2022年9月28日水曜日

ウクライナ戦の最新動向 ロシア新規徴募兵が装備、訓練ないまま戦線へ到着、「住民投票」、核の脅かし、イラン製無人機など。

 Ukraine Situation Report: Untrained Russian Draftees Reach The Front

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より良い装備と経験豊富なロシアの正規軍を打ち負かしてきた戦いに慣れた敵にロシア新兵が直面しようとしている

 

防総省報道官によれば、ロシア軍は、南のケルソンから北のハリコフまでの全戦線で「意図的な前進」を続けるウクライナ軍相手に防衛戦を展開している。

パトリック・ライダー空軍准将Air Force Brig. Gen. Patrick Rydeは9月27日、国防総省での記者会見で、「北部と南部の特徴として、現段階ではロシア側が基本的に防衛にまわっている」と述べた。

「ドンバス地域では、ロシア軍はワグネル・グループ部隊と領土を奪おうとしているが、重要視すべき事象ではない。ウクライナ軍はここまで、戦線を維持し、これらの作戦を撃退する良い仕事をしている」。

前線の数カ所でロシア軍陣地に進攻しているウクライナ軍の映像が続々と公開されている。映像では、木の間に張られた半透明のビニールシートでできた森の野営地で、ロシア軍数名が降伏する様子が映し出されている。

ウクライナ軍は、国内最大級の鉄道駅があるクピャンスクをはじめ、南北に伸びる2本の軸に沿って、ゆっくりとだが確実に町を解放している。ウクライナ国防省がソーシャルメディアに投稿した以下のビデオに見られるように、黄色と青のウクライナ国旗が9月27日に駅の外で掲げられ、代わりにロシア三色旗の上に兵士が立っていた。

ウラジーミル・プーチンによる最近の動員努力で徴集されたロシア軍は、ほとんどあるいは全く訓練を受けておらず、物資もほとんどない状態で最前線に到着している。下のビデオの徴兵者は、全く訓練を受けていないままケルソン近郊の戦闘に送り込まれたと主張している。

他の場所では、ロシア軍はアサルトライフル以外何も持たずに戦闘付近に捨てられたと訴えている。指揮官を罵りながら、以下のビデオのロシア人新兵は、前線に送られる前に食料も水も供給されていないと主張している。

ライダー准将が先週示唆したように、訓練を受けず、装備も不十分な新兵何十万人を活発な戦闘地域に投入すれば今回の戦争が始まって以来、規律、兵站、保守に苦労してきたロシアの戦争マシンにさらなるストレスを与える可能性がある。

ロシアは新兵に食事、衣服、輸送、武器、通信をこれから支給しなければならないが、すべて従来の部隊に提供するのに苦労してきた内容である。

ポーランドのズビグニエフ・ラウ外相Polish Foreign Minister Zbigniew Rauは、訓練されたロシア正規軍が戦争初期に発揮した戦術と比較し、ウクライナ軍に対するロシア新兵の戦闘効果に疑問を呈している。

「軍事アナリストではないが、常識的に考えて、良い解決策に思えない。ウクライナ軍がよく訓練され、よく装備されたロシア兵を倒すことができたなら、もっとひどい兵士に勝つ可能性があるでしょう。動員で突破口を開く期待には、無理があるのではないでしょうか」。

ロシアは準備が全くできておらず、少なくとも1つの部隊では制服と防護服しか支給されなかったという。下のビデオでは、ロシア将校が新兵に、銃創の包帯用にタンポン含む医療用品を自分で調達するように指示している。

ウクライナ内相の顧問アントン・ゲラシチェンコAnton Gerashchenkoによると、ロシア新兵が徴兵直後に、訓練も装備もないまま戦場に送られているとの報告が急増しているという。

下のビデオに映っているロシア人捕虜は、9月21日に動員され、1週間も経たずにウクライナで捕虜になったと主張している。

最新情報

予想通り、ロシアに占領されたケルソン、ザポリツィア、ドネツクとルハンスクの自称人民共和国の当局は、市民の間でロシア連邦加盟がほぼ完全に承認されたと発表した。米国とNATOが「見せかけの」住民投票と呼ぶ、住民投票では、笑えるほどあり得ない98%がロシアへの加盟を支持したと伝えられている。

ウクライナの主権を支持する勢力は、この結果を即座に否定した。イスラエル外務省は、ウクライナの領土保全と主権を支持し、住民投票結果を認めない、と述べた。

プーチンは、9月30日に予定されている演説で、ウクライナ占領地の併合を発表する構えだ、とKyiv Independent通信が報じている。

いくら非合法とはいえ、占領地を併合すれば、占領地住民から兵員を徴集する口実になりかねない。特に、少数民族が戦争に参加するため不当に徴兵されている辺境共和国では、今でも悲惨に見えるロシアの隊員の士気と国内での戦争支持にさらなる打撃を与える可能性がある。

ロシア軍は、占領下のクリミアでまさにそのようなことをしているようだMアサルトライフルを装備し軍服を着て隊列を組む、混乱した様子の年配男性多数の新兵の写真がある。

おそらく、ロシアは征服作戦を誤った方向に進めてしまったと認識しているのだろう、プーチンはウクライナ紛争について核兵器を使用すると脅している。ライダー准将は、国防総省はこうした脅しを真剣に受け止めているが、ロシアの核攻撃はまだ想定していないと述べた。

「現段階では、こちらの核態勢を調整させる事態は何もない」とライダー准将は述べた。「以前にも言ったように、こちらの焦点はウクライナの戦いを引き続き支援し、ロシアの戦力態勢に関して同盟国やパートナーと緊密に協力することである」。

ポーランドのラウ外相は、ロシアの地理的な影に位置するヨーロッパ諸国は、プーチンの核の脅威を真剣に受け止めるしかないと述べた。プーチンが敗北を避けるために核兵器を使用する可能性があることは、米国が決定してうた勝利を早めるため日本に原爆を投下したのとは全く対照的である、と述べた。

「もしプーチンが核戦術兵器を使うと脅すのなら、この出来事が全く異なる状況になると認識しなければならない。なぜなら、戦争に勝つのではなく、むしろ負けている側が核兵器を使用することになり、戦争の一番最後にではなく、実際には戦争の最中になるからだ。つまり、まったく新しい状況になる。根本的な疑問は、これでロシアに何をもたらすか、ということだ」。

「答えは」、とラウはNATO加盟国の新たなコンセンサスに従って、「ウクライナにおける通常対応だ」と付け加えた。

ブルガリアなど一部NATO加盟国は、自国民にロシア領から一刻も早く脱出するよう指示するほど事態は悪化している。

ロシアの最高幹部は、核兵器が使用される可能性を示唆し続けている。キエフ・インディペンデント紙によると、ロシアのメドベージェフ首相は9月27日、「われわれや同盟国がこの種の兵器で攻撃された場合、あるいは通常兵器の使用による侵略が国家の存在を脅かす場合、ウクライナで核兵器を使用する権利がある」と発言した。注目すべきは、通常兵器の使用を正当化の理由に含めていることである。また、メドベージェフは、ロシアが核兵器を使用した場合、NATOは対応できるのかと疑問を呈している。

昨日の報道と異なり、米国が供与したNASAMS(National Advanced Surface-to-Air Missile Systems)は、まだウクライナに到着していない。ライダー准将によれば、第一陣は今後2カ月以内に到着する予定だという。キエフと約束した残りの6基のNASAMは「将来的に」届けられるとライダーは語ったが、時期は明かさなかった。

NASAMS firing an AIM-120. Kongsberg Defense

ウクライナは、ロシアのミサイル攻撃から都市を守るため、これらのシステムを求めてきたが、9月27日、解放されたハリコフ市への攻撃は続いている。ロシアのミサイル5発が同市に着弾し、発電所を直撃して停電となり、大火災が発生したという。

ライダー准将は、イラン製の無人機がウクライナでロシア軍に採用され、攻撃や偵察の任務に使われていることを確認した。

「ロシアがイラン製無人機を使用していることは確かだ。...我々は、彼らが今、ウクライナでそれらを使用していると評価する」とライダーは言った。「その効果について、壇上から戦闘ダメージの評価をしたり、具体的な情報に触れたりすることはしないが、我々は彼らが使用しているのを目にしている。また、ウクライナ軍が無人機を撃墜したという報告もあるが、ここでも具体的な数字には触れないが、信憑性があると評価している。これはロシアがイランから提供された能力を使用していることを示している。そして、運動攻撃とISR(情報、監視、偵察)両方に使用している」。

紛争から7カ月が経過した現在も、ウクライナ空軍のジェット機は戦闘地域上空で近接航空支援任務についている。下のビデオは、Su-24M攻撃機のペアがロシアの陣地に爆弾を投下し、ロシア戦車を破壊する様子を映している。

一方、エストニアのカジャ・カラス首相Prime Minister Kaja Kallasは、対戦車誘導弾システム「ジャベリン」の訓練に時間を割いた。ロッキード・マーチン製のATGMSは、米国からウクライナに数千発が提供され、戦争初期に傑出した武器となった。

ロシアは依然として、敵対するウクライナ軍へも車両や兵器で重要な供給国である。最近入手したものでは、ロシアのMsta-SM2 152mm自走榴弾砲が、ほぼ新品の状態でウクライナ軍に捕獲された。

米国は、ウクライナの法執行機関および刑事司法機関の運用能力を強化する目的で民生安全保障支援として、4億5750万ドルを追加投入したと、米国国務省が9月27日に発表した。

2021年12月中旬以降、米国は「ウクライナ国家警察(NPU)や国家国境警備隊など、ウクライナの法執行機関や刑事司法のパートナーに具体的で前向きな影響を与える」6億4500万ドル以上の支援を約束していると、国務省は声明で述べている。この資金は、ウクライナの犠牲者を減らすための個人用保護具、医療品、装甲車に充てられる。

「ウクライナの法執行機関への直接支援を拡大することに加え、この新しい支援の一部は、ロシア軍が行った残虐行為を記録、調査、起訴するウクライナ政府の努力への米国の支援を継続するもの」と国務省は述べている。

アゾフ連隊のマリウポリ守備隊員で、アゾフスタル製鉄所陥落後に捕まったウラディスラフ・ザイヴォロノクVladyslav Zhaivoronokは、ワシントンDCで議員を訪問している。彼は先日の捕虜交換でロシアから解放され、更生し、現在はウクライナ捕虜を擁護している。■

 


Ukraine Situation Report: Untrained Russian Draftees Reach The Front

BYDAN PARSONS| PUBLISHED SEP 27, 2022 7:44 PM

THE WAR ZONE


B-21レイダーの公開前に同機の性能、意義、効果をまとめてみた

 

 

待望の極秘B-21レイダー爆撃機(潜在的に最高性能のステルス機)は

今年後半に実機が公開される 


 

ースロップグラマンが主導するB-21の取り組みは、長距離打撃爆撃機(LRS-B)という控えめなタイトルで2015年に始まり、それ以来、秘密主義のベールに筒あmれて機能している。最近では、高解像度カメラがここまで普及しているもかかわらず、B-21の画像は7年間の開発期間中、6機のテストモデル機が完成間近であるにもかかわらず、1枚もインターネット上に流出していない。 

 この新型ステルス爆撃機は、伝説的な前身であるノースロップ・グラマンのB-2スピリットの成功の上に成り立っているが、少なくとも「2世代」先のステルス技術を活用していると言われる。それ自体、重要な主張である。B-2は四半世紀前から運用されているにもかかわらず、いまだに世界で最高のステルス機と言われている。 

 

 

34年ぶりの新型ステルス爆撃機

 

1988年11月22日、ノースロップのパームデール組立工場の巨大格納庫の扉が、歓声に包まれ開いた。陽光に包まれ、黒くなめらかな機体がゆっくりと姿を現した。1920年代にソビエトのチャイラノフスキーBIChシリーズ、1940年代にノースロップ社のYB-49など、歴史上開発された全翼機に似た翼幅172フィートの機体は、本来不安定な設計を全く別の目的に活用した。 

 当時空軍長官のエドワード・C・オルドリッジ・ジュニアは、「単にアメリカの最新戦略爆撃機を発表しているのではありません。戦略的抑止の新時代を切り開いているのだ」と挨拶した。 

 初期の全翼機は、空力効率の実験用だった。全翼機の設計では、垂直尾翼で抗力を増加させる代わりに安定性をもたらす装備を排除している。そのため、全翼機は、燃料効率を高める手段と考えられていた。確かに全翼機は空力的に効率的だが、胴体がないため、翼自体の垂直方向の厚みや、乗客や機材を収容するための機体高が必要となり、空力効果が限定されてしまう。

 

 

試験飛行中のノースロップ社製YB-49 (Wikimedia Commons) 


 しかし、新型爆撃機B-2の洗練されたデザインは、無給油航続距離7,000マイル近くを誇るにもかかわらず、燃費重視で設計されたものではない。ステルス技術を駆使し、世界最先端の高性能防空システムの突破を目的に作られたのである。 

 アメリカ政府は1980年に初めてステルス技術の存在を認めたが、それまではステルス機は誰も見たことがなかった。1983年に就役したF-117ナイトホークが一般公開されるのは、2年後だった。 

 記者や野次馬は、機首を向けたまま爆撃機の後ろ姿を見ることは許されなかった。公開の翌日、エドワード・C・オルドリッジ・ジュニア空軍長官は、「報道陣以上にソビエト軍を近づけさせない」と言ったとワシントン・ポストが伝えていた。新型爆撃機の機体だけでなく、採用された技術があまりにも重要だったのだ。 

 当時は、ソ連がB-2技術を真似て、自国のステルス爆撃機を開発する懸念があった。 

 B-2 Spirit unveiling

B-2スピリット公開時のパブリックビュー (Wikimedia Commons) 

 34年がたち、アメリカはステルス爆撃機技術の独占を何とか保っているが、リードは消えつつある。中国とロシアがステルス爆撃機運用を開始しただけでなく、さらに高度な防空システムで、スピリットのステルス性が相殺されている。 

 アメリカは新しいステルス爆撃機を必要としている。来る12月の第1週目には、B-2と同じパームデール組立工場から、新型機が送り出される。 

ノースロップ・グラマンB-21レイダーもまた、歴史に見られる全翼機のデザインに似ている。しかし、スピリット同様に、レイダーの単純に見える外形には、戦場での能力における技術の大きな飛躍が隠されている。レイダーは、60,000ポンド積載量を誇るB-2スピリットより小型になる予想だ、サイズの不足を性能で補うことができるだろう。 


B-21はF-35やF-22より高ステルス機になる 

B-21は、B-2が飛行を開始して以来、ステルス設計における30年以上にわたる価値ある進歩の恩恵を受け、新しい爆撃機を検出し、ターゲットにす敵の努力を無効にできる合理的かつ効果的な形状となる。 

 ステルスの基本は、ソ連の物理学者であり数学者であるピョートル・ウフィムツェフの研究から生まれた。1971年9月に空軍の外国技術部が翻訳した「回折の物理理論におけるエッジ波の方法」という40ページに及ぶ学術論文は、本国ではほとんど評価されなかった。しかし、翻訳がスカンクワークスの数学者でありレーダー専門家でもあるデニス・オーバーホルサーDenys Overholserの手に渡った。ウフィムツェフは「ステルスの父」と呼ばれるが、その研究を応用し、3次元航空機のレーダー断面積を計算する数式を考案したのはオーバーホルサーであり、将来の利用への道を開いた。 

 しかし、計算は難しく、レーダー偏向設計の複雑さは、コンピュータが登場してもなお、手に余った。ホープレスダイアモンドとそこから生まれたF-117ナイトホークのギザギザの角度は、このステルス計算と空力的要求の間の難しい妥協の結果だ。ロッキードとF-117の契約を争い敗れたノースロップも、ステルスの野望をあきらめず、そこで得た教訓を新しいプラットフォームに展開し、ロッキードのナイトホークを上回る性能の飛躍的な向上を実現した。 

 その後、計算機性能は飛躍的に向上し、より小型のステルス機の設計が可能になった。今日、ステルス性と空気力学の間の妥協は、はるかに少なくなっており、B-21は、着実に改善された設計概念の最新の成果だ 

 進歩の結果はF-35やF-22のような現行のステルス戦闘機に見えるが、ノースロップB-2がこれらの第5世代戦闘機のいずれよりも高ステルスであるというと、多くの人が驚くだろう。 

 

第4世代(非ステルス)戦闘機と第5世代(ステルス)戦闘機のレーダー探知時の単純比較 


全翼機のステルス効果とは 


B-2スピリットの初飛行は1989年で、F-22が就役する16年前、F-35が海兵隊で初期運用能力を獲得する26年前だった。ステルス戦闘機は、戦闘機領域における全体的な低観測性では、実質的に比類なき存在だが、B-2は最先端ジェット機のいずれより検出および追跡が困難な性能を維持している。B-21レイダーで優位性をさらに拡大することになる。 

 戦術戦闘機には曲技飛行が要求されるため、F-35のような戦闘機には操縦性と制御のため垂直尾翼が必要である。  

 戦闘機設計は、高周波レーダーシステムに対する探知性を制限するため最適化できるが、それでも、低周波の早期警戒アレイに対しては、リターンが発生する傾向がある。実際、レーダーリフレクターや外部燃料タンク、弾薬なしで飛行していても、航空管制レーダーがステルス戦闘機を発見することは珍しくない。 

 

 

by Rebecca Grant, Mitchell Institute, 2010


 

 一方、B-2スピリットやB-21レイダーのようなステルス爆撃機は、戦闘機に求められるような高Gスタントを行う必要がないため、尾部などステルス戦闘機によく見られる部分を省略できる。そのため、高周波の火器管制レーダーで狙われにくいだけでなく、低周波レーダーでも発見するのが難しい。 

 

 

ステルス性能の秘密をB-21がフル活用する 

 

 

 

(Northrop Grumman) 

 

 

B-21レイダーがB-2よりステルス性を高める理由は、デザインだけではない。現代の航空機は、デザインだけでは真のステルス性は得られません。レーダー吸収材(RAM)の層で覆われ、レーダーリターンを大幅に低減させることも必要だ。機体に小さな傷やひび割れがあると、ステルス機の外観が損なわれてしまうため、素材は機体の仕上げを滑らかにするのに役立つ。さらに重要なことは、RAMは航空機に当たるレーダー波を熱へ変換し、放散させることだ。 

「RAMは、航空機が電磁波エネルギーを吸収して反射信号の強度を最小にする原理で機能する」と、エイドリアン・モリツAdrian Mouritzは学術書 "Introduction to Aerospace Materials "に記している。 

現在のステルス戦闘機のRAMは、受信電磁波エネルギー(レーダー波)の70~80%を吸収する驚異的な性能を誇るが、非常に高価でメンテナンスに時間がかかり、高熱や水、塩などにさらされると破損しやすい欠点もある。RAM技術の開発は、防衛技術の世界では最も秘密にされているが、ノースロップ・グラマンが過去30年にわたり、この領域で前進を続けているのを示唆する証拠がある。 


 RAM coating applied to a B-2 Sprit

RAMコーティングを施されたB-2スピリット (Northrop Grumman) 


2004年、ノースロップ・グラマンは、のB-2に代替高周波材料(AHFM)と呼ばれる新しいRAMコーティングを施すと発表した。新型RAMは、毎回のメンテナンスで約3,000フィートにわたるRAMテープを機体に貼る必要がなく、同じレーダー吸収性能を持ちながらメンテナンスを低減させることができる。しかし、そこで終わりではなかった。 

2017年、ノースロップ・グラマンは、B-21レイダーの製造場所と同じカリフォルニア州パームデールに、新たな「コーティング施設」を建設するため3580万ドルを受注した。ただし、この契約と当時のノースロップのリリースでは、爆撃機の名前に触れていない。2021年になると、ノースロップ・グラマンはコーティング工程の進歩について、もはや恥ずかしがることはなくなった。B-21のコーティングのエネルギー吸収能力改善の可能性については言及しなかったが、ノースロップの爆撃機部門担当副社長スティーブ・サリバンSteve Sullivanは、新型爆撃機に活用される材料がB-2を大きく改善することは明らかだと述べていた。 

「B-2や他のステルス機で学んだ教訓を応用し、デジタルエンジニアリング技術を用い、生存率と空力性能の両方の観点からB-2を大幅に改善した設計を実現しただけでなく、B-2システムのステルス性能と同様に保守性において革命的なコーティングシステムも実現しました」と、Breaking Defenseに語っていた。 

以前の紹介したように、最近登場したセラミックベースのRAMコーティング(電磁エネルギーを90%以上吸収すると言われる)は、ステルスにおいて大きな進展となる可能性があります。この素材は砂より硬く、華氏1,800度以上の温度に耐え、既存のポリマー製RAMよりメンテナンスが大幅に削減されそうだ。 

2020年、ノースカロライナ州立大学のチームは、空軍科学研究局からセラミックRAMコンセプトの開発継続契約を獲得した。この10年後に就航するB-21にこの素材が搭載される可能性は低いようだ。しかし、2012年時点で、一般雑誌Popular Scienceが、ノースロップグラマンの次期爆撃機を、従来の鉄をセノスフィアと呼ばれる中空のセラミック球体に置き換えた新RAMを開発するCeno Technologiesの取り組みと結びつけていた。 

 この球体をさまざまな材料で覆えば、軽量で耐久性のあるRAMができ、さらに特定の周波数でのレーダー波を吸収するようカスタマイズできる。B-21が実際にこのような高度RAMを使用するかは不明だが、ノースロップグラマンがこの件について口を閉ざしていることは予想される。RAM科学は、電子戦同様に、新しい進展を企業が口にしない傾向がある領域である

 

B-21 concept rendering

(Northrop Grumman) 


B-21は太平洋の抑止力で極めて重要な存在となる 

太平洋における中国の海軍プレゼンスは、隻数ですでにアメリカの海軍を上回っているが、中国がアメリカの戦力投射能力に対して与えている最大の脅威は、隻数ではなく、対艦兵器システムの備蓄を増やしていることだの対艦弾道ミサイルは、DF-21Dのように1000マイルを超える射程を誇り、DF-ZF含む最新の極超音速対艦兵器は、現在の技術ではほぼ防御不可能と考えられている。 

 これらの兵器で、中国沿岸から1000マイル以上に及ぶ領域拒否の泡を作り、米空母がF-35CやF/A-18スーパーホーネットの戦闘出撃のため安全に接近して航行することを阻んでいる。アメリカの11隻のスーパーキャリアーのうち、たった1隻を比較的少数のミサイルで失うことは、第二次世界大戦でHMSプリンス・オブ・ウェールズやレパルスが日本の爆撃機に沈められたのと同様に、アメリカ海軍の軍事ドクトリンの基礎に壊滅的な打撃を与えかねない。実際、中国が採用している比較的低コストで高性能な対艦兵器の出現により、スーパーキャリアーの時代は終わったと主張する人も出てきた。 

 しかし、B-21レイダーは、低い観測能力、ペイロード能力、長距離ミッションセットのおかげで、この領域拒否の優位性を相殺できる。また、AGM-158B JASSM-ERのような長距離、低観測性兵器を運用できるため、探知されないまま文字通り数百マイル離れた場所から中国の既知の対艦兵器システムを攻撃することが可能である。 

B-21レイダーと巡航ミサイル搭載潜水艦による早期攻撃で、米国は空母打撃群が接近し運用する道を効果的に切り開くことができる。 


B-21レイダーは新世代の航空戦力の先駆けだ 


20世紀後半、アメリカはF-15やF-16のような高性能戦闘機からB-2スピリットのような超ステルス爆撃機まで、航空パワー技術のグローバルリーダーとして台頭した。そして今、B-21が就役に向かっており、遠からずアメリカの格納庫を埋め尽くす多数の先進的機材のさきがけとなる。 

 B-21レイダーは2020年代半ばに就役し、次いで空軍の次世代航空優勢戦闘機が2030年代半ばに、海軍のF/A-XX戦闘機が直後に就役する予定だ。 

B-21レイダーはB-2スピリットを置き換えるだけでなく、超音速重装備のB-1Bランサーにも交代する。空軍は新型爆撃機を100機以上調達する予定で、これまでに納入されたB-2の5倍にあたる。B-21レイダーは常にオンタイムかつオンバジェットと報告されている。 

 B-21レイダーのお披露目は、1988年の前任機のお披露目と同様にエキサイティングなことだ。B-2同様に、この新しい爆撃機は、アメリカの航空戦を一変し、潜在的な敵対者の戦闘計算を複雑にし、抑止力と戦闘能力の双方において、ステルスの水準を高める可能性がある。 

 34年前に発表されたB-2時と異なり、筆者はもう大人である。 

 だから、ノースロップグラマン...招待状を送ってもらえませんか?■ 


Everything you need to know about the B-21 Raider being unveiled in December - Sandboxx 

Alex Hollings | September 27, 2022 

Alex Hollings 

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University. 

 

 

北朝鮮の挑発的なミサイル発射実験は政治的脅迫戦略の一環だ

 

North Korea Missile

North Korean Missile Launch. Image Credit: Creative Commons.

 


北朝鮮がまたやってくれた、当然だろう。韓米同盟と国際社会がハリス副大統領の訪朝に備えて7回目の核実験や潜水艦発射弾道ミサイルの実験の可能性を待っている間に、金委員長はまたもや弾道ミサイルの疑いのある実験を決行して9月25日に東海上に発射したのだ。

 

 

北朝鮮の戦略の中心はこれである。南と同盟を転覆させる政治戦と、緊張の高まりと脅威、挑発を利用して南と米国、国際社会から譲歩を引き出す恐喝外交を組み合わせて実行しているのである。その一方で、政権の唯一の戦略目標であるゲリラ王朝と収容所国家の支配下における半島の支配を実現し、政権の存続を確保するために、高度な戦闘能力を開発し続けるのである。政治戦、恐喝外交、高度な戦闘能力というこれら3つのラインは、相互に支え合い、補強し合っている。

各国の指導者やメディアが通常一番気にするのは、政治的・経済的譲歩を得るための政権の恐喝外交を支援するため、挑発行為を継続的に採用することである。したがって、同盟はそれらに対処するための包括的な計画を持たなければならない。

同盟は、挑発を脅威ではなく機会としてとらえるべきである。挑発は、金正恩の政治戦争と軍事戦略が失敗することを実証する機会を同盟に与えるものである。これは何よりもまず、いかなる譲歩もしないことによって行われる。

韓米は、これが北朝鮮の戦略の基本的な部分であり、特定の目的のために挑発を行うことをマスコミ、識者、国民に理解させるべきである。政策の失敗を意味するのではなく、金正恩が政治戦戦略を継続的に実行するための意図的な政策決定を意味するのである。以下は、以前、対応策の枠組みを再掲したものである。

まず、過剰に反応しないこと。しかし、演習の中止を勧める人たちの批判に屈してはならない。金正恩の戦略を常に指摘せよ。孫子の言うように 「戦争で最も重要なことは敵の戦略を攻撃することであり、次に重要なことは敵の同盟関係を破壊することである。国際社会、報道機関、韓国とアメリカの国民、エリート、そして北に住む韓国人に、金正恩のやっていることを知らせることだ。

 

第2に、北朝鮮の緊張、脅威、挑発の高まりに直面しても決して引き下がらないこと。

第3に、同盟の対応を調整することである。良い警官と悪い警官のアプローチが適切な場合もあるかもしれない。ソウルとワシントンDCで不可避的に生じるであろう国内の政治的批判を和らげるよう努めること。

 

第4に、北朝鮮の弱点を突くことである。金正恩とその体制に対して、エリートや軍部から内圧をかける。党、エリート、軍部の間にくさびを打ち込むよう常に努力する(これらはすべて絡み合い、表裏一体であるため困難である)。

第五に、強さと決意を示すことである。軍事力を示すことを恐れてはならない。北のプロパガンダを決して誤解してはならない。演習を減らすという要求に屈したり、北朝鮮の要求に基づいて、合同軍の即応性を少しでも低下させるような措置をとったりしてはならないのだ。北が演習の中止を望むのは、演習が脅威だからではない。同盟を弱め、米軍を半島から追い出したいのであり、効果的な訓練ができなければ当然の結果であろう。

第 6 に、挑発の性質に応じて、外交、軍事、経済、情報・影響活動、サイバー、またはその 組み合わせなど、最も適切な手段を用いて決定的な対応を開始する準備をすることである。

優れた政治戦の重要な要素の1つは、敵の戦略を攻撃することである。そのためには、敵の戦略を認識し、理解し、暴露し、情報によって攻撃することが必要である。

北朝鮮の戦略を認識し理解しなければ、政策立案者、報道機関、そして国民に適切に説明することはできない。ここでもまた、政権の性質、目的、戦略に関して、同盟は一致しているように見える。このことは、挑発行為を説明し、暴露できるように、挑発行為を理解しなければならないレンズを提供するものである。戦略を明らかにすることは、同盟の行動に対する国民の支持を高め、譲歩を求める識者の声に対抗するために極めて重要である。これは、同盟の行動の「理由」を提供するものである。

政権の戦略を攻撃するには、情報・影響力活動キャンペーンが必要である。同盟は、適切な影響力のある活動を開発し、採用することに重点を置く戦略作業グループを採用すべきである。それは単に反応的なものであってはならず、政権の戦略の失敗を強調し続けるために、挑発の合間に継続的に行われる必要がある。

 

North Korea Hypersonic Missile

Image: KCNA/North Korean State Media.


情報・活動キャンペーンの重要な要素の1つは、北朝鮮の核兵器開発プログラムへの対応でなければならない。同盟が公に北の核兵器を論じることは、金正恩の正統性を強化することになる。金正恩の宣伝煽動部は、同盟と世界が北の核兵器という「信頼の盾と宝の剣」を恐れているというメッセージを形成することができる。北の人々の犠牲と苦しみを正当化するために、核兵器開発を支援する努力が外部からの攻撃から自分たちを守ることに成功していると伝えることができるのである。


核兵器が金正恩とその体制を正統化する一方で、人権は正統性を損ねる。同盟が核問題のたびに「人権アップフロントアプローチ」を採用すれば、同盟は人権を提起することができる。基本的なメッセージは、金正恩が権力を維持するためには人権を否定しなければならず、韓国国民が苦しんでいるのは、金正恩が韓国国民の福祉よりも核兵器とミサイル開発、政権エリートと軍への支援に国の資源を優先させるという意図的な決定を行ったためであるということである。同盟は、このテーマとメッセージを継続的に強調しなければならない。


情報と影響力のある活動を通じて優れた政治戦争戦略で挑発に対応することは、金正恩の戦略が自分たちの利益にならないことを示すことで、政権エリート、軍部指導部、韓国国民に累積的効果を与えることになる。これは、時間が経てば金正恩が耐えられないかもしれない圧力をかけることになる。何よりも、金正恩に譲歩してはならない。一旦譲歩すれば、彼は自分の戦略を成功だと判断し、その実行をさらに強化する。

その上で、もう一つ重要なことがある。 

 

優れた政治戦の戦略には、他に2つの重要な側面がある。第1に、韓国は北朝鮮の破壊工作に脆弱な政治機構を強化しなければならない。統一戦線部と第225局の行動は、政治的反対勢力を作り出すことによって韓国政府の正統性を損なうことに重点

を置いている。


もう1つは、単純に同盟の強度を維持することである。政権は、朝鮮半島から米軍を撤収させることを最終目的として同盟を分裂させようとしているため、韓米の政治・軍事指導者が同盟の強さを継続的に強化することが不可欠である。インドパシフィックの全域および世界的な混乱にもかかわらず、ユン新政権とバイデン政権は一貫してハイレベルの外交・軍事的関与を行ってきた。これは持続されなければならない。

 

North Korea Army

Image: Creative Commons.


韓米同盟は北朝鮮のあらゆる挑発がもたらす機会を利用して、金正恩の政治戦、恐喝外交、戦争戦略が失敗することを示すべきである。 強さと決意を示し、北朝鮮の要求に決して屈しないことが挑発対応の基本方針であるが、同盟は政治戦および情報・影響力対応の一環として、人権に関する先行的なアプロー

チも含めるべきである。


金正恩は、いかなる行動も政権の正統性を損なうと認識しなければならない。■

 


North Korea's Missile Tests Are Part of a Political Warfare and Blackmail Strategy - 19FortyFive

 

ByDavid Maxwell

 

David Maxwell, a 1945 Contributing Editor, is a retired US Army Special Forces Colonel who has spent more than 30 years in Asia and specializes in North Korea and East Asia Security Affairs and irregular, unconventional, and political warfare. He is the Editor-in-Chief of Small Wars Journal. He is a Senior Fellow at the Foundation for Defense of Democracies, a Senior Fellow at the Global Peace Foundation (where he focuses on a free and unified Korea), and a Senior Advisor to the Center for Asia Pacific Strategy.

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WRITTEN BYDavid Maxwell

David Maxwell is a senior fellow at FDD. He is a 30-year veteran of the United States Army, retiring in 2011 as a Special Forces Colonel with his final assignment serving on the military faculty teaching national security strategy at the National War College.