものだが、海上自衛隊の参加は2007年以来で三度目になる。
演習場所は日本南方海域で領土を巡る緊張が高まっている地域の後方となる。
中国の影響力がアジアで増大する中、米国はアジア重視を強めているが、中国の軍事力増強が地域内各国の神経をいらだたせている。
「インド、日本、米国は戦略的な権益を共有している」と語るのは早稲田大の山本武彦名誉教授だ。「今回の演習の目的は西太平洋からインド洋まで広がる広大な海洋での海軍作戦の運営にある。各国は海洋交易路を確保する必要があり、中国を視野に入れた演習であると言える。」とコメントしている。
またインドは「真珠の首飾り」と通称されているインド洋周囲の港湾各地に中国がアクセスを得ることは重大な脅威になると警戒視していると同教授は指摘する。
演習では日本とインドの連携強化が注目される。安倍首相はデリーを1月に公式訪問し、二国は「更なる強化」を防衛協力で進め、海上演習を定期的に実施することで合意している。
今回の7月演習にはインド海軍は3隻(フリゲート1、駆逐艦1、補給艦1)、人員800名を派遣するとインド海軍はAFPに伝えており、演習の内容は海賊対策、テロ防止、人道支援、ヘリコプター運用を含むという。
米第七艦隊のほか、海上自衛隊は護衛艦2、US-2捜索救難飛行艇1、P-3C哨戒機1を演習に参加させる。
安倍内閣が広範に防衛力を使えるように憲法解釈を正式に変更して中国は非難を強めている。中国の主張は日本が再び軍国主義に走り、第二次大戦の反省を示していないとするもの。
【ご参考】以下海上自衛隊の発表です。
26. 7. 24
海上幕僚監 部
(お知らせ)
日米印共同訓練(マラバール14)について
海上自衛隊は、次により、日米印共同訓練(マラバール14)に参加します。
1 目 的
海上自衛隊の戦術技量の向上及び参加各国各軍との協力強化の促進
2 期 間
平成26年7月24日(木)~7月30日(水)
3 場 所
四国南方から沖縄東方海域
4 訓練統制官
海上自衛隊:第2護衛隊群司令 海将補 岩﨑 英俊
米 海 軍:CTF70 海軍少将 M.C.Montgomery
インド海軍:東部艦隊司令官 海軍少将 A.K.JAIN
5 参加予定規模
海上自衛隊:護衛艦「あしがら」、護衛艦「くらま」、救難飛行艇US-2、哨戒機
P-3C
米 海 軍:航空母艦 GEORGE WASHINGTON、駆逐艦 J.S.MCCAIN 等
インド海軍:フリゲート艦 SHIVALIK、駆逐艦 RANVIJAY、補給艦 SHAKTI
6 主要訓練項目
対潜戦、対水上戦、対空戦、立入検査、捜索・救難訓練 等


アイアンドーム生産増強に米国防予算の支出を認める


Pentagon Supports Emergency $225M for Israel's Iron Dome

Jul. 23, 2014 - 05:54PM   |  
By PAUL McLEARY
A missile is launched by an Iron Dome battery in the southern Israeli city of Ashdod. The Pentagon is seeking additional funding to speed production of components for the anti-missile system.
イスラエル南部アシュドッドで発射されるアイアンドーム迎撃ミサイル。ペンタゴンは追加予算で製造を加速させようとしている。(David Buimovitch / AFP)

WASHINGTON — チャック・ヘイゲル国防長官は有力議員に書簡を送り、追加225百万ドルでアイアンドーム迎撃ミサイル用の部品製造を加速化させることによりイスラエルが十分な備蓄をもち、ハマスがガザから発射しているロケット弾への防御手段を維持できるように求めている。.
最近になりイスラエルから部品の追加要望が入り、ペンタゴンはこの要請を受け入れ、オバマ政権が2015年度国防予算に盛り込んでいた176百万ドル相当のリストの上位に乗せることにしている。
今年春の会期中に修正案として上下院の国防、歳出両委員会はペンタゴンがもとめたアイアンドーム向け351百万ドル予算を倍増するとしていた。下院は6月に法案を通過させたが、上院は未対応。
下院軍事委員会の重鎮アダム・スミス下院議員Rep. Adam Smith(民、ワシントン州)はこの増額要請を支持しており、「イスラエルにとってハマスのロケット攻撃を遮るのはアイアンドームしかない。イスラエルがアイアンドームを有効活用し、一般市民を防衛できるよう保証したい。ヘイゲル長官はじめとする現政権がこの要請を受け入れたことを称賛したい。同僚議員とともに本会議でこの要請が承認されるように努力する」と書状で回答している。
23日午後には上院歳出委員会委員長バーバラ・ミクルスキSen. Barbara Mikulski,(民、メリーランド州)が上院の非戦闘補正支出案にこのミサイル関連支出が含まれていることを確認している。
「法案では225百万ドルを国防総省緊急補正予算としてイスラエル用に確保し、アイアンドームの追加調達を認めている。現在進行中のイスラエルとガザでの危機的状態で数千のロケット弾がイスラエルの各都市向けに発射されており、アイアンドームはロケット弾に対して有効な防御手段と実証済みだ」と書状で述べている。
ヘイゲル長官は議会指導層に対し、「米国産業基盤の維持はアイアンドーム支持と密接に関係している」と書簡で述べており、米イ間合意で米国内で一部生産すると決まってるためとする。
「しかしながらイスラエル側の評価では米国内の生産が本格化するにはまだ二三年かかり、イスラエルの備蓄不足を補えないとしている」
そこでアイアンドーム向け支出増額案に加え、下院軍事委員会は数億ドルをイスラエルのその他ミサイル開発にも支出するよう求めている。130百万ドルをアロー Arrow に、137.9百万ドルをダビデのスリング David’s Sling 向けとなっている。
「2015年度国防予算支出承認法案には600百万ドル以上がイスラエルのミサイル防衛に振り向けられており、米国は10億ドル超をアイアンドームの誕生から今日まで提供している」とスミス議員は述べている。 ■

2014年7月24日木曜日

中国空軍を理解するためのキーワード10


China Flies

JULY 2014
BY REBECCA GRANT
10 things Americans need to know about the People’s Liberation Army Air Force.

今日の中国空軍は冷戦時のソ連空軍の規模、錬度には到達していないが、アジア各国は拡大を続ける中国海軍・空軍との遭遇が増えそうだ。
「中国は南シナ海で高圧的外交をたくみに展開している」と論ずるのはオリアナ・スキラー・マストロ Oriana Skylar Mastro (ジョージタウン大教授、空軍予備役)で、三沙島に駐屯地を設置したのも上層部の直接の指示による意図的な動きだと解説している。
これは中国による防空識別圏設定(2013年)や同年12月の巡洋艦USSカウペンスが中国護衛艦により妨害を受けた事件以前に発生している。
人民解放軍空軍PLAAFおよび小規模の海軍航空隊、陸軍航空隊は急速に変貌を遂げている。米空軍はその実態の把握に懸命である。以下は現時点でのPLAAFに関し知っておくべき10事項である。

1. 日本付近を飛行している
中国機が東シナ海上空に飛行すると日本がすかさず反応する。中国機へのスクランブル回数は2009年の38回から2013年は415回に急増。2013年9月8日にはH-6爆撃機2機が宮古島と沖縄本島の間を飛行している。H-6は旧ソ連のTu-16バジャーが原型だが、大幅改良されており、数百マイル射程の空中発射巡航ミサイルを発射でき水上艦あるいは陸上の固定目標へ有効な攻撃手段となる。日本の防衛省は同上爆撃機の飛行経路を公表する異例の措置に出た。
ハーバート・J・「ホーク」・カーライル大将Gen. Herbert J. "Hawk" Carlisle(太平洋空軍PACAF司令官)は日米安全保障条約を重視し、中国の飛行活動増加に対抗出来るのは米国の存在だとする。先月も航空自衛隊と中国空軍の小競り合いが報道されていたが、今回は危険なほど機体が接近していた。たびかさなる遭遇で東シナ海上空は高リスク空域になっている。
「中国は日米が強力な友好関係と同盟関係で結ばれて両国の共同対処も見ている。そこで両国はこの地域の安全と安定のために脅威に対応していく」とカーライルは今年4月の朝日新聞に述べている。

2. 中国は歓待する 
米空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将 Gen. Mark A. Welsh III,はカーライルおよびジェイムズ・コディ空軍最高級曹長 CMSAF  James A. Cody を伴い2013年末に訪中し、「大変厚遇された」と帰国後語っている。
米空軍訪中団は誘惑攻勢を受け、ウェルシュは「中国空軍参謀総長馬暁天Ma Xiaotianは主人役をいかんなく発揮した」と述べている。中国が米空軍参謀総長を招いた前回は1998年でPLAAF司令官の訪米は1997年以降途絶えている。
その間にPACAF司令官(当時)ポール・ヘスター大将が2007年に訪中し空軍基地二か所を視察している。へスターはSu-27とFB-7全天候超音速中距離戦闘爆撃機を見ている。「まだわかっていない機体がたくさんあり質問の答えも得られていない」とへスターは感想をホノルルアドヴァタイザー紙に述べている。「中国軍の方向性について尋ねたが明確な答えは得られなかった」
カーライル大将(2009年にPLAAF設立60周年式典に参列)も米中関係の絡みで感想を述べている。朝日新聞に対し「中国側との対話で理解が深まる。中国側にもこちらの理解を深める効果がある。今後良い方向に影響力を与える可能性がある」と述べている。
ウェルシュも訪中後に「最大の結果は相互意思疎通ができるとわかったこと。誤解を防ぐための協力で事故を回避できる。軍組織同士の交流は今後の米中関係の柱になると思うし、両国をつなぐ役目があると思う」と述べている。
ただし注意が必要だ。米太平洋司令部との交流が例だ。人民解放軍が太平洋軍に接触するのは中国の関心事に合致する場合あるいは太平洋軍が参考になる教訓を提供できる場合だ、と専門家は指摘。だが中国の地位が向上して外部との接触への態度が変わってきた。現在のPLAはPACOMをどうやって打破するかに関心があるのだという。

3. 他国の空軍関係者を歓待する .
中国空軍は自ら外遊するよりも訪問者を迎えるほうが良いらしい。
各国軍との交流回数は2001年から順次増加していると中国専門家ケネス・アレンは指摘している。アレンは空軍退役将校で中国駐在空軍武官補をつとめており中国空軍の内側に詳しい第一人者とされている。その観点は装備ではなく、人員、組織および訓練に集中している。
活動がさらに活発化している。アレンによるとPLAAF教練大学校に中国以外41か国のパイロットも参加し戦術、戦闘方法などを学ぶコースが開催されているという。参加したのチリ、パキスタン、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、ヴェネズエラ等。
同様にカーライルも「参加各国がそれぞれ中国と二国間関係を有していることに注意が必要だ。通称相手でもあり、経済関係、文化のつながりが多岐にわたっている」と注意を喚起している。

4. 陸上部隊の脇役を務めている。今のところは。.
中国によればPLAAFの部隊規模は398千人で軍全体の17%相当にすぎない。
PLAは「陸軍中心の価値観」を有するとアレンは言う。各国駐在の大使館付き武官は大多数が陸軍将校で情報関係が専門だ。人民解放軍は党の中央軍事委員会(CMC)に隷属する組織であり、国防省の下にあるのではなく、国家の意思で動く組織でもない。CMCの構成は軍人10名と文民一名だが主体は陸軍出身者でこのCMCが軍の近代化を取り仕切っている。
PLAAFが加わったのは比較的新しく2012年で、そのうちひとりが馬参謀長で、もうひとりがまもなく退官する許其亮 Xu Qiliang空軍司令官でCMC副委員長を務めている。
このうち許はCMCの陸軍高官と並ぶ位置に上った最初の空軍関係者で遠慮しないしゃべり方をする戦闘機パイロットでもあり、中国が対衛星攻撃手段はじめ宇宙での支配を強める能力を開発し、宇宙へのアクセスを確保するべきだと主張している。(中国では宇宙開発は陸軍の主管事項) さらに許は紛争が空から宇宙へ拡大するのは「歴史的必然性」だと公言しており、マルクス主義の影響を受けたしゃべり方をしている。
中国軍事組織で最高の地位をほこる場所に空軍関係者2名の座席が確保されたのは中華人民共和国建国以来初めてのこと」と中国ウォッチャーは2012年に寄稿している。「陸軍の60年に及ぶ支配が緩む兆校とみる向きが多い」

5. 実戦経験は浅い
許と馬の二人はPLAAFの空軍力をより遠隔地で共同運用で広げようとしているようだが、最大の障害は中国の戦闘体験の欠如だろう。 「PLAAFが空対空戦をしたのは朝鮮戦争と1958年の台湾海峡危機の二件しかなく、後者に至っては数日しか続かなかった」(アレン).
防空部隊には最近の経験はなく、「一番新しいSAM運用はベトナム機が誤って国境を越えて飛行してきた1987年の事件」だという。

6.  近代戦史を学んでいる
実戦経験の不足を近年の作戦事例を学ぶんで補おうとしている。カーライルも訪中して中国指導層が改善に真剣な姿に気づいている。
「砂漠の嵐作戦を研究しており、旧ユーゴスラビアでの事態の推移、イラクの自由・不朽の自由作戦も研究している」とカーライルは帰国後の取材に答えている。西側諸国の圧倒的な空軍力は中国にとって改善の鍵だ。「研究して合衆国や西側より戦略的に不利だとわかったのではないか」
「実戦経験に乏しいPLAが一層深い分析と研究でこれを補おうとする」大将は米国はじめ各国の戦闘手法だと陸軍大学校が出版したDean Chengの論文(2011年)が解説している。その中で中国側に強い印象を与えたのは高性能技術体系、統合作戦の実施、広範囲な地域を網羅する指揮統制機能、弾薬消費の高さであったという。

7. 世界規模で活動を拡げようとしている
中国が初めて長距離航空作戦の実施に踏み切ったのは2005年のことで、747機に104トンの救援物資を積み込みハリケーンカトリーナの被災者向けにリトルロック空軍基地(アーカンソー州)に届けた際のことである。「異例のことだった」と米空軍ジョセフ・リーハイザー准将が新華社通信に発言している。「歴史家ではないが、中国が米国に救援物資を空輸してきた事例は思いつかない」 
2010年にはSu-27分遣隊がトルコのコンヤ空軍基地に到着し、トルコのF-4と合同訓練を実施している。これは
PLAが派遣部隊を創設する第一歩の動きだとみる向きもある。
2011年にはさらに加速し、2月から3月にかけPLAAFはIl-76部隊を派遣し、リビアから中国国籍市民1,655名をスーダンへ運び、287名が中国本土に戻っている。
国際救難活動への参加はその後増えており、パキスタン洪水にIl-76を4機、、翌月は3機がタイへ派遣されている。.
台風Haiyan(30号)がフィリピンを2013年襲ったが、中国の救援活動は大幅に遅れた。またマレーシア航空MH370 の行方不明事件でも精彩を欠いた活動を展開したにとどまっている。

8. 大家族
PLAAFは組織構成上から内向き志向になっている。人民解放軍には独特の社会力学があり、軍事組織というよりも同居家族の様相を示している。1949年の建国以前に毛沢東の部隊に加わった人々が教育機会を得て、糧食も優先的に与えらえ、その後PLAになった組織内で昇進昇級を重ねてきた。
中国の兵員は同一部隊で職歴を積むのが通例で、強固な人間関係を育てることが多いとアレンは指摘する。
搭乗員も一機ずつに配備され、パイロットも一機種せいぜい二機種を操縦することが多い、とアレンは説明する。中国製航空機は手作りで製作されており、搭乗員、パイロットは各機の装備を裏も表も学ぶことになるという。
驚くべきことに中国パイロットは一度配属されると基地を移動しない。アレンは航空隊司令に相当するものがタキシ―から離陸まで含むフライト業務を詳細に管理しているという。部隊は機種別に編成される。しかし最近のPLAAF組織改編により異機種での訓練機会の道が開けた。一部の部隊では「パイロット自治権」として飛行計画を自ら作り、訓練空域内で「航空戦自由演習」が認められているという。これは進歩のあかしかもしれない。

9. 空中発射型巡航ミサイルを訓練している.
弾道ミサイルは空母キラーといわれるDF-21も含み、第二砲兵部隊 Second Artillery Force に所属し最大限の配慮を受けている。しかしPLAAFも長距離巡航ミサイルを搭載する航空機を有している。
「PLAの接近拒否領域拒絶(A2/AD)戦略への投資の中心は高精度対艦巡航ミサイル (ASCMs) と陸上攻撃巡航ミサイル (LACMs) を大量に生産配備することであると2014年の著作「低視認兵力拡大手段」(著者Dennis M. Gormley, Andrews S. Erickson,Jingdong Yuan)は述べてい
その成否を握るのが空中発射型ミサイル運用の習熟度であり、超音速で低高度飛行するレーダー断面積が小さい巡航ミサイルで敵の防空網や監視体制に揺さぶりをかけることが可能だから、と前掲書は解説している。

10. 長距離・長時間飛行を実施している
ウォールストリートジャーナル紙は2013年11月にPLAAFのパイロットの飛行時間が米国パイロットの飛行時間を上回っていると指摘している。これは一つには米国で予算の強制削減があったからだが、実際に中国パイロットは飛行時間を伸ばしている。問題はその結果中国が何を艇に入れているかだ。
PLAAFによる特異な人材獲得・訓練方法は西側を驚かせてきた。PLAAFは高卒相当の人材を採用し、一部の地方出身者や女性または大卒はパイロット候補から外している。
実践的な訓練は増加している。「海軍航空隊とPLAAFは海上での巡航ミサイル発射訓練を夜間想定含め艦船目標に行っている」と前掲書は述べている。
PLAAFと海軍航空隊はともに拡大拡張していくとの見方が強い。性能面だけでなく、訓練、戦術、組織攻勢さらには価値観での話だ。今後発生する変化が太平洋の均衡にどんな影響を与えるか注意深く観察する必要がある。
「中国の大目標は気づかれないうちに地域内覇権国家になることで既成事実の積み上げを図る」と分析するのは米空軍の戦略立案計画部門のアナリスト、カール・D・レーバーグCarl D. Rehbergである。
中国指導部も自国経済の安定度は国際制度と絡み合っていることを理解しつつある。これは中国指導部には「未知の分野」であるとされ、「中国の歴史上、ここまで国際制度に組み込まれた前例はない」という。
カーライルはPLAの発展を次のように表現している。「これまで行ってきたのは自らのデメリットを正すことで、より良い戦略的な地位に自らをおくことである」と朝日新聞の取材に答えている。「明らかにこの方向に向かっているものの、同時にわれわれも同じ努力をしている」
レベッカ・グラントは空軍力研究の専門家で、研究機関IRIS In-dependent Researchを主宰


2014年7月23日水曜日

各国別戦闘機調達の最新動向 予算が厳しい中で新しい潮流が生まれる


Costly Fighters, Cash-Poor Customers Set Fighter Trends

Cost-pressured customers define fighter opportunities
Jul 18, 2014Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology
戦闘機市場で今後重要になる要素が二つある。まずF-35を除く現行の欧米の戦闘機各機種は2020年までに生産が終了となる。米国で次世代戦闘機の研究がすすめられ、日本、韓国、トルコで国産化の動きがあるが、各機とも実現は2024年より後の予想でそれまでは市場に影響を与えられない。そうなるとF-35のみが選択肢となってしまう。
  1. 需要が確実でも中東などまだF-35が未採用の国もあり、マレーシアなど米国がステルス機輸出にためらいを見せる国もある。F-35がブラジルやインドで選択対象になっていないのは、それらの国が調達を技術調達の機会ととらえているためで、実際に同機の技術の多くが触れないように密閉されている。他にも現行価格ではF-35を購入できない国もあり、需要規模は今後どれだけ開発が安定化し価格が下げられるかにかかっている。
  2. 二番目の要因は戦略的で、機体価格とは運用コストさらに予算圧縮の環境を組み合わせて理解することである。機体価格と運用コストはインフレ率を適用すると実質上昇を続ける中、各国の空軍は戦闘機の保有数を減らしている。経済発展があれば国防支出の伸びを支えられるが、
  3. 三番目も予算関連で、各国の軍で調達予算と運用予算を一体的に運用する例は少ない。ここがビジネス界と違うところで政府組織ではこの二つを一つの予算項目として一体に扱えないのだ。ビジネスで使われている成果反映型支払performance-based logistics (PBL) 契約を採用すれば効率は大幅に改善され、運用コストへの関心も高まるはずだ。.
  4. これらの市場の動きの影響が現実に出てきた。ボーイングはスーパーホーネット/グラウラー生産ラインを2020年代に入っても米国および国際受注で維持すると発表。現時点でも同機はデンマークと中東の一部で受注を争い、2015年度国防予算最終案でEA-19Gグラウラー生産の延長が決まりそうだ。また性能改良型スーパーホーネットAdvanced Super Hornet が2020年以降に登場すると海軍は現行機材の改修を進めるだろう。その時点で一部機材は機齢40年になる。
  5. ボーイングはスーパーホーネットの一時間当たり運用コストは17千ドルで、米国の戦術戦闘機中最低水準だとする。最新型F-15でも24千ドルとし、F-15C/D型では45千ドルになるという。大幅なコスト低下の理由としてボーイングは新型フライバイワイヤによる飛行制御システムで保守費用を8割下げたのが大きいという。
  6. ヨーロッパ各社も戦闘機の改修で輸出機会を探っている。ひとつ注目すべき事項は技術ではなく、販売方法だ。サーブリース方式を提示している。戦闘機調達・運用は長期間にわたり政府予算を使うことが多いので、リースはあながち無謀な方法とは言えない。ここにPBLを組み込んで、サーブはチェコ共和国とハンガリーに機体を提供している。スイスにもJAS 39C/Dの事前リースをしており、同様にブラジルでも現在交渉中だ。サーブはマレーシアにもリース提案したといわれる。
  7. また第三国による性能改修にも関心が集まっている。イスラエル航空宇宙工業はクフィールのブロック60を売込み中で、1950年代まで設計の基礎が遡れる同機は低価格機に近代的エイビオニクスを搭載したものと宣伝している。同社はF-16改修を手掛ける予定がないというが、もしシンガポールが同国保有機の改修入札を公示すれば、ボーイング、BAEシステムズとともに商機をねらうことになろう。

Aviaition Weekによる地域別各国別の新型戦闘機導入の見込み
米州
現況
機数
候補機種
決定時期
アルゼンチン
検討中
18
Kfir Block 60
2014
ブラジル
商談中
36-100
JAS 39E
2014
カナダ
調査中
65
F-35, Typhoon, Rafale, F/A-18E/F
2014
チリ
調査中
未定
F-16 upgrade, Kfir Block 60
未定
コロンビア
調査中
未定
F-16 upgrade
未定
ペルー
調査中
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Typhoon (used), MiG-29 upgrade
未定
欧州地区
現況
機数
候補機種
決定時期
ベルギー
競技中
30+
F-35, JAS 39E, F/A-18/F
未定
デンマーク
競技中
30
F-35, JAS 39E, F/A-18/F, Typhoon
2015
フィンランド
調査中
40+
未定
未定
ギリシア
競技中
100+
F-16 upgrade
2015
イタリア
交渉中
45-90
F-35
2014-15
オランダ
決定済み
37
F-35
2012
ポーランド
調査中
40
未定
未定
ルーマニア
発注
12
F-16A
2014
スロヴァキア
検討中
12
JAS 39C
未定
トルコ
検討中
未定
F-35, F-16 upgrade
2015
英国
検討中
48+
F-35
2015
アジア太平洋地区
現況
機数
候補機種
決定時期
オーストラリア
交渉中
58
F-35
2014
インド
交渉中
126
Rafale
未定
日本
発注
40
F-35
2011
マレーシア
競技中
20+
JAS 39, Typhoon, F/A-18, Su-35
2015
フィリピン
発注
12
F/A-50
2014
シンガポール
競技中
70+
F-16 upgrade
2015
韓国
交渉中
40
F-35
2013
韓国
発注
134
F-16 upgrade
2014
台湾
発注
146
F-16 upgrade
2012
中東地区
現況
機数
候補機種
決定時期
バーレイン
調査中
未定
Typhoon
未定
オマーン
発注
30
Typhoon, F-16
2012
カタール
競技中
72
Rafale, Typhoon, Super Hornet, Eagle
2014
サウジアラビア
発注
154
F-15A, F-15A upgrade
未定
UAE
競技中
60
Rafale, Super Hornet
未定