2017年12月29日金曜日

台湾は中国への優位性を失ってこれからどうするのか

 


China Would "Pay a Very High Price" If It Invades, Taiwan Warns

台湾侵攻すれば中国に「高い代償」を払わせると台湾が警告


December 25, 2017


台湾の上級国務相が台湾侵攻に踏み切れば中国に「とても高い代償を支払わせる」と発言している。張小月Chang Hsiao-Yueh本土相は米国に対しても台湾を中国との取引材料に使わないように求めている。
大臣発言は米海軍艦艇が台湾寄港の話が浮上して緊張が高まる背景で出たもの。中国外交部のLi Kexinが米海軍艦艇が高雄に入港した日に人民解放軍は台湾を武力統一すると警告している。
これに対し張大臣は北京に対し域内平和と安定を重視すべきと求めている。
「台湾防衛の体制は十分整備されている」と大臣は台北で海外報道陣を前に述べている。
「中国が台湾を軍事侵攻すればとてもとても高い代償を支払わせる。軍事侵攻は統一の試みがすべて失敗した場合の最終手段と理解している。だが当政府は最大限の注意を払い挑発行為と受け止められることは回避しており、相手がそのような行為を取るとは思っていない」
中国は軍事力を拡大整備してきており、台湾の技術優位性は消滅したと見る専門家が多い。北京は台湾を反乱省だがいつの日か本国管理下に戻るとみている。習近平主席は第19回党大会で中国には「台湾独立のいかなる企てを粉砕する」力があると戒めていた。「いかなる個人、団体あるいは政党が中国の正当な領土を中国から切り離することはいかなる時でも認められない」
台湾海峡両岸の関係について党大会後に張大臣は尋ねられ北京政府は軍事演習を続け軍事力の誇示で台湾を国際社会で孤立させようとするだろうと述べた。ただし、共産党大会では台湾への軍事力行使の話題は出ておらず統一日程も出ていないと述べた。経済文化交流は言及されている。
「複雑な戦略です。台湾に対するアメと鞭です。今後5年間はこのままと見ています」と張大臣は記者会見で述べている。
ドナルド・トランプは台湾総統蔡英文の祝辞通話をとることでそれまでの外交儀礼を破った。移行時期の2016年のことだ。そのころ次期大統領は「一つの中国」政策の無効化をねらっていた。1970年代から米国は同政策で台湾は中国の一部との立場をとってきた。
トランプは一つの中国政策に縛られる必要が理解できないと述べていたが、大統領就任後は既存方針に戻り習主席の求めた一つの中国政策の遵守に合意している。
「習と台湾問題は話さないで」
張大臣は台北がトランプの初北京訪問の前に米国でロビー活動したと認め習近平との会談で台湾問題を持ち出さないよう働きかけていた。
「いつも台湾をコマとして使わないでほしいと言っている」と大臣は述べつつ、懸念が軽減されているとも述べた。「当方の見るところでは米国は中国の経済貿易問題や北朝鮮問題の取引材料に台湾を使っていない」
今週になりトランプ政権が中国との関係と台湾への武器供給を維持するのは微妙なバランスのいる仕事だと認めた。「台湾との強いきずなは『一つの中国』政策に従いつつ維持していく。台湾関係法に従った台湾の正当な国防ニーズである侵攻抑止に答えていくこともこの一部」と米国家安全保障戦略が解説している。
米海軍が台湾に寄港する?
だが議会が海軍艦船の台湾寄港を検討するよう大統領に求めたことで中国が反発している。台湾に関係する国防支出認可法の条項は拘束力はないが「米中協力の大きな次元での国益や海峡を挟む平和と安定を損ねる」と中国外務省報道官Lu Kangが定例記者会見で述べた。
前出のLiは在米中国大使館の上級外交官でその発言はその先を行く。報道では米政府関係者への警告として寄港が実現居た段階で中国は台湾の武力統一の引き金を引くとまで発言したという。
北京からは寄港に断固反対との意向が示されているとボニー・グレイサー Bonnie Glaser(戦略国際研究所)が以下述べている。
「米海軍が台湾寄港するか極めて疑わしい」「台湾の安全保障に対する米国の取り組み姿勢を示す方法は別にあるのではないか。中国からは警告は外務省報道官の後は繰り返されていない。それだけ決定的だと言える「
ユーアン・グラハムEuan Graham (オーストラリアのロウウィ研究所)は外交官Liの発言を米台関係より米中関係を重視するよう求める「虚勢」と分析している。
台湾は中国と「競合できない」
中国はここにきて軍事力増強に走っており、S-400地対空ミサイルのロシアからの購入もその一つだ。
「どの指標を取っても台湾は優位性を失っており、軍事面でバランスは中国に大きく傾いている」とグラハムは述べている。
「台湾には中国に対する技術優位性が頼みの綱だった。これで米国製国防装備品の輸入への依存もあったのだが、いまや状況は完全に逆転した。そのため台湾が頼りにしてきた通常兵器による抑止効果に大きな疑問がつく」
「台湾へは6週間前に行ってきたが中国と互角に対抗するのは不可能と同地の現役、退役軍関係者も認めていた。台湾にはこれまでとちがう思考方法でインフラとソフトパワーを『あらゆる面で回復力高くする』手段として形成していくことが必要だろう」
Disclosure: The journalist participated in an international press tour of Taiwan as a guest of the Ministry of Foreign Affairs.
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2017年12月28日木曜日

日豪でVFA相互部隊訪問協定が2018年1月に成立の見込み、その後どうなるか

VFAは日本初の成立になります。いっぽう、いずもで海兵隊F-35Bを運用するというのは英海軍の新空母と同じ話ですね。運用が実際に始まる前から日米英の密接な準備態勢が動くということでしょうか。楽しみです。最近は動きが速いですね。フォローするのが大変になってきました。


Australia and Japan Expected to Finalize Visiting Forces Agreement Next Month

オーストラリアと日本間の訪問部隊協定の成立は来月に近づく

オーストラリア海軍アデレード級誘導ミサイルフリゲートHMASメルボルン(FFG 05)が定期巡回寄港として2017年10月9日に佐世保基地に到着した。 US Navy photo.

 By: Ben Werner
December 26, 2017 5:02 PM


日本とオーストラリアが軍部隊の相互訪問協定にまもなく調印すると円滑な合同軍事作戦に道が開く。

オーストラリア首相マルコム・ターンブルは1月に訪日を控えており、安倍晋三首相と協定成立を発表する見込みだとシドニー・モーニングヘラルド紙が伝えている。両国はVFA協定を2014年から協議してきた。
訪問部隊協定により一時的に軍事活動に参加する外国軍の法的立場が定義される。合同演習や救難活動が例で軍事装備の税関手続き免除やその他作戦に必要な装備も同じ扱いとなり、弾薬類の搬送も許可される。
オーストラリアはすでにVFAを米国含む数か国と締結しているが、日本には初となる。在日米軍はこの枠組みとは別の地位協定で活動を第二次大戦後から展開している。なお、日本は英国ともVFAを模索しているとシドニー・モーニングヘラルドは伝えている。
両国が協議開始した三年前は日本がそれまでの防衛のみの軍事活動を脱し各種軍事演習に参加する道を模索し始めた時であった。
オーストラリアと日本の協定は両国やその他太平洋の各国との取り決めの最新事例になり、北朝鮮の敵意ある態度や中国、ロシアが今までになく軍事力を誇示する傾向が強まる傾向の中でこうした取り決めが増えている。
例として一年前に日本とオーストラリアから両国の揚陸作戦能力や沿岸防護能力の増強を図る案が発表されれている。米国の揚陸部隊が太平洋、中東その他に出動して投入できない場合を想定して日本やオーストラリアに揚陸能力強化が期待されている。
北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射した事例ではターンブルは安倍に電話し支援と密接な協力を与えると伝えている。
両国は米国製高性能装備を採用しており、米国交えた相互運用体制を強めている。日豪両国にはイージスシステム駆逐艦があり、日本は一週間前にイージスアショアの調達を閣議決定し、オーストラリアはレイセオンによる協調交戦能力 Cooperative Engagement Capability システムの国際パートナーになっており、米海軍が進める海軍統合火器管制対空(NIFC-CA)体制の中核機能に関与する。

その他でも相互運用体制は強化されており、日本は海上自衛隊のヘリコプター空母JSいずも(DDH-183)を改修して米海兵隊のF-35B共用打撃戦闘機を搭載する。日本は通常型のF-35Aを発注中だが、海兵隊F-35Bは日本国外での運用を2018年から開始する。■

米海軍の中国空母攻撃策と中国の空母キラーは実戦で効果を上げられるのか

 

This Is the Navy's Master Plan to Kill China's Aircraft Carriers

これが中国空母を沈めるための米海軍マスタープランだ
December 15, 2017

国は「空母キラー」を延々と喧伝するつもりなのか。とくにDF-21D、DF-26の各弾道対艦ミサイル(ASBM)を人民解放軍(PLA)は接近阻止領域拒否(A2/AD)防衛体制の要として米海軍の原子力空母(CVN)を狙うとしている。
 中国は有力な聴衆を確保している。ペンタゴンで中国軍事力予測を延々と作業する一派が中国軍事力評価年報であたかも事実のようにPLAがDF-21Dで中国沿岸から900カイリ先で「空母含む水上艦攻撃が可能」と書いている。
 背筋が寒くなる。だが米海軍にも空母キラーがある。正確に言えば艦船キラーだ。空母を沈めたり機能喪失するのが可能なら小型艦でも同じ結果を得られる。冷戦後の平穏な時代は終わり対艦兵器の増備、性能向上、威力は着々と進んでいる。どちらの側の空母キラーが勝利を収めるかは戦闘がどこで発生するかで変わる。
 空母キラーのイメージが西側で強烈なのは理解できる。中国ロケット部隊が米海軍の誇りを沈めればアジア域内の同盟国を助ける米国の狙いも沈む。PLAが世界史に残る戦勝記録を艦船や航空機をまったく使わずに達成すればもっと悪いの。ASBM発射キーを回せばそれですべて、というわけである。
 そうかもしれない。射程距離など技術詳細にこだわる必要がどこにあるのか。まず、DF-21Dの900マイルと言われる射程距離は空母艦載機の行動半径を上回る。空母部隊はこのためアジアの戦場に到着しても攻撃を受けてしまう。また北京軍事パレードでお披露目されたDF-26は射程が1,800マイルから2,500マイルに伸びたといわれる。
 技術が進歩すればPLAの弾道ミサイルは米国や同盟国の水上艦艇をアジアの第二列島線以内どこでも狙るようになる。DF-26が言われるとおりなら列島線以遠にもASBMが届くことになる。
グアム東方面を航行中の艦船を中国沿岸から攻撃するのはグリーンランド東方を巡行する艦船をワシントンDCのミサイル陣地で攻撃するようなものだ。そうなれば空母部隊がグアムに向けてハワイや米西海岸から向かうこと自体が危険になり、グアム、日本他西太平洋各地の海上交通はミサイル攻撃の影に包まれる。
 だがPLAがDF-21Dを外洋に向けた試射をしていない事実に注目だ。配備5年以上で一回も発射していない。DF-26に至っては戦闘想定の発射もない。平時で完成度が低い兵器は有事には大きな失望の種となる。
 それでも中国技術陣が本当にASBMを実戦化していれば有効な装備になるだろう。米軍は中国ASBMへの対抗手段があると豪語している。本当にそうだろうか。条約に縛られて米国はDF-21DやDF-26に匹敵する中距離弾道ミサイルの開発はできない。条約を破棄しても艦船攻撃用ミサイルを一から開発すれば装備展開まで数十年かかるだろう。
 とはいえ米海軍に対策がないわけではない。では米海軍は敵空母を戦闘時にどのように攻撃するつもりなのだろうか。
 筆者はニューポートの海軍大学校でその答えをこう述べている。場合に依存する。
 まず対戦場所に依存する。空母まで投入する艦隊対決は広大な海域で発生する。当然中国本土から離れてASBMの有効射程からも外れて、巡航ミサイル、攻撃機など不沈空母中国からの運用はできない。
 これは艦隊同士の対決の場合で火力、勇気、戦術、活力が等しい意味を持つ。このうち最後の要素でPLA指揮官が地上配備兵装を投入してくる。だが同時に米海軍も同盟国海軍部隊とともに対決するはずで、日本、韓国、オーストラリアが近海域で戦闘に加わる。また中国と同様に同盟各国が陸上装備で海軍兵力を補助するはずだ。
端的に言って両陣営の目指す戦術領域が食い違っている。
潜水艦戦が米国の目指す外洋での戦闘で重要になる。原子力推進攻撃潜水艦(SSN)の米ヴァージニア級、ロサンジェルス級は外洋の中心で海上交通を遮断する。あるいはA2/AD防衛体制を潜り抜けて敵艦を襲うだろう。その対象に空母も当然入る。
 SSNが米海軍作戦で奮闘するだろう。このため議会がSSN戦力規模を現在の53隻から2029年に41隻に縮小するの許したのは明らかな誤りだ。23パーセント戦力減となれば中国が原子力、通常型双方で増強している中(2020年に78隻)さらにロシアも潜水艦部隊を強化する中で好対照だ。
米潜水艦部隊は空母キラーになる。現状ではPLA海軍には空母は一隻しかない。旧ソ連の空母を改装した遼寧で、今後も練習空母のままだろう。遼寧を改良した二号艦の建造が続いている。
中国が二番艦を完成させれば初の国産空母になり、ちょうどニューポートニューズシップビルディングが米国初の超大型空母USSフォレスタルを完成させたのと同じ意味が生まれる。フォレスタルも通常動力で遼寧とほぼ同じ大きさだ。だがフォレスタル建造には三年しかかかっていない。
 PLA海軍が空母任務部隊の海上運用で知見を得て進歩したとしよう。その場合、新造空母は円滑に艦隊運用に移され、中国の外洋艦隊に加わる。仮定の外洋での衝突は2020年ごろに発生する想定だ。
 2020年、空母航空戦力は今と同様に米海軍の空母キラーだ。米国の原子力空母CVNは85機を搭載する。将来登場する中国空母の搭載機数予測はばらつくがここでは多めの固定翼機、ヘリコプターあわせて50機としておく。つまり控えめに言っても米CVNはPLA海軍空母より70パーセント強力だと言える。
また同様に米中の搭載機材でも米側の機体の方が中国機より強力だ。将来のPLA海軍空母も遼寧と同じスキージャンプ発進方式になるようだ。この方式では機体重量が制限されるため料や兵装の搭載量も限られ中国機は発艦にも時間がかかる。
 だが米CVNは重装備の戦闘攻撃機を蒸気あるいは電磁式カタパルトで発進させる。燃料を多く詰めれば航続距離も飛行時間も長くなる。
 例としてF-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機は400カイリ先を攻撃目標とし、兵装投下後はさらに長く飛行可能だ。中国のJ-15艦載機の宣伝される飛行距離と一見大差がないが展開機数が多いため有利になるのは米側だ。
さらに2020年までに開発中の対艦兵器が実戦化され米装備の一部となるだろう。現在の米海軍の主要対艦兵器は1970年代のハープーン巡航ミサイルのみで射程は60マイル超だ。これに対し最新のPLA海軍ミサイルのYJ-18は290カイリを誇る。
 これに対し米側兵器開発部門は射程距離の不足を補おうと懸命になっている。ハープーンのメーカーであるボーイングは射程を倍増させる。ペンタゴンの戦略戦力室はSM-6艦対空ミサイルを対艦攻撃ミッションに転用し射程範囲を二倍三倍に伸ばす。米海軍はトマホーク巡航ミサイルの対艦型を試射し、冷戦時の長距離攻撃能力を復活させようとしている。新型長距離対艦ミサイルが開発中だ。
 では米海軍は新兵器をどう活用するだろうか。「分散威力」構想で海軍は火力を艦隊の各艦から発揮させて目標に集中させるとしている。つまり艦艇多数に対艦ミサイルを搭載し、さらに新技術の電磁レイルガンや艦載レーザーを展開しようとしている。
米海軍は空母キラー兵器を一種類に限定するつもりはない。多数を搭載する。潜水艦、航空作戦を組合わせ水上戦は刷新されて米海軍は大洋上での交戦力を有効に発揮するだろう。これが2020年までに実現する。問題は大洋上での米中海軍対決が一番可能性が低いシナリオになることだ。太平洋の真ん中で対決することに意味があるのか。PLA海軍が沿岸戦力の範囲外に出かけていけば自ら優位性を捨てることになる。
 PLAの接近阻止装備が有効な範囲で戦闘が発生する可能性が高い。列島線の範囲こそ中国が最大の関心を示す場所だ。航行の自由を保障し、アジア同盟国の安全保障の後ろ盾たる米国も海上強国としての地位を守ろうとの決意は固い。米中の論争が行き詰まれば海空での武力衝突の発生はありうる。
 実行して極端な結果になれば大変なことになる。アジア本体近くまで米軍が展開すればA2/ADの防衛体制の強固な部分を横断する機会が増える。開戦初日から空母キラーASBMが西太平洋に次々に発射されるはずで戦域内の米艦船や西進中の部隊に浴びせられる。
 沖合の警戒ラインだけでは足りず、沿海部にも対艦兵器が動員されるだろう。ASBMだけの場合や巡航ミサイルとミサイル搭載機の組み合せが中国沿海部に出現する。原子力空母は巨大と言っても滑走路としては小さい存在で、陸上基地の航空機やミサイル母機と対決することにになる。A2/ADは米艦長には実に嫌になる戦術作戦上の難題になるだろう。
 PLA海軍は太平洋の西側に留まる限りは太平洋の真ん中やインド洋あるいはもっと遠隔地にいるよりも安全でいられる。簡単に言うとPLA海軍とは現代版の要塞艦隊fortress fleetであり、沿岸配備による防衛網内にとどまる限り安全だ。艦の火力に加え援軍が期待できるので戦力で優勢な敵軍に対抗できる。
 ただし要塞艦隊が外洋に出れば悲惨な運命に直面することが多い。防衛の傘がなくなるからだ。本国近くで沿岸の火力支援が得られる範囲で機能を発揮する。中国の狙いははこれだ。
 歴史を概観すれば要塞艦隊構想のはじまりは地味なものだったとわかる。海洋権力を研究したアルフレッド・セイヤー・マハンがこのことばでロシア海軍指揮官が要塞砲の射程内にとどまり優勢な敵から自らを守ったことを指した。艦隊は要塞の前衛部隊になり、砲門数での不利を要塞の砲兵部隊で補った。
要塞艦隊の記述をするマハンの頭の中には旅順港があり、ロシア戦隊が母港にしていたが日露戦争(1904-1905年)で東郷平八郎提督率いる帝国日本海軍(IJN)の連合艦隊と対決を避け港内に留まり要塞砲の下で安全を確保していた。
 防備隊の砲火の範囲内では旅順港戦隊は安全だったが逆に戦果はほとんど上げていない。東郷司令官はロシア側が1904年8月に外洋で戦闘を挑みこれを簡単に殲滅した。おなじことが1905年5月に発生し、連合艦隊はバルチック艦隊と対馬海峡で対決したのだった。
 ロシア艦隊はIJN部隊を数の上で劣勢にしていた。だがその時に旅順港砲兵隊が数百マイル先から命中させられていたらどうなっていたか。ここからマハンの要塞艦隊の論法が拡大した。長距離支援が有効ならロシア艦隊が勝利をおさめていたかもしれない。劣勢な側でも勝てるのだ。
 そのまま今日に当てはまるものではない。要塞中国には航空基地が各地にあり移動式対艦兵器で数百マイル先の海上を狙える。それでも外洋では米海軍が優勢だ。沿岸戦力の増派を受けられない場所で艦隊対艦隊の交戦なら米国に有利だが、あくまでも仮説であり両国海軍が開かれた海域ではなく閉じられたアジア近海で対決する可能性が高いためどちらともいえない。
 海軍は大洋での大規模海戦に最適化しているだがその発生の可能性は最も低い。では一番可能性が高く最も危険なシナリオでの勝者はどちらか。マハンの時代から相当たち空母キラー手段で要塞艦隊の有効性が明らかになりそうだ。またこの状況が中国には都合がよい。■
James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific.
The views voiced here are his alone.

This first appeared in 2016.

2017年12月27日水曜日

日本向けKC-46の一号機製造へ:FMSでボーイングへ契約交付

KC-46は米空軍も苦労しており、2020年に日本向け機体が全部そろうか微妙です。それにしても3機と言うのはいかにも少ないですね。現在のKC-767とは全く違う機体であり、小牧基地も手狭なので配備場所は違う基地になるでしょうね。

Japan KC-46 acquisition moves forward

日本向けKC-46調達が前進

Boeing Japan
 26 DECEMBER, 2017
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: GREG WALDRON
SINGAPORE
空軍はボーイングに279百万ドルで日本向けKC-46給油機の一号機製造契約を交付した。
 日本の給油機能力整備で大きな一歩となる。日本は2020年を目指しKC-46三機の調達を2015年に決定していた。
 調達が完了すれば4機あるKC-767Jに加わることになる。KC-46調達は海外軍事販売(FMS)制度で進める。

 「今回の発注は日本との60年にわたる関係の上で重要で今後もKC-46事業でこれが継続されていく」とボーイングジャパン社長ブレット・ゲリーが述べている。「日本のKC-767給油機、E-767空中早期警戒指揮統制機の運用、整備部隊は機体を熟知しており、当社もさらにその能力を伸ばすお手伝いができるのを楽しみにしている」■

★日本、韓国がF-35の艦上運用を検討中

日本の狙いは理解できるのですが韓国にとってF-35Bを搭載する目的は何でしょう。まさか日本に負けたくないという面子ではないでしょうね。今年は「平和勢力」には大変な年になったのではないでしょうか。今まで盲信していた世界が崩れてしまったので。それだけ現実世界の重みがあるわけでぜひ目を開いて現実をみてもらいたいものです。あるいは、中国の代弁者になるつもりなのでしょうか。



Japan, South Korea may refit naval ships for F-35 fighters

日本、韓国がF-35運用用に艦艇を改修する可能性が出てきた


USSワスプ(LHD-1)から発艦するF-35 (Marine Corps photo by Cpl. Anne K. Henry/RELEASED)

By: Mike Yeo
本と韓国がそれぞれF-35ライトニングII共用打撃戦闘機の艦上運用案を検討中との報道が出ている。
 共同通信、聯合通信が伝えるところでは短距離離垂直着陸型のF-35B型により日本はいずも級DDHヘリコプター駆逐艦、韓国は独島級揚陸強襲艦を戦闘任務に投入可能な空母に転用する。
 共同によれば日本はF-35Bは南西部に伸びる島しょ部の防衛に投入し、通常型機材に必要な滑走路の設置ができない点を補完する。
 この戦略は北朝鮮の弾道ミサイル・核兵器整備に対応しながら中国の急速な軍事装備近代化に対応するものだ。
報道内容について12月26日小野寺五典防衛相はいずも級を改装しF-35運用を狙う予定はないと繰り返し否定しつつも防衛省は「日本の防衛能力の各種検討の実施」は常時行っていると発言した。
 F-35B運用が可能となればミッションの柔軟性と有効範囲が伸びる。聯合通信は韓国軍が「艦の戦略価値を最大化する」検討中との関係筋発言を引用した。いずも、独島はヘリコプターを14機、10機それぞれ運用する。
 F-35B搭載となれば両艦ともに内部外部で大改修が必要となり、飛行甲板にはF-35Bの垂直着艦時の排熱に耐える高熱対応改修が、また飛行甲板にもローリング離陸対応の形状変更が必要になろう。
 またF-35B用の弾薬類搭載のため強化弾薬庫を拡張し、航空燃料関連も拡大しヘリコプターより多い燃料消費量に対応する必要がある。
 ロイターはいずもにスキージャンプが追加されると見ているが、いずも級の全長は248メートル、独島は199メートルで両艦ともF-35Bのローリング離陸には十分な長さがあるのでスキージャンプは不要だ。
 日本、韓国ともにF-35Aを日本(42機)、韓国(40機)を発注している。
 日本が空母を保有すれば防衛姿勢が大きく変化し、論議を呼ぶ可能性がある。日本国憲法が「攻撃の可能性」のある装備取得を禁じていることを根拠に反対派があらわれそうだ。

だしコーリー・ウォーレスCorey Wallace(ベルリン自由大学東アジア研究大学院)は東アジアフォーラムで日本国憲法は特定の戦闘能力を明確に禁じていないと論じている。むしろ政府が「攻撃の可能性」を脅威の状況や国際関係にあわせて自衛隊全体の能力を解釈しているのであり、特定の能力を最初から攻撃的あるいは防御的と定義しているのではないと指摘している。■

B-52エンジン換装案がやっと始動する

Aerospace Daily & Defense Report

USAF Could Start Re-engining First Two B-52s By 2022


B-52エンジン換装をまず2機で2022年までに開始する

U.S. Air Force
Dec 21, 2017James Drew | Aerospace Daily & Defense Report

空軍によればボーイングB-52Hの1960年代製プラット&ホイットニーTF33-103エンジンは「2030年代まで維持できない」ため今後20年の運用を続けるにはエンジン換装が必須とし、試験用にまず二機が2022年度までに作業を受ける。
76機残る冷戦期の爆撃機には新型核長距離巡航スタンドオフ(LRSO)ミサイルの搭載が決まっている。
2050年代まで運航し次世代兵装、火器管制レーダーやその他電子装備に十分な電源を確保するため空軍はTF33エンジンと同寸ながら性能が高い民生エンジン8発に換装したいとする。
空軍が狙うのはTF33比で燃料消費が2割4割向上しながら十分な発電容量となる400から500kVAの確保だ。機体では電源系統の更新や完全デジタル式エンジン制御も必要だ。だが機体構造や機内搭載装備への影響は最小限に抑え離陸重量488千ポンドを維持したいとする。
エンジンメーカーや主要装備統合業者に詳細情報が2017年12月12日から13日の業界向けイベントで配布されている。
主要エンジンメーカーはすべて会合に参加し、GEエイビエーションプラット&ホイットニーロールスロイスサフランの他、ボーイングユナイテッドテクノロジーズのRohr、ノースロップ・グラマンL3テクノロジーズオメガエアD-Jエンジニアリングハネウェルスピリットエアロシステムズマギルエアクラフトパーツも出席していた。
当日のプレゼンテーションで政府側は「B-52には今後も長く活躍してもらい(2050年代以降も)たいがTF33では2030年以降はもたない」と説明。
配布文書では76機用と予備42基含めエンジン650基調達を検討するとある。当初は20基を調達しテスト用機材2機分とする。
機体や兵装の再認証手続きを回避するため空力特性変更は最小限とし機体の重心点も変更しない。
2018年度空軍予算に着手金が確保され、初期検討用に複数契約が交付される。その後主契約が一本に絞られエンジンの技術作業、生産、搭載に進む。
空軍が調達大日程を公開したのはこれが初めてで、エンジンメーカー、機体統合の最終決定は2020年と予想される。
まず2機から始め続いて実用型10機の換装を2026年度に着手し、残る64機の作業を2028年から2034年にかけ行う。実施になれば同機で最大規模の改修になる。
空軍はB-52G/Hエンジン改修を1971年から検討しており、TF33の8発を大型ターボファン4発に換装する検討から始めた。
以後9通り以上の検討がなされたが1990年代末から関心が高まり、国防総省は実行に移す気配を示さなかった。だがロシア、中国との競合の現実の前にLRSO巡航ミサイルの導入も決まり、空軍がやっと真剣になった。

最有力候補はロールロイスのBR725(推力16,000 lb.)、GEエイビエーションのCF34-10(18,000-lb.)。■

2017年12月26日火曜日

中国の大型水陸両用機AG600が初飛行に成功、今後の動向に注意

China's AG600 Amphibious Flying Boat Takes To The Skies On Its Maiden Flight 

中国のAG600水陸両用機が初飛行


It is the largest amphibious aircraft currently being produced and it's tailored to support China's extra-territorial claims.  

製造中の両用機では世界最大で中国の領土主張の一助となるよう設計されている

China's Homemade Amphibious Aircraft AG600 Makes Maiden Flight In ZhuhaiVCG—VCG VIA GETTY IMAGES
 BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 24, 2017

国の野心的なAG600水陸両用機プロジェクトについては以前もお知らせしているが昨日同機が初飛行に成功したので改めてお伝えする。
ほぼ737並みの機体は珠海空港(広東州)から離陸した。初飛行には派手さがないが中国メディア、ソーシャルメディアが取り上げている。
ロイターは同機を新華社が「海洋島しょ環礁の守り神」と表現していると伝えた。その表現は事実とそんなに離れているわけではない。AG600は他機がまねできない機能を実現し中国本土から遠く離れた島しょ部の領有権主張を支える手段となる。特に南シナ海で構築された人工島の支援に投入されるはずだ。
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
The AG600's aircrew deplanes after a successful first flight.
2016年7月にWar Zoneは以下お伝えしていた。
「中国による公式説明では同機は消火任務・救難任務に投入するとあるが同時に広範囲な海洋哨戒飛行を南シナ海で行うだろう。
中国の巨大「沿岸警備」艦と同様にAG600は漁船やエネルギー採掘船の捕捉、監視、追尾に使うのではないか。権益がぶつかる海域で他国の動向も監視するはずだ。
AG600で中国は南シナ海各地の人工島とくに滑走路がない地点へのアクセスが手に入る。ハブアンドスポーク方式でフィアリークロス礁にできた滑走路からAG600は人員、燃料、その他補給品を別の島に送る。長距離飛行能力で本土にも飛び、輸送能力が強まる。人工島の戦略的価値や有用性が高まる。
AG600は新型両用機として多様な任務に投入され遠からぬ将来に同機を原型に別の機体が登場するだろう。
AG600の武装化も容易にできるはずだ。レドームに戦闘機並みの小型レーダーを搭載すればリアルタイムで敵艦船の位置を味方ミサイル部隊に伝えることができる。主翼下にハードポイントが将来追加されるかが注目される。その場合、AG600は強力な制海用両用機材や対潜機に変わる
VCG/VCG VIA GETTY IMAGES
AG600は最大の水陸両用機で中国政府は17機を発注中で、今後この原型から専用型が登場すれば生産数は大はばに増えるだろう。
新型機をゼロから開発するのは大変な作業だ。中国もこれを意識してAG600輸出の可能性を模索している。350mphで飛行時間12時間との性能が本当なら有益な機体に見る国も出よう。AG600が消火機になる、あるいは乗客50名と貨物を遠隔地に運ぶのであれば需要は少ないが訴求力を感じる顧客があるはずだ。
まもなくフライトテストを開始する同機には今後も注視する必要があるが、中国が航空宇宙産業を世界規模にで成長させようとする中で同機は機微性の高い軍用装備を搭載していないため中国報道機関が同機の将来の活躍をあれこれ書き連ねるのは確実だろう。■

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