2024年12月2日月曜日

米海軍は重要な造船技術を失うリスクにさらされている(Defense News)―米国に今こそ労働政策と合体した産業政策が必要です。日本や韓国の既存インフラだけでは米軍の需要には答えられません。

 





国では約210万人の製造業の雇用が2030年までに失われる可能性がある。これはアメリカの労働者にとって機会損失であるだけでなく、ここまで大規模な製造業雇用の消失はアメリカ経済に悪影響を及ぼし、10年後までに1兆ドル以上の損失をもたらす可能性がある。

 その代償の一部として、生産能力の低下、効率的な新技術の限定的な採用、全体的な開発・革新ペースの鈍化が現れるだろう。 

 経済的な意味合いだけでなく、国防製造に携わる雇用の空白は、わが国の安全保障にも重大な影響を及ぼす。 

 なぜこのなったのか? 海事産業基盤に目を向けると、1990年代半ばの冷戦後の予算削減が海事生産の縮小につながり、かつて隆盛を誇った海事産業は分裂し、脆弱な状態に陥った。 

 サプライヤは生産拠点を移したり閉鎖し、緊密に統合されていたサプライチェーンが分断されてしまった。 

 労働者は製造現場から離れ、転職し、膨大な技能格差を生み出した。  現在、潜水艦建造だけでも14万人近くが不足している。また、現在残っているサプライヤーでも、製造やメンテナンスの長年の経験がありながら退職していくベテラン従業員に代わる、新しい若い熟練工が不足している。 

 世界的に脅威が拡大している中で、これらすべてが艦船建造とメンテナンスの停滞につながっている。 

 米海軍が直面している最重要課題は、海上産業基盤全体の生産能力を拡大・維持し、海上抑止力を再強化し、有能で永続的な海上プレゼンスを常時保証することである。 

 そのため海軍は最近、コロンビア級潜水艦1隻とバージニア級潜水艦2隻の計3隻の新型潜水艦を毎年建造・維持する「1+2ミッション」を開始した。 

 これは、造船とそのサプライチェーン、海事労働力を活性化させるための、一世一代の大事業といってよい。 

 課題は国家規模であり、国全体の調整と協力が必要だ。このような規模での能力、キャパシティ、コラボレーションの向上は、地方特有の強みとニーズを理解することにも大きく依存する。そのためには、地域のサプライヤーや労働力イニシアティブに力を与える一方で、海事産業全体を活性化し、製造業でのキャリアに伴う誇りと満足感を新たにすることに焦点を当てた、結束力のある全国的なネットワークを構築する、中立的で統合された国全体のアプローチが必要となる。 

 こうした課題に取り組み、アメリカの海事産業基盤と製造業全体を活性化させようとする良い取り組みが行われている。海軍が既成概念にとらわれないさまざまな取り組みを行っているひとつに、2022年に筆者が戦略諮問委員会の委員長を務める非営利団体ブルーフォージ・アライアンスBlueForge Allianceとのパートナーシップがある。 

 海事および潜水艦産業基盤のインテグレーターとして海軍が指定したこの中立的で公平なパートナーは、サプライヤー開発、労働力の有効化、先端製造技術の戦略的導入に重点を置いている。こうした独自のアプローチにより、海軍は造船業者、サプライヤー、熟練労働力の統合に成功し、海事産業基盤の成長と維持を実現している。 

 わずか2年足らずで、潜水艦産業基盤に直結するサプライヤーに2億7300万ドル以上を提供し、生産能力と能力を拡大した。 

 潜水艦や海事産業基盤のニーズに直結する熟練技能の訓練を受けた者は4,000人を超え、2023年には前年比41%増の10,000人以上が雇用された。 

 さらに、ブルーフォージ・アライアンスが運営するBuildSubmarines.comウェブサイトは、1100万件以上のアクセスを集め、求人情報56万件以上と140万件以上のクリックによる応募につながった。 

 最近の先端製造業の進歩は、潜水艦の産業基盤を変革し、生産能力と生産能力の向上を促している。積層造形(AM)、自動化、ロボット工学、非破壊検査(NDT)など最先端ツールの採用を通じて、産業基盤はリードタイムを短縮し、品質、安全性を向上させ、全体的なパフォーマンス指標を高めている。 

 自動化されたフェーズドアレイ超音波探傷検査(PAUT)とAI駆動のX線透視検査は、再現性と品質管理を向上させながら、検査時間を大幅に短縮している。 

 一方、海軍固有のAMプロセス材料の組み合わせの認証により、サプライチェーンのボトルネックが解消され、重要部品の製造に迅速かつ柔軟な代替手段を提供できるようになっている。

 こうした技術的努力は、サプライチェーンの弾力性と敏捷性を高めるだけでなく、海軍の増大する需要に応え、長期的な成功を維持するために、海事産業基盤をより良いものにする。 

 政府、企業、地域社会の垣根を越えて、地元と全国で協力し合えば、製造業の復活を通じアメリカ経済を活性化できることは明らかだ。 

 米国の海事製造業は、ダイナミックな成長の可能性を秘めた、安定した、やりがいのある、有利な職業に就くチャンスを個人に提供することができる。 

 そして最も重要なことは、我が国を守る人々により良い装備を提供できることだ。■ 


スティーブン・ロドリゲスはOne Defenseの創設者であり、アトランティック・カウンシルのコミッション・ディレクターである。


The US Navy is at risk of losing vital shipbuilding skills

By Stephen Rodriguez

 Nov 9, 2024, 07:02 AM


https://www.defensenews.com/opinion/2024/11/08/the-us-navy-is-at-risk-of-losing-vital-shipbuilding-skills/


1 件のコメント:

  1. ぼたんのちから2024年12月2日 20:35

    この記事で紹介されているように、米海軍の艦艇等の生産能力が順調に拡大しているなら、何も問題が無いはずである。しかし、本ブログの11月30日の記事、「主張 今こそ…」は、不都合な別の側面を明らかにしている。
    それは、米海軍は、絶望的に艦船の建造能力が低く、当分、海軍の要望を満たせそうにないことである。この記事のように、部分的な改善はあるものの、十分な生産能力を得るためには、この先何年もかかる。このためPLANに対抗できる能力は、当分減少傾向になるのは避けられない。
    PLANに対抗するのは、海軍力だけではないから、海軍力の衰退による弱点は、例えば空軍力で部分的に補えるかもしれないが、米国の世界覇権は、主に海軍力により維持されていると考えれば、米国の行く末に深刻な問題を引き起こすことになる。
    対テロ戦争の間、米海軍は、慢心していたとしても、とんでもなく愚かな連中が、海軍を指揮していたと言うことだろう。このツケは大きく、もし、習が世界覇権を狙うような賢明な指導者ならば、この絶好な機会に覇権を争おうとするだろう。
    幸い、習は、衰退する経済対策とPLA幹部の粛清に熱中しており、米国は、この僥倖を逃さず、海軍の再構築を行える機会を得ることができる。
    米海軍は、艦艇の全てを自国で建造しようとする狭い料簡を捨て去り、他国にも建造を依頼すべきだろう。だが、残念だが、高慢な海軍幹部はそれを避けると思料する。

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