2015年1月27日火曜日

ウクライナで米陸軍が軍事訓練を実施する

ロシアをめぐる包囲網が着々と形成されてきました。、石油価格の低下でロシア経済は八方塞がりの状態です。さらにウクライナに訓練教官とはいえ現役の米陸軍部隊が入ってくると、神経過敏なロシアがどんな行動に出るのか注意が必要ですね。

US Trainers To Deploy To Ukraine

Also Will Begin Shipment of US-funded Armored Vehicles

By Paul McLeary4:16 p.m. EST January 21, 2015
http://www.defensenews.com/story/defense/land/army/2015/01/21/ukraine-us-army-russia/22119315/WASHINGTON — アメリカ軍部隊が今春にもウクライナに派遣され、ウクライナ防衛隊の訓練に当たることがわかった。在欧州米陸軍ベン・ホッジス中将Lt. Gen Ben Hodges がキエフにて表明した。
  1. ポーランド国境から40マイルほどのリヴィーヴ L'viv のヤボリフ演習地へ派遣されるが、兵員規模は未定
  2. 米陸軍が担当する訓練は国務省によるウクライナ法執行体制強化、領土保全、法秩序維持の総合支援策の一環とペンタゴン報道官ヴァネッサ・ヒルマン中佐がDefense Newsに説明している。
  3. ホッジス中将はウクライナ国軍司令官アナトリ・プシニャコフ中将Lt. Gen. Anatoliy Pushnyakov 、防衛隊司令官代行オレクサンドル・クリヴィエンコLt. Gen. Oleksandr Kryvyenko とそれぞれ面会し、「同国の改革に向けた軍と政府指導層の意気込みに感銘を受けた」
  4. ウクライナ政府から訓練要請が来たとヒルマン中佐は付け加えた。予算は議会が創立させたグローバル安全保障緊急基金 Global Security Contingency Fund (GSCF) から拠出する。基金はオバマ政権の要請で2015年度予算で創設したもので、各地の同盟国軍向け訓練や装備提供に使う。
  5. ウクライナ防衛隊向けにはすでに19百万ドルが事前に確保済みだ。
  6. 「今回は第一歩で今後はウクライナ軍の訓練につながる」とデレク・チョレット国防次官補(国際安全保障担当)Derek Chollet, former assistant secretary of defense for international security affairsは退任直前にDefense Newsに語っている。ただし、今回の訓練がきっかけでウクライナに米軍がプレゼンスを増大させることにはならないとも発言。
  7. チョレット次官補によればロシアのクリミア併合とウクライナ東部侵攻で米国は同地域への関心をふり向けることになったという。「ロシア、ウクライナ間の対立でヨーロッパ全体の安全への脅威が意識され冷戦終結でやり残していた課題が浮上した格好だ」
  8. 今回の訓練は東欧各国でロシアによる強攻策への懸念が増す中での実施となり、ウクライナ東部ではドネツク Donetsk で政府軍とロシア支援を受けた分離主義反乱勢力が交戦中だ。
  9. ダボス会議でウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコ President Petro Poroshenko がロシア軍9千名が東部で反乱分子を支援中とロシアを名指しで非難している。この点はNATO関係者も認めているが、ウクライナ国内に展開するロシア軍の規模は明らかになっていなかった。
  10. 訓練の実施以外に米政府は重軍事装備をウクライナに供与する。その先陣を切り、19日には装甲つき「コサック」"Kozak" 車両の試作型がウクライナ国境警備隊に送られたと米大使館が発表。米政府関連の調達情報サイトでは189千ドル相当となっている。
  11. この車両はイタリアのIveco製のシャーシにV字型の車体を載せ、地雷や道路脇の爆発物に対応する。大使館によれば「米国はすでに装甲トラック、バン数台をウクライナ国境警備隊に寄贈しており、コサックはこれまでの車両より大型で防護力も高い」。■

2015年1月26日月曜日

★F-22初の実戦投入はこうして実施された 



(やや長文なのでご注意ください)実際のミッションの様子がよくわかります。状況に応じて臨機応変に対応することは普段の訓練があってのことですが、戦闘空域で実にたくさんの情報が利用されていることがわかります。なお、Coalition partnersは協力国と訳しました。

With the Raptors Over Syria

FEBRUARY 2015

BY AMY MCCULLOUGH
NEWS EDITOR

F-22の初の実戦投入は予期しない形で夜間に実施された。2014年9月時点で名称非公開の南西アジアの基地にはF-15Eストライクイーグル編隊とF-22部隊が配備され駐機場に余裕がないほどだった。
  1. F-22部隊はラングレー・ユースティス共用基地(ヴァージニア州)の第一戦闘機団への帰国許可をその一週間前に受領しており、混雑の緩和を図る予定だった。各機は長い移動飛行の準備として燃料タンク2つを追加装備し、洋上飛行に備えていたが、そこに各機を戦闘投入する必要が生じたと合同航空作戦センターから連絡が入った。
  2. 整備部隊が直ちに作業を開始し、24時間以内に空軍兵員はデータをダウンロードし1,000ポンドの共用直接攻撃爆弾 Joint Direct Attack Munitions 他空対空、空対地の脅威に対応する装備を使用可能とした。
  3. これまでF-22は中東の抑止力形成のため駐留しておりISIS戦でデビューするとは誰も予想していなかった。ISISは空軍力を事実上有しておらず、ラプターが相手にする空対空戦が成立しないからだ。
  4. F-22はシリア国内のISIS勢力に対する米主導の作戦に投入された。作戦は三波構成だった。ただし米軍機が領空に侵入した場合にシリアがどんな反応を示すか米国に予測できなかった。ISISには空軍がないが、シリアにはあり、統合防空システムも作動していた。
  5. 飛行隊が標的情報を得たのは離陸24時間前のことで、アレッポから50マイル地点のISIS指揮所の攻撃が命令された。
  6. 「各目標を事前検討し、目標にふさわしい装備を投入した」とジェフリー・L・ハリジャン少将が回想している。F-22の投入が妥当と判断されたのは「防御が重装備で特に攻撃開始直後にシリアの統合防空体制がどう機能するかを確かめたかった」
  7. F-22は実戦投入の実績はなかったが、準備は怠っていなかったとパイロットの一人(氏名秘匿)は語る。
  8. 現地でF-22編隊はF-15Eストライクイーグルと共同訓練をしていた。8月早々にオバマ大統領がイラク国内のISISIへの空軍力投入を許可した時点でストライクイーグル部隊のテンポは早まっていく。
  9. 「8月から9月にかけてF-15E部隊は多忙になっていき、F-22は訓練を一緒にできなくなり単独訓練を実施していました」(先出パイロット)
  10. シリアの地対空ミサイルや防空戦闘機について研究していたという。「センサー各種をフルに使う想定で訓練は実践の可能性が高いイラク、シリアを想定した」
  11. 6月から7月にかけ「状況が進展した」ことでF-22訓練は昼間から夜間に変更され、「何が起こるのか不明なまま、準備だけは行っていた」という。
  12. 同基地のF-22は9月22日の東部標準時間午後9時に発進することになった。先導部隊はF-15E、第二波は協力国の各機、F-22は第三波になった。発進した各基地は非公表。それぞれ戦闘機4機と給油機1機で構成していた。
  13. 期待が高まり、歴史的なフライトに全員が参加を望んでいた。「兵装部門はF-22で実弾投下の機会はめったにないので大変興奮していましたね」(前出パイロット)
  14. 各波に5分間の間隔があるはずだったが、最初のF-15Eでエンジン故障が離陸時に発生し、高速で離陸中止をしたことで滑走路が20分ほど閉鎖されたと前出パイロットが明かした。
  15. 「目標地点まで1,200マイルあり、まっすぐ飛んでも2時間超かかりました。緊急事態も想定して30分予備燃料を搭載したため、離陸前には柔軟度がなくなっていたのですが、一番先に出発する機体でトラブルが発生したのでやきもきさせられたわけです」
  16. その間もF-22は待機し、結果4分から6分の遅れが発生した。ラプターが28,000フィートの巡航高度に到達すると、別の課題に直面する。予想よりも気流が「かなり強い」ことだったと前出パイロットが明かした。
  17. 「もう半年も現地で飛行していたが事実上その高度では無風状態だったのに、その時は60ノット80ノットの風が吹いていたんですよ。短距離なら大して気に留めないのですが、1,200マイで2時間のフライトですからね、フライトプランと大きく差が出ます」
  18. 予想外の気流で5ないし10分の誤差が生まれ、予定時間に目標に到達するのはますます困難になった。
  19. 「悪いことに」イラク航空管制が「シリアではなくイラン方面に飛行させようとした」と前出パイロットは語る。イラクは自国領空で同時に多数の機体をさばききれなかったのだ。
  20. そこで米軍パイロットたちは指示を無視することで国際問題とならない形で目標への道筋を考えだす必要に迫られた。
  21. 「幸いにも方向を正しく確保しつつ、指示を無視しなくても良くなりました。ただしここで1分ほど無駄が出来ましたが、遅れを最小限に出来たと思います」
  22. フライトプラン原案ではF-22は北部イラクを飛行し、そこで空中給油を受け、西に方向を変換し、シリア国境をめざすはずだった。ただし、バグダッド上空を通過した段階でその通りに実施できなくなった。
  23. 「目標まで直行してもこのままの速度では時間通りに到達できないとわかりました」
  24. F-22の4機編隊はイラク中部を旋回飛行するKC-10からできるだけ多くの燃料を受けでから高度を上げて目標地区に向かった。
  25. シリア国境からおよそ200マイル地点でアフターバーナーに点火し、マッハ1.5に加速、高度40,000フィートに上昇した。この高度で巡航すればシリアは15分の距離だ。
  26. 「出力を上げて1.5まで加速したのは時間通りに目標に到達するのに1.5が最適速度だったからです」
  27. 共同作戦センターとしてはF-22を予定時間より前に到着させたくなかった。各航空隊が同時に目標を攻撃することが「なんとしても必要」だったのは「求められる効果」を生むためだったと前出パイロットは説明。
  28. それ以前の遅れは今や回復しつつあり、このままだと予定通りでF-22も目標を攻撃してシリアを脱出する燃料は十分ある。その後給油機のところへ行けばよい。
  29. 原案ではラプター2機が敵の指揮命令所を料理し、残りの2機は防空を担当することになっていた。4機とも全く同じ装備を搭載しており役割を必要に応じて変更できる。
  30. F-22が搭載するエイビオニクスは高性能でパイロットは「非常に高い状況認識」が可能で「シリア空軍の攻撃は心配していなかった」と前出パイロットはいう。シリアの防空体制が稼働していない理由が不明だったが、参加各機は空中でも地上でも脅威になる動きは見つけていない。
  31. F-22は全時間通じ警戒を怠らず、僚機のF-15E、F-16、B-1に脅威が現れないか監視していた。
  32. 午前4時になり予定時間との誤差5秒以内でJDAMSが目標に命中した。F-22の実際の飛行距離を考えるとたいしたものだった。
  33. 9月23日にペンタゴンで開かれた記者会見でウィリアム・C・メイヴィル陸軍中将(統合参謀本部作戦部長)は指揮命令所の攻撃前、攻撃後の写真を示し、GPS誘導による攻撃で建物の右側だけを攻撃し、指揮命令所を直撃し完全に破壊したと説明。
  34. 航空戦の第一段階は大部分が無人攻撃手段を用い、USSアーレイ・バークとUSSフィリピンシーが40発もの対地攻撃仕様トマホークミサイルを発射し、アレッポ付近の各目標を攻撃した。F-22が加わったのはその後の第二次攻撃にあたる。
  35. 先の2機のF-22は急いでシリアを脱出し、空中給油機に向かった。残る2機は現地に一時間ほど残留し、攻撃部隊の防空援護にあたった。給油機まで距離が長いため、最初の2機は残りの2機の燃料がある間に現地を離脱し、給油機に向かうのはラプターの運用ではごくあたりまえのことだと前出パイロットは説明。
  36. 東から太陽が登り始めた頃、ラプター全機はシリア、イラクを脱しペルシア湾を目指し飛行中だった。そのときAWACSから無線呼び出しがあり、共用作戦センターから方向を戻す要請を受けた。
  37. その時点で知る由もなかったがB-1の一機が援護を必要としていたのだ。F-22には基地に戻る分の燃料しかなかった。
  38. 「いつも燃料が一番の問題です。燃料のプランを事前に検討し、緊急事態用の燃料を確保しますが、その時はもう余裕がありませんでしたし、給油機がどこにいるか不明でした」
  39. B-1援護には2機で十分と判断し、3号機4号機はそのまま帰還させることにした。
  40. 残る2機は念のため近隣の基地リストを検討したが、F-22着陸に十分な場所は多くないとわかった。主に保安上の問題だった。
  41. 「北に方向を変えた際にはこれが心配で、実際に向かう場所がどこかは心配していなかった。ミッションに必要な支援が受けられることがわかっていたからだ」
  42. 北に飛行すると10分ほどでAWACS管制官からKC-135が「イラン国境上空」にあり、十分な燃料を搭載していると知らせてきた。二機のパイロットが新しいミッションの内容を知らされたのは給油機に近づいたときで、B-1一機を護衛しシリア西部に飛び、初回攻撃に失敗した目標を再攻撃する際の援護とわかった。今度の目標はこれまででもっとも西側に位置する。
  43. 空母からの各機と協力国所属のF-16が第三次攻撃を形成し、「シリア東部の目標を狙い、ISIS訓練施設や戦闘車両をデラザワル付近で攻撃した」(メルヴィル中将)
  44. F-22の2機がKC-135から離れる時点で第三次攻撃が実施中だったと前出パイロットが語る
  45. 戦闘空域での空中衝突はF-22では心配の必要がない。他機より高高度に上昇できるからだが、B-1だとそうはいかない。
  46. そこでラプター編隊はB-1の援護を30分から45分実施してから三回目の空中給油を行い、基地に戻る空路をとった。
  47. 「これだけの時間内でたくさんのミッションがあり、多くの変更となったのは初めての経験となりました」と語る前出パイロットは以前はF-15を操縦していた。
  48. 2014年12月10日時点でF-22は合計で100回に満たないソーティーを非公開の作戦基地から実施している。そのうち10回ほどが数種類の武装による攻撃だったと空軍中央軍報道官が解説している。
  49. 実戦投入までほぼ10年かかった格好だが、前出パイロットは空軍がラプターをいきなり多用するとは思えないという。ラプターはあくまでも対空制圧任務機であり対地攻撃機の扱いではない。
  50. 「現状の区分が変わるとは思えません。必要となる脅威状況ならF-22は対空戦でも対地攻撃にも投入するでしょう。ただし、どんなミッションでもいいというわけではありませんし、今も状況に変化はないと思います」 ■


オバマ大統領のインド公式訪問で防衛協力にどんな影響が生まれるか




Opinion: Obama’s Trip to India in Context

By: Scott Cheney-Peters
Published: January 23, 2015 2:18 PM • Updated: January 23, 2015 2:37 PM

オバマ大統領がインドの共和国建国記念日式典に来週参列するが、国賓の扱いで招聘される初の米国大統領としてとなり、米印関係の新時代のシンボルとなる。式典会場の上空をボーイングP-8I海洋警戒機(Maritime Patrol Aircraft, MPA)がミコヤンMiG-29K編隊と上空を飛行する予定。インドにとってこれもシンボルとなる展示飛行になる。
Boeing P-8I Maritime Patrol Aircraft ボーイングP-8I 海洋警戒機 Maritime Patrol Aircraft
.
両機種ともインド海軍所属だが、式典でインド海軍機が上空通過飛行をしたのは1984年のハリヤーの例しかなく、海洋力を増強中のインドを印象つけるはずだ。

インド海軍ではこの一年半で20名の人命喪失・艦艇数隻損傷という失態が続き、信頼度が揺らいでいる。1991年に「ルックイースト」方針を採択したものの最近までは従来通り隣国パキスタンとの関係を中心に据え、陸軍・空軍の拡充の前に海軍はなおざりにされていた。

新首相ナレンドラ・モディ Narendra Modi が昨年11月に就任し、その方針がスローガンから実行に移る機運が生まれたと観測筋は語る。

モディ首相はベトナムと日本との関係を強化。特に日本とは米印海軍演習マラバーの再開決定にあたり米印日の三カ国関係の強化を打ち出した。今年初めにはスリランカで中国の影響を覆そうとしている。(ただし公式には否定) 海上シルクロード構想を提唱する中国がスリランカに潜水艦を寄港させたのがインドの神経を逆なでし、現職ラジャパクサ大統領の予想外の落選を実現させた。

海軍増強策の成果があらわれている。12月には初の国産原子力弾道ミサイル潜水艦の海上公試を始め、さらに8月には初の国産誘導ミサイル駆逐艦が就役した。国産空母建造も始まっており、海軍予算が着実に増えていることを示している。さらに今年の正月には沿岸警備隊がテロリストを搭載した漁船を事前に取り押さえ、「ムンバイテロ事件の再発」を予防して自信が強まっている。

An Indian Air Force MiG-27K.インド空軍のMiG-27K

ただし、華やかな展示飛行の裏でMiGがロシア製であり、P-8も米国製と気づく向きも多い。インドがこれまでのロシアに加え別の調達先を選択できることを示す。技術供与に同意する国との共同生産も視野に入っている。その中で、日本は新明和US-2水陸両用飛行艇の商談をまとめようとしている。

米国にとってもチャンスで、オバマ大統領は防衛協力の枠組みを更新し、今後10年間を視野にいれるはずだ。ただしこれは現状の延長線の想定だ。インドが求めているのは無人航空機(UAV)であり、エアロヴァイロメントAerovironmentのRQ-11レイヴン Ravenの調達を希望している一方、大型UAVによる海上監視任務あるいは攻撃任務にも食指を動かしそうだ。また、国産空母二号艦に原子力推進の採用を検討中と伝えられる。

UAV、原子力推進ともに米国が技術的に優位だが、販売にはリスクが生まれる。大型武装UAVは米国輸出規制の対象となり、これまでも他国要請を断っている。ただしもっと大きなリスクは商機を逸することで、企業の観点のみならず、両国海軍が得られるはずの協力効果が生まれなくなる方が心配だ。■


2015年1月25日日曜日

☆NIFC-CA導入で実効性をます海軍防空体制のあらまし



Navy to Integrate F-35 With Beyond-the-Horizon Technology

by KRIS OSBORN on JANUARY 22, 2015
米海軍はロッキード・マーティンとともに水平線超え対艦ミサイル探知防衛技術の実証をF-35を使って行う。
海軍統合防空火器管制システムNIFC-CAの呼称でイージスレーダー、航空機搭載センサー、SM-6ミサイルを組み合わせ、レーダー有効範囲の外で発射されて接近する巡航ミサイルのような脅威を探知追跡し破壊するものと海軍が説明。
NIFC-CAはE-2Dホークアイを空中センサーとして利用し脅威の情報を艦船に配信し、レーダー有効範囲外でも対応させる。
ロッキードは海軍水上システムズ本部(NAVSEA)と共同でNIFC-CA実証をホワイトサンズミサイル実験場(ニューメキシコ州)で今年中あるいは来年に実施刷る予定と同社幹部が発言。
今回の実証では F-35をE-2Dの代わりにセンサー機としてあるいは中継機として使うという。NIFC-CAを複雑になっていく現実の脅威としてステルス機にも対応させるものとロッキードは説明している。
F-35が搭載するセンサーにはアクティブ電子スキャン方式アレイ(AESA)によるレーダーに加え分散開口部システム Distributed Aperture System (DAS)がある。これは機体に搭載する最大6個の電子光学カメラからのインプットを合成する装置だ。また電子光学式目標捕捉システムElectro-optical Targeting System (EOTS)もあり、これは目標を正確に識別し特定刷る機能がある。EOTSは空中、地上双方の目標捕捉に利用でき、前方監視赤外線技術と赤外探知追跡技術を組み合わせたもの。
NIFC-CA技術で攻撃、防衛両面でシナリオが大幅に変わる可能性がある。接近阻止領域拒否とペンタゴンが命名した敵側の作戦では長距離対艦誘導ミサイルなどで米軍が重要な地区で作戦遂行できなくするのがねらい。長距離陸上発射巡航ミサイルが発射されると海軍艦艇は沿岸部分に接近が困難となる。
しかし、NIFC-CAがあれば接近してくる脅威対象を識別・破壊でき、しかも水平線以遠でも可能となるため、米海軍の空母打撃群などが安全に作戦を実施できる。
これは防衛面での可能性だが、同時に攻撃力としてもNIFC-CAが利用できる。海軍艦艇による攻撃をこれまでより遠くの目標に与えることができる。例としてSM-6ミサイルにはアクティブ、セミアクティブ両方の誘導技術が用いられており、水平線以遠の地点でも目標を捕捉破壊できる。NIFC-CAは長距離攻撃の際に用いれば、航空機・無人機、艦船、建造物のいずれも破壊可能となる。.
NIFC-CA導入は2015年にテディ・ローズヴェルト空母打撃群から開始され、巡航ミサイル防衛体制が強化される。
NIFC-CAは改良型イージス弾道ミサイル防衛システムとなるベイスライン9にも取り入れられ、建造中の新型駆逐艦DDG113からDDG118にまず搭載される。ベイスライン9自体はすでに実用化されており、駆逐艦USSジョン・ポール・ジョーンズ、巡洋艦USSチャンセラーズビルとUSSノーマンディに導入済みだ。■



2015年1月23日金曜日

☆すべての艦船に攻撃力を持たせる分散武装の構想(米海軍)



米海軍が隻数では中国にかなわないため、発想を転換し各艦船に攻撃力をもたせる新思考を開発中とわかりました。その要は新型対艦(対地?)ミサイルのようです。この積極姿勢には今後も注目していきましょう。それにしても米空軍の元気の無さとは対照的ですね。

‘If It Floats, It Fights': Navy Seeks ‘Distributed Lethality’

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 14, 2015 at 3:33 PM


Aegis cruisers and destroyers. イージス巡洋艦と駆逐艦戦隊
CRYSTAL CITY: 「海に浮かぶ艦すべてに戦闘能力を搭載するべき」とピーター・ファンタ少将 Rear Admiral Peter Fanta は考える。「分散武装‘distributed lethality'で巡洋艦、駆逐艦、揚陸艦、LCS(沿海戦闘艦)等、全艦がとげを有するべきだ」
Rear Adm. Peter Fanta ピーター・ファンタ少将
  1. 「可能な装備はすべて導入する」とファンタ少将(水上戦部長)は言う。「威力」とは武装の強化であり、「分散」で各艦に武装を装備し、それぞれ単艦で戦いが可能になれば敵は広い大洋の中で同時対応を迫られ一度に処理しきれなくなる。
  2. この海軍の構想は予算の制約を受けつつも革新的発想になる可能性がある。これまで20年近くも防御任務についてきた海軍艦艇が単艦で威力を発揮できるようになる。この積極姿勢にリスクもあるのは事実で、中国のように武装を整備している敵対国がLCSのように中途半端な装備をした小型艦に立ち向かってきたらどうなるか、という疑問もある。
  3. 図上演習では「強力な武装を有する敵海軍によりLCS数隻の喪失可能性があると判明した。敵はあらゆる方向から出現し、対艦兵器を完備している」
  4. いいかえれば数の威力で単艦の戦闘能力は無効になるということか。
  5. なぜ米海軍は積極姿勢をとるのか。その答えはペンタゴン文民トップおよび議会筋が中国とロシアの脅威をこれまでになく感じているためだ。そこで米海軍もこれを意識し、クリスマス直前に海軍作戦部長が論議となっていた沿海戦闘艦の武装強化案を発表した。その手段は未選定の長距離対艦ミサイルによる武装だ。今週は水上艦協会の年次総会でファンタ少将他の提督からこの発想を艦隊全体に広げたい旨の発言が出ている。大統領が2016年度予算要求を来月に発表するまで詳細は見えないが、海軍は低コストで武装・センサー強化を図り、現行の各艦艇の攻撃能力強化を目指す。イージス駆逐艦、揚力強襲艦はもちろん、理論上は補給艦もその対象だ。
Vice Adm. Thomas Rowden トーマス・ロウデン中将

  1. トム・ロウデン中将Vice Adm. Tom Rowden(水上艦部隊司令官)は「補給艦に攻撃能力を付与していけない理由はない。攻撃能力にあふれた水上艦部隊の創設の構想だ」とする。米海軍が投入可能なのは空母一隻ないし二隻が関の山なので、ここにセンサーをあわせ、高性能兵器を投入するのが敵の想定だったが、駆逐艦、LCSその他すべてに対艦兵器を搭載するので敵も分散せざるを得なくなる。
  2. また新構想では現状の予算で最良の結果を得ようとする。海軍は新型長距離対艦ミサイルを開発しハープーン全廃をめざすが、その前に頼りになるのは現有のハードウェアの改良や既存ハードウェアの調達だ。その例としてLCSコロナドがノルウェーのコングスバーグ Kongsberg  ミサイルの試射に成功している。
The LCS Coronado test-fires a Norwegian Kongsberg missile. LCSコロナドがコングスバーグミサイルの試射に成功した。
  1. 「予算は減る一方だ。分散武装なら予算内で海に浮かぶ艦全部に威力を与えられる」(ファンタ少将)
  2. 「建造艦数が減る中で、逆に各艦を完璧にすべきとの機運が高まっている」とファンタ少将は付け加え、行き着くとスター・ウォーズのデス・スターのような高性能艦をごく少数保有することになるとする。
  3. 海軍がそこそこの性能の艦を大量に調達すれば、調達ペースが加速して同時に新しい状況にも対応出来る武装の改装も早まるはずだ。「使い物になりそうな装備が今手に入れば、買ってとりつければいい」と少将は言う。
  4. 「すべての艦に最高性能のセンサーや長距離高性能ミサイルが搭載されているわけではない」とフィリップ・デイビッドソン大将 Adm. Philip Davidson(艦隊総司令部)は言う。兵力分散とともに「コストも分散しなければ。そうなるとハイエンド、ローエンド双方の艦艇を組み合わせることになる」とし、華やかなDDG-1000新型駆逐艦から見栄えの悪いLCSの双方を指している。
The two Littoral Combat Ship variants, LCS-1 Freedom (far) and LCS-2 Independence (near).沿海戦闘艦 LCS-1フリーダム(上)とLCS-2インデペンデンス
  1. 沿海戦闘艦に長距離攻撃手段を搭載する海軍の案は軽量艦に重量級の威力を与えるもので、攻撃が最良の防御との古くからの考えを実現するもの、あるいはファンタ少将がいうように「悪者をまず撃つというのが水上戦士官ならだれでも賛同できる選択肢」だという。
  2. ただしこの新構想は海軍の組織内にカルチャーショックや恐れを招くだろう。「ずっと海のどこにでも好きな場所に移動して兵力投射できたので防御のことは心配しなくてもよあかった」とデイビッドソンは語り、「接近阻止領域拒否」は黒海のような場所では成立することはないと見ていたという。「威力とは有効射程や火薬重量のことではない。部隊内文化や考え方にも言及しないといけない」
  3. 「たしかにミサイルやセンサーだけ論じてはいけない」とロウデンも発言。「遠隔地に送り込まれても怯まない新世代の乗組員をどう確保すべきか論じている。」とロウデンも同じ意見だ。
  4. 米海軍にとって小型艦による単独行動は創設期からの伝統だ。ジョン・ポール・ジョーンズのボノム・リシャールによる独立革命時の戦功や第二次英米戦争(1812年)でのフリゲート艦コンスティテューションの活躍がある。ただし第二次大戦後は水上艦に空母の護衛をさせることを優先し、単独長距離行動は原子力潜水艦の独壇場となった。ソ連崩壊と予算縮小で海軍はコストを意識して艦隊戦能力を段階的に縮小している。駆逐艦に対地攻撃をトマホークで実施させる、弾道ミサイル防衛に当たらせるなど新しい任務を想定した。全面戦争時には水上艦艇は空母と一緒に行動し、艦載機が防御するという前提だった。
  5. これに対して新構想では「対潜作戦水上アクショングループ」を3隻、4隻で構成し、空母の行動範囲の先に投入する。小部隊は海軍の新型長距離戦闘通信ネットワークで結び、敵の情報を海軍統合火器管制対空システム Naval Integrated Fire Control – Counter-Air (NIFC-CA)で共有する。しかし敵が電子戦やサイバー攻撃のジャミング、不正侵入能力を向上させていることに鑑み、仮に接続が不通となっても部隊は作戦を継続できるように心理的にも戦術的にも備えておく必要があるとロウデンも認める。
  6. そこで技術が関心の的となるが、「二又対応をとる」とロウデンは記者に発表しており、トップガンに似た「海軍水上戦開発センター」“Naval Surface Warfighting Development Center” (NSWDC) を新設し新戦術を練るほか、教官を各艦に派遣し、考え方を叩き込む方針だ。中将は「一世代かけて実施する業務規模」と認めている。
  7. この動きに賛同する国会議員もいる。「防衛第一の姿勢から水上艦艇が攻撃中心思考へ切り替われば歓迎」と海軍関連の業務につくある議員のスタッフは語る。
  8. 上記スタッフは「誘導ミサイルが発達する中で水上艦艇に未来がないという向きが多いが、ロウデン、ファンタ両提督はそんなことはないと主張している。多分に賛成だ。水上艦で新しい戦闘構想を作れば、今後の海上紛争を当方に有利な方向へ誘導できる。中国やイランにつくらせるのではなく、我が国が独自にルールを作るべきだ。」■


2015年1月22日木曜日

★ノースロップが第六世代戦闘機開発を開始した模様



民間企業が活力あるところを見せるのは嬉しいですね。ただし、これで失敗すればノースロップ・グラマン(特に海軍向けにグラマン)は戦闘機メーカーとして消滅するかも、というのが業界の見方のようです。F-35で懲りたので次回はJointではなく独自に機体開発をめざす、というのはF-111の失敗の後と同じ展開ですね。「第五世代」機としてのF-22, F-35両機の存在が微妙になりそうです。

Northrop Developing 6th Gen Fighter Plans

By Aaron Mehta6:46 p.m. EST January 21, 2015

LOS ANGELES — ノースロップ・グラマンが「第六世代」戦闘機開発の社内チームを2つ立ち上げた。米海軍と空軍向けを想定し、両軍から情報要求がでていない中で先手を打つ。
  1. ノースロップの航空宇宙部門社長トム・ヴァイス Tom Vice はこの大胆な動きが見返りを生むと期待。「ノースロップ・グラマンは次世代戦闘機競合に参入します」と宣言し、すでに開発主査のもと2チームが社内にできていると強調。
  2. 空軍、海軍共に次世代制空戦闘機あるいは「第六世代」戦闘機といわれる機体を初期企画中。両軍はF-35では合同開発したが、次回は別個仕様で機体を開発する。
  3. 海軍はF/A-XX、空軍はF-Xと呼称し、昨年9月に空軍航空戦闘軍団のトム・コグリトア大佐 Col. Tom Coglitore がDefense Newsに対して技術開発開始となるマイルストンAは2018年度早々を予定と発言していた。
  4. ヴァイス社長はノースロップの目指す機体は超音速、無尾翼機になる可能性が高いとし、従来の機体と大幅に異なる外観になるという。
  5. 「超音速機で無尾翼構成の機体はまだ存在していないのは実現が難しいからです。でも高性能コンピューターの力を借り、新素材を用いればどうでしょうか。そのため現在進行中の研究が重要で、次世代戦闘機の生産を20年以内に実現します。高度技術が必要となりますね。」
  6. 同社長は有人操縦をオプションとするほうが同社には難易度が低いと示唆した。
  7. ヴァイス社長は自信たっぷりだが、ノースロップが攻撃機材メーカーとして生き残れるか疑問視する外部専門家もいる。特に同社が空軍向け長距離打撃爆撃機受注に失敗した場合を懸念している。
  8. 新型爆撃機はノースロップあるいは競合相手のロッキード・マーティン/ボーイング共同事業のいずれかに発注されるが、その時期は今年の春または初夏と予想される。■


2015年1月21日水曜日

★エアシーバトルはJAM-GCへ名称変更



グローバルコモンズという言葉は日本語にまだなっていませんが、地球規模の領域、特に資源が存在する場所という意味らしいです。今回提示されたコンセプトの仕切り直しが今後どう展開していくのか注目です。

Pentagon Drops Air Sea Battle Name, Concept Lives On

By: Sam LaGrone

Published: January 20, 2015 2:21 PM • Updated: January 20, 2015 3:41 PM


ペンタゴンはエアシーバトルの名称を変更する。同構想を取りまとめていたエアシーバトルオフィス(ASBO)は統合参謀本部に吸収する。USNI Newsが入手した1月8日付けの省内メモから判明した。

  1. 新コンセプトはグローバルコモンズへのアクセスおよび運用共用コンセプトJoint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons (JAM-GC 発音はジャムジーシー)の名称となり、ASBOが手がけていた作業を引き継ぎ、今年末までにASBコンセプトを改変する、と国防総省関係者がUSNI Newsに伝えている。
  2. 統合参謀本部のJ-7局がJAM-GCの「統括及び支援」を行うと、統合参謀本部長の空軍中将デイビッド・ゴールド・ファイン Lt. Gen. David Gold Fein の署名付きメモにある。
  3. 「名前を変えてコンセプトの全体像が見えるようにする」と国防総省報道官はUSNI News取材に答えている。米陸上部隊を広範な任務につかせることも含むという。「エアシーバトルは陸を言及していなかった。陸上部隊をどう活用して米軍のアクセスを確保するのか不明だった」。
  4. エアシーバトルは米軍が戦闘が発生しそうな地域に接近するのを拒否する能力が高まってきたことへ対応すべく考えだされたと国防関係者は認める。
  5. 接近阻止領域拒否(A2/AD)の脅威が現実になったことへの対応でもあるが、米軍は当時はイラク・アフガニスタンの地上戦に釘付けになっていた。
  6. 目指すところは米軍が「領域に移動し、敵がジャマーを使ったり、機雷を使ったり、潜水艦で水上艦の脅威としようとしても、十分対応できるようにすること」とジェイムズ・ファゴ海軍中将Rear Adm. James Foggo(当時)(作戦立案戦略部門長)が2013年当時にUSNI Newsに語っていた。
  7. 「コンセプトのいいところは問題の本質に焦点を合わせたことで、各軍にとって非常に有益なレンズとなりました」とASBOに詳しい国防関係者が2013年にUSNI Newsに語っている。「エアシーバトルは戦争のやり方を変える。多様な手段を有する敵に対応できる作戦を組み立てる」
  8. コンセプトはペンタゴンが考えぬいたものだったが、海外で政治問題化している。
  9. ASBを中国人民解放軍への挑発だと批判し、中国を敵視しているという評論家があらわれた。国防総省はこの見解を否定。
  10. 国内でも、コンセプトづくりに関与した空軍と海軍がついた名称に、陸軍は不満でA2/AD対応で疎外感を訴えていた。■


2015年1月20日火曜日

★主張: F-35をめぐる議論は新局面に入った



F-35が歴史に残る可能性はプロジェクトの失敗例としてだろうと見ていますが、一方で莫大な費用をかけてそれなりに当初の性能を実現しつつあるのも事実です。しかし、実用化してもステルスの優位性が維持できない、前提としてた運用コンセプトが使えない、など時代の変化に対してあまりにも遅すぎる登場になりそうですね。各国も同機には及び腰になっているのが確定発注数の少なさでわかりますね。F-35の失敗からもう一度空軍力のコンセプトを考えなおし、無人機にせよ有人機にせよ、もっとましな手段が近い将来に登場することを願わずにいられません。

Opinion: Joint Strike Fighter Debate Enters New Phase

Cost and counter-stealth will be key issues
Jan 15, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

「防衛ビジネスの動向を追っていないと、F-35がトラブルを起こしていると思い込んでも仕方ない」とロッキード・マーティン社のコンサルタントが5年前に記した数週間後に当時の開発室長が更迭されている。後任者は公開されていた工程表が現実と3年から4年も乖離しているのを発見した。
  1. 現在はF-35のトラブルの大部分が解決されていると考えても無理は無い。2013年2月に仕切り直された日程表は2年たっても有効なままで、二年越しで計画変更がないのは同機開発で初の出来事。海兵隊は初期作戦能力獲得を今年中に実現しそうだ。昨年発生したエンジントラブルの原因究明も進行中と伝えられる。
  2. F-35が中核的性能パラメーターkey performance parameter (KPP) の要求水準を満たしているようにみえるが、それだけで成功とはいえない。開発コストと日程、調達、運用費用はKPPに入っていない。今のところKPPの各数値が安定しているが(安定しないと大変なことになる)そもそもKPPは開発の目標そのものではない。
  3. 運用側にとっては開発リスクが現実のものとなっている。オランダは当初の85機調達を37機にとどめる。韓国はF-15を60機導入予定だったが、その予算でF-35Aを40機調達する。米空軍は死活的なF-16改修を凍結し、即応体制に問題が発生している。F-35は機体診断システム、補給システムが不十分なため熟練整備員多数を必要とする。
  4. 今年はコスト面が重要視される。各国から受注は700機を超え、計画生産数を2020年以前に達成するには海外受注が頼りだが、確定受注は5%未満。そこで発注意向を確定させることが緊急課題だ。デンマークは今年中に決定の見込みで、英国の138機調達案が実現するのか、いつ実現するのかが大きく注目される。
  5. 各国は予算と日程をにらみつつブロック4A/4Bアップグレードの内容を知りたがっている。ブロック4A開発は来年に始まり、4Bは2024年に利用可能となるが、熟成化は2026年だろう。計画では核運用能力、ノルウェー製・トルコ製巡航ミサイル運用能力、英国向けにはブリムストーン、メテオ各ミサイル運用能力、米海軍向けにはAIM-9Xブロック3空対空ミサイル運用能力、海兵隊向けには「第五から第四」向け通信及び近接航空支援システムが含まれる。ただ、全て完全になる保証はなく、4A/4Bでも運用テストから修正が発生するだろう。利用者側は一定の妥協を覚悟したほうがいい。
  6. 2番目のリスクは運用面だ。ステルス対抗技術は机上の理論から現実のハードウェアに進化している。2013年にはロシアの55Zh6MEレーダー装備が登場しVHF方式アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)でネットワーク化し、高周波数レーダーを組み合わせたシステムとなった。赤外線による捜索救難装備でステルス機を探知したとの報告があり、中国からも55Zh6MEを模倣した装備が出てきた。ステルスが時代遅れとは言えなくてもF-35の運用上の優位性は消えつつあるのだろうか。
  7. 2015年は同様の傾向がもっとあらわれる。中国が建造中の新型055型駆逐艦は低帯域AESAを搭載する。ロシアのP-18レーダーのデジタル版が流通し、ステルス対抗は安価になってきた。
  8. 海兵隊は短距離離陸垂直着陸型F-35Bの活用方法を工夫して運用リスクを軽減しようとする。最新の運用コンセプトでは艦艇や陸上基地は敵の移動型ミサイルの有効範囲の外に配置し、燃料再補給・武装再搭載地点を目標の付近に置く。生き残りができるかはこの前線基地を敵が狙うより前に移動できるかにかかってくる。
  9. 海兵隊構想ではF-35が卓越した戦術戦闘機であることが前提だ。だがこれは戦略的なリスクにつながる。第三相殺戦略ではひとつ論文がでており、戦闘半径が600マイルしかない戦術機への投資を中止し、長距離爆撃機やUAVへ予算を振り向けるよう求めている。長距離打撃爆撃機開発が勢いを増す中で、この議論は重要度を上げてくるだろう。
  10. これまでF-35の開発リスクのため多大な費用をかけてきた。これからは運用リスクが中心に変わろうという中、戦略上のリスクが水平線上にあらわれてきたのだ。■


2015年1月19日月曜日

★トマホーク巡航ミサイルの改良を自社開発で進めるレイセオン



海上自衛隊にもトマホークを装備するよう求める声があありますが、高度のISR運用があってはじめて目標の特定、評価ができることを忘れてはいけません。記事にある移動目標を攻撃できるトマホークならさらに一歩先を行くものですね。しかし、意外にトマホークってお安いんですね。

Raytheon Working on Tomahawk With Active Seeker

By Christopher P. Cavas7:23 p.m. EST January 13, 2015
Tomahawk missile(Photo: MC2 Carlos M. Vazquez II/Navy)
WASHINGTON — 1991年以降、トマホーク巡航ミサイル2,000発以上が実戦で発射されたが、標的はすべて固定目標だった。
  1. 今後数年間でこれが激変する可能性が出てきた。レイセオンが水上戦協会Surface Navy Association の年次総会で自社開発で移動目標を追跡できる能力を開発中と発表した。「当社はマルチモードで作動するシーカーを、パッシブ、アクティブ双方で開発すべく巨額を投じています」とクリスチャン・スプリンクルChristian Sprinkle(レイセオン社対空戦闘システム主任開発責任者)が発言。
  2. 既存のトマホークにも耐用期間途中の重整備時に赤外線シーカーの搭載が可能、とスプリンクルが説明している。トマホークの設計寿命15年だが重整備で再認証を受ければ計30年間の製品寿命となる。
  3. この重整備時は性能追加をする絶好の機会。通信機能の向上、多弾頭、多モードセンサー装置の搭載を検討中、とスプリンクルは言う。
  4. 現行のブロックIV戦術用途トマホークが投入開始されたのは2004年で、2019年から再認証手続きに入る。レイセオンは海軍が予算を新型シーカーの研究開発に計上するよう働きかけているが、現時点では未採択。スプリンクルは予算規模を明示しなかったが、2018年にかけて予算が必要だという。
  5. 移動目標にも対応可能にする費用はミサイル一発につき25万ドル程度だという。なお、現行トマホークの単価は110万ドルである。
  6. レイセオンはブロックIVトマホーク合計3,250発を米海軍及び英海軍に納入している。年平均100発が実射されているという。敵の指揮命令機能を攻撃する手段として選択されている。■

2015年1月17日土曜日

UPIがツイッター上で米空母が中国の攻撃を受けたと報道(ただしハッカーによる虚偽報道と判明)


これは恐ろしいことです。何者かが(大体想像はつきますが)単なるイタズラをこえて情報を操作しようとしただけでなく、世界を混乱させ挙句は本当に戦争を巻き起こす意図があったためです。ソーシャルメディアの成り立ちそのものが思わぬ効果を巻き起こしかねません。それにしても大通信者のアカウントを易易と乗っ取るとはすごい、と認めざるを得ません。一層のセキュリティ強化が必要ですね。

Navy: China has not attacked U.S. aircraft carrier

By Jeff Schogol, Staff Writer3:22 p.m. EST January 16, 2015

UPIがツイッター上で空母ジョージ・ワシントンが攻撃を受けており、第三次世界大戦が始まったと報じたが、米海軍はこの内容を否定した。
同艦は停泊中であり、南シナ海に入っていない、と海軍がMilitary Timesに返答している。
UPIからは16日金曜日に同社ツイッターのアカウントが不正侵入されたと午後に入って発表があった。「ツイッター上で6件の虚偽のヘッドラインがおよそ午後1時20分から10分間の間に掲載され、連邦準備理事会のほか、USSジョージ・ワシントンが攻撃を受けているとの内容もあった」と発表。
UPIが不正侵入に気づいたのは「緊急速報」の表示が出た際だったという。社内の技術陣が同社ツイッターアカウントの回復に成功している。
問題の虚偽報道記事は同日午後2時ごろまでに削除されている。
(下 ツイッター上に現れた偽報道。スクリーンショットで撮影。削除済みなので見られません。
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(Photo: screen shot)
上の拡大 統合参謀本部からUSSジョージ・ワシントンが中国の攻撃で損傷を受けたとしている。中国は対艦ミサイルを発射とも。
The Navy says this Tweet is wrong.
The Navy says this Tweet is wrong.(Photo: Screenshot.)