2016年10月26日水曜日

B-21選定理由を公開した米会計検査院


LRSBの選定結果発表からもう一年ですか。ボーイング箱の発表で納得するのでしょうか。それはともかくちょっと気になるのはノースロップ、ボーイングともに相当低価格を提示してきていたということで、固定価格による調達を理解した上での提示とすれば新型設計機はファミリー構造となるので将来にかけて十分利益を計上するつもりだったのでしょうか。それだけにボーイングとしては収益源が手元に残らないことが我慢できなかったのでしょうか。次代戦闘航空機が大型化するという予想も出てきた中で、B-21がどんな機材に進化していくのか、興味をそそられるところではあります。

Aerospace Daily & Defense Report

USAF’s Bomber Decision Came Down To Cost

Oct 25, 2016 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report
http://aviationweek.com/defense/usaf-s-bomber-decision-came-down-cost

USAF

米空軍が先に選定した次世代ステルス爆撃機案でノースロップ・グラマン案を採択し、ボーイング主導のロッキード・マーティンを退けた理由はノースロップが提示した価格が相当に低かったためと判明した。米会計検査院(GAO)が発表した。

ノースロップが提示した技術・製造・開発(EMD)段階の価格水準は「同社の社内資金投入決定」によりボーイング案より「相当低い水準」だったとこのたびGAOが公表した大幅編集済み資料にある。これはボーイング、ロッキード・マーティンによる異議申し立てでGAOが開示した資料の一部だ。ノースロップがEMDで低価格を提示し同社自己資金ならびに労務費および労務費の値上げ分を吸収する構造を提示したとGAOはしており、いずれもボーイング提示水準を下回っていたという。実際の金額は編集され見れない。

両陣営ともに政府想定水準を下回る金額を提示し、空軍は最終提示額は新型ステルス爆撃機製造の設計、技術開発費用として「非現実的」と判定している。

「両提示案ともに最低評価価格を実現すべく意欲的な努力をした内容と思われる」との選定決定根拠文書にあるとGAOは紹介。「両提示案ともに提示EMD価格では必要なEMD作業を実施できるとは確約していない」

だが空軍はリスク覚悟でコストと日程案を了解したうえで先行価格を重視した。両陣営のEMD提案は当初は「受け入れがたい」内容とされたが、交渉の結果、両提案内容ともに最終的には受理されたものの、弱い点とリスクは残ったままだった。空軍はボーイング最終案で4点、ノースロップ案で10点の弱点を指摘している。

空軍はその中で低価格提案を採択するリスクは十分承知しており、ノースロップB-21「レイダー」が予定通りの開発製造ができないことも理解しているとGAOは説明。

「空軍には開発日程が途中で狂う可能性をある程度想定している」とGAOはまとめている。「ただし、空軍はそれでもノースロップ案の方が同社の(削除)的な手法で(削除)により実施可能と結論づけ、契約内容が実現しないリスクは増えないと結論づけた」

ノースロップ提示案は「コスト・価格双方で相当有利」なため空軍は最終的に同社案を採択したとGAOは結論。

GAOからはさらにボーイングによる不服申立てを酷評している。GAOは公式に同社不服を今年2月に却下した。ボーイングの主張では空軍はノースロップ案に潜むリスクを正しく評価セず、本来ならばノースロップ案を採択すべきではなかったと主張。GAO箱の主張に対し根拠が無いと反論。さらにボーイングから空軍が同社のコスト削減策を正当に評価せず、かわりに間違った過去データで提案内容を評価したと主張した。GAO箱の主張に対しても根拠なしと判定した。

ボーイングからは同社提案が不当に扱われたとの不服が出たが、同社提示価格も通常の新型機提案の価格水準を下回っていたとGAOは指摘している。ボーイング提示は近年の新型機案件では二番目に低い水準で、B-1、B-2やB-22より低く、唯一C-17だけyリ高い水準だkったとGAOは特記している。

「ノースロップ提案には構造上の利点が顕著である他、労務費面や社内投資相当分を吸収する決定があったことが結論に大きく響いた」とGAOはまとめた。「ノースロップが(低率初期生産)段階で大きく低い価格を提示したことでボーイング案では費用効果面出最良の結果は望めそうになくなり、ボーイングからコスト面の評価で先入観があるとの不服が出たが覆すことは不可能となった」

B-21の調達は二部に分かれる。EMD段階ではインセンティブ付きで実費プラス費用を対象とする契約内容であり、固定価格制度で初期生産分5ロットを賄う。空軍は100機調達予定であるが、機体価格上限を一機あたり550百万ドルと定めている。

「GAOによる裁定には選定評価の詳しい内容分析があり、B-21契約がノースロップ・グラマンに2015年10月に下った理由がわかり、空軍が慎重かつ統制のとれた過程を経て納税者に納得の行く裁量の価値を生む決定をしたことがわかる」と米空軍は報道官マイケル・ハーツォグ大尉が述べている。

ノースロップ広報のランディ・ベロートもGAOの結論で空軍が正しい決断をしたことが裏付けられたと述べた。「今回公表の資料では極秘部分や機微情報を削除した上でGAOが厳密かつ慎重に米空軍が行った異例の完璧を目指した選定過程を検証しており、最高性能にして負担できる価格帯の機体を選定したことがわかる」■


北朝鮮の動きに韓国は核武装に進むのか、目が離せない朝鮮半島情勢にもっと敏感になるべき日本


韓国がいろいろな意味で危険な状況に入りつつあります。さんざん嫌な目にあった日本ですが、今こそ安全保障の観点から韓国、朝鮮半島を注視し積極的に関与していくべきです。世界でここまで危険に溢れた地域の近隣に位置する日本は不幸とは言え、避けることのできない事情です。それにしてもオバマ政権が非核化を訴えた結果、歴史上まれに見る失態を北朝鮮で発生させ、しかも何もしないまま退陣するとすれば言うことばがありません。8年間が空転したと言われても仕方ありません。トランプ候補が日本、韓国の核武装を口にしてその時点では騒ぎとなりましたが、結果としてタブーではなくなりつつあるのは面白い事実です。偏見でしょうか。

The National Interest


Why North Korea's September Nuclear Test Is Different

South Korean missiles. Flickr/Creative Commons/Daniel Foster
Pyongyang may have completed its long and tumultuous path to nuclear missile development.
October 23, 2016

  1. それはあっけない展開で北朝鮮が核爆弾を点火し、米国がより強硬な制裁を求める。何度も繰り返される応酬には「緊急ニュース」と呼べるのか疑問が生まれているだろう。
  2. だが今回は事情が異なる。北朝鮮の最新の核実験は9月9日で広島型原爆を上回る威力と伝えられている。また同国の国営通信の発表では核兵器小型化に成功しミサイル搭載が可能となったとしている。真実ならば北朝鮮の核ミサイル配備に道が開けたことになる。
  3. さらに事態を悪化させるのが北朝鮮の核実験には別の憂慮すべき挑発行為が先行していたことだ。8月24日に同国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験に成功し、飛翔性能1,000キロを実証したことで韓国、日本、及び域内米軍基地が射程に入る。さらに9月5日には新型地上発射式弾道ミサイル(GBLM)三発を日本海に向け発射している。うち少なくなとも一発はミサイル防衛を突破できる技術があり、韓国に配備予定の終末段階高高度広域防衛システムTHAADに対抗しようとしている。
  4. 総合すると、北朝鮮が三段階で挑戦していることがあきらかだ。それでも今のところ米国、韓国から引き出せたのは僅かな反応にすぎず、制裁強化と防衛協力の強化ぐらいだ。
  5. 北朝鮮の脅威の増加により米国もこれまでの「戦略的忍耐力」の継続だけではすまなくなってきた。これはオバマ政権が北朝鮮問題で採用した政策だ。反対に米国は三段階政策で対応を求めらている。北朝鮮による強硬策を食い止めるだけでなく、域内各国を巻き込んで行動させることだ。
  6. まず日本、韓国との3国間情報共有合意の強化があげられる。同合意は2014年12月に締結済みで、現在は北朝鮮のミサイルだけが対象となっている。日韓の緊張で内容は総合的になっていないが日韓関係が雪解けとなる一方で北朝鮮の脅威が増大する中で、3国間関係の拡大で時期が熟しており、2014年合意内容は拡大されよう。
  7. 第二にワシントンは韓国のミサイル防衛のみならずミサイル攻撃能力整備を前倒しで行うべきだ。THAAD配備が目前に迫り、韓国は多重的かつ実効性のあるミサイル防衛体制を整備しつつある。だが北朝鮮の兵力規模とミサイル技術の進歩を見るとTHAADだけでは不十分だ。韓国防衛の強化に加えてワシントンは韓国政府と協議の上、韓国の弾道ミサイル能力整備での制限を緩和し、北朝鮮への抑止力とすべきだ。
  8. 現時点で韓国の弾道ミサイル保有は射程800キロ未満でペイロード500キロまでに制限されている。(短距離ならペイロード増加は可能) 北朝鮮ミサイル施設は大多数が北部に集中しており、韓国が北朝鮮ミサイル脅威を無力化することは困難だ。そこで韓国の攻撃能力を引き上げれば北朝鮮には米国が韓国防衛に真剣であり、開戦となれば米側の勝利が確実だと理解させることになるはずだ。
  9. 三番目の方策は議論を呼ぶだろう。韓国内に米戦術核兵器を再配備させることだ。韓国では北朝鮮核実験の継続を見て、再び開戦の事態が生まれることへ懸念が増えている。そのため非核国家としての韓国で与党セヌリ党内に米核兵器の再配備を求める声が上がっている。1991年に一旦撤去されたが韓国には核兵器の国産開発を求める動きもある。今のところは核不拡散条約への違反や対米関係の悪化の可能性は韓国では真剣に議論されていない。ただし北朝鮮の動きを止めることができなければ、韓国としても国産核兵器開発の誘惑にかられ、結果として域内の安定が損なわれかねない。この防止策として韓国に戦術核兵器配備を提示する可能性がワシントンで真剣に検討されはじめている。
  10. 同じく重要なのは中国に与える意味だ。中国は北朝鮮の最重要同盟国で長年に渡り中国は北朝鮮の動きに積極対応をしない方策を取っており、決定的な制裁より政治解決の道を好んできた。戦術核兵器配備の話題が浮上すれば北朝鮮脅威が米政府にどれだけ真剣に写っているかが北京にも見えて取れ、中国から迅速対応が生まれ、北朝鮮の核脅威問題への関与が期待できるかもしれない。
  11. 詳細は別にしても、北朝鮮の挑発に対して米国に新戦略方針が必要なのは明らかだ。北朝鮮が好戦的態度を増し戦略兵力も整備している中で受け身姿勢のままでは許されない。ワシントンには平壌への対抗策が必要であり、域内同盟各国へは北朝鮮侵攻への防御体制を再保証する必要があるのだ。しかも早急に。■
Alexander Kim is a researcher at the American Foreign Policy Council in Washington, DC.
Image: South Korean missiles. Flickr/Creative Commons/Daniel Foster


2016年10月25日火曜日

米海軍>強襲揚陸艦ワスプの佐世保配備、F-35Bの岩国配備とセットで大幅に上がる海兵隊作戦能力


2017年は大きな変化の年になります。F-35Bの初の海外配備が岩国で、同機を運行できるワスプが佐世保に来る、これは中国への抑止力として大きな効果がある動きです。なんでも反対派・平和国家日本を願望する向きはF-35B、ワスプ双方に反対されるおつもりなのでしょうか。


USS Wasp to Japan Next Year in Support of Marine F-35B Squadron Next Year; USS Bonhomme Richard to San Diego

October 24, 2016 6:56 PM

Sailors celebrate the U.S. Navy's 241st birthday aboard the amphibious assault ship USS Wasp (LHD-1) on Oct. 12, 2016. US Navy Photo
米海軍発足241周年を艦上の人文字で示すUSSワスプ(LHD-1)乗組員。2016年10月j12日。US Navy Photo

米海軍は大型強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)の母港をノーフォークから佐世保に来年変更することがわかった。

ワスプはUSSボナムリチャード(LHD-6)と交代し、前方配備部隊となる。なおボナムリチャードはサンディエゴを母港にする。


「USSワスプは改修工事を終えて海兵隊が運用するF-35B、短距離離陸垂直着陸機を運用できることで広範な作戦範囲が実現する」と米海軍艦隊司令部が発表。

An F-35B Lightning II takes off from the flight deck of the amphibious assault ship USS Wasp (LHD-1) on May 25, 2015. US Navy Photo
F-35BライトニングIIが強襲揚陸艦USSワスプから離陸する。2015年5月25日撮影。 US Navy Photo

今年始めに海兵隊から第211海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA-211)「グリーンナイツ」を岩国海兵隊航空基地に移動させ前方配備中の第31海兵遠征部隊(MEU)の支援に当たらせるとの発表があった。


「F-35B初の配備は西太平洋に展開中の第31MEUで17年秋になる」と第三海兵隊航空部隊司令官マイケル・ロッコ少将がUSNI Newsに今年5月語っていた。

「同地に飛行隊を移動させ、まず2017年1月に10機、さらに同年夏に6機追加し、秋に艦が使用可能となる」とワスプへの機材搭載を言及した。

ワスプの日本配備はこれで二回目となり、前回は戦闘システムの不備のためほぼ10年近く運用できなかった経緯がある。

そこで同艦の戦闘システム全体の改良が大幅に行われてきた。

「ワスプには戦闘システム装備一式の改良としてMK 2個艦防御システム、SPQ-9B水平線探査レーダー、MK 57NATOシースパロウミサイル、艦載LAN・データリンクの性能向上が実施ずみ」と報道発表にある。

Sam LaGrone

About Sam LaGrone

Sam LaGrone is the editor of USNI News. He was formerly the U.S. Maritime Correspondent for the Washington D.C. bureau of Jane’s Defence Weekly and Jane’s Navy International. He has covered legislation, acquisition and operations for the Sea Services and spent time underway with the U.S. Navy, U.S. Marine Corps and the Canadian Navy.


ISIS無人機を電子手段で飛行不能にした米空軍


なるほど現在の無人機が遠隔操縦方式なので途中の接続を遮断すれば無人機が使用不能となるわけですか。これは野戦装備ですが将来自律飛行可能な新世代無人機が登場したらどうなるのでしょうね。(本ブログではドローンという言葉は極力避けています。もともとヒラリー・クリントンが多用して広まった言葉なので。意味はわかりますね)
Defensetech

Air Force Zaps ISIS Drone with Electronic Weapon


Battelle’s DroneDefender is a shoulder-fired weapon that uses radio waves to cut the link between the drone and its controller. (Photo courtesy Battelle)バテル研究所のDroneDefenderは電波で無人機と操縦者の接続を中断させる (Photo courtesy Battelle)

POSTED BY: ORIANA PAWLYK OCTOBER 24, 2016


  1. 米空軍がイスラム国の無人機を電子兵器で撃退したと空軍トップが明らかにした。
  2. 空軍長官デボラ・リー・ジェイムズは10月24日、空軍が小型武装無人機が過激派により飛行するのを「一二週間前に」探知したと述べている。
  3. 「現地の空軍部隊は小型無人機一機が飛行しているのを知り、極めて迅速にこれを激着いてしている。電子措置を使った」とジェイムズ長官は新アメリカ安全保障センター主催の会合で発言している。
  4. 「迅速に攻撃を加える方法の一例」と長官は述べたが、具体的にどんな手段を投入したかは述べていない。
  5. 同長官の発言は陸軍長官エリック・ファニングや海軍長官レイ・メイバスと並んでの場で出たもので軍が小型だが威力を発揮しそうな無人機への対応を迫られていることを浮き彫りにした形だ。
  6. 「現時点で最高の優先順位は中東で無人航空システムの存在が高まっており、安価でインターネット操縦が可能な装備がシリアやイラクで飛び回るようになり損害が発生しかねないことだ」(ジェイムズ長官)
  7. 「そのため知恵を合わせこの課題に迅速に対応し、撃退方法を考えているが、必ずしも新規装備の開発にならない」
  8. ジェイムズ長官によればISISが既存無人機や模型飛行機に時限爆弾をつけた例外楽、シリアで見られるという。先週も米政府関係者が別の事案に触れ、これをニューヨーク・タイムズが先に報じたが、クルド人戦闘部隊で二名が北部イラクで撃墜した模型飛行機を分解しようとする中で死亡している。
  9. 空軍長官が言及したのは米国が電子兵器装備を改造してこの急増する脅威対象に簡単に対応できる点だ。
  10. 電子戦は東部ウクライナでごくあたりまえに実施されている。数ヶ月に渡りロシアが支援する分離独立勢力が電子手段でウクライナ軍の商用無人機による偵察を妨害している。このことは2014年にわかり、米軍がウクライナ軍を訓練する中で警戒している。
  11. 今月始めには米陸軍欧州部隊司令官から対無人機兵器でロシアに対処したいとの発言が出ている。ベン・ホッジス中将は非運動兵器技術から冷戦時の旧式技術までなんでも使いたいと述べている。
  12. 中将は新兵器の名称を述べなかったが、バテル研究所のDroneDefenderは肩載せ発射式で無人機を電波妨害で使用不能とし、イスラエル開発のレーダーと併用し数キロメートル先から探知可能できる装備で陸軍がテスト中だ。
  13. 「非運動手段は多数あり、その他の手段も登場するのは確実だ。だが今この時点で装備が欲しい」と同中将は報道陣に陸軍協会会合で語っている。「これまでは脅威と呼べず短距離防空は心配する必要がなかった」とし、「今やUAVがあり、UAV対抗手段が必要と痛感している」
  14. ペンタゴンは新型無人機対抗手段の研究開発を加速しヨーロッパやISIS戦に投入したいとしているが、上記バテル研究所の装備がすでにイラクで投入されているとの報道がある。■
— Brendan McGarry and Matthew Cox contributed to this report.


テキストロン自社開発のスコーピオンの最新状況


かねてから注目しているテキストロン自社開発のスコーピオンでニュースが入ってきました。米空軍も自ら採用する意向はないようですが、輸出促進のため機体性能の実証を行うようです。いろいろな麺で常識を破る機体ですが今後どう発展するのか、またテキストロンがどこまで自社負担で開発を進められるのか注目したいと思います。まずJane’sが伝えている内容から。

Scorpion jet performs first weapons trials

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
21 October 2016
  
The Scorpion jet seen firing a Hellfire air-to-surface missile during the weapons tests. Source: Textron

テキストロン・エアランドは自社製品スコーピオンで初の実弾空対地攻撃試射をニューメキシコのホワイトサンズミサイル射爆場で10月中旬に実施した。
10月10日から14日にかけて行われた試射ではロッキード・マーティンAGM-114FヘルファイヤII空対地ミサイル、BAEシステムズの高性能精密攻撃兵器システム(APKWS)および非誘導方式のハイドラ70ミリロケット砲弾を試した。地上配備レーザー照準器も初めて使われ、L-3ウェスカムWescamのMX-15Di電子光学赤外線方式 (EO/IR)センサー装置を使用した。
2013年9月に発表されたタンデム複座方式双発機のスコーピオンは各種ミッション用に開発され、対ゲリラ戦、国境監視、海上警戒、麻薬流入阻止、防空用途パッケージをそろえ、機体価格20百万ドル、運航時間単価3千ドルを実現している。
機体中央にはペイロード格納庫を確保し、各種センサーや兵装類を搭載できミッション各種に対応する。また六ヶ所の主翼下ハードポイントもありセンサーの追加搭載、燃料増槽、兵装類を搭載できる。エアーショーではテキストロンG-CLAWやテキストロン/タレス開発のフューリー誘導滑空弾の搭載が確認されている。
同社発表資料によれば最高速度450ノット、実用上昇限度45千フィートでフェリー最大距離4,450キロとなっている。
飛行実証用の機体が一機製造され、量産仕様の機体は間もなく初飛行の見込みだ。■

一方、Defense Newsは次の様に伝えています。


Textron Begins a Limited Production Run of Scorpion Jet, But No Contract Yet

By: Valerie Insinna, October 20, 2016 (Photo Credit: James Way/Defense News)
WASHINGTON —テキストロン・エアランドが量産型スコーピオンの限定生産を開始した。 同型の初飛行は今年末に行われる。同社トップが10月20日に発表した。
同機にはまだ発注がなく、自社資金で完全新規設計の同機を2013年から国際展示会でPRしている。だが同機の兵装運用が実証されたことで今後は関心が高まると期待している。また米空軍も同機の性能を評価することで合意していると同社会長兼最高経営責任者スコット・ドネリーが述べた。
「現在のままなら少数生産を開始し生産工程の実効性を検証できます」(ドネリー)
テキストロンはスコーピオンを高性能だが低価格のISR・攻撃機材として開発した。機体価格20百万ドルで飛行時間あたり経費は3千ドルと同社は発表。ドネリーは初期生産の機数を述べなかったが、生産拠点はカンザス州ウィチタの現有施設をそのまま利用する。これまで二機が同地で完成しているが、量産型とは異なる。
「商談はたくさんありますよ。機体の真価を示す機会がたくさんあると思います。顧客候補は多数あり、限定生産の開始を前倒しします。展示飛行用にも機材が必要ですからね、その後成約を期待します」
少数生産が開始すれば同社の製造工程の実効性も証明でき、米空軍の希望にも応えられるとドネリーは述べた。
空軍は7月に協力研究開発合意Cooperative Research and Development Agreement (CRADA) をテキストロンと締結し、同社負担でスコーピオンの性能検査を行う。その目的は米国防企業の国際販売を容易にすることで該当軍用機は米軍が採用していなくてもよい。ドネリーによると合意成立して急に顧客の関心度が高まったという。
「空軍とCRADAが締結できたことで型式認証へ道が開いたと思います。顧客の動きも活発になっていますよ。そこで同機の性能を実証し、営業活動とフライトテストを活発化させていきます」
耐空性証明がいつ取得できるか明確な日程は不明だが、ドネリーはテキストロン社員はライト・パターソン空軍基地とともにテスト日程、データ検証の詳細を詰めているという。
他方で同社はフライトテストに備え、兵装運用テストを実施しており、ドネリーは量産型機体の初飛行は「間もなく」としている。
スコーピオンは初の兵装運用実証をホワイトサンズ・ミサイル試射場で行ったと同社は発表。L-3WESCAMのMX-15Diセンサーが照射するレーザー誘導でハイドラ-70非誘導型2.75インチロケット弾、BAEシステムズの高性能精密攻撃兵器システム(APKWS)、AGM-114Fヘルファイヤミサイルをそれぞれ発射した。
スコーピオンのテスト並びに生産の前倒で同社負担経費も当初より増え収益を圧迫するとドネリーは認めた。
ただし同機に強い関心を示す顧客が生産開始の段階であらわれれば自社負担リスクは減るし、同社としても営業活動やテストフライトを積極的に進められるとドネリーは述べた。
可能性の一つとして英国の次期練習機があるとテキストロンエアランド社のビル・アンダーソン社長はDefense Newsに7月に述べていた。今年の夏にタレスはキネティックQinetiQと合同でスコーピオンを練習機機材に選定した。キネティックの広報資料によればスコーピオン選定の理由は高性能、信頼性がありながら機体価格が低いためとしている。■

2016年10月24日月曜日

★歴史に残らなかった機体 その3 YF-23



後世から見ればF-22およびF-35の採択が伝統的な単座小型戦闘機の時代の最後を招いたといえるのかもしれません。確かにYF-23の方が未来的な機体だったようですが、採択されていれば戦闘機主義が温存されるだけの結果になっていたかも。筆者は戦闘機が頂点の空軍戦力構造や組織構造には疑問を感じています。皆さんはどう思われますか。


A Look at the Plane that Lost Out to the F-22

ROBERT FARLEY
Yesterday at 3:27 AM


  1. 高性能戦術戦闘機(ATF)競合選定は冷戦末期に実施され、驚異的な戦闘機設計が二案生まれた。結局、選定に残ったのはロッキード・マーティンF-22ラプターで21世紀初頭では最高性能の制空戦闘機であるといわれる。敗れたノースロップ・グラマンマクダネル・ダグラスYF-23は現在はトーランス(カリフォーニア)とデイトン(オハイオ)の両博物館を飾っている。
  2. ではペンタゴンはどのようにF-22を採択したのか。その影響はどうあらわれているのか。内情を知ることは不可能だが、供用中のF-22ラプターがペンタゴンの苦境を数回に渡り救ったのは確かだろう。
  3. ATF競作の背景には1980年台初頭にソ連がMiG-29とSu-27の新型機を投入し米空軍の「ハイローミックス」F-15/F-16に対抗する動きを示したことがある。ATFは米空軍の優位性を改めて確立し、特にステルスでソ連を一気に引き離す狙いがあった。
  4. そのためATF候補のいずれにせよ成功をおさめることが支配観念となった。選考途中でソ連は崩壊し、ヨーロッパ大手は同じ土俵(ステルス、スーパークルーズ、センサー融合)で競合せず、F-22またはF-23が21世紀最高の戦闘機になるのは確実だった。問題はどちらが投資対象として残るかだった。それぞれ有利な側面があった。YF-23はスーパークルーズ性能が抜きん出ており、ステルス性能もF-22を凌駕していた。F-22はより簡易な構造で設計は手堅いものがあったが、機動性が優れ、高性能ドッグファイターになっていた。
  5. F-22選定の背後に政治と行政の要素がからみあっていたのはデイヴ・マジュンダーの指摘通りだ。B-2とA-12の両案件でノースロップ、マクダネル・ダグラス両社に振り回されたペンタゴンはロッキードを優遇した。米海軍はF-23を忌避し大幅改修したF-22の海軍仕様に期待していた。つきつめればF-22(およびある程度までロシアの対抗策PAK-FA)はジェット時代の制空戦闘機の究極の姿といってよい。想定される空戦場面でいかなる敵も撃破しながらステルス特性を活かして危険な状況でも交戦(あるいは退避)が可能だ。
  6. ATF選定がソ連崩壊と機を一つにしていなければ、YF-23に採択の可能性が十分にあったはずだ。同機の特徴は高度な内容で十分な性能と投資価値があった。さらにF-23をF-22と並行して生産していれば米国防産業基盤の温存には効果が高かっただろう。ロッキード採択でボーイングとマクダネル・ダグラスの統合に繋がったのは明らかだ。
  7. YF-23ではF-22ラプターを悩ませた問題とは無縁だった。コスト超過もなく、技術問題もなく、ソフトウェア不具合やパイロットを死に追いやった吸気配給装備の問題もなかった。対テロ戦が拡大する中でロバート・ゲイツ国防長官(当時)はF-22生産を187機で打ち切ったが、問題が山積する中の決断だった。理解できる決定とは言え、米空軍は戦闘機の機数不足をF-35だけで補う必要に迫られた。
  8. YF-23の開発が順調だったなら(大きな仮定の話だが)、同機の供用開始時にさほど困難な状況は生まれていなかったろう。だがYF-23の方が革新的設計(つまり高リスク)で、期待単価がやや高かったため、、問題なく供用開始になっていたか疑わしい。その結果、生産が滞れば米空軍にはさらに少ない機数しか使えない状況になっていたかもしれない。
  9. YF-23には第六世代戦闘機と言って良い特徴があり、空軍が想定する「長距離戦闘機」としてB-21レイダー爆撃機の護衛に同行できる性能があった。V字尾翼は初期のコンピュータ解析で次世代戦闘機として採択されたと言われる。ボーイングが新型戦闘機を設計する際にF-23の経験則をひっぱりだしてくるのはまちがいないだろう。
  10. YF-23試作機のうち一機はオハイオ州デイトンにある米空軍博物館内の不採択機格納庫(旧研究開発ハンガー)に鎮座していた。同機の隣にはXB-70ヴァルキリーが展示されており、同博物館の目玉となっており、両機とも最近新たにオープンした四号棟へ移動し、今後も違う未来の一部となっていたかもしれない機体として来場者の注目をあつめるだろう。同時に米航空兵力の産業面、組織面での現実を表す象徴でもある。■

Robert Farley a frequent contributor to TNI, is author of The Battleship Book .He serves as a Senior Lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat


2016年10月23日日曜日

当ブログ読者の皆さんへ ご注意ください。

軍事情報センター が当ブログをYouTubeにコピーして画像を加えながら当方の文章をほぼそのままスクロール表示しています。

当方のブログも各種サイトの記事を極力そのままの形で独自に訳出していますが、文章の構成など手を加えている上に、必要なら当方のコメントを冒頭に載せています。


軍事情報センター はそんな構造も理解せず、独自にアップロードしているようですが、

F15 じゃなくて F-15 でしょ。

そんな基本も踏まえていない 軍事情報センター はどこか怪しい匂いがするので皆さんご注意ください。

★★US-2インド輸出案件>機体価格で日印合意形成の模様



本件は本邦ではまだ報道がないようですね。値下げまでして妥結したとなればインドの粘り勝ちですね。日本政府は新明和に補てん処置をするというのでしょうか。改めて政府が絡むと防衛装備の商談がまとまらないとの印象がこれでできてしまうと厄介です。

India Resolves US-2 Aircraft Price Issue With Japan

By: Vivek Raghuvanshi, October 20, 2016

NEW DELHI — 日本インド間で初の防衛装備移転となるUS-2案件で交渉が二年間空転していたが日本から価格面で譲歩しインド海軍向け12機調達が前進することになった。インド国防省の関係者が明らかにした。
  1. 「機体単価を当初の133百万ドルから113百万ドルへ一割以上値下げする提案が日本からあり、総額13.5億ドル相当の政府間取引は最終段階に入った」と上記関係者は匿名を条件に語った。
  2. インド首相ナレンドラ・モディは2014年の政権発足後、初の外遊先に日本を選びインド海軍向けに新明和US-2購入の希望を公表した。だが日本側が機体価格の値下げを拒み交渉は難航していた。
  3. 本件に関し現地日本大使館はコメントを出していない。
  4. インド海軍関係者はインド洋での活動に同機を一日も早く導入したいとの希望を表明している。「現行機材で実施不可能な洋上活動中の海軍艦艇向け補給物資輸送任務に投入したい」
  5. 退役インド海軍提督で現在は国防アナリストのアニル・ジェイ・シンはUS-2導入で「本国から最大1,100キロ離れた戦略的に脆弱な島しょ部での有事に迅速対応できる」と期待している。
  6. インド洋、太平洋での中国影響力を抑え込みたいインドは日本との連携を強化するルックイースト政策を掲げており、今回の調達は大きな意味がある。
  7. 「戦略重要性は決して誇張ではない。日本としても戦後初の軍事製品輸出になるのではないか。インド日本間の戦略関係が深化する象徴となり、地政学上もインド太平洋で大きな意味が生まれる」とシンは述べている。
  8. 日本は1967年以来堅持してきた武器禁輸措置を2014年に方針変換しており、インドがUS-2を導入すれば初の防衛装備輸出案件となる。
  9. インド海軍がUS-2を導入すれば中国が今年7月に世界最大の飛行艇AG600を製造に成功したと発表した中で大きな対抗策となる。
  10. 「インドがUS-2機を導入する可能性が明らかになるとAG600試作機製造の優先順位は引き上げている。中国も同機をインドと同様の用途に投入するようだ。インドがインド洋にてUS-2を運用するように中国がAG600を南シナ海で使えば軍事上戦略上の均衡につながる」と上記インド海軍関係者は述べている。
  11. 「日本政府は日印防衛協力を戦略パートナーシップの延長上にとらえており、US-2調達が日印間の防衛協力以上の戦略的つながりの構築につながる可能性がある」
  12. アンクル・グプタはアーンスト&ヤング・インドの防衛アナリストで今回の商談について「インドと日本は長期間にわたる協力を国土インフラ整備で維持してきた。今回US-2導入が目前となり両国関係は戦略レベルに引き上げられる。機体一部が国内生産になれば現地製造技術が向上する」と述べた。■


★★次期制空戦闘機の姿は大型化、性能向上で現在の戦闘機概念を覆えす可能性

これまでもシンクタンクの想定で戦闘機が大型化するとの考えが示されていますが、米空軍内部でも同じ論調が生まれているようです。実現すれば第一次大戦から続く小型機=敏捷な空の駆逐者とのイメージが大幅に変わる可能性がありますね。一方で給油機等の支援機材の脆弱性が表面化してきました。頭の痛い話です。



War Is BoringWe go to war so you don’t have to

The F-22 Raptor’s Successor Will Be Bigger and Faster Than a Typical Fighter

The U.S. Air Force wants a plane with more range and a heavier payload in the 2030s

by DAVE MAJUMDAR
米空軍の次世代制空戦闘機が初期検討中で17年1月から18ヶ月かけ代替手段検討(AOA)を開始し、2030年代以降の空を制する新型機の性能内容を煮詰めていく。
  1. 2035年にはステルスF-22は機齢30年、F-15Cは供用開始50年以上になる。
  2. まだ空軍は次期制空戦闘機の性能で方針を決定していないが、上記を考えると空軍が侵攻制空戦闘機(PCA)と想定する機体はF-22やF-15では対応不能な脅威内容に対応する性能となるはずだ。
  3. 「将来登場しているはずの脅威内容は理解できています」と航空戦闘軍団で制空戦闘機中核機能開発チームを率いるトム・コグリトー大佐はNational Interest取材で答えている。
  4. 「現有の性能や今後導入予定の性能でどう対応するのか、もしギャップがあればそのときどんな新性能を開発して対抗すべきか検討しています」
  5. コグリトー大佐の説明ではPCAは将来の「各種性能ファミリー」の一要素となり、制空任務はその一部にすぎない。その他必要な機能に基地運営、兵站活動、通信、情報収集監視偵察、指揮統制があり、各種機体・兵装を既存並び新規開発装備を取り混ぜ実現していく。
  6. 空軍では制空任務は運動性兵器以外に非運動効果として電子攻撃やサイバー戦も想定していると大佐は説明。
  7. 基地運用や兵站活動はともすれば軽視されがちだが、近代航空戦では重要な要素で特にロシアの復活や中国の軍事力拡大の中で基地が長距離精密攻撃の対象になってきたことが懸念されている。
  8. その中で中国は一連の巡航ミサイル、弾道ミサイルを開発済みで西太平洋の米軍基地が狙われている。ロシアも長距離攻撃用のカリブル-NKやKh-101ステルス長距離巡航ミサイルを保有しており、米軍の欧州や中東地区基地が脅威を受ける可能性がある。
  9. 「各地から作戦活動を展開する必要があるのは明らかで基地の安全が必須だ。そうなると必要な場所より遠隔地から活動する能力が必要になってくる」(大佐)
  10. 米空軍は空中給油機の安全確保でも構想固めをしている最中で、将来の制空任務実現に必須とみているためだ。ロシア、中国ともに給油機を標的にして米主導の航空作戦を崩すことをを狙って来るのは必至と見ている。
  11. ロシア、中国ともに長距離空対空ミサイルで重要機材を攻撃することを想定している中で、米空軍は長期的にステルス給油機を開発するとしているが、中短期的には緊急対策として脅威軽減が必至としている。
  12. そこで米軍の対抗策として機材の後続距離、滞空時間を延長する事があるが問題は戦闘機の機体寸法に伴う制約条件だ。
  13. 「戦闘機は小型なため滞空時間に制限があることになりがちだが、根本から見直しこの問題に取り組む」とコグリトー大佐は述べる。
  14. 戦闘機の航続距離、滞空時間での制約は実際の作戦面でも明らかになっている。
  15. その例に2011年のリビア作戦があり、防空装備が旧式化していたにもかかわらず作戦が困難を極めたのは距離のせいだった。将来の機材も現有機同様の性能なら運用上大きな問題が再来する。
  16. 「リビアは難題でした。距離そのものが課題でした。イタリアから発進してシドラ湾まで3時間の飛行で、シドラ湾自体は1,100マイルの長さがあります。防空体制が想定より劣ることがわかったとは言え、戦闘機の速度を考えると遠隔地の距離そのものが課題となりました」
  17. そこで給油機の性能要求もPCA研究の一環で空軍は行っている。
  18. 「PCA要求性能の検討の一部として給油機問題も取り上げることになります。長距離機材があれば給油機部隊も縮小できるという人がいますが、反対に小型機運用で小型給油機を多数運用すれば有利になることもあれば不利になるかもしれません」(大佐)
  19. 戦闘機には他の問題もある。小型なためペイロードが限定されがちだ。現有のF-22やF-35が搭載する機内兵装量は少なく、将来の航空戦で制約条件となる。
  20. 「三時間四時間と飛んでも爆弾二発ミサイル二発しか搭載できず、基地へ戻るのではいかにも効率が悪い。そこでまたもや距離の制約条件が猛威を振るいます。でなければもっと長距離を飛んでミンションに必要な量の兵装を搭載しなくては」(大佐)
  21. そこで制約条件の解決策として将来登場するPCA機は大幅に大型機とすることがある。長距離を飛び大量の兵装を搭載するのだ。
  22. この距離、滞空時間、ペイロードの要求とステルス、電子戦能力、速度、操縦性他をバランスさせる必要があるが、空軍の求める性能内容には矛盾する要素がある。大型ステルス機で大ペイロードを搭載し長距離飛行させつつ鋭敏な操縦性をもたせるのは現状では技術的に大きな課題だ。
  23. とは言え新技術として適応型サイクルエンジンの開発はジェネラル・エレクトリックおよびプラット&ホイットニーで進みつつあり、上記の矛盾する性能内容の実現に一役買うだろう。
  24. 「可変サイクルエンジンが実現すれば機体は相当変わってくるはず」と見るのはジェフ・マーティン(ジェネラル・エレクトリック、第六世代戦闘機エンジンを担当)だ。
ハリウッド映画さながらのノースロップ・グラマンの考える第六世代戦闘機の姿。Northrop Grumman capture
  1. ステルスがPCAでも一定の役割を与えられるのは必至だが空軍は次世代制空戦闘機用に電子戦装備に重点を置いているのも明らかだ。
  2. 「2030年代以降で残存するためには電子攻撃能力が必至」とコグリトー大佐は述べる。PCAがステルス、電子攻撃、速度、残存性を筒減するのは確実だ。「バランスが必要です。残存性を図る対策はたくさんありますが」(大佐)
  3. 米空軍ではその他に指向性エネルギー兵器のような興味をそそられる装備も検討しているが、レーザーの可能性は認めるつつ技術がまだそこまで追いついていない。どこかの段階で空軍は開発中技術の搭載を断念すべきかの決断を迫られそうだ
  4. 「そこが新技術で悩ましくも魅力を感じるってんです」とコグリトー大佐は述べる。「選択肢は多くあり、新技術には将来の機体に波及する効果も期待でき、機体寸法の制約を解決する新しい可能性があります」
  5. 米空軍がPCA開発に乗り出す決定をすれば機材は2030年代中頃に運用開始できるはずだ。
  6. ロシア、中国等の潜在敵性勢力の能力が向上している中で現有米軍装備が脅威にさらされることが増えている。そうなると究極的に米軍は新型制空戦闘機を開発し航空優勢を維持する必要がある。
  7. 「敵性勢力が装備、運用双方で実力を伸ばしており、こちらも進歩ているとは言え、空対空戦の有り様は大きく変わってしまったとの認識です」とコグリトー大佐は述べた。