2024年5月29日水曜日

ノースロップの大型USVは海底に待機し、敵潜水艦を狩る画期的な装備品になる可能性を秘める。その機能と役割を大胆に予想。

 


このマンタレイは先に意外に大きい、との実写映像でご紹介していますが、今回はその性能と役割についてSandboxx Newsで記事が出ましたのでご紹介します。なかでもエナジー補給方法についての件が面白かったです。

 

 

ノースロップ・グラマンのマンタレイUSVは、対潜戦に大変革をもたらす可能性がある

シア軍がウクライナに侵攻しわずか2年足らずの2024年2月3日、ロシア海軍はロシア北部のセベロドヴィンスクにあるセヴマシュ造船所から5隻目の近代化型ボレイA級原子力弾道ミサイル潜水艦をロールアウトした。この新型潜水艦は、ロシア初のポンプジェット推進を採用し、従来のロシアの潜水艦よりかなりステルス性が高いとされる。ロシアのメディアは、この新型潜水艦はロシアの最新の原子力潜水艦アクラ級よりも5倍静かで、アメリカのヴァージニア級攻撃型潜水艦より2倍静かだと主張している。

ウクライナにおけるロシアの軍事的苦境にもかかわらず、ロシアが強力な核攻撃能力の維持と拡張に多大な投資を行っていることは明らかだ。

しかし、ロシアの海底艦隊は間もなく新たな脅威に直面するかもしれない...潜水艦よりも深い場所に潜み、検出可能な電磁放射をほとんど出さずに冬眠し、急速に息を吹き返し、エキゾチックな捕食者のように海中を急上昇することができる。

ノースロップ・グラマンは4月8日、新型深海無人偵察機「マンタ・レイ」試作機を正式に発表した。同社によると、この新型海中ドローンは、人間のサポートを最小限に抑えつつ、長距離長時間の自律運用を行う設計で、各種の戦闘作戦に適しているという。

ノースロップ・グラマンは、新型無人機マンタ・レイを次のように説明している:「新型UUVであり、長時間、長距離、ペイロード可能な海中任務を、人間の後方支援を必要とせずに遂行する超大型水中グライダーである」。

マンタ・レイの詳細と、その意図する能力の全容はまだ少ないが、国防高等研究計画局(DARPA)がこれまでに発表した契約文書や発表から、その目標についていくつかの情報を得ることができる。

マンタへの海底の道

Northrop Grumman’s Manta Ray submersible.

2020年3月、DARPAはロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ナヴァテックの各社と開発契約を結び、DARPAマンタ・レイ・プログラム・マネージャーのカイル・ウォーナー博士が "自律型水中航行体"と表現する"自力で行動し、エナジーを採取し、与えられたミッションを遂行する"コンセプトを成熟させた。2021年12月までに、候補はノースロップ・グラマンとナバテック(現パックマー・テクノロジーズ)に絞られ、それぞれフルスケールの技術実証機建造のためフェーズ2契約が結ばれた。

2023年9月、パックマー・テクノロジーズのサブスケール・プロトタイプは「スプラッシュ・テスト」を開始した。そして今回、ノースロップ・グラマンは、実物大技術実証機を発表した。同社によれば、遠征配備の輸送はモジュール式で容易で、海底に固定し、電力を蓄え長時間冬眠する能力を備えている。

ノースロップ・グラマンのマンタ・レイのデザインは、その名の由来である魚に似ており、同様の「シーグライダー」形状を採用している。

ウォーナー博士執筆によるマンタ・レイ・プログラムの説明書によると、この取り組みの原動力は、後方支援を必要とせず、長時間活動できる深海ドローンを実戦投入することだった。この文言には明記されていないが、この努力は、長時間の深海作戦と、これらの役割を最小限の支援要件でドローンに引き継ぐことによる戦力増強効果の両方を優先しているようだ。

「成功すれば、この新しいクラスのUUVは、戦闘指揮官に、一度配備されれば有人船や港から独立することで、現在の作戦を中断させることなく、能力を増幅させることができるだろう」とウォーナー博士は書いている。

極限深度での長時間作戦

DARPA文書では、ドローンの物流要件を最小化するために、新しいエナジー管理、さらには深海環境で使用するためのエナジーハーベスティング技術、あるいはエナジー消費を最小化する独創的な新しい方法、さらには環境を利用してエナジー貯蔵を補う方法、さらには推進から脅威の検知、さらにはそれ以上に至るまで、電力要件を最小化する設計の多種多様な新しいオンボードシステムを求めている。第4の企業であるメトロンもまた、そのような技術を成熟させるために契約している。

マンタ・レイ・プログラムにはもうひとつの明白な要素がある。海軍や民間の潜水艇では不可能な、あるいは経済的に実現不可能な大深度で活動することだ。

2022年10月、DARPAのポッドキャスト「Voices from DARPA」でウォーナー博士は、「水中ビークルを目指す主な原動力は、人間や多くの人間のシステムが行けない深度へ到達する能力です」と説明した。

DARPAがマンタ・レイという名前を選んだのは、軍用潜水艦で一般的な魚雷のようなデザインから脱却し、その代わりに海中生物の効率的な形状-大きくてエキゾチックなマンタのような魚-を取り入れた全く新しい潜水艇技術を実用化するプログラムの目的を強調するためだと、ウォーナー博士は続けた。ノースロップ・グラマンは潜水艇の設計でこのアイデアを心に刻んだようだ。

マンタは環境から電力を採取する

マンタ・レイが提供できる価値を理解するには、まず現在の深海潜水艇技術の限界を認識することが重要だ。現行の無人潜水艇(UUV)のほとんどは、電力とサポートのため水上船舶に直接つながれている。そして、そうでない少数の潜水艇は、システムが通常数時間、極端なケースでも数日しか作動しないため、(通常は地上の乗組員付き船舶という形で)サポートを近くに置く必要がある。

「つまり、ホスト船で追いかけ回すか、高価で時間もかかり、人間が上にいなければならない--そして世話や補給など、付随するあらゆることを提供しなければならない--か、あるいは海中で耐久性を延ばす方法を見つけるかだ」とウォーナー博士は説明した。「軍事的実用性の観点から、このプロジェクトの一部は、人間の負担を軽減することなのです」。

今日、UUVにとって最も制限的な要素は、電力貯蔵である。大型の潜水艇は、搭載される制御システム、センサー・スイート、潜在的なペイロードを考慮する前に、推進力だけでも大量の電力を必要とする。マンタ・レイの重要な焦点は、必要な電力が非常に少ないシステムを設計すること以上に、潜水艇の動作環境から電力を引き出す方法を見つけることである。

サンディア国立研究所の研究開発機械エンジニアで、波力エナジー変換、つまり海流や河川の流れから電気エナジーを得ることを専門とするケリー・ルールは、「海洋資源で興味深いことのひとつは、それらが持続的であるということです」と説明する。マンタ・レイの取り組みでアドバイザーを務めるルーアールによれば、海流を利用する以外にも、海中発電にはいくつかの可能性がある。

REDは、正極と負極を交互に交換するパーマネント選択膜のスタックを使用し、膜と膜の間のコンパートメントを淡水と海水で交互に満たす。海水の塩分濃度の違いによって膜に電圧が発生し、その電圧を捕捉して電力に変換する。

ノースロップ・グラマンが再生可能エナジー企業シートレックと提携して検討したもうひとつの潜在的な解決策は、ミッション・アンリミテッド無人潜水機(UUV)ステーションである。このステーションでは、海の「熱勾配」、つまり暖流と寒流の混合の力を利用して電気エナジーを生み出す「熱エナジーポッド」を別に配備する必要がある。事実上、マンタ・レイのようなUUVはサーマル・エナジー・ポッドをガソリンスタンドのように利用することができ、搭載燃料が不足した場合はいつでも補給に戻ることができる。

通信問題の克服

マンタ・レイとサーマル・エナジー・ポッド間の絶縁コネクタは、陸上のコマンド・エレメントへのデータ転送にも対応できる。アップロードされたデータは、ノースロップ社が "データバブル "と呼ぶ小型デバイスに転送され、エナジーポッドから配備される。

マンタ・レイ・プログラムのチーフ・エンジニアであるブライアン・セオバードは、「ステーションから放出されると、地表に浮かび上がり、RF衛星通信アンテナで陸上や衛星、艦船にデータを送信し始める」と説明した。

セオバードは、「これは、乗組員、非乗組員を問わず、深海プラットフォームで直面する最大の課題である通信を解決するのに役立つだろう」と述べた。

地表または地上で活動する軍事プラットフォームは無線通信に大きく依存しているが、電波は海水を透過することができない。そのため、アメリカの核弾道ミサイル潜水艦は、世界5カ所に設置された巨大なアンテナ群を経由して中継される超低周波(VLF)通信に依存している。これらの基地が敵の攻撃で破壊された場合、特別装備のTACAMO(Take Charge and Move Out)航空機の一団が、長さ5マイルのアンテナを展開し、海上の円を描くように重なり合いながら飛行し、テキストメッセージのようなものを水中の潜水艦に送信する。

マンタ・レイはVLF通信も装備しているかもしれないが、この種の通信には固有の制限があるため、サーマル・エナジー・ポッドから放出される「データ・バブル」は、一定間隔で標準的な通信を行う簡単な手段となりうる。

これはまた、長時間のミッションを想定した、無人潜水艦が、上空と交流をほとんど行わずに、ほぼ自律的に活動できる必要があることを意味する。そのため、マンタ・レイは、自律制御を採用する必要がある。

海上防衛に戦略的インパクトを与えるためマンタ・レイが克服すべき課題は、電力生産だけではない。腐食防止、海中障害物回避、そしてこのような過酷な環境での長期運用に必要となる極めて高い信頼性を生むソリューションも開発する必要がある。

マンタレイがASWに大きな弾みをつける可能性

マンタ・レイの軍事的・科学的応用の可能性はいくつかあるが、戦略的に貴重なのは、敵の核兵器搭載潜水艦に対抗することかもしれない。

ロシアの海中能力は依然として世界最高水準で、アメリカの安全保障にとって強力な脅威だ。現在ロシアは、5隻のデルタIV潜水艦と8隻のボレイ級潜水艦を含む、核弾道ミサイル潜水艦を運用している。ロシア制裁に基づく経済的苦境にもかかわらず、さらに3隻の近代化されたボレイA級艦の建造が続けられている。ロシアのステイタス6海洋多目的システムは、別名ポセイドンまたはカニヨンとも呼ばれ、54ノット(衝撃的な時速62マイル)という高速で5,400海里(6,200マイル)もの距離を移動するように設計された高速核魚雷である。

当初のロシアの主張では、ステータス6には50メガトンという巨大な核弾頭を搭載できるとされていたが、その後、より現実的な2メガトンに修正された。とはいえ、2メガトンの爆風は広島に投下された原爆の約100倍に相当する。このような爆発によって高波が発生するかどうかについては議論が残っており、最近の分析ではこの脅威の可能性はほとんど無視されている。しかし、アメリカの港湾内でそのような爆発が起これば、壊滅的な打撃を受けるだろう。

この脅威は、多くの人が思っている以上に強力だ。2017年、ロシアの軍事ドキュメンタリーシリーズは、長距離巡航ミサイルで武装したロシアのシュチュカB級潜水艦の艦隊が、米海軍の施設があるアメリカの港のすぐ外側に待機する命令を受け派遣されたと主張した。ロシア海軍は、アメリカの領海外(12カイリ沖まで延長)で、探知されずに作戦を成功させたと主張した。

アメリカはロシアの主張に対し公式に反論しなかった。もし米国防総省がロシアの主張を虚偽として却下していたら、ロシアの情報作戦は、アメリカが彼らの存在を探知できなかったことを暗黙のうちに確認したと喧伝しただろう。もし米海軍が本当にロシア潜水艦の存在を探知し、追跡していたのなら、そのことを明らかにすることで、米国がどのような探知能力を持っているのかがわかってしまうかもしれない。

しかし、この主張の真偽にかかわらず、米海軍はこの脅威を深刻に受け止めた。ロシア当局者がこの主張を行った直後、リチャード・V・スペンサー海軍長官は、米国が北大西洋を拠点とする第2艦隊をロシアの新たな脅威に対抗するために再編成すると発表した。

この決定は、その2年前に当時のジェームズ・フォッゴー3世欧州海軍司令官が発表した意見と呼応するものだった。

「ロシア潜水艦は大西洋を徘徊し、われわれの防衛力を試し、われわれの海上指揮に立ち向かい、複雑な水中の戦闘空間を準備し、将来の紛争で優位に立とうとしている。「ロシアの行動と能力は、憂慮すべき対立的な方法で増大しているだけでなく、その国家安全保障政策は、米国とNATOの同盟国やパートナーに挑戦することを目的としている」。

それ以来、米国は新しい形態の潜水艦探知への投資を更新している。2019年に始まったPersistent Aquatic Living Sensors(PALS)プログラム含む新しい取り組みでは、海岸近くの自然や "改変された"水生アザラシを追跡し、その行動を利用して侵入する潜水艦の存在を特定することを目指している。対潜水艦戦(ASW)連続軌跡無人船(ACTUV)のように、半自律的に潜水艦を狩る水上艦の実戦配備を目指す他の取り組みも進行中であったが、新たな関心と投資の対象となった。

ノースロップ・グラマンのマンタ・レイは、アメリカのASW兵器庫に新たに加わる非常に強力な兵器となる可能性がある。さまざまな検知方法のいずれかで潜水艦の活動が確認されれば、水上水中双方のプラットフォームによる自動応答が即座に実行され、アメリカや同盟国の港に潜水艦(または核魚雷)を潜入させることがこれまで以上に難しくなる。

DARPAの最近の声明によれば、DARPAは開発中の他のマンタ・レイプラットフォームの成熟を継続するとある。

プログラム・マネージャーのウォーナー博士は声明の中で、「Manta Rayのパフォーマーは、UUVの耐久性に関する幅広い課題を解決するために、それぞれユニークなアプローチを取っている。私にとって、これは明確な "1つのサイズ "の解決策がない複雑な問題に取り組んでいることを示しています」と述べた。

Northrop Grumman's Manta Ray submarine could be a boon for anti-submarine warfare | Sandboxx

  • BY ALEX HOLLINGS

  • APRIL 22, 2024


B-21レイダーが史上最もステルス性の高い多機能機材になると断言できる理由

 


B-21はF-35やF-22のレベルを凌駕する「広帯域」ステルス機となりそうです。制式名称のBがふさわしくないほどの多機能ぶりも発揮しそうで、米空軍の頼みの綱となる機体ですね。Warrior Maven記事からのご紹介です。



B-21レイダー爆撃機の最近公開された写真は、謎めいた同機の重要な側面を示している


近公表されたノースロップ・グラマンステルス爆撃機B-21レイダーの写真は、謎に包まれ、大部分が「ブラックな」同機で重要な側面を示している。この航空機は、ステルス、センシング、コンピューティング、高高度、高リスクの爆撃攻撃の領域でパラダイムを一変させる技術を含むとペンタゴンの兵器開発者が述べる次世代プラットフォームである。

 ステルス特性や先端技術の多くは、極秘計画の性質上、公開されないのは明らかだが、最近の写真では、新型機の前例のないサイドビューが見られる。外観構成をざっと見ただけでは、この航空機がステルス技術で大規模な「飛躍的進歩」を遂げている可能性を示唆しているようだ。

 航空機の重要な要素は、観察者の目に飛び込んでくるかもしれない。その「インレット」は、丸みを帯びた胴体-翼-胴体構造に滑らかに織り込まれており、前身のB-2よりも平らで、水平で、角がなく、継ぎ目がない。簡単に言えば、胴体との一体化がより平坦になっているのだ。どんなに丸みを帯びていようと、胴体に「溶け込んで」いようと、突出した構造物や垂直な構造物があれば、レーダー探知シグネチャーが増加するため、これは非常に重要なことである。垂直構造や鋭角は、純粋な空力学的に言えば、電磁レーダーの「ピング」が跳ね返ってくる形状、角度、輪郭を作り出す。対照的に、完全に平らな航空機は、光速で移動するレーダー・ピングが跳ね返るような突出した構造や角度がほとんどない。レーダーや防空システムはもちろん、電磁信号を構造物にバウンドさせ、戻ってきた電磁信号を分析することで、脅威となる物体の画像やレンダリングを生成する。このため、F-35やF-22はかなりステルス性が高く、多くの防空システムに対して有効であると考えられているが、B-2やB-21のような完全な全翼機と比べれば、ステルス性は低い。

 これは理にかなっている。B-21は「ドッグファイト」や空中でのベクトルを持続させる設計ではないが、その代わりに「広帯域」ステルスを実現し、敵に「そこにいる」ことさえまったく気づかれずに防御された敵空域に「侵入」する。したがって、B-2やB-21爆撃機は、機体に検出可能な「形状」、「構造」、「角度」がないことから、敵のレーダーには「鳥」または空中の小動物のように映ると言われている。例えば尾翼やフィンなど垂直構造は、ステルス性をある程度低下させると同時に、機動性、スピード、空対空戦闘を可能にする。同時に、高速で機動し、空中で"ベクトル"する能力は、それ自体がステルス性を高め、レーダーシグネチャーを減少させる特性であり、脅威となる物体に"ターゲットロック "または "トラック"を確立しようとする地上レーダーで課題となる。

 広帯域ステルスは、完全なステルス」であり、つまり、航空機は、何かが「そこにある」ことを検知できる低周波の「監視」レーダーと、目標にトラックとロックを確立し、実際に航空機を「エンゲージ」して破壊することができる高周波のエンゲージ・レーダーの両方から逃れることができる。


熱シグネチャーの処理

また、機体後部に見えるものとして、排気管やその周辺がない。少なくとも目に見えるものはない。熱シグネチャーの管理はステルスの領域で最も重要な変数であり、航空機が周囲の温度に近ければ近いほど、また「熱」放出が少なければ少ないほど、赤外線センサーや熱センサーに探知されにくくなる。内部に埋められたエンジンや、未知の技術システムが、航空機の熱放出を大幅に減少させた、あるいは除去したというのは、事実かもしれない。多くの先進的な「冷却」技術があるが、B-21が何らかの形で新世代の熱管理技術で運用できるのなら、確かにパラダイムが変わるように思えるかもしれない。

 

 数年前だが、軍調達担当だったアーノルド・バンチ大将(現空軍資材本部司令官)は、B-21は「世界中のどんな危険な目標でも......いつでも 」対応できるだろうと筆者に語っていた。これは数年前のことで、航空機の初期のサブシステムが着手され始めた頃であったが、取得責任者であり専門家であった本人の発言は強い印象を残した。この時以来、プログラムはかなり成功していると伝えられている。空軍の上級兵器開発者がB-21に寄せる信頼の尺度には、まだ知られていないとはいえ、明確な技術的根拠があるのかもしれない。

 「最も洗練された防空システムでさえ、上空でB-21を探知するのに苦労するだろう」とオースティン国防長官は2023年12月、プラットフォームのお披露目会で述べた。


センシングとコンピューティング

ステルス技術(レーダー吸収素材、埋め込みアンテナ、音響シグネチャ管理など)と並んで、B-21は兵器、センシング、コンピューティングの分野で前例のない利点を持つと報告されている。これについてはほとんど語られていないが、2023年12月の正式なお披露目で、ロイド・オースティン国防長官は、同機がプラットフォーム、兵器、ドローン、センサーのマルチドメイン・ネットワークをサポートする空飛ぶセンサーの「ノード」、あるいは上空の指揮統制プラットフォームとして機能すると述べた。

 「B-21は堂々としている。しかし、フレームと宇宙時代のコーティングの下にあるものは、さらに印象的です」とオースティンは2022年12月に聴衆に語った。「情報収集から戦闘管理、同盟国やパートナーとの統合まで、何でもこなせる。そして、領域や戦域、統合軍の枠を超えてシームレスに機能する」。

 タイラー・ロゴウェイによる『ウォー・ゾーン』誌の非常に知的な分析エッセイは、新たに公開された写真に写っている航空機の「センサー」の存在に言及している。

 「B-21の機体下部と上部に航空データセンサーが見えるようになった。これらのフラッシュマウントされたデバイスは、レイダーの安定した飛行を維持するために絶対に不可欠である」。

 何年もの間、航空専門家は将来の軍用機は「スマート・スキン」、つまり高度なセンサーを機体に組み込んで飛行すると主張してきた。


脅威感知と無人機とのチーム化

空軍の上級兵器開発者はまた、B-21が前方のセンシング、偵察、ターゲティングを進めるための「忠実なウィングマン」となる無人システムとともに運用され、無人システムを制御することになるだろうと明言している。

 脅威情報に関して言えば、オースティンはまた、この爆撃機が「多機能」であること、つまり単に「攻撃」したり爆弾を落としたりするだけでなく、幅広い任務をこなすことを意味することも明らかにした。


100機以上のB-21?

議会、シンクタンク、そして空軍の上級幹部は近年、B-21の計画規模は100機よりはるかに大きく、もしかしたら倍の225機以上になる可能性を示唆している。将来の予算で空軍の計画は調整されるかもしれないが、予想される計画では100機調達することになっており、そのうち最初の数機はすでに順調に飛行中である。

 地上防空レーダー技術は、ますます高感度・高精度になり、長距離化し、デジタル処理とネットワーク化され、より広範囲の周波数で作動できるようになっている。ロシアのS-400や中国のHQ-9に見られるように、これらの技術は近年、ステルス機に対するリスクを大幅に増大させ、新世代の低探知技術の必要性の裏付けとなっている。


ロシアの防空体制は対応できるのか

ロシアのメディアは、新型S-400とS-500地対空ミサイルは「ステルス」機でも追跡、撃墜可能と主張している。わかっているのは、ロシア製の新しい防空ミサイルは、より高速のコンピューター処理でネットワーク化されており、より広範囲で標的を視認・探知でき、より広範囲の周波数で作動できるということだ。

 だからといって、これらのシステムがステルス爆撃機、特にB-21のような先進的な爆撃機を「命中」させたり、交戦さできるわけではない。レーダーや防空システムは、低周波の監視レーダーを使って、何かが「そこにある」、あるいは大まかな作戦範囲内にあることを判断することには成功できても、飛行中のステルス爆撃機の目標軌道を確定し、ステルス機を実際に「破壊」できることを意味するわけではない。これを達成するためには、はるかに高いレベルの精度、追跡ループ火器制御、画像忠実度が必要であり、B-21にはおそらく多くの "非公開"のステルス特性が組み込まれているようだ。


B-21のコンピューティング性能の真髄

B-21が新世代のデータ処理、センシング、武器採用、AIを搭載したコンピューティングを取り入れているという推測も妥当だろう。数年前、元空軍調達担当幹部のウィリアム・ローパーは、B-21のソフトウェアとミッション・コマンドの主要要素に関する進捗状況について重要なコメントを発表しており、開発者は、より高いレベルの情報処理、データ管理、コンピュータによる自律性をもたらすことを意図した本質的なソフトウェア・エンパワード・プロセスを完了したと述べた。

 仮想化とソフトウェアとハードウェアの相乗効果によって、B-21のセンサー、コンピューター、電子機器は、エイビオニクスの仕様のチェック、高度と速度の測定、センサー情報の異種プールの統合などの機能をよりよく拡張、展開、合理化できると考えられる。センサー、照準、航法データは、コンピューターの自動化が進むことで管理、整理されることになる。これにより、パイロットはより速く、より多くの情報に基づいた戦闘判断ができるようになる。

 ローパーは以前の発言で、B-21が"コンテナ化されたソフトウェア"を搭載していることに言及しており、「アプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化する」ためのコンピューターシステムであるKubernetesを挙げた。Techtarget.comによると、この多くはアプリケーションのコンテナ化によって実現されている。コンテナ化とは、オペレーティング・システム・レベルの「分散アプリケーションのデプロイと実行に使用される仮想化手法」と定義されている。Techtarget.comによると、コンテナ化によって、複数の「分離されたアプリケーションやサービス」が単一のホスト上で実行され、同じオペレーティング・システムにアクセスできるようになる。■


Why The B-21 Raider Stealth Bomber is the Stealthiest Plane to Ever Exist - Warrior Maven: Center for Military Modernization

By Kris Osborn, President, Center of Military Modernization

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


2024年5月28日火曜日

自衛隊の水陸機動団も抑止力の一部だ。各国の特殊部隊との共同演習、知見の交換でこれから実力が伸びていくことに期待。

各国の特殊作戦部隊コミュニティに日本も水陸機動団を編成して正式に加われるようになってよかったですね。今後は各種演習や交流を通じ、相乗効果を上げてもらい、立派な抑止力になってもらいましょう。なお、このブログは当方の裁量が効く場所なので、一佐などというおかしな日本語は使わず、大佐と表現していることをご了承ください。Breaking Defense記事からのご紹介です。

japan sofJapan’s Special Operations Group, JGSDF, conducted a field training exercise with the Special Operations Command Australia in September 2023. This photo was posted on social media by the Japanese Self Defense Forces. (SDF)

「(日本の)特殊部隊の強化には、地域的な協力が必要だ」(自衛隊水陸機動団副司令)

国、北朝鮮、ロシアの脅威がインド太平洋全域に広がる中、日本の特殊作戦部隊が地域のパートナーとの絆を深める時期に来ていると、自衛隊幹部が語った。

自衛隊水陸機動団副司令官で、特殊作戦群(JSOG)前司令官の藤村太助大佐は、5月9日のSOFウィークのイベントで、「(日本の)SOFを強化するためには、地域協力がもっと必要だ」と珍しく公の場でコメントした。

また、SOFには敵対勢力を抑止する戦略的な取り組みを支援し、心理戦や防諜など非キネティックな手段を通じて、敵対勢力の心に疑念を抱かせる「メッセージを直接または間接的に相手に伝える」必要があると述べた。

「人間はテクノロジーよりも重要だ。テクノロジーを利用しても、テクノロジーに利用されてはならない:SOFコミュニティは、グローバルな課題に対処するために協力しなければならない」。

藤村の話を聞きながら、米太平洋特殊作戦司令部(SOCPAC)司令官で米海軍特殊部隊のジェロミー・ウィリアムズ少将は、日本の同僚と見解が「完全に一致」していると表明した。

「過去2年間の進展全部に感謝している。機密情報のため詳細には触れないが、戦略的な連携が大幅に向上している」とウィリアムズは語った。特に、「オーストラリアや日本との『キーン・エッジ』演習は、象徴的な出来事だった」。

さらにウィリアムズ少将はSOCPACと自衛隊、その他の連合国やパートナーとの「絶対的に重要な」関係を説明し、「この1年半の間に日本で起こったことに非常に感銘を受けている」と付け加えた。

オーストラリア特殊作戦司令部のポール・ケニー司令官も同席し、日豪SOFの関係が10年の間に、自由落下訓練などの基本的な技能から「さらに複雑な訓練活動」へ発展してきたことを説明した。

「最初の焦点は、国内テロ攻撃への対応を含むテロ対策の経験を共有することでした。東京オリンピックを控え、オーストラリアは他の国々と同様、日本とも経験を共有した。

「しかし、ここ2、3年......両国政府が、特に中国による悪意ある行動や、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による継続的な行動による混乱によって、この地域で起きている不安定さを認識し、私たちは一斉にアプローチを変更しました。

「日豪両政府は強く連携しています。実際、そちらの首相は、オーストラリアは『準同盟国』だと指摘しました。「正式な同盟関係はありませんが、私たちは非常に緊密に連携しています」。

ケニーはまた、豪州のSOFとJSOG、そして日本の海上自衛隊特殊舟艇部隊(SBU)との緊密な協力関係を強調した。

「私たちは、米国、インド、日本との"クワッド"演習を実施する中で、SBUとの協力関係を高く評価しています」と述べるとともに、マラバール演習(VBSS(Visit, Board, Search and Seize)活動を含む海洋に焦点を当てた演習)を強調した。

米豪のSOF関係者は、活動に不可欠な存在が産業界だと指摘した。

「産業界には創造性を期待しています。そして、非常にエキゾチックな、オーダーメイドの軍事システムの代表としてここにいる何人かの人々に関して、私たちが消耗品と呼ぶような、迅速に調達可能でスケーラブルなシステムで、それらを絶対に補完しなければならない」とウィリアムズは語った。

「インド太平洋地域のパートナーとして、(産業界と)緊密に協力し、可能な限り共有し、協力し合う必要があります。中国のような脅威に直面し、産業基盤や私たちの国から技術を盗む傾向も含めて、私たちは緊密に協力し、まず彼らを凌駕するようなイノベーションを生み出す必要があります」。■

Japan's special forces need more 'regional' cooperation, officer says - Breaking Defense

By   ANDREW WHITE

on May 24, 2024 at 6:51 AM


2024年5月27日月曜日

ウクライナ戦:HIMARSが戦果をあげられなくなった。スターリンクも使えなくなった。侮れないロシアの電子妨害戦術。

 


ロシア軍は電子妨害戦術に長けており、ウクライナ戦でもその効果を発揮しています。当初は安全と言われたスターリンクも今では妨害の対象となっており、ウクライナ軍に不利な状況が生まれているようです。Business Insiderの記事からご紹介しましょう。


Stock image.


ロシアの妨害電波により、米国が供給したHIMARSロケットランチャーは "全く効果がない"としたウクライナの極秘兵器評価書をワシントン・ポストが入手した。妨害電波はスターリンクにも影響を与え、ウクライナに深刻な通信問題となっている


国が供給したHIMARSロケットランチャーがロシアの電子妨害システムの前に効果を喪失した状態になっている。

 ワシントン・ポストが入手したウクライナの極秘兵器評価書によると、ウクライナは標的の問題から、米国が供与した多くの兵器の使用を中止、もしくは縮小せざるを得なくなっているという。

 報告書は、エクスカリバーGPS誘導砲弾や高機動砲兵ロケットシステム(HIMARS)などの武器について言及している。

 さらにニューヨーク・タイムズによれば、今月初め、ロシア軍はスターリンクの妨害に成功し、ウクライナの前線部隊に深刻な問題を引き起こした。

「エクスカリバーは可能性を失っている。『一発必中』兵器としての評判は地に落ちた」。

 最大50マイルまでロケット弾を発射できるHIMARSシステムは、戦争初期にはウクライナの生命線として歓迎されたが、今では戦場で脅威ではなくなっている、とウクライナ軍関係者はポスト紙に語った。

 「ロシア軍は電子戦を展開し、衛星信号を無効化し、HIMARSは全く効かなくなった。ロシアの妨害電波は、ミサイルを標的から50フィート(約1.5メートル)以上外す原因になる」という。

 米国が供給した滑空爆弾もロシアの妨害電波の結果、標的を外し続けていることが報告で明らかになった。

 英国のストームシャドウ・ミサイルや米陸軍戦術ミサイル・システム(ATACMS)含むその他システムは、ロシアの妨害電波の影響をはるかに受けにくい。

 ジャミングは、比較的安価なソフトウェアで数万ドル相当の弾薬を無効にできるため、非常に安価な戦術と『ディフェンス・ワン』は報じている。

 ロシアの妨害システムは地上から作動し、武器が衛星と通信するのを妨げる「コーン」を投射する。衛星はミサイルを標的に誘導する役目がある。

 ロシアは「電子戦の使用を拡大し続けている」と、匿名の米政府高官はポスト紙に語った。「そして我々は進化を続け、ウクライナに効果的な能力を持たせようとしている」。

 しかし、中東で特殊作戦を指揮した退役米陸軍中将のマイク・ナガタ氏は、アメリカは電子戦能力で「遅れをとったままだ」と述べたと『ディフェンス・ワン』は報じた。

 フロリダ州タンパで開催されたSOFウィークで、ナガタは「私の判断では、米国のあるべき姿と現在の姿のギャップは、あまりにも多くの場所で拡大し続けている」と述べた。彼は、電子戦における優位性を取り戻すため、アメリカはもっと創造的になるべきだと訴えた。

 ウクライナでのロシアの電子妨害はイーロン・マスクのスターリンク・サービスも標的にしている。開戦以来、ウクライナ軍はスペースXのスターリンク衛星インターネットサービスを通信と攻撃の調整に利用してきた。

 ウクライナ軍第92突撃旅団によると、ロシア軍が北部国境を越えてハリコフに向けて大規模な攻撃を開始した際、スターリンクの速度が極端に遅くなったという。「攻撃の1日前、スターリンクはシャットダウンした。「超、超スローになった。我々は電子戦に負けている」。■


US-supplied HIMARS 'completely ineffective' against superior Russian jamming technology, report says

Cameron Manley May 25, 2024, 9:02 PM JST


日本が開発中のXLUUV(超大型無人水中装備)に注目、岩国海洋環境試験評価サテライトを一部メディアに公開した防衛装備庁

 


Naval Newsが防衛装備庁に特別に招待され、開発中の大型UUVの見学を許されたとのことで記事が出ましたのでご紹介します。日本はこれまで無人装備の研究で先進諸国より遅れていたのですが、ここに来て研究投資が急ピッチで拡大しているようです。その成果はこれから形になって出てくるでしょう。


Japan UUV

Japan UUV

Japan's new XLUUV. Picture by Yoshihiro Inaba.


日本の新型XLUUV潜水艦ドローンを初公開

日本のATLA(防衛装備庁)は、超大型無人潜水機(XLUUV)をNaval Newsに公開した。この印象的な潜水ドローンは現在、研究開発(R&D)段階にある。


2023年12月、ATLAはほぼ独占的なアクセス(Naval Newsともう1つの日本の防衛関連報道機関のみが招待された)で、XLUUVを見せるために岩国海洋環境試験評価サテライト(IMETS)に我々を迎えた。この施設は山口県にあり、UUVの試験・開発に使用されている。


「長期耐久型UUV」と名付けられた新型UUVは、DSEIジャパン2023で初めて公開されたXLUUVの実験機だ。このUUVは三菱重工業(MHI)によって建造され、ATLAの艦艇装備研究所が開発している。少子高齢化が進む日本では、有人装備の運用がますます難しくなる。特に潜水艦乗組員の育成が難しくなり、艦艇数の維持が困難になる可能性がある。そこで日本は現在、将来の水中防衛力を補完する手段として、UUVの研究開発を加速させている。



Japan UUV

Japan’s new XLUUV. Picture by Yoshihiro Inaba.


日本のUUV


UUVはモジュール式で、制御システムを搭載する「ヘッド部」、動力源を搭載する「エナジー部」、推進システムを搭載する「テール部」で構成される。これが基本構成で、さまざまな機器を搭載できるペイロードモジュールを組み合わせることで、各種ミッションをこなす。


「長期耐久型」の名の通り、このUUVは長期間の自律運用を想定しており、基本構成(全長10メートル)なら3~4ノットで1週間の連続運用を達成している。しかし、これはマイルストーンに過ぎず、ATLAはさらに長期間の連続運用を目指している。UUVはリチウムイオンバッテリーを動力源としているが、ATLAは現在、より長い航続距離を達成するために、液体/固体燃料バッテリー、AIP、ディーゼル電気エンジンの使用を検討している。


Japan UUV

Japan UUV

この水槽では、高性能シミュレータと音響機器によって実際の海洋環境を再現する。UUVをこの水槽に入れ、海流、水温、塩分などの海洋環境や水中音響をシミュレーションし、様々なデータを蓄積することで、制御ロジックの構築や他のセンサーの開発に役立てる。写真は筆者撮影。


さらに、センサー/通信ノードなどの重量ペイロードを搭載する「水中機器設置モジュール」、各種海洋調査機器を搭載する「海洋観測モジュール」、ドローンなどを水面に打ち上げる「水面打上げモジュール」、効果的なMDA(Maritime Domain Awareness)を実施するための「海洋監視モジュール」などのペイロードモジュールも研究されている。


このXLUUVで最も重要な点は自律性である。水中では電波を受信できないため、艦艇や陸上からUUVを制御するのは難しい。そのため、自律運用が不可欠である。まず、UUVは慣性航法システム(INS)とドップラー流速ログ(DVL)を組み合わせて位置を知る。さらに、水中と水上の状況を把握するために、パッシブソナーで船のスクリュー音などを検知し、浮上時の最終チェックにアクティブソナーを使う。


そして、自律運航のために最も重要な制御ロジック、つまり知能の部分については、巨大な試験設備で研究が進められている。山口県には、2021年に建設された「岩国海洋環境試験評価サテライト(IMETS)」という試験施設がある。IMETSには長さ30m、幅35m、深さ11mの巨大水槽があり、高性能のシミュレータや音響機器によって実際の海洋環境が再現される。UUVをこの水槽に入れ、海流、水温、塩分などの海洋環境や水中音響をシミュレートし、さまざまなデータを蓄積することで、制御ロジックの構築や他のセンサーの開発に役立てている。


このUUVはあくまでテストベッドであり、このまま海上自衛隊が運用するわけではない。実は現在、この長期運用型UUVで得られたデータを用いて、「UUV制御技術」の研究が進められている。これは、指揮UUVが別のUUVを制御する技術を開発するもので、ソナーなどを使った目標の自動探知・識別も目指している。2023年度から研究を開始した。


また、この「長期耐久型UUV」では、モジュールやソフトウェアなどの標準化を進め、オープンアーキテクチャを実現している。これは、官民両用技術でUUV技術を強化することを目的としている。つまり、このUUVは日本全体のUUV技術の向上も目指している。■


Our First Look at Japan's New XLUUV Submarine Drone - Naval News

Yoshihiro Inaba  05 May 2024


今年のメモリアル・デーは同盟関係の大切さを再認識する機会:「Dデイ」80周年が示す教訓

 


本日(5月27日)は米国ではメモリアルデーで数々の戦闘で自らの生命の代償を支払った戦士を悼む祝日です。思えば、今日の世界秩序の基礎が第二次大戦中の同盟関係から生まれているのですね。United Nationsは今の日本では国際連合と約されていますが、もともとは大戦中の連合国を指していました。それはともかく国のためになくなった兵士の恩義を忘れないというのは基本的な価値観で、建国後数々の戦役を経てきた米国がこの価値観を堅持しているのはすごいことです。他方で戦争を自然災害並みに受け止めている日本では国民で共有できる価値観がまだでていません。


D-Day. Image Credit: Creative Commons.

1944年6月6日、Dデイにオマハ・ビーチに近づくLCVP上陸用舟艇に乗った兵士たち。ヘルメットネット、LCVPのタラップ上のかすかな「禁煙」のサイン、何人かの隊員が携行しているM1903ライフルとM1カービンに注目。

アメリカがメモリアル・デーを祝うとき、国の自由のために戦った人々の犠牲を思い出すことは不可欠である。今年のメモリアルデーは、第二次世界大戦における連合軍の重要な役割を強調するD-Dayの80周年記念日でもある。アメリカ、イギリス、カナダ、そしてその他の連合国軍の共有された犠牲は、強力な国際同盟の重要性を強調している。アメリカ、イギリス、カナダ、その他連合国軍の犠牲の共有は、強力な国際同盟の重要性を強調している。今日、NATOやNORADのような組織がこの教訓を体現し続けており、平和と安全保障は協力的なパートナーシップによって達成されるのが最善であることを強調している。

もなくアメリカ人は、おそらく最も厳粛な市民的祝日であるメモリアルデーを迎え、祖国の存続と自由のために戦争で命を捧げた男女に思いを馳せる。 


今年のメモリアルデーは、連合軍がナチス占領下のフランスに帰還した1944年6月6日のDデイから80周年を迎える1週間前に行われる。私たちは、その多大な努力の末に戦死したアメリカ人を想起し、その記憶に敬意を表する。しかし、そうするとき、我々はまた、彼らが単独で戦い、死んだのではないことを思い出すべきである。われわれの大義は、多数の国の戦士たちに共有され、ともに戦場に立ったのである。アメリカと同盟国がともに戦うことで勝利が達成されたことを忘れてはならない。


わが軍があの偉大な戦いとそれに続く戦いで戦った一方で、何万人ものカナダとイギリスの兵士、水兵、空軍兵士も戦った。Dデイに連合国が上陸した5つの浜辺のうち、イギリス軍が2つ、カナダ軍が3つ目を担当した。世界各地では、連合国の大義は、イギリス、フランス、オランダの兵士や、占領された祖国から逃れた人々から引き抜かれた部隊(有名なのは自由フランス軍だが、ポーランド、ノルウェー、オランダ、ベルギー、ノルウェー、チェコスロバキア、ギリシャからの難民も含まれる)にも依存していた。


枢軸国に対する勝利の後、アメリカの指導者たちは、多大な犠牲を払うことで学ベた偉大な教訓を心に刻んだ。米欧両国の先見の明のある政治家たちは、北大西洋条約機構(NATO)を結成するために結集した。NATOは、その設立憲章第5条で定められた基本原則に基づき、「一国に対する攻撃は万国に対する攻撃である」とした。また、世界最大の無防備国境を共有するカナダとともに、北米航空宇宙防衛司令部NORADを創設し、大陸の上空をパトロールした。 


同盟関係は、潜在的な侵略者に対する重要な抑止力として機能してきたが、韓国からアフガニスタンまで、アメリカ人が戦うときは単独ではなく、信頼できる大切な同盟国とともに戦ってきたという現実もある。


しかし、驚くべきことに、ドナルド・トランプ大統領は4年間、同盟関係を資産と見なさなかった。むしろ、何十年もかけて築き上げたこれらの関係を、あからさまに軽蔑して扱ったのだ。 NATOの同盟国が国防支出を強化する必要性について正当な懸念をグロテスクなまでに極端に表明し、NATO憲章第5条への厳粛なコミットメントに疑問を投げかけ、NATOが9.11の後に第5条を発動した事実を忘れている。 


彼は、アメリカ大統領の権限と威信を利用して、長年のパートナーとの関係を深めるのではなく、ロシアのプーチン、中国の習近平、北朝鮮の金正恩との「友好」を求めた。彼の働きかけによって達成されたことはほとんどないに等しく、我々の長年の関心や価値観を無視しながら、「強い男」から別の「強い男」へ友好関係を築く幻想の上に成り立っていた。間違いなく、全体主義的指導者たちは、民主主義の友人間の関係が混乱するのを楽しんで見ていたはずだ。


トランプの後継者 ジョー・バイデン大統領は、主要同盟国との相互信頼を再構築しなければならなかった。幸いなことに、上院議員として、またバラク・オバマの副大統領としての経験のおかげで、彼にはこの仕事をするための手段があった。


アメリカは、威勢がよく即興的であるだけではこの世界で成功することはできず、民主的な同盟国との強固で永続的な連合を構築する忍耐強い努力によってのみ成功することができる。これは第二次世界大戦の教訓であり、このメモリアル・デーに忘れてはならない。■


The Enduring Lesson of D-Day at 80: Don't Forget About Alliances This Memorial Day - 19FortyFive

By

Bruce A. Heyman and Richard M. Sanders


About the Authors: 

Bruce A. Heyman of Chicago, Illinois served as United States Ambassador to Canada, 2014-17.  Richard M. Sanders of Philadelphia, Pennsylvania is a Senior Foreign Service Officer, Retired of the U.S. Department of State.