2019年1月25日金曜日

これが無人自律型舟艇による海軍作戦の原点になるのか 米海軍が新技術をテスト中

Navy to Test "Ghost Fleet" Attack Drone Boats in War Scenarios 米海軍は「ゴーストフリート」攻撃無人ボート集団を演習でテストする


Textron

海軍は相互接続した小型攻撃無人舟艇多数を模擬戦に投入し指揮統制技術を磨き将来の「ゴーストフリート」自律型ネットワーク水上舟艇による戦闘に備える。

海軍研究本部(ONR)と海軍水上システムズム本部が開発した「ゴーストフリート」構想は監視、対応、制圧、攻撃を無人装備で統合しておこない人員は安全な距離をとった母船内にで安全なままでいられる。

小型舟艇各種の中で無人水上艇USVと呼ばれるものは海上ISRミッションを行い、機雷を探知破壊し、電子戦のほか搭載機銃で各種攻撃も加える。高性能コンピューターアルゴリズムを活用し自律性をこれまで以上に引き上げて水上戦に対応させ、各艇は情報交換しながら相互に衝突することなく協調した形で攻撃ができる。

「ゴーストフリートで指揮統制や通信面に効果がでます。今回の実証でUSVの運用で知見を得られます」と無人海洋装備・無人小型水上戦闘艇事業主幹ピート・スモール大佐はWarrior Mavenに語ってくれた。

通信技術、ネットワーク技術が急速に進展する中、無人装備による各種の任務が可能となっており、陸海空、さらに水中で実現している。制御卓にすわる人員は低帯域通信で指揮統制し、操縦の必要はない。

海軍とONRは各種USVの開発を初めており、ソナー装備の機雷対応無人感知掃討装備UISSを沿海域戦闘艦(LCS)等に搭載するのもその一つだ。UISSはテキストロン開発の共通無人水上艦 CUSVで搬送可能だ。

CUSV開発は2009年から始まり、4千ポンドを搭載し最大20ノットで連続20時間移動できると製造元のテキストロンは説明。また最大波高20フィートまで対応可能と同社は説明。

同様に大量の無人飛行装備を運用する技術があり、敵水上艦を発見し情報を他の無人舟艇あるいは水中無人艇に伝える。すべては戦闘状況で作動する設計で人員の関与は最低限あるいは皆無だ。

アルゴリズムによる自律海洋航法技術によりUSVは「知覚」し周囲状況に対応して移動できるようになったと海軍研究本部は説明している。小型ハイテク自律装備は無人水上艇と一体運用できる。

USVはセンサーで脅威対象データベースとつながり、その他装備とも接続し「敵味方不明の」対象を探知、追跡、追尾する能力が実現するとONRは説明。

DoD研究陣の説明では生物学をもとにした群をなして運用する技術の研究が必要だという。ペンタゴン技術部門は「鳥の大群」や「蜂の群れ」がぶつからずに迅速移動できる理由を研究している。名付けて「バイオメメティクス“Bio-Memetics”(生体間の情報交換)」のこの研究には鳥や蜂の行動から無人装備の大量運用に必要な新しいアルゴリズムを編み出すねらいもある。

ただし海軍戦略立案部門は人員があくまでも火器運用、指揮統制や戦闘艦の決定事項で関与していくと強調する。

無人水上艦で兵装を搭載したものはまだ運用していないが、業界と海軍はともに火砲、レーザー、迎撃手段やミサイルと水上無人装備の統合をめざしている。現在のペンタゴンでは威力ある攻撃効果のためには人員が必ず「関与し」決定を下す必要があるとしており、自律性で進展があってもこれは変わらない。

デイヴィッド・コフマン少将(海軍遠征部隊戦闘部長)は対機雷戦が今の所一番の課題と強調する。少将は水上海軍部隊協会シンポジウムで講演し無人ネットワーク小舟艇により海兵隊上陸作戦は機雷敷設などのリスクを事前に排除できると説明。

「ロシアや中国が浅海域に10万個も機雷敷設しても対処の能力がこちらに不足している」と述べた。

機雷の脅威といっても多様であり、探知発見は簡単でない。一部はいわゆる「海底機雷」であるいは浅海域に敷設した機雷は水上艦や潜水艦から簡単に起爆できる。ただし係留式の機雷が大深度で見つかることがあるが深海域で敵艦を狙う意図があるとの指摘がある。

こうした深海機雷への認識が低いがコフマンは新たな懸念材料としてこれまでの浅海域機雷同様の脅威だとする。例えば南シナ海周辺とかホルムズ海峡での設置が考えられ、特に後者ではイランによる活動が懸念され小舟艇による襲撃や機雷攻撃を想定している。イランとの緊張が高まるとイランは戦略上の急所となる同海峡を封鎖する動きに出るとの見方が強い。

機雷を探知、処理するには

機雷対策無人水上舟艇(MCM USV)の開発に海軍水上システムズ本部が取り組んでおり、将来LCSと共同しての対応が期待される。

このMCM USVには機雷探知に投入される無人感知掃討装備を超えた技術水準が必要となる。海軍はMCM USVにUSVから攻撃能力を流用する考えで、機雷の無力化が目的である。

高性能ソナー機雷探知のためAQS-20 や AQS-24のUSVへの搭載を進める一方で無力化技術の模索が続いているという。

最新の対機雷戦略とは

機雷処理が緊急性を増しているのは安価な機雷が普及しており敵対勢力がこれを利用する可能性が高いために他ならない。これについて2001年に国家研究協議会と海軍研究委員会が論文「海軍機雷戦、海軍部隊にとっての作戦戦術面の課題」を発表していた。

そこで米海軍が対策を進めているが、出発点は湾岸戦争であった。中規模機雷を多数供給しているのはロシアであり50数か国が機雷運用能力を有している。

興味深いのはほぼ二十年前に書かれた「海軍機雷戦」論文がもとになり現在の海軍が対機雷戦の技術開発に取り組んでいることで、海軍は分散型運用に重点を置き、同論文の主張を実現しているのだ。

「将来においては水上艦、潜水艦が広く分散し戦域内で敵勢力の近接距離内で攻撃、火器支援、防空などをこなす必要が生まれるはずだ。艦艇は敵の各種脅威に対して自艦で防御の必要があり、機雷も当然そこに含まれる」と論文は述べていた。■

Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters in Comparative Literature from Columbia University.

コメント 最近良く出てくるswarmがうまく訳出できません。イメージは昆虫の群、鳥の群といったところですが。まだ辞書にも乗っていない言葉ですので当面は試行錯誤ですね。日本が得意な対機雷戦ですが大きく様相を変えそうですね

米国のジェット戦闘機ワースト5機種

Meet the 5 Worst U.S. Fighter Jets of All Time (Yes, the F-35 Is On the List)

米ジェット戦闘機のワースト5を発表(F-35もちゃんと入っています)

January 21, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-22F-35MilitaryTechnologyWorldHistoryAir Force
国は傑作戦闘機多数を作ってきた。P-51マスタング、F4Uコーセア、F-86セイバー、F-15イーグル、F-16ファイティング・ファルコン、F-22が筆頭だ。だが今回は傑作機の話題ではない。
本稿では米戦闘機史に残る失敗作を取り上げる。失敗作とはいえ教訓があり再発を回避できるのではないか。失敗から学べないとしたら我々自身の欠陥だろう。
 ベルP-59エアラコメット
.ベルのP-59エアラコメットは米国初のジェット戦闘機として完成したが、英独の同時期のグロースター・メテオやメッサーシュミットMe262と比較すれば、P-59はひどい失敗作だった。
ロッキードP-38ライトニング、リパブリックP-47サンダーボルト、さらに捕獲した三菱ゼロとテストしたがP-59にはピストンエンジン戦闘機に対し一つも優位点がないと判明し、ピストン機のほうが新型ジェット機より性能が勝っていた。
P-59の最高速度は413マイルにとどまり、P-38と同程度だった。結局、P-59はテスト以外には使いみちがなくその後の機体の基礎をつくったのみにおわった。
 
ヴォートF7Uカットラス
米海軍は艦載ジェット機の実用化で苦労した。そんな初期の機体がヴォートF7Uカットラスで「ガットレスのカットラス」(ガッツがないカットラス)とパイロットが呼んだ。決定的に出力不足のウェスティングハウスJ46-WE-8Bターボジェット2基を積み、完成度が各所で未成熟特に油圧計が問題だった。
ブルーエンジェルでも活躍したエドワード・ルイス『ホイットニー」・フェイトナー少将は曲技チームがカットラスに機種変更を命じられ即座に辞職を考えたとスミソニアン協会雑誌で語っている。「カットラスは少し手を加えれば素晴らしい飛行機になると思う」とF7U-3パイロットのジョン・ムーアがThe Wrong Stuffで述べていた。「尾翼を普通の形にして推力を三倍にし、前方降着装置を半分にし、飛行制御も一新し、ついでに別のパイロットに飛ばさせてもらいたい」
 
グラマンF-11タイガー
グラマンは海軍向けに傑作機を提供して名が知られるが、F-11タイガーは例外である。F-11は珍しい記録をもつ。テストフライトでグラマン社パイロットが20mm機関砲を発射し先に打った弾丸に命中させたのだ。
F-11の問題はエンジンで、ライトJ65-W-14が極端に信頼性が欠け燃料を多量消費した。そのため海軍はタイガーに良い印象は持てなかった。海軍機には長い航続距離と信頼できるエンジンが必要なのだ。
タイガーはわずか13年の稼働期間で急速に退役した。  
コンベアF-102デルタダガー
.コンベアF-102デルタダガーはもともと高高度高速迎撃機としてソ連爆撃機が米大陸上空で撃墜する構想だった。
デルタ翼を強力なプラット&ホイットニーJ57-P-25アフターバーナーつきターボジェット1基のまわりに配置し、高性能火器管制装備と機内に兵装庫をつけた。当初はずば抜けた性能の機体のはずだった。実際に飛ぶまで。試作機は音速を突破できなかった。
デルタダガーは当時遷音速衝撃波の抗力の壁にぶち当たった。エアリアルールを用いて機体は再設計の必要が生まれた。再設計したF-102は「コークボトル」形状と呼ばれたがコーラよりも女優マリリン・モンローの身体がモデルという向きもあった。
再設計でF-102はマッハ1.22に達したが期待どおりの性能はついに発揮できなかった。結果として同機が原型となり成功作と呼べるF-106デルタダートが生まれたのである。
F-35共用打撃戦闘機
ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機は必ずしも失敗作ではない。だが開発は何年も遅れ、恐ろしいほどの予算超過になりながら未だに予定どおりの配備ができない。F-35は一つの機体をもとに数種類の専用機と同じ機体を作成しようと大いなる野望から生まれた機体だ。結果は器用な機体になったがどれひとつでも傑出したところのない機体になってしまった。.
さらにF-35の要求性能が生まれたのは将来の脅威対象がはっきりしない時期のことだった。要求内容はソ連が崩壊しなかった場合に生まれていたはずの防空体制よリ低い水準を想定しつつシリアやイラクのようなローエンド交戦の場合よりは高かった。当時の責任者は中国の台頭は接近阻止領域拒否の脅威は想定できなかったのだろう。
その結果生まれた機体は西太平洋諸国が直面中の課題に正面から答えるものにはなっていない。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interes
コメント: 今となっては信じられないのですが、日本はあと少しでF-11を採用するところだったのですね。F-35をここに載せる前にF-111という失敗作もあるのですが、こちらはEF-111など実戦で真価を発揮しているので除外なのでしょうか。

2019年1月24日木曜日

旧型機もステルス化する技術があると主張する中国に信憑性は?

なんでも大げさな表現が好きな中国のことですからわれわれはいつもあちらの言い分は割引して聞いているわけですが、中国国内でさえ信憑性を疑われるのはいかがのものでしょう。ただしステルスとは別にメタマテリアルにはいろいろな可能性が生まれそうですので注目しましょう。


Forget China's J-20 or J-31 Stealth Fighters: What If Beijing Could Make Older Fighters Stealth? 

J-20やJ-31ステルス戦闘機以外に旧型機のステルス化技術が中国にあるのか

January 23, 2019  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaJ-20MilitaryTechnologyWorldStealth
年のことSouth China Morning Post が中国が旧型機材もステルスにできる新技術を実験中との記事を伝えた。同紙は「『メタマテリアル』の多層構造で無線信号が表面反射されレーダー映像が極限まで消えることで飛行中の機体は見えなくなる」としていた。
このメタマテリアルを開発したの南東大学のミリ波研究国家重要実験室で現在は瀋陽でテスト中とある。記事ではテスト機材の種類に触れていないが瀋陽航空機はJ-11、J-15の開発元でともに非ステルス機だ。
記事によれば同研究所ではメタマテリアル以外の研究もしており、「ゴースト錯覚装置」に触れていた。これは「機体一部をレーダー上ではプラスチック同様に見せ一機を三機のように写すもの」だという。
あくまでも理論上の話だが非ステルス機がステルスになるのなら中国空軍力には朗報だ。記事では中国のステルス戦闘機J-20は20機しかなく、通常型機材は1,500機とある。だがそのJ-20も実はステルス性能は宣伝どおりではない可能性がある。昨年2月に「中国は初のステルス戦闘機配備を予定を前倒しでつなぎのエンジンを搭載している」と伝えられ、搭載予定のW-15エンジンが飛行中に爆発したため初期機材はWS-10Bを搭載した。J-10やJ-11に搭載のエンジンを改良したが推力重量比の不足でJ-20はアフターバーナー無しでは超音速加速ができず、同機は高速ではステルス性を犠牲にする。
ここから中国の非ステルス機のメタマテリアル導入での問題が見えてくる。ステルス性能とは機体の各種特性で実現するものだ。そのうち4つ大切なのが「形状、形状、形状、素材」だとステルス開発者が述べている。その他の要因は「形跡を消す化学素材、高性能で被探知不可能なセンサー、無線交信装置、特別設計のエンジン空気取り入れ口形状、特殊塗装、冷却装置で熱特徴を消すことだという。メタマテリアルはある程度レーダー吸収効果のある素材(RAM)の役目をするが、それで機体全部がステルスになるのか不明だ。旧型機が低性能エンジンを搭載したままでもメタマテリアルが熱特徴を消せるだろうかと、西安電子科技大学の応用物理研究所長Han Yipingは同紙に述べ、高い信頼性を得るためには性能を犠牲にする必要があると指摘。
Hanはさらにメタマテリアルの欠点も指摘知る。まず、現在のメタマテリアルは一定の無線周波数帯にのみ有効であるという。ただし具体的な数値は述べていない。またメタマテリアルの大量製造は極めて困難であるというが、記事は「中国国内報道dによればメタマテリアル大量製造のめどがついた」としていた。国家重点実験室の発表を疑うのはHan以外の科学界に多い。「共通見解として今回の発表はまだ解決スべき点が多いというところでしょう」
メタマテリアルは中国以外でも開発中だ。Financial Timesによれば「メタマテリアルが2006年に初めて注目されたのはインペリアル・カレッジのジョン・ペンドリ発表の論文で特別な素材を使いハリー・ポッターなみの透明装置の製造が可能と述べたことだ」。その後、各社が民生用途の開発を開始し、そのうちの一社Krymetaは自動車や列車、ヨットに搭載可能なアンテナでインターネット接続が可能な製品を発表した。その他、太陽電池パネルやレーダーを軽量化し無人機への搭載を目指す会社があるとFTは伝えていた。
当然ながらこの技術に各国の軍が関心を寄せている。そのうち米陸軍は「ウェアラブルのカモフラージュでカメレオンのように周囲に溶けこむ」装備を実現したいとする。ここにメタマテリアルを使うのだろうが、どこまで実現可能か不明だ。■
Zachary Keck ( @ZacharyKeck) is a former managing editor of the National Interest.
Image: Creative Commons.

英軍がシンガポールに基地を作るとどうなるのか。


Fortress Singapore? Why a British Base Won’t Deter China 

シンガポールに英軍基地ができても中国の動きを止められない

A giant waste of time? 壮大なる時間の空費になるのか
January 19, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: SingaporeChinaUnited KingdomRoyal NavySouth China Sea


国が太平洋で基地構築すると聞いて中国は心穏やかでないはずだ。

だが英国がシンガポールに基地を設ければ全部解決できると見ているのに驚かされる。

英国防相ギャビン・ウィリアムソンはサンデーテレグラム紙で英国がカリブ海、太平洋で基地を設営すると述べ驚かせた。太平洋ではシンガポールとブルネイの元英植民地二箇所の名前が出ている。

「基地には保守管理要員、補給艦、補給施設を置く」とテレグラフは解説している。英国はキプロス、ジブラルタル、フォークランド諸島、ディエゴ・ガルシアに恒久軍事基地を保有している。

ウィリアムソン国防相によればこれは英国が1968年以来堅持してきたペルシア湾、極東から撤退した「スエズ以東」政策の終焉を意味するという。

「数十年もあまりにも長く我が国の視点は欧州連合の議論に終始してきました」とウィリアムソンは語る。「今こそ真の意味のグローバル大国に復帰すべきです。そのため軍が大きな役割を果たします」

予想通り中国が構想に異論を唱えてきた。「軍事力の誇示は中国を狙ったもので対外勢力として南シナ海で関与を強めようとしている」とのコメントをアジア太平洋研究院のXu Liping教授がサウスチャイナ・モーニング・ポストに寄せている。

米国政府が背後にいると非難する向きが中国にある。ひとりは「地域内の微妙なバランスに大きな負荷を与え、緊張が激化するリスクさらに部分的とはいえ対決にまで進むリスクを生む」と述べている。英軍駐留を許せばシンガポール、ブルネイとの関係は微妙になると述べる中国筋もある。

これで何が実現するのかここで考えるべきだ。英軍基地ができれば米国にとっても助かるはずだ。同基地を利用できるためだが同時に世界有数の海上交通路の防御にも役立つ。

それでも英国がシンガポール基地設営を検討するとは、全く役に立たなかった軍事基地の歴史を有する同地にふたたび戻ることなり皮肉としか言いようがない。1930年代のシンガポールは英国の極東における強固な砦で、日本の侵攻を食い止める拠点とされ、有事には海空作戦の拠点となる期待があった。

問題は当時の英国にはシンガポールに部隊を駐留させる余裕がなかったことで、とくに艦船、航空機は欧州で必要とされていた。日本軍のマラヤ上陸は1941年12月8日でマレイ半島を南下してシンガポールに向かってきた。英軍主力は欧州にあり、ヒトラーによる英本土侵攻、ロンメルのスエズ運河奪取を防いでいた。

今日の英軍で太平洋に常駐できる部隊があるのか。英軍は人員、艦船、航空機がことごとく不足しており、多くが整備不良で稼働できない状態だ。英政府は軍がほしい装備品の調達を都合したいとするが政府監査部門は実施すれば財政を圧迫するだけと警告している。

1941年と違い、敵対勢力は中国になったが東南アジアを縦断してシンガポールを強襲する可能性は低い。だが中国と各国軍で戦闘が勃発すれば、中国が弾道ミサイル巡航ミサイルで敵基地を破壊するのは確実で、シンガポールは簡単に潜水艦で封鎖されてしまうだろう。

軍事基地は有効に防御できてこそ効果を発揮できるのだ。■

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook .
Image: Wikimedia

コメント 本当にそうでしょうか。シンガポールに基地を作ると言っても大規模な基地にはなりえません。むしろ「自由陣営」が共同利用できる施設にし、随時やってくる英仏部隊、中継地点に使える日米豪の各国が使えれば大きな効果が生まれるのではないでしょうか。それにしてもこんな形で封鎖網を生んでしまった中国人の思考に大いなる欠陥がありますね。

2019年1月23日水曜日

シンガポールがF-35導入に近づいている理由とは

Singapore Moves Closer To Joining What China Calls The 'U.S. F-35 Friends Circle' シンガポールが中国が言うところの「米F-35お友達サークル」加入に近づく

The short and vertical takeoff and landing F-35B could be especially valuable for the tiny Southeast Asian country during a crisis. F-35Bが東南アジアの小国であるシンガポールの有事で役立つのではないか


BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 18, 2019

F-35 Heritage Flight Team performs in Bell Fort Worth Alliance AirShowAIRMAN 1ST CLASS ALEXANDER COOK—56TH FIGHTER WING PUBLIC AFFAIRS
ンガポール国防省が現行のF-16C/D型の後継機種としてF-35ステルス戦闘機を正式に検討中と発表した。特に垂直離着陸が可能なF-35Bが同国に意味があり滑走路に依存せず運用でき、今後同国が取得予定の大型揚陸艦からも稼働させられる。ときあたかも南シナ海で中国がこれまでより大胆な動きを示し領有権を主張している。
シンガポール共和国空軍 (RSAF) が国防科学技術庁 (DSTA) と行った調査でF-35共用打撃戦闘機(JSF)がF-16C/Dの後継機種として「最適」と判明したと国防省が1月18日に発表した。シンガポールにはヴァイパーが60機ほどあり更新は2030年ごろに必要となるという。
「ただし技術評価からRSAFは少数のF-35を導入し完全評価を性能、維持でしてから全機導入するのが望ましいとの結論が出た」と声明は述べており、「次の段階でMINDFE(国防省)は米側と詳細を協議してからF-35をシンガポール国防装備として調達する決定を下したい」
簡単な発表内容で導入対象の型式は不明だ。米国はF-35のシンガポール向け販売をまだ未承認で、型式とか機数は今後判明するだろう。
米政府は反対しないだろう。シンガポールは2003年以来いわゆる安全保障協力参加国としてF-35事業に関与している。さらに米シ両国は長年に渡り防衛協力関係を維持し、シンガポールは米製戦闘航空機、ヘリコプター他装備を大量導入している。
米国がシンガポールと連携を強めているのは中国が南シナ海で領有権主張を強めその立場を強化する動きを示しているためだ。シンガポールは領有を主張しておらずあくまでも地域間、国際間の仕組みを通じた解決を求めてきた。

DOD
南シナ海で中国が構築した人工島の場所を示す地図


だがシンガポールがF-35に改めて関心を示す背景に南シナ海更に中国の存在を無視できない。シンガポールは海運交易に大きく依存する。近隣海域のマラッカ海峡など危機状態になれば簡単に封鎖されてもおかしくない地点が多い。
「直接の関与国以外も平和安定、航行の自由、上空飛行の自由が南シナ海で守られることに大きく依存している」とシンガポール外相ヴィヴィアン・バァクリシュナンが2018年8月に記者会見で語っている。「対立がなくても、緊張が高まれば船舶経費、保険料が上がるので各国の経済面へ影響が現れる」
中国は接近阻止領域拒否体制を南シナ海で強化中だ。人工島に長距離地対空ミサイルや対艦ミサイルを設置すれば有事の際に敵対勢力には大きな脅威になる。
中国はH-6中型爆撃機初め航空機を人工島から運用し誇示しており、兵力投射の新しい可能性を試している。人民解放軍海軍の水上艦、潜水艦の着実な増強は言うまでもない。
こうした中でステルス戦闘機が域内各国で必需品となりそうだ。F-35の有する脅威の前に中国はJSF運用国のオーストラリア、韓国、日本を「米国のF-35お友達サークル」と呼んでいる。
そのため同機の性能評価をしたのは米国との関係を考えればシンガポールとして当然である。同時に「買う前に飛ばしてみる」対応からシンガポールが時間かけて結論を出す動きが見える。シンガポール空軍のF-13C/Dはブロック52または52+仕様の高性能機材であり改修も相当受けている。さらにF-16V仕様に改修しようとしており、2030年時点でも十分戦力を発揮できるはずだ。

RAF-YYC/WIKICOMMONS
シンガポールのF-16Dが米国内で訓練を受けていた

RSAFはF-16をF-35に交替させる検討に入っているが、F-15SGイーグルは当面退役の予定はない。米空軍のF-15Eストライクイーグルの派生型である。
F-35とF-15SGの組み合わせ、あるいは高性能版F-15との組み合わせでステルス機の運用整備経費を抑えることができるはずだ。同時に同時運用で各機の特徴を活かした効果が期待できる。

USAF
RSAFの F-15SG イーグル.

F-15はF-35を上回るペイロードと航続距離を誇るが、有事にはステルス機が敵防空網に突破口を開き、非ステルス機がミッションを展開する構想だ。JSFはセンサー能力とデータリンクを生かして標的情報を後方のイーグルに送り、スタンドオフ兵器で攻撃させる。
イスラエルがこの戦術で進んでおり、米空軍も高性能版のF-15X少数機を導入するようだ。
さらにF-35Bが入るとシンガポールに重要な利点が生まれる。同国の面積は280平方マイルとロードアイランド州の4倍に過ぎず通常型機だと敵攻撃に脆弱性を露呈してしまう。
F-35Bなら補強道路や小型コンクリート敷地で運用できる。滑走路を使わずに運用できるため攻撃があっても同機なら比較的早く作戦再開できる。
2018年7月にはシンガポールのゥ・エン・ヘン国防相からエンデュランス級ドック型揚陸艦4隻を新型共用多任務艦(JMMS)に2020年以降に交替させるとの発表があった。
JMMS候補の最右翼はエンデュランス-160および-170設計案であり、シンガポールのSTマリーンが作成した。全長は540フィートで予想排水量は14,500トンだ。
最も重要なのは新型艦では飛行甲板が全長に渡り使えることで、想像図では中型ヘリコプター5機の駐機スペースだが、限定的とはいえF-35Bの運用も可能になりそうだ

ST MARINE
エンデュランス160の想像図

STマリーンではさらに大型艦の設計案もありステルス戦闘機運用に最適とする。韓国もF-35を独島級強襲揚陸艦で運用を検討しているが、エンデュランス-160/-170より全長で100フィート長く、排水量が4,000トン多いに過ぎない。
F-35の最適選択、機数の決定がシンガポールのJSF評価第一段階で重要だが、中国が南シナ海で一層動きを強める中で事態は緊急度を高めており、RSAF標識をつけたステルス機が十年以内に飛行してもおかしくないと言える。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2019年1月22日火曜日

地政学で考える。 中国のA2AD戦略を中国に向け使えばどうなるか


Time to Use China's A2/AD Military Strategy Against Them

中国のA2/AD戦略を逆に中国に使う時が来た

A U.S. access-denial strategy, then, would impose a hard fate on China. Which is the point. Threatening fearful consequences could deter Beijing from aggression tomorrow morning, and the next.
米国が接近阻止戦略を取れば、中国に深刻な影響を与え、強硬な態度は取れなくなる
January 20, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaAmericaA2/adSouth China SeaU.S. Navy

週はペンタゴンから中国に関する資料が二点続けて公開された。まず国防情報局(DIA)が中国の軍事力報告を冷戦時のソ連の軍事力評価にならう形で発表した。人民解放軍(PLA)に詳しい筋には同報告書には驚く内容は少ないが初心者やしばらく情報に接していない方には有益だろう。興味のある向きは下リンクを参照してもらいたい。
DIA報告に続きペンタゴンが「中国のグローバルアクセス拡大に対応する米国防体制の評価」を発表し、中国の「大戦略」を評価している。こちらのほうが短く、一読の価値はあるだろう。
「大戦略」の言葉を編み出したのは英国の軍人著述家B・H・リデル=ハートで大作「戦略論」(1954年)で大戦略とは外交力、経済力、文化、軍事力を使いこなして「平和状態」を向上していくことにあり、武力を用いずにこれを実現するのが望ましいとした。大戦略思考では高所から大局を捉える。
「中国のグローバルアクセス」の編者は「アクセス」の用語を正しく選んでいる。中国の大戦略は世界各地につながるアクセスを確保することにかかっているからだ。中国も海上輸送での物資輸送に依存する点で他の交易国と変わらない。貨物船には海外の寄港先がなければ貨物の積み下ろしができず本国への輸送もできない。
海洋戦略とは大戦略を海上で展開することにほかならない。
そこでアルフレッド・セイヤー・マハン大佐が登場する。中国の海洋戦略の先祖と言って良い大佐にとって海洋戦略の目的ならびに原動力はアクセスそのものだ。米国を海洋国家に導いた思想家としてマハンは商業、政治、軍事それぞれのアクセスを重要な交易相手に確保しておくことが海洋戦略の目的と説いた。
マハンは商業取引を最上段においた。海上交通を重要視する各国は交易アクセスに有益なアクセスを外交で求めるが、軍事アクセスで外交、交易のアクセスが容易になることもある。アクセスにより動きのサイクルが生まれる。国内製造業は海外市場で製品を関税を払ってでも販売して収入を確保し、これを海軍力整備にまわす。海軍は商品の海上輸送を守り、敵対勢力には海上交通路を閉鎖する。
大戦略での海上交通関連部分ではこの相互作用が産業、外交、軍事各面の活動に見られる。中国政府はこれを骨身にしみるほど熟知している。
マハンの時代のアメリカと違い中国にとってアクセスは容易ではない。当時も今と同じく、政治地図では米国は大西洋、太平洋で邪悪な隣国から自由であった。逆に中国には地理が逆作用となる。当時でも中国は上海や天津に遠隔地から到来する船舶に苛立っていたはずだ。
それは中国の船舶往来は必ず「第一列島線」として日本南部から台湾、フィリピン、インドネシアにつながる島しょを通過する必要があるからだ。この島しょ部分に強力な米海軍空軍部隊が駐留しており、各国は米国の同盟国友邦国であり、中国の敵となる。
言い換えれば、中国に経済、地政学の恩恵をもたらすはずの船舶航空機は敵性国の軍事力の影を意識して往来する必要がある。戦略地図では大国としては珍しい形で中国の野望が妨害を受けているのだ。
.PLA海軍創設時の戦略家劉華清Liu Huaqing提督たちが第一列島線を「金属の鎖」と表現し、これを突破しないと習近平主席が好んで使う「中国の夢」は達成できないと考えたのは当然だろう。第一列島線を突破すべく一部の占領や台湾あるいは米国の同盟国を外交手段ででたらしこむことが戦略的勝利に欠かせない。
アクセスが成功を呼ぶ。このマハン流の考えは「中国のグローバルアクセス」に一貫して流れている。
植民地時代を扱う歴史家は交易が先で国旗が続いたのか、国旗に交易が続いたのかを問うことが多い。商業上の利益追求から交易地につながるアクセスが生まれ、外交軍事面の保護が必要となった、つまり国旗だが、あるいは外交団や軍人が先に乗り込んで安全を確保してから商業活動が続いたのかという議論である。
マハンは同時に実現可能と主張していたようだ。米国が産業基盤と商業活動を確立し、商船隊と海軍部隊を建造し遠隔地の海港へのアクセスを追求すべきと熱く説いた。また商業活動、艦船、港湾拠点を海洋力の「鎖」の3つの「リンク」と好んで呼んでいた。3つを同時にリンクしたかったのだ。
今回の報告書をまとめた専門家は意図的かは別に中国がマハン教義を忠実に守る立場を捨てたと暗示している。中国が外交経済両面で外界へのアクセス確保をめざしているのは事実だが軍事アクセスがその後を追うこともある。その例としてPLA海軍がアデン湾に戦隊を十年近く配備しており、また世界各地に遠洋航海をしている。ただし西インド洋を除けば中国海軍はプレゼンスを常時確保できていない。
そこで中国の東アジア以遠での大戦略の護り手は非軍事手段である、いまのところは。
このパターンは地理条件から生まれた。中国が「遠隔海域」のインド洋や地中海でなにか達成しようとれば商船隊や海軍艦艇を本国周辺の「近海」から現地に派遣する必要がある。遠隔地での活動を考えると中国周辺海域から西太平洋へのアクセスの確保が必須と判明した。
.興味深いことに「中国のグローバルアクセス」は米国による戦略対応策に触れていない。当然必要だろう。ユーラシアへの商業、政治、軍事各面のアクセスこそマハン時代から一貫して米国の大戦略の中心課題であり、マハン自身がこれを主張していた。
中国、ロシア、その他沿岸国が「接近阻止領域拒否」に役立つ兵器を展開し米海軍を近づけまいとしているためアクセスが今や危険に立たされている。在日米軍基地他列島線上の軍事施設へのアクセスがなければ米国は意味のある戦略上の役割を果たせなくなる。
アクセス確保こそ米軍の最重要課題と考えるだろう。
.逆にペンタゴンが接近阻止領域拒否戦略を打ち出せば良い。PLAと中国共産党が海洋アクセス確保に必死になるのは列島線でアクセスを否定されれば中国は世界と貿易できなくなるためだ。
マハン教義を応用して列島線内の水路を封鎖すれば植物の根を枯らすと同じ効果になる。中国の商船隊やPLA海軍が外洋に出られなくなる。中国の夢の実現には貿易が死活的な意味を持つのだ。
  • この過程で地理上の利点は消える。
  • 米国がアクセス拒否戦略を取れば中国の運命は悲惨だ。これが重要だ。恐ろしい結果をちらつかせれば中国は強硬策を翌日に引っ込める。その次の日も。習近平一味が忍耐するしかないと気づくのではないか。中国、アジア、世界は共存に向かう。
  • アクセスの重要性を再認識することで道は開く。■
  • James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific (new in print last month), and author of A Brief Guide to Maritime Strategy (forthcoming this November). The views voiced here are his alone.​
  • Image: Flickr

コメント: マハン、なつかしいですね。米国よりも熱心にマハンの著作を貪るように呼んでいたのは帝国海軍士官でしたが、PLAでも熱心な読者がいたのですね。中国があれほど強硬な態度に出るのはそれだけ自国が不利な条件にあるからであり、自由主義圏はこれを意識した「封じ込め」で中国を「正しい」方向に導き、軍拡をやめ、経済の活性化に資源をまわす、というシナリオでしょうか。