2015年7月20日月曜日

★中国への備え、離島防衛>陸上自衛隊が米陸軍の先行事例になる

防衛を中心に整備をしてきた陸上自衛隊が米陸軍のモデルになる、という指摘ですが、米陸軍が皮肉にも日本(あるいは台湾?)から装備を供与受けることになるかもしれないという予測です。攻撃にまわってなんぼという米戦略で防衛だけに専念することは難しく、かつドクトリンの変更が必要になるのでしょうね
「breaking defense」の画像検索結果

Japan Blazes Trail For US Army: Coastal Defense Vs. China

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 15, 2015 at 2:58 PM

WASHINGTON: 脅威度を上げてきた中国を抑止し敗退させるためには海軍・空軍だけで十分とはいえない。陸上自衛隊の現状は煮え切らない態度の米陸軍に参考になりそうだ。
  1. 「陸自は待ちの姿勢になっていませんね」とアンドリュー・クレピネヴィッチAndrew Krepinevich(戦略予算評価センター理事長)がアジア歴訪の直後に記者に語ってくれた。「日本は『第一列島線』の北方部分の防衛への関与を望んでいます。琉球諸島で施設拡充を進め、中国の侵攻を食い止めようというのは非常にすばらしいことです」
  2. 陸上自衛隊はクレピネヴィッチがForeign Affairs 2月号に寄稿した「列島防衛」構想と同じ方向を向いている。
Andrew KrepinevichAndrew Krepinevich
  1. クレピネヴィッチは「中国人民解放軍の防衛体制の中に海軍艦船を送り込むのではなく、米国及び同盟国は地上兵力を第一列島線上に配備し、移動式ミサイル発射装置に対艦巡航ミサイルを装備することで対応が可能だ」と著述している。対空ミサイルやミサイル防衛体制の整備も同時に可能だ。クレピネヴィッチ構想では海軍艦艇と空軍長距離爆撃機は移動予備兵力で陸上防衛線の背後に配置し、被攻撃地点の補強にあたり、中国軍の突破を防ぐ。艦隊は中国の支配部分から遠い地点にとどまる。
  2. クレピネヴィッチはさらに「西太平洋では我が方に大きな利点がある。これまでは兵力投射をしてきたが、今回は同盟各国の防衛にあたる。進出してくるのは中国の側だ」と語る。
  3. つまり敵国への侵攻や敵軍の壊滅は想定しない。逆に相手側に侵攻させる。米艦船や航空機を中国本土のミサイル射程内に送り込めば、損失は甚大なものにる。
  4. これは米軍にとって気持ちのよい話ではない。冷戦以後、防御一辺倒に回った事例はなく、ソ連軍事力が崩壊すると米軍は兵力投射に中心を移し、航空母艦、戦闘攻撃機、迅速展開部隊を重視してきた。敵国の領土に侵攻し、目標破壊につとめる、というのが現在の標準だ。米陸軍はアフガニスタン後の現実では急速展開能力を重視し、島嶼防衛は二の次だとしている。
  5. だが島嶼防衛は日本の自衛隊には違和感がない。硫黄島の激戦が証明している。また専守防衛が日本の防衛政策で大きな柱である。
  6. クレピネヴィッチはForeign Affairs論文で琉球諸島への対艦ミサイル配備構想に着目している。実際に日本を訪問し、実態が先行しているのを目の当たりにした。「西部方面隊の司令部へ招待されたのですが、地上兵力を中心に取り上げてた私の論文に司令官は大変興奮していましたね」
  7. 防空ミサイルとミサイル防衛装備が琉球諸島に配備され、中国の侵攻に備える。また沿岸に対艦ミサイルが配備される。さらに機雷敷設の訓練もしている。米海兵隊の協力を得て、揚陸作戦連隊の創設を目指し、島嶼の確保能力を確立する。
  8. ただしクレピネヴィッチは揚陸部隊を予備機動部隊とすることに懐疑的で、「接近阻止領域拒否(A2/AD)環境で精密攻撃ミサイルがある中で兵力を展開するのは困難。展開するのは我が方も敵も支配していない地帯だろう」としている。
  9. 一番頼りになる援軍は長距離ミサイルとクレプネヴィッチは言う。西太平洋地区の地理条件から、防衛地点の島が敵の飽和攻撃を受けても、残りの島々が同じ防衛線上にあれば長距離兵器を発射して防衛できる。
  10. ではミサイルはどこまで届くのか。「INF(中距離核兵器)条約の制約があり300マイル、つまり500キロが限度でしょう」とクレプネヴィッチは語る。「300マイルあれば相当の効果があげられ、地上兵力の投入は不要になります」
  11. 長距離ミサイルがあっても日本は単独で長距離にひろがる脅威対象地区すべての防衛は不可能だ。「日本側が分担を考えていることがわかりました。第一列島線の北部は日本が一義的に担当し、米側は南部を担当します」 日本、韓国、台湾の北方部分各国が北方の守りを固めて、南方にあるフィリピンなど各国はそれほど豊かでなく米軍の援助がないと防衛しきれない。
  12. ただし米陸軍にはここで想定される装備すべてが導入されておらず、とくに対艦ミサイルがない。だが日本から購入できるし、日本以外の同盟国が供給することも可能だ。もし、米陸軍が導入を決意すれば。
  13. だが米陸軍はそこまで踏み込んでいない。「予算削減で最大の犠牲を求められていることもあり、陸軍は大きなプレッシャーに直面しています」とクレプネヴィッチは言う。米陸軍は西太平洋以外に中東やヨーロッパでも義務がある。上下両院の軍事委員会から陸軍に対して沿岸配備の対艦ミサイル導入を求めてきたが、「国防総省の上層部は陸軍が第一列島線防衛に寄与できるか把握しきれていません」
  14. 「陸軍の価値観を揺るがす話題になり、列島部分の防衛は旅団単位の戦闘部隊では不可能です」とクレプネヴィッチは言う。日本は普通科地上部隊を縮小させ装備資源を新設の沿岸防衛部隊に振り向けようとしている。予算が限られる前提で米陸軍も同じ選択に迫られよう。米陸軍は予算削減の影響を直接受ける最中であり、新規の予算を確保することは困難だ。■


2015年7月18日土曜日

★F-35模擬空中戦報道>関連背景事情を理解しましょう



F-16との模擬空中戦で精細を欠いたF-35Aのニュースが当ブログでも話題になりましたが、根はもっと深いのです。ただし、とりあえず今回の記事でこの話題は一旦終了とさせてください。F-35が決して万能の機体ではないこと、F-35だけに依存することで防衛予算が消費されることがどれだけ危険かをご理解いただければ幸いです。

Behind That F-35 Air Combat Report

Jul 6, 2015 by Bill Sweetman in Ares

ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機(JSF)のテストパイロットによる報告書がリークされたが、以前にも同様事例があった。2008年の事例ではRAND研究所がF-35をスホイSu-35その他機体と比較した資料がリークされていた。
「米空軍による解析を引用しつつ、チャールス・デイビス中将’ Maj. Gen. Charles Davis 当時JSF推進責任者)はF-35は少なくとも空対空戦でスホイ含む各国の最新鋭戦闘機よりも少なくとも400%優秀だ。
「ロッキード・マーティンによればF-35の3型式でそれぞれ動力性能はいかなる第四世代戦闘機を凌駕しているという。比較の対象は遷音速加速性能で空対空装備のユーロファイター・タイフーンに対し、また高迎え角での戦闘能力でボーイングのスーパーホーネットにそれぞれ優越しているというもの。「F-35は空対空戦の各性能ですべて既存機を上回ている』とロッキード・マーティン社テストパイロット、ビル・フリンが語っている」
以上もあり今回はF-35がエネルギー機動性でブロック40のF-16に劣るとの報道が話題になったのだろう。F-16がタイフーンと飛行速度で同等だと思う人はいないはずだし、スーパーホーネットの高迎え角性能でも同等だとは思わない。あるいはSu-35がこの両者を実現していることも承知のはずだ。F-35推進派の反応も注視に値する。
まず出てきたのはロッキード・マーティンが資金を援助するレキシントン研究所のダン・グア Dan Goure による「F-35がドッグファイトをこなせないって? いいではないか」との記事だ。グアは航空戦闘の機体制御をすべてドッグファイトと関連付けているが、搭載銃による撃墜事例全数を調べた戦略予算評価センターのジョン・ステリィオン John Stillion による報告書を引用してセンサー、ネットワーク、武装の組み合わせが空中機動性を無意味にしたと断言している。「結論としてF-35はそんなに悪い機体ではない」とグアはまとめ、「一方で既存第四世代機はどんどん陳腐化している」とした。
英空軍の要求水準ではF-35Bに航空戦ミッションすべてを行わせ空母航空隊に編入する。F-35Bの空虚重量はF-35Aより3,200ポンドも重いので機動性で不利だ。ロッキード・マーティン重役で RAFでトーネードを操縦していたアンドリュー・リンステッドAndrew Linstead がデイリー・テレグラフ紙にF-35の状況認識能力を評価し、空中戦も変化していると語っている。「慣れ親しんだ方法論にしがみつく人は感情的なつながりさえ覚えるものだが、違う角度から考える必要がある。戦場の状況は二者択一の選択を求めてくる。敵を避けるか、必ず勝てる状況で対決するかだ」
グア、リンステッド、フリンの三人は論争の反対側にいるように写る。30年ほど前に戦闘機主流派がステルス至上主義者と論争したのは高性能戦術戦闘機(ATF)構想の要求性能が対象だった。当時、ステルスは潜水艦戦と同じだと主張する向きがあった。「最後に浮上して甲板の銃で戦う」のと同じだというのだ。AMRAAMミサイルが当時開発中であり、戦場ではたえず初回の 有視界外 beyond-visual-range (BVR) のミサイル交戦を生き残る機体が必ずあり、近接有視界射程within visual range (WVR)に入れば、ステルスに意味はないと主張した。
従来の主流派が勝利した。F-22ラプターは高度の機動性を備えた大型で多様な戦闘性能を実現すべく巨大な尾翼を備え、AIM-9ミサイルを機体前方ならどの方向にも発射できる機能を実現したが、代償に機内スペースを相当割いている。
これに対しJSF推進派は機動性を重視しないが立案者はBVRで勝利をおさめることは可能と主張した。それはステル性と状況認識能力によるものであり、WVRでは360度標的捕捉能力と分散型開口システムDistributed Aperture System (DAS) で対空ミサイルを発射できると見ていた。
ここで語られていないのは実は同機は両方とも実施できないことだ。F-22や成都J-20やスホイT-50のような機体側部兵装庫がなく、AAMをレイルから発射できない。F-35 ではAIM-9 を外部搭載するとステルス性はなくなるとロッキード・マーティンは認めている。
これは偶然ではなく、事業の実施で実現したことでもない。F-35は「空対地攻撃に7割、空対空戦に3割」という構想で始まった機体だ。これは共用高性能攻撃機技術 Joint Advanced Strike Technology (JAST)と呼ばれていた1995年時点に責任者ジョージ・ミューリナー George Muellner,が使っていたことばだ。F-117ナイトホークは第一次湾岸戦争のヒーローになったが、3つの制約があった。自機で目標を補足できず、移動目標は攻撃できず、状況認識能力も昼間の生存に必要な装甲もなかった。そこでJASTはすべての任務をこなした上で外部兵装搭載ポイントもつけ、防衛網を破壊したあとの第二陣攻撃に投入されるF-16の役割も果たそうとしたのだった。
1995年当時の空軍は F-22を442機調達しいかなる敵戦闘機にも対応させる構想で、短距離離陸垂直着陸機にはAAM搭載用の機体側部装備は大きさと重量の問題からそぐわないと判断された。Stovlには機体重量と主翼の大きさ、さらに機体全長で制約があった。
ATF正統派がまちがっていたらどうなるか。グアとリンステッドがこの点を指摘しているようだ。またWVR戦闘を避けることができるか。グアがスティリオン報告書を引用したことに2つの皮肉な効果がある。まず、スティリオンは前出のRAND報告の共同執筆者であり、二番目にスティリオンによるCSBA研究成果によれば将来の空中戦に勝ち残るためにはF-35もF-22も不要であり、高度ステルス無人航空機からAAMを発射すべきだという。無人機の制御は長距離打撃爆撃機のような機体から行えば良いとする。高性能な戦闘機はどうしても短距離しか飛行できず、それ自体は強力としても給油機は脆弱なままだ。(中国のJ-20が給油機等支援機材を直接狙う機体と考えるのは筆者だけではない)
この航空戦の捉え方の裏付けに航空戦の実績を広く研究したスティルトンの成果がある。機銃から短距離AAR、さらにBVR用AAMへの変遷がある。しかし、ここでちょっと待てとの疑義が出し、。これとは違う流れを見る向きもあろう。MBDAメテオ事業の関係者はBVR戦闘には今以上の機体操縦を高速度で行う必要があると見ている。歴史は確かに何かを教えてくれるが、それで全てが決まるわけではない。
注目すべきは空対空戦ではこの30年間でバランスが欠けていることだ。 米国および同盟国側が装備面で大きく有利な形で交戦してきた。西側にはスホイ高性能戦闘機との交戦経験はないし、ロシア製新型戦闘機と対戦しているが、ほとんどが初期型のMiG-29で、短距離しか飛べず、ソ連時代の地上管制による指示を受けて飛行していた。訓練と経験では西側が大きく有利だった。また空中早期警戒機の支援も西側にあり、その他情報収集機や電子妨害機の支援もあった。
交戦事例からBVRが生まれたのは驚くに値しないが、WVR交戦に持ち込むのは危険だとの認識が敵側にも生まれている。だが、このような均衡を欠いた状態がいつまでも続くはずがない。ダン・グアはF-35の機動性欠如を問題視していないようだが、本人は戦闘に参加しないのだ。■


2015年7月17日金曜日

日本向MV-22第一陣5機の売却決まる


まず第一期分ですね。オスプレイを他国に先駆けて導入するあたりが日本がいかに米国と近しいかの現れなのでしょうね。それとも各国とも導入したいが、ヘリコプターがあり、国防予算縮小のあおりで躊躇しているのか。どちらにせよオスプレイの真価が理解されれば導入は進むと見ているのですがいかがでしょう。

Japan Finalizes Purchase of 5 MV-22s in First International Osprey Sale

July 14, 2015 6:10 PM

U.S. Marines inspect an MV-22 Osprey tilt-rotor aircraft after landing on the Japan Maritime Self-Defense Force helicopter destroyer JS Hyuga (DDH 181) during amphibious exercise Dawn Blitz 2014. US Navy photo.
米海兵隊のMV-22オスプレイが海上自衛隊のヘリコプター護衛艦JSひゅうが (DDH-181)に着艦している。揚陸演習ドーン・ブリッツ2014で撮影  US Navy photo.


日本はMV-22を17機導入する計画だたが、まず5機の調達を決定した。日本がオスプレで最初の海外顧客になった。

米海軍は総額332.5百万ドルでベル・ボーイングに複数年度契約を交付し、同型機の製造、引き渡しに加え、サポート、訓練、装備も行わせることとしたと14日にベルヘリコプターとボーイングが共同発表した。

「V-22ティルトローター機は陸上自衛隊の能力を大幅に引き上げ、災害救助に理想的な機材です」(プレスリリースより)

米国防安全保障協力庁(DSCA)からは総額30億ドルで17機を販売すると議会に5月に通告していた。


「日本は防衛任務の支援強化策として輸送手段の更改に向かっている」とDSCAは述べており、「今回提案のV-22B ブロックC型は陸上自衛隊の災害対策人道救難ミッション以外に揚陸作戦の支援へも活用が期待される。今回の売却で同盟国日本から負担分担ならびに米軍との相互運用性の向上が期待される。日本は同型機の編入を容易に実現するだろう」

現時点でMV-22を運用するのは米海兵隊のみだが、米空軍は特殊作戦軍団が独自仕様のCV-22を運用し、米海軍も名称未決定の海軍仕様44機の導入を決定している。日本向販売は初の国際売却事例となる。■

2015年7月16日木曜日

ロシア>軍用機墜落相次ぐ、今度はTu-95爆撃機が中国国境付近で墜落



このところロシアで軍用機事故が連続発生しているのは興味深い現象です。プーチン大統領がめざす大国としてのロシアと、これまでの経緯から整備状況、訓練にお金をかけてこなかった空軍の現実のギャップが大きいのではと推察します。

Tu-95 Bear Bomber Crashes Near Russia’s Border With China

July 14, 2015 9:47 AM

A Russian Tupolev Tu-95 Bear 'H' off the coast of Scotland in 2014. UK Royal Air Force Photo
ロシアのツボレフ Tu-95ベア H型、スコットランド沿岸で2014年、英空軍撮影

ロシア空軍の戦略爆撃機が中国国境線に近いハバロフスク近郊で墜落したと14日ロシア国防省が現地報道を通じ発表した。

  1. 事故機はツボレフTu-95MSベア爆撃機で訓練中にロシア東方軍区司令部から50マイル地点に墜落したとTASS通信が配信。「7月14日現地時間午前9時50分、Tu-95MS機が定期的訓練飛行途中にハバロフスクから約80キロ地点で墜落した。乗員は機外脱出した」
  2. 「機長が緊急事態を宣言し乗員にパラシュート脱出を命じた。捜索救難隊が乗員を捜索中」
  3. またTASS通信によれば捜索救難活動にアントノフAn-12、ミルMi-8ヘリコプター2機が動員されている。
  4. この事故を受けロシア空軍は同型機の飛行を中止している。事故機ではエンジンで問題が発生したとの報道がある。■

2015年7月15日水曜日

★米新軍事戦略が想定する考えたくない危険な可能性



ロシア、さらに中国との交戦を想定すると戦闘は長期化する、との予測でとりあえず新板の国家軍事戦略はできたが、中身はまだ未整備だというのが今回の指摘です。細部はともペンタゴンが現実の世界に対処する考え方をまとめはじめたということでしょうか。

New Military Strategy Shows A Dangerous World – But Not How To Deal With It

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on July 10, 2015 at 12:15 PM

WASHINGTON: ペンタゴンは世界の変化を痛いほど認識しているが、対応方法の答えが見えていない。
新国家軍事戦略National Military Strategyから見えてくるのはこんな頼りない結論だ。そもそも官僚の作文には高い期待はできないものだが、今回の新戦略構想ではこれまで存在しなかった脅威をどうとらえているのかのヒントが含まれている点が救いだ。ただし、対策は普通の域を脱していない。.
「良い点は全体の状況把握は正確で、戦略環境を正しく捉えていること。では軍としてどう対応すべきかという点になると、やはり以前通りの直線的な解釈に終始している」というのが陸軍大学校准教授ネイサン・フライアNathan Freierの評だ。
戦略案を発表したデンプシー統合参謀本部議長は複雑な安全保障環境から「軍歴40年の中で最も予測が難しい」と評している。テロリストのみならずロシアや中国といった大国との開戦のリスクが「拡大中」である状況が同時並行しており、その中間に「ハイブリッド脅威対象」としてゲリラ勢力が国家並みの装備を展開しているという認識だ。ロシアによるウクライナ併合は現地勢力を活用しつつ、特殊部隊も展開した点でハイブリッド型の例で軍事大国がゲリラ戦術を活用している点に注意が必要だ。イスラム国が支配地域を確保し維持しているのもハイブリッド型で非正規部隊が限定的ながら国家のように振舞っている例だ。
ただし新戦略ではすべての脅威対象を同じ軸に配置している。非国家勢力による戦闘が発生する確率は高いが、危険度は低い。一方で大国との戦闘は可能性は低いが発生すれば極めて危険だ。このように考えるのは単純化しすぎだろう。
Conflict spectrum from the 2015 National Military Strategy
2015年版国家軍事戦略構想より 紛争の分類
ロシアのような大国は通常型軍備を使わずに大きな損害を与えることが可能だ。天然ガス価格の操作、ハッカーの活用も武器になる。逆に非国家勢力のイスラム国が世界規模のテロ破壊活動を展開することは可能で。これまでの指揮命令系統を使用せずにソーシャルメディアを使って実施できる。
「10年20年までは指導層がないままの抵抗活動が最新の形態だった」とフライアは語る。「ところが指導層が存在しない抵抗活動が現実のものとなっている。バラバラの個人が遠隔地の思想に従い行動している」 テロリスト組織と直接の接触がない戦闘員が実質的に動員されているという。
次の大戦が発生したら?
指導層がなくても自主的に組織されたテロリスト集団はローエンドの悪夢だが、大国との戦闘はハイエンドの悪夢と言えよう。デンプシー議長はアメリカの技術優位性が失われつつあるとを警告する。この危機意識はこの数年間でペンタゴンの優先事項で最上位になっている。またデンプシーは戦争が「長期化」する可能性を指摘している。
だが21世紀に大規模戦闘が長期化するだろうか。大国間では戦争のない状態が長く続き、軍事技術は急速に進歩しているので、結果の想像が難しい。デンプシーは明言を避けるが、米国のスマート兵器が使い果たされ在庫が空になる可能性は高い。
第一次大戦では両陣営は戦前に備蓄した兵器を開戦後10週間までは使っていたとジョン・スティリオン John Stillion (戦略予算研究センター)は指摘する。「弾薬不足と火力による甚大な損失で戦闘はむしろ長期化した」という。第二次大戦では日米海軍は真珠湾攻撃後12ヶ月でそれぞれ相手陣営の空母を標的とした結果、「両国が空母部隊を再編する19ヶ月にわたり大規模な空母対決は発生しなかった」(スティリオン)
米国の南北戦争を見てもわかるとスティリオンは続ける。初期のブルランの戦いで両陣営は長期戦体制に入った。「歴史が証明しているのは大国同士の戦争は長期化する傾向があるのは、相手に一方的に損害を与えられないためであり、開戦直後に敵を圧倒的に制圧できないことも理由だ」
もし大国間の戦争が今勃発するとアフガニスタンとは様相が異なっても、第二次大戦とも全く違う形になるだろうと、CSBA研究員ブライアン・クラーク Bryan Clark:がコメントした。「現在の産業基盤では最新の高性能装備や兵器を急には増産できない」ので初期の交戦で損耗した装備の補充はできない。
だが大規模かつ長期にわたる軍事衝突は未経験の課題を残すだろう。
「この戦略の欠陥は戦略として機能していないことです」とクラークは更に続けた。「文書の上では資源に限りがあると認めているが、それを前提に米軍部隊がどう対処するのかは触れていないですね。たとえば、『敵の全滅』は不可能かもしれないし、限られた資源で目的をどう貫徹するのか、これまでのやり方は通用しません」
「結局、文書は意向を示すことに終始しており、実施可能な戦略になっていません。本当の戦略なら立案上、開発上あるいは予算認可の各段階で国防総省の限られた資源をどこに使うべきかを決定するのに役立つものであるべきです」とクラークはコメントした。■


2015年7月12日日曜日

★★F-35>ドッグファイト結果からパイロットの役割を考えよう



さすがに元空軍士官だけに問題の本質をパイロットの観点から整理しなおしています。このままではF-35が空軍の成り立ちを根本から変えるのは必至ですね 結局はパイロットの腕にかかってくるのですね。当面今回のドッグファイト試験の余波はつづきそうですね

What the F-35 vs F-16 Dogfight Really Means: Think Pilots

By DAN WARD on July 08, 2015 at 4:01 AM
  1. 共用打撃戦闘機にドッグファイターとして欠陥ありとの報道が出るや、JSF推進派の反応は迅速かつ予想通りだった。多くがF-35はそのまま容認できるとし、中にはもともと空対空戦の想定はないのだから問題無いと言う向きまであらわれた。ただこの見解は長くは持ちそうもない。そもそもなぜ米空軍がこの段階になってF-16との模擬空中戦を実施したのか。おそらく空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が2013年12月に説明しているように、「F-35はF-22を補完して空中優越性の確立のため実戦投入する」からだろう。言い換えれば米空軍にはF-35がドッグファイターとして必要なのだ。
  2. この他にも擁護派の説明では今回の想定は単なるテストで、リークされた報告書は実態をよく理解していない者が抜粋したものだとする。だから機体の価値を本件だけで判断すべきでないという。JSFの開発契約が1996年に成立してからはじめて今回基本戦闘機操縦テストに投入されたわけだが、(量産型機は2020年までこのテストに使われない)、だれも急いで結論を出そうとしていない。ただ軍用機のテストでそれなりの経験と一家言を持つ筆者として、一回のテストでも十分に意味のある性能データを得ることが可能だと断言できる。F-35支持派も逆にドッグファイトに勝利していたら同じ事を言っていただろう。
  3. ただ筆者はこれとは違う擁護派の発言に注目している。FighterSweep http://fightersweep.com/2548/f-35-v-f-16-article-garbage/ で発表された記事では今回の報道を「ゴミ」だと一蹴している。C.W.レモイン C. W. Lemoine が指摘するのはF-35がドッグファイトに負けた真の理由は技術的な欠陥などではなく、パイロットの技量不足だというのだ。レモイン自身はF-16とF/A-18の操縦経験があり、こう言っている。
  4. 「100時間ほどのF-35操縦経験しかないパイロットが1,500時間超のヴァイパーパイロットに対決したのだ。千時間超のF-16パイロットが複座D型で完成したばかりの単座ジェットに勝った例を見ている。コックピットでは経験の長さがものをいうのだ
  5. 「完成された戦術に長けたパイロットの手でF-35が同等の経験を有する対抗側にウェポンズスクールの模擬演習に臨んだらどうなるだろうか」
  6. 挑発的な言葉遣いと飛行時間の件はおいても、このレモインは重要な点を提示している。戦闘結果で決定的なのは「コックピットの中で何時間すごしたのか」だ。レモインの主張はF-35パイロットが経験を積むまで結論を保留すべきだとするが、技能不足そのものは重要なデータポイントだと思う。この点こそF-35が決定的に弱い点であり、今後相当長くそのままであろう。
  7. 効果的な戦術を開発し、うまく活用できるパイロットの養成には相当の飛行時間の蓄積が必要だ。しかし、F-35のパイロット陣には大きな障壁がある。パイロットは必要な経験が積めず、効果的な戦術の実証、開発もできないままである。想定される戦闘ミッション全般でも同様で、ドッグファイトも例外ではない。
  8. 機体価格が上昇の一途で、開発が恒常的に遅れいている実態からペンタゴンの調達機数が削減されるのは必至で受領も予定より遅れる。十分な数の機体がそろわなければパイロット養成もままならない。とくにF-35では飛行時間あたり費用が高いことが一番の問題だ。このため操縦時間が制約を受け、訓練時間が増やせない。更に予算環境が厳しいのが昨今だ。これらをあわせると実機の操縦体験を多く確保することは困難となり、レモインがいみじくも言うように飛行時間が短いパイロットが長く飛んでいる敵に勝てるはずがないのだ。
  9. ここに機体の複雑さが加わる。これは筆者の専門分野だが、複雑な機体はそれだけ学ぶのが難しくなり、テストも難しく、点検保守も難しくなる。F-35は疑いもなく史上最高に複雑な機体だ。たとえば、コンピュータコードは830万行あり、F-22の4倍以上だ。複雑性をすべて制御管理するため費用は高くなり、開発が遅くなり、テストでは飛行時間を確保できない
  10. 純粋に技術的な観点からは複雑性は信頼性を犠牲にすることになる。たとえば故障現象の種類が増えるとともに、故障箇所も増える。このためあちこちが不良を引き起こし、問題をひとつひとつ解明し対策を講ずるのに長時間が必要だ。保守点検が遅れれば機体がその間利用できなくなる。結論として複雑になる分だけ操縦時間が確保できなくなる。
  11. 故ジョン・ボイド大佐の不朽の発言にあるように、機械は戦闘を行わない。操縦者が行うのだ。ここに今回の事例の本質がある。F-16はドッグファイトでF-35に買ったわけではない。F-16を操縦した経験豊かなパイロットがF-35に乗る経験の浅いパイロットを負かしたのだ。この結果が将来に再発しないようにする唯一の方法は経験を積んだF-35パイロットを多数養成し、新戦術をマスターすることだが、現在のままではこれはとても困難だ。
  12. ということでF-35に近接空中戦の実施を期待できるのかという問題は忘れよう。また今回のテスト報告書が重要な意味を含んでいるのかという問題でも同様だ。JSFが優秀な機体になるとしたら、ドッグファイト他で真のプロフェッショナルな人材が必要なのだ。つまり「戦術開発に長けた」人材だ。つまりパイロットはコックピットで経験を重ねるべきであり、巨額の経費を考えると、遅延が重なっていることもあり、機体のとんでもない複雑さも考慮すると、F-35に経験豊かなパイロットを確保することは当面期待できない。■


2015年7月11日土曜日

★LRS-B>選定決定は秋ごろに延期、次期JSTARS機も選定に向かう



LRS-Bの契約選定が遅れるのは結果の重大性を考えると米空軍が相当に逡巡していることの証拠です。LRS-Bは既存技術を多用したかなり「常識的」な機体になりそうですが、受注に失敗した企業にとっては辛い結果になると言われてきましたが、実態はそうでもなさそうですね。注目したいのは下にさり気なく挿入されたJSTARSの次期機体の話題です。技術の進歩でかなりダウンサイズした期待になりそうですね。

Air Force: Next-gen bomber award could slip into fall

By Brian Everstine, Staff writer3:01 p.m. EDT July 9, 2015

米空軍は新型長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付を先送りし、三ヶ月程度遅らせると発表した。
  1. 空軍次官(調達)ビル・ラプランテBill LaPlanteによれば公表時期は「でき次第」だとし、拙速より正しい結果を重視するという。導入機材は50年間の供用の予定で、発表時期を急ぐ必要はないとの考えだ。
  2. ラプランテは「正しい結果を得るべく、正しい時期に正しい方法で始めるのが肝要だ」と戦略国際研究センター(ワシントンDC)で7月9日に語った。
  3. ラプランテ発言の前に空軍長官デボラ・リー・ジェイムズがロイター通信に契約交付は9月になりそうだと伝えている。
  4. 契約獲得をめぐり争う二社は結果如何で大きな影響を受けそうだ。B-2で実績があるノースロップ・グラマンロッキード・マーティンボーイング共同事業体だ。
  5. B-52後継機として空軍は80機ないし100機の導入を希望し、導入開始を2020年、機体単価を500百万ドル、事業規模は総額800億ドルと見込んでいる。
  6. この事業は議会の批判の的となっており、下院による2016年度国防予算認可法案では460百万ドル減額されたが、実際の開発研究予算は非公開あるいは「闇の」予算に盛り込まれている。
  7. 空軍は新型爆撃機について口を閉ざしており、ステルス性以外に核・非核運用、任意で有人操縦とする、とだけわかっている。
  8. また空軍は共用監視目標捕捉攻撃レーダーシステム(JSTARS)の次期機種に関し第一選定で三社程度に絞り込む意向だ。空軍は最終的に一社に契約交付し、実機の生産を開始させるとラプランテは説明した。
  9. 米空軍は現在JSTARS18機を運用しており、各機は長距離レーダーで地上車両の探知、捕捉ができる。機体は旧式になったボーイング707-300で、ボーイングはすでに同機の生産を終了して久しく、代替機を探すのは困難かつ高価格になっている。
  10. ロッキード・マーティン、レイセオンボンバルディアは共同で長距離ボンバルディアビジネスジェットを基にした案を提案している。ノースロップ・グラマンはガルフストリームL-3の各社と組んでガルフストリームG550の改修案を発表済み。ボーイングは737で参入を図る。■


2015年7月10日金曜日

★オーストラリア>F-35B導入を断念




Australia Abandons Proposal To Order F-35B

Jul 8, 2015 Bradley Perrett | Aerospace Daily & Defense Report

オーストラリアは大型強襲艦2隻へ短距離離陸垂直着陸型(Stovl)のロッキード・マーティンF-35Bライトニングの導入を断念したと同国国防筋が明かしている。まもなく発表の国防白書の準備中に決定された。
  1. Stovl戦闘機導入は昨年にトニー・アボット首相が決めたことだが、実施すると強襲揚陸艦の大幅改修が必要とわかり、導入を断念することになったという。
  2. またオーストラリア軍内部でF-35B導入に反対の意見が広がっていたと同上国防筋はAviation Weekに語っている。
  3. また艦載航空兵力を投入する作戦想定はオーストラリアに少ないと指摘するのはオーストラリア戦略政策研究所のベン・シュリア Ben Schreer 研究員だ。シュリアの主張は同機を運用した場合の効果よりもっと重要な支出項目があるというものだ。
  4. オーストラリア空軍はF-35Aが100機は必要としており、F-35B発注の場合これが削減される可能性があった。ただオーストラリアの確定発注はF-35Aを72機。シュリアはF-35B飛行隊を2個(各18ないし24機装備)整備する案があると指摘していた。強襲揚陸艦2隻の改修費用は50億オーストラリアドル(44億ドル)以上と見られていた。
  5. 二隻のうちHMASキャンベラは就役ずみで、二番艦アデレイドが公試中だ。両艦はLHD型でドック式で全通型飛行甲板を有するが、大型陸軍用ヘリコプターの運用を想定している。■


2015年7月8日水曜日

★国産哨戒機P-1が英国で国際デビューへ



US-2の輸出話がなかなか見えてこない中で、P-1が英国に飛び、次期哨戒機として売込みを図ることになった、という報道です。これでC-2が軌道に乗っていれば、三羽烏となるところなのですが。P-1は今後が期待できそうです。

Kawasaki P-1 To Make International Debut In U.K.

Jul 7, 2015Tony Osborne | Aerospace Daily & Defense Report

Kawasaki Heavy Industries

日本は新型対潜哨戒機川崎P-1を2機英国に送り、英国に売込みを図る
  1. 海上自衛隊所属の2機がロイヤル・インターナショナル・エアタトゥーに7月17日から19日まで出展され待望の国際デビューをする。地上展示のほか、飛行展示をRAFフェアフォード基地(グロスタシャー州)で行う。
  2. 日本は四発の同機を海外に売りこむ一環として英国の新型海洋哨戒機仕様に十分答えられると示したいところだ。英国は今年末に発表予定の国防戦略計画で新型哨戒機の必要をうたうと見られる。
  3. 日本の国産軍用機が海外のエアショーに展示されるのは1997年以来はじめてのことで大きな意義がある。また、海外売込みを目指して海外での展示イベントに機体を持ち込むのは今回が初めてだ。
  4. 日本は軍用装備輸出規制を2014年に緩和している。.
  5. 1月の報道で日本は昨年のファーンボロ航空ショーでP-1の出展を検討していたと判明している。日英両国は防衛協力を模索する中で日本の新型シーカーヘッド技術を英国のMBDAメテオ空対空ミサイルへ応用することなどで協議が続いている。
  6. 川崎P-1はロッキード・マーティンP-3オライオンにかわる機体だ。2013年から運用が始まっている。2021年にかけ20機が納入される。
  7. もうひとつ日本が輸出を狙うのが新明和US-2水陸両用長距離パトロール機だ。
  8. 航空自衛隊が過去のエアタトゥーに出展しており、ボーイングKC-767空中給油機が2012年、2014年と続けて飛来している。
  9. ただし英国関係者の注目を集めるのはP-1だけではない。ボーイングは英海軍向けP-8ポセイドン哨戒機およびチャレンジャー(ビジネスジェットを原型にした海洋監視専用機の試作型を出展する。■


2015年7月7日火曜日

陸上自衛隊>米豪共同演習に初参加し、オーストラリアで


この件は陸上自衛隊も公表していないようです。(7月7日現在) 安全保障法制で国会が揺れる中で報道してもらいたくないのでしょうか。もしそんな内向きな姿勢があるとしたら嘆かわしいことですね。

Japan Joins US-Australia War Games Amid China Tensions

Agence France-Presse12:17 p.m. EDT July 5, 2015

SYDNEY — 7月5日に開始された恒例の米豪合同軍事演習に日本がはじめて参加している。
  1. 演習は「Talisman Sabre」の名称で二週間に渡りクィーンズランド州と北方特別地域にまたがり展開し、米豪から3万名が陸海空の作戦を実施する。
  2. 陸上自衛隊から40名が米軍部隊に加わり演習に参加する。またニュージーランドも500名を派遣する。
  3. 「とても重要な同盟関係だ」とトニー・アボット豪首相はUSSブルー・リッジ艦上で米豪関係を念頭に発言している。「重要な関係だが、今日では世界各地で多くの課題に直面している。とくに中東で」
  4. 今回の演習は六回目で中国が地域内で存在を増す中での実施になった。
  5. 中国は南シナ海で人工島や施設を建設し問題を起こしている他、東シナ海でも日本と尖閣諸島をめぐり対立している。
  6. シドニー大学で中国専門家のジョン・リーJohn Leeは「微妙なメッセージが色々なレベルで出ている。米国は同盟国と中国に対応するべく密接に連携している」と語った。「これまでより強圧的になっている中国と向きあう国には大きな問題で、中国が巨額の軍事費を投入して装備を強化し、南シナ海で特に主張を強めていることが問題だ」
  7. 中国は南シナ海での活動への米国からの批判を一蹴している。5月のシャングリラ対話の席上で、中国は主権を行使しているにすぎないと主張。
  8. 米国が展開中のアジアに「軸足」を移す外交政策へは中国が苛立ちを募らせており、米海兵隊はオーストラリア北部に定期的に駐留を開始している。そこで日本が演習に参加することを中国は不快に感じても意外には思わないはずだと専門家は指摘する。
  9. オーストラリアは日本との関係強化をこの数年間進めており、昨年7月にオーストラリアを公式訪問した安倍晋三首相をアボット首相は「とても身近な友人」と表現した。
  10. オーストラリア政府は日本からそうりゅう級潜水艦数隻の導入を検討しており、実現すれば米国製ウェポンシステムを搭載するとリーは見ている。
  11. 「日豪の安全保障協力関係は引き続き強化される」とアンドリュー・デイビス(オーストラリア戦略政策研究所主任国防アナリスト)は演習に日本が参加する意義を語った。
  12. 「かれこれ十年間にわたり続いてきたが、ここにきて勢いが増してきた。オーストラリアと日本はともに軍事面で協力できる可能性を模索している」.
  13. 同時に米国がこの地域で展開する戦略方針は中国の動きが表面化する前から変化を遂げており、二国間協力より多国間同盟関係を重視する方向に変化しているとデイビスは指摘する。
  14. オーストラリアの他の同盟国にはシンガポール、マレーシア、インド、ベトナム、フィリピンがあり、今回の演習には好意的な態度であり、日豪共同作戦でも同様だろうとリーは見ている。
  15. 「米国ならびに強力な同盟国へ中国に対応してほしいと見るが今回の演習を好意的に捉えると疑いがない」
  16. 日本の参画には国内政治状況も作用していると、ディーキン大学アジア安全保障問題を専門とするクレイグ・スナイダーは指摘する。安倍内閣は地域大の安全保障への関与を増やそうとしているからだ。■

2015年7月4日土曜日

★F-35>F-16に敗れた模擬空中戦結果を受けて米空軍主流派はこう見解を示している



本ブログはF-35に批判的な論調を展開していますが、前回のドッグファイト結果記事を掲載したところ相当の反響がありました。いただいたコメントはともに実施条件がおかしい、F-35の性能はそんなんじゃないとまるでメーカー広報のような論調でしたが、以下の新しいエントリーも空軍の見解を反映して同じ論調になっているのは実に興味深い点です。問題はF-22とペアで運用できるのは米空軍だけであり、その他各国はそんなぜいたくはできないこと、さらに実機の第一線配備がまだ実現していないことです。戦闘機に多額の投資をすることがほかの装備調達にどんなストレスを与えているのかが問題であり、2020年代にかけて西側の空軍力が実力ダウンにならないことを祈るばかりです。

F-16 Vs. F-35 In A Dogfight: JPO, Air Force Weigh In On Who’s Best

By COLIN CLARKon July 02, 2015 at 2:45 PM

F-35 and F-16
WASHINGTON: ステルス機の時代にドッグファイトは重要だろうか。F-16がF-35をドッグファイトで凌駕したらどうなるのか。初期型のF-35がF-16の後期型に対し優位に立てないとしたらどうなるか。
  1. そんな疑問に答えていこう。War Is Boringが問題の文書を入手した。F-35パイロットによるF-35対F-16のもぎ空中戦の初期評価内容だ。デイビッド・アックスDavid Axe のスクープだ。F-35のテストパイロットはF-16が殆どの場合でF-35を凌駕したと近接交戦の模様を伝えており、これは一般人がドッグファイトと呼ぶものだ。
  2. ただし事態はちょっと複雑だ。もちろんF-35パイロットがドッグファイトで負ければ大変だ。しかし、空軍や海兵隊のパイロットと話をしてみると、ハリヤー、F-18やF-16の操縦経験からF-35は優れた機体であると異口同音に話す。USSワスプ艦上でこの話が出た。USSエンタープライズの艦上でも同じで、ペンタゴン内部でもF-35とF-16を生産するフォートワースでも同じだ。
  3. 機体外部に兵装を搭載しないF-35が大型燃料タンクを外部に装着したF-16Dに対し優位にたてないとしたら皆どう言うだろうか。聞きたくもなるというものだ。F-35のステルス性能とセンサーは敵機を先に探知し、武装を敵機にロックして気づかれないうちに撃墜できる。
  4. 軍高官やパイロットからF-35が実戦でどんな活躍を示してくれるか期待が寄せられており、少なくとも半ダースのパイロットがF-35はF-18やハリヤー、F-16とは比べ物にならないと発言している。もし大規模戦闘が勃発した場合、最初の10日間でF-35がどんな動きをするかについてマイク・ホステジ大将(退役)(航空戦闘軍団司令官)はこう語っている。「開戦直後はグラウラー、F-16やF-15Eは戦場に送らない。代わりに第五世代機を送る」とし、同時にF-35はドッグファイト用には送らないとも発言。高性能統合防空システム(IADS)であるロシアのS-300やS-400の除去に向けられる初の米軍機だという。その後に進入し敵の戦闘機と近接戦闘をするのはF-22だ。
  5. 「F-35ではF-22と同等の速度、高度は無理だが、ステルス性ではF-22に勝る」とホステジは語っている。「F-35は敵地に侵入して地上目標を除去するのが役割だ」 事実、開戦初期ではF-22なら2機あれば実施できるミッションをF-35だと8機必要になる。
  6. F-35のレーダー断面積はF-22より相当小さいが、だからといってF-35がF-22より勝っているとはいえないとホステジは指摘。デスクに座ったままの将軍のコメントだろうとたかをくくる向きにはホステジはF-22のほかF-15とF-16のほぼ全部の型の操縦経験があると指摘しておこう。
  7. もうひとりはF-35の開発過程を内部から見守り、戦闘経験が豊かなデイブ・デプチュラ(空軍協会のミッチェル研究所所長)だ。デプチュラもF-15の操縦経験があり、イラクとアフガニスタンで合同任務部隊を指揮している。
  8. デプチュラは今回のテストパイロットの発言に対して「興味をそそるが、実際の作戦レベルになるとF-35が持つ大きな優位性とは関係がない話だ。つまり、低視認性、センサー性能、情報統合機能によりF-35は旧式機に対し相当の優位性を持つ」
  9. デプチュラは「F-35反対派は前世紀の空中戦にこだわっており、F-22やF-35が提供する情報面での優位性については理解できないのだろう」という。
  10. デプチュラはF-35やF-22で「戦闘機」の表現を軽視する。「これまで長年にわたり発言しており、今後も言い続けますが、第五世代機は戦闘機ではありません。『センサー搭載発射機』であり、各種の脅威に対応し、F(戦闘機)、B(爆撃機)、A(攻撃機) RC(偵察機) E(電子機) EA(電子攻撃機)、AWACSの機能を有する機体です」
  11. デプチュラはF-35一機で「従来型の機体数十機分の仕事ができ、従来機が数十機束になってもF-22やF-35一機ないし二機の仕事をこなせない」という。ドッグファイトは航空戦の必須条件ではないともいう。敵に発見される前に撃墜すればよい。「結論は、すべては情報だということです」
  12. これに対しF-35共同開発室は公式な声明を発表している。
  13. 「F-35の有する技術の狙いは、敵を発見し、発射し、長距離で撃墜することであり、目視のドッグファイトは除外している。F-35四機編隊でF-16四機編隊に交戦するシミュレーションを何回も行っているが、F-35が毎回勝利を収めているのは優れたセンサー、兵装、ステルスによるものだ」”
  14. そしてJPOからは今回のテスト機には最新のミッションシステムズソフトウェアが搭載されていないことに注意を喚起している。このソフトは相当の距離から敵を捕捉するものだが、テスト機には搭載されていないため、パイロットはヘルメットを介した旋回、標的、発射ができず、つど機体を目標に合わせる必要があった」
  15. 空軍少将ジェフリー・L・ハリジアンF-35統合室長の公式見解は簡素なものだ。「同機の操縦取り回しについて結論を出すのは時期尚早である。F-35は現在配備中の戦術戦闘機と操縦性において同等の性能を発揮できる設計だ。これによりF-16では生き残りが不可能な環境でも作戦を実施できる機体になっている。」 ホステジも実質的に同じことを昨年発言していた。では今回の結果から無難な結論はこんなところだろう。F-35はトップクラスのドッグファイト戦闘機ではない。なぜならもともとそのための設計ではないからだ。また敵を長距離から狙い撃破する設計で、敵がF-35を探知する前に撃破するのでドッグファイトは設計時に想定していない。■