2022年3月27日日曜日

主張 北朝鮮の最新ICBM実験は米国に向けた明白なメッセージ。バイデン政権を真剣に対応させるためのシグナルだ。

  

 

North Korea ICBM

North Korea Hwasong-17 ICBM. Image Credit: Creative Commons.

 

北朝鮮のICBM発射実験は、米国の政策の無益さを浮き彫りにした 

平壌が2022年3月24日に行ったICBM発射実験は、ワシントンと東アジア各国の双方に動揺を与えている。ロシアとウクライナの戦争がなければ、今回の事態は米国外交当局の最大の関心事になったはずだ。今回のミサイルは、米国本土に到達可能なICBMだ。北朝鮮による前回の長距離ミサイル実験は2017年で、米国との関係が雪解けし、北朝鮮の金正恩委員長とドナルド・トランプ大統領による3回目首脳会談の直前だった。

 

ICBM実験は想定ずみだった 

今回の平壌の行動は予測可能だった。北朝鮮はワシントンの政策姿勢への不満を2年前から再燃させていた。2022年1月、平壌はミサイル実験を1カ月で7回実施した。旧正月にはグアムまで届く中距離ミサイル「火星12型」発射で一連の実験を終えた。

 ワシントンとの正常な二国間関係の確立への期待は、過去のものになったという金正恩の結論を一連の実験が象徴している。トランプ政権が北朝鮮孤立政策を放棄したように見えた2018年と2019年に、希望が劇的に高まっていた。金委員長との首脳会談は、従来より現実的かつ柔軟な米国のアプローチの表れだった。特に、3回目の首脳会談で一時的とはいえトランプが北朝鮮に足を踏み入れる映像は、建設的友好的な関係が生まれるとの象徴的意味合いが強かった。

 だが国内で反発が強まり、ジョン・ボルトン国家安全保障顧問をはじめとする大統領外交チーム強硬派による妨害が重なり、建設的な変化を実現しようとする努力は絶望的となった。2019年2月のハノイ首脳会談が突然終了したのは、平壌が核兵器プログラムの放棄という、長年にわたる(かつ非現実的な)要求を拒否したためだった。

 和解への期待が薄れ、金正恩政権は2019年後半に敵対的で闘争的な論調を復活させた。しかし、平壌から破壊的な行動がすぐ現れなかったのは注目すべき点だ。2020年の米国大統領選結果に関係なく、米国が今後、柔軟で融和的な姿勢を示すと平壌は期待していたようだ。

 ジョー・バイデンが当選し、希望が見当違いと明らかになった。バイデンは2020年の選挙討論会でも、平壌を望ましからぬ国として扱うという、トランプ以前のワシントンの無益なゾンビ政策と同一だった。バイデンは、2022年1月のミサイル実験を受け、新たな制裁を発動し、北朝鮮を孤立させる不毛な手法を継続すると確認している。

 

ICBM実験の次は核実験か?

とはいえ、北朝鮮には自制心がまだ残っている。平壌は、トランプ政権による打開策の直前の2017年9月以降は核兵器実験を実施していない。また、金正恩政権は、短距離ミサイル含むすべてのミサイル実験を自粛していた。この政策は2022年1月まで変更されず、長距離ミサイルの停止措置は3月の実験で終了した。核実験の一時停止措置は、いまのところ有効である。しかし、バイデン政権の方針が変わらないと、金正恩の抑制は終わる可能性が高い。

トランプ構想は、政策的リアリズムと柔軟性を反映し期待させるものであった。 しかし、残念なことに、ワシントンは逆戻りしたようだ。 米国指導者層は、平壌を非核状態に戻すとの実のない要求に固執するのではなく、多面的かつ正常な二国間関係につながる道を模索すべきだ。数十年にわたる経済制裁を緩和し、最終的に撤廃することになる。また、朝鮮戦争を正式に終了する条約を交渉し、両国に完全な外交関係を確立することである。

 別の選択肢は、北朝鮮がゆっくりと、しかし着実に核兵器と、アメリカを破壊可能なICBMを含む高性能ミサイルを整備するのを見守りながら、北朝鮮を除け者として扱い続けることだ。これでは誰も得をしない。米国は最新の核保有国となった北朝鮮と有意義な関係を築いていない。すべての当事者にとって危険な状況である。

 今回のICBM実験は、米国が北朝鮮と正常かつ現実的な関係を築く必要があるのを示す最新の警告だ。しかしバイデン政権が重要な任務を果たしているとは思われない。■

 

Hawasong-17 ICBM Test Proves America's North Korea Policy Has Failed - 19FortyFive

ByTed Galen Carpenter

 

Ted Galen Carpenter, a senior fellow in defense and foreign policy studies at the Cato Institute and a contributing editor at 19FortyFive, is the author of 12 books and more than 950 articles on international affairs. He is also a 1945 Contributing Editor. 


開戦前よりもウクライナ戦車の台数は増えている。祖国防衛に志が高いウクライナ軍と燃料切れ、戦闘放棄のロシア軍の対比が著しい。

 

 

 

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捕獲したT-72に即席でウクライナ記章がつけれているYURI BUTUSOV PHOTO, VIA TWITTER

 

 

2月23日夜のロシアによる軍事侵攻開始から、少なくとも74両のウクライナ軍戦車が喪失、破壊、鹵獲された。

 

 

 しかし、ソーシャルメディアを精査するオープンソース情報アナリストによれば、ウクライナはロシア戦車を少なくとも117両鹵獲している。

 つまり、ウクライナ軍の戦車は開戦前を上回っている可能性がある。

一方、ロシア軍は少なくとも37両のウクライナ軍戦車を鹵獲したが、失った274両に追いつかない。

 鹵獲戦車数のちがいは、ロシアの開戦準備の不足を物語っている。同時に、防御側が有利に戦う状況を物語る。

 ロシア軍はウクライナへ数十キロから数百キロ侵攻し防御が不十分なまま補給線が延び、前線部隊が弾薬や燃料を使い果たす危険性がある。ウクライナが押収した戦車の多くは、ガス欠で乗員が逃亡したり、座っているだけだった。

 一方、ウクライナ軍は 「内戦」の利点を享受し、主要都市や基地付近で戦っている。ウクライナ軍補給線は、防衛線内に収まっている。

 つまり、ウクライナ戦車が戦場で燃料切れになる可能性は非常に低い。

 ウクライナが捕獲した117台はアナリストが目視確認した分で、実際はもっと多いはずだ。ウクライナ農民が放棄されたロシア車両を牽引する動画は、ウクライナでの抵抗の象徴になった。

 押収した戦車その他車両のうち何両が使用に耐えるかは不明だ。  

 しかし、ウクライナがロシアと同型の戦車を使用していることが救いだ。ウクライナ軍の主力戦車T-64は、ロシア軍で退役ずみだが、T-72とT-80はウクライナ軍も使用している。

 T-80はT-64の発展型で、ソ連戦車で最も洗練されている。それに対しT-72は、シンプルかつ安価で大量生産に適し、戦場での支援も容易だ。そのためT-72をウクライナ軍予備隊に配備している。

 いずれにせよ、鹵獲戦車はウクライナが利用するはずだ。問題は、どれだけ早く修理し、燃料補給し、弾薬補充し、乗員に割り当てるできるかだ。

 数日で起こり得る。3月11日には、旧ロシア軍戦車がロシア軍へ砲火を開いた。戦車、戦闘車両、大砲、防空システム、トラックなど何百台何千台もウクライナに移動されたが、ロシアの戦略的目標への課題が浮き彫りになっている。

 人口4400万人のウクライナが祖国防衛で結束しており、クレムリンは勝利への道を進めない。

 ロシアがシリアに傭兵1000人規模を要請したのに対し、ウクライナは予備軍15万人を動員したのがこれを物語る。

 予備役隊員が装備に困ることはないだろう。旧ロシア軍T-72に乗り込み、ウクライナ記章をペイントすることになろう。■

 

The Ukrainian Army Has More Tanks Now Than When The War Began—Because It Keeps Capturing Them From Russia

David AxeForbes Staff

Aerospace & Defense

 


2022年3月26日土曜日

空港での戦闘で全損した世界に一機の超大型An-225を復活させるプロジェクトをクラウドファンディングで開始したアントノフ。

 


AN225 ukraine crowdfund

ANTONOV/YOUTUBE SCREENCAP


第一、第二ターミナル共通記事です


ーウ郊外ホストメル空港での戦闘で、世界最大の6発貨物機An-225ムリーヤMriya(「夢」)が破壊された。しかし、設計・製造元のアントノフはAn-225復活の資金募集を各国で開始した。


同社CEOゼルヒ・ビチュコフSerhiy Bychkovは、同社Facebookで声明を発表し、呼びかけている。

「親愛なる世界各国の皆様。アントノフ国営企業のAn-225 Mriyaは特別な存在です。貨物搭載量で最大で比類ない性能を誇ります...現下の厳しい状況にもかかわらず、アントノフチームは、現代のシンボルの一つとして伝説の機体の損失は許されないと確信し、フラッグシップ貨物機An-225 Mriyaの復活に着手する信念を固めました。 当社は国際基金の設立を提案します...」

声明では、紛争前30年間にわたりAn-225が大型貨物輸送に成功し、240もの世界記録の実績を振り返っている。ビチュコフは、An-225が民間機や人道援助物資の輸送に加え、宇宙船やミサイルを空中発射する可能性を指摘している。

今回の野心的なクラウドファンディング提案は、「各国の首脳や政府、世界各地の航空メーカー、航空機やその他アントノフ製品の製造に参加し、アントノフ航空機の連続生産に製品を提供した海外のパートナー企業、銀行やその他の金融機関の経営陣、航空ファンや愛好家、世界の航空界、そしてウクライナのミリヤの偉大さを賞賛するすべての関係者 」へ支援を求めている。

声明文には、振込用の銀行口座も記されている。

ウクライナ国営通信社ウクリンフォルムUkrinformは、同機修復費用を30億ドル以上としており、かなり高く思えるが、近代化改修や、生産施設の分も含まれているのかもしれない。

しかし、少なくとも先月末のホストメル襲撃後に残された機体を見る限り、「修復」は空想に過ぎない。機首、主翼、エンジンが大きく破損し、大部分が破壊された。無傷で残っているのは、機首の一部だけで、この状態も疑わしい。

 

YOUTUBE SCREENCAP

戦闘後のAn-225の無残な姿

 

このためアントノフはキーウに残る未完成のAn-225を完成させるのに資金を使おうとする可能性が高いと思われる。

あるいは完全新規のAn-225製造を希望しているのか。An-225の生産再開は、以前も検討されていた。中国はアントノフに現金を提供し、同機の改修型生産を提案したと伝えられている。最終的に実現しなかったが、An-225の唯一無二の性能に対する需要から、再び使用を希望する顧客は少なくないと思われる。

アントノフが必要な資金を確保できたとしても、ウクライナがプロジェクト着手を検討し始めるには、ロシアに勝つか、少なくとも現在の紛争を終結させる必要がありそうだ。

しかし、同機の損失が、紛争の象徴になったことは間違いない。ウクライナ側は同機の劇的な消滅を利用し、国際的に大きな反響を呼んだ。An-225を再び飛行させれば、ウクライナにとって大きなシンボルとなり、ビジネス的なメリットもある。

現在のウクライナが緊急の問題を抱えているのは明らかだが、An-225を空に戻す「夢」を少なくともアントノフは受け入れており、世界中の航空ファンや愛好家もプロジェクトを支持するに違いない。■

Antonov Is Crowdfunding The Revival Of Its Destroyed An-225 Cargo Jet

Antonov Is Crowdfunding The Revival Of Its Destroyed An-225 Cargo Jet

The one-off An-225 was destroyed after its base was attacked by Russian forces in Ukraine, but there is hope it will rise again, maybe with your help!

BY THOMAS NEWDICK MARCH 25, 2022




米国はウクライナの情報活動をここまで支援している。ロシアの情報工作に注意が必要だ。食料不足への覚悟も必要か。

 


 

 

防情報局局長スコット・ベリエ陸軍中将Lt. Gen. Scott Berrierは、2022年3月17日、議会公聴会で、米国とウクライナとの情報・諜報の共有について、「革命的」と下院軍事情報小委員会の非公開セッションで述べた。

 

 

 サイバー軍と国家安全保障局を率いるポール・ナカソネ陸軍大将Gen. Paul Nakasoneは、「ウクライナで行われているほど、正確かつタイムリーで実行している情報共有はこれまで見たことはない」と述べた。

 同盟国との情報共有は、「同盟関係を構築する」価値があり、ロシアが侵略前に行った「偽情報」キャンペーンに光を当てることができる、とナカソネ大将は付け加えた。問題は、意味があり活用できる情報をウクライナとどう共有するか、ということに尽きる。

 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が同胞に武器を捨てるように語った最近のフェイクビデオなど、「ディープフェイク」について聞かれると、ナカソネ大将はNSAは「何が本物で何が偽物かを区別しようと取り組んでいる」と述べ、ペンタゴンや行政府、民間企業に情報を適切に伝えている、と発言した。

 ウクライナや世界で実際に起きていることをめぐり、嘘を広め、混乱を招こうとする動きを警戒し、「注意深く観察し、迅速に対応し続ける」と述べた。

 オースティン・スコット議員(共、ジョージア)Rep. Austin Scott, (R-Ga.)は、ウクライナでクレムリンに有利な状況をめざす情報キャンペーンの「ディープフェイク」や「偽旗」について「情報を機密解除することで世界は利益を得ている」と述べた。

 ナカソネ大将は、NSAの成功の「秘策」は、「敵が何をしているか」「それが米国にどう影響するか」を見極め、国外で活動する能力だと付け加えた。また、空軍のKC-135や宇宙衛星、センサーなどの性能実証済み装備と、現場での収集が効果的だと述べた。

 サイバー司令部高官がNSAも指揮する体制を維持すべきかについて、情報・セキュリティ担当次官のロナルド・モルトリーRonald Moultrieは、責任をバラバラにする決定を下した場合、「双方へ損害を与えたくないという感情がある」と述べた。

 サイバー司令部は2010年に設立された。

 ナカソネ大将は、司令部と機関を一元管理することで、イランとの問題からランサムウェア攻撃、ウクライナでのロシアの侵略まで、「一体感」と俊敏な対応力が得られていると述べた。

 DIAが「オープンソース」の素材(画像やデータ)を購入する方法について、ベリエ中将は、購入の範囲や、必要なときに必要なものだけを購入することに限定できるか疑問があるとした。「アフガニスタンで役立つオープンソース(の素材)がある」とも述べた。

 米国はアフガニスタンで国外から情報、監視、偵察を行っているが、限界があると、退任するケネス・マッケンジー海兵隊大将Gen. Kenneth McKenzieは今週、議会で述べた。

 スコット議員は、ウクライナ戦争が世界の食糧市場に与える影響についても、DIAは情報をただちに集めるべきと考えていると述べた。ウクライナは小麦「5000万トン」を輸出し、「世界食糧計画への最大の供給源」でもあるからだ。

 問題を深刻にしているのは、「ロシアが穀物や肥料を輸出しないと言っていること」であり、同盟国のベラルーシも同様だとした。トウモロコシ、大麦、ヒマワリの種、小麦、肥料を含む黒海の穀物輸出市場の閉鎖で、「プーチンは食糧供給に関し第三次世界大戦を始めた」とスコット議員は言う。

 同議員は、食糧供給と価格上昇が、戦闘から遠く離れたスリランカなどに影響を及ぼしはじめたと指摘。

 ワシントン・ポストは3月18日社説で、「穀物植え付けから収穫まで数カ月かかり、一部作物の不足分はすぐ埋め合わせできない。石油供給危機より対応が困難だ」と述べている。■

 

 

Intel Sharing Between US and Ukraine 'Revolutionary' Says DIA Director - USNI News

By: John Grady

March 18, 2022 2:28 PM


2022年3月25日金曜日

自暴自棄になったプーチンが核兵器使用を許可したら? 核兵器使用を止めてきた核抑止力の機能が低下し、世界は大変なことになる。

 

 

Tactical Nuclear Weapons

US Military B-61 nuclear weapon. Image Credit: US DOD.

 

ロシアが戦術核をウクライナで使用した場合、抑止力は回復できるか?

 

クライナ西部の中心都市リビウは、不気味なほど静かだった。午前3時、リビウの西40マイル、ポーランド国境からわずか6マイルのヤボリブ基地上空で、鮮やかな閃光が放たれると夜は昼へ変わった。3分後、轟音で目を覚ましたリビウ市民は、地平線の南ストリイ方面にも閃光を見た。

 プーチン大統領は、膠着状態と敗色が濃くなったのに業を煮やし、戦術核兵器の使用を命じた。米国が広島に投下した原爆「リトルボーイ」の半分以下、第二次世界大戦末期に長崎に投下した原爆「ファットマン」の4分の1の威力の核兵器だ。プーチンは当初、核兵器使用を否定していたが、空軍基地二箇所がウクライナへの兵器輸送の中継地である証拠が集まったのを理由に、核兵器利用を正当化した。ドイツとフランスは、さらなる核兵器の使用を恐れ、プーチンを批判する一方で、対話を求め、ウクライナに戦闘停止を要求した。

 

 これはあくまでシナリオであり、仮説だが、考えうる事態だ。ホワイトハウスは、プーチンの核使用を懸念し不安を煽っているが、問題はもう一つある。

 米国が日本に核兵器を使用した当時、ワシントンでは放射性降下物や放射能の恐ろしさの理解は皆無に近かった。トルーマン政権にとって核爆弾は、ドレスデン爆撃のような大量の航空機を必要とせず、都市を破壊する迅速かつ効率的な方法であった。また、トルーマン大統領は、大規模破壊で大日本帝国に衝撃を与え、戦争を早期に終わらせれば、日本への上陸作戦を回避でき人命を救えるとの信念で、核攻撃を正当化した。

 核兵器の真実を世界が知ると、核への汚名は非常に大きくなった。冷戦時の米ソ両国は世界を数回滅ぼしても余りある量の核兵器を製造した。しかし、歴代の両国指導者は相手国代理勢力への核使用を避けてきた。1969年、ソ連外交官が、共産中国の初期核開発プログラムにモスクワが限定的先制核攻撃を行った場合への反応を内密にアメリカ側に打診したところ、米国は強硬に否定した。理論的には、この攻撃は限定的で、毛沢東の野心へのソ連とアメリカの懸念を解消する可能性があったにもかかわらずだ。核の汚名がつくのは、あまりにも危険だった。

 問題は、汚名を着せる行為に前例がない場合、汚名が強固になることだ。最後の戦時核爆発から75年余り、ロシアが小威力とはいえ戦術核兵器を使用すれば、75年待つ大国は皆無だろう。

 イラクでの自動車爆弾テロや斬首刑を考えてほしい。発生当初こそ、世界中の一面トップニュースだったが、犯行が一般化すると、その話題は紙面の奥深くに葬り去さられた。唯一の例外は、暴力が新たな規模に達した時である。リビア海岸でキリスト教徒集団が斬首された事件や、100人以上の子供が犠牲になった車両爆破事件などの例がある。

 シリアのアサド大統領が化学兵器を使用した後で、オバマ大統領がレッドラインを守らなかったとの批判が殺到したのは、化学兵器を連続使用しても代償は軽微と示唆したためだった。化学兵器攻撃のたびに、衝撃は薄れていった。爆弾で殺されても塩素の雲で殺されても、犠牲者に何の違いもないとの主張さえ出ていた。

 核兵器に話を戻そう。ロシアが戦術核兵器を使用すれば、10年以内に使用する他国が出現する。イランは精密ミサイルと濃縮ウランを保有しており、弾頭実験も行っている。ロシアがウクライナを核攻撃すれば、イスラム革命防衛隊はヤンブ、テルアビブ、バーレーンの第5艦隊司令部の攻撃を許可してもおかしくない。国際社会は、イスラエルや米国に同程度かそれ以下の攻撃で応戦するよう求めるかもしれない。しかし、こうした威力の制約は、使用するたびに徐々に損なわれていくだろう。

 抑止力は、一部の政治学者の予想以上にもろいものだ。効果的な抑止力が欠如した世界は、はるかに危険な場所となる。自暴自棄になったロシアはますます危険だ。しかし、現時点の危機はウクライナよりもはるかに大きな問題だ。ホワイトハウスは、小威力核兵器でさえ使用すればただでは済まないとプーチンに確信させるべきだ。

 

What Happens if Russia Strikes with a Tactical Nuclear Weapon? - 19FortyFive

By Michael Rubin

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Michael Rubin is a Senior Fellow at the American Enterprise Institute (AEI). Dr. Rubin is the author, co-author, and co-editor of several books exploring diplomacy, Iranian history, Arab culture, Kurdish studies, and Shi’ite politics, including “Seven Pillars: What Really Causes Instability in the Middle East?” (AEI Press, 2019); “Kurdistan Rising” (AEI Press, 2016); “Dancing with the Devil: The Perils of Engaging Rogue Regimes” (Encounter Books, 2014); and “Eternal Iran: Continuity and Chaos” (Palgrave, 2005).


2022年3月24日木曜日

ロシアはすでに敗戦している。ウクライナ戦を力づくで勝利しても占領が維持できない。世界を敵に回し、ロシア経済は崩壊する。

Russian Tank Destroyed Ukraine

AFP VIA GETTY IMAGES

 

ウクライナ国内に展開するロシア軍に確かな道筋が見えなくなっている。戦闘には勝利したとしてもロシアはすでに敗北している。

 

シアのウクライナ侵攻が一ヶ月を過ぎ、血生臭さは増すばかりだ。休戦や和平は遠のき、戦闘は続いている。そもそもロシアに軍事的にどんな目標があったにせよ、あらゆる面でロシアは敗北を喫している。ウクライナの占領に成功したとしても、さらに悪いのはその後の事態だ。誰も見たことがない内戦となる。豊かな各国が後押しし、対戦車兵器、対空兵器であふれる中、決意の固い戦闘員が活躍する。ここにその他要素が加わり、どう見てもこの戦いでロシアは明るい未来に到達できない。ロシアは戦闘に勝ち、都市を占拠できても、結果としてすでに敗戦国になっている

 そもそもロシアは戦術面で大きな誤算を繰り返してきた。その例としてウクライナ側がここまで戦闘意欲を維持できるとみていなかったし、ウクライナ指導部のリーダーシップ、防空能力、生存の知恵があることもNATOや欧州連合の決意のほども予測に反するものだ。

 更に悪いのはロシアが自国の力を過剰なまで盛って試算していたことだ。空軍力もそのひとつで、スタンドオフ兵器群の数量信頼性も加わり、自軍の地上部隊の能力と意欲、さらに電撃戦以降の各部隊への補給能力もある。侵攻開始後数日でロシア軍の作戦立案ならびに指揮統制能力が機能不全になったようだ。各方面の指揮官を統合調整する能力も皆無に近く、そもそも全体を指揮する総司令官の姿が見えない。

 

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KA-52攻撃ヘリコプターが撃墜された — ウクライナの戦場でロシアは多数の機材を喪失している

 

 ウクライナ国民がロシアという共通の敵に向かい一体となったことに加え、ウクライナ軍のイメージが急に向上したのに対し、ロシア軍のイメージは驚くほど低下してしまった。これだけでおわらず、ロシアの行動が逆にNATO、EUさらに世界多数国を反ロシアに団結させてしまった。ロシアへの制裁措置は前代未聞のものでロシアの破壊につながる。ロシアに国富を消費させ、世界から孤立させ、存続の鍵を握るグローバルマーケットへのアクセスを否定する効果を狙っている。

 ロシア経済でエナジー部門は三分の一を占める大きな存在だが、未だに取引を続けている国もあるが、時間経過とともに取引規模が減少していく。中国がロシアの貿易赤字を補填するだろうが、ロシアが失った市場全体のかわりにはならない。そうなると制裁措置でロシアは想像打だにしなかった状況に落ち込むことになる。

 さらに、ロシアに悪の勢力のラベルがつき、無数の一般市民の殺害者となったことに加え、貿易、地域間協力にとどまらず世界での信用度が劣化している。

 自らが招いた結果だが、開戦を選択した国が生き残るための戦闘に追いやられる。慎重に編集したプロパガンダが目立つ。商品も食品も姿を消せば、金融界も底なしのブラックホールに飲み込まれ、若い世代でウクライナ戦で命を落とすものが増え、国内でも戦争が悪いイメージをまとい、意見思想の制圧が困難になる。

 ウクライナ侵攻の直後から、ロシアが意味のある結果を得られるとは到底思えなかったが、数週間が経過し、疑問は一層深まってきた。一刻も早く紛争を終結させ、あるいは凍結させる策を取ることが、何らかの成功の可能性を残すため絶対的に重要に見える。一定の成果を残しながら、人命や物資の損失を公表しなければ、ロシア国民に勝利を「売り込む」のは可能だが、ロシアが侵略の失態から価値あるものを得たとは、事実を知る者を納得させられない。実際このような主張は、全く不可能に映る。

 ロシアがウクライナ東部の港湾都市を全部手に入れ、ドンバス地方の分離独立国家を維持し、その過程でクリミア陸橋を確保し、さらにウクライナの将来の戦闘能力を低下させたと偽って宣言しても、すべてのカテゴリーで失ったものには足りない。情報弱者や否定的なロシア国民の中には、信じる者もいるかもしれないが。そして、ウクライナが和平条件を守る兆しがなければ、ロシアが次回の侵攻を実行してもおかしくない。今回の作戦で犯した失敗を克服すべく次回は準備がはるかに整っているはずだ。

 ロシア軍が恐れるに足りないとか、通常型紛争に勝てないとか、そういうことではない。ウクライナにはロシアを追い出すチャンスが絶対にあるが、ウクライナ領土を軍事的に征服するとなると、まだモスクワに勝算がある。

 ウクライナが国内多くでロシアを抑えこんでいるのを見るのは素晴らしいが、我々は今回の紛争を偏った見方で見ている。ロシアには、軍事作戦に投入する装備品と人的資源がまだ相当残っており、モスクワ指導者は、自ら掘った暗い穴にさらに人命と装備を投げ込むことに何の問題も感じない。しかし、ウクライナ制圧は簡単なはずだったのに、まったく簡単でなかったことは明らかである。その後待ち受けるのは、これまで見たこともない反乱であり、ロシアが制圧できる可能性はほとんどない。

 侵攻開始後に、ウクライナへの最新携帯型対空・対車両兵器の流れは劇的に増加した。対戦車誘導弾数万発と携帯型防空システム(MANPADS)数千発がウクライナ全土に行き渡り、さらに多くの兵器が投入されている。

 ジャベリン、NLAW、スティンガーが注目される一方で、アサルトライフル、カービン銃、ピストル、スナイパーライフルなど小火器も大量に入ってきており、ロシアによる占領に破滅の兆しを見せている。戦闘に慣れた正規軍に加え、戦闘経験豊富な民間戦闘部隊が、理由なくやってきて愛する者を殺し、街を破壊し、焼き払うロシア人への憎悪で団結すれば、銃弾の一発一発が深刻な脅威となる。占領が始まる頃には、多数が弾丸の使い方を知っているので、占領するロシア軍と傀儡勢力に苦痛を最大に与えるだろう。

 ロシア兵も協力者も、安全に動き回れなくなる。環境は極めて敵対的なものになる。イラクやアフガニスタンで米兵の命取りになったのと同じ低コスト即席戦術が、ウクライナに流入しており、数十万ドルするミサイルと一緒に使われている。

 ウクライナ内の兵器はロシアにとって大きな問題であるだけでなく、ロシアがウクライナで活動する限り、さらに多くの兵器が流入し続ける。ウクライナには、NATO加盟国と長く複雑な国境がある。そのため、物資は流れ続ける。反乱軍が史上最高の資金力を持てば厳しい状況が現実のものとなる。西側の多くは基本的に、モスクワの治外法権の妄想がウクライナ国境で死ぬのを見るため、必要なものは何でも使うだろう。

 実際、歴史上初めて、反乱軍が相手よりも優れた装備と訓練を受けていることになるだろう。

 これはすべてウクライナ領土を完全制圧する前提だ。ハイブリッドモデルが実現し、ロシアの支配が完全に及ばなくても、ウクライナ西側が激しく対立する場になる可能性は大いにある。そうなれば、ロシアの侵略者にとって事態がさらに悪化するだけだ。

 ロシアにはウクライナ占領に必要な戦力すらない。それどころではない。大惨事となった戦闘作戦が開戦時の大誤算であったことは明らかだ。紛争に投入された総兵力のおよそ1割が、現在、行動不能と考えられている。兵員や装備の損失が増えれば増えるほど、部隊は正常に機能しなくなり、スパイラル的に影響が拡大する。

 ロシアは当初派遣した兵力以上の戦力を投入できるにもかかわらず、そうすると万が一の場合に非常に手薄になるし、ロシアの物理的な大きさを考えると、大規模な援軍を送ることには、疑問が残る。米国防総省によれば、ロシアの大隊戦術群の能力の75%がウクライナで活用され、固定翼と回転翼の航空能力の60%以上が戦闘に投入されている。特に、何年続くかわからないウクライナの本格的な占領を維持する戦力はない。これに大規模な反乱軍が加われば、まったく不可能な任務になるのは目に見えている。

 ロシアがウクライナへ保有戦力を最後の一人まで投入できないとは言わないものの、このような作戦を継続するとは非常に考えにくい。また、ウクライナに展開するロシア軍の大部分は数カ月前から配備されており、士気が低下した部隊もあると考えなければならない。隣国ベラルーシがウクライナに自国軍を派遣し事態を収拾できるかもしれないが、長期的な解決策にはなりえない。

 つまり、ロシアがウクライナで血と国富の犠牲を払って軍事的に目的を達成したとしても、その先に控えるのは勝ち目のない状況なのだ。そして、ウクライナ国民が占領軍に紛れ込めば、敵はどこにもおらず、同時にどこにでもいることになる。

 どう考えても、ロシアが「勝った」後には、壮大なスケールのゲリラ戦の大虐殺が控えるという話である。

 侵攻開始の数日前、著者はロシアがアフガニスタンで行った10年にわたる冒険が、ソ連を歴史の塵に突き落とした大要因となった繰り返しになる、あるいはもっと悪い結果に終わる可能性があると記した。

 ロシア社会にアフガニスタンが今でも大きく立ちはだかっている。残酷な10年戦争は、ソビエト連邦を崩壊させる大きな要因になった。プーチン大統領は、この戦争が彼の世界観の原動力となっていることを熟知している。この戦争では、米国から提供された最新鋭ミサイルなどの兵器や訓練が、モスクワがめざした人的・物的損失を出さずに達成する目的に大きな影響を与えた。

 NATO加盟国が支援するウクライナでの長期的な交戦は、ロシアにとってどのようなものになるのだろうか。かなり恐ろしいと言えるかもしれない。ロシア国内では、ウクライナ戦争は非常に高価につく、無制限戦になる可能性があり、その上、制裁と国際社会多数からの排斥を受ける可能性がある。ウクライナの反乱は、「もしも」の学術ゲームではない。不測の事態の基礎は、国内的にも国際的にも築かれている。冷戦時代以降に見られなかったが現代の代理戦争になる可能性がある。

 先の記事で述べたように、冷戦後期に鋭く研究したはずのプーチンが、落とし穴を熟知しながらウクライナで大盤振る舞いしているとすれば、驚くべきことだ。ウクライナのすべて、あるいは半分を奪おうとすれば、ソ連のアフガニスタン同様の戦術事態が、はるかに大きな規模で到来するだろう。プーチンが壮大な道を選んだのが明らかになった後、そのすべて、いやそれ以上のことが実現しつつあるように見える。

 さらに悪いことに、ロシアが軍事目標の基本を達成しても、どのような物質的見返りがあるのだろうか。仮にロシア軍が大戦果を上げ、事態が占領に移行したら、先に述べたように見通しは極めて厳しい。ロシアの枯渇した軍事力をさらに犠牲にすることになる。抵抗が続き、ロシアが町単位で破壊を進めれば、紛争が終わる段階でウクライナの大半が廃墟と化しているだろう。巨大な足かせになるのを防ぐには、巨額投資が必要となるがロシア経済そのものが破綻となる可能性が高い。

 いずれにせよ、ロシアの戦闘力は著しく低下し、兵力は低下し、資材の多くは破壊される。キエフのロシア傀儡政権を支えるため必要となる膨大な経済的犠牲に加え深刻な制裁を考慮すれば、軍の再編成予算もなくなる。制裁でロシアは先端兵器製造に必要な技術の供給源から切り離されたため、消耗した先端兵器の補充することは極めて困難であり、そもそも調達資金があったとしても、実現の可能性は非常に低い。

 ソ連に近いものを再建する、あるいはNATOとの間に緩衝地帯を回復するとのロシアの歪んだ夢の対局に通常戦の脅威をほとんど与えない壊れて、再建方法を持たずウクライナで立ち往生しているロシア軍がある。一方、NATOは、ウクライナにおけるロシアの行動の結果、冷戦以来見られなかった方法で軍事能力を拡大する。このためロシアの考えは通用しない。

 ロシアの戦略兵器にも大きく影響が出る。通常戦力が崩壊すれば、抑止効果は核兵器に頼らざるを得なくなる。これでは理想的、あるいは柔軟とは言い難い。また、核軍拡競争が起こっても、ロシアには財政面で対抗の術がない。国内経済が困窮する中で、軍事費に資金を投入すれば、プーチン政権はさらに不安定になる。

 そして、占領後のウクライナへの支援は、モスクワの首に財政の縄をかけることになる。

 とはいえ、明確な道筋が見えない中、なぜ続けるのか?なぜ、こんなことをするのか?このままではコストに見合う成果が得られないのでは?との疑問が出そうだ。これは戦略的な問題であると同時に、プーチンの理性的な行動者としての資質を問うリトマス試験紙である。プーチンは、聡明な戦略家と見なされてきたが、その建前が崩れつつある。

 こうして、ロシアにはウクライナの征服で勝機が残っているかもしれないが、すでに負けているのである。そもそも起こるべきでないまやかし戦争が、日を追うごとに損失をより深く、より永続的になるだけであろう。■

 

Russia Has Already Lost | The Drive

 

There is no clear path to a positive outcome for Russia in Ukraine. It could win every future battle, but it has already lost.

BY TYLER ROGOWAY MARCH 23, 2022

 


 

不利な状況にもめげず奮闘するウクライナ空軍のパイロットが語る内幕。ロシアはウクライナの防空体制の柔軟な対応をまだ屈服できていないが....

 Training session of Ukrainian Air Force at a military airbase in Vasylkiv village

DANIL SHAMKIN/NURPHOTO VIA GETTY IMAGES

 

くの予想に反し、ロシアの侵攻にウクライナ空軍が奮闘している。ウクライナ空軍は、開戦数日で地上と数で優勢かつ技術的に進んだ相手により消滅するとの予想に反し、戦い続けている。ウクライナ政府による航空戦勝利の主張では、ウクライナ空軍が不利な状況をどう切り抜け、ロシア航空宇宙軍(VKS)の航空優勢確保を防いでいるのか、正確なところがわからない。今回、ウクライナ空軍の反撃の実態について、現役戦闘機パイロットへのインタビューで一端が明らかになった。

 ひとつは、ニューヨークタイムズ記事で、Su-27フランカーのパイロット「アンドレイ」へのインタビューが掲載されている。一方、コールサイン「ジュース」との別のウクライナ空軍パイロットは、CNNのアンダーソン・クーパーとのビデオインタビューに応じた。

 

OLEG V. BELYAKOV/WIKIMEDIA COMMONS

A Ukrainian Air Force MiG-29 Fulcrum.

 

 まず、Su-27パイロット、アンドレイは、夜間スクランブルでVKS戦闘機を迎え撃つなど、迅速対応の警戒任務について話している。飛行前の完全チェックを省略し、フランカーは格納庫からスクランブル発進している。ウクライナ機の一部は、フライトラインからではなく、硬化した航空機シェルターで、攻撃者の視界から遠ざけられているようだ。

CHRIS LOFTING/WIKIMEDIA COMMONS

A Ukrainian Air Force Sukhoi Su-27UB Flanker-C.

 

 「操縦するのは毎回実戦です」とアンドレイは説明する。「ロシア機とは、いつも対等ではありません。常に5倍以上の機体を飛ばしてきます」。25歳のアンドレイは、これまで任務を10回こなし、すくなくとも一機撃墜したという。

 「主な任務は空中標的の攻撃や、迎撃です」とアンドレイは説明した。「ロシア機へ十分に接近し、標的を定め発砲したこともある。探知してミサイルのロックオンを待っていると、地上から『もうミサイルを発射したよ』と言われたこともありました」。

 ロシア機撃墜を振り返り、「この機が私の平和な町を爆撃できなくなり、幸せです」という。

 アンドレイは、飛んできたミサイルを回避行動で生き延びたようだが、ジェット機の自己防衛システムも活用したのだろう。高周波の脅威をパイロットに警告するレーダー警告受信機や、チャフやフレア放出装置がある。

 

DMITRY PICHUGIN/WIKIMEDIA COMMONS

A Ukrainian Air Force Su-27 ejects flares during an air display.

 

 「自らの技量で勝つしかない」「技量はロシア側より優れている。しかし、私より経験豊富な者や同僚が戦死しています」

 シナリオでは、Su-27のパイロットは格納庫から発進し、空中で標的情報を受け取ることになっているが、ウクライナ空軍に残る作戦拠点がどこかは公式に開示されていない。空軍基地や空港は、ロシアのミサイル攻撃で激しい攻撃を受けており、空軍は分散作戦で対応しているようだ。西部の小規模滑走路や、部分的に破損した長い滑走路、高速道路を使用することもある。道路からの作戦は、ウクライナ空軍がこれまでも実践してきたものである。

 同様に、ウクライナ空軍の残存機数も明らかにされていない。米空軍中将を退役し、現在は米空軍士官学校上級研究員のデビッド・デプチュラDavid Deptulaによれば、ウクライナ空軍は現在、55機の戦闘機を運用中だという。今月初め、米国防総省の高官は、開戦前戦力の80%に当たる56機と発表している。

 英国国防省は、「ウクライナ空軍と防空軍はウクライナ領空を効果的に守り続けている」「ロシアは制空権を獲得できず、ウクライナ国内への攻撃は比較的安全なロシア領空から発射するスタンドオフ兵器に大きく依存している」とみている。

 とはいえ、機材は平時よりも厳しい状況に置かれており、戦闘が続けばウクライナ空軍の作戦能力は劣化するだろう。NATOからMiG-29を入手する試みは、失敗に終わっている。さらに、ロシアはリヴィウ州立航空機修理工場を攻撃し、MiG-29メンテナンス用の大型格納庫を破壊するなど損害を与えた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、ウクライナ空軍の1日の出撃回数は5〜10回、これに対しVKSは約200回と推定している。他の推定では、ロシアの出撃回数はもっと多く、ある米国防総省高官は昨日、24時間で300回出撃したと述べた。ウクライナの出撃回数も増加傾向にあると評価されるが、地上配備の防空体制の優位性を反映している。

 同記事では、ウクライナ空軍の地上防空システムの優位性も取り上げ、ウクライナの大部分でVKS機へ防御の傘を張ることができたという。しかし、ロシアはウクライナの一部で同様にミサイル防衛を確立したようだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、VKSのミッションは夜間が大部分で、地上防空網への脆弱性を減らすためらしいが、この主張の検証は困難だ。

 ウクライナ空軍報道官ユーリ・イフナットYuriy Ihnatは、ニューヨーク・タイムズ紙に「ウクライナは自国で活動しているため、空で効果を発揮している」「わが領空に飛来する敵は、こちらの防空システムの有効範囲内に飛来している」と述べている。ウクライナ側がVKSに罠を仕掛け、有人戦闘機で敵機を地対空ミサイルの空域に追い込んでいる。このため、VKSは航空制圧作戦(SEAD)で出撃を明らかに増加させているようだ。

 同記事によると、ウクライナは航空戦の不利を克服する工夫もしている。地上のボランティア観測者のネットワークが、VKSの航空活動を軍に報告するよう警戒体制を構築しており、第二次世界大戦中の「ブリテンの戦い」での民間防衛観測者と類似している。また、民間パイロットがナビゲーション機器を空軍に寄贈した例も紹介されている。

 一方でジュースは、現在の航空戦の状況について、ニュアンスの違う説明をした。VKSは現在、完全な航空優勢を得ていないが、目的は「ほぼ」達成したと述べている。ウクライナ側は、限られた数の航空機と防空システム(いずれも旧式の装備)で阻んでいる。

 それでも、「ロシアは多くの損失を出し、我々の防空を恐れている」とジュースは言う。「だから、ここでは快適に飛べないのだ」。

 米国の国防当局者は昨日、ロシアの航空優勢が実現していないのは、ウクライナの「非常に創造的な防空態勢」のためとした。

 ジュースは「効率的な地上防空システムが必要で、制空権を得るために、戦闘機も必要だ」と述べた。

 ニューヨークタイムズは、「現代戦では珍しいトップガンスタイルの空中戦が同国上空で繰り広げられている」と表現している。ウクライナ空軍の戦術がVKSを阻んでいるのは間違いなく、ウクライナ戦闘機(MiG-29やSu-27)がロシア機の損失に貢献している可能性が高い。ウクライナ当局によると、ウクライナ国防軍(戦闘機・地上防空システムも含む)が撃墜したロシアの固定翼機は97機にのぼるという。正確な数は不明であり、今後何年も議論される可能性がある。

 現段階では、どのロシア軍機がウクライナ空軍戦闘機により撃墜されたか特定できないが、パイロットへのインタビューから、ウクライナ上空ではVKS機や巡航ミサイルと定期的に遭遇しており、一部はウクライナ軍機が撃墜したとも伝えらる。

 米国はじめ同盟国は、肩撃ち発射式地対空ミサイル・システムをウクライナに供給し続けているが、より高度でSAMシステムのウクライナへの移転も積極的に進めており、航空機材の提供を水面下で進めている可能性すらある。しかし、少なくとも公の場での戦闘機供与の希望は、国防総省がポーランドMiG-29の供与案を支持しないと表明したため、停滞している。ロシアからの深刻な報復を恐れたためだ。そのため、アンドレイやジュース、さらにウクライナ空軍は、戦争が進むにつれて損失が増え、ますます困難な状況に直面するだろう。ロシアに制空権を握らせないためには、ウクライナ軍の地上装備が大きな役割を果たすのは必至なようだ。

 

Ukrainian Fighter Pilots Describe Their Desperate Air War Against Russia

Against the odds, the Ukrainian Air Force continues to work at denying Russia air superiority over Ukraine.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 22, 2022