2018年5月21日月曜日

F-15は第五世代機をこうして撃墜する----イーグルはいつまで世界最高の戦闘機の座を守れるか

日本のF-15は改修を受けた機材と受けていない機材が混在していますが、米空軍のC型は大きな改修を受けていないようですね。ただしスクランブル回数など日本の機材は酷使されていますので構造強化策は待ったなしなのでは。それにしても長期間の供用に耐える余裕を持たせたF-15の原設計にはすばらしいものがありますね。

How an Old F-15 Just Might Kill Russia's New Stealth Su-57 in a 'Dogfight' 旧型F-15でもロシア新型ステルス機Su-57を「ドッグファイト」で撃破可能



May 18, 2018


ーイングF-15Cは世界最高の制空戦闘機と称賛され、104機撃墜しながら一機も撃墜されていないとの一方的な戦果を誇さすがの同機も供用期間が終わりに近づいているが、それでも有能な戦闘機であることに変わりはない。

米空軍はイーグル改修を先送りにしており、機材を今後も供用する方針が決まってから電子戦能力向上を行うとしている。ただしF-15Cを2020年代以降も供用するためには機体構造の大幅改修が必要であると空軍も認識しているが優先順位が高い事業に予算ねん出のためF-15C保有を断念する必要があると見ている。ただしF-15Eストライクイーグルは今後も供用を続ける。

しかしながら当面の間、F-15Cは空軍の制空戦闘機勢力の半数を占める存在のままだ。と言うのはロッキード・マーティンF-22Aラプターの配備数が予定の半数以下で終わったためだ。今後は新型の侵攻型制空戦闘機(PCA)をF-15CやF-22に代わる主力機として2030年代配備を想定するが、ロシアや中国も新型第五世代機の配備を進めているのは事実でスホイSu-57(PAK FA)はその例だ。

Su-57に新型エンジンが搭載されると速力、操縦性、ステルス、電子戦能力のいずれでも第四世代戦闘機に手ごわい存在になる。だが米空軍も黙って待つ気はなく敵ステルス機を打ち破る作戦があり、すでに作業が進行中だ。

その答えは長波赤外線で、現行ステルス機でには対策がない。対抗措置も今のところなく長距離からの長波赤外線センサーに有効な装置を既存機種に搭載するのは不可能だ。将来は長波赤外線センサーから探知を逃れる対策が生まれるだろうが、機材は設計しなおす必要がある。

ロッキード・マーティンが開発中のリージョンポッドLegion podによりF-15Cは長波赤外線捜索探知 (IRST) 性能を得ることになる。同社はポッドを130セット製造し、やはり同社製のIRST21赤外線センサーと高性能データ処理に組み合わせて長距離での探知追尾能力を実現し、「レーダーが使えない環境」に対応する。ボーイングが主役役企業となりロッキード・マーティンが技術、製造、開発、生産を担当する契約が今年中に成立する見込みだ。

「リージョンポッドは迅速な供給計画とともに他に比類のない性能で戦闘部隊の作戦能力を引き上げ、パッシブ攻撃能力の穴を埋めます」とロッキード・マーティンでミサイル火器管制・特殊部隊作戦サービスを担当する副社長ポール・レモが語る。「ボーイングとの共同作業は実績の裏付けがあり、米海軍向けF/A-18E/FのIRST21や海外のF-15用のIRSTの先例から米空軍F-15C用のリージョンポッドも成功はまちがいありません」

米海軍と業界関係者によると長波IRSTと高速データネットワークを組み合わせればステルス機の追尾が可能だという。IRST搭載機は追尾データの共有ができる。「これが海軍のステルス機対策」と業界関係者が述べていた。

リージョンポッドを搭載したF-15CならSu-57のようなステルス機の優位性を簡単に打ち消せる。Su-57を探知するとイーグルは強力なレイセオンAN/APG-63(v)3アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーでスキャンの焦点をあわせてロシア機の所在を把握することも可能だ。いずれにせよF-15CはSu-57追尾を続け長距離対応のレイセオンAIM-120D AMRAAMミサイルを発射する。

Su-57をAMRAAMで仕留められないとF-15Cが不利になる。ロシア機の操縦性は通常の域を超えているからだ。ただし、F-15C部隊は同様に操縦性が高いF-22相手に訓練を受けており、不利とは言えイーグルのパイロットはラプター相手のドッグファイトで勝利を収めることもある。さらに共用ヘルメット装着目標捕捉システムとレイセオンAIM-9XサイドワインダーでF-15Cには視程外対応つまりパイロットの頭の方向の敵機を撃墜することが優秀な性能が演習で実証ずみだ。

こうしてみると機体保守管理経費以外に機体構造改修のコストも必要だが、F-15C供用を続けることに価値がありそうだ。ただし機体の経年変化と敵脅威の深化を考えると次世代機材のPCAに資金投入するのが分別ある行動だろう。ただ議会がA-10退役を認めなかったことを考えるとF-15Cでも同様の事態が起こりそうだ。■

Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.

Image: Wikimedia Commons

2018年5月20日日曜日

V-280ティルトローター新型機のテストを順調に進めるベル

 

Bell V-280 Valor Conducts First Cruise Mode Test Flight as Program Advances ベルV-280ヴァラーが初の巡航モードテストを実施。テストは順調に進展中


May 16 2018
By Tom Demerly


のV-280ヴァラー軽量ティルトローター機がティルトローターによる水平飛行を初めて実施した。速力は190ノット(約350キロ)に達した。

V-280は中型戦術ティルトローター機として米陸軍が目指す共用多用途技術実証機 (JMR-TD) での採択を目指す。JMR-TDは陸軍がその先にねらう次世代垂直離着陸機(FVL)に繋がり、現行の回転翼機5機種の後継機となる。V-280ヴァラーはJMR-中型攻撃多用途ヘリコプターとしてUH-60ブラックホークとAH-64アパッチ攻撃ヘリの後継機として提案されている。

ベルV-280は最大速度280ノット(約520キロ)といわれ、「V-280」の名称はそこから来ている。UH-60の最高速度が192ノットなので相当早くなり、海面上最大速度が305ノット(560キロ)のMV-22オスプレイに相当する。

V-280は14名までの武装兵を搭乗員4名(飛行要員2名、銃手・ロードマスター2名)で運ぶほか、攻撃ヘリの機能も実現し、各種兵装を搭載する。高温高地飛行条件「ハイアンドホット」は回転翼機には厳しい環境だがV-280はこの条件に最適化されている。

外観上はV-22オスプレイに似るが、V-280のエンジンは固定式でティルトローターの重心が移動する。このためV-280はエンジン単発でも運航可能だ。だがV-22ではエンジンナセル左右が垂直飛行から水平飛行への切り替え時に回転する仕組みで各エンジンは完全に独立しながら、複雑なギアボックスで連結されているので片方のエンジンで飛行可能となる。
V-280の主翼は一枚構造の複合材になっているのがユニークな点だ (Photo: Bell Helicopters)

V-280でもう一つ特徴的なのは主翼でカーボンファイバー複合材一体構造になっていることだ。この複合材には大型セルカーボンコア技術が利用され、V-22の主翼よりコストで3割も下がっている。一枚構造のため片方のエンジンだけでも双発ティルトローター機として十分に機能出来る。

このベルV-280ヴァラーの競合相手がシコースキー-ボーイングSB-1デファイアントで、反転回転ローター二枚と「プッシャー」型のテイルローターを持つ、従来型のヘリコプター形状に近い機体構造であると言える。

V-280はフライトテストで先行し、飛行時間は27時間に達し、地上でのローター回転は計90時間に達している。同機は地上タキシーとホバリング能力を既に実証しており、低高度機体取り扱い性の津推して360度ペダル回転や前進・後退での取り回しを行っている。

V-280の次の段階は最大速度による飛行で90日以内に実施する。ベルの執行副社長ジェフリー・シュロッサーは今夏中に要求性能の確認を大部分終えるとの見通しをAviation Weekに述べている。

同機テストで興味深いのはエアロL-39ジェット機がチェイス機で随行していることで、V-280の飛行速度が順次引き上げられているための措置だ。■

2018年5月19日土曜日

北朝鮮を一隻で壊滅可能なオハイオ級ミサイル原潜の現況と今後

北朝鮮が本来の不良ぶりを堂々と示すようになり、米国も軍事オプションが現実になる事態を想定しているようですが、姿の見えないミサイル原潜とくにSSGNを使っての北朝鮮軍事目標の同時攻撃の可能性が増えるのではないでしょうか。SSBNも一次攻撃に投入可能と言うのはちょっと驚きですが。



The Navy Has 1 Nuclear Missile Submarine That Could Destroy North Korea 一隻で北朝鮮を壊滅可能な米海軍核ミサイル潜水艦



May 16, 2018


島、長崎への原爆投下から9年後に封切られた映画「ゴジラ」は深海から目覚めた怪物が日本を襲う筋書きだったが、火を噴く爬虫類よりも恐ろしい怪物がその後登場した。現実の野獣が同時に海中に登場しそれぞれ複数都市の破壊能力を秘めていた。米海軍用語で「ブーマー」と呼ぶ弾道ミサイル潜水艦部隊のことだ。

現在海中に潜むのはオハイオ級弾道ミサイル潜水艦14隻で米国の核兵器の半分以上を搭載している。

オハイオ級各艦は人類史上最大の破壊兵器を搭載している。各艦が24発のトライデントII潜水艦発射弾道ミサイル(SLBMs)を海中発射し最大7千マイル以上先の標的を攻撃できる。

トライデントIIが大気圏再突入すると速度は最大マッハ24で独立再突入体8つに分離し、各100から475キロトンの弾頭になる。オハイオ級潜水艦一隻が全弾発射すればわずか一分間で最高192発の核弾頭で24都市が地図の上から消えることになる。まさに黙示録級の悪夢の兵器だ。

このオハイオ級に一番近い存在がロシアが一隻だけ温存するタイフーン級潜水艦で、艦体は大きく24本の弾道ミサイル発射管を有する。中国、ロシア、インド、英国、フランスの各国が弾道ミサイル潜水艦複数を運用し搭載ミサイルはそれぞれ異なるが、先進国の主要都市なら数隻で完全に破壊できる。

一国をまるまる破壊可能なこのような怪物の存在はどう正当化できるのだろうか。

核抑止力理論では初回攻撃で地上配備ミサイルや各爆撃機部隊が消滅しても、音もたてずに深海を遊弋している弾道ミサイル潜水艦の追尾は極めて困難なため、潜水艦まで全滅するとは考えにくいとする。弾道ミサイル潜水艦による核報復攻撃は阻止されないため、まともな国家なら第一次攻撃や核兵器投入をためらうはずだ。少なくともそういう期待がある。

トライデント搭載のオハイオ級潜水艦はこれまで一回も怒りに任せた発射をしないことで任務を成功裏に進めてきたのだ。

オハイオ級の供用開始は1980年代で5型式あった弾道ミサイル潜水艦41隻の代替だった。潜航時18千トンとなった新型ブーマーは現在でも米海軍で最大規模の潜水艦だ。また世界で三番目に大きな艦体を誇る。USSヘンリー・M・ジャクソン除き各艦には州名がつくが、これは過去の大型水上戦闘艦の命名方式を踏襲したものだ。

核兵器の応酬となれば超低周波通信でブーマーに発射命令が入る。各艦のミサイルは事前に目標設定されているが、座標再入力で攻撃目標を迅速に変更できる。オハイオ級の最初の8隻はトライデントI C4弾道ミサイル発射の想定だったがこれは先のポセイドンSLBMの改良版だった。ただし今日ではブーマー全艦により高性能のトライデントII D5が搭載され、射程が5割伸びて命中率が極めて高く、第一攻撃手段としても軍事施設を正確に撃破できる。

オハイオ級は21インチ魚雷発射管4門でマーク48魚雷も発射できる。だがあくまでも自艦防御用であり、弾道ミサイル潜水艦の役目は敵艦撃破ではなく、可能な限り深く静かに潜航して敵探知を逃れることだ。原子炉によりほぼ無限大の潜航が可能で20ノット巡航潜航してもノイズはほぼ出ない。

各軍ではその時の状況に応じ活動を展開することが多いが、原子力弾道ミサイル潜水艦は通常通りの哨戒活動を一貫して行い通信連絡も最小限にとどめ可能な限りステルスに徹している。オハイオ級各艦には154名からなる士官、下士官の乗組員チームがゴールド、ブルーの名称で交代で艦を70日から90日に及ぶ潜航哨戒に出す。最長記録はUSSペンシルヴェイニアの140日だ。平均一か月を哨戒にあて、物資再補給には艦にある大型補給用ハッチ三か所を活用する。       

太平洋方面にはワシントン州バンゴーを母港の9隻、大西洋にはジョージア州キングスベイを拠点に5隻のブーマーがそれぞれ展開する。冷戦終結後の戦略兵器削減条約で米核戦力は縮小されたが、初期建造艦4隻は巡航ミサイル搭載艦に改装され通常型兵器で陸上水上の標的を攻撃することとなった。まずUSSオハイオが改装された。

他方で新START条約が2011年発効し、核兵器がさらに削減される。現行案ではオハイオ級は12隻とし、各艦にトライデントIIミサイル20発を搭載し、残るブーマーのうち2隻をオーバーホールすることとし合計240本のミサイルで弾頭1,090発を投入可能とする。これを聞いて心穏やかでなくなるタカ派も心配無用だ。これでも世界を数回破壊できる威力があるからだ。

オハイオ級は2020年代末まで供用され、それまでに追加音響ステルス改修を受けるが、最終的に後継艦コロンビア級に座を明け渡す。次期ミサイル原潜は単価40億-60億ドルとみられ、建造隻数は少なくなるが新型原子炉を採用し供用期間途中での高額なオーバーホールや燃料交換が不要となる。2085年までの供用が可能となる。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

2018年5月18日金曜日

在韓米軍の撤退、縮小は可能なのだろうか

日本にとっても状況に踊らされない冷徹な地政学的思考が必要です。冷戦が終わるのかどうかは別としていつも考えたくない事態も考えておく必要があり、北朝鮮が存続し続ける事態が現実になる可能性も受け入れなければなりません。(これは以前も指摘しています。悪の体制でも受け入れるかは道徳の問題ではありません)その一方で北朝鮮指導部はこうした思考を叩き込まれていますので平和ボケした日本がだまされないように思考を鍛える必要があると思いませんか。

 

Could America Pull Troops Out of South Korea If It Wanted? 在韓米軍の撤退は可能なのか



May 11, 2018


界はひたすら待ち続け見守ろうとしている。強硬な制裁措置、瀬戸際外交、核の「レッドボタン」の脅かしが金正恩による核兵器放棄につながるのかを。少なくともこうした米政策が金正恩とトランプ大統領の頂上会談に繋がったことは確かなようだ。
前例はある。核兵器開発を自主的に放棄した国がある。南アフリカ、ブラジルだがそれぞれ民主政体が生まれたのが核放棄の引き金となったのであり、外交包囲を受け制裁の恐怖から放棄したわけではない。ソ連解体でウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンも核兵器を放棄したが、すべてロシアへ返却している。(ウクライナはこの決定を今になって後悔しているはずだ)
一方でイランに対しては厳しい目が向けられている。合意事項では10年間凍結とあり、核兵器開発を永遠に断念させる内容ではない。米国が合意から脱退すると発表したことでイランが核兵器開発を目指すのか断念するかが見えにくくなっている。
開戦は選択肢に残ったままだが、いったん戦闘となれば壊滅的被害が発生すると承知する米政府があえてこの選択肢をとるとは思えない。歴史では戦闘で核兵器廃絶を目指した例は少ない。2002年に米国はサダム・フセインのイラクに核含む大量破壊兵器廃棄を求めたものの結局同国内に対象兵器はなかったと判明した。ただしイラク侵攻作戦で生まれた前向きな副産物はリビアのカダフィに核兵器の自主的放棄をさせたことでこれは米国の次の標的が自国だと恐れたためだ。この前例で生まれた効果も米国がカダフィ放逐を支援したことで肝心の核兵器自主廃絶が途中で止まり見えにくくなった。残る二例がイラクとシリアでともにイスラエル空軍が核施設を空爆したことで兵器開発に移ることができなくなった。
これらからわかるのは核兵器を自主的に廃絶させるよう独裁政権を説得するのは容易ではなく、開発が進行する前なら軍事攻撃も有効な手段であることだ。米国は北朝鮮に制裁措置をほぼ60年間にわたり課してきた。強硬外交、制裁の後で行う頂上会議は成功につながる可能性もあるが逆の側面も見ておく必要がある。
重要な問題が残ったままだ。これだけの外交圧力や制裁をものともせず金正恩が自信たっぷりだったり、頂上会談が不調に終わる場合、あるいは開戦以外の選択肢を迫られる事態になった場合、米国に何ができるのだろうか。
歴史をみれば1953年の朝鮮戦争休戦協定が重要だ。当時の韓国は世界有数の貧困国で国民所得は一人当たり64ドルでアフリカ最貧国並みだった。戦闘で経済は崩壊し、数百万人が死亡し家族は離散の辛苦を味わった。韓国軍の実力では北朝鮮の侵攻が再度あった場合に国土防衛は全く不可能だった。
米国が手を差し伸べ韓国を侵略から守る盾を提供する必要があった。68年にわたりこの盾は数世代にわたる米駐留軍により永続的存在となり、韓国軍も米軍組織と考え方に倣い整備されてきた。
ただし同時に韓国は経済上の奇跡を実現し、最貧国から世界有数の富裕国へ変身した。2017年の韓国経済は世界11位の規模でIMF調べではGDPは1.5兆ドルとある。北朝鮮経済は暗黒時代といってよくGDPは韓国よりはるかに小規模の250億ドル。人口でも北はかなわなず54百万人に対して韓国は二倍の人口だ。.
冷戦時代は在韓米軍は75千名から44千名の間を保っていた。今日の在韓米軍は司令部をDMZ近くにおき、23千名が韓国国内に常駐し強力な装備を誇る。米陸軍の第二歩兵師団の航空旅団はAH-64アパッチ・ロングボウヘリコプターがあり、北朝鮮侵攻に対し第一防衛線として砲兵旅団も待機している。米軍ではドイツに次いで世界三番目の戦力が韓国に駐留する。
経済同様に韓国軍も1953年から大変化を遂げてきた。常備軍は625千名をこえ、さらに高度訓練を受けた予備役が520万名ある。韓国軍は世界第七位の戦力と位置付けられ、韓国陸軍の56万名は米陸軍正規兵が合計475千名なので規模の上で凌駕している。
米陸軍が世界各地で任務にあたるのに対し韓国陸軍の対象は一か所に集中できる。北朝鮮侵攻を160マイルに及ぶ国境線で撃退することだ。このため韓国には400機におよぶ高性能戦闘機があり、F-15やF-16に加えF-35も加わる。さらに戦車2,600両、戦闘装甲車両3,400両、火砲5千門がある。韓国製のK-2黒豹戦車、K-21歩兵戦闘車両、K-9自走迫撃砲で構成する機械化歩兵もある。さらに韓国陸軍は厳しい訓練で北朝鮮の通常型奇襲攻撃に備えている。
では65年も経過した今、米軍23千名の韓国駐留で初期防衛にあたらせることは絶対必要なのだろうか。過去60年間で状況は大きく変化しているが、大規模軍事プレゼンスを韓国国内に維持するのは米安全保障政策上で不動の原則とされてきた。純粋に軍事的観点で韓国には米通常戦能力が必要と主張する向きがあるが、こうした能力は韓国軍に短期間で段階的に肩代わりさせるべきだ。
紙の上では北朝鮮の常備軍百万名は強力に見えるが、北が韓国を短期間で制圧できるかは仮に米軍が現行の軍事力を朝鮮半島に維持しなくても疑問だ。装備が旧式で補給能力も限定される中で北朝鮮軍内部にも飢餓状態があり、農家に押し入り食物を探すというのでは無敵軍の印象と程遠い。北朝鮮が1950年同様の侵攻作戦を再現できる可能性は限りなく低く、在韓米軍が現行の23千名体制を下回っても勝利を収められないだろう。
米軍のプレゼンスを維持する軍事上の必要性は十年前とはいかずも数年前に消滅していたのだろうが、米外交政策が半面でそれだけ進化しておらず力の均衡の現実を反映していない。皮肉にも米国は韓国に大規模通常兵力を維持することを当然と思い込んできたが、必ずしも軍事上の必要からそう思ってきたのではなく、むしろ自国の信用度の維持が目的となってしまっていたのだ。この場合は韓国に向けてというよりもアジア全体に対して太平洋国家として示してきたといってよい。
米国が孤立主義に回帰するのではと見られる中で在韓米軍が撤退すればアジアからの戦略的撤退と受け止められかねず、逆に北朝鮮外交の勝利とみなされる。米国は戦略上で動きがとれなくなっている。対立の構図が変化してしまった。北朝鮮と米国が核対決を経た中で韓国に米軍プレゼンスを置く理由が忘れられがちだ。もともとは北朝鮮による通常型攻撃に備えるのが目的だったはずだ。米政権は北に非核化を求め、従わない場合は「すべての選択肢」がテーブルの上にあると警告している。皮肉にも在韓米軍のプレゼンスの基礎条件が核対立の前にかすんでしまったのである。
ただし現在進行中の力学で朝鮮半島の意義について再評価する機会が米国に生まれ、従来より現実的に軍事バランスを見直すことが可能となっている。そこには韓国軍の実力向上と中国の台頭も変化の一部としてとらえるべきだ。  
中国が米国と連携して北朝鮮に核兵器を平和的に放棄させるべきと考える向きが多い。中国は静かに圧力をかけて北朝鮮向け制裁措置を課しているが、中国の協力は絶対条件ではない。中国が米国に外交圧力をかけているのは疑う余地がないものの、これは中国にとって米国が東アジアで最大の競合国だからだ。中国からすれば米国があまりにも各地に国力を割いている状況を利用しない手はないのであり、冷戦時代と比べても米国の経済、軍事影響力の低下を把握している。
中国からすれば現在の米国は戦略的に勢力を分散させすぎており、朝鮮半島以外でもアフガニスタンからイラン、ロシア、アフリカ、南シナ海・東シナ海と各地で軍事的挑戦に晒されていると映る。また米国の財政赤字が増える中で世界各地での軍事コミットメントが減っておらず、中国はこれを横目に朝鮮半島戦略では米国に圧力をかけ続け、米国に一層の負担をさせることをねらう。中国も朝鮮半島での核戦争は望まないものの、米国に朝鮮半島問題に当たらせることで中国の外交政策上の目標は達成できると見ている。
戦争一歩手前で、あるいは北朝鮮に核兵器開発の選択肢を断念させる圧力をかけるため、米国には北朝鮮と言う国を1950年代より広範囲の戦略課題として位置付ける現実的な見方の政策が必要だ。1950年代は通常戦侵攻シナリオが主流で以後これが維持されて相当の時間が経過している。核抑止力が北朝鮮に今後も有効に機能すると想定するが、これは中国やロシアに対しても同様であり、北朝鮮が未来永劫に米国への脅威のままであるはずがない。現行の政策は厳しい国連の貿易制裁と核抑止力が中心だが、このまま無期限に維持すれば財政負担を生み、米国の財源を使い切る事態にもなりかねない。
核の傘の下で米国は条約上の義務を履行しながらも強力で富裕国になった韓国に北朝鮮による通常攻撃を食い止める主力の座を期待し、自らは縮小した米軍司令部が後方支援する形でその後到着する米軍戦力の展開を調整すればよい。
この見方をすれば北朝鮮は直接の脅威というよりも戦略上の要注意対象と言った存在になるが、一連のもつれをほどくのは単純な作業ではない。とくに米国の信用度を維持する課題を考慮すれば。現政権が在韓米軍の見直しをしていることには戦略上の意味が大きいが実際に一部にせよ撤兵を実施すれば微妙な均衡の確保が必要となり、かつ米国力の退潮の現れ、アジアからの撤退と受け止められない工夫が必要だ。このため米韓両国政府では今後も米戦術核の朝鮮半島再配備問題が議題として残るはずで、実際に昨年北朝鮮が水爆実験をした直後に検討内容に取り上げられている。
米軍の韓国撤退は交渉材料となるのか、あるいは核をめぐる頂上会談で議題に上らないのかもしれないが、戦略上は大きな話題であることは間違いない。米陸軍は数十年に及ぶ朝鮮半島駐留を終えて第二歩兵師団を本国に送還することになるのかもしれない。利用可能となる重要装備は将来の緊急事態への対応で使えるはずで、これは朝鮮半島に限らず世界各地が対象となる。巧妙に取り扱えば、在韓米軍の撤退は孤立主義への回帰ではなく戦力配備の戦略的再検討として米軍が将来の地球大での課題に対応する能力の裏付けとなり、過去65年ずっと変わらなかった凍り付いたシナリオから解放されるのだ。■
Ramon Marks is a retired New York international lawyer.
This article originally appeared on Real Clear Defense.

Image: Wikimedia Commons

2018年5月17日木曜日

そして豪潜水艦選定の決め手は国内産業維持に向けたフランス流の美辞麗句だった

なるほど選定の決め手は潜水艦そのものよりも弱体化を恐れるオーストラリア産業基盤の強化にあったわけですか。(オーストラリアではすでに自動車産業は全部撤退していると記憶)しかしこれは防衛上は禍根を残す決定になりそうですね。一方で、産業政策はお手の物だったはずの日本ですが、そうりゅう級売込みではフランスほど踏み込んだ構想を提示できなかったようですね。この事案から日本が何を学んだかが次回問われそうですね。

Australian government releases Naval Group submarine industry plan Naval Groupによる潜水艦産業構想を豪政府が公表

オーストラリア政府が次世代潜水艦建造に関連した国内産業基盤整備構想を公表した。同国はショートフィン・バラクーダ級潜水艦12隻の建造を狙っている。Source: Naval Group

Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Industry
13 May 2018
この記事のポイント
  • フランス造船企業からオーストラリア国内に「オーストラリア主権のもとかつ長期にわたる」産業基盤を構築すると提案
  • 事業案は技術移転、雇用創出、輸出、運用訓練を想定


ーストラリア政府がフランス造船企業Naval Groupが提出した次世代潜水艦12隻の王立オーストラリア海軍(RAN)向け建造計画案を公表した。

これまでは極秘扱いだったが、野党政治家レックス・パトリック上院議員に対抗する形で国防相マリーズ・ペインMarise Payneが5月10日に公表した。同議員は総額500億オーストラリアドル(380億米ドル)の同事業にもかかわらず政府が現地参画を強く求めていないと批判していた。

Naval Group(旧DCNS)が選定されたのは2016年のことでバラクーダ級攻撃型原子力潜水艦を通常動力に改造する構想だ。オーストラリア産業界向け構想(AIP)を発表したペイン国防相は今回発表の文書が出てきたことが同社選定に繋がったことを明らかにした。

AIP原案は2015年11月の日付で60ページにわたりるが一部は検閲で消されている。Naval Group は「DCNSのめざすものはオーストラリア国営かつ長期にわたる産業基盤をオーストラリア向け次世代潜水艦建造事業を通じて実現し同潜水艦の供用期間を通じて革新的な解決方法を提供していくこと」と記している。

同社はさらに「DCNSは知識移転戦略を行使し、知識を目的に応じて活用しながらイノヴェーションをはぐくむ環境を通じ艦システムを統合し、戦闘システムを統合することでオーストラリア産業基盤が艦の性能をあますことなく実現し、将来型潜水艦建造運用を同国主権のもと長期にわたり維持できるようにする」とも述べている。■

2018年5月16日水曜日

これがフランスの新型原潜バラクーダ級だ

いまだにオーストラリアがまだ実艦が存在しないバラクーダ級改を採用した理由がわかりませんが、艦の大きさが決め手だったのでしょうか。よくわかりません。


France Is Building a New Nuclear Powered Submarine. Here Is What It Can Do. 

フランスが建造中の新型原子力潜水艦の能力は?



May 12, 2018


ランスが攻撃型原子力潜水艦を追加発注した。
国防大臣フローレンス・パルリが主催した5月2日の大臣間投資会合を受けて、フランス政府はバラクーダ級原子力攻撃型潜水艦の5号艦発注を発表した。この前にフランス海軍参謀総長クリストフ・プラザック大将が議会で昨年10月に5号艦の発注が近づいていると発言していた。
さらに2019-2025年にかけての国防予算原案が2018年2月に発表され、その中でバラクーダ級6隻の建造予算の言及があった。艦名はシュフランSuffren、デュゲイ=トルーアンDuguay-Trouin、トゥールヴィルTourville、デュプティ=トゥアールDupetit-Thouars、デュケーヌDuquesne、ド・グラースDe Grasseと決まっており、一号艦のシュフランは2020年に海軍へ引き渡し予定だ。
パラクーダ級の建艦工程は1998年に始まったと国防関連データベースGlobal Securityが特記している。建艦に向けた設計作業はその四年後の2002年に始まり、2006年にフランス国防省が国営艦船建造企業DCN(その後DCNSに、さらに今日はNaval Groupへ社名変更)に79億ユーロ(93億ドル)で発注された。原子力関連部分はArevaが担当する。原子炉はフランス海軍の原子力空母シャルル・ドゴールの炉を原型とするが、フランスは高濃縮ウラニウムを使わず民生市場で核燃料を調達する。
バラクーダ級では原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)ル・トリオンファン級の最終艦ル・テリブルで採用した戦闘制御システムSYCOBSを採用する。Naval Technologyによれば「同システムはアクティブ、パッシブ双方のセンサー、電気音響視覚の各センサー、データ処理、外部戦術データダウンロードの処理、魚雷、ミサイル、対抗措置の制御、外部通信、航法をすべて統合する。通信装備には衛星通信や超長波リンクを使う」とある。
完成すればバラクーダ級SSN各艦は四隻残るリュビ級潜水艦、二隻在籍する改良型アメティスト級に交代する。新型潜水艦は潜航時おおむね5,300トンでリュビ級のほぼ二倍となる。艦体は大型化するが新型バラクーダ級乗組員は60名のみと現行艦より10名少ない。全長99.5メートル、全巾8.8メートルで最大深度は350メートルとなる。潜航時の巡航最大速度は25ノットと言われる。
兵装では533mm魚雷管4本で魚雷あるいはミサイル発射管18から20本をミッションで使い分ける。「F21魚雷、エクゾセSM39ブロック2Mod2対艦ミサイル、MdCN(巡航ミサイル)、FG29機雷を搭載する」との元関係者証言もある。
新型潜水艦でフランス海軍は二種類の新しい機能を実用化する。まず対地攻撃能力でこのため空中発射式巡航ミサイルスキャルプEP(英国名称ストームシャドウ)の改装が進んでいる。Naval Technologyによれば「長距離精密攻撃能力があり最大1,000キロの攻撃能力がある。スキャルプには慣性誘導で飛翔中もデジタル地形マッチングとGPSによる補正を行う。赤外線イメージシーカーと自動標的認識能力で最終誘導を行う」とある。また「同ミサイルは潜水艦魚雷発射管からと水上艦の垂直発射管の双方での運用を目指す」
次の新機能は特殊部隊チームを上陸させることでフランスが展開中の北アフリカでの対テロ作戦をにらむと有益だ。さらに無人水中機(UUVs)の運用も将来実現できる設計だともいわれる。
就役前の艦であるが、バラクーダには海外からの関心も集まっている。まず、オーストラリアが通常動力型のショートフィン・バラクーダを現行コリンズ級の後継艦として実績のあるドイツ提案の216型、日本のそうりゅう級を押さえて採用している。さらに韓国がバラクーダを国産原子力潜水艦の原型として注目している。韓国にとってバラクーダ級の魅力は前述のように高濃縮ウラニウムが不要な点だ。■
Zachary Keck is a former managing editor of the National Interest and the official foreign-policy advisor of the 06010. He tweets at @ZacharyKeck.

Image: Wikimedia Commons

2018年5月15日火曜日

海兵隊F-35Bが空自F-35A他と三沢で共同訓練中

Marine Corps F-35Bs train with Japanese F-35A fighters for first time 

海兵隊F-35Bが航空自衛隊F-35Aと初めて共同訓練中




三沢基地に到着した航空自衛隊初の作戦仕様のF-35A Jan. 25, 2018.BENJAMIN STRATTON/U.S. AIR FORCE

By JAMES BOLINGER | STARS AND STRIPESPublished: May 10, 2018

MARINE CORPS AIR STATION IWAKUNI, Japan — 米海兵隊所属F-35BライトニングII戦闘機8機が日本所属のF-35Aとの共同訓練に入った。

本日始まった訓練(航空機移動訓練)は5月22日までの予定で三沢基地で展開し、自衛隊からは三沢基地所属のF-2戦闘機4機、航空自衛隊のF-15が4機千歳基地から、さらにAWAC1機が浜松基地の空中警戒統制部隊から移動して参加している。

今年の訓練では海兵隊岩国基地からF-35Bが初めて参加している。訓練は1997年以来毎年実施されている。

各機は空対地攻撃含む戦闘訓練をすると現地報道にあり、三沢にある射爆場を使う。

「三沢航空移動訓練で海兵隊や海軍にも米空軍や日本の自衛隊との共同訓練の機会が生まれ、相互安全保障の精神でF-35ミッション実施の技を磨くことができます」と海兵隊航空集団12司令官マーク・パーマー大佐が声明を発表している。

日米の空軍部隊は航空自衛隊向けF-35Aの作戦機材一号機の三沢基地配備を今年早々に祝ったばかりだ。航空自衛隊はまず10機で第五世代戦闘機飛行隊を結成する。

F-35Aは通常型の離着陸を行うが、海兵隊向けの短距離離陸垂直着陸型のB型と機体構造他は共通している。

日本はF-35Aを42機調達しF-4ファントムIIと交代させる予定。■

2018年5月14日月曜日

F-22、F-35が発進回収可能な無人機運用の母機となり空中空母となる日が来る

現時点のUASは遠隔操縦機であり、自律操縦機ではないため、言葉の使い分けが要注意です。空軍ではパイロットが最上位の文化のため戦闘機については無人化は当面実現しないのでは。B-36を空中空母にして護衛戦闘機を運用する構想は1950年代にありましたが、回収技術がどうしても確立できずスクラップになっています。今回の技術が本当に実現すれば60年以上たって空中空母が生まれそうですね。



F-22s & F-35s Will Launch Recoverable Gremlins Attack Drones F-22とF-35からグレムリン攻撃無人機の発進回収が可能となる

DARPAのグレムリン事業ではC-130からグレムリン4機を発進回収する
By Kris Osborn - Warrior Maven
空軍のF-22とF-35で回収可能の攻撃型無人機をコックピットから操作操縦することが可能となり、敵防空網突破や長距離ISRの他、兵装運用も可能となる。
急速に進歩する技術によりDARPAのグレムリン事業で自律航法が現実のものになりそうで、とりあえず来年に飛行中のC-130から無人機を四機発進させ、回収も行う。
あと数年で回収可能無人機が実用化されるとミッションの選択肢が広がり、長距離運用、改良型センサーペイロード、高性能兵装を搭載したうえ空中指揮統制が可能となる。
「第五世代機のF-35やF-22での脅威対処を目指し、高リスク空域でグレムリンを運用する道を模索する」とDARPAは声明を発表。
ここ数年にわたり消耗品扱いの無人機では空中発進させる技術、地上操縦指示が不要な無人機が実用化されている。これに対してグレムリンでは母機が発進回収できる点が違う。
事業はフェイズ3に進んでおり、DARPA資料ではDynetics社と新規実証開発で合意ができており、同社がC-130から空中発進・回収を行う。
「DARPAは無人航空機複数の空中発進・回収の実証に向けて進んでおり、2019年が一つの目標だ。第三フェイズは最終段階で目標は低コストで再使用可能UASつまり『グレムリン』の空中回収の実証」とDARPAは発表している。
技術のカギは高度の自律航法でこれにより広範囲のミッションに可能性が出る。そのひとつに長距離攻撃能力があり、空中発射式無人機は目標地点にそれだけ近く移動距離を短縮できる。空中発射式の回収可能無人機に高性能センサーペイロードを搭載しISRや攻撃ミッションにあたらせればもっと意味が出てくる。
ユマ実証実験場でのフライトテストでは母機からの分離と回収を安全に出来ることが確認されている。
「これまでのフライトテストでグレムリン4機を30分間で回収する目標は十分達成可能と判明している」とDARPA戦術技術室の主幹スコット・ウィアズバノウスキが文書で回答してきた。
グレムリン一機には150ポンドまで各種センサーを搭載できるとDARPA文書に説明がある。
この技術が成熟化すれば技術陣は次の課題も増えるとDynetics技術陣がWarrior Mavenに語っている。飛行中のC-130に無人機を安全に回収するのは前例がない高度技術的課題だ。
「この問題のカギはソフトウェアの冗長性で機材をC-130のそばまで持ってきてから操縦を安定化させることなんです」とDyneticsでグレムリンの技術副主任のティム・キーターが取材で語っている。安定してから無人機はC-130貨物庫に安全に格納されるのだという。
「このため精密航法が不可欠で機体も十分な強度が必要です」(キーター)
今後実施される無人機の空中回収実証の準備としてDyneticsは模擬母機から安全に空中分離を行っている。
無人機の自律運用技術で進歩がもうひとつある。人員1名で無人機複数を制御し指揮統制する機能の実現だ。空軍参謀本部の主任科学者をつとめたグレゴリー・ザカリアスが取材に答えてくれた。
現時点では人員複数で無人機一機を制御しているが、アルゴリズムの改良で無人機運用に必要な人員数は大幅に減る。ザカリアスによれば将来は一人で無人機10機ないし100機を制御できるようになるという。
改良アルゴリズムによりプレデターやリーパーが戦闘機のあとを追い、地上要員による飛行経路制御なしで自律飛行できるようになる。
地上の自動装備のアルゴリズムでは予期できない動きやその他移動物体への対応が必要だが、空中からの飛行制御ならはるかに簡単で実現の可能性も高い。
地上と比べれば空中の障害物ははるかに少ないので無人機のプログラミングは単純で「ウェイポイント」と呼ぶ事前設定地点へ移動させれてばよい。
米陸軍は無人有人両用技術をヘリコプター用に進歩させており、アパッチ、カイオワ双方で乗員がコックピットからUASの飛行経路を制御できる。陸軍によれば同技術はアフガニスタンですでに成果を上げている。
空軍上層部は次世代爆撃機となるB-21レイダーは有人無人ともに運用可能となると発言している。
2013年9月に空軍はボーイングと無人F-16を初の超音速飛行に成功し、基地に帰還させている。
無人機技術の進展は確かに早いが、科学技術陣や兵装開発関係者の多くの見方はパイロットは依然として必要とし、想定外の事態が発生した際のヒトの頭脳の対応速度がその理由だ。
UASでは地上制御要員の指示に反応するまで通常ずれが二秒あり、戦闘機では有人機パイロットが必要と言うのが空軍関係者の主張だ。

したがって輸送機や爆撃機のように高度の機体操縦性が必要ない機材が自律飛行実現で先行し、戦闘機は依然として有人操縦の効果が大きいというのが空軍の説明だ。■
ご参考 Dynetics社によるコンセプトビデオ