2023年3月27日月曜日

ロシアがベラルーシへ戦術核を展開すると発表。どう運用するのか。本当に核兵器を移送するのか。ウクライナへの影響は。その他ウクライナ戦の最新状況

 


ロシアがベラルーシで戦術核兵器の訓練と保管庫の建設が完了すれば、今夏に同国に送る可能性ありと発表


武装したベラルーシが夏までに現実になるかもしれない。

ウラジーミル・プーチン大統領は3月25日土曜日、ロシアは隣国の同盟国ベラルーシに戦術核兵器を配備する意向と発表した。

国営通信社TASSがRossiya-24 TVでのプーチン発言を伝えた。

「(核兵器を搭載可能な)イスカンダルシステムをベラルーシに引き渡した」とプーチンは述べた。「4月3日に要員訓練を開始し、7月1日にはベラルーシ領内に戦術核兵器用の特別な保管庫の建設を完了する」。

プーチンは核兵器の配備が迫っていることを、ウクライナが劣化ウラン弾を受け取ったことと結びつけたが、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が「ロシアの戦術核兵器をベラルーシ国内に配備する課題を提示してきた」。現実には、イギリスがウクライナに劣化ウラン弾の戦車弾を渡すと発表より前、1年以上前から公然と計画されていたことだ。

プーチンは、ロシアがベラルーシに送る核兵器を直接ベラルーシ軍に譲渡することはないと述べ、米国が核共有プログラムでNATO同盟国に行っているようにモスクワも行うだけだと主張した。さらに、ベラルーシ空軍の航空機で10機が戦術核兵器を運搬装備を持っていると主張した。

ロシアはすでにバルト海の飛び地であるカリーニングラード州に核兵器を配備しているが、ベラルーシへの戦術核兵器の返還は驚くにはあたらない。2022年2月にロシアがウクライナへ本格侵攻を開始し、ロシア軍がウクライナを踏み台にしてキーウへの攻勢を開始してから、ロシアとベラルーシの境界線は曖昧になる一方だ。

モスクワとミンスクの核協力の見通しが初めて立ったのは、6月、プーチンが核搭載のイスカンダルMミサイルをベラルーシに譲渡すると発表したときだった。発表でプーチンは、ベラルーシの攻撃機Su-25フロッグフットを戦術核搭載用に改良できると言い放った。ベラルーシは、ソ連邦崩壊時に戦術核兵器と81基のSS-25「シックル」道路移動型ICBMを受け継いだが、後にロシアに返還している。

ルカシェンコは8月、自国が核攻撃機を保有すると発言したが、この発言は多くの疑問を呼んだ。12月にベラルーシを訪問したプーチンは、ロシア軍パイロットがベラルーシのパイロットに「特殊弾頭」(核兵器への言及と見られる)を搭載して飛行する訓練をしていると発表した。また、ベラルーシは最近、ソ連時代のジョージアで製造されていたSu-25の生産を開始すると発表した。

ロシアがどのような計画でベラルーシに核兵器を配備するのか、まだ不明だが。本日のプーチン発言によれば、ベラルーシ部隊にロシア人が配属され、ロシアの核兵器を装備する可能性が最も高いと思われる。これは、前方配備された核兵器が、危機の際に特別に訓練されたベラルーシの部隊が使用するために、指揮統制の取り決めの下でロシアが発射する取り決めの一部になるかもしれない。

最新情報

ウクライナ戦争に関し英国国防省の最新情報では包囲されたバクムートへのロシアの容赦ない攻撃は、「極度の消耗」の後、「ほぼ失速」したと評価している。

ウクライナ軍も同様に、包囲から町を守るために犠牲者多数を出している。ロシアの努力は、北部のクレミナ-スヴァトフ高速道路や南部のアヴディフカなど、側面へ移行しているようだ。しかし、これらはロシア軍が1-2月の総攻撃から防御態勢に戻ったことによる安定化努力と評価される。

戦争研究所の最新分析では、ロシアの失速は、ウクライナによる主導権回復へ扉を開く可能性を指摘し、評価を共有している。

プリゴジンの警告

ワグナーグループ民間防衛企業とロシア国防省で内紛が続いていることも、ロシア側の状況を良くしていない。ワグナーグループ創設者エフゲニー・プリゴジンは、奇妙な前線からの報告やロシア正規軍に対する激しい批判など、あらゆる話題で沈黙を守ってきた。

しかし、新しいビデオでは、プリゴジンは威勢と誇張を警戒と警告に切り替え、この地域での敗北を支持者に覚悟させている可能性がある。ウクライナ東部の地図を見ながら、プリゴジンは、ウクライナ軍の春の反撃を想定していると冷静に説明している。すなわち、ウクライナは1991年の国境線を回復させるため、8万人の予備軍をバクムート周辺に集中させたと主張している。

また、クリミアやウクライナ南部の占領都市(ベルディアンスク、メリトポリ、マリウポリなど)に対するウクライナの攻勢が予想されるとプリゴジンは主張。同じ設定で、プリゴジンはウクライナのナチスについて疑念を表明し、NATOと戦っているのではなく、もっぱらウクライナ人と戦っていると視聴者に断言している。

プリゴジンが警告するウクライナの反攻も、あながち無意味ではないかもしれない。ウクライナ地上軍司令官オレクサンドル・シルスキー大佐は、テレグラム投稿で、キーウは「非常に近いうちに」ロシアの消耗を利用し、バクムートで反攻を行うと述べた。

大佐は、「侵略者は、人員や装備を失っても、何としてもバクムートを奪う望みを捨てない」と述べた。「この方向におけるロシア連邦の主力は、ワーグナーPMCである。彼らは何も惜しまず、大きな戦力を失っている。キーウ、ハリコフ、バラクリア、クピアンスク付近でかつて行ったように、まもなくこの機会を利用することになるだろう」。

クリミア半島では...

バクムート地区とは別に、ロシアが占領地クリミアへのウクライナ軍攻勢に備えている気配がある。ロシアの建設作業員は、クリミアの海岸線に沿って塹壕やコンクリート製のピルボックスの建設に余念がない。

要塞化とともに、クリミアのFMラジオ局は、半島からの避難に備えるよう住民に警告している。これがロシア占領軍の真意なのか、ウクライナの心理戦の最新作戦かは不明だが、放送では、ロシア本土との接続がいつでも切断される可能性があると警告した。

プリゴジンは、メリトポリやウクライナ南部の他の重要な道路の分岐点に対するウクライナの攻勢を警告しているが、ロシアとクリミアの接続は、ほぼ完全に修復された。 爆発事故でクリミア橋が切断され約半年、衛星画像を見ると、修理はほぼ完了したように見える。しかし、付随する鉄道橋で撮影されたビデオでは、その橋の損傷の多くが残っていることがわかる。

一方、ロシアでは....

ロシアでは、制裁を受けた国防部門へモスクワの忍耐が限界に達しているようだ。装甲車の組立てラインが、重要な電子機器の不足のため休止しているという報道がなされる中、ロシアの元指導者でロシア安全保障会議副議長のドミトリー・メドベージェフは、生産需要を満たさない兵器メーカーは牢屋に入れるとはっきりと脅した。

ロシアの戦時産業が低迷する中、メドベージェフが脅迫に訴えたのはこれが初めてではないが、第二次世界大戦時のヨシフ・スターリンの電報を使ったことは、モスクワが戦時産業に対する脅威を感じていることを明確に示している。ロイター通信は3月23日、インド空軍がロシアは納入の約束を果たせないと主張したと報じているように、ロシアの武器輸出も頓挫している。

ドローンは両陣営に不可欠な装備になった

大小のドローンは両陣営の戦力で不可欠になっており、新たな画像はそれを示し続けている。ウクライナ領土防衛軍は、第101領土防衛軍旅団のインストラクターがクアッドコプター・ドローンを使い砲撃の方向を教える写真を公開した。

ウクライナでの13ヶ月の戦争を通して、ドローンの使用が進化していることを我々は目にしてきた。そして、最前線からの最近の映像が、まさにそれを示している。砲撃の修正、弾薬投下、あるいは一方的な神風ミッションなど、ウクライナのドローン運用はハイテンポで続いている。

ウクライナの様子

渋滞で遅刻したことは誰にもあるが、ウクライナでは道路で立ち往生する信じられないよう理由がある。HIMARSだ。新しいビデオでは、ウクライナ軍がロシア戦線の背後を攻撃するため、貴重なロケットランチャーを移動させ発射するため通行が停止している様子が映し出されている。

ウクライナの多くの軍用車両の足かせとなっている泥と泥沼は、新しいビデオでは、かつて道路だった場所が、ウクライナのGAZトラックが走り抜ける際に深くわだちができている様子が映し出されている。

ウクライナ軍がNATO教官とハンビーやM2ブラッドレー戦闘車の訓練を受ける様子は、驚くべき映像だ。今はまだ前線から遠く離れたNATO加盟国内で訓練しているが、こうした装備がウクライナに到着すれば、槍の穂先となることだろう。

ウクライナ空軍の出撃は続いており、Su-25フロッグフット攻撃機のペアが前線近くを低空飛行で通過している映像がある。各フロッグフットは、B-13 122mmロケットポッドと外部燃料タンクを搭載し、チェコから供給されたウクライナのMi-24Vハインドガンシップのように、ロフテッドロケット攻撃を行っているようだ。

UAFのユリイ・イグナート報道官は、ロシア空軍は従来の「FAB」無誘導爆弾にGPS誘導キットの改造を開始し、従来型爆弾から精密誘導によるスタンドオフ滑空爆弾に変えたと発言した。報道官の説明は米国のJDAM(Joint Direct Attack Munition)誘導キットの一般的なシステムと一致する。

ウクライナは今年初め、米国からJDAM-ER翼付スマート爆弾の提供を受け始めた。ロシアのキットは本当に誘導されているのか、どの程度なのか、多くの疑問が残っている。

イグナートはまた、外国人がウクライナ空軍に入隊できるようになったと発表した。キーウは、外国人が西側から今後供給される戦闘機に乗ることを望んでいるようで、最新の議論は、フィンランド空軍のF/A-18ホーネットに焦点を当てていると言われている。

最後に、防空に関する話題だが、新しい映像では、ウクライナのゲパード自走高射砲隊員が活動する様子や、ストーマー防空システムがアヴディフカでの戦闘の近くでロシアのUAVを撃墜している。また、対ドローン部隊は、マキシム機関銃3丁を搭載したトラック搭載の砲塔がロシアのドローンを低高度で攻撃するなど、戦場は完全に「マッドマックス」化してきた。■


Ukraine Situation Report: Russian Nukes Ready To Deploy To Belarus This Summer

BYSTETSON PAYNE|PUBLISHED MAR 25, 2023 7:08 PM

THE WAR ZONE


2023年3月26日日曜日

ポッド式給油ブームが空軍空中給油の概念を広げ、対中戦での戦術機をより効果的に支援できそうだ

 

次期タンカー用に米空軍が開発中のポッドマウント型給油ブームが大幅に進展している

将来の輸送機や、ドローンに搭載される可能性のある「小型ポッドマウント型戦術空中給油ブーム」の設計が米国で完了した。

ポッド搭載型空中給油ブームのコンセプトは前からあったが、今回の設計は、米空軍がより真剣に取り組んでいることを示す最初の兆候のようだ。米空軍は、将来のタンカー性能の検討を開始しており、特に、より状況が厳しい空域や周辺でのタンカーの生存率に注目しているため、これは特に興味深い。

ポッド式空中給油ブームの設計作業が完了したのニュースは、今月初めに発表された国防総省の空軍研究・開発・試験・評価に関する予算見積もりに記載されている。それ以外の情報はほとんどないため、どのような設計作業が行われたのか、設計の責任者は誰か、正確なところは不明だ。つまり、設計は完了したものの、ポッドブームはまだ「ペーパープロジェクト」として存在しているだけかもしれない。あるいは、ハードウェア段階まで進んでいて、地上や空中、あるいはバーチャルな物理的環境で、テストが行われているのかもしれない。

現段階では、確かなことはわからないが、少なくともある段階までプロジェクトの設計作業は完了したと考えられている。空軍の2024年度予算案では、同プロジェクトに7.31百万ドルを要求している。これは、2023会計年度にの要求金額よりも約757千ドルも少ない。

ポッド付きブームがどの航空機に搭載される想定なのかについては、手がかりが少なく、やや矛盾もしている。予算見積書では、ポッドは「将来のモビリティ用途」を想定と説明があり、(有人)輸送機や派生機で使用されると示唆している。同時に、このポッドは「小型」で「戦術的」とも言われ、いずれも小型の航空機(ドローンを含む)への搭載を示唆している。

ポッド式ブームを装備すれば、無人機がタンカーとして使用できる可能性がある。

一方、米海軍は、無人タンカーで独自の運用コンセプト開発に追われている。しかし、そのMQ-25スティングレイ無人機は、空軍のブーム方式ではなく、ポッド式プローブ・アンド・ドローグ空中給油方式で燃料補給する構成だ。戦術戦闘機や同サイズの航空機に搭載可能なポッド型プローブ&ドロッグシステムは数十年前から実用化されている。

ポッド式ブームの実用型が将来の有人・無人タンカーや他の航空機に搭載されるかにかかわらず、空軍は、次世代空中給油システム(NGAS)(以前はKC-Zと呼ばれていた)への要求を満たす方法を真剣に検討中だ。今年初め、空軍は新型タンカー・フリートを遅くとも2040年、可能ならそれ以前に就航させたいと考えていると確認している。

空軍の2024年度予算案では、現在の計画では、同プロジェクトは「完全かつオープンな競争の利点を活用して、複数機種のタンカー(インクリメント)におけるアップグレード能力」の提供の両方に資金を提供し、最終的には「将来の予測脅威と必要な能力に対処するため、競合環境での空中給油を確実に実施する先進技術を獲得するクリーンシート、目的別の設計努力」につながるとある。

「NGASは、ミッションの緊急性、利用可能な資金、プログラム上および技術上のリスクに応じて、ブロックまたは個別の修正または近代化プログラムを通じて、進化する脅威とミッションサポート要件を満たす給油能力を開発、配備、維持する」と最新の予算要求にある。

空軍は2024年度予算でNGASに8百万ドル弱を要求しているが、主に、代替案分析(AoA)を完成させ、プログラム要件を確定する作業を支援するためだ。

今のところ、NGASタンカーがどのようなものかはわかっておらず、空軍自身もさまざまな可能性を検討している。しかし、ロッキード・マーティンボーイング両社は、少なくともある程度のステルス性をもりこんだ混合翼胴(BWB)が特徴の先進タンカー・コンセプトを発表している。これは、競合する空域のシナリオで生存可能なタンカーを求める空軍要求を満たす潜在的な手段の1つであろう。

今年初め、ボーイングは別のステルスBWBコンセプトを発表し、戦術的な空輸任務の設計だが将来は空中給油に対応できる可能性がある。

この種のタンカーの低視認性のためには、レーダーシグネチャーを大幅増加させるポッド式ではなく、完全格納式か、少なくともコンフォーマル式の給油ブームが必要になろう。一方、これまで見てきたBWBコンセプトでは、ある程度の低観測性を実現しつつ、ステルス機には分類されないものがあります。このような場合は、ポッド型給油ブームがより理にかなっていると言えよう。

ポッド付きブームがタンカー用ドローンに想定されている可能性もある。また、前述の文書では「将来のモビリティ・アプリケーション」に言及しているが、空軍がNGASの要件を満たすため「あらゆるサイズと性能クラスの革新的なソリューション」を検討していることは、以前の公開情報からわかっている。

ブームをポッド化したドローンタンカーは、例えば有人のBWBタンカーよりステルス性が高く、一般に生存性を高くする必要はない。新たな戦術や技術と組み合わせたドローンタンカーが、脅威の高いシナリオでより自由にリスクを負うことができるかもしれない。一方、小型のドローンタンカーは、これまでの空軍の給油機と比較して、給油能力が大幅に下がる。

NGASが実現する前でも、空軍がポッド式ブームの用途を見出す可能性はかなり低い。KC-Yは、現在生産・就航中のKC-46Aペガサスに続く暫定的なタンカーとして意図されていたが、空軍は3月に正式に廃止を発表した。KC-Yの必要性を満たすためにKC-46Aを75機追加取得する可能性が高いと発表している。議会では空軍指導部がブリッジタンカー計画を事実上中止し、競争を行わずにKC-46Aを買い足す計画を立てたことを批判している。

一方、ロッキード・マーティンは、LMXTと名付けたエアバスA330マルチロールタンカー輸送機(MRTT)という対抗設計を推進してきた。KC-Yに続く空軍の新計画への議会の反応次第では、ポッド式ブームを利用した別の既製品のプラットフォームも可能性がないわけではない。ポッド式ブームのコンセプトは、さまざまなプラットフォームをタンカーに適合させる可能性をもたらすからだ。また、インテグラルブームと異なり、有人・無人を問わず小型機や、基本無人操縦機にも対応できる利点もある。また、輸送機など大型機にも対応できる可能性があり、米空軍のタンカー能力が向上できる。

将来のタンカーをどうするか、また危険空域での空中給油能力をどう確保するか検討中の空軍にとって、ポッド式ブームの多用途性は特に興味深いものでしょう。一時期、空軍は当時KC-Zと呼ばれていたポッド化ブームの無人設計を好んでいたが、現在は別の選択肢も視野に入っているようだ。

2024年の予算要求の詳細から、既存機の近代化バージョンも含め、最終的にNGASプラットフォームが複数存在する可能性もあるようだ。これまで見てきた大型の先進的なBWBのようなデザインは、必ずしもポッド型ブームの最良の候補ではないかもしれないが、このオプションがあれば、小型の有人タンカー機やドローンなど、別の可能性が開けるそうだ。このような組み合わせは、米空軍の将来のタンカーニーズで「カクテル」ソリューションとなり得る。

すでに、小型輸送機やホース・アンド・ドローグ式タンカーにブーム給油を装備する取り組みが行われており、ブラジルのマルチロールKC-390給油輸送機がブーム給油システムを採用している。

ブームをポッド化すれば小型戦術輸送機など、より多様な機材への搭載が容易になる。

一方、既存のタンカーの生存率を向上させるため、通信や防御システムをアップグレードし状況認識を強化する選択肢もある。これには、電子戦やデコイを組み込んだ自己防衛ポッドが考えられる。ハードキル・レーザーディフェンスも視野に入ってきた。また、タンカーに同行する護衛ドローンも検討されている。低レベル給油作業が拡大すれば、生存性をある程度回復できるが、ペナルティもある。

米空軍は、数百マイルの戦闘半径の戦術戦闘機を整備してきた。場合によっては、数百マイル以下もあり、タンカーは中国の反アクセスの傘の中に深く入ってしまうことになる。NGADのような将来の戦術機プログラムでは、航続距離が重要な設計要求となり、ようやくこの状況が変わりそうだ。長距離ステルス爆撃機やスタンドオフ兵器も、解決策だが、タンカーの脆弱性は極めて深刻だ。

これら考慮すれば、空軍が現在想定している中国のような互角戦力を有する敵対国との高強度の紛争は、空中給油機(少なくとも現行機種)にとって明らかに大きな問題をはらんでいる。設計が完了したポッド搭載型戦術空中給油ブームが、この課題の解決に役立つかもしれない。■


Podded Aerial Refueling Boom Design Has Been Completed For Air Force

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAR 24, 2023 4:57 PM

THE WAR ZONE


2023年3月25日土曜日

湾岸戦争73イースティングの戦いに見るM1エイブラムズの戦力と優れた戦術判断。ウクライナでも恐るべき威力を発揮する....



M1エイブラムス主力戦車31両がウクライナに向かい、本来の対戦相手のロシア戦車とどう戦うのかが、大いに議論されている。エイブラムスがソ連時代の旧型装甲車両に照準を合わせるのは今回が初めてではない。湾岸戦争の伝説的な73イースティングの戦いほど、戦力不一致をよく表している対戦はない。 

 


 
73イースティングの戦いは、20世紀の偉大な戦車戦の一つとしてよく知られている。M1A1エイブラムス戦車わずか9台が13台のM3A2ブラッドレー戦闘車、120人の歩兵と、訓練されたイラク共和国軍タワカルナ師団10機甲師団というはるかに大きな部隊と対峙する。 

 

数で劣るアメリカ軍にとってさらに悪いことに、イラク軍と装甲車は防御態勢のまま、実戦実績のないアメリカの戦車に歯向かうチャンスを待っていた。しかし、いざ戦闘が始まると、当時28歳のH.R.マクマスターの健全な軍事戦略と優れた軍事技術がイラク軍を蹂躙し、M1エイブラムス主力戦車とM3A2ブラッドレー戦闘車のワンツーが単に戦闘に有効なだけではないことを明白に証明した。まさに破壊的だったのだ。 

 
 

ウクライナは湾岸戦争とちがう 



73イースティングの戦いで何が起こったのかの前に、まず、適切な文脈で全体像を見てみよう。湾岸戦争は、米国主導で35カ国の連合軍が支援した大規模な軍事作戦だった。M1戦車3,100両以上を投入したアメリカは、連合軍戦闘機が支配する空域で活動しながら、アメリカと同盟国の巨大な兵站力の恩恵を受けていた。
 

 

エイブラムスは、起動だけで燃料約10ガロンを必要とし、1マイルあたり2~10ガロンの燃料を消費することで有名であるため、この点は重要だ。アメリカのM1エイブラムス主力戦車は、1970年代までにソビエト連邦が投入した新型戦車に対抗するため、特にヨーロッパでの戦争を念頭に置いて設計されました。しかし、この戦車は、地球上で最も裕福な国であり、強固なグローバルサプライチェーンを持つ国が運用する前提で設計されたも。 

 

言い換えれば、エイブラムスは技術的に高度な戦争機械であり、山ほどの資金を持ち、強固な補給線を維持するため必要な航空優勢を持つ国が使用してはじめて最高の効果を発揮する。 

 

ウクライナには、アメリカのようにエイブラムスを活用する資金も制空権もない。しかし、窮地に立たされたウクライナ軍には米装甲車両の技術的優位性でロシアの年代物の戦車を蹂躙するのに十分かもしれない。 

 

M1エイブラムスの威力 

 

アメリカのM1エイブラムス主力戦車は、就役から40年が経過した現在も、着実なアップグレードと改良の積み重ねにより、価値を保っている。 

 

最新型エイブラムスM1A2 SEPV3は、M256 120mm滑腔砲とM240機関銃を同軸上に搭載し、さらに共通遠隔操作兵器システム(CROWS)で操作する12.7mm機関銃も装備し、地球上で最も先進的で高性能な機甲システムだ。また、IFLIR(Forward-Looking infrared)光学系で目標を発見し、電子戦システム、アクティブおよびパッシブな各種防御手段を搭載している。 

 

しかし、現在の最新型エイブラムスも、1991年の湾岸戦争で活躍したアメリカの戦車も、イラク軍が運用するソ連時代のT-72やT-62と比べ、技術的にははるか先を進んでいる。そして、ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過した現在、ロシア軍が大量に運用している戦車と同じものである。 

 

73イースティングの戦いは、アメリカのエイブラムスとブラッドレーの小部隊が、数的優位に立つイラク軍と対峙したもので、エイブラムスとロシア軍の戦車との比較について、興味深い洞察を与えてくれた。 

 

米側の訓練を受けたイラク指揮官との対決

 

1991年2月26日、M1A1エイブラムス戦車9両、M3A2ブラッドレー戦闘車12両、歩兵120人からなるH.R.マクマスター大尉指揮下のイーグル隊は、イラク陣地に向かい東進を命じられた。本来ならば、偵察ヘリコプターや、A-10サンダーボルトIIなどによる航空支援が必要だが、大規模な砂嵐が発生し、視界が極端に悪くなり、アメリカの航空戦力は足止めされた。 

 

マクマスターの命令は明確で、連合軍のキャンペーンマップの中心線から東に67km離れた東経67度まで前進し、直接交戦に持ち込まずイラクの防御陣地を特定することだった。マクマスターのイーグル隊は、イラク装甲車両を発見したら、その位置を報告し、後方から来る本隊を待つことになっていた。 

 

マクマスターとその部下が知らな買ったが、部隊のすぐ南の道路は、イラクのタワカルナ師団と第10機甲師団の旅団が占領しているイラク軍訓練場に直接つながっていた。イラク軍は、アメリカ軍の進撃を止めるよう命令され、戦いに備えていたのだ。 

 

「敵の指揮官モハメッド少佐の部隊は、同地を熟知していた。部隊は実弾射撃訓練で村を宿舎として使っていたのだ。ジョージア州フォートベニングの歩兵将校上級課程を卒業したモハメッドは、村を防衛にの理想的な地盤だと考えていた」と、マクマスターは戦闘を振り返る中で書いている。 

 

イラク軍には防御陣地というアドバンテージがあったが、重大な戦術的ミスを犯していた。地形のないイラクの砂漠を進むには、道に迷わないよう道をたどるのが普通だが、アメリカの先進的なエイブラムスやブラッドレーは、最新の全地球測位システムを搭載し、自由に移動できる。無自覚なままイラク軍指揮官は、道路に防衛線を向けたが、イーグル隊はその数キロ北側から接近し、ある程度の奇襲性を持っていた。

 

しかし、マクマスターは、モハメッド少佐の防衛戦略を高く評価した。村にZSU-23-4「シルカ」レーダー誘導式対空兵器を配備し、4基の巨大な23ミリ自動砲を水平線と平行に配置し、ジェット機ではなく陸上装甲車両を切り裂くために使うつもりだった。彼は、数十台の戦車とBMPを防衛陣地に配置し、その間に数百人の歩兵部隊をバンカーや急造の塹壕に散在させた。 

 

村そのものを防御力の高い蜂の巣にし、進撃してくるアメリカ軍を村の北と南に散らばらせ、そこに地雷を設置して進撃を止め、エイブラムスやブラッドレーが止まったら大火力で蹂躙する計画だった。さらに、アメリカ軍が防衛線を突破した場合に素早く対応できるよう、東側約3,000mにT-72主力戦車18両を円形に配置していた。 

 
 

イーグル隊の交戦開始 

イーグル隊は、赤外線照準器を覗きながらブラッドレー13両を先頭に、マクマスターのエイブラムス9両を後方に従え、猛烈な砂嵐の中ゆっくり進んでいった。やがて、イラク軍偵察隊が現れ、すぐ降伏し、イラク軍にアメリカ軍の進撃を知らせるまでには至らなかった。イーグル隊が前進すると、イラク軍BMP2両が戦車3両を従え偵察しているのを発見した。 

 

イラク軍が反応する前に、イーグル隊のブラッドレーの1台が停止してBGM-71 TOWミサイルで一番南の戦車に命中させた。数秒後、同じブラッドレーが2発目のTOWミサイルを発射し2台目の戦車に命中させ、3台目には25mmM242 Bushmasterチェーンガンで攻撃した。 

 

イーグル隊が北東のイラク軍に注意を向ける間に、南東にある小さな建物群に隠れていたイラク兵が発砲した。マクマスターは、その建物を素早く評価し、攻撃者の中に民間人が隠れている可能性は低いと判断した。彼はエイブラムス9両すべてに、120mm滑腔砲で建造物を攻撃する命令を下し、小銃による攻撃は開始と同時に終了した。 

 

その直後、イーグル隊で前進するブラッドレーのすぐそばで爆発が起きた。ブラッドレーの指揮官は赤外線光学系を覗き込み、約800m先にT-72戦車1両を発見した。TOWミサイルで応戦しつつ、2台目のブラッドレーと一緒に停止を命じた。遠くでは、T-72戦車の砲塔が、ジャック・イン・ザ・ボックスのように飛び出すのが見えたが、これはウクライナ戦ではよく見られる光景だ。 

 

主砲の弾薬を砲塔後部に収納するエイブラムスと異なり、ロシアのT-72は砲塔と車体の間に砲弾40発を円形に収納する。そのため、この部分に命中すると、連鎖的に全弾が爆発し、戦車から砲塔が吹っ飛ぶ。 

イラクの戦車4両とBMP2両がくすぶる中、マクマスターには戦いが始まったばかりであることがわかっていた。 


 

戦車隊、前へ 

マクマスターはスズメバチの巣を蹴ってしまったと気づき、無線でイーグル隊に陣地転換を呼びかけた。 

 

「イーグル隊、戦闘配置につけ。イーグル隊、戦闘態勢に入れ、戦車は先頭に立て、戦車は先頭に立て」と命令した。 

 

ブラッドレーが減速し、9両のエイブラムスが楔状に前進すると、イーグル隊にはさらに前進して70イースティングまで押し進めるよう命令が入った。その直後、マクマスターはモハメド少佐の罠の始まりを発見した。戦車5両が隣り合わせに配置され、北側にさらに3台が控えていた。マクマスターのエイブラムスのレーザー距離計は、距離を1,420ヤードと読み取った。41ポンドのM829A1徹甲弾の発射を指示した。この弾は、劣化ウラン貫通弾でフィン安定化がつき、敵の装甲を短時間で破壊するため特別設計されている。この弾は時速3,500マイルで最初のイラク戦車に命中し、わずか3秒でエイブラムスは2発目のサボ弾を発射し、もう1台のT-72をスコアカードから消した。 

 

残る6台の戦車は一斉に砲撃を開始し、エイブラムス9両が小高い丘の頂上に到達すると、125mm戦車弾をイーグル隊に浴びせかけた。周囲に爆発音が鳴り響く中、マクマスターは恐ろしいことに気がついた。 

丘の上からは、さらに39両のイラク戦車と54台の装甲車、歩兵数百人が見えたのである。決定的な交戦をしないよう命じられていたにもかかわらず、マクマスターのイーグル隊は今、砲撃を受けており、しかも多勢に無勢だった。 

 
 

「ごめん」 と伝えてくれ 

イーグル隊が自分たちの置かれた状況を理解したとき、無線で呼びかけがあった。 

 

ジョン・ギフォード中尉が、マクマスター大尉に「聞きたくないでしょうが、前進の限界です。70イースティングに到達しました」と無線交信してきた。 

 

これ以上前進すれば、命令違反になるだけでなく、イーグル隊が前方に出過ぎて、増援が間に合わない可能性がある。イラク軍の規模が大きければ、包囲される可能性さえある。しかし、マクマスターは、イラク軍のT-72が自分の部隊を十分に射程圏内に収めていることも知っていた。今や選択すべきは、戦うか、尻尾を巻いて逃げるかだ。 

 

「止まるなと伝えろ。連絡は取れているので、この攻撃を続けなければならないと伝えろ」。マクマスターは、「申し訳ないと言ってくれ」と答えた。 

 

イーグル隊の上空で爆発が続く中、13台のブラッドレーと9台のエイブラムスすべてが射撃し、積極的に前進した。イーグル隊が敵陣に到達するまでに、T-72を15両撃破した。 

 

ZSU-23-4対空システムが4連装23mm砲で攻撃してきたが、ブラッドレーの1両がTOWミサイルを発射し、すぐ無力化された。残りのブラッドレーは、M240機関銃と25mmブッシュマスターチェーンガンで歩兵陣地を攻撃した。 

 

イラク軍はイーグル隊に命中させることに成功した。しかし、T-72の125mm滑腔砲主砲がエイブラムスのチョバム複合装甲の前面に直接命中しても、弾丸は跳ね返されるだけであった。 

 

イーグル隊はイラク戦線に突入し、予備で待機中のT-72隊を発見した。互いに接近していたため、標的捕捉が容易となり、イーグル隊はわずか数秒で編隊を全滅させた。 

 

イーグル隊は23分で東経73度まで攻め込み、数的に優位かつ要塞化されたイラク陣地を完全に破壊した。イーグル隊は合計で戦車47両、装甲車34両を蹂躙し、しかも自軍は車両や兵器システムを一つも失うことなく、これを成し遂げた。 

 

マクマスターのイーグル隊は、イラク共和国軍の一個大隊をまるごと破壊したのである。■ 

 

Alex Hollings | March 22, 2023