2014年9月24日水曜日

F-22初の実戦はISIS対地攻撃になった



F-22’s Takes First Shot Against Ground, Not Air, Target

Sep 23, 2014Amy Butler | AWIN First
F-22が攻撃した目標 攻撃前(左)と攻撃命中後(右) Defense Department

米空軍で最も高価な装備F-22が初の実戦に投入された。
  1. 9月23日早朝にISISの目標を攻撃したと空軍中央軍報道官エドワード・ショルティス中佐 Lt. Col. Edward Sholtis が明らかにした。
  2. F-22はこれまで制空戦闘機としては無駄に高価な機体と批判されていたので、今回は皮肉な実戦デビューになった。対地攻撃能力の追加は就役後に開発されてきた。
  3. 攻撃は三波構成で、米軍及び同盟軍は計22の目標に200発近くを投下したと国防関係者が明かした。このうち9割近くは精密誘導爆弾を使用。
  4. F-22は第二波に参加、その他F-15,F-16、B-1、無人機が投入された。
  5. F-22は指揮統制司令所を目標にGPS誘導の精密爆弾を投下したと、統合参謀本部作戦部長のウィリアム・メイヴィル中将Lt. Gen. William Mayville, director of operations for the Joint Staffがペンタゴン報道陣に説明した。中将は兵器の種類で言及を避けたが、1,000-lbの共用直接攻撃弾あるいは250-lb.の小口径爆弾の可能性が高い。
  6. F-22が何機投入されたか不明。なお、F-22はアラブ首長国連邦のアル・ダフラ Al Dhafra 空軍基地に配備中で今後も作戦に備えている。
  7. F-22の初期作戦能力獲得は2005年で、完全作戦能力は翌年に達成。ステルス性能が高いF-22は探知されずに敵空域に侵入し、搭載センサー類で戦闘空域の情報収集が可能。
  8. 第一波攻撃で米海軍USSアーレイ・バークとUSSフィリピン・シーが40発以上のトマホーク巡航ミサイルを発射している。第三波では住宅地区へ精密兵器が投入されISISの訓練・補給センターを攻撃。空母USSジョージ・H・W・ブッシュから発進したF/A-18がGPS誘導兵器を投下したとメイヴィル中将が発表している。■

2014年9月23日火曜日

航空自衛隊E-2Cホークアイ後継機を国産化へ



Report: Japan Wants Its Own Early-Warning Planes

Sep. 21, 2014 - 11:56AM   |  
By AGENCE FRANCE-PRESSE   |   Comments
Cope North
アンダーセン空軍基地(グアム)でE-2Cホークアイを誘導する航空自衛隊員。防衛省はホークアイ後継機は国産機材とする考えで高性能レーダー開発を2020年代中頃に実現しようとしている。 (Staff Sgt. Jacob N. Bailey / US Air Force)

TOKYO — 日本の防衛省は早期警戒管制機を国産開発し、中国及びロシアの空軍が活動を強化している状況に対応したいと考えているとの報道が21日に出た。
防衛省は平成27年度事業で80百万円の調査開発研究予算を要求していると読売新聞が報じている。
記事によれば高性能監視レーダーを2020年代中頃までに開発し、米国製E-2Cホークアイの後継機を配備する案があるという。
領空に近づく外国機に対応した自衛隊の緊急発進は昨年度は800回超となり、大半は中国とロシアから飛来したもの。これは冷戦終結後で最大の回数だという。
また中国が昨年11月に「防空識別圏」を東シナ海上空に設定したことで軍事衝突のおそれも大きくなっており、日本の防空識別圏との一部重複があること、両国の主張が別れる島嶼部分の上空に設定されていることがその原因だ。
日曜日の報道の背景には武器輸出の自主規制を解除や、安倍晋三首相が外交、防衛両面で積極的に動き経済不振が長年続く状況を変えたいとする動きがある。
記事に対する防衛省のコメントは得られていない。


2014年9月22日月曜日

新型無人機トライトンの実用テスト開始近づく


トライトンはグローバルホークの海上型ですが、要求性能がずいぶん違うようです。米海軍は同機テスト機材を大回りで西海岸から東海岸まで回送してきました。無人機運用は有人機前提の航空管制であらたな問題を引き起こしそうです。日本もグローバルホークを導入すれば同じ課題に直面しますね。




Triton Arrives At Pax River For New Round of Testing

By: Dave Majumdar
Published: September 18, 2014 2:18 PM
Updated: September 18, 2014 2:18 PM
MQ-4C Triton unmanned aircraft system lands at Naval Air Station Patuxent River, Md. on Sept. 18, 2014. US Navy Photo
MQ-4C トライトン無人航空システムがパタクセントリヴァー海軍航空基地に9月18日着陸した。 US Navy Photo

パタクセントリヴァー海軍航空基地(メリーランド州)にノースロップ・グラマンMQ-4Cトライトンがテスト実施のため到着した。同機は大陸横断飛行し9月18日到達した。

  1. ノースロップのパームデール施設(カリフォーニア州)を離陸しおよそ11時間で3,290海里を飛行した。

  1. MQ-4Cの到着で、海軍はテスト内容を任務想定したより実践的なものに移行し、ミッションシステム系統を検分する。

  1. 「同機のテストは今後数年間が重要となり、世界中どの地点でも海上の動きを探知し戦闘部隊に情報提供することをめざす」とマット・ウィンター少将(海軍航空システムズ無人機打撃兵器開発部門)Rear Adm. Mat Winter, the Naval Air Systems Command’s program executive office for unmanned aviation and strike weapons (PEO (U&W))が文書で発表した。

  1. トライトンはパタクセント基地まで遠回りルートで飛行し、南方の合衆国国境地帯上空から、メキシコ湾、フロリダ半島を横断し大西洋に出てからチェサピーク湾を目指した。飛行中の高度は5万フィートを維持し、民間機の飛行帯を避けた。

  1. この飛行経路は連邦航空局が無人機の飛行を領空内では正式な認証がないままでは認めていないためだ。

  1. 「海軍の大型無人機を国内横断飛行させるには関連機関多数と調整が必要だった」とトライトン事業の責任者ジム・ホーク大佐Capt. Jim Hokeが述べている。

  1. NAVAIRはトライトンのフライトをパタクセントリヴァー基地で今後数週間のうちに開始し、ミッションシステム系統および相互運用を検証する。

  1. 海軍はトライトン3機のテスト部隊を2,000時間飛行させ、2017年に初期作戦能力を獲得する。■

2014年9月20日土曜日

ロシア、中国の新型爆撃機開発の現況


西側との対決姿勢を示すロシアが軍事装備の拡充を図っているのは周知のとおりですが、伝統的な長距離航空戦力でも進展が生まれつつあるようです。中国はもっと秘密のベールに覆われていますが、空母と合わせ長距離爆撃機の開発を進めているのは間違いないようです。これに対し米空軍のLRS-Bが本当に開発できるのか、F-35で相当計画が狂っている各国の防空体制が中ロの新型機に対抗できるのか、今行われている投資が2020年代意向の航空戦力図を決定することになるのでしょうね。





Future Bombers Under Study In China And Russia

China may follow Russia in bomber developments
Sep 18, 2014Bill Sweetman and Richard D. Fisher | Aviation Week & Space Technology


Long-Range Plans
ラドゥガKh-101/-102ALCMは全長が大きく、Tu-95の爆弾倉に入りきらず主翼下パイロンに装着する。
VIA INTERNET

米空軍の長距離打撃爆撃機(LRS-B)開発が来年にも本格実施を目指す中、ロシア、中国も次期爆撃機を開発中。このうちロシアのPAK-DA(perspektivnyi aviatsionnyi kompleks dal’ney aviatsii、次期長距離航空システム)は1977年のツボレフTu-160以来となる新型爆撃機、他方、中国は初の国産爆撃機の実現を狙う。
  1. PAK-DAはユナイテッドエアクラフトUnited Aircraft Corp. (UAC) 傘下のツボレフが開発にあたる。ツボレフは第二次世界大戦終結後のロシア長距離爆撃機のほぼすべてを手がけてきた。開発の正式決定は2007年。新型爆撃機が登場するまで既存機種の改修が進められる。

  1. 亜音速全翼機あるいはブレンデッドウィング形式の機体にステルス性能を加えた案が2012年初頭に提出されている。実現すればロシア初の全方位高性能ステルス機となり、1997年就役のB-2と同等の基本性能を手に入れることになる。

  1. PAK-DA製造の最終決定は昨年末で、作業開始は2014年。UACにPAK-DAの設計、製造契約が交付され初飛行は2019年を予定。最終組み立てはUACのカザン Kazan 工場。2023年までに公試を終え、2023年から25年の間に就役、とロシア報道が伝える。エンジンはユナイテッドエンジンUnited Engine CorpのJSCクズネツォフ部門JSC KuznetsovがTu-160搭載のNK-32アフターバーナー付きターボファンを原型に開発する。

  1. それ以上のPAK-DA情報はほとんどないが、ロシア爆撃機部隊の構成やミッション内容から推測は可能だ。
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  1. 現有の長距離爆撃機部隊はTu-160(13機)、Tu-95MS(63機))と減衰中のTu-22Mバックファイヤーで構成。このうちTu-22M3は戦域レベルの陸上攻撃任務で小型だが使い勝手の良いスホイSu-34に切り替え中。

  1. Tu-160近代化改修を2020年までに完了しTu-160Mになるとロシア国防省が2012年に発表。Tu-95も改修を受けてTu-95MSM名称に変更している。ともに大規模な改修で新型レーダーや電子戦装備、計器・データ処理で改良を受けた。機体寿命の延長、エンジンの寿命も長くなった。2010年試算で80億ルーブル(220百万ドル)を2020年まで投入する。NK-32エンジンは2016年までに完成し、PAK-DAのエンジンの基礎となる。

  1. 両型とも長距離空中発射巡航ミサイル(ALCM)を搭載する。ロシアは二型式のALCMを開発中でタクティカルミサイル企業Tactical Missiles Corp.のラドゥガ事業部Raduga divisionが一手にとりくんでいる。このうちKh-555は通常弾頭だが80年代のKh-55核弾頭を改良し、慣性誘導、レーダー地形参照誘導、赤外線誘導を組み合わせる。

  1. これに対し新型で大型のKh-101/102(通常弾頭/核弾頭型)の生産が本格化しており、Tu-160は機体内部に12発、Tu-95MSは主翼下に計8発搭載する。ALCMでは最大で発射時重量は 5,300 lb.と推定。ターボファン動力であるのはKh-55と共通。ロシアの長距離巡航ミサイル在庫は850発。

  1. PAK-DA登場後も改修済み旧型爆撃機は10年ないし15年使用される見込みだ。一方PAK-DAは敵地侵攻任務に投入されるだろう。

  1. 新型爆撃機のエンジンをNK-32原型に開発するとの発表があったこと、ロシア爆撃機は空中給油への依存度が米国より低いことから、機体寸法は大型と推測できる。NK-32は3軸・低バイパス比エンジンでミリタリー推力は31,000-lb、アフターバーナー使用時55,000-lb.。PAK-DA用はアフターバーナーを省き、バイパス比をわずかに上げる。エンジン4発だと重量200トンとなり、B-2およびLRS-Bの推定寸法を上回り兵装搭載量と航続距離が大きくなるだろう。

  1. これに対して中国も新型爆撃機を開発中と伝えられている。人民解放軍空軍 (Plaaf) と海軍航空隊(PLAN-AF)が今でもソ連時代のTu-16を使用し続けているため中国は世界クラスの戦略爆撃機の製造に真剣でないと思われがちだ。Tu-16は中国には1959年から導入され西安航空機 Xian Aircraft Corp. (XAC) が轟炸六型(爆撃機6型、H-6)として製造。ただし改良を加えつつ製造継続していることから長距離空軍力への中国の関心度が推し量られる。

  1. 中国政府、人民解放軍(PLA)双方も今後の爆撃機開発について何も語っていないが、漏れ伝わる情報を総合すると新型爆撃機が開発中なのは明らかだ。H-20の名称で2025年までに登場するとのアジア某国政府の情報もある。

  1. H-20の登場時期は中国が目指す二つの戦略目標と一貫性がある。まず「第一列島線」と呼ぶ日本、台湾、フィリピンを結ぶ線に米国が接近するのを拒否する役目が新型爆撃機に期待できる。二番目に兵力投射の手段となり、中国空母部隊を補完し揚陸能力を整備する海軍を助ける事になる。

  1. これまでも次世代爆撃機の噂は非公式な筋から流れていたが、ノースロップ・グラマンB-2がベルグラードで中国大使館を誤爆した1999年5月が開発開始の契機といわれる。中国がB-2情報をノースロップ・グラマン技術者ノシル・ゴワディア Noshir Gowadia からどれだけ入手したか不明だ。ゴワディアは2011年に軍事機密を中国に渡した罪で刑期32年の有罪判決を受けた。

  1. この新型爆撃機でも西安航空機が主契約企業となっる可能性が高い。ロシア、米国の新型機と同様にH-20も亜音速低探知性の「全翼機」形状となるだろう。
  1. 興味深い情報が人民解放軍の研究部門から出ている。中国報道ではPlaafのWu Guohui大佐(国防大学National Defense University 准教授)がステルス爆撃機が「国家の関心を再度呼び起こし」て「中国は爆撃機が弱体だったが今後は長距離打撃機開発をめざす」と発言しているのだ。
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  1. また同大学の准教授Fu Guangwenは2013年に中国の爆撃機開発の障害はエンジン、素材だという。一方で、新型機は第二列島線のグアム、南シナ海、インドを標的にし、ステルス性で侵入が容易になり、「情報対決」つまりサイバー電子戦に対応し、核・非核両用対応、と発言している。

  1. 新型爆撃機の設計は2008年に開始ずみとの報道が2014年1月にSina.comから出ている。報道では機体は全翼機形式で米西海岸が攻撃目標になる。

  1. 2013年にB-2に酷似した想像図が中国の技術報に出ている。2014年初めにはコウモリの翼形状のラジコン機がテストされている場面が流出している。中国が次世代軍用機の形式を真剣に検討中なのは明らかで、情報漏出は意図的な国内、海外向けだろう。

  1. このうち上記のラジコン機は長距離無人航空機 (UCAV) の想定かもしれず、中国が長距離無人攻撃機を開発している可能性を示す。メディアが大々的に全翼機「利剣」LiJian(瀋陽航空機 南昌Hongdu航空機共同開発)のデビューを2013年11月に報じている。ボーイングX-45Cと形状、寸法が酷似した利剣は両社から今後登場する大型UCAVの魁だろう。ロシア、米国に追随し西安航空機がH-20の無人機版を開発する可能性もある。

  1. また中国は超音速中距離爆撃機にも関心を示しているのが2013年に低視認性双発形状のモデル機が登場したことでうかがえる。実現すれば全長25メートルから30メートルで1950年代のコンヴェアB-58(西側では最大規模の超音速爆撃機)とほぼ同寸。しかし開発が進行中なのか不明で、過去の競作で不採択案なのか、予算がつかなかった案件なのか不詳。

  1. PAK-DAは合衆国内地点を目標とする戦略的野心作だが、中国の新型機が同様の想定とは考えにくい。とはいえ、長距離飛行し生存可能性高い機体で大量のミサイル搭載により中国の近隣地区の敵陸上基地や海軍部隊には大きな脅威になる。超音速ステルス戦闘機J-20の存在も考慮する必要がある。

  1. 一方でPLAはH-6新型の開発と既存各型改修も進めている。ロシアからTu-22M3購入を断られて、H-6の大幅改修に迫られた背景がある。
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  1. H-6Kはロシアが提供した推力26,500-lb.のUEC-サトゥルンD-30KP-2ターボファンを搭載し、1950年代のターボジェットから3割近く出力が増えている一方、高バイパス比 (2.24:1) で燃料消費効率が向上。戦闘行動半径は3,500 km と言われる。機首に新型レドームとし、電子光学式目標捕捉センサーを搭載。グラスコックピットに改装し、主翼下のパイロン6つは射程1,500-2,000-kmのCJ-10/KD-20 対地攻撃巡航ミサイルを搭載する。また精密誘導爆弾も中国国内企業4社が製造中で運用可能だ。

  1. 旧型H-6も改修中。空軍のH-6G三個連隊には新型超音速ラムジェット式YJ-12対艦ミサイルの配備が始まる。射程400 kmとみられる。さらに旧式のH-6MもCJ-10/KD-20 対地巡航ミサイル運用能力を付加されている。先出のアジア某国政府筋によるとPLAにはH-6が130機配備されているが、2020年には180機になるという。つまりH-6Kの生産が今後も続くということだ。

  1. PLA戦略爆撃部隊の将来は空中給油能力の整備に大きく左右される。今年3月から4月にかけてPlaafはイリューシンIl-76MD三機を取得してウクライナでIl-78給油機に改修している。各機には給油用ロシア製ドローグ・ホースシステム3組があり、旧式H-6U給油機(推定24機)は1組搭載で搭載燃料重量も小さいことから大きな進展になる。

  1. 将来は西安Y-20大型輸送機を改造した給油機も登場するだろう。ロシアとの間でワイドボディ輸送機開発の話もあり、この改装版になるかもしれない。
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  1. ただし今後の大型機へ対応するには給油効率を上げる必要があり、中国もフライングブーム給油方式の採用を検討するはずだ。2013年の学会発表として西工大 Northwest Polytechnical Universit yから北斗 Beidou 航法衛星の発信信号に光学システムを組み合わせホース・ドローグあるいはフライングブーム式の空中給油を自動制御する方法が提案されている。■



2014年9月19日金曜日

インド・ロシア共同開発で新型第五世代戦闘機開発へ

インドとロシアの第五世代戦闘機共同開発ですが、思惑通り進むのか興味津々ですね。
ロシアが狙うのはインドのエイビオニクス等高度技術のようですが、果たしてどうでしょうか。
交渉事ではタフそうな両国ですから途中で意見が衝突しそうな気もします。




Indo-Russian Jet Program Finally Moves Forward

Sep. 15, 2014 - 02:50PM   |  
By VIVEK RAGHUVANSHI   |   Comments
RUSSIA-AEROSPACE-MAKS-2013
第五世代戦闘機をロシアのT-50を基にインドとロシアが共同開発する。写真は2013年モスクワ上空を飛行する同型機。 (KIRILL KUDRYAVTSEV/ / AFP/Getty Images)
NEW DELHI — インドとロシアが第五世代戦闘航空機Fifth Generational Fighter Aircraft (FGFA) 共同開発で残っていた課題を解決したと在印ロシア外交筋が述べている。計画では200機を300億ドルで生産する。
  1. 課題がすべて解決したとインド国防省は認めておらず、両国間の作業分担率で合意できていなかった。
  2. ただナレンドラ・モディ首相Prime Minister Narendra Modi とウラジミール・プーチン大統領がこの問題を7月にブラジルで協議したことを外務省が認めており、FGFA事業の前進を確認していると消息筋が追加している。
  3. 2010年に初期設計合意がインド国営ヒンドゥスタン・アエロノーティクス・リミテド Hindustan Aeronautics Ltd. (HAL) とスホイ設計局の間で成立しており、FGFAを共同生産するとしていた。ただしこの最終版で生産を開始する予定だったが、インド空軍から設計案の承認が取れず、一方で両国の間で作業分担の合意が取れず棚上げになっていた。
  4. インドは分担率を25パーセント以上に引き上げる変更を求めている。両国は295百万ドルを投入ずみ。
  5. 上記ロシア外交官によればインドの作業比率はインド産業界の成熟に伴い40%まで増加し、高度技術の機体搭載が期待されるという。
  6. インドとロシアは今年末までに最終合意にサインする予定と外務省は説明している。ロシアもインド空軍の要求内容を認め、複座機体とすることを認めているといわれる。試作型は単座機となる。
  7. HALとスホイ設計局はシステム、サブシステムをそれぞれ整理中とHAL関係者が述べている。合意内容ではインド、ロシアは共同で推力方向変更システムを開発し、HALはミッションソフトウェアおよびハードウェア、エイビオニクス一式を供給する。
  8. インド開発の視界外有効射程ミサイル、アストラはインド国防研究開発機構 Defence Research and Development Organisation が開発中で、インド・ロシア共同開発のBrahMos超音速巡航ミサイルも別にある。これらをFGFAに搭載するのがインド空軍の目論見だ。
  9. スホイ設計局とHALの案はロシアのT-50を改良するもので、同機はまだ試作段階にある。T-50試作機あ計4機でテスト飛行回数は300回を上回っている。
  10. インド空軍としてはFGFA試作機一号機を2016年までに取得し、公試を実施し、2018年19年に一機ずつ引き渡しを受けるというもの。量産は2021年までに開始する。
  11. インドが第五世代機開発に参入したことからロシアにも恩恵が出てくる。インド空軍は「本来ならFGFAの設計段階から参画したかったが、インドのFGFA開発がロシアの第五世代機開発の資金になっているようだ」としている。
  12. インド外務省関係者によればプーチンーモディ合意ができたことで事業が迅速に進み、技術上の課題がHALとスホイ設計局間で整理できたことで両国はともに利益を享受できるとする。 ■

2014年9月18日木曜日

★★日本も陸上配備イージス導入か。海自イージス艦も性能改修へ



イージスはヨーロッパ向けに陸上配備の整備計画も進んでおり、日本も導入したいというのが今回の背景でしょう。なお、いつもながら防衛省の使っている「護衛艦」は駆逐艦と訳しています。ちゃんとDDGとなっていますからね。



Report: Japan Interested in Aegis Ashore for Ballistic Missile Defense

By: Sam LaGrone
September 16, 2014 1:23 PM
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
テスト用のイージス陸上型の指令制御建家が太平洋ミサイル試射場内に設置されている。 Jan. 8, 2014. US Navy Photo


防衛省がロッキード・マーティンのイージス陸上型 Aegis Ashore 弾道ミサイル防衛装備調達に関心を示していると毎日新聞が報道している。

  1. 記事では平成27年度に防衛省は数千万円規模の研究費を要求する。イージス陸上型はロッキード・マーティンのSPY-1Dレーダーとレイセオンのスタンダードミサイル-3を組み合わせる。

  1. 防衛省は導入済みの艦船搭載SM-3に加え、地上発射型SM-3で弾道ミサイル防衛(BMD)の実効性を上げる意向、と記事は伝えている。

  1. USNI Newsはロッキード・マーティンと米ミサイル防衛庁(MDA)に問い合わせたが、同記事について双方から言及がなかった。

  1. 日本関連で実施中なのはレイセオンの陸軍・海軍共用レーダー監視BMDレーダ(AN/TPY-2) が唯一の事例とMDA報道官はUSNI Newsに述べている。

  1. 日本はこんごう級イージス搭載誘導ミサイル駆逐艦4隻にSM-3を搭載し、長距離弾道ミサイルに対応しているほか、ロッキード・マーティンのペイトリオット性能向上型 (PAC-3) 移動式地上発射迎撃ミサイルを極地防衛用に運営している。さらにイージス艦を2018年までに8隻に増強する予定と報じられている。
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  1. 「大量のミサイルが同時に飛来すればPAC3では対応しきれないとの懸念がある」と記事は伝えている。

Japanese Aegis Destroyer JS Kongo (DDG-173) launches a SM-3 in 2007. U.S. Navy Photo
こんごう (DDG-173) のSM-3発射 (2007年)US Navy Photo

  1. ただし、こんごう級のイージスBMD装備は旧式化しており、BMD対応と防空戦を同時に実施できない欠陥がある。

  1. そこで一部艦船をベイスライン9仕様に改修し、BMDと対空対応(AAW)を同時に行えるようにする計画がある。

  1. イージス陸上型はベイスライン9で作動してもAAW装備は付随していないが、日米海軍艦艇で運用中のイージス装備が似通っていることから、将来的には能力拡大の余地があるとみられる。

  1. 「艦艇用イージス装備を流用することで、AAW以外に最終飛行段階や中間飛行段階防衛も可能だ」とジェフ・ウェストン海軍大佐Capt. Jeff Weston(陸上イージス計画主幹)が昨年行われたUSNI News取材で答えている。ウェストン大佐は米国向け陸上イージスはBMDを中心に対応する、とも述べている。

  1. ただし日本向けのイージス陸上型にAAW能力を追加し、BMDと同時に防空作戦を複数目標向けに行う可能性が出てくるだろう。■



2014年9月17日水曜日

ISIS戦略方針をオバマ大統領演説から読み解く


ISISとの戦いはこれまでのアルカイダ等イラク、アフガニスタンの戦いと様相がちがうものになりそうです。先日のオバマ大統領演説をメッセージ面で分析したのが下にご紹介する論文ですが、筆者は現役海軍大尉とのことで論旨の展開ぶりから今後が楽しみな人のようです。時々マハンはじめとする論客があらわれるのは米海軍のおもしろいところですね。ところでISIS包囲網に日本も加わっており、今後政治面で日本の役割を真正面から論じざるを得なくなるでしょうね。なお、トヨタにはIsisという車種がありますが、早晩車名変更せざるを得ないのでは。あまり関係ありませんが。









Opinion: The Strategic Communication Goals Behind Obama’s ISIS Speech
By: Lt. Matthew Hipple, USN
Published: September 11, 2014 8:18 PM
Updated: September 11, 2014 8:18 PM

obama-isis-speech-091014

アメリカは13年前に長期戦に突入している。9月10日にバラク・オバマ大統領は戦闘が継続中で、今度はイラク・シリアイスラム国(ISISまたはISIL)に立ち向かう旨演説したのは時期にかなうものである。

  1. 大統領演説を要約すれば、長期戦ということだ。

  1. 大統領の意図はISISの脅威を説明し、ISISを打破しアメリカがこれまでの13年間地上戦にくぎ付けとなった事態を回避することだ。アメリカはISISを滅亡させるが、アメリカ単独では実施しない。アラブ圏の友好国、イラク軍、シリア反対勢力を巻き込み、アメリカ軍事顧問団と空軍力で実施する。

  1. では今回の演説の中身から、政策そのものではなく、戦略的なメッセージ、その対象、意図する効果を論評してみたい。

全員へ:ISISとは脅威そのものであり、破壊されなければならない。


  1. 「本土では陰謀の実例はみつかっていませんが、ISIS指導部はアメリカおよび同盟国を脅かしています。情報機関によればヨーロッパ各国とアメリカ出身数千名がシリアとイラク国内で戦闘員として加わっており、訓練と実戦経験を踏んだこれら戦闘員が母国にもどり、攻撃を加える可能性があります。」

  1. とくにアメリカ国民向けに明確にISISの脅威が理解できるよう大統領は機会、能力、意図を組み合わせて説明している。ISISの残虐性は証明済みでだが、彼らの主張する目的には悪意ある人々をひきつける効果がある。これはヨーロッパの聴衆にも同じく受け止めれる。

  1. 「我が国を脅かすテロリストはどこにいようと一人残らず駆り立てると明言してきました。これは当政権の信条の中心であり、アメリカを脅かすものには安全な場所などありません」

  1. この内容に特に説明は不要だろう。

中東各国へ: 拳を、でも硬くせず

  1. 「これは我が国だけの戦いではありません。アメリカの力は決定的な結果を生みますが、イラクにかわってイラク国民が自分ですべきことを我が国が行うことはありません。同じようにアラブ各国の友好国にはすべきことがあります。対テロ作戦は一貫して休むことなく続け、ISISを除去すべく、我が国の空軍力および同盟国の地上軍を支援します。」

  1. 敵の敵と連携する事態が生まれるのを待つのか、挙国一致体制のイラク新政権が発足するのを待つのか、とはいえ大統領演説は周辺国に合衆国だけでこの事態を囲い込むつもりはなく、継続中の代理戦争は周辺国すべてを疲弊させてしまう可能性を示しているものだろう。合衆国が「飛び込んで」こないとわかれば、今回の対決中でもっとも憂慮すべき事態を引き起こすかもしれないのだ。
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  1. 演説ではイラク政府、クルド人部隊、あいまいにシリア反乱勢力へ言及があったが、個別名でのシリア反乱勢力、イラン、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアおよび湾岸諸国もこの戦いに加わろうとしているのにもかかわらず言及されていない。何らかの意図があるのだろう。

  1. イラク政府軍とクルド戦闘部隊間に分裂があることがうかがえるが、別個に戦闘を実施する中でクルド人の功績が大なのが政治的に微妙な作用を及ぼしていることを理解すべきだ。

議会へ: しっかりと一貫性を


  1. 「総合的かつ一貫したい対テロ戦略でISISを追い詰め破壊する」

  1. 合衆国はISISを明確に相手とし、地上兵力除く多くの資源を投入していくだろう。これに驚く人はいないはずだ。だが大統領は議会に二点を伝えている。議会の承認を都度必要とせず交戦すること、およびシリアへの拡大だ。

  1. 「我が国は最強国家であり大統領と議会はともに手を携える。そのため議会の支援により世界に対してアメリカが団結して危機に対処していることを示したい。....かつてはアルカイダ支部だったものがイラクの部族間対立とともにシリア内戦も利用して支配地域を両国にまたがって拡大している」

  1. これはわかりやすい。大統領が議会の承認を求める発言をすると観測していたものがあるが、そもそも議会承認が必要なのかはっきりしない中で承認を取っているのと同じといってよい。同様にこれがISISはアルカイダと同類だと発言した理由でもある。

  1. 「追加的権限と資源を与え、ISISと対決する戦闘員の訓練および装備調達を可能とするよう議会に再度求めたい。自国民を残虐に扱うアサド政権には信頼を置くことができず、同政権は一度失った正当性を回復することはできないだろう」

  1. ここで大統領は以前からのシリアの関与についての議論を続ける格好だ。この部分はその他戦略部門の言及の中に埋もれているが、ISISの残虐性について言及してから、シリア大統領バシル・アル・アサドとの同盟関係はありえないとし、アサドも残虐性では同一だとする。現実主義者の立場ではこの点に違和感があるだろうが、大統領が演説中で示しているのはソフトパワー soft power とイデオロギー超越counter-ideologyの二点だ。これは今後も訴求される内容だろう。

アメリカ国民へ過去の「引き返せない点」は避けつつ、期待を実現せよ
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  1. 大統領は基本ルールを作って国民各層の支持を保持しようとしている。

  1. 「以前も述べたように米軍部隊は戦闘任務に投入しない。イラク地上戦へ再度引きづり込まれない。...アメリカ国民には今回はこれまでのイラク、アフガニスタンと違う戦いにしようとしている点をご理解いただきたい。米軍戦闘部隊が海外の地で交戦に巻き込まれることはない」

  1. 第一に合衆国は今回の紛争に全面参入せず、過去10年間の状況に「回帰」あるいは「巻き込まれる」ことはない。これがシリアを巡る議論の背景にある最大の懸念事項で、オバマも回避したい点だ。これには軍事作戦が知らぬ間に拡大しないかとの懸念を事前に防ぐ意味があり、議論そのものを遅らせる意図もあり、否定的な反応が起こる前に先手を打ったのだろう。

  1. 「世界にある邪悪な力をすべて消去することはできず、殺人集団は小規模とはいえ大きな害を及ぼす力を有しています....ISISのような悪性がんを根絶するには時間がかかります」

  1. 第二に、現実に即した形で期待を維持することだ。示された戦略は長期にわたるもので、「世界からすべての悪を消去できない」というのは同様の脅威がこれからも発生するとの布石だろう。大統領は簡単に勝利を収められるとの期待や勝利への確信を回避したいようで、期待が裏切られ支持がなくなることを恐れているようだ。

  1. 「軍事行動には危険がつきもので、とくに軍に身を投じる男女が任務を実施する際には危険がつきまといます」

  1. 三番目に危険対応を予め準備させることだ。現場で任務に就く兵員や上空を飛ぶ航空機ではISISによる殺害あるいは誘拐あるいは撃墜の恐れという「低リスク」があるというだけで任務達成が困難になるできなる。紛争が長期化するという現実直視をすれば当初こそ支持に盛り上がりをかくことになりそうだが、一方でより堅実かつ現実的な理解を生み、作戦維持ができることになる。

中東各国および西側出身でISISへの「転向者」へ

  1. 演説を通じ合衆国が同地区を重要視しているのがわかるが、「空軍力」、遠隔地からの「対テロ作戦」、軍事顧問団という言葉遣いから合衆国には同地区を再占領する意図がないことがわかる。そうなるとISISに対しまだどっちつかずの国や「西側諸国の帝国主義」を心配する向きとも意思を疎通させなければならない。「帝国主義」や「聖戦」を否定することで合衆国はISISは「イスラム」にあらず、イスラムとの戦闘を展開するのではないと説明できる。ただしこのメッセージが戦闘地区内に届くことはないだろう。
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  1. ただし西側諸国や比較的安定している隣接諸国にいるものにとってはISISがソーシャルメディアを駆使して聖戦を訴えていることは要注意だ。

総括:


  1. 一部で戦略案そのものに異議をとなえるものや、ソマリアやイエメンの価値を引用する部分の正確さに違和感を覚えるものがあろうが、今回の演説は今後の戦略的な意思疎通を前面に出したことでは極めて率直なものだった。

  1. なぜ合衆国がISISを相手にしなければならないのか、我が国の安全そのものがかかっていること、さらに地域内の同盟国も自国の安全を目指して努力していることがはっきりと説明された。

  1. 公職最高位にあるものでここまで意思疎通を「戦略的に」行った事例は少ない。同時にその好例だろう。
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  1. 示された方針が合衆国にとって正しい選択なのかは我ら国民が議論することであり、時間の経過ではっきりしてくるだろう。■

2014年9月16日火曜日

スコットランド独立の場合 英国防力への影響はどうなるか 投票日は9月18日


女王まで異例の発言をするなど、分離独立を食い止めようとする勢力は必死になってきました。それだけ可決の可能性が高いということでしょう。記事が取り上げている内容どおりなら英国の国防計画は破たんしてしまいそうですね。東アジアのこちらは中央集権国家タイプですので、今回の騒動もなかなか理解できないでしょうね。




Scottish ‘Yes’ Vote Could Have Major Impact On U.K. Defense

Narrowing polls in Scottish independence referendum prompt U.K. defense concerns
Sep 15, 2014Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology
Sources: Google Maps and AW&ST Art Dept.

9月18日にせまったスコットランド有権者4百万人による住民投票結果次第で英国の国防は大きく影響を受けそうだ。選挙運動の最終段階で賛成票が多数を占める可能性が現実味を帯びてきた。
  1. 独立反対の結果でもスコットランドには現在より大きな裁量権が与えられ、英国全体に影響する政策方針の変更は避けられないだろう。.
  2. ただし政治指導層が最も恐れているのが独立賛成の結果であるのは間違いない。独立となれば300年にわたる統合が崩壊し、国防分野がまっさきに影響を受ける。英国議会もこの投票の動向を意識しイラク国内でのイスラム勢力向け空爆への参加議決を見合わせている。
  3. 2010年の戦略国防安全保障検証 Strategic Defense and Security Review (SDSR) によりスコットランド駐留部隊は大幅縮小したが、スコットランドは英海軍のトライデント戦略ミサイル原潜の母港で、核抑止力のかなめであることにかわりない。
  4. 戦闘機や陸上部隊なら簡単に南部へ駐留地を移動できるが、核抑止力はそうもいかず国防関係者にとって頭の痛いところだ。さらにスコットランドが英国に潜水艦の即時撤去を求めるかもしれない。そうなると国内には潜水艦の運用に必要なインフラは他になく、NATO、EUそれぞれの加盟国にとっても核抑止力の空白は悪い結果となる。なおスコットランドは両組織へ加盟を希望している。
  5. それでもスコットランド国民党 the Scottish National Party (SNP) のトライデントへの見解は明白だ。独立を目指す白書の中で同党は「無差別かつ非人道的な破壊力であり、人類への侮辱」とまで言い切っている。
  6. SNPの主張では独立を実現すればトライデント後継ミサイル開発から自由になれるという。開発は1,000億ポンドで20年から30年かかるとみられる。
  7. 国民党は同時にスコットランドは英国防予算340億ポンドの1割を支払っているのにその半分しか恩恵を受けていないと主張。またスコットランドが拠出をやめれば国防省が今後10年でめざす1,600億ポンドの装備調達計画で130億ポンド不足が生じると説明。
  8. 2010年度SDSRにより空軍基地が二か所閉鎖されている。英海軍は水上艦基地をスコットランドには一か所も有していないが、基地閉鎖がスコットランド選挙区では暗い材料になったのは確かだ。
  9. 独立賛成票によりスコットランドの小規模ながら重要な国防産業も域外脱出を加速化するかもしれない。もっともリスクが高いのが造船で5,000名の雇用がかかっており、海軍艦艇や潜水艦は国内建造するのが現在の方針だ。エアクラフト・キャリア・アライアンス Aircraft Carrier Alliance がエジンバラ近郊のローサイスRosyth で英国の新型空母2隻を建造中だ。造船各社は南方への移動を模索するだろう。
  10. SNPは英軍装備を引き継ぎ自国防衛を図ると綱領で発表している。人口比からスコットランドは78億ポンド相当の装備を所有すべきで、防空用にユーロファイター・タイフーン12機ないし16機、ロッキード・マーティンC-130Jは6機を委譲を希望する。ただしこの交渉は難航するだろう。
  11. 住民投票で独立が否決されれば国防関係者は安堵するだろうが、スコットランド議会への権限委譲がさらにすすめばスコットランドから隣接する各地域へ発言権が増しても、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの各地方はスコットランドへ口出しできない。この問題は「西ロージアン問題」“West Lothian question” と呼ばれ、残る地方への権限移譲につながるかもしれない。
  12. 住民投票で可決されればSNPは独自の憲法制定に動き、2016年3月までに完全独立を目指す。■


2014年9月15日月曜日

KC-46空中給油機の初飛行日程も遅れる見込み


順調と思われていたKC-46開発ですが、思わぬところでつまづいているようです。設計段階に間違いがあったのであれば「詰めが甘い」と言われても仕方ないですね。固定価格で超過する分は海外輸出で回収するというのがボーイングの計算のようで、日本もその対象に既に入っているようです。KC-767の追加購入はKC-46に切り替えていくということでしょうか。





First Flight for KC-46 Tanker Platform Slips Further

Sep 12, 2014Amy Butler | AWIN First
Boeing

配線問題でKC-135後継機となるべきボーイング767-2Cの初飛行は早くても11月中旬と当初の6月から大きく遅れている。
  1. それでもジョン・トンプソン少将(KC-46事業責任者)Maj. Gen. John Thompson, program executive officer for the KC-46 programによればボーイングは第一期18機の納入を契約通り2017年8月に実行できると見ている。「稼働可能必要機数(equired assets available RAA)の実現に支障となる大きな問題はないが、日程管理は改善の余地がある」と9月11日にAviation Weekに発言している。
  2. ボーイングは2011年に固定価格制で44億ドル開発契約を獲得し、政府負担は49億ドルが上限となる。2013年に行った原価危険度評価では総額59億ドルとなったとトンプソン少将は述べた。差額はすべてボーイング負担で2017年を迎える事になる。最終的に空軍は179機を調達する。.
  3. ボーイングからは272百万ドルを投入し事業を予定通り進めるとの発表があった。問題は基本形767-2Cの配線だ。給油機として配線設定で空軍が二重あるいは三重の冗長性を求めているため、基本形767の配線は総延長70マイルだが、2Cでは50マイル分を追加している。冗長部分とは別に、重要システムでは安全の理由から配線間に一定の距離を保つ必要がある。今年早々にFAAテストの準備を進める中でボーイングは配線の5-10%で距離が十分に確保できていない、あるいはシールドが不十分であることに気づいた。
  4. この設計不備は「設計ツール段階に原因がある」ためとボーイング広報のキャロライン・ハッチソンBoeing spokeswoman Caroline Hutcheson は発言。「問題の本質は既に理解されており、既存技術で解決でき、追加作業を行うだけです」
  5. 配線の一部はテスト機材4機で設置ずみのためこの機材を一時的にテストから外している。残る3機は組立済みでボーイング施設内で配線取り付けを待っている状態だ。ただし、この三機の組立はほぼ同時並行で行われるので、設計見直しはフライトテストの制約となるかもしれない。
  6. 767-2Cは 767-200ERの貨物床を強化した給油輸送機仕様で貨物用扉など輸送機の特徴を持つ。操縦席は787を基本とし、予備燃料タンクと配管配線で給油用ブーム並びにミッションシステムズを運用する。ボーイングはワシントン州エヴァレット工場の民間機生産ラインで同型を組み立ててミッションシステムズは最終工程で組み付けることで最短の生産を目指している。
  7. 第一期開発用機材は2Cの呼称でFAAの追加型式証明を受ける。第二期機材がKC-46となり、初飛行は2015年4月予定でトンプソン少将によれば今のところ変更ない。しかし「4月第一週に飛行できないと、マイルストンC[ペンタゴンによる生産決定]を同年9月としているので深刻な日程遅延を毎日心配しなくていけなくなる」
  8. トンプソンはマイルストンC決定はペンタゴンの調達トップフランク・ケンドール次官が下すものでわずかに遅れても2017年8月のRAA目標が実施不可能となるわけではないという。ただし2C生産の遅れは開発生産を同時進行させるKC-46事業に影響を与える。開発開始時にはこの方針が逆にリスクを減らすと言われており、ボーイングが民間機を軍用に転換する経験が深いのがその理由だった。ただし、ペンタゴンが第一期分13機の生産を決定する時点で2Cのフライトテストは開始されたばかりのはずである。
  9. さらに同機開発では新しい「一回きりテスト」"Test Once" の考え方を導入しており、一回のテスト飛行でなるべく多くのテスト項目を各関係機関が実施することにしている。そこで遅延が発生すればさらに多くのプレッシャーが加わる。
  10. トンプソン少将は日程管理のプレッシャーを和らげる方法を検討するが、現時点では解決策を絞り込めていないという。
  11. ボーイングにとっては大日程の維持は高くつくが、トンプソンは同社にとって旨みのある事業になるはずと言う。KC-46導入へは日本と韓国が関心を示している。
  12. 配線問題が出る前にボーイング関係者からは機体完成時の価格試算は政府試算額を下回るとの見通しが出ていた。ハッチソンはトンプソン少将の見積額を否定しなかったが、「事業全体の大日程を追加コストを政府や納税者に押し付けることなく、設計通りに実現すべくボーイング負担を増やす」という。■