2015年5月19日火曜日

☆ 日本も陸上イージス導入か 米下院の国防法案修正に見る可能性



ミサイル防衛の整備は当然必要ですが、陸上配置型イージスシステムの導入を日本がまだ発表していない段階で米議会がこの動きをしたのは水面下で日本が導入を決めて米側と交渉している証拠なのでしょうか。また、東欧で先行して導入する施設は米軍が運用するのに対して、日本設置施設は日本単独あるいは日米共同運用と想定が異なっていますね。問題は設置箇所でしょうね。

House Paves the Way for Japan to Buy Aegis Ashore; Adds Anti-Air Warfare to European Sites

By: Megan Eckstein
May 18, 2015 4:45 AM • Updated: May 17, 2015 9:09 PM

The Japan Maritime Self-Defense Force Kongo-class guided-missile destroyer JDS Myoko (DDG 175) pulls out of Joint Base Pearl Harbor-Hickam to support Rim of the Pacific (RIMPAC) 2012. US Navy Photo
海上自衛隊のこんごう級誘導ミサイル駆逐艦JDSみょうこう(DDG-175)、パールハーバー・ヒッカム合同基地施設から出港し、リムパック2012演習に向かうところ。 US Navy Photo

国家防衛認可法案National Defense Authorization Act が5月15日に下院を通過し、米軍のイージス陸上型ミサイル防衛システム(陸上イージス Aegis Ashore)の性能向上とともに同様のシステムの同盟国向け売却が含まれている。

  1. 下院軍事委員会(HASC)の戦略兵力小委員会の委員長マイク・ロジャース議員(共、アラバマ州)が修正案を議場に堤出し、国防総省に陸上イージスの日本向売却を急ぐよう求めた。
  2. 「日本政府が陸上イージス導入を決定すれば、同国がすでに海軍艦船でイージス武装システムを導入していることから、相互運用能力ならびに対空、対ミサイル防衛の統合が密接な同盟である同国と更に進む大きな機会となり、戦力増強効果が生まれることから、多用途装備への配備を緩和する効果が期待される」と修正案は述べている。
  3. この措置は国防法案の一部としてHASC所属の共和、民主両党議員が賛同した。
  4. この修正案で日米のミサイル防衛がさらに強化されると内部筋がUSNI Newsに語った。日本はイージス艦を運用中であり、米軍のミサイル防衛用レーダー施設を二箇所に受入れており、米国とはスタンダードミサイル3ブロックIIA迎撃体を共同開発中。
  5. 日本は陸上イージス導入を正式に決定していないが、消息筋によると有償海外軍事援助では陸上イージスの販売はできないという。
 The deckhouse for the Aegis Ashore system at the Pacific Missile Range Facility. This is the test asset for the Aegis Ashore system on Jan. 8, 2014. US Navy Photo
テスト用の陸上イージスシステムの建屋、太平洋ミサイル試射場にて。 Jan. 8, 2014. US Navy Photo
  1. 同筋によれば米海軍は売却案を一年以上前から検討中だが修正案で売却が遅延している理由を問われる格好だという。海軍がHASCと連絡をとっているのを認めつつ、FMSが進まないのは「お役所仕事のせい」と同筋は見ており、銀行借入の例にたとえる。大口借入れ審査が通った申請者なら自動車程度の借入れなら簡単に処理するべきだという。
  2. 修正案は海軍にすべての手順順守を求めつつ迅速な処理を求めている。
  3. これとは別に法案に以下の条項が入っている。「政策担当海軍次官ならびに国務長官は協力して陸上イージスあるいは追加陸上イージス導入のための資金づくりで障害を取り除くものとする。そのための検討内容、としてその他連邦政府省庁機関と適切な調整をすること、受入国による運用または米国と受入国の共同運用の実現可能性を含むこととする」
  4. さらに「大統領は陸上イージス設置箇所につき受入国と協定を結び、もし設置箇所が作戦司令部の要求に合致すれば必要に応じ共同財政負担ならびに共同開発でも協定するものとする」とある。
  5. 現在企画中の陸上イージス設置場所はルーマニアとポーランドで、同法案ではこの双方に防空能力の追加を求めている。このうちルーマニアは今年後半に稼働開始するので2018年までに装備追加する必要がある。またポーランドでは建設前から能力追加した上で、2018年に稼働開始する。
  6. 同上筋によれば法案中のこの部分はHASC内で超党派的支持を受けており、一部反対の理由はロシアを刺激することだったという。東欧二箇所のミサイル防衛施設は中東から飛来する弾道ミサイルからヨーロッパ同盟各国を防衛することが目的だが、ロシアは脅威だと受け止めている。
  7. 同上筋によればロジャーズ議員、戦略兵力小委員会、HASC所属議員多数が在外米軍部隊の防衛は道義上必要と感じ、可能な手段はすべて使うべきだとしている。ロシアが東欧の両施設を脅威対象と認識するのであれば、同施設運営に当たる数百名の米軍要員の防護手段が必要となる。
  8. なお下院法案は上院軍事委員会が賛同しないと成立しない。


★5月17日 MV-22>ハードランディングで一名死亡の第一報



鬼の首を取ったようにそれ見たことかとオスプレイの危険性を主張する向きがありますが、(沖縄県知事はオスプレイ飛行停止まで要求しそうな勢い)以下の記事のように今回の出来事は事故ではなくインシデントだというのが海兵隊の区分です。と言っても理性を失っている向きには意味が無いのかもしれません。まずは調査結果を冷静に待ちましょう。なお、オスプレイの運用が遅れれば喜ぶのはどの国かはいわなくてもわかりますね。

Marine Dies Following ‘Hard Landing’ of Osprey in Hawaii Training Exercise

By: Sam LaGrone
May 18, 2015 10:42 AM

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ハワイでMV-22オスプレイがハードランディングし、海兵隊員一名が死亡。海兵隊が5月17日に発表。

  1. 機内の海兵隊員21名も病院へ搬送され、診断を受ける。インシデントはベロウズ海兵隊演習地での訓練中に現地時間午前11時40分に発生した。
  2. 海兵隊は声明文で「通常の訓練を実施中だった」としている。
  3. 死亡した海兵隊員は第15海兵遠征部隊 (MEU)(カリフォーニア州キャンプ・ペンドルトン)所属でサンディエゴから強襲揚陸艦エセックスを中心とした揚陸即応部隊(ARG/MEU)に加わり、中東・西太平洋での7ヶ月間配備に先立ち訓練していた。
  4. エセックスARGは大型揚陸艦USSエセックス(LHD-2)、ドック型輸送艦 USSラッシュモア(LSD-47)、、ドック型揚陸艦USSアンカレッジ(LPD-23)で構成。
  5. 同部隊はクレブラコア Culebra Koa 2015揚陸演習に今週参加する予定だった。同演習は海軍と海兵隊合同による大型運用演習。
  6. インシデントの原因は調査中。
  7. なお、ペンドルトン所属海兵隊員6名が先週死亡している。ネパールでの災害救助作戦中にUH-1Yヒューイが遭難したため。■





2015年5月18日月曜日

中国海軍は地中海で何をしているのか 地政学的に世界を考える


世界をチェス盤のように資源、通商、投資、人口などから冷徹に見る訓練が我々にはかけていますが、中国はその点で先を言っているようですので、ご注意。安全保障関連ではホルムズ海峡ばかりが例示されていますがもっと大きな視点がひつようですね。

Why the Chinese Navy is in the Mediterranean

By: Magnus Nordenman
May 14, 2015 5:48 PM

Chinese frigate Weifang leaves the Black Sea on May 14, 2015. Photo by Yörük Işık
中国フリゲート艦濰坊は5月14日に黒海から出た。Photo by Yörük Işık


5月14日、中国人民解放軍海軍(PLAN)フリゲート艦臨沂 Linyi ・濰坊 Weifang の二隻はロシア海軍誘導ミサイルコルベット艦と黒海から地中海に入り初の中ロ合同演習海域に向かった。
  1. 演習は二国間の安全保障面でのつながりを象徴し、両国がグローバル段階に移行する努力のあらわれとなろう。
  2. またロシア海軍の活動が各地で活発化しており中国にも地中海で海軍作戦を展開する背景がある。なお、中国が地中海で演習をするのは今回が初めてではない。
  3. 中国にとって地中海はエネルギー安全保障と貿易の両面で関心地区である。
  4. 中国がめざす中央アジアからヨーロッパ・中東までを経済的につなぐ「海のシルクロード」の西の終着点であり、海運の効率をあげようと中国企業は地中海各地の港湾施設に相当の投資を注ぎ込んでいる。そのひとつにアテネ郊外のピレウスf Piraeus 港がある。
  5. 地中海とペルシア湾までの地帯が中国が必要とするエネルギー供給の重要経路だ。中国のエネルギー面での関心はさらにその先に伸び、東地中海で新たに石油・ガスが発見されている。
  6. また中東や北アフリカで混迷がつづいているが中国にとって意味がある。
  7. 中国はリビアのカダフィ政権への軍事力行使国連議決を棄権している。リビア国内で働く中国人の国外脱出を連合軍とNATO空爆開始前にPLANが実施している。
  8. 今年3月には同様にイエメンで中国市民の国外脱出作戦を実施した。
  9. 二例からアフリカ・地中海での中国企業・中国労働者の存在が大きくなっていることがわかる。多くがインフラ関連や製造業である。
  10. また中東アフリカでの不安定が中国の国内治安にも影響を及ぼさないか警戒している。中国にはイスラム教徒も少数だが存在し、中東アフリカの騒動が中国国内で同様の騒乱事件発生になることを中央政府は心配する。そうなると地中海に中国軍のプレゼンスを置くことは現地情勢を直接近くから把握するためと言って良い。.
  11. また地中海地区での軍同士の関係強化も進めている。海賊対策に派遣の中国艦船が地中海入りし、各地を寄港している。
  12. 中国とトルコが2010年に空軍演習をして、中国軍がNATO加盟国との初の共同演習になったことから、米国や欧州各国ではNATOと米軍の相互運用を空とミサイルで見直すきっかけとなった。イスラエルも中国と産業協力を長年維持している。イスラエルのUAVが中国に輸出され米政府の神経を刺激した。
  13. 戦略上の権益や長期間の商業、政治、軍事関係から中国は地中海諸国との関係構築に動いているのであり、今回の演習実施は一回のみに終わらないはずだ。
  14. 米国と欧州のNATO加盟国にも影響が出ている。
  15. 地中海はもははNATOの「我らが海」 mare nostrum ではない。
  16. 将来の地中海はいまより混雑した競争の場になるだろう。また地中海外の国家が遥か遠隔地から乗り入れてくるのは当たり前になる。

2015年5月15日金曜日

★日本>ISRに本腰を入れはじめる 海中ISRにも注目



ISRの重要性を本ブログは一貫して主張してきましたが、いよいよ望ましい方向に向かってきました。ただしこれはまだハードウェアの世界の話であり、情報を分析、評価するソフトウェア=高度の知識を持った専門スタッフをこれからどれだけ多く養成できるかが鍵であり、省庁の壁を崩す情報流通、情報利用が必要ですね。期待したいところです。

Japan Boosts ISR Abilities Across Domains

By Paul Kallender-Umezu12:42 p.m. EDT May 11, 2015

TOKYO — Japan's defense budget for 2015 prioritizes intelligence, surveillance and reconnaissance (ISR) improvements as the Ministry of Defense attempts to bolster, in particular, its ability to protect Japan's far-flung southwestern island chain, Nansei Shoto.
日本は平成27年度防衛予算で情報収集・監視・偵察(ISR)能力の向上を重要視し、防衛省は特に南西諸島で拡充を図る。
  1. 新規ISR事業は一部がまだ企画段階だが空中、宇宙空間でのISR活動の他にあらたに海での活用を加えている。
  2. 「ISR機能拡充はこれまで該当地区で何が起こっているのかよくわからなかったためだ」と日本戦略研究フォーラムのグラント・ニューシャムGrant Newsham 上席研究員は解説する。
  3. ISRへの考え方が大幅に変わったのは1998年に北朝鮮がテポドンミサイルを日本上空を飛翔させ、日本国内に大きなショックを呼んだことで、これが小規模な情報収集・偵察衛星群の整備につながった。
  4. しかし2007年に中国が対衛星攻撃実験を行い、また日本領空・領海への侵入が急上昇して政府国民も改めて衝撃を受けた。
  5. 「中国がこの数年一層強く主張するようになっており、北朝鮮もミサイル開発、核開発を進める中、この地域はこれまでになく危険な状態になっていると日本は見る。そこで情報を明確に把握することが基本となってきた」(ニューシャム)
  6. 南西諸島の監視体制を維持するべく防衛省はグローバルホークUAV調達を発表し、艦船搭載型のUAV導入の検討も開始した。さらに防衛省は与那国島に沿岸監視部隊を新設する。与那国は台湾に隣接する。
  7. 「米国のISRに依存しすぎているとの懸念が日本の一部にあり、自国で能力を整備すべきとの意見があるのは特に中国や北朝鮮を意識してのこと」とニューシャムは言う。「与那国の監視部隊は海上自衛隊、航空自衛隊の支援があってこそ実効性を発揮する」
  8. 同時に宇宙でのISRも増強する。これは1月発表の新宇宙基本計画で出た安全保障関連の戦略方針を反映するもの。情報収集衛星は現在4基だが10年以内に倍増する。また新型複合用途衛星をISRに使うこともも検討中だ。
  9. 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は防衛省と共同して新型偵察衛星だいち3号ALOS-3に弾道ミサイル早期警戒センサーの搭載をめざし、ゆくゆくは宇宙配備早期警戒体制の構築で米国を支援するかもしれない。JAXAは戦術レベルのISRへ転用可能な衛星開発に資金を投入しており、電波傍受情報集衛星の整備も検討課題に入っている。
  10. 「宇宙配備ISRは米国にとっても重要な分野で、米国は全世界での防衛義務を果たすのにこれが不可欠」とスコット・ペイス Scott Pace (ジョージ・ワシントン大エリオット国際関係研究センターで宇宙政策研究長)は言う。
  11. 宇宙空間の状況把握や海洋状況把握が宇宙配備ISRで鍵となると日米で一連の合意ができており、米国は日本に従来より大きな役割を期待しているとペイスは言う。
  12. 日本が強化を狙う分野に海でのISRがあり、川崎P-1哨戒機20機の調達が目立つ。同機は高性能の探知識別能力、飛行性能、情報処理能力、攻撃力を搭載し、既存のP-3Cでも性能改修が実施中。.
  13. また港湾など沿岸の重要インフラの防衛のため「近接型」ISRに注目が集まっているとボブ・ニュージェント Bob Nugent (AMIインターナショナルの提携コンサルタント)は語る。防衛省の研究プロジェクトで少なくとも5案件が無人海中ISRシステムをテーマとしており、中には長距離航行「海中グライダー」、水上艦と水中無人機の協調型通信ネットワークがある。
  14. この一部は横浜で5月に開催のMASTアジア海洋安全保障展示会へ出展される。NECはUUV向け海中無線電気充電ステーションを公開する。
  15. ニュージェントは「日本は高性能長距離音響水中聴音機で光ファイバーを応用する構想を検討している」という。「防衛省のその他研究内容には海中パッシブソナーアレイの感度を向上案件もある。日本が海中でISRを強化しようとしているのは明らか」
  16. ニュージェントは高性能ISR機材には蓄電、充電、放電技術の向上が不可欠と見る。「バッテリーを超えた」エネルギー技術の開発に日本企業が取り組んでいるという。
  17. 日本が次世代装備品で高い要求水準を想定していることでメーカー各社に新しい可能性が生まれる。JSRマイクロ(JSRの米国法人)の社長エリック・ジョンソンEric Johnsonはこう見ている。
  18. 「新しいエネルギー貯蔵技術として高性能コンデンサを開発中で、非常に高いエネルギーバーストを放出し、急速充電が可能で遠隔地点に設置する水中センサーや無人機、無人水中機や衛星に応用が可能です。日本が特に強い関心を示す分野で将来の海のISR装備への応用を想定しています」
  19. 「高度ISRで日米防衛協力に日本から一層高い貢献が可能となり、日本には有望なISRハードウェアがありますが、これまでは一貫したISRネットワークを国内に構築しておらず、今後はすべての情報源を活用し、正しく評価し、分類の上エンドユーザーに配信することが必要でしょう」とニューシャムは語る。■


中国>ジブチに基地設置をめざす>立派な覇権国ではないのか


日中国交回復の際には反覇権主義を唱え、武力に訴えて国力を拡張することは是としないとあれだけ主張していた中国の変わり様はどう説明できるのでしょうか。レトリックに強い中国ですからいくらでも西側には理解のできない説明を繰り出すのでしょうが、恒久的な基地が日米も施設を有するジブチ国内に完成したらややこしい話になりますね。

China Seeks Djibouti Access; Who’s A Hegemon Now?

By COLIN CLARKon May 12, 2015 at 4:43 PM
WASHINGTON: 中国がフランス旧植民地ジブチで港湾特別使用権や基地設置を強く求めていると判明した。ジブチは特殊作戦基地として米軍、フランス軍の重要拠点。
  1. 同盟国高官が事実を確認した。高官は氏名・国名を伏せる条件で情報提供したのがこの問題の微妙さを示す。
  2. ジブチ大統領イスマイル・オマル・ゲレ Ismail Omar Guelleh はAFP通信に中国との協議が進行中と明かし、対象は記事では「新規軍事基地」としている。
  3. 「フランスのプレゼンスは以前からあり、米軍は地理条件からジブチをテロ対策に最適と判断した」と大統領はAFPに話している。「日本も海賊対策で利用を求め、中国も自国の権益を守りたいという。皆大歓迎だ」
  4. 中国はジブチと協定を昨年結び、PLAN艦船の寄港が可能となった。米国は妨害しようとしたが失敗。米国も昨年の協定でキャンプ・レモニエを20年間租借をしており、テロ対策部隊の基地にしている。フランス外人部隊は大幅縮小ずみ。
  5. 現在の中国労働者や投資活動除き中国が最後にアフリカを訪れたのは15世紀初頭だ。ケニア海岸地帯から中国貨幣や陶器が見つかる。マリンディのDNAテストでは中国と現地人の婚姻によるつながりが確認された。鄭和Zheng Heは1418年にマリンディに到達している。
  6. ヘリテージ財団で中国軍事関係に詳しいディーン・チェンDean Chengによれば中国はジブチとの関係強化に鄭和を引用している。チェンによれば中国の軍事専門家が異口同音に鄭和の死去後海洋航行能力を衰退させたのは戦略的に大きな間違いと認めている。
  7. しかし今回のジブチで協議の対象は軍事基地あるいは港湾設備で、軍民の中国艦船への食料、燃料補給を想定。もし中国が軍事基地を設置すれば当然周辺の防御を固め高性能通信設備その他一式を備えた初の海外基地になる。
  8. 中国へ監視の目を光らすランディ・フォーブス下院議員(軍事委員会シーパワー小委員会委員長)は中国が世界規模で展開しようとしていると警鐘を鳴らした。
  9. 「中国がジブチに恒久的基地設置を決めたのは兵力放射で自国海域をはるかに超えた地点に前方プレゼンスを伸ばす欲求のあらわれだ。西太平洋からインド洋、さらに今回アデン湾まで広がると中国の軍事力が世界規模で展開する可能性がある」「従来の影響圏を超えた地点に恒久的基地を持つ決定をしたことで中国が自国をグローバル大国とみなしていることに米国は気づくべきで、自国の影響力が世界各地で減退しているのに不安を感じない米国人が多い」
  10. これまでも中国からはコロンボ(スリランカ)やグワーダル(パキスタン)のような地点で港湾施設を確保するのは該当国との経済関係を強化し「真珠の首飾り」を形成すると主張してきた。この構想は習近平主席がインドネシア国会で演説した際に登場し「海のシルクロード」を作ると公言した。
  11. ジブチの「基地」がどんな形態で運用するのは誰かで中国の意図は判断できる。またアフリカ以外に世界規模での展開の意図もあきらかになろう。「実現した場合、中国がどんな表現をするかは興味深い」(チェン)
  12. 中国はいわゆる覇権主義に反対し、米国や英国の軍事基地は世界規模の兵力投射で新植民地主義だと非難してきた。反対に中国は抑圧を受けるものを援助し、貿易、経済、外交で関係改善を希求する存在と自ら演じてきた。
  13. 中国は自らを人類文明の中心地で、野蛮人に囲まれていると認識してきた。近隣諸国の域を超えた他国との関係の心配は断続的に発生したに過ぎない。
  14. そこで海外に基地をおいた場合、この中国の伝統が終わるのか、あるいは前例があるのかチェンに尋ねてみた。チェンは海外基地の運用は「覇権国と同様に」なるだろうという。
  15. チェンは中国が第16次までペルシア湾に海軍を派遣したと指摘。初回は補給寄港が認められなかった。そのため中国は派遣方法を変更し、海上補給方法を学び、現在は必要ある場合のみ海外寄港で燃料食料を補給しているという。
  16. ただし拡大をめざす中国の努力全てが実を結んでいるわけではない。昨年10月に中国潜水艦1隻と補給艦1隻がコロンボでドック入りしたのはスリランカ国政選挙前で習近平主席が訪問した。選挙後の新政権は中国関連の協定全般を見直し汚職多数を発見し「中国投資を突き返した」上、中国潜水艦の次回ドック入りは認めない決定をした。
  17. チェンはさらに「インドはジブチ基地設置で不快になるだろう。同国からインドは横腹をさらすことになるからだ」と述べた。またモルディブでも中国が軍事アクセス権を求めているとチェンは指摘する。■

次期海軍作戦部長のリチャードソン大将はこんな人



次期海軍作戦部長(海軍トップ)にリチャードソン大将が内定しました。潜水艦勤務の経歴を中心に直近は原子炉部門長のため今回の人事はやや驚きをもって受け止められているようです。まずUSNI Newsは以下のように伝えています。これは国防長官の発表後の配信です。

Naval Reactors Director Adm. Richardson Named Next CNO

May 13, 2015 10:02 AMUpdated: May 13, 2015 2:23 PM

Chief of Naval Operations Navy Adm. Jonathan Greenert and Navy Adm. John Richardson, director of the Naval Nuclear Propulsion Program. DoD Photo
海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将とジョン・リチャードソン大将(海軍核推進事業部長) DoD Photo

アシュ・カーター国防長官からジョン・リチャードソン大将 Adm. John Richardson(現海軍核推進事業統括責任者)が次の海軍作戦部長(CNO)に就任すると発表した。

  1. 人事はオバマ大統領が承認ずみで、つぎは上院の承認を求めることになる。
  2. リチャードソンはエネルギー省との協同事業である海軍原子炉部門 Naval Reactors(NR)に2012年11月異動となり、8年間の任期を全うすると見られれていた。通常の人事異動が2年から3年であるが、高度の技術内容である事業のため任期が長くなっている。
  3. 原子炉部門出身者が海軍トップに就任する初の事例となる。
  4. 「ジョン・リチャードソン大将は正しい選択だ。果敢に決断するずば抜けたリーダーであり、海軍の多くの厳しい課題で頼りになる人物となっており、オハイオ級後継弾道ミサイル潜水艦問題から内部統制・倫理問題まで幅広く扱ってきた」とカーター長官は評した。「重宝がられる人物でエネルギー省長官から引き抜くのに苦労した」
  5. 現CNOのジョナサン・グリーナート大将も潜水艦部隊出身でオハイオ後継艦事業こそ海軍の最優先事項だと強調していた。同時に最大の予算規模にもなる。リチャードソンは同事業に詳しく優先順位を高くしたまま予算も全額確保するだろう。
  6. リチャードソンは海軍兵学校を1982年卒業し、物理学学士号を取得。USSパーチ Parche (SSN-683)、USSジョージ・C・マーシャル George C. Marshall (SSBN-654)とUSS ソルトレイクシティSalt Lake City (SSN-716)の各潜水艦に勤務した後USSホノルルHonolulu (SSN-718) 艦長として James Bond Stockdale Leadership Awardを受賞している。
  7. また大統領付き海軍補佐官、太平洋艦隊潜水艦部隊で艦長候補の訓練、米合同司令部で戦略政策部長を歴任している。

これに対してBreaking Defenseはやや辛い見方を示しています。この記事は国防長官による発表前に配信されています。


Worries Surface As Carter Picks Submariner As CNO; It’s All About Nuclear Reactors

By COLIN CLARK on May 13, 2015 at 1:11 PM

WASHINGTON: 次期海軍作戦部長に海軍原子炉部門長が抜擢されたことに人事発表前から疑問の声が上がっている。問題は本人の業績ではなく現時点の職責だ。
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  1. ハイマン・リコーヴァー提督が海軍原子炉部門(NR)の長の任期を8年と定めた時は議会と海軍の圧力を遮断する意味があった。
  2. 「リチャードソンについて良いことしか思い浮かばないし、すばらしいCNOになるのは疑いがない。だが先例から上院がすんなりと承認するとは思えない」とある議会スタッフは言う。
  3. 海軍原子炉部長のポストはこう理解されている。重要な職責に8年間も使える。任期中に異動や圧力を心配しなくても良い。裁量権が広く、退任までそのまま。
  4. もうひとりの議員スタッフは先例よりもリチャードソンが水上艦艇や航空部門で経験が乏しいのを気にしている。「CNOとは水中部隊のためだけではない」と本人の指揮経験が潜水艦関連であることに言及している。また海軍内部の各組織からも潜水艦を優遇していないか疑念がかけるはずである。ただ本人が大統領付き補佐官を務めた事実も注目すべきだ。
  5. 海軍にとって最重要議員と言って良いランディ・フォーブス下院議員は声明を発表し、同大将に海軍全般に目を配るよう求めている。
  6. 「リチャードソン大将はこれまで潜水艦部門で抜きんでたリーダーシップを発揮しており、就任は確実と見ているが、新ポストではより広い視野で海軍兵力全体を把握するよう、また水上艦艇の戦力強化に励むとともに海軍航空戦力の方向性を示してもらいたい」
  7. カーター長官はオハイオ級原子力潜水艦の後継艦選定は重要な課題であり、抜群の信用力で強力な推進役が必要だと決めたのかもしれない。SSBN-Xオハイオ後継艦事業(ORP)の単艦費用は49億ドルと最新結果は伝えているがコスト上昇は必至だろう。
  8. リチャードソンはオハイオ後継艦についてこう発言している。「6台のバスが編隊を組んで同じ間隔を明けて高速道路を走行するのと同じで走っている間に6台に同時にペンキを塗るようなものだ」
  9. For a glimpse at Richardson the commander, here’s what Sydney wrote when Richardson took the Nuclear Reactors job, which he was to hold until 2020:
  10. リチャードソンの指揮官の資質については原子炉業務に異動になった際にこう評されている。
  11. リチャードソンはリコーヴァーと同様にまた現NR責任者カークランド・ドナルド大将と同様に潜水艦で経歴を築いてきた人物だが、普通控えめな潜水艦乗りとは一線を画し、ブログを書き、兵学校のカンニング騒動、アブグレイブ刑務所での拷問スキャンダルやプラトンの国家論まで幅広い話題を取り上げている。
  12. 上院での任命承認手続きでは上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン議員(海軍航空士官出身で長く続く海軍軍人の家系)が本人の人格及び職務上の資質を厳しく見ると予想する。マケインがリチャードソンを疑わしく思うだろうか、あるいは神聖なる海軍原子炉での職務またはその両方で疑義を上げるだろうか。まだ予測がつかない。■

2015年5月14日木曜日

北朝鮮SLBM発射の真相を探る




北朝鮮が発表したSLBM発射について一番深く分析しているようなのでご紹介します。結論は下にあるとおりですが、韓国はこれから新しい防衛体制の構築を迫られるでしょう。まだ時間はありますが、油断はできません。

North Korean SLBM test leaves more questions than answers

James Hardy, London - IHS Jane's Defence Weekly
12 May 2015

North Korea released images on 9 May of what it said was a successful test launch of a 'Polaris-1' SLBM from a 'strategic submarine'. Source: Via
北朝鮮が5月9日に発表した「水中から朝鮮型強力な戦略潜水艦発射弾道ミサイルの試射」を「戦略級潜水艦」から行ったと発表しているが同国の潜水艦能力の水準からみて疑わしい。
The test-firing of a new SLBM was viewed by North Korean leader Kim Jong Un. (Via KCNA)SLBM試射には金正恩が立ち会った(Via KCNA)
国営労働新聞Rodong Sinmunはミサイル発射の写真数枚を掲載し、同ミサイルにPukgeukseong-1(北極星1)の名称が描かれ、海面から飛び出す光景を見守る金正恩指導者が写っているのがわかる。
ミサイルの形状はR-27 Zyb SS-N-6「サーブ」ソ連製液体燃料潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に類似している。射程は2,400キロメートルでペイロード650キロ。ソ連は1968年から88年にかけ配備していた。
2003年9月には北朝鮮が数発を取得したとの報道があり、これからムスダン(BM-25)地上発射型中距離弾道ミサイルが開発されたとみられる。
今回の「北極星-1」ミサイルが液体燃料式と推定されるのは白煙が見られないため。(白煙は金属化複合固形推進剤の特徴)だが炎はきれいで、茶色の煙が発生しているが、後者は四酸化二窒素または他の酸化窒素系の酸化剤を使っている証拠だ。

発射は潜水艦からあるいは水中発射台から?

写真では金正恩が潜水艦を背景に微笑している。この潜水艦が労働新聞が言う「戦略潜水艦」らしい。
北朝鮮にはソ連時代のプロジェクト633「ロメオ」級ディーゼル電気推進潜水艦20隻があるとみられ、国産のサンオ型も数隻配備されている。写真の潜水艦が後者の場合、35.5 m x 3.8 m x 3.7 mの外寸、260トンという排水量なので弾道ミサイル発射はありえない。
可能性が高いのはジョンズ・ホプキンス大学が衛星画像解析で2014年から2015年にかけ公表した新型潜水艦だろう。日本海側の新浦軍港Sinpo naval baseで建造し、全長65.5 m排水量1,000-1,500トンと推定される。
この新型「シンポ」級には開口部付き司令塔があり、高さは4.25メートル、幅2.25メートルで垂直発射管をおさめられる。R-27の直径は1.5メートルで長さは8.89メートル、重量は14トンと見られる。写真が示しているように発射を傾斜させれば、ペイロード搭載量は減るが船腹の長さを節約できる。.
韓国国防省は野党議員に北朝鮮が保有する同型潜水艦は1隻のみで発射されたミサイルは「ロシアのSLBMを真似てつくったダミー」と説明したと中央日報 Joongang が伝えている。
「北のSLBM開発はまだ初期段階」と国防省報道官キム・ミンソク Kim Min-seokが報道陣に話している。「先進各国を見るとSLBMの水中発射成功から実用化まで4年ないし5年かかるのが通例だ」「試射に使った潜水艦は未完成だ。北がSLBMを完成させ潜水艦に搭載するまで時間がかかる。北はこの段階でただちに開発を中止すべきである」
この国防省見解から韓国もミサイルが潜水艦から発射されたと考えていることがわかるが、、数々の要素から試射が潜行中の発射台から実施された可能性が高い。
まず金正恩は発射地点から極めて近い地点で船舶に乗っている。これではミサイル発射が乗員に与えるリスクがあるはずだが、潜水艦とミサイルへの信頼度が高いことの現れとも言える
さらにミサイルは開発試行の初期段階のようで静止中の水中発射台から設定済みの範囲に発射されたようだ。
IHS Jane's は上記がもっともありえる可能性で、金正恩がここまでミサイルに近い地点に立っていることがその裏付けだと評価した。また写真の一部で潜水艦が写っているがミサイル発射が同潜水艦から行われたとの説明とあわせて虚偽と判定する。

朝鮮半島の安全保障への影響は?

長期的に見ればSLBM実用化で北朝鮮は二次攻撃力を獲得し、開戦時にまず北の地上配備弾道ミサイルを発射前に破壊するという韓国の「Kill Chain」構想実施が困難になる。おそらく作戦構想そのものが実施する前に陳腐化するだろう。
短期的には韓国がミサイル潜水艦を実戦化前に攻撃する決断をすれば戦略的に不安定な状態になる。とはいえ、ソウルが休戦ラインから近距離にあり、北朝鮮の砲兵隊の配備を考えれば韓国が公然と軍事行動を取ることは考えにくい。

追加コメント

韓国にとってひとつ救いがあるのは同国が続けている対潜戦(ASW)の増強策だ。浦項Pohang-級コルベット天安Chon An が2010年3月に沈没したことで増備が加速化された。韓国は天安は北朝鮮小型潜水艦の魚雷で沈んだと見ている。
潜水艦部隊のみならず水上艦船や空からのASW能力も拡充している。潜水艦では張保皐級Chang Bogo-class (209型)ディーゼル電気推進式攻撃潜水艦9隻はゆくゆくはKSS-2級(214型)に更改されるはずだ。更に大型のKSS-3(排水量3,000トン)で初の潜水艦国産化を実現する。
韓国海軍の対潜航空部隊にはウェストランドWG.13リンクスMk 99ヘリコプター23機があり、ここにアグスタ・ウェストランドAW119ワイルドキャット8機が加わる。後者は新型仁川 Incheon-級フリゲートに配備され、アクティブディッピングソナー、360度レーダー、電子光学センサーを搭載する。
韓国国防調達庁 (DAPA) は韓国製対潜ロケット(K-ASROC) の精度向上に成功し、本格生産に移ると2014年5月に発表した。韓国海軍は同ロケットの精度に不満を表明していた。
さらにロッキード・マーティンP-3CKオライオン哨戒機16機の増設も検討するだろう。
IHS Jane's naval, missile, and proliferation experts David Ewing, Neil Gibson, Stephen Saunders, Karl Dewey, and Doug Richardson contributed to this report.
The 'Polaris-1' appears to be based on the Soviet R-27 SLBM. (Via KCNA)「北極星-1」はソ連のR-27が原型のようだ。(Via KCNA)
The missile's clean flame and brown fumes suggest it is liquid propelled. (Via KCNA)炎がきれいで茶色の噴煙から液体燃料式とわかる。 (Via KCNA)

2015年5月13日水曜日

★LRS-BあらためB-3はこんな機体になる



LRS-BはB-3と呼ばれるようです。B-3に期待される役割は今までの爆撃機から相当の乖離があるようです。-Bでない機体も早く見たいですね。

What The B-3 Bomber Should Be

By ROBBIN LAIRD on May 12, 2015 at 10:08 AM


Northrop Grumman Long Range Strike Bomber concept LRSBノースロップ・グラマンのLRS-B構想図 
米空軍には前身の陸軍航空隊時代から爆撃機運用で長い実績がある。B-17空の要塞は誕生時こそ物議を呼んだが、ヨーロッパ大陸がナチ・ドイツに占領されると真価を発揮した。
  1. だがB-17への道は平坦でなかった。戦前には戦闘機パイロットと爆撃機支持派の意見が対立し優劣を争った。爆撃機は残ったが、代償も大きかった。B-17は護衛なしでナチ占領地へ飛び、搭乗員多数が死亡した。その後長距離護衛戦闘機が投入されると爆撃機と協調して戦った。
  2. 太平洋戦線に投入さたB-29はは冷戦時代各機種の先駆けとなり、B-52が登場する。空軍爆撃機は「戦略」機材として核三本柱の中核になった。ベトナム戦争では通常型戦闘で効果を発揮し、大量爆弾投下能力が高く評価された。
  3. B-52は今日でも現役だが、B-1とB-2が加わり、B-52が登場した時代では想像もつかない用途に投入されている。現在の爆撃機は近接航空支援含む戦術用途に使用され、精密誘導爆弾やセンサー類により正確に目標に投下できる。
  4. これから登場する長距離打撃爆撃機はB-3と呼称され、戦術・戦略爆撃の定義が変わる時代に生まれる機体となる。
lockheed boeing long range strike bomberボーイング=ロッキードのLRSB構想図
  1. 新型爆撃機には飛躍的な新性能機ではなくB-2の技術を流用するが、単なるB-2後継機ではない。それはオスプレイがCH-46ヘリコプターの後継機種ではないのと同じだ。
  2. B-3はボーイング=ロッキード共同事業あるいはノースロップ・グラマンのいずれかが生産することになるが、空の戦闘で革命的な変化が進むさなかで実戦化される。航空戦力は21世紀のすべての戦場で効果の実現手段となっている。F-35が各国に導入されれば、空軍力の再定義につながり、攻撃・防御をともに効果的に実施する体制が米国及び同盟国で成立し、広範囲の脅威に対応できる。
  3. 最新機はF-35のように情報ネットワークを形成し、単機も全体の一部として運用可能となり、攻撃と防御を同時に実施できる。これが可能となったのはC5ISR(指揮・統制、通信、情報処理、戦闘システム、情報収集監視偵察機能)によるところが大である。
  4. B-3は単に爆弾搭載量を増やし、長距離を飛び戦略ミッションをこなすだけの機体ではない。同機は航空戦闘部隊の効果を増幅する機体だ。航続距離とペイロードは基本性能として重要だが同時に新設計のステルスが効果を上げる。だがそれはまだ基礎部分に過ぎない。
    1. 第一に爆撃機には米国及び同盟国のF-35、無人機、その他ISR機材からのセンサー情報を活用する。第二にC2システムを搭載し戦闘中の各機に個別情報を提供する
    2. 第三に前方に投入される各機の戦闘管理を提供する
    3. 四番目に武器の進歩が加速化しており、各種兵装が多様な機種で利用可能となる。そこでB-3にはセンサー応用の攻撃能力も加えるが、必ずしも戦闘の第一陣に加わる必要はなく、最重要な機材ではなくても中核機材になるのは確かだ。.
    4. 第五にB-3は核兵器運搬用途以外に抑止機能を実現する。たとえば北朝鮮が核ミサイルを発射する前に時間的に効果のある攻撃を行う。
  5. 言い換えればB-3は航空戦力の新定義の一部となり、前方に配備するF-35の効果を引き上げる存在になる。また目標情報を提供し、センサーつき兵装を大量に投下し、核兵器の運用を夢見る新興国家に対する抑止手段となる。
  6. こうしてみるとB-17との共通点はほとんどなく、B-52に近いが、B-2ほどの強力な戦略機材ではない。長距離飛行し高い効果を実現させる。共同作戦や連合空軍部隊で利用されるだろう。
  7. 第五世代戦闘機やミサイル防衛体制が目標を探知すると、B-3が統合航空作戦の調整・統合機能を発揮できる。つまり同機のセンサー類、C2情報管理機能が不可欠になる。
  8. 攻撃・防御一体体制で中心となるのはS3革命である。つまり、センサー、ステルス、スピードの三要素により敵探知、破壊、対応を効果的に多数の脅威対象を相手に行うことだ。
  9. 航空部隊の中心となるB-3により米国は中国に対し優勢な立場を固める。戦闘情報管理機能を有する同機はこれまでなかった存在となる。同盟国と相互運用リンクでむすばれ、米本土や沿海部に展開する米軍部隊も情報を共有できる。米軍は同盟各国と共同作戦を高度な接続状態で実施する必要がある。B-3は必要なときに投入され同盟軍の戦力を増強する存在になる。
  10. 同機により21世紀の米国及び同盟国の空軍力を大きく向上させることが期待される。
筆者ロビン・レアードは国防コンサルタントでBreaking Defense 寄稿者のひとり。自身でSecond Life of Defenseウェブサイトを主宰。