2019年12月23日月曜日

姿を現し始めたB-21レイダー

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The Raider Takes Shape

Dec. 1, 2019
B-21レイダー爆撃機の一号機がノースロップ・グラマンのパームデール施設(カリフォーニア州)で組立て中で20ヶ月後にその姿を公開し、更に数カ月後に初飛行する。米空軍は今までの100機を150機まで追加調達する予算を要求している。B-21はこれまで極秘の機体だったがここにきて写真が流出しつつある。
空軍上層部もB-21の話題を堂々と口にするようになってきた。空軍迅速機能整備室を率いるランドール・G・ウォールデンは10月に「実際に部品製造の準備ができている」と語っていた。
製造はノースロップ・グラマンのパームデール工場で始まっている。「一機が中にある。試験用一号機だ。製造ラインはこの瞬間にも稼働中だ」とウォールデンは語る。主要構造部分の主翼などが組立ラインに搬入されている。
ただしこの段階でも事態は未だ流動的だ。空軍副参謀長スティーブン・W・ウィルソン大将はB-21初飛行日程の2021年12月をカウントダウンしていると発言。ウォールデンはそこまで自信がない。B-21の各部統合、地上テスト、さらに天候条件まで考慮すると複雑な事情のため断言できないというのだ。
ウォールデンはパームデールでのロールアウトはB-2の1988年同様に一般公開すると確約している。B-2ではロールアウトから初飛行まで9ヶ月かかったが、B-21では近隣のエドワーズAFBまでの初飛行はそこまで時間をかけず実施できるとウォールデンは述べている。
パームデールでB-2三十周年式典がありノースロップ・グラマンから同施設の従業員は24千名から28千名に増えたことを発表した。航空宇宙システムズ部門の社長ジャニス・G・パミジャンは「大幅に雇用を増やしている」とし、パームデール施設の更新拡充に触れ、RQ-4グローバルホーク、MQ-4トライトン生産を別の場所に移転したという。
ノースロップへ交付の技術製造開発契約は235億ドル規模の事業だ。製造契約は550億ドルで100機生産する内容とウォールデンは2016年に述べていたが、ここに内容不詳の「システムのファミリー」としてB-21の性能を引き上げる対策分は含まれていない。
空軍のB-21契約原案では「80機から100機」の想定であったが、ここにきて空軍は「最低100機」に変えており、空軍協会の9月カンファレンスで空軍参謀総長デイヴィッド・L・ゴールドフェイン大将は100機では足りないとの別の報道内容には「100%同じ見解」と発言して、B-21の開発サイクルはこれ以上加速できないものの、調達規模は100機を超え、しかも想定を上回るペースで進めたいと述べた。
空軍次官マシュー・P・ドノヴァンは10月のAir Force 誌取材で「必要な空軍の規模」について語り、爆撃機飛行隊はあと7つ必要とし、長距離兵力投射能力の拡充が太平洋地域等で求められると語っている。「一個飛行隊には8機を編入する」とし、空軍力の分析では56機の追加調達が必要と見ているとした。2020年度予算要求で「爆撃機の合計機数の実数がわかるはず」と述べた。だが同時に空軍協会のミッチェル航空宇宙研究所による分析では空軍にB-21が174機必要としている点に触れ、ゴールドフェイン大将も「同じ見解」だと述べた。
空軍から当初の価格目標や費用上限水準を変えるとの発表はまだ出ていない。2010年ドル価格基準で単価511百万ドルとしつつ550百万ドルは超えないとしていた。2019年ドル価格にするとそれぞれ553百万ドル、651.7百万ドルになる。ともに100機調達の前提なので調達規模が増えれば単価も下がる可能性がある。
空軍上層部からは数度に渡りB-21は空軍事業でもっとも効率よく運営されているとの言及があり、目標コストや日程管理に触れている。ウォールデンも機体価格が大幅に変化するとしたら性能要求が大きく変化した場合のみだと述べている。
USAFのグローバル打撃軍団ではB-1の62機、B-2の20機を2031年ごろまでに退役させる計画を立てている。B-21を毎年15機調達すればその時点で新型機が100機揃っているはずだ。空軍は420飛行試験飛行隊をエドワーズで再編成しており、B-21の試験を担当させる準備を整えている。
ウォールデンはAir Force 誌にB-21事業ではまだ空力特性の実証を行っておらず、風洞試験飲みになっていると述べている。「リスク低減では実証機材を使うのが通例」と述べつつ、縮小サイズの機体の実現は想定していないと述べそれ以上の詳細に触れていない。
ウォールデン発言に興味を覚えるのは空軍関係者や議会からB-21の調達方式に満足しているとの発言が出ていることだ。ノースロップ・グラマンを契約企業に選定したのは同社の「その他事業」での実績が理由だとされ、RQ-180がそのひとつとされる。ノースロップのバランスシートを見ると極秘事業が多数含まれていることが分かる。
B-21の機体形状はB-2と同じになっていることから高高度でのステルスに最適化されているようだ。B-2では事業の早い段階で要求内容が変わり、低空侵入飛行での機体取り回し性能を重視するようになった。そのためB-2では「のこぎりの歯」形状の後縁形状になり、これだけで数十億ドルと工期の追加になった。
空軍がB-21で唯一公開している想像図ではこの形状になっておらず、B-21では超低空飛行任務を想定していないことがわかる。
Comparing Stealth BombersComparing Stealth Bombers. Graphic: Dash Parham/staff; Illustration: Mike Tsukamoto/staff
B-21事業に参画する企業は7社のみ公表されている。うち、オービタルATKはノースロップグラマンが2018年に吸収した。残りはBAEシステムズGKNエアロスペースジャニッキインダストリーズロックウェル・コリンズスピリットエアロシステムズで、ロックウェル・コリンズはレイセオンテクノロジーズに合併される。
B-21では高性能デジタル工学手法が採用されており、空軍調達主任のウィル・ローパーは「デジタルセンチュリーシリーズ」戦闘機各種でも使う開発機関の短縮が特徴とする。
ウォールデンはB-21技術を次世代航空優勢(NGAD)事業にも「共有」できると見ており、ローパーがB-21事業主管のデイル・R・ホワイト大佐をNGADのトップに据えたことで実現の可能性が高まっている。
空軍は初のB-21飛行隊はサウスダコタ州ラピッドシティのエルスワースAFBになると発表している。同基地はB-1Bを運用中で、B-1からB-21への機種転換の場所となる。次がホワイトマンAFB(ミズーリ州)で唯一のB-2運用基地、さらにテキサスのダイエスAFBが続く。ヘザー・ウィルソン前空軍長官は「現時点の爆撃機基地は今後も爆撃機基地」と述べていた。ティンカーAFB(オクラホマ)がB-21の補給基地となり、同様にジョージアのロビンスAFB、オクラホマのヒルAFBも活用する。後者の二基地はサブアセンブリー部品の再生産や部品テストに使う。
B-21は最初から「基本無人機で有人操縦も選択可」の機体とされ、搭乗員がなくても運用可能だが、空軍上層部はこの点について一年以上にわたり口をつぐんでいる。また核兵器運用ではB21重力投下爆弾と長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイル(開発中)の二型式の運用認証を受ける。LRSOでは通常型も開発中だ。
ドノヴァン次官は10月のAir Force誌で空軍は国防総省にB-21追加調達の予算計上を求めるとし、地上配備戦略抑止力事業(ミニットマンICBMの後継ミサイル)、LRSOとともに空軍の通常予算とは別扱いにすると述べていた。海軍もコロンビア級弾道ミサイル潜水艦で潜水艦建造技術基盤の温存の名目で同様の扱いを受けている。ただし抑止力三本柱の残りとなる空軍のミサイル、爆撃機では産業基盤の話題はない。

空軍としては三本柱の近代化のため優先順位の高い他の事業が犠牲になる事態に直面するかもしれない。近代化が必要なのは核兵器だけでないし、戦闘機、給油機、宇宙、サイバーもある中で予算の限界に到達してしまう。「空軍の優先事業の枠内で全てを実行できない状態」とドノヴァン次官も認めている。■

2019年12月22日日曜日

北朝鮮のICBM発射に備え米軍ISR活動の強化が続いている



 General Says His Planes Are Keeping An Eye Out For North Korea's "Christmas Gift" 北朝鮮の「クリスマスプレゼント」に警戒の目を向ける米軍の厳戒態勢について
The general said that he expects a North Korean test of a "long-range ballistic missile," such as an ICBM, in the coming weeks. 米軍将官は北朝鮮が「長距離弾道ミサイル」実験を数週間以内に実施すると見ている。

BY JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 17, 2019
THE WAR ZONE
An RC-135V/W Rivet Joint intelligence gathering aircraft..USAF
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国は、新たに改造されたRC-135Vリベットジョイント監視航空機も動員し、北朝鮮周辺の空中情報収集を強化している。長距離弾道ミサイル試験を「クリスマスギフト」として米国政府に送りつけるという平壌政権の脅威が高まっている。米軍はまた、2017年に両国間の緊張が著しく高まった際にに準備した計画の見直しを含め、打ち上げ時の対応オプションを準備している。2年前の戦略では、空中、海上、および地上で力の誇示をするとしていた。

オンライン追跡ソフトウェアで、12月初めから、北朝鮮付近の航空情報、監視、および偵察(ISR)の増加が判明している。2019年12月3日、北朝鮮外務次官Ri Thae Songが「クリスマスギフト」発言を行った 5日後に衛星発射場で動きがあった。

北朝鮮は、2017年以降、長距離ミサイルと核実験の自主的なモラトリアム中だが、2019年2月に米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の指導者金正恩の第2回首脳会談が崩壊するや、親善ムードは消えた。

「北朝鮮に見られるパターンは、レトリックが活動に先行することであり、さらに打ち上げに先行している」と太平洋空軍(PACAF)の米空軍チャールズ・ブラウン大将は2019年12月17日記者団に語った。「監視体制を継続している」


米国空軍ではRC-135各型が多用されている。 RC-135V/Wリベットジョイントは、韓国を拠点に非武装地帯(DMZ)含む、北朝鮮近辺を飛行している。韓国空域から、国際海域上空からも、北朝鮮領土の奥深くを監視できる。

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USAF RC-135W 62-4125 TORA22 on task over the Korean Peninsula at 31,000 feet
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8:43 AM - Dec 11, 2019
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USAF RC-135W 62-4125 TORA21 on task over the Korean Peninsula at 31,000 feet

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9:15 AM - Dec 9, 2019
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USAF RC-135V 63-9792 TORA24 on task over the Korean Peninsula at 31,000 feet

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2:31 PM - Dec 6, 2019
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リベットジョイントは、空軍で最も有能な情報収集プラットフォームであり、通信含む各種信号情報を収集できる。また、防空レーダーや通信ノードなど、発信源を検出、分類、位置特定する機能により、特定エリアで潜在的な敵軍の「電子戦闘順序」の解明に貢献できる。

RC-135V/Wは、アナリストや言語学者を含む26人以上の乗組員で飛行し、収集情報の処理を即座に開始できる。収集した貴重なデータは地域の司令部や地上部隊などへほぼリアルタイムで送信できる。一部のRC-135Vは、上部に新しいアンテナを搭載しており。通信およびデータ転送機能がさらに向上した。

DAN STIJOVICH

2019年12月前半にカリフォルニアの3月空軍基地(ARB)で撮影されたRC-135V、シリアル番号64-14844。赤い矢印は新しいアンテナを指す。

RC-135Sコブラボール航空機の一機は、2019年12月5日と12月12日に日本海上空を飛行した。コブラボールは、ミサイルの発射中に視覚的画像に加え、遠隔測定やその他電子情報を収集できる

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USAF RC-135S 61-2662 SPOUT89 departed Kadena at 1925Z - Sea of Japan mission

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8:33 AM - Dec 13, 2019
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USAF RC-135S 61-2662 TAMMY09 on task over the Sea of Japan at 31,000 feet
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9:00 AM - Dec 6, 2019
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北朝鮮周辺の情報収集活動に参加しているのはRC-135だけではない。空軍RQ-4Bグローバルホークが韓国内からミッションを実施しており、高高度で飛行し、傾斜飛行パターンで強力なマルチスペクトルカメラとレーダーイメージングシステムを使用して、北朝鮮などの秘密エリアの深くまで監視できる。

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USAF RQ-4 Global Hawk (AE5415) on task over the Korean Peninsula at 52,000 feet

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9:31 AM - Dec 11, 2019
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The Air Force isn't the only service involved in the intelligence and surveillance activities, either. Aircraft spotter and friend of The War Zone @AircraftSpots picked up on one flight involving an interesting U.S. Navy P-3C Orion on Dec. 12.


Aircraft Spots
@AircraftSpots
US Navy P-3C 161588 TORA31 conducted a mission over the Korean Peninsula earlier

95
3:10 AM - Dec 13, 2019
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ワシントン州ウィッビー海軍航空基地のパトロール中隊40(VP-40)に所属したP-3Cは、11月に最後の運用展開を完了したが、機材は特殊任務についている。韓国上空を飛行する機体に、海軍機体番号161588がついている。

10月、沖縄の嘉手納基地で同機を特定の部隊マーキングをつけず、AN / APS-149沿岸監視レーダーシステム(LSRS)を胴体下に装備しているのをスポッターが見つけた。名称と別に、陸上の情報収集も可能だ。

USAF
A P-3C equipped with the LSRS pod.


新しいAdvanced Airborne Sensor(AAS)ポッドを装備したP-8A ポセイドンの数はまだ限られているため、旧型オライオンがこの機能を暫定的に提供している。

最近の北朝鮮への空中監視の増加は、ほぼ確実に、同国を対象とした情報収集活動の強化の反映だ。朝鮮半島は、歴史的に、米軍と米情報機関が地球上で最も厳重に監視する場所だ。潜水艦、衛星、地上のエージェントなど、多くの資産は、北朝鮮のミサイル試験計画の情報収集に活用されている。

太平洋空軍(PACAF)司令官のブラウン将軍は、平壌の「クリスマスギフト」が何になるか正確に把握していないと記者団に語っており、情報収集活動は今後も続く可能性が高い。実行が不可避の打ち上げがいつになるを示す兆候もない。

「長距離弾道ミサイルが贈り物になると見ている」とブラウン大将は発言。 「クリスマスイブか、クリスマスなのか、新年になるのか、が問題だ。

Jeffrey Lewis
@ArmsControlWonk
Likely before/after images from @planet that suggest North Korea conducted a rocket engine test at Sohae. Vehicles and objects appear on December 7 to conduct the test. They are mostly gone on December 8, but the ground appears to have been disturbed by the exhaust from the test.

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241
1:37 AM - Dec 9, 2019
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「自主的なモラトリアムがなくなり、すぐに何も起こらない可能性もある。金正恩が発表しても打ち上げはないかもしれない。」「外交努力が失敗した場合に備え、準備が必要だ。」(ブラウン)

米国へさらにトランプ個人への北朝鮮の敵意を考えると、北朝鮮が打ち上げに踏み切る可能性は高い。ブラウンは、2017年の米国の軍事活動を言及している。その時点は米朝間の緊張が最高水準となり、力の示威が金政権からの激しい脅威を招いた。

「2017年に準備した内容はすぐに使用できる」とブラウン大将は説明。

一方、米国は、北朝鮮からのクリスマスプレゼントが現実になる場合に備え、北朝鮮監視を続けるだろう。■

Contact the author: joe@thedrive.com




2019年12月21日土曜日

米海軍駆逐艦へレーザー砲搭載、新時代の幕開け

The Navy Is Putting Laser Guns on Its Destroyers and It Is Epic 米海軍が駆逐艦へのレーザー砲搭載を開始、新しい時代への第一歩へ

The future is here.
December 19, 2019  Topic: Technology  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaRussiaU.S. NavySubmarineLaser
by David Axe 

海軍はレーザー砲を駆逐艦に搭載した。中国やロシアの対艦ミサイルへの防御が新次元に入る。
The War Zoneのタイラー・ロゴウェイに届いた写真ではアーレイ・バーク級駆逐艦USSデューイがサンディエゴ軍港に写っており、前方甲板に新型レーザー装備が確認できる。
米海軍は指向性エナジー兵器数種類を開発中で艦艇搭載をめざしている。今回搭載されたレーザーの種類は不明だ。ロゴウェーはその中で推論し、「一番可能性が高いのはデューイが光学幻惑妨害装置Optical Dazzling Interdictor (ODIN) を年末までに搭載することだ」としている。
ODINとは低出力レーザーで電子光学赤外線センサーに「目くらまし」レーザー光線を照射して利用不能にするものだ。これは航空機が熱追尾ミサイルの妨害に利用する赤外線対策と似ている。ODINは艦船や小舟艇に有効なほか、対艦巡航ミサイルや弾道ミサイルにも使える。
ODINは海軍主要艦艇で現在稼働中のアクティブ、ハッシプ双方の防御装備を補完する。現行装備にはSM-6、SM-3、SM-2、発展型シースパロー、ローリングエアフレームミサイルの対空ミサイル各種、ファランクスレーダー誘導機関銃、ナルカおとり装置、SLQ-32、SLQ-59のレーダージャマーがある。
パッシブ防御装備では対艦ミサイルのレーダー誘導機能への妨害を狙うものが多い。だが、中国やロシアのミサイルで赤外線誘導方式が増えており、レーダー対抗装備が無意味になってきた。
ODINはこうしたミサイルにも有効で、飛翔経路を狂わせたり、海面に激突させられる、とロゴウェイが記している。
デューイが搭載したレーザー以外にも米海軍が最近公開した指向性エナジー兵器がある。10月に強力な新型レーザー兵器がノースロップ・グラマンからサンディエゴ軍港に納入された。
サンディエゴで150キロワットレーザーを揚陸強襲艦USSポートランドに搭載する。同艦は2019年末から新型兵装の試験を開始する。
海軍のすすめる固体素子レーザー技術成熟化 Solid-State Laser Technology Maturation (SSL-TM) 事業の一環としてノースロップが開発した。
艦載兵装としてレーザーには既存の火砲やミサイルにない利点がある。まず、弾薬は不要だ。電力がある限り、レーザーは発射を続けられる。また標的にはミサイルより早く到達する。
だが現在のレーザーには出力や有効射程の点で大型標的の撃破は不可能であり、射程も数マイル程度しかない。そこでSSL-TMでロッキード・マーティンは大出力長射程レーザーで艦艇を無人機、小舟艇、巡航ミサイル、弾道ミサイルから防御する手段の実現を目指している。
「低コスト指向性エナジー兵器に未来がかかっている」と海軍作戦副部長(当時)ウィリアム・モラン大将が2016年に業界会合で語っていた。「発射弾へ依存したままだとそのうちに防御手段が無くなる」
ポートランドに搭載するのは排水量25千トンの同艦に十分な空間があり、電力供給にも余裕があるためだ。ノースロップ製レーザーは大型トレーラー牽引車ほどの大きさがある。
SSL-TMではロッキードに150百万ドルで高出力エナジーレーザーに統合光学幻惑監視システム(HELIOS)の製造も任せている。
海軍は小型レーザー砲の駆逐艦搭載を2021年から始めたいとする。ODINはそのあとに登場するHELIOSレーザーの実証機能も果たす。
その後メガワット級レーザーが2025年に登場する想定だ。これだけの出力が実現すれば弾道ミサイル破壊も可能だが、搭載艦は大型で電源出力も相当の規模が必要となる。原子力空母が例になりうる。■
David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article first appeared earlier this month.

2019年12月18日水曜日

ブレグジットで英国の国防体制への影響はこうなる

Getting Brexit Done Brings Defense Challenges

ブレグジットは英国の国防にこんな影響を伴う

Tony Osborne December 17, 2019


リス・ジョンソン首相の地すべり的大勝におわった12月12日の総選挙結果で1月31日のブレグジットは確実になった。
だが「ブレグジットを実施に移せ」と保守党が今回の選挙運動に用いた熱狂が消えると英国は限りなく弱体な位置にあることを自覚するだろう。
選挙に勝ったジョンソンは反対派を恐れずにブレグジットを推進できる。だが勝者は他にもいる。
スコットランド国民党はスコットランドの定足59議席中48席を確保した。同党の公約はスコットランド分離独立だ。成功すれば英国の国防体制に大きな影響が生まれる。スコットランドには戦略上重要な航空基地がある他、もっと大事なトライデント級原子力潜水艦部隊の基地がある。ジョンソンが住民投票を少なくとも短期間のうちに認めることはないだろうが、政権がスコットランド国民党に苦しめられそうだ。また住民投票を認めないと非民主的と非難されよう。
EU加盟国アイルランド共和国と唯一国境を分かち合うのが北アイルランドのみとなれば複雑な様相が生まれる。ブレグジットでアイルランド海に境界線が生まれる。このことも安全保障で複雑な事情を作るが、政治影響力を失いつつある労働界から暴力に訴える傾向が増えそうだ。国民党派からはアイルランド再統一の動きがまたでそうだ。ジブラルタルとディエゴガルシアの将来ははっきりしない。
Fact Box
EU脱退により英国治安当局はEUデータベースに接続できなくなり、犯罪者、組織犯罪、テロリスト情報が得られくなる。またロシアが英国の民主制度に影響力を行使しているとの疑いが強まっている。選挙期間中は英政治へのロシアの侵入を伝える情報機関報告書の公開を差し止めていた。
また財務面でも影響がある。ブレグジットを決めた国民投票は2016年だった英国のGDPはその後停滞傾向を示し始め、経済成果と投資活動が減速している。国家負債が上昇している。英議会の試算ではブレグジットがなければ今後15年間でGDPが7%減るという。これは欧州大陸との自由貿易協定が成立した場合の想定だという。為替変動で大型案件は影響を受けそうで、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機事業もその一つだ。
NATO加盟国では国防予算をGDP2%レベルにする目標があるが、英国はこれを守る数少ない国の一つだ。保守党の選挙公約では毎年インフレ率に0.5%は最低でも上乗せして支出するとある。英国の2019-2020年の国防予算は395億ポンド(527億ドル)なので2020年には413億ボンドになる。トライデント核抑止力は残し、国防産業には「大胆なグローバル事業」としてタイプ31フリゲート艦やボクサー装甲車両の現地生産の支援を与える。
12月には英海軍がクイーンエリザベス級空母二号艦HMSプリンスオブウェールズを就役させ、空母運用力の再構築が更に進んだ。今後は米東海岸沖合での公試もあり、2021年5月に初の作戦運用を開始する。
英国は2022年末までにF-35を運用35機体制を完成させるつもりであり、最終的に138機調達を目論む。この規模で十分なのかそれとも英国が追加調達に踏み切るのかは2020年予定の戦略国防安全保障見直し結果次第となる。
パナヴィア・トーネードが3月に退役し、ユーロファイター・タイフーンに防空任務の大半を任せる状態の一方でイラク、シリアではMQ-9リーパー無人機でイスラム国勢力への空爆を続けている。
タイフーン後継機として英国はテンペスト開発をイタリア、スウェーデンの支援ですすめている。2020年に協力国はさらにふえそうで、日本がその最右翼候補だ。またボーイングP-8哨戒機計9機発注分の初号機が納入されたことで、英国は長距離対潜戦能力を復活させ、4月には初期作戦能力を獲得する見込みだ。■


Based in London, Tony covers European defense programs. Prior to joining Aviation Week in November 2012, Tony was at Shephard Media Group where he was deputy editor for Rotorhub and Defence Helicopter magazines.