2016年12月24日土曜日

F-35問題でF/A-18検討を求めるトランプの真意はどこにあるのか


ボーイングに参考価格を算定させてロッキードに値下げを迫るというビジネス上の戦術だと思いますが、ボーイングも当て馬にさせられるだけではたまりません。トランプとは大統領専用機問題もあり、トップ同士で何らかの取引が生まれつつあるのでしょう。ロッキードには心外な事態展開となりショックも大きいのでしょう。当たり前と思っていたことが当たり前に進まなくなるのですから当然ですが。費用を下げれば必ずしわ寄せが何処かに発生し、もともとF-35共同開発国のステータスが無い日本には一番大きな影響が生まれそうです。


Trump Tells Twitter He Wants A Super Hornet With F-35 Capabilities


WASHINGTON —ドナルド・トランプ次期大統領がツィッター上でF-35の価格問題を再び取り上げ、ボーイング第四世代戦闘機を代替対象として検討するよう主張したが、専門家筋は可能性はないと見ている。
  1. 「とてつもない費用規模と予算超過がをロッキード・マーティンF-35で発生していることからボーイングに対し比較検証のためF-18スーパーホーネットの価格検討を依頼したぞ」(12月22日東部標準時5:26 p.m.)
  2. ロッキード・マーティン株価は終値$252.80だったが東部標準時午後7時に$247.75へ2パーセント下落。ボーイング株は1.49パーセント上昇し $158.95につけた。
  3. 今回のトランプ発言でロッキード・マーティン、ボーイング両社にどんな長期的影響が出るか不明だ。F-35が費用超過や技術問題に悩まされているのは周知の事実だが、F/A-18E/Fスーパーホーネットは第四世代機で第五世代機の性能の多くは搭載されていない。例えばステルスであり、データ融合機能だ。スーパーホーネットを再設計してF-35同様の要求性能を実現しようとすれば開発期間は数年におよび、技術開発で数十億ドルの予算が必要となる。
  4. 「次期大統領及び政権とともに最良の性能を確実に納入しながら妥当な価格を当社製実績を元に実現し、安全保障ニーズに答えたい」とボーイング広報は伝えてきた。
  5. これに先立ちボーイング・ディフェンスのトップ、リアン・キャレットはF/A-18は「2020年代中頃を過ぎても十分その先まで供用可能で...現状からさらに進むことは確実」とDefense Newsに述べていた。これに対しロッキード・マーティン広報はトランプのツィッターへの論評を避けた。エンジンメーカーのプラット&ホイットニーも同様。
  6. Teal Groupの航空宇宙アナリスト、リチャード・アブラフィアはトランプのツィッターは「興味を引く議論」であるものの今初めてではないと指摘。「米海軍に取っては悪い提案にはならないでしょう」とし、海軍がF-35C導入をしつつスーパーホーネット追加調達を継続していること、同機の電子戦版E/A-18Gグラウラーも調達していることに言及していた。
  7. だが「現政権の任期終了間際で海軍はC型へ軸足を移さざるを得なくなる」とも指摘。アブラフィアはF/A-18を第五世代戦闘機に回収することの難しさを認めた。「スーパーホーネットは艦載攻撃機であり空母運用で威力を発揮するが、ステルス機になるわけではない」
  8. 今週はじめにクリストファー・ボグデン中将(F-35開発室長)から2011年に事業がナン=マカーディ法に違反し再構築を迫られて移行は順調だとの見解が示されている。中将によれいばF-35の予算執行はほぼ予定通りの日程で予算内におさまっているものの開発段階の飛行テスト日程が7ヶ月程度遅れる見通しと発表。また開発段階の完了には532百万ドルの追加支出が必要だ。
  9. 「2011年時点で130億ドル規模の事業再整備があと数億ドル数ヶ月で完了すると言われれば、『乗った』と明言していたでしょう」「事業は『制御不能』ではありません」とトランプが先にツイッターで示した発言に反論している。
  10. ボグデン中将は21日水曜日にトランプと会い、F-35事業を説明している。ボーイング、ロッキードのトップ、デニス・ミュレンバーグとマリリン・ヒューソンもそれぞれトランプと会見した。
  11. ミュレンバーグからは会見は好意的かつ「非常に前向き」で「肯定的で率直な話し合い」に「力づけられ」たとのコメントが共同取材上で出ている。ヒューソンは会見後コメントを発表していないが、トランプ側は「今回は手始めにすぎない。これはダンスと同じ。だが費用は削減していく。しかも優雅な形で実現していく」と述べている。■ Aaron Mehta contributed to this report.

ヘッドラインニュース 12月24日(土)


12月24日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

スコーピオン生産仕様1号機が初飛行に成功
テキストロンエアランドLLCが自社開発軽量ジェット機スコーピオンの生産型の初飛行に12月22日に成功した。生産型には潜在顧客の要望とともにテスト機材からの知見を盛り込んだ。ガーミン製エイビオニクスを搭載する。初飛行はマッコーネル空軍基地で行われた。

シリア介入作戦で向上するロシア製装備の性能
ショイグ国防相がプーチン大統領への直接報告でシリアに投入した新装備167種のうち10装備で性能の不備が判明し、該当メーカーには国防省が是正措置を求めていると明らかにした。

トランプはF-35打ち切りを検討しているのか
自身のツイッターでF-35の大幅なコスト上昇と機体単価を目の前にして、ボーイングに対してF-18スーパーホーネット調達に切り替えた際の試算を依頼した、と発表。ロッキード株価は1.5パーセントほど下がった。

米軍でのF-4ファントム稼働が終了
12月21日、ニューメキシコ州ホローマン空軍基地を標的用QF-4が離陸し、半世紀に及ぶファントムIIの米軍での稼働が完全に終了した。有人型F-4の運行は1997年で終了しており、以後標的用途で有人無人運用が続いていた。

2016年12月23日金曜日

ヘッドラインニュース12月23日(金)


12月23日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

ロシアが第五回目の衛星攻撃実験を実施
12月16日に実施し、成功したと国防総省が認めた。PL-19ヌドール・ミサイルを中央ロシアから発射した実験は米国が終始監視していた。ただし迎撃地点が宇宙空間だったのかについては言及がない。

MV-22オスプレイをガンシップに
米海兵隊は2.75インチロケット弾、誘導ミサイル、重機機関銃を搭載しオスプレイの攻撃能力を向上させる構想を進めている。この新型MV-22Cは20230年に供用開始を目標としている。


ロシアが大規模サイバー攻撃でウクライナ電力網を停止させている
先週日曜日に大規模な停電が首都キエフで発生したのは一年前の事件と同様。

ロシア大使殺害の遠因
駐トルコ大使殺害犯は22歳元暴動鎮圧隊員。経歴からは政治上の特別扱いを受けていたことが伺える。ただアルカイダはじめとする原理主義とのつながりは不明。ISISは犯行声明を出していない。トルコではクーデター事件以後、大規模な人員整理が軍、警察、内務省関連で進んでいた。

クリスマスプレゼントにどうですか?
ラトビアのアクロバットチーム「バルティック・ビーズ」がL-39を使った体験飛行を20分間提供している。料金は1,500ユーロ。フランス、アメリカにも民間飛行チームはあるが、有料体験飛行は提供していないので、ラトビア案件は訴求力がある。


マルセイユでの出来事
マルセイユ帰港中の艦内見学を警護していたフランス警察官3名をそのまま乗せて出港したUSSアイゼンハワーだが、3名はタグボートに乗せてマルセイユに戻らせていた。3名はフランス警察当局から処分される。

2016年12月22日木曜日

解説 T-Xは軽戦闘機に発展するのか



The National Interest


Could the U.S. Air Force's T-X Eventually Turn Into a New Light Fighter?

December 21, 2016

新型小型複座軍用機がセントルイス(ミズーリ州)で今週初飛行に成功した。一見すると戦闘機に見える同機はボーイングSaabと共同で採用を狙う米空軍向けT-X練習機提案だ。競合他社と違うのはボーイング機は米空軍が求めるノースロップT-38後継機として専用に設計されていることだ。
  1. 同機には先端技術のコックピットがあり、訓練用装備を盛り込み既存機種より「安価かつ柔軟対応可能」とする。競合するロッキード・マーティンは韓国製T-50A、ノースロップ・グラマンは新型設計機で競っている。
  2. ボーイングT-X案は米空軍の訓練用途に焦点をあわせているが、外部装着ハードポイントもあり兵装搭載も可能だ。空軍はT-Xに最初から機体内空間、重量、推進力、冷却能力で柔軟性を組み込み、その他用途への転用を求め、アグレッサー機材や軽攻撃機にもする意向だ。
  3. T-X競合機種ではロッキードのT-50Aが唯一軽攻撃機として運用実績がある。ノースロップ、ボーイング両社も新設計機種を開発中で軽攻撃機として売り込むことを考えているはずだ。ただしエイビオニクスを正しく搭載する必要がある。
  4. 世界各国の米側同盟国、友邦国に低価格軽量戦闘機の需要が根強い。現行のF-35、F-15Eストライクイーグル、F/A-18E/Fスーパーホーネット、F-16C/Dでは価格が高すぎ、複雑すぎる機材なのだ。そうなるとT-Xがすき間需要に応える機材になる。ノースロップがT-38からF-5を開発したのと同じだ。
  5. そうなるとT-X調達は350機の練習機といわれるが、採用機種には将来の可能性が控え、米空軍以外に同盟国多数からの需要が期待できる。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

12月22日(木)のヘッドラインニュース


12月22日のヘッドライン

筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

中国が水中グライダーを米海軍へ返還
USSマスティン(DDG-89)が中国海軍大郎級510号艦から公海上でUUVを受領したとペンタゴンが20日発表。中国は航行の危険を招くとして同UUVを回収したと主張していた。


T-X: テキストロンはまだ参戦あきらめず
米空軍次期練習機事業で提案要領が間もなく発表になるとみられる中、テキストロンも参入をまだ狙っている。同社も参入すれば、6社の混戦となる。T-Xは350機程度の調達を想定。同社は自主開発スコーピオンを原型に提案する準備に入っていたが、要求性能の6.5Gが達成できないとして断念する見られていた。

ベンキョウカイ演習
米海軍第195攻撃戦闘隊「ダムバスターズ」は航空自衛隊第302戦術戦闘飛行隊と11月28日ベンキョウカイIII演習を展開した。三回目となった今回の演習ではより高度な模擬空戦演習が展開され、最終日には302空が百里から厚木まで飛び、ソフトボール大会の後バーベキューで親交を深めた。

F-35が2017年にヨーロッパ展開か
ジェイムズ空軍長官は早ければ2017年夏にもF-35がヨーロッパに作戦展開すると発表。プーチン大統領への対抗意識を示した。またトランプ次期大統領の空軍事業への姿勢についてやんわりと批判した。長官は政権交替で退任する。大西洋協議会での発言。

ロッキード、ボーイング両CEOがトランプと会見
ボーイングのミュレンバーグCEOは次期大統領専用機調達事業は40億ドルを超過することはないと述べた。ロッキードのヒューソンCEOも別個、トランプと会いF-35問題を話し合った。


中国が開発中の新型爆撃機の概要が判明
現行H-6爆撃機から一足飛びに新型長距離爆撃機開発を狙う中国はJ-21等のステルス性能を同機にも盛り込むつもりのようだ。C919やY-20と言った大型機製造の知見を応用するとみられる。


2016年12月21日水曜日

ヘッドラインニュース12月21日(水)



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中国機の動きは全部把握されていた
米空軍RQ-4グローバルホークが高高度を飛行し、12月10日に中国空軍機が台湾を周回飛行したのを監視していた。台湾紙が報道。台湾付近に進出した中国機は合計10機。日本は航空自衛隊F-15が2機、米軍もEP-3とRC-135を向かわせていた。中国機は宮古海峡を通過後、台湾防空識別圏をかすめ、本国へ戻った。中国が公表したH-6爆撃機の写真には台湾最高峰の玉山が背景に写っている。

F-35開発期間の遅れは7ヶ月、予算5.3億ドル追加投入か
カーター国防長官はテストを2018年5月まで継続するよう命じている。同年2月までにSDD(システム関係開発実証段階)が終了している必要がある。これが達成できないと開発に本来機体改修に使う予算を流用することになる。SDDは142億ドルの総支出となるというのが推進室の試算だ。2011年想定の139億ドル上回るが、限界値の151億ドルには余裕があるから良いというのが推進室見解。
(F-35関連では金銭感覚が狂いそうになりますね。新大統領がどんな判断を下すかが注目です)

中国国防部は捕獲した水中無人機を南シナ海で20日午後、米海軍に返還したと発表。

ボーイングのT-X提案実機が初飛行
12月20日初飛行に成功した。ボーイングはSAABと共同開発し36ヶ月で実機を初飛行させた、

2016年12月20日火曜日

ヘッドラインニュース12月20日(火)


12月20日のヘッドライン

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水中無人機返還をめぐりまだ交渉まとまらず
ペンタゴンは月曜日、返還並びに軍組織間の対話含め中国との交渉が継続中と認めた。
http://freebeacon.com/national-security/u-s-china-still-negotiating-return-illegally-seized-undersea-drone/

クリスマスの読書プレゼントにいかが SR-71操縦マニュアル
SR-71 Flight Manual – The Official Pilot’s Handbook
Quarto Publishing Group | ISBN: 978-0-7603-5174-1
情報極秘扱いが解除となりSR-71のベテランパイロット、グラハム大佐が執筆した。同機の詳細を知りたい向きには絶好の書と推薦できるとのこと。

ますます遅延するF-35開発テストがどんな影響を与えるか
今年10月終了のはずが2018年5月まで延長されそうだ。そこで追加発生する経費が後に続く機体性能回収に影響を与えそうだ。

重武装機候補はB-52か
ペンタゴンが投入を目指す重武装空飛ぶ弾薬庫はB-52改装となる可能性が増えてきた。F-22やF-35とネットワーク化して運用する構想がある。その他C-130投入の可能性もある。

2016年12月19日月曜日

12月19日(月)のヘッドラインニュース




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中国はこうして米海軍UUVを捕獲した
捕獲したのはフィリピンのスービック湾から50マイル北西の公海上。米海軍パスファインダー級観測船USNバウディッチが「シーグライダー」を回収中だった。大朗Dalang-III級(992-III型)支援艦がボートを発進させUUVを捕獲した。なお中国支援艦は機関砲複数を搭載。米艦は非武装だった。シーグライダーは海中情報測定用に民生技術を応用しており、秘匿性はない。

バウディッチは中国艦に交信し、UUV返還を求めた。中国艦は応答したが要請を却下。UUVは無動力で秘匿性はないものの米海軍備品として米国は主権侵害と受け止めている。米情報機関は今回の事件を中国の挑発行為なのか偶発行為なのか見極めたいとする。回収のため停船中のバウディッチ乗員の目の前で中国海軍がUUVを回収した。


E-2Dが空中給油テスト
ノースロップ・グラマンが空中給油装備を搭載したE-2D発展型ホークアイの初飛行に成功した。これは米海軍から交付の開発契約の一貫。空母運用時のE-2Dは通常5時間の滞空しかできず、空中給油で飛躍的に作戦時間が増える。これに対し航空自衛隊が運用する予定の同機は陸上運用で離陸重量が増え、8時間の滞空が可能。

2017年に第三次大戦のスタートになりそうな5地点は
①朝鮮半島 ②シリア ③サイバー空間 ④南アジア ⑤バルト海 だとNational Interestでおなじみロバート・ファーレイが指摘。(この記事は別途ご紹介する予定です)

英海軍新空母に米海兵隊F-35B飛行隊を搭載
ファロン国防相が15日、クイーンエリザベス(2021年就航)に海兵隊機材を運用する方針を確認した。米国防総省と合意済みで英航空隊とともに空母運用するという。

アゼルバイジャンがアイアン・ドーム導入へ
イスラエルと合意形成でき購入するたアゼルバイジャン国防相が17日に述べた。アイアン・ドームはラファエル社開発の全天候移動型防空ミサイルで有効射程は4キロから70キロの範囲内となる。


2016年12月18日日曜日

日曜日はのんびりと---75年前のモスクワ攻略戦を再現するPCゲームDrive on Moscow


日曜日なので久しぶりにウォーゲームのレビューです。当方は食指を動かされないのですが陸戦がお好きな方にはどうでしょうか。

The National Interest

What If Nazi Germany Had Sacked Moscow during World War II?

December 17, 2016

75年たった今も興味をそそる仮定がある。ドイツ軍が1941年12月にモスクワを占領していたらどうなっていたか。ソ連は崩壊したか、あるいは継戦していただろうか。ロシア軍事力が弱体化すればドイツは兵力を欧州西部へ移動させ英米軍を一掃できただろうか。
  1. ドイツ軍先遣部隊がモスクワまであと10マイル地点にまで到達したのは事実で、クレムリンも望見できただろう。モスクワが陥落していれば第二次大戦はドイツが勝利したのと同様だったろうが、最低でも第三帝国の敗北条件は確実に下がっていただろう。
  2. Drive on Moscowはタイフーン作戦の呼称のドイツ攻勢をコンピューターゲームにしたもので、iPadとPC双方で作動する。プレイヤーは2人でドイツ軍、ソ連軍を指揮する。
  3. マップは南部はブリヤンスクから東部カリーニン、西部クルスクまで、モスクワが北部の端という規模だ。地形は攻守双方が有利に利用でき、戦車隊には平地が有利に、森林部や都市はソ連歩兵隊に格好の陣地となる。さらに河川が攻撃側に障害となる
  4. ドイツ側がマップ上の全部隊に命令を与えることでゲームは始まる。歩兵部隊50師団に機甲師団、機械化歩兵師団が加わる。ソ連側は兵力が少ない状態で始まるが、増援部隊が次第に加わり、シベリアから移動してくる冬季訓練や装備を受けた部隊も含む。各部隊には兵力として戦闘中に何回の攻撃ができるか、どこまでの損耗に耐えられるかが示される。
  5. Drive on Moscowの仕組みは単純かつ抽象的だ。プレイヤーはクリックして一回で一つの地域を選択しマウスあるいは画面を触り指定する。これで活動を開始した部隊は移動あるいは戦闘を実施する。移動は歩兵部隊は一単位、機械化部隊は道路あるいは鉄道で二単位でドイツ部隊は輸送路に沿って移動することになる。
  6. 敵部隊がいる場所に入ると戦闘が始まる。戦闘は短時間で終わるが微妙だ。各ユニットは兵力ポイントに応じた発砲をおこなう。歩兵部隊の命中精度は3割、装甲部隊は4割だ。各部隊は攻撃を敢行するとボーナスが貰える。防御地形や都市部は被弾効果を下げるが被弾すると兵力ポイントが下がり、退却を迫られることもある。
  7. 装甲部隊は攻撃力に加えて敵陣突破もしやすい。機械化部隊が防御側を一掃すれば、移動し攻撃をくりかえす。火力に加えて電撃攻撃すればボーナスとして火力、攻撃力が加わり戦車部隊はさらに強力になる。
  8. 兵力ポイントがなくなるとそのユニットは消滅する。ドイツ機械化部隊のポイントは1から3がほとんどだが、ドイツ・ソ連の歩兵隊は5ないし6ポイントある。戦車は打撃力はあるが防御は弱い。戦闘を続けるとドイツ機械化部隊の先鋒は戦力を消耗していく。
  9. 補給は厳しい。敵支配地に周囲を包囲されると補給はなくなり、ユニットは移動できず援軍とつながらないと攻撃できなくなる。補給を絶たれた部隊は兵力ポイントが減り最終的に消滅する。しかし、ドイツ軍には空からの補給が初期には可能で、孤立した部隊を救援できる。
  10. Drive on Moscowでは軍事作戦の要となる時間要素をうまく再現している。ターンは一回で72時間から120時間を再現し、プレイヤーは最終的に全部隊を投入する。だがプレイヤーが一度部隊を投入すると最大18時間が消費されたことになり、悪天候や泥道ではもっと長く時間がたつ。この時間経過が終わるとターンが終了し、次のターンへ移る。ということはゲーム初期の好天候下ではドイツ軍には各部隊を投入する時間が十分あるが、悪天候になると移動あるいは交戦可能な部隊は急減少することになる。
  11. バルバロッサ作戦は1941年6月に唐突に始まり、ドイツ軍はソ連部隊を壊滅させ5ヶ月で5百万人の死者が発生した。1941年12月にドイツ軍が補給切れでモスクワ寸前で作戦は終わっているが、補給品は馬車で運んでおり迅速に前線に搬送されなかった。ソ連の鉄道線が寸断され、自動車輸送の能力不足があった。Drive on Moscowでドイツ機械化部隊の一部が各ターンで動けなくなるのは燃料不足を反映している。さらにソ連には増援部隊が各ターンで加わるが、ドイツの増援は限定的で特に重要な機械化部隊でこの傾向が強い。
  12. 補給不足に加え、ロシアの冬が近づいてくる。ゲーム開始時の天候は良好だが10月になると泥がふえ、機械化部隊含み移動が遅くなり突破作戦ができなくなる。11月には泥が凍結し、河川移動ではドイツを助ける。12月は降雪でドイツは動きが落ちるがソ連には影響がない。また12月には強力なシベリア部隊が加わるがドイツの最前線部隊は兵力補給品ともに不足気味だ。
  13. Drive on Moscowは実際のタイフーン作戦同様に時間との戦いだ。ドイツ軍は強力だがその威力は時間経過とともに弱体化する。ドイツは悪天候の前にモスクワを占拠する必要があり、補給品増援部隊で不足が発生してからでは間に合わないし、ソ連の増援部隊が大兵力でやってくる。モスクワを押さえる代わりにオレルやカリーニンと言った都市を複数占領してゲームに勝利することが可能だ。
  14. ソ連はゲーム開始時こそ劣勢で、組織が混乱し兵力配置がまずいが、持ちこたえれればドイツ軍の進撃はいずれ止まる。赤軍が反攻作戦を12月から1月にシベリアから移動させた戦車歩兵部隊で実施し、消耗したドイツ軍を一掃する。
  15. Drive on Moscowはコンピュータ相手で一人でもプレイできるが、インターネット経由で人間同士の対戦も可能だ。双方が忍耐力の限界を試される緊張の経験となる。
  16. 歴史は書き換えられるのか。Drive on Moscowで答えがわかるだろう。
Michael Peck is a frequent contributor to the National Interest and is a regular writer for many outlets like WarIsBoring. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: A German Panzer V in Romania. Wikimedia Commons / Bundesarchiv, Bild 101I-244-2321-34 / Waidelich / CC-BY-SA 3.0

Drive on Moscowの詳細、購入は下のリンクからどうぞ。安価な価格になっています。実際にプレイした方はレビューをお願いします。

12月18日(日)のヘッドラインニュース 中国が米水中無人機を強奪など




筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

宮古海峡上空:自衛隊は中国機レーダー周波数の情報収集のためフレア発射?_
12月10日に発生した事案は宮古海峡を通過飛行した中国機に航空自衛隊が挑発し、中国機のレーダー周波数を探知しようとしたため発生したとの説明が中国国防部から出てきた。フレアを放出したのはF-15の2機編隊だったが、同時に近辺にはF-15が8機、米EP-3、RC-135各1機があり、日米が調整して挑発してきたとの中国見解。


T-X競合へシエラネヴァダ/TAI組も参入
TAIはトルコ航空宇宙工業。大手企業に注目が集まる中、両社はコロラド州に工場を設立し、軽量全複合材製の完全新規設計で米空軍の求めるT-38後継T-Xに参入を図る。


中国・南シナ海:米無人水中機を強奪、人工島武装を強化
国際裁判所の司法判断にもかかわらず、南シナ海周辺国は中国の首に鈴をつけるのためらう状況が続いているが、人工島の防御体制を着実に強化していることが判明したのにくわえ、中国海軍がフィリピン沖合50マイル地点で米無人UUVを捕獲していたことが明らかになった。米海軍が同UUVを回収しようとする眼の前で中国海軍がケーブルを切断し強奪したという。

米国防総省は外交チャンネル通じ中国にUUVの即刻返還を求めている。
公海上で中国海軍が強奪したUUVは海洋観測艦が回収する途中だった。「シーグライダー」の名称で同UUVは海中の環境測定に用いられており、秘匿性はない。


米国外製造したF-35が初の運用へ
イタリア空軍がF-35A2機をアメンドーラ基地に配備し、米国外で製造したF-35がはじめて運用可能となった。両機はカメーリで組み立てられた6機の一部。残りの機材は米ルーク空軍基地で訓練中。イタリアはF-35を90機をA型B型混ぜて発注する。


2016年12月17日土曜日

12月17日(土)のヘッドラインニュース



筆者が注目する記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがあります。

米海軍:次期戦略ミサイル原潜の初号艦はUSSコロンビア
メイバス海軍長官はORP(オハイオ級後継艦)はSSBN-826 USSコロンビアになると正式に発表した。今後はコロンビア級の名称が用いられる。現行オハイオ級の供用は2026年から順次終了する。コロンビアの名称は首都ワシントンDC(コロンビア特別区)にちなむもの。

中国向けスホイSu-35戦闘機が今月中に到着か
予定を前倒しし12月25日までにまず4機が納入される。ロシアと中国は2015年11月に計24機道入で合意していた。Su-35は4++世代戦闘機の位置づけで戦闘行動半径は1,600キロ、フェイズドアレイレーダー、30ミリ機関砲を搭載する。


A400M:共同整備で費用削減をめざす英仏西
A400Mの保守点検業務を共同実施する取り決めにスペインが加盟し、英仏との三カ国体制が発足。英仏両国は2014年から共同実施している。A400Mには合計170機の発注がある。

CIAにアマゾンのクラウドシステム道入
4月から稼働開始した6億ドルのクラウドシステムはアマゾンが準備した。情報処理を画期的に短縮する効果をすでにあげている。だがその応用例は不明。

SM-6が迎撃テストに成功
12月14日USSジョン・ポール・ジョーンズ(DDG-53)から発射したレイセオンSM-6が弾道ミサイル迎撃に成功。巡航ミサイル、弾道ミサイルの双方に対応できる能力を実証した。


2016年12月16日金曜日

ヘッドラインニュース 12月16日(金)



12月16日のヘッドライン

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オーストラリア:F-22を来年配備
ハリス米太平洋軍司令官がオーストラリアで明らかにした。米豪の空軍兵力協力事業の一環で2017年ティンダル基地に飛来する。北部ダーウィンには米海兵隊が六ヶ月の期限付きでローテーション配備されている。


フィリピン:日本貸与のTC-90初号機は来年早々に現地到着
5機がフィリピンに年28千ドルの賃貸料で提供される。2月から3月に第一陣がフィリピン海軍基地に到着する。パイロットは日本で訓練中で、機材は一部装備を取り外し引き渡される。


中国:南シナ海の要塞化
中国が大型対空火砲の他、近接防御装備CIWSをスプラトリー諸島で構築した人工島に設置した。米シンクタンクAsia Maritime Transparency Initiative (AMTI)が発表。フィアリークロス、ミスチーフ、スビで工事が6月-7月から始まっている。工事が進展して局地防衛用の陣地と判明した。

日本:次期国産戦闘機F-Xは大型機材になる
各種情報を総合すると日本が構想中の国産戦闘機はかなり大型でF-22を上回る大きさになるようだ。装備搭載量、飛行距離を勘案して大型機体案が出ている。

ボーイング:NATO向けE-3改修1号機引き渡し
NATOが運用するE-3AWACS14機の改修事業で初号機が12月13日に引き渡された。改修でglobal air traffic management (GATM) 準拠の機体となり民間航空との安全運行が実現する。操縦席周りは1970年代の計器がグラスコックピットになった。


2016年12月15日木曜日

★★トランプがF-35をキャンセルした場合の代替策を考える



F-35は宣伝通りなら画期的な戦力になるのですが、その実現はまだまだ先のことです。機体だけ作ってあとで改修する解決策で量産効果だけ先に実現するのが現在の考え方ですが、カタログスペックが出ない機体を各国が導入しても後で多額の費用がかかるだけです。その間にほぼ20年もかかっているのは驚くべきことですね。一方で大きすぎてつぶせないはずとタカをくくっていたロッキードがトランプの一言で真っ青になっています。考えられないことではなく、考えにくいからと今まで議論になっていなかったことが今や堂々と議論できる環境になってきました。選挙結果でこんなに変化するんですね。

The National Interest

5 Ways to Replace the F-35 Stealth Fighter (If Donald Trump Kills It)

December 12, 2016

F-35共用打撃戦闘機は米国の国防装備で最も物議をかもしている事業だ。
全供用期間を通じた経費が1兆ドルと言われる同機には画期的な性能がある一方で、技術課題に悩まされてきた。そこにトランプ次期大統領からの批判が加わった。
同事業にどんな代替策が考えられるのか。F-22を生産再開するのか、第四世代機生産を続けるべきか。無人機を増やすのはどうか。
実はこの課題は2014年にロバート・ファーレイが検討していた。そこで原文を再掲載したい。
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  1. エンジン火災でF-35全機が飛行停止措置となり、共用打撃戦闘機の批判派はふたたび同機事業へ厳しい目を向けている。それでもF-35はつぶせないようだ。同事業は全米各地で展開しており、最も親密な同盟数か国も巻き込んでおり、中止はおそらくありえないだろう。
  2. だが中止となればどんな選択肢があるだろうか。今回提示する5案はそれぞれ独立していない部分もあるし、F-35に代わる案は相当の負担が必要であることを最初に申し添えておく。
F-22生産再開
  1. まず考えられるのはF-22の生産再開だ。ラプターの経験値をもとに新生産機は性能向上型にできるのではないか。
  2. しかし生産再開は相当の費用になり、海軍と海兵隊のニーズに答えられない。F-22艦載型は真剣に検討されておらず、海兵隊の軽空母で運用できる派生型が生まれるとは到底考えられない。
  3. そうなると空軍はF-22、海軍はスーパーホーネット追加調達、海兵隊にはF-35Bという組み合わせはどうか。B型が実は一番技術的に厄介な存在であり、ペンタゴンも費用対効果で課題の多い同機を見限る可能性がある。
  4. F-22には別の問題がある。空軍は同機を攻撃用に投入する考えはない。制空戦闘機を攻撃機に転用した例は多い。またパイロット向け酸素供給問題も残る。米国内法でF-22輸出は禁止されており、F-35中止となっても今後は外交問題が浮上しそうだ。
無人機
  1. 殺人ロボット機はどうか。無人機技術は大きな進展を示しており、運用構想も同様だ。米国は無人機投入を拡大して、有人機で行ってきた偵察、近接校区支援、制圧、長距離攻撃なども実施している。
  2. 無人機の課題は空対空戦だ。現在の無人機は空対空機材としてはあまりにも性能が低い。現行の無人機にはスピード、操作性、センサーの各面で最新有人戦闘機に劣る。
  3. 仮に新型無人機がこの課題を解決できても、別の問題が生まれる。自律運用でないかぎり、遠隔操作のデータリンクは敵の妨害に脆弱なままだ。遠隔パイロットの操作を数秒でも失えば、UAVは空中戦で格好の標的だ。ロボットが攻撃判断できるのかという議論もある。無人機は空軍力の一部となるが即戦闘機のかわりになるわけではない。ただし新世代戦闘機が登場するまでのつなぎにはなるだろう。
既存機の性能改修
  1. 米国には高性能戦闘機が多数あり、新型機を製造する産業基盤も残っている。そこで旧型機を改修してはどうか。米第五世代戦闘機の好敵手とよくいわれるSu-27フランカーは冷戦時の機体を改修したものだ。米海軍と空軍も同様の対応をしている。現在のヴァイパーは当初のF-16Aと相当異なる機体になっている。
  2. ボーイングはF-15とF/A-18の発展型としてステルス特性を持たせたり近年の技術発展を反映させる構想をねっており、韓国にF-15サイレントイーグルを提示した。同様にF/A-18にコンフォーマルタンクを搭載し飛行距離を大幅に伸ばす提案もある。F-16改修型も生産続行中だ。
  3. だがサイレントイーグルや高性能版スーパーホーネットは構想段階のままで、実現しても第六世代機登場まで相当長期にわたり供用され性能ギャップを埋める必要が生まれる。既存機種を維持することで機体の老朽化をかかえたまま費用とともに危険性も上がるとの批判が出る。新規製造機体を調達すればこの問題は回避できる。
第六世代機まで待つ
  1. もう一つの方法が第五世代機をすべて断念し、第六世代戦闘機開発に賭けるることだ。六世代機に期待されるのは全周囲ステルス、スーパークルーズ、ネットワーク性能等があり、無尾翼形状となる可能性もあり、レーザー兵器搭載や無人運用も視野に入っている。
  2. すでにこの構想に着手している国もある。日本、ロシア、インド、フランスが第五世代を飛び越して第六の実用化に向かおうとしている。今後も大国間で平和が続くとの期待に冷戦時機材が相当残っていることが組み合わさりこの構想に実現の目が生まれている。
  3. ただし他の選択肢同様に米国で性能ギャップが生まれそうだ。ただ空軍海軍に性能不足のままF-35を押し付けることは回避できる。
  4. 第六世代戦闘機開発はF-35(ならびにF-22)開発に比べればまともになる前提だ。仮定にすぎないが第六世代戦闘機の要素を単一機体にすべて搭載すのは先端企業といえども困難なはずで(特に第五世代機の製造経験がない場合)、費用も相当高くなることは容易に想像できる。また2030年になると既存機種の耐用年数延長は大幅に困難になる。
海外機導入
  1. 一番可能性が低いが米国が穴埋めとしてダッソーのラファール、ユーロファイターのタイフーンあるいはSaabのグリペンを導入することが想定できる。ホーカー・シドレーのハリヤーを除けば米国が海外製戦闘機を導入したことは第一次大戦からない。例外としてイングリッシュ・エレクトリックからライセンス生産したB-57キャンベラが多用された。
  2. だがこの案が成立するのはライセンス供与で米国内で製造組立を行う場合だ。技術移転をヨーロッパ内の同盟国に依頼するのは米国には愉快な経験ではないはずだ。普通は逆だ。
  3. これが実現すれば米防衛産業は萎縮するが、戦力が実証済みの機体を米空軍、海軍に導入できる利点が生まれる。上記三機種はそれでも米既存機種の最新機材よりも十年以上新しい設計であり、今後さらに性能を向上する余地は十分ある。また価格面、性能でも十分説得力がある。
  4. あるいは4.5世代機を韓国や日本から導入する構想も生まれよう。海外販売が実現すれば両国もさらに技術革新を進め生産規模を拡大できる。
そうなると結論は
  1. F-35が途中取り消しとなれば、理想的な解決策は上記選択肢を組み合わせたものになるだろう。各選択肢の比重は異なる。そうなると「UAVと既存機種が何機あれば第六世代機登場まで足りるのか」と考えるのがいいだろう。もし米国が10年後の世界で同格の大国と航空戦力で張り合うつもりがないのなら、選択肢組み合わせで十分対応できるだろう。
  2. だがF-35には強力な支持者があるのは事実だ。(機体にではない。事業への支持だ)その事業を取り消そうとすれば米国内の各種政治利権を押さえ込む必要がある。また国防産業の基盤は広大である。同時に同盟国の諸政府をなだめるのも大変だろう。JSF導入に政治生命をかけている国もあるのだ。とはいえ、代替選択肢を考えることは第一歩だ。■