2024年10月31日木曜日

輸出ガイドライン改定で防衛分野における国際競争力の強化をめざす日本(National Defense Magazine)―真剣に防衛産業の海外拡販を狙うなら民間主導の形にすべきではないか。政府は一歩下がり支援すべきだ。

 

Artist rendering of Global Air Combat jet fighter

BAE Systems image




2022年12月、日本は国内防衛産業の強化に焦点を当てた防衛戦略を採択した。それから2年後、輸出ガイドラインの改定は、国内市場を超えて世界規模で競争する試みの一環だと政府関係者は語った。 

 防衛装備庁の装備政策部国際装備課の洲桃紗矢子課長は、日本の将来の安全保障と防衛政策は「地域と国際社会の平和と安定と直結している」と述べた。政府は志を同じくする国々と「長期的で深い」関係を育むことに注力しており、防衛装備品の移転はインド太平洋地域の平和と安定のために必要なことであると、2024年日本国際航空宇宙展の会期中に同課長は述べた。 

 防衛産業を国内的・世界的に強化するための最近の取り組みのひとつに、防衛装備品の移転に関するガイドライン3点の改定がある。「防衛装備品・技術の移転に関する三原則」と呼ばれる同ガイドラインは、防衛装備品の海外移転が禁止される場合の明確化、移転が許可される場合の限定、厳格な審査と情報公開、目的外使用や第三者への移転に関する適切な管理の確保、としている。 

 防衛戦略とともに2022年に施行された「国家安全保障戦略」を受けての改正である。 

 大きな要因として、第6世代ステルス戦闘機を開発するために日本、イギリス、イタリアが共同で取り組んでいる「グローバル・エア・コンバット・プログラム(GCAP)」への参加がある。 

 「GCAPの完成品を直接移転する必要性についての前提が変化したため、政府はGCAPに関連する移転に関する方針を閣議決定し、実施要領を改正した」と、洲桃課長が提示したスライドには書かれていた。   2024年3月、GCAPについて「我が国の安全保障環境に適応した戦闘機を実現するため、我が国から相手国以外の第三国への完成品の直接移転を可能とする実施要領の改正が行われた」とスライドに書かれていた。 

 GCAPをパートナー国以外の顧客に移転する時期が来れば、個々のケースについて閣議決定がなされる、と同課長は述べた。 

 戦闘機の輸出解禁は、第二次世界大戦後、歴史的に武器輸出を控えてきた日本の国家安全保障政策の大きな転換を意味する。 

 洲桃課長は、ガイドラインのその他の主な変更点を要約し、米国以外の国へのライセンス製品の移転の可能性と修理提供能力、そして部品の移転の可能性を強調した。「部品だけでなく、完成品も同様です」と言い、完成品がその機能を果たさなくても、その部品はまだ役に立つと付け加えた。 

 一方、経済産業省の製造産業局航空機武器産業課の呉村益夫課長は、強い防衛産業とは国際競争力を持つことでもあると言う。今、日本の防衛産業はそうではない。呉村・洲桃両課長は、日本の防衛産業をさらに強化するために、デュアルユース技術の重要性、サプライチェーンの強化、新興企業への支援などについて語った。 

 呉村課長は、米国防総省は調達と産業の両方に関する政策を持っているのに対し、日本の防衛省は調達に関する政策しか持っておらず、産業戦略が必要だと指摘した。 

 日本がグローバル市場で競争力を持つにはどうしたらいいか、自国の強みを生かし、他国の強みと協力しながら防衛産業を強化するにはどうしたらいいかを考える必要がある。 

 洲桃課長は、日本の防衛基本政策で3本柱のひとつに、志を同じくする国々との連携強化があるが、本独自の国防アーキテクチャーの強化が第一であると指摘した。 

 呉村課長は「最も重要なことは、日本にとって望ましい環境を作ることです」と語った。「言い換えれば、安全保障の確保です」。■


Japan Looks to Compete for Global Defense Work with Revised Export Guidelines


10/18/2024

By Laura Heckmann

https://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2024/10/18/just-in-japan-hopes-to-compete-for-global-defense-work-with-revised-export-guidelines


ロシア太平洋艦隊の再来:北方海域が新しい重心となり、日本は安全保障を再構築する必要に迫られている(東京大学先端科学技術研究センターの准教授小泉悠による寄稿―WAR ON THE ROCKS)

 


本がロシアの隣国だという事実が特に欧米で見過ごされがちである。実際、日本とロシアの間には79年間も陸続きの国境が存在しない。しかし、日本は常に日本海とオホーツク海を挟んでロシアと向き合っており、35年前まではアジアにおける冷戦の最前線に位置していた。そして今、ロシアと欧米の間の地政学的な対立が再燃する中、日本は再び最前線に立たされている。

 冷戦時と同様に、焦点は「海」にある。ロシア極東の地上軍の多くはウクライナの戦場に再配置されたと見られ、多くの駐屯地は無人となっている。一方、太平洋艦隊の潜水艦部隊は着実に増強されており、特に弾道ミサイル原潜の近代化に重点が置かれている。

 筆者は、日本政府と緊密に連携しつつロシアを20年にわたり研究してきたが、西側諸国は、ロシア極東における軍事的な現実に対する日本の見解を深く理解することで利益を得ると確信している。問題は、単に潜水艦の数が増加していることだけではない。衛星画像は、ロシアの核弾道ミサイル潜水艦艦隊が近年、著しく活発になっていることを示している。日本北部におけるロシアの潜水艦活動の活発化は、中国という脅威に直面する中で、日米同盟の抑止力を圧迫するリスクがある。 

 これには、欧米諸国が一致団結した対応が求められる。 

 米国と日本は、インド太平洋地域のパートナー諸国と中国の軍事力を均衡させることを目指してきた。 

 ロシアの活動が再び活発化している今こそ、この戦略を北方にも拡大すべきだ。日本とカナダの協力関係強化が、その第一歩となるだろう。

  

冷戦時の衝突

対馬は歴史に彩られた土地である。約1世紀前、史上最大の海戦のひとつが対馬海峡で繰り広げられ、日本海軍がロシアのバルチック艦隊を撃破した。

 しかし、冷戦時代に対馬海峡が果たした役割はあまり知られていない。対馬は、太平洋とインド洋へ向かうソ連艦隊にとって狭水道であった。日露戦争の折にロシア海軍のジノヴィイ・ロジェストヴェンスキー提督が対馬を通過しなければならなかったように、ソ連の潜水艦艦長たちも同様であった。

 原子力弾道ミサイル潜水艦も例外ではなかった。アメリカとソ連の潜水艦乗組員たちが証言しているように、ソ連の北方艦隊の潜水艦は水中聴音機システムを回避するためさまざまな努力をしていた。日本近海でも同様のことが起こっていた。ソ連潜水艦は通常、対馬海峡の海上自衛隊の警戒所手前でエンジンを切り、潮流に乗り東シナ海に無音航行で出ていた。ソ連のコルベット艦は対馬海峡に常に停泊して、原子力潜水艦が通過する際にエンジンを始動させ日本の水中聴音機を妨害した。

 一方、カムチャッカ半島からは、狭隘な海峡を避け太平洋に出ることが可能であった。そのため、太平洋艦隊の潜水艦部隊は徐々にこの半島を主な基地とするようになり、ほぼ毎月、アメリカ西海岸沖2,000~2,500キロの哨戒海域「ヤンキー・ボックス」に向けて、ヤンキー級潜水艦(プロジェクト667A)が出航するようになった。平均して、ヤンキー級各艦のパトロールは1.5ヶ月間続いた。

 1970年代半ばには、太平洋艦隊にデルタI級(プロジェクト667B)およびデルタIII級(プロジェクト667BDR)潜水艦が登場した。長距離弾道ミサイルR-29およびR-29Rを装備したデルタは、太平洋をこっそりと横断して米国本土の海域まで進む必要がなくなった。その代わり、友好国からの支援を受けやすいソ連近海に退避する戦略が取られたデルタ型にはもう一つの利点があった。ヤンキー型が沿岸に向かう際には15ノットという高速で航行する必要があったのに対し、デルタ型は4~8ノットという低速で航行することが可能であった。これは、その生存性を高めることに大きく貢献した。

 西側の分析家は、この結果として生まれたソ連の戦略を「要塞化」と呼んだ。最も有名な要塞は、北方艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦の拠点であるバレンツ海である。一方、太平洋艦隊の要塞はオホーツク海であった。1974年に最初のデルタI級が配備された直後、ソ連はオホーツク海周辺の強化に着手した。その第一歩として、地上軍が配備された。第18機甲砲兵師団(18 PulAD)が編成され、20年ぶりに南クリル諸島に派遣された。これらの諸島とサハリン島には、地対艦ミサイルと防空システムが配備された。さらに、シムシル島の巨大なカルデラが潜水艦基地に変えられた。


現代の課題

北大西洋に大きな注目が集まる中、このような話は、欧米では比較的知られていない。しかし、それは現在でも依然として重要な問題である。

 ソビエト連邦崩壊後、太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は困難な状況に直面した。国防予算の大幅な削減とハイパーインフレにより、ロシア軍は維持できなくなり、将校や兵士たちは毎日の食事に十分な食料さえ手に入らない状況となった。原子力潜水艦の原子炉は、核抑止のためのパトロールには使用されず、家庭への電力供給に利用されるようになった。1980年代後半から1990年代にかけて、ロシア海軍の潜水艦パトロールの数は減り続け、2000年代初頭にはほぼゼロとなった。

動かない潜水艦の維持に多額の資金が浪費されているという事実は、ロシア軍にとって喜ばしいものではなかった。1990年代、国防委員会書記のアンドレイ・ココシンは、カムチャツカ半島の潜水艦基地を閉鎖し、北方艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦を集中配備する計画を立てていた。2000年にウラジーミル・プーチン大統領が就任すると、参謀総長のアナトーリー・クヴァシニン大将がカムチャツカの潜水艦基地の閉鎖を提案したと言われている。

 しかし、プーチン大統領はこれを却下した。2012年の国防政策に関する論文で、プーチン大統領はそう主張している。論文が発表された当時、セヴマシュ造船所ではカムチャツカ半島に配備する新型弾道ミサイル潜水艦の建造が進められていた。

 ボレイ級(プロジェクト955)潜水艦2隻が2015年から2016年の間に配備されていなかった場合、カムチャツカ半島の基地は結局放棄されていた可能性がある。プーチン大統領が何を言おうとも、太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は、人員も艦船も老朽化していた。2010年代初頭には、老朽化したデルタIII型潜水艦は3隻しか残っておらず、その活動は非常に低迷していた。北方艦隊のデルタIV型潜水艦はすべて近代化されていたものの、太平洋艦隊のデルタIII型潜水艦には同じ機会が与えられていなかった。これは、建造されたセヴマシュ造船所がカムチャツカから非常に離れており、メンテナンスが困難であったためかもしれない。結局、専門家たちは、ロシア太平洋艦隊から原子力弾道ミサイル潜水艦が姿を消す日はそう遠くないと考え、そうなれば、太平洋艦隊は沿岸艦隊となり、小型水上艦と通常動力潜水艦で編成されることになるだろうと予測した。太平洋艦隊は、セルゲイ・ゴルシコフ提督が外洋艦隊の夢を追い求める前のスターリン時代の太平洋艦隊に戻ってしまうだろうと。

 しかし、ボレイ級の導入により、太平洋艦隊は戦略的な役割を継続することができた。さらに、改良型のボレイA(プロジェクト955A)潜水艦3隻が2022年以降に艦隊に到着し始め、旧式のデルタIII潜水艦はすべて退役した。太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦部隊は、規模と質の両面で大幅に拡大し、ほぼ北方艦隊のそれに匹敵するようになった。


ロシア潜水艦のパトロールの強化

問題は潜水艦の隻数の増加だけではない。活動レベルも高まっており、日米同盟の抑止力を脅かす可能性がある。まず、日本近海におけるロシア潜水艦の活動について説明したい。

 筆者は日本で初のマクスター・テクノロジーズのユーザーになった。「個人として衛星画像を購入したいのですが」と言ったときの営業マンの顔を今でも覚えている。とにかく、地上分解能30センチの光学衛星画像を利用できるようになった。また、日本企業が開発した合成開口レーダー衛星も利用できるようになった。

 それらを使って、ロシア海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒パターンを特定しようとした。カムチャッカ基地にどんな潜水艦が停泊しているのかも観察し続けた。

 2021年6月から観測を継続している。それによると、ロシア太平洋艦隊の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒は、この3年間で頻度が増し、期間も長くなっていることが分かる。観測を始めた2021年から2022年頃までは、ロシアの原子力弾道ミサイル潜水艦は、1~3週間の比較的短い航海を数回行うほかは、1年に1~2回、1か月を超える航海(おそらくは核抑止パトロール)を実施しただけだった。さらに、2023年には、1か月を超える配備は一度も確認されていない。2022年から2023年にかけてカムチャッカに派遣された2隻のボレイ-A型原子力潜水艦は、配備後しばらくの間は「新人」として扱われているように見える。

 しかし、2024年1月から9月にかけては、すでに3回以上の1か月以上のパトロールが確認されており、うち2回は2か月以上続いた。さらに興味深いことに、これらの長期パトロールはすべてボレイ-A型によって実施されている。新人たちがようやく頭角を現し始めた。2024年には、アレクサンドル3世皇帝も3隻目のボレイ-Aとして配備された。さらに1隻か2隻が配備されるとみられる。

 また、ポセイドン原子力無人潜水機を搭載した特殊任務用原子力潜水艦ベルゴロド(プロジェクト09852)がカムチャツカに配備されたとみられる。国防省の深海調査本部指揮下で、海底ケーブルなどの重要な海底インフラの敷設場所の調査や、場合によっては損傷を与える任務を負う可能性が高い。深海調査本部の活動による脅威は2010年代から欧州で指摘されていたが、太平洋側には大規模な基地がないため、日本側の危機感は薄かった。しかし、おそらく短期的に、近い将来に状況は変化するだろう。


戦略的な影響

これは日本の安全保障コミュニティにとって憂慮すべき展開である。1980年代、陸上自衛隊は「北方前方防御」と呼ばれる戦略を採用した。オホーツク海はソ連の弾道ミサイル艦隊の哨戒海域であり、その海に大きく突き出た北海道は、攻撃の格好の標的であったに違いない。北方前進防衛戦略は、日本唯一の機甲師団を含む強力な陸上戦力を配備し、地対艦ミサイルを配備するというものであった。同時に、自衛隊は対潜戦能力を強化した。日本近海で活動するソ連潜水艦の数と能力が劇的に増加したため、対潜ヘリコプターを搭載した駆逐艦を中心とする対潜部隊が編成され、哨戒機P-3Cを100機配備することも決定された。これらは、筆者の故郷の空を飛び回っていた、目立つ「尾翼」の付いたうるさい航空機である。

 平和の配当を約15年間享受した後、中国の海軍力と空軍力が急速に強化され始めたため、日本の安全保障関係者は日本の南西地域に目を向けた。陸上自衛隊は「南西シフト」政策を採用し、北海道は最前線というよりも戦略的予備基地として見られるようになった。

 これがロシアの潜水艦活動が活発化している背景であり、それが懸念される理由である。ボレイA型潜水艦の配備数がさらに増え、1隻あたり平均2カ月間の哨戒活動を行うと仮定すると、常時1隻の原子力弾道ミサイル潜水艦がオホーツク海に配備されることになる。しかし、自衛隊と米太平洋艦隊の限られた資源は、すでに厳しいローテーションで運用されている。台湾海峡の情勢が悪化したら?中東で大規模な戦争が勃発したらどうなるのか? ロシアの潜水艦に鐘を装備する担当者が一時的に不在になる可能性もある。

 さらに、ロシアが中国をその地域に受け入れたという事実が状況を複雑にしている。15年前であれば、ロシアは中国艦隊にオホーツク海や北極海での活動など決して許可しなかっただろう。実際、2011年に中国艦隊が許可なくオホーツク海を通過した際には、ロシアはミサイル発射演習を実施して不満を表明した。しかし、この10年間で状況は大きく変化した。欧米から孤立したロシアは、軍事面を含め中国との関係を深めてきた。中国人民解放軍はロシアの戦略レベルの演習に参加し、両国の爆撃機や艦隊が合同パトロールを開始した。さらに、2023年には中国とロシアの艦隊がオホーツク海で初めて合同演習を実施した。ロシアはついに、オホーツク海における中国海軍の存在を公式に認めた。2024年には、中国とロシアの爆撃機が北極圏のチュクチ海でパトロールを実施し、両国の艦隊が再びオホーツク海で演習を行った。


結語

日本の北方海域でロシアの潜水艦の活動が活発化しており、平時における重要な水中インフラへの脅威がある。さらに、中国とロシアは日本の北方海域における軍事協力の強化を進めている。日米同盟の資源は限られており、中国、北朝鮮、ロシアからのすべての脅威に対応することは不可能かもしれない。

 岸田政権下で決定された日本の防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する方針は、資源の制約をいくらか緩和するだろう。岸田の後任である石破茂は、同様の路線を継続すると見られている。ジェット推進のP-1は、筆者の故郷である松戸上空を飛行するP-3Cに代わるもので、さらに騒音がひどい。

 しかし、それだけでは十分ではない。ユーラシアで複数の軍事大国を同時に抑止することは、非常に困難な課題である。日米同盟だけでできることには限界がある。その意味で、日米韓の3カ国による安全保障協力や、豪英米の枠組みは正しいアプローチである。

 今後は、すでに構築されている安全保障協力のネットワークを拡大、強化し、相互に連携させていくことが課題だ。日韓が豪英米の枠組みに加わる構想は以前から議論されている。カナダを加えてはどうか。カナダは北太平洋と北大西洋の両方に面している。日本もカナダのヴィクトリア級潜水艦の更新事業への参加の意向を示しているが、これは商業的な理由だけではない。もう一つの目的は、北太平洋における勢力均衡を維持することである。また、日本と韓国が、韓国海軍と空軍の監視・警戒能力を活用し、対馬海峡や東シナ海での活動を分担することも考えられる。

 ロシアと欧米諸国との間で繰り広げられる海軍ゲームは、年々厳しさを増している。しかし、このゲームに参加するプレイヤーの数に制限はない。これは欧米諸国の同盟国に有利に働く可能性がある。■


Russian Pacific Fleet Redux: Japan’s North as a New Center of Gravity

Yu Koizumi

October 22, 2024

Commentary


 

は東京大学先端科学技術研究センターの准教授小泉悠。

Yu Koizumi is an associate professor at the Research Center for Advanced Science and Technology at the University of Tokyo. After receiving his master’s degree from Waseda University, Yu worked as an analyst for the Ministry of Foreign Affairs and as a think tank researcher, conducting research on Russian military affairs. Since 2020, he has also been vice chairman of ROLES, a diplomatic and security think tank established at the University of Tokyo with funding from the Japanese Ministry of Foreign Affairs. He is known to be a lover of cats and beer.

Image: RIA Novosti archive, image #326075 / Vitaliy Ankov / CC-BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons


B-2によるイエメン爆撃でオーストラリアが果たした役割に疑問が残ったまま(The War Zone)―安全保障は共同実施が当たり前になりつつあるのに日本が集団安全保障を頭から否定しているのはおかしなこと。

 A B-2 Spirit from the 509th Bomb Wing, 13th Bomb Squadron Whiteman Air Force Base, Miss., prepares to be refueled by a KC-135R Stratotanker from the 434th Air Refueling Wing at Grissom Air Reserve Base, Ind. during a nighttime aerial refueling mission.  

Tech. Sgt. Benjamin Mota/USAF



イエメン爆撃の支援にオーストラリアの空軍基地が使用されたが、どの機種の航空機が使用したのか、またどのように使用されたのか当局は口を閉ざしたままだ

空軍は、今週初めにイエメンのフーシ派の兵器貯蔵庫に対するB-2ステルス爆撃機による空爆作戦を支援するため、オーストラリアの空軍基地を使用した。現時点では、オーストラリアの基地を使用した航空機にB-2が含まれていたかどうかについて、混乱が生じている。しかし、米空軍の空中給油機が爆撃機を支援し、オーストラリアから給油作業を行った可能性が高いと思われる。いずれにしても、この動きは米国とオーストラリアの軍事および戦略的同盟関係の拡大を反映するものであり、オーストラリアの空軍基地のアップグレード、特に米国の爆撃機を収容できるようにするためのアップグレードが含まれている。

オーストラリア国防省は、10月16日夜から17日未明にかけてのイエメンへの米国の空爆に対するオーストラリアによる支援には、「オーストラリア北部における米国の航空機へのアクセスおよび領空通過」が含まれていたことを確認している。

オーストラリア国営放送局ABCの報道によると、「北部準州の遠隔地にある空軍基地が、イエメンのフーシ派の地下兵器貯蔵庫に対する今週の米国の大規模空爆の中継基地として使用された」と伝えている。

これは、ダーウィンの南にある遠隔地の施設であるオーストラリア空軍基地ティンダルを指している可能性があり、同基地では米国の爆撃機の展開に適応できるようアップグレードが進められている。作業は2026年後半に完了する。問題の期間における低解像度の衛星画像では、ティンダルにB-2が存在する様子は確認できないが、これは決定的なものではない。オーストラリア北部には、補助施設を含め、他の運用場所の可能性もある。

2024年5月に撮影されたティンダル空軍基地。米軍の爆撃機を支援するための新しいエプロンが建設中。(Google Earth)

その後、同じ放送局が、オーストラリア国防省は、攻撃に参加した米軍機がティンダルから離陸したかどうかについて、肯定も否定もしないと報じた。離陸に重点が置かれているのは、後で述べるように、ここが重要な意味を持つ可能性があるからだ。

ABCのこの件に関する報道はその後、オーストラリア国防省報道官の声明を追加する形で変更され、同報道官はB-2がティンダルから出撃したことはないとしながらも、作戦上の機密保持を理由にそれ以上のコメントはしないと述べた。

B-2が少なくともイエメン空爆後にティンダル基地に着陸したのではないかという推測が数多くなされている。オーストラリア国防省のその後のコメントは、ステルス爆撃機が同基地から出撃した(すなわち、イエメン空爆のために離陸した)のか、それとも同基地に着陸したのかという質問に対する回答であったため、この推測は依然としてあり得る。

米国政府の公式見解としては、同爆撃機は主な運用基地であるミズーリ州のホワイトマン空軍基地から往復したとするが、任務終了後は代替着陸地としてオーストラリア国内基地の一つまたは複数を利用した可能性もある。直行便であれば、文字通り世界を一周したことになる。

米国の爆撃機が定期的にオーストラリアに駐留することは決して新しいことではなく、1980年代初頭まで遡る。また、同国における大規模な訓練演習には、2005年より米国の爆撃機が参加している。さらに最近では、強化航空協力構想が実施されており、2018年より定期的に爆撃機が交代で派遣されるなど、オーストラリア空軍と米国軍の航空機がより緊密に連携する取り組みが強化されている。

近年、B-2は定期的にオーストラリアを訪れており、2022年には4機がクイーンズランド州のRAAFアンバリー基地に配備された。

A United States of America B2 Spirit Bomber takes off at RAAF Base Amberley. *** Local Caption *** During August and September 2024, as part of the Enhanced Air Cooperation Program (EAC), USAF deployed a flight of B-2 Spirit Stealth Bombers and personnel from 110th Expeditionary Bob Squadron (EBS) to operate out of RAAF Base Amberley on a Bomber Task Force (BTF) mission. 110EBS is part of 509th Bomber Wing. Whilst deployed the B-2 aircraft worked closely with air assets of the RAAF enhancing interoperability and bolstering the collective ability to support and free and open Indo-Pacific. [Imagery supplied by USAF and managed by LACW Nell Bradbury].

米空軍のB-2ステルス爆撃機が、クイーンズランド州のRAAFアンバリー基地から離陸する。オーストラリア国防省 CPL ブレット・シェリフ

今年初めには、全翼機爆撃機が再びオーストラリアに飛来し、8月には2機がアンブルリー基地を再び訪れた。

一方、米空軍の空中給油機が空襲作戦を支援するためにオーストラリアの空軍基地を利用したことはほぼ確実だ。衛星画像で裏付けられた写真には、クイーンズランド州ケアンズ空港にKC-135ストラトタンカーとKC-46ペガサス空中給油機が、またRAAFアンブリー基地にはさらに多くのKC-135が、空襲直後に駐機している様子が写っている。B-2がオーストラリアの基地を空襲に利用しなかったとしても、米軍給油機は利用したようだ。「オーストラリア北部における米国の航空機のアクセスおよび飛行」という記述は、これを説明していると思われる。

さらに、オーストラリア政府高官はオーストラリアが提供した支援は「長年にわたる同盟関係の公約と緊密な協力関係に一致しており、両国の軍事力の相互運用性を示すもの」であるとABCに述べた。

「オーストラリアは、国際貿易と紅海の船員の生命を脅かすフーシ派の能力を妨害する米国および主要パートナー国への支援にコミットしています」と、オーストラリア国防省報道官は付け加えた。

空爆により、紅海地域での船舶に対するフーシ派の継続的なキャンペーン遂行能力は低下した可能性が高いが、本誌が以前指摘したように、フーシ派を支えるイランに対して、強力かつ非常に具体的なメッセージを伝える目的もあった。

現時点では、そのメッセージが、イランの核開発計画に関連する極めて強固な施設など、標的を攻撃するのに理想的な兵器であるGBU-57 マッシブ・オーダナンス・ペネトレーター(通称MOP)の使用によって強調されたものなのかどうかは不明だ。特に、今回の攻撃にB-2が使用された事実から、この可能性は高いと思われる。MOPは重量が約3万ポンドあり、B-2のみが運搬可能だ。ステルス爆撃機1機につき、2発ずつ搭載できる。

空軍は使用した兵器の種類を明らかにしていないが、Air & Space Forces Magazine誌は「事情に詳しい関係者」の話として、B-2が2,000ポンドのBLU-109を搭載したGBU-31ジョイント・ダイレクト・アタック・マニュエーション(JDAM)を投下したと報じている。

Multiple munitions maintainers from around the Pacific assemble BLU-109 munitions in the small bomb pad during the Combat Ammunitions Production Exercise May 25, 2010, at Osan Air Base, South Korea. CAPEX is a non-rated exercise held once a year in the Pacific Air Forces region. It provides training on non-nuclear reserve munitions production in integrated tasks orders and planning. (U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Stephenie Wade)

太平洋地域から集まった兵器整備担当者が、韓国の烏山空軍基地でBLU-109兵器を組み立てている。米空軍撮影/スティーフェニー・ウェイド軍曹 スティーフェニー・ウェイド軍曹

BLU-109は、貫通弾頭を持つ精密誘導爆弾です。B-2は16発の同兵器を搭載できる。また、5,000ポンドクラスのバンカーバスターが使用された可能性もあるが、B-2での正確な状況は不明だ。

当時お伝えしたように、B-2がバンカーバスター弾を使用したかどうかに関わらず、今回の空爆は、米国が「地下にどれほど深く埋められ、硬化され、要塞化されていても」、重要な施設を標的にする能力があることをイランに明確に示すものだった。イランの名前こそ挙がっていないものの、その含意は極めて明白です。

米国への支援を認めながらも、特に紅海の船舶を標的とするフーシ派の能力を鈍化させる取り組みについて、オーストラリアもイランの名前を挙げていない。

ダーウィン選出のルーク・ゴスリング議員はオーストラリアは北部で「米空軍と非常に緊密に連携」しているとABCに語った。

また、ゴスリング議員は「オーストラリアは同盟国と足並みを揃え、オーストラリアの安全と繁栄を維持するため、ルールに基づく秩序を維持している」と付け加えた。

オーストラリアと米国の関係が深まっていることを示す最も明白な例は、AUKUSイニシアティブだ。これは幅広い取り組みで、目立った項目としては、オーストラリアへの原子力攻撃型潜水艦の供給や、情報共有の強化などが挙げられる。

同時に、米国はティンダルへの爆撃機の配備を強化するとともに、他のオーストラリアの空軍基地にも爆撃機を派遣しており、ワシントンは同地域における軍事的プレゼンスの拡大を継続している。

ティンダル空軍基地のアップグレード工事には、最大6機のB-52戦略爆撃機を駐機できるエプロンの拡張、飛行隊の運用施設、整備インフラの整備が含まれる。完成すれば、同空軍基地には爆撃機部隊だけでなく、空中給油機や戦闘機も駐機できるようになる。また、燃料や弾薬の貯蔵庫やミッション計画用の建物の整備も行われる。

ティンダルでの作業や、AUKUSおよびその他の関連開発は、中国に対する抑止力として広く認識されている。その認識は依然として正しいが、オーストラリアにおける米軍のプレゼンス拡大が、中東の標的を攻撃するためにも活用されていることは明らかだ。

重要なのは、ティンダル空軍基地が、ハワイ、グアム、そして同じく広域地域にあるディエゴ・ガルシアに加えて、米軍爆撃機が活動する新たな前進作戦地域となることだ。空中給油機の支援があれば、爆撃機が中東やその他の地域での作戦を支援するために同基地を使用できない理由はない。

ティンダル空軍基地または他の基地が、戦闘作戦を行ったB-2に初めて使用されたかどうかはまだ不明だが、イエメン上空での航空作戦支援にオーストラリアが利用された事実は、それ自体が、米国との軍事協力が拡大しているこの時期で重要な進展となった。■

Questions Linger Over Australia’s Role In B-2 Spirit Strikes On Yemen

Thomas Newdick

Posted on Oct 18, 2024 4:35 PM EDT

https://www.twz.com/air/questions-linger-over-australias-role-in-b-2-spirit-strikes-on-yemen


ロシアの北極圏での活動強化へ西側が懸念(USNI News)―日本にとっても他人事ではない


北極海航路の地図。NOAA画像



米国・同盟国は、北極圏の情勢が複雑化する中、予測不可能なクレムリンと格闘を迫られる


イスランド上空にまだ太陽が昇らない中、米統合参謀本部議長であるCQ・ブラウン大将が、米国とその同盟国が北極圏で高まるロシアの脅威に対処する方法をシミュレーションするため、米海軍の対潜哨戒機に搭乗した。

 ブラウンはアイスランドに2日間滞在し、北極圏の安全保障(物理的および経済面)について話し合うために、北極圏の国防長官らと会談した。その会合に出席しなかった北極圏の国がひとつあった。2022年2月にウクライナに侵攻して以来、北極圏国防長官会議に招待されていないロシアである。

 ロシアの北極圏での活動に対する懸念は新しいものではない。米国は、ソビエト連邦が潜水艦パトロールで北大西洋での影響力を主張していた頃から、懸念を抱いていた。アイスランド政府高官は、最近同地域を訪問した際に、USNIニュースとワシントン・ポスト紙の取材に対し、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに侵攻して以来、北極圏諸国はますます予測不可能なロシア政権に対処していると述べた。

 「問題は技術的能力だけではありません。意図が問題なのです。だからこそ、(潜水艦の)航行を監視することが非常に重要です」と、同高官は10月中旬のアイスランド訪問中にUSNIニュースに語った。「…(これはロシアが)より大きなリスクを負うことを厭わない国であり、実際にウクライナで民間人を意図的に爆撃している毎日です。そして、潜水艦や航空機を運用しているのは、まさにその政府なのです。ですから、私たちは警戒を怠るわけにはいきません」。

 ロシアによる北極圏での軍事活動の活発化、すなわち北極圏の統治体制の変更を試みる動きは、この地域の課題をさらに増大させる。


2024年10月10日、アイスランド沖で、対潜戦シミュレーションでP-8Aに搭乗する統合参謀本部議長、CQ・ブラウン・ジュニア大将。DoD Photo

 米海軍艦隊司令官ダリル・コードル大将Adm. Daryl Caudleにとって、北極は大きな懸念事項である。その理由の一部は、米軍の捜索・救助能力の不足、氷の融解に伴う北極での商業船や軍艦の増加、そして中国が北極圏に面した国であると主張していることにある。

 ロシアは広大な北極圏国家であり、その北部国境は北極海沿岸の40パーセントを占める。ロシアは南シナ海で中国が行っていることと同様に、北極海を自国のものにしようとしていると、コードルはUSNIニュースに語った。

「さらに、『高緯度北極圏』は、北極圏上空から始まる、あらゆる側面での海洋国土防衛を行う能力において、依然として第一防衛線となっています」と、コードルはUSNIニュースに電子メールで述べた。

 アイスランドは北米とヨーロッパの北極圏諸国を結びつける存在である、とアイスランドの外務大臣ギルファドッティルThórdís Kolbrún Reykfjörd GylfadóttirはUSNIニュースに語った。アイスランドは米国との長年にわたる関係を重視している、とギルファドッティル外相は述べた。アイスランドは、米国がロシアの潜水艦を陸上および海上から追跡する上で重要な拠点となっている。アイスランドに軍隊はないが、米国に依存しながらも、航空監視を提供することができる。米国もまた、ケプラヴィーク空軍基地に多数の兵士を派遣しており、P-8Aポセイドンによる北大西洋での飛行任務を行っている。

 グリーンランド、アイスランド、英国間の海域は海上交通の要衝となっているが、潜水艦の追跡は、冷戦期の米ソ間でピークに達していた。 アイスランドの外務大臣は、ロシアによるクリミア併合後の2014年に再び活発化したと述べている。 ウクライナ紛争が続く中、北極圏におけるこれらの資産はますます活発になっている。

「私たちはそれを目にしており、また、彼らがその点において非常に強力であることも知っています。そして、それは私たちにとって懸念すべきことです」とギルファドッティル外相は述べた。


ロシアの北極圏における意図

ロシアの砕氷船ヤマル。ロシア海軍提供


 ロシアは、大西洋を上回る形で、北極圏を海洋における最優先事項と考えていると、元米第2艦隊司令官のダン・ドワイヤー海軍中将Vice Adm. Dan Dwyer は、昨年の海軍協会会議で述べた。

 モスクワは「最重要の海上戦略で北極を優先しており、あらゆる手段を講じてこの海域を守ると誓っている。これには北極沿岸への注目度を高めることや、新たなミサイル能力の導入も含まれる」と彼は述べた。

 これには、6つの軍民共用基地、1ダースの飛行場、少なくとも40隻の砕氷船の運用も含まれる。

 北極への重点は軍事的なものだけでなく、経済的なものも増えていると専門家はUSNIニュースに語っている。

 モスクワは、北極圏をエネルギーと天然資源の戦略的供給源と見なしており、クレムリンは同地域における科学的調査を継続したいと考えていると、北極研究所の上級研究員パヴェル・デヴャトキンPavel Devyatkin は先週、USNIニュースに語った。

 また、ロシアは、北極海航路の船舶航路を管理し、軍事的プレゼンスを通じて、同地域における経済的利益と安全保障上の利益の両方を保護したいと考えている。


 ロシアの北極圏における軍事的プレゼンスはソビエト時代にピークに達し、国防費の新たな増加により、同地域での活動が拡大しているが、それでも冷戦時代のピークには及ばない、とデヴィャトキンは述べた。

ロシアの北極圏に対する姿勢は、2023年の国防戦略という観点では、国際協力よりも国内重視である、とデヴィャトキンは、ニキータ・リプノフとの共著で北極研究所に寄稿した。

 昨年、ロシアは中国の南シナ海政策を手本として、北極政策2035を改定した。2023年の北極政策2025改定では、クレムリンは同地域における自国の国益を強調し、北極評議会との協働より各国と二国間で対応する方針を示した。

 これは、他の北極圏諸国がウクライナ侵攻に抗議しモスクワとの協力を避けていることによる。ロシアは依然として北極圏の経済問題を扱う協議会のメンバーであるが、過去2回の北極圏防衛担当相会議には招待されていない。

 代わりに、ロシアは中国のような北極圏以外のパートナーに目を向けているとデヴィャトキン氏は述べた。

「北極圏はロシアにとって経済の見通しに重要な意味を持つ微妙な地域です。西側諸国の市場とパートナーを失ったことで、北極圏のエネルギープロジェクトには大きな問題が生じていますが、ロシアは(国内の大手企業が主導する)この地域への大規模な投資を継続し、長期的にはこれらのプロジェクトの実現可能性に自信を持っています」と、USNIニュースに電子メールで回答した。

 科学誌『ポーラー・サイエンス』の記事によると、ロシア・ウクライナ戦争により、ロシアは北方艦隊に重点を置く可能性が出てきた。ウクライナ軍の攻撃を大きく受けた黒海艦隊は、実質的には黒海に足止めされたななだ。一方、バルチック艦隊は、現在、ほとんどがNATO諸国に囲まれている。

 「ヨーロッパ北極圏のコラ半島を拠点とする北方艦隊は、ヨーロッパに拠点を置く唯一のロシア艦隊であり、大西洋、ひいては世界の海洋に直接アクセスできる」と記事には書かれている。また、北方艦隊はロシアのほぼすべての原子力潜水艦を保有しているとも指摘している。

ギルファドッティルは、北極圏の国々は地域の緊張を低く抑えたいと考えているが、誤算や誤解が軍事行動につながる可能性も考慮しなければならないと述べた。


北極圏諸国の懸念

ロシアの潜水艦K-561カザン。ロシア海軍の写真


 米英両国は、北極圏および北大西洋におけるロシアの潜水艦活動へ懸念を強めている。昨年、英国政府高官は、英国周辺およびアイリッシュ海でロシア潜水艦がより多く活動しているのを日常的に目撃していると述べた。

 またギルファドッティル外相は、ロシアの潜水艦の監視活動が活発化していることに言及した。

「この島周辺およびその地域で潜水艦の監視活動が活発化しているのには、それなりの理由があると言えるでしょう」と彼女は述べた。

 昨年、長距離陸上攻撃ミサイルを装備したヤセンM級のミサイル潜水艦「カザン」がカリブ海での演習に向かったと、USNIニュースが当時報じていた。

 ロシアの最新鋭の攻撃型原子力潜水艦の能力と、高緯度からヨーロッパの標的を攻撃する能力が、米海軍が第2艦隊を再編成した主な理由であると、USNIニュースは理解している。

 さらに、モスクワは、北大西洋の主要港湾都市を攻撃するために設計された、スクールバスほどの大きさの核弾頭付き魚雷を発射する新型の「終末」型潜水艦を開発していると、USNIニュースは以前に報じている。

2022年に引き渡された最初のプロジェクト09852ベルゴロドは、ロシアの北洋艦隊に配属された


 脅威の高まりを受け、コーデルのような当局者は、ロシアが北極圏に及ぼすリスクについて、より多くの警告を発している。北極圏は、人々の視線や関心からやや離れた場所にあるが、モスクワはそこに軍事的プレゼンスを確立しており、砕氷船、潜水艦、航空機を使用して、その地域をパトロールしていると、コーデルはUSNIニュースに語り、モスクワが北極圏に優先順位を置いている証拠として、ロシアの国家安全保障上の利益を指摘した。

 同司令官は、これは米国がこの地域での存在感を増大させる必要があることを意味すると述べている。そこで、空母打撃群、例えばハリー・S・トルーマン(CVN-75)のような艦隊が投入される。米国はまた、潜水艦艦隊でこの海域をパトロールしている。

 米国は、アイスランドのような同盟国とのパートナーシップを強化し続け、この地域により多くの安全保障と能力をもたらそうとしていると、同氏は指摘する。

 アイスランド政府高官は、NATOにスウェーデンとフィンランドが加わったことが強さの要因のひとつであると述べた。北欧諸国はすべて同盟国となった。

 しかし、スウェーデンとフィンランドは正式加盟する前から、北欧諸国やその他の北極圏諸国との緊密な関係により、これらの国々はしばしば作戦に参加していると、同高官は述べた。


中国による領有権主張

中国の砕氷船2隻。2019年 中国写真

 ウクライナ侵攻により北極圏諸国がロシアを孤立させた結果、ロシア政府は中国との提携を模索しているとデヴィャトキンは述べた。同氏は、2022年と2023年にアラスカ近海でロシアと中国の軍艦が合同演習を行ったことを、両国の戦略的協力の兆候と指摘した。

 夏には、ロシアと中国の爆撃機がアラスカ沖で合同パトロールを実施し、さらに最近では、中国の沿岸警備隊がロシア沿岸警備隊とともに北極圏で目撃されたと彼は述べた。

 「ロシアの政策立案者の観点では、この演習は中国との関係構築に役立ち、また北極圏の西側諸国に対して『ロシアは北極圏で孤立していない』というシグナルを送るものだと考えられます」とデビャトキンは述べた。「しかし、ロシアが自国の防衛施設が集中する北極圏に匹敵するような中国の軍事的プレゼンスを恒久的に許容する可能性は低いでしょう」。

 中国は、北極圏に物理的な国境線を持たないにもかかわらず、北極圏に近い国となることを目指している。USNIニュースは以前、10月初旬に中国沿岸警備隊がベーリング海で活動を行い、中国の研究が拡大していると報じた。

 中国とロシアの協力関係の拡大はアイスランドにとって懸念事項であると、同高官は述べた。

 アイスランドは中国と外交関係を結んでいるが、アイスランドは依然として、グローバルなルールに基づく秩序に関連する北京の行動を懸念しているとギルファドッティルは述べた。アイスランドは南シナ海から遠く離れているが、西太平洋における中国の侵略的行動はアイスランドにとって懸念の種であると彼女は述べた。

「大国が他の海域で国際法や国際システムに則らないことを行えば、当然ながら、海に囲まれた島国であるアイスランドは懸念を抱くべきでしょう」とギルファドッティルは述べた。

氷が減り、水が増える

 ロシア、そして潜在的に中国が北極圏に与える脅威を除けば、最も差し迫った懸念事項のひとつは、船舶航行が北に向け増える中での捜索救助能力だ。

「ベーリング海峡と北東航路を通る海上交通量は、海氷の後退と、ウクライナ侵攻後のロシアの経済要因の変化により増加している。これは、辺境で人の訪れにくい地域における環境リスクをもたらす」と、先週発表された沿岸警備隊の「2024年の業務体制」声明に記されている。

 「氷冠が溶けると水が増える」と、沿岸警備隊大西洋方面司令部のネイサン・ムーア中将Vice Adm. Nathan Mooreは先週、米国海軍協会での討論会で述べた。

 「水が増えれば私たちの仕事になる」とムーア中将は語った。

 沿岸警備隊は国防総省の一部ではないが、砕氷船を運用している。

 沿岸警備隊にとって、北極海の氷が減少するということは、航行可能な海域が増えることを意味する。 しかし、特に捜索救助のためのインフラが、船舶航行の増加に対応できる状態にないため、問題が生じる可能性もある。

 北極海での捜索救助の問題は、問題が発生した場合に迅速に船舶に駆けつけられる手段がほとんどないことだ。氷が障害となっている。また、近隣に拠点がないことも問題だ。 沿岸警備隊はアイスランドのようなパートナーと協力し、利用可能な手段を強化している。

 米国沿岸警備隊は、8隻の砕氷船を必要としているが、新しいタイプの極地警備用カッター船の建造が遅延と予算超過に苦しめられているため、艦隊再編に苦労している。

 アイスランドに軍隊はないが、沿岸警備隊があり、捜索救助活動に貢献しているとギルファドッティル外相は述べた。アイスランド政府高官は、北極圏を旅行する人にとって安全対策は重要であり、天候によっては救助に数日かかる可能性があると付け加えた。

 カナダも捜索救助活動の一翼を担っており、フィンランドも同様であるとムーア中将は述べた。フィンランドは国土の規模に比べて多数の砕氷船を保有している。

 米国に捜索救助能力がないため、米海軍は一般的に極地の氷冠上での演習には参加しないと、コードルは述べた。捜索救助能力は、特に氷の量が減少するにつれて商業交通量が増える可能性が高まるため、すべての北極圏諸国にとって懸念事項だ。

 「北極圏で何か悪いことが起こるだろう」とムーア中将は述べた。■


Russia’s Arctic Rise

U.S., Allies Wrestle with an Unpredictable Kremlin as the Arctic Grows More Complex

Heather Mongilio

October 29, 2024 7:46 PM

https://news.usni.org/2024/10/29/russias-arctic-rise