2011年6月26日日曜日

軍事宇宙予算削減の動きに憂慮を示すホワイトハウス

White House Raises Milspace Concerns In Bill

aviationweek.com Jun 24, 2011


オバマ政権は下院の2012年度国防予算案に対して国防宇宙開発・衛星整備の計画を遅延させるあるいは製作意図から逸脱擦る可能性があると警告した。
  1. ホワイトハウス声明では下院法案2219号が採択されると影響を受ける内容として通常兵器迅速世界規模攻撃(CPGS)、深宇宙気候観測(Dscovr)用の宇宙機および単一戦域内衛星通信確保業務(Assist)があるという。
  2. さ らにロッキード・マーティンが中心となり開発中の中距離拡大防空システム(Meads)の中止の文言が同法案に入っていることで、共同開発国のドイツ、イ タリアも中止に追い込まれ、結果として島嶼提案時の費用を上回る資金投入が必要となるとホワイトハウスの行政予算部門(OMB)は見ている。
  3. CPGS に関してはオバマ政権は前政権がこれまでに提示していた論点を再度強調しており、その内容は現行の核兵器を中心とした長距離攻撃体制では「迅速かつグロー バルの非核戦力攻撃能力を実現できない」としている。今後配備すべき新規システムには通常兵力を搭載した大陸弾道弾を地上あるいは海上配備することも含ま れるが、下院歳出委員会の法案内容のままだと配備が最大二年間遅れるという。
  4. Dscovr では下院歳出委員会の認める空軍のロケット打ち上げシステム開発への支出規模ではペンタゴンによる宇宙機打ち上げが困難となり、商務省との合意で作った計 画が実施できなくなるという。Dscovrは太陽フレアなど悪条件がある中で間近に迫りつつある磁気嵐の発生予想ができるが、これにより電力網、通信網、 民間航空運航など民間部門にも適切な管理が可能となる。
  5. AssistについてOMBは現時点で同衛星を取得することが「はるかに費用効果が高い」選択肢であり、下院法案のままだとペンタゴンは商用衛星のリース利用を続けることになり、ワイドバンドグローバル衛星の利用開始が「複数」年度遅れるという。
  6. 民 間業界側も下院法案の内容に対して警鐘を鳴らしており、「経済情勢からの予算節約は理解できるものの、宇宙関連の予算削減が行き過ぎだとの懸念を強く感じ ている」(航空宇宙産業連合会Aerospace Industries Association)と声明を発表している。
  7. 同 会によると宇宙関連の予算削減は非公開分を除くと6億ドル相当になるとしており、政権側が当初要求した102億ドルに対して相当の比率だという。同会は要 求案どおりの全額予算化に加え、ペンタゴンの宇宙関連効率的購入モデルによる段階的調達方法を議会が支持することも求めている。
  8. 一 方、政権側の発表文書では議会が予算削減を推し進めるのであれば大統領権限そのものの侵犯でありホワイトハウスとしては拒否権の行使も辞さないとしてい る。その反面、下院の有力議員からは大統領との対立そのものに異議を唱える動きもあり、国防支出小委員会のジム・モラン下院議員(民主 ヴァーモント州) は下院はホワイトハウスは国防支出法案をめぐり合意ができるので、拒否権行使に至る事態は想定していないと発言している。

サイバー作戦はISRの重要手段にすでになっています

Cyber-Ops Become Critical ISR Tool

aviatonweek.com Jun 24, 2011


サイバー作戦が急速に情報監視偵察(ISR)分野で重要な要素になってきた。また、今後敵対勢力や潜在的な敵国の状況を把握する際の中心的手段になる可能性が出てきた。


  1. すでにサイバー侵入が米国に対して実施されており、しかもくり返し試みられているため今や専門用語とし高度持続的脅威advanced persistent threat (APT)の名称がつけられているほどだ。
  2. 「通 常は発生源を突き止めることは明確にできないものの、APTが中華人民共和国から来ていることはみんなが知っていることです。」(クリストファー・フォー ド、ハドソン研究所の技術安全保障センター所長) 重要なのは「APTはこれまでスパイ活動の一部」(フォード)だったものがサイバー戦にエスカレートす る可能性があることだ。
  3. 情報部門の関係者も同じ意見だ。国防長官に就任する前の公聴会でパネッタ前CIA長官は「次のパールハーバーはサイバー攻撃となる可能性大で米国の電力網、パイプラインを使用不可能とし、金融証券及び政府の各種システムもダウンする可能性があります」と証言している。
  4. 「情報を盗む目的でアクセスがされていますが、これが悪意のあるコードでクラッシュさせる、あるいは基幹コンピュータシステムを操作することに使われる可能性があり、すでに実行されているかもしれません」(フォード)
  5. もう一人のサイバー専門家ジェームズ・マルヴェノン(Defense Group Inc)も同じ意見だ。ISR/サイバー偵察活動は第二次大戦時の「ウルトラ」暗号解読作戦と同じだとする。
  6. 「中 国がリアルタイムで内部情報、戦略的な方向性、民間の通信内容を入手するこの手段を諦めるとはとても思えません。まだ大量のサイバー攻撃は受けていません が、サイバースパイ活動ならすでに多くの事例があります。相手側はサイバースパイ攻撃を続けるために当方の対応を注視しているのです。」(マルヴェロン)  一方でその他諸国に対しては国際的な取り決め条約の形でサイバー攻撃の使用を制限するよう説得する必要があるという。
  7. 米国はすでにこの脅威に対応している。新しい政府のガイドラインではサイバー手段を海外のネットワークに使用して情報経路・接続点を事前に把握することが軍に許可される。このネットワーク侵入では時限爆弾となる組み込みソフトを使用しない受動的なものになるだろう。
  8. す でに各種のサイバー手段が確立されており、敵のサイバー防衛の経路は偵察ずみで、目的に応じて仕様が確立されている。先制攻撃は許可されていないが、新ガ イドラインでは防衛のためには専門機関が報復的な攻撃をし、敵の攻撃を阻止し、海外のサーバーを使用不能にすることができる。
  9. ただし、脅威がすべて中国が機嫌であるとは同意しない向きもある。「ハッカーは米国だけでなく中国も攻撃していますし、特定の国家によるものとは思いません」(崔天凱外交副部長)とハワイで米側との協議の前にコメントしている。
  10. 「国際社会は何らかのルールを作り高度技術の悪用を防止すべきだ。中国は米国が各国との協調共同体制を強めるべきと期待し、高度技術が破壊手段として使用されることのないよう希望します」(同副部長)

コメント 中国を敵国と断言しているのがポイントです。サイバー安全保障をテーマにすでに米中が接触しているのですね。新しいガイドラインはこれまでよりも踏み込んでいる内容ですが、それだけこの分野が重要性を増しているということですね。ネットワークを部隊とした情報戦が航空宇宙手段に同反映されるのか、補完するのかを考えるべきなのでしょうね。

2011年6月19日日曜日

2012年度国防予算案に新型爆撃機を計上した米下院

House Panel Adds $100M For Future Bomber

aviationweek.com Jun 13, 2011



米下院歳出委員会は2012年度国防予算法案原案の審議を始め、6月14日に1億ドルを追加し、新型爆撃機の開発競争を促す意向だ。

  1. 国 防予算案は総額6,490億ドル規模でその詳細が国防小委員会で検討されている最中だが、本誌はその一部を入手した。その一部としてボーイングC-17A 一機を昨年エルメンドーフ空軍基地で事故抹消された機材の穴埋めとして225百万ドルで調達することが明記されている。
  2. 予 算案では削減を追及し、空軍研究開発勘定では14億ドル相当が過剰請求分としてカットされている。その中には極地周回環境観測衛星システム(2.2億ド ル)、ロケット打ち上げシステム(1.24億ドル)、さらにオバマ大統領から直接要請のあった高性能超高周波衛星開発(67百万ドル)が含まれる。
  3. さらに法案には以下の文言が加えられている。ボーイングKC-46A給油機開発では空軍に5百万ドル以上の変更が発生した場合は議会への通知義務を30日以内に行うこととした。
  4. 同法案が成立するまでにはまだ多くの難関がある。上院が歳出内容の検討を開始するのは9月になりそうだとする観測もある。

2011年6月18日土曜日

電動UAV新型機で大きな進展を示すイスラエル

Electric UAVs Jolt Performance

aviationweek.com Jun 16, 2011

イスラエルで進行中の小型UAVに電動モーターを推進力とするものが複数あり、さらに水素燃料電池を利用するものもある事が判明した。各型は戦術利用を想定しており、データリンク含むペイロードを搭載する。

  1. 電 動モーターはこれまでも小型、超小型UAVで使用されているが、今回の事例は設計・性能両面で大きな変化をもたらすものと専門家は見ている。電動モーター の利点に低燃費、静寂運転、機体重量の軽減、運動・音響両面での捕捉可能性の低減があり、UAVのステルス性、生存性を高くできる。
  2. 特殊部隊がイスラエル航空宇宙工業IAI)製ティルトローターUAV(重量65キログラム)への関心を示している。同社は特許取得済みの垂直離陸垂直着陸VTOL機能をもつ2機種、パンサーとミニパンサーを開発済みだ。
  3. パ ンサーには固定翼機の性能にVTOL機のホバリング性能が加わり、ティルトローター2基と垂直離陸用の補助プロペラを備える。これによりパンサーは滑走路 を必要としない。特殊部隊にはこれまで大型機でしか利用できなかった機能を提供できる。パンサーには電動モーターを三基搭載し高度10,000フィートで 6時間滞空することができる。運用飛行半径は60Km で、IAI製MiniPOPマルチセンサー電子光学式EO昼間夜間ペイロードを搭載し、振動制御式のカメラ、測距装置、レーザー測距装置を含む。
  4. ミニパンサーは低高度飛行用で、重量は12Kg。飛行時間は2時間だ。搭載するのはPOP EO振動制御装備で運用は兵員2名で運搬する。
  5. 両機種に超低騒音モーターが搭載されている。パンサーの飛行制御には自動飛行移行制御モードがあり、ホバリングから前進飛行への移行をスムーズに実現できる。これにより同機の離陸着陸は操作員がクリックすることで完全自動で行える。
  6. こ れとは別の電動UAVは航空国防システムズAeronautics Defense Systemsが開発したマイクロオービターMicro-Orbiterで最大離陸重量は6.5Kg 。全翼機のオービターの全長は1メーターで翼巾は2.2メートルだ。ペイロードは1.2kgで10,000フィートまで上昇できる。飛行時間は最大90 分。同機の飛行は完全自動式で、10倍ズームカラーCCDセンサー・ペイロードを搭載する。オプションの暗視センサーもある。D-Stamp昼光ペイロー ドは650グラムしかない。さらに高性能エイビオニクス、GPS、慣性航法装置、データリンクを組み入れ同機は最大15Km地点からリアルタイム画像の発 信が可能だ。
  7. IAI には ミニチュアUAVとしてバードアイ650 BirdEye 650もある。用途は情報収集、監視、偵察(ISR)で、高度1,000フィートを飛行してリアルタイムで敵戦闘部隊の情報を伝える。衛星通信データリン クを介して移動式地上指令所に画像情報を送ることも可能だ。
  8. 同 機には陽子交換膜燃料電池をエアロパックAeropakの名称で搭載している。開発はシンガポールのホライゾンエナジーシステムズHorizon Energy Systemsで、飛行時間は6時間までとなる。これはリチウム電池を動力の前型の二倍以上にあたる。エアロパックは最高出力600ワットで、全体重量が 2Kg 以下の場合は900ワットとなる。
  9. エルビットシステムズElbit Systems は同社のスカイラークSkylark I-LE mini-UAVsでエアロパックをテストしている。
  10. 戦場を想定して実際のペイロードを搭載したミッションテストで、スカイラークは様々なシナリオでテストされている。離着陸の反復で燃料電池の耐久性が試された。

2011年6月12日日曜日

737軍用需要を総計150機と見るボーイング


Boeing Sees Big Special-Mission 737 Market

aviationweek.com Jun 9, 2011


ボーイングは737の軍用専用機需要を150機程度の規模があると見ており、その範囲はP-8海洋哨戒機またはウェッジテイルWedgetail 早期警戒機だけにとどまらない。

  1. この予測の根拠は現在C-130、P-3や707改造機が投入されているミッションの機材更新需要だ。
  2. そこであらたな顧客をとり込むべくアラブ首長国連邦、インド、日本にはウェッジテイルの需要があるとし、すでに同機の購入を決定 しているオーストラリア(6機)、韓国・トルコ(各4機)に加えたい意向だ。ボーイングは各国15機程度の需要があると見ている。
  3. P-8については米海軍は117機、インドは8機の導入を決定している。その他、オーストラリア、カナダ、サウジアラビア、ノルウェー、イタリア向けにも75機程度の導入が可能として政府間交渉が続いている。
  4. 別の動きもある。EC-130コンパスコール通信妨害ミッション機、WC-135コンスタントフェニックス大気サンプル収集機、オープンスカイズ機(条約に基づく上空査察飛行)の代替機材としての可能性だ。
  5. コンパスコールのミッションには737が適当とは見られないが、ボーイングはミッションそのものの進展で同機でも十分任務を実施できるはずと見ている。
  6. 海軍向けの特殊仕様P-3各機、空軍のRC-135リベットジョイント情報収集機の更新機材にする案も検討されている。総需要は50機程度と見ているがまだ提案段階ではない。
  7. そ んな中で一番実現性が高いのが空中地上監視用途への利用で、現在は707改造のジョイントスターが運用されている。米空軍は機材更新の検討をしているが、 ボーイングは737案が運行支援、燃料消費量の点からも一番効果が高いと主張する。この用途での需要は15機以上あるとみられる。
コメント; ウェッジテイル売り込みの対象は航空自衛隊のE-2Cでしょうか。その実現のためには経済がしっかりとして国家財政に余裕が無いといけませんね。

2011年6月7日火曜日

ボーイング防衛部門が重視するインド、日本、韓国市場



Boeing Targets India, Japan and South Korea

aviationweek.com Jun 6, 2011


ボーイングはインドの中型多用途戦闘航空機提案に敗れたものの、インドでは別の商談に中心を移しており、一方で日本、韓国それぞれの次期戦闘機契約の受注の準備も進めている。

  1. 「イ ンドの戦闘機案件では残念な結果になったが、当社は前に進んでいきます。」とボーイングの防衛宇宙保安部門CEOデニス・ミュイレンバーグDennis Muilenburgが報道陣の前で発言した。席上でボーイングがインドからC-17計10機を受注していることが発表された。
  2. またインドは大型輸送ヘリ、攻撃ヘリの調達を予定しており、ボーイングはここでもAH-64DアパッチとCH-47Fチヌークがともに実地テストに合格しているという。
  3. そ の他アジアの市場としてボーイングが力を入れているのが日本と韓国だ。日本はFXを40機ないし50機調達する公募を開始しており、ボーイングは F/A18E/Fスーパーホーネットで商戦に参入する。「防衛省の提案依頼が早期に公表されたことに力づけられています。調達は予定通り進行すると期待し ています」
  4. 日 本の防衛調達方針では第一陣の12機を平成28年度内に引き渡すことになっており、ミュイレンバーグはその意味でF/A18E/Fは低リスクの選択肢とな り、とくに費用と納期で顕著と説明する。一方、競合相手となるロッキード・マーティンの課題はF-35の引渡しが予定通り予算内で実現すると納得させる必 要がある。
  5. ボーイングは三菱重工業とボーイングF-15生産をめぐり密接な関係を築いている。ボーイングはこの関係をさらにテコ入れする一方、富士重工業川崎重工業との関係も強化し、FX受注を目指す。一方、ロッキード・マーティンもF-16派生型のF-2を生産する三菱重工と強い関係がある。
  6. 一方で、ボーイングは韓国が12年の末と予想される提案要求内容の発表を待っている。調達内容は戦闘機60機でボーイングはここではF-15を売り込む予定だ。
  7. 各国からの受注を目指す同社には米国国防予算の削減が背景にあり、海外販売の占める比率は現在ボーイング防衛部門の7%相当だったが、昨年に17%に急増している。さらに今後数年間で25%に伸びる見込みだ。そのうちアジア太平洋に大きな期待がかかる。
  8. ボーイングの民間・防衛部門の売上比率は今後50-50で推移する見込みだが、防衛部門最大の顧客である米国政府は国防支出をすでに削減している。

2011年6月5日日曜日

JSFの開発遅延は欧州戦闘機メーカーに朗報となるか

Duels In The Sky

aviationweek.com Jun 3, 2011


欧州の戦闘機メーカー各社は共用打撃戦闘機JSFの先行きをさらに否定的に見ている。
  1. サー ブユーロファイターダッソーの各社はJSFが公約通りの納期で公約通りの価格で引渡し可能となるとは見ていない。また、JSFのステルス性は予想より も低く、欧州製の戦闘機よりも性能は低いと見ている。そのなかでオランダ、ノルウェー、カナダがJSFを採用した背景には三つの理由が ある。ひとつは米国による政治的圧力(ウイキリークスがこの裏付けになった)、米国装備が中心の空軍力整備、また各国の政治的な動揺があった。
  2. 【イ ンドの選択の影響】インドは独自の中型多用途戦闘機MMRCAの選定でボーイングとサーブを選外とし、これは両社にとっておもわぬ敗北となった。残るユー ロファイター(タイフーン)とダッソー(ラファール)が受注をめぐり火花を散らすことになる。インド側関係者によると一次選考は技術面を重視したためタイ フーンおよびラファール両機ともにサーブのグリペンよりも優秀と判定されたのは当然という。また欧州製の各機は空力特性でもボーイングのスーパーホーネッ トよりも先進性がある。ラファールまたはタイフーンが採択されても、まだ課題は残る。たとえばAESAアクティブ電子スキャンアレイレーダーの共同開発、 メテオ空対空ミサイルの搭載、開発サイクルの長期化で避けられない技術陳腐化への対応、技術移転・国産化生産、完全デジタル機材の導入などインド空軍には すべてを限られた時間の中で実現する必要があるのだ。
  3. 仮 にラファールが選定に残る場合、またブラジルでも採用されれば、ダッソーおよび提携各社サフラン及びタレスも自国から9,000マイル離れたインドで上記 の課題に直面する。インドはリスクは全部契約先に押し付ける考えで、問題が表面化し国内で非難されることは極力避けるはずだ。
  4. ボー イング、サーブ両社にとってはインドで選択結果が出ても自社設計製品を各国市場に売り込む方法がそれ自体誤っているとは言えないことが救いか。ボーイング にとってインドの決定は米国製装備に依存したくないという選択結果と理解し、サーブは二次選考の対象はいずれも欧州の主要国との関係を強めることに救いを 見る。
  5. 欧 州の三機種はいずれもカナード翼を特徴とし、それぞれ各国の経済、運用、技術、これまでの歴史の蓄積の結果を反映している。歴史要因は1980年代の中頃 までさかのぼり、フランスとユーロファイター分担国がたもとを分けたことが大きい。ドイツと英国は一カ国による戦闘機開発では米国製戦闘機と競争力をたも つだけの規模が足りないと主張。フランスは多国間開発には主導的な立場を取る国がなければ不可能と主張を曲げなかった。その両方とも正しかった。
  6. ス ウェーデンが一線を画してこれたのは、戦闘機を独自開発してきたため。設計、開発、主要部分の生産は同国内で行っているが、サブシステムのエンジ ン、レーダー、兵装類は海外調達や共同開発である。
  7. 【タ イフーン】 外観こそ似ているが、タイフーンとラファールは技術、運用面で相当の相違がある。タイフーンはトーネードが運用可能年数の半分になった段階で 導入する構想であった。当時のMiG-29やスホイSu-27の脅威により空戦能力を重視する方向に変わり、レーダーは大型化し、ミサイル搭載 数は6発標準となり、空力特性と推力は機動性とマッチする設定になった。
  8. 英空軍はタイフーンはロッキード・マーティンF-22の性能にはかなわないと見てラムジェット推力で高性能赤外線追尾システムを搭載したメテオAAMを装備してより強力になると考えていたが、問題は強力な敵勢力に対抗する必要のある空軍は限られていることだった。
  9. ま たタイフーン共同開発の四カ国で対応が異なっている。英国はタイフーンでトーネードの任務を実施することとし、精密対地攻撃能力 を重視した。一方でその他各国は空対地攻撃能力を最重要課題とは見ずに、(これにはイラクやアフガニスタンで作戦展開していないという事実もある) 資金 投入を渋り、性能実現には時間がかかることになった。それでもタイフーン共同開発各国は将来の発展形の売り込みもしている。その中には推力ベクトル制御 TVCの提案もあり、外部に重量級兵装を搭載しても機体取扱特性が向上し、この艦載型にインドが関心を寄せている。JSFが失敗の場合は英国も導入 を検討するだろう。タイフーンの生産・性能向上計画は繰り返し遅延し、共同開発国が費用負担、開発日程でしばしば紛糾したことで体制の立て直しが発生して いる
  10. 【ラ ファール】 これに対してラファールはフランスの空軍編成を意識して開発され、海軍でも運用を想定し、近接航空支援から核攻撃までの各ミッションを想定し ている。その結果、機体の割に大量の外部搭載兵装が実現したが、タイフーンよりも性能限界は低い。また、レーダー有効範囲を犠牲に軽量としている。ラ ファールで目を見張るのはステルス性だ。ラファール開発チームは2000年代中頃から同機の成熟化に成果を上げており、GBU-12レーザー誘導爆弾と SagemAASM長距離精密誘導兵器を搭載できるようになった。敵防空網の破壊ミッションではレーダー目標捕捉を敵射程外から行う構想と超低空で地形を カバーとしてAASMを発射剃る方法が提案されている。さらに地形画像追尾型の赤外線装備の試験が予定されている。ラファールはタレスのエアロマルチバン ド長距離偵察ポッドを運用することが可能だ。ラファールはゆっくりと生産されて機体価格は高い。生産数を伸ばすと自国内の他の防衛装備調達が犠牲になる。
  11. 【グリペン】 グリペンの開発ではステルスが大きな特徴となるが、スウェーデンは小規模ながら高性能の空軍部隊を維持するとの戦略的な政策決定をしており、グリペンを2040年まで運用する予定だ。そのためJAS39E/F グリペンNGの開発が急がれる。グリペンNGの初飛行は2012年の予定で、各種報道によるとステルス性向上のため空気取入口で分流器が廃止されるという。高性能エンジンにより、アフターバーニングなしでも出力は現行C/D型のRM12エンジンの最大推力の90%相当になるという。ただしエンジン寿命をのばすために も推力を下げる可能性もある。

2011年5月28日土曜日

パキスタンがビン・ラディン作戦で損失したヘリを返還

Pakistan Returns Helo From Bin Laden Raid

aviationweek. com /Reuters May 27, 2011


パキスタンはビン・ラディン襲撃作戦で破損したステルスヘリの残骸を米国に返還しているとペンタゴン関係者がロイターに明らかにした。

  1. 襲 撃作戦で米海軍SEALチームは強行着陸の際にブラックホーク・ヘリ一機を損失している。米国はステルス関連の機密部品等が敵の手に渡らないことを注意してきた。しか し、同機の一部は現地に取り残され、米国はパキスタンに返還を求めていたもの。「機体は先週末に返還され、現在米国内に戻っている」とペンタゴン報道官のデイ ブ・レイパン大佐は語る。
  2. 同 襲撃作戦で米・パ関係は大きく傷つき、米国はビンラディン潜伏の陰にはパキスタンの支援があったのではと疑う向きもある。逆にパキスタン側は襲撃作戦は同国 主権の侵害と非難し、議会では米軍によるアフガニスタン作戦の補給路を遮断すべきとの意見もある。

  3. ジョン・ケリー上院議員は5月16日にイスラマバード訪問に赴き、パキスタンによる機体返還が両国間の信頼醸成に必要との認識を示した。

  4. しかし機体返還だけでは両国間関係修復には不足だというのがオバマ政権にパキスタン・アフガニスタン政策で顧問を務めた元CIAのブルース・リーデルだ。「あまりに遅すぎるし、両国間関係の悪化を改善するには小さすぎる」
  5. また、これも元CIAで現在はRANDコーポレーションのアルトロ・ムニョスはパキスタンが返還していなかったら「悪意の証明」と受け止められかねかったという。
  6. もっともビン・ラディン強襲作戦以前にも両国関係は冷め切っていたのはパキスタンがCIA関係者を国内で逮捕し、米国がパキスタン西部で無人機による攻撃を実施していたためだ。
  7. 米議会内でもビン・ラディン潜伏先で押収した情報を公開しパキスタン共謀の可能性を明らかにすべきとの声もある。
  8. ロバート・ゲイツ国防長官は二国間で「信頼の欠如」が存在するのを認めたが、同時にパキスタンを見放す事はできないとの見方だ。

2011年5月22日日曜日

情報収集に活用するブルーデビル2飛行船


USAF Surveillance Air

USAF S

USAF Surveillance Airship On Track For 2012

aviationweek.com May 16, 2011

米空軍のブルーデビル2Blue Devil 2常時監視飛行船の運用配備は2012年2月開始の見込みで契約仕様の期日よりも18ヶ月も前倒しになると関係者が明らかにした。
  1. ブルーデビル2はオプションで有人飛行も可能な多用途情報作戦用の機材で原型はTCOMのポーラー100TCOM Polar 100飛行船でMAV6(http://www.mav6.com/本社ヴァージニア州アレクサンドリア)という少企業により製品化されている。
  2. 同飛行船には広域および局地高精度電子光学赤外線ビデオセンサーと信号情報収集装置を搭載して5日間の上空飛行が可能で、情報収集、目的捕捉、地理位置情報を入手できる。
  3. 開 発初期契約は2010年10月に発効しており、7月に船体が完成、初飛行は9月の予定。MAV6の契約総額は82.6百万ドルで3月に継続契約が交付され た。ブルーデビル2には空軍の他陸軍とペンタゴンの統合簡易爆発物対策組織Joint Improvised Explosive Device Defeat Organizationが共同参加している。前作のブルーデビル1試作機は12月に配備済みで、ホーカービーチクラフトのキングエア90を原型に広域カ メラと信号収集装置により個人別に追跡が可能な能力をフルモーションビデオと携帯電話の使用状況から得ている。SAICが同機の主契約社である。
  4. ブルーデビル2は全長23フィート、全幅10フィート、全高7フィートでペイロードベイを機体下にもち、有人飛行の際はコックピットに無人飛行の制御卓と同じ装置を用いる。

Image: USAF

urveillance Airship On Track For 2012

aviationweek.com May 16, 2011
米空軍のブルーデビル2Blue Devil 2常時監視飛行船の運用配備は2012年2月開始の見込みで契約仕様の期日よりも18ヶ月も前倒しになると関係者が明らかにした。
  1. ブルーデビル2はオプションで有人飛行も可能な多用途情報作戦用の機材で原型はTCOMのポーラー100TCOM Polar 100飛行船でMAV6(http://www.mav6.com/本社ヴァージニア州アレクサンドリア)という少企業により製品化されている。
  2. 同飛行船には広域および局地高精度電子光学赤外線ビデオセンサーと信号情報収集装置を搭載して5日間の上空飛行が可能で、情報収集、目的捕捉、地理位置情報を入手できる。
  3. 開 発初期契約は2010年10月に発効しており、7月に船体が完成、初飛行は9月の予定。MAV6の契約総額は82.6百万ドルで3月に継続契約が交付され た。ブルーデビル2には空軍の他陸軍とペンタゴンの統合簡易爆発物対策組織Joint Improvised Explosive Device Defeat Organizationが共同参加している。前作のブルーデビル1試作機は12月に配備済みで、ホーカービーチクラフトのキングエア90を原型に広域カ メラと信号収集装置により個人別に追跡が可能な能力をフルモーションビデオと携帯電話の使用状況から得ている。SAICが同機の主契約社である。
  4. ブルーデビル2は全長23フィート、全幅10フィート、全高7フィートでペイロードベイを機体下にもち、有人飛行の際はコックピットに無人飛行の制御卓と同じ装置を用いる。


Image: USAF

ship On Track For 2012

aviationweek.com May 16, 2011
米空軍のブルーデビル2Blue Devil 2常時監視飛行船の運用配備は2012年2月開始の見込みで契約仕様の期日よりも18ヶ月も前倒しになると関係者が明らかにした。
  1. ブルーデビル2はオプションで有人飛行も可能な多用途情報作戦用の機材で原型はTCOMのポーラー100TCOM Polar 100飛行船でMAV6(http://www.mav6.com/本社ヴァージニア州アレクサンドリア)という少企業により製品化されている。
  2. 同飛行船には広域および局地高精度電子光学赤外線ビデオセンサーと信号情報収集装置を搭載して5日間の上空飛行が可能で、情報収集、目的捕捉、地理位置情報を入手できる。
  3. 開 発初期契約は2010年10月に発効しており、7月に船体が完成、初飛行は9月の予定。MAV6の契約総額は82.6百万ドルで3月に継続契約が交付され た。ブルーデビル2には空軍の他陸軍とペンタゴンの統合簡易爆発物対策組織Joint Improvised Explosive Device Defeat Organizationが共同参加している。前作のブルーデビル1試作機は12月に配備済みで、ホーカービーチクラフトのキングエア90を原型に広域カ メラと信号収集装置により個人別に追跡が可能な能力をフルモーションビデオと携帯電話の使用状況から得ている。SAICが同機の主契約社である。
  4. ブルーデビル2は全長23フィート、全幅10フィート、全高7フィートでペイロードベイを機体下にもち、有人飛行の際はコックピットに無人飛行の制御卓と同じ装置を用いる

Image: USAF

2011年5月21日土曜日

JSFで代替策を求める米上院

Senators Ask For JSF Alternatives
aviationweek.com May 20, 2011

上院軍事委員会にJSF統合打撃戦闘機の代替選択肢が必要との見方が出ている。

1. ジョン・マケイン上院議員(共和・アリゾナ州)は5月19日公聴会で「代替策の検討がをはじめるべきではないか」と発言している。席上ではJSF開発および装備の負担は限界を超えているとの試算が示された。
2. しかしペンタゴンを代表したアシュトン・カーター次官補は次世代ステルス戦闘機で他に候補機はなく、このまま計画を進めるとインフレ率と生涯コスト補正を加えると一兆ドル規模になるという。これならF-22を残した方が安価になる。
3. ただし上院軍事委員会のメンバー全員がマケイン議員の主張する方向性に賛同しているわけではない。
4. ジョン・コーニン議員(共和・テキサス州)は地元にフォートワース工場があることもあり、JSFはなんとしても実現するべきと主張する。その他にはマーク・ベグリッチ議員(民主・アラスカ州)がペンタゴンに予算規模で厳しい質問をしている。これに対しアシュトン・カーター国防次官補は全体規模の2割から5割の抑制を検討していると回答。
5. ただし、ペンタゴンの予算執行評価局長クリスティン・フォックスはその目標に疑問を呈し、ソフトウェアで開発コストを下げるにしても、運用維持(O&S)コストの削減は別の問題だとする。たとえば燃料費の削減は困難だという。
6. 一方、ロッキード・マーティンのF-35計画総合責任者のトム・バーベッジはJSFの維持コストを既存機種と比較するのは正しくないという。JSFのO&Sは2065年まで継続し、ここまで維持運用された機種は他にないというのが主張だ。
7. にもかかわらずカール・レヴィン委員長(民主・マサチューセッツ州)はカーター次官補に対し一週間以内にJSFが予定通りの目標達成に失敗した場合の代替案を同委員会に回答するように求めた。


コメント:いよいよF-35の失敗が隠せなくなってきたということでしょうか。自衛隊F-X候補からF-35が脱落するのは当然としても、西側の防衛体制にとってはこれから大きな穴があく、その間は既存機種を使い回すことになるのではないでしょうか。これにより技術的な停滞が発生するのは避けて通れないでしょう。それよりも共同開発諸国はじめ費用を負担してきた各国は計画の精算にも追加負担をもとめられる、ふんだりけったりの話になるかもしれません。一気にUAV戦闘機という可能性もでるかも。日本にとってF-35は不要、という当方の主張がまさしく現実になりつつあります。

2011年5月14日土曜日

ステルスヘリの製造場所

Indications Of Hawk Works In Stealth Helo

aviatonweek.com May 13, 2011

5月1日のビンラディン強襲に使用されたステルス型のH-60ブラックホークはシコルスキーのホーク事業所Hawk Works(ニューヨーク州エルマイラ)で改修を受けたものと考えられる。
  1. その証に同事業所の所在を明らかにしない目的かグーグルアースでエルマイラコーニング空港の画像がぼやかされている。元の画像データは政府がグーグルアースに提供したものだ。
  2. シコルスキーはエルマイラでこれまでもCIA他政府機関、海外政府向けの低騒音機を製造している。これは2004年にシュワイザー航空機を取得したことによるもので、同航空機は超低騒音の偵察用機体をこれまで製造してきた経験がある。
  3. シュ ワイザー航空の買収はポール・マーティン(当時シコルスキー上席副社長(高性能機開発担当)が中心となっておこなったものだ。マーティンは2000年にシ コルスキーに来る前はロッキード・マーティンでスカンクワークスの筆頭副社長を務めていた。マーティンは2007年にシコルスキーを去り、現在はカリフォ ルニアでコンサルタント会社の社長だ。同社でのマーティンの経歴にはシコルスキーで「軍用機生産および高性能機開発全般に従事」とあり、「極秘プログラム も含む」としている。マーティンはコメントを拒否している。
  4. ス テルス改修型のブラックホークは米陸軍特殊部隊用のMH-60近代化改修プログラムの一部で現有のMH-60K/L型73機と交代する計画でM型の引渡し が始まっている。その一号機はケンタッキー州フォートキャンベルの第160特殊作戦航空連隊(空挺)に2011年2月に納入された。
  5. 予 算規模10.7億ドル総額で2016年までの同プログラムでUH-60Mをベースにしたヘリを調達するが、エンジンは強化型ジェネラルエレクトリック YT706を搭載し、通信装置、状況監視、生存装備を追加している。その中にはレイセオン製サイレントナイト・レーダーがあり、地形追跡・回避能力を探知 される可能性を最低限にして提供する能力がある。.
  6. シコルスキーはビンラディン作戦で使用されたヘリコプターについてはいかなる質問にも回答しない姿勢だ。
  7. エルマイラ施設は2006年にシコルスキーがシュワイザー工場の規模を上回る10万平方フィートの規模で建設したもので、試作機・軍用型機を専用に製作するものだ。
  8. グーグルアースではエルマイラ空港全体は2006年4月の日付となっており、そこにはシコルスキー工場は写っていない。また、同空港周辺は焦点をぼやかされており、メインランプ部分は上書きがされている。グーグルアース画像は1年から3年前のものが多い。

2011年5月8日日曜日

ノースロップのファイヤーバードは有人飛行も可能な新型UAS

Exclusive: Northrop Unveils Firebird MALE Aircraft

aviationweek.com May 6, 2011

ノースロップ・グラマンは今月遅くにも極秘開発してきたファイヤーバード公表の準備をしている。ペンタゴンが開催するエンパイヤチャレンジをその機会にする。これはすばやく実用化が可能な情報収集監視偵察技術を実証することが目的の演習。
  1. 中高度長距離(MALE) 性能の無人機市場でプレデター、リーパー、グレイイーグルをもつジェネラルアトミックスはノースロップ・グラマンにとって目障りな存在だった。
  2. そ こでファイヤーバードはオプションで有人操縦も可能な機体(OPV)であり、秘密のうちに同社が12ヶ月で製作したもの。初飛行を2010年2月に完了し ており、昨年10月にペンタゴン関係者が内覧している。プレデター・リーパー連合を上回る受注機数は期待できないものの、同社はOPVはすきま市場と見て いるのは無人機を一般の空路で飛行させる規則をめぐりペンタゴンとFAAが意見の一致をまだみていないためだ。
  3. 尾翼設計はOV-10ブロンコの流用で、ペイロード四種類を同時に搭載でき、無人モードで最長40時間の飛行が可能。飛行速度は最高200ノット。
  4. イー グルチャレンジ演習は5月23日から6月3日までで、同社は同機の搭載組み合わせ例に高解像度フルモーションビデオ、電気光学・赤外線センサー、電子式方 向探査・通信リレーを同時に搭載できる展示をする。同社によるとファイヤーバードは着陸からセンサー類の取替えをして離陸までを一時間で完了できるとい う。イーグルチャレンジはアリゾナ州フォート・フアチュカで実施される。
なお、同機の詳細な解説はAviation Week & Space Technology5月9日号の特集記事を参照されたい。

2011年5月4日水曜日

ファントムレイ初飛行か


Ph

Phantom Ray Under Way In First Flight

aviationweek.com May 3, 2011

秘密のベールに隠されたボーイングのX-45Cファントムレイ無人実証機だが、4月27日にエドワーズ空軍基地で初飛行を実施した模様。
  1. ボーイングは初飛行の実施の事実のみ認め、その他は保安体制解除まで発表できないとしている。ファントムレイは米海軍のUclass無人ステルス艦載攻撃機開発の第一歩と言われる。
  2. X-45Cはファントムレイ実証計画の試作機であり、その他にジェネラルアトミックスのアヴェンジャー(プレデターC)がある。ノースロップ・グラマンのX-47Bも2月4日に29分間の初飛行を同じくエドワーズ基地で実施している。ロッキード・マーティンもポールキャットおよびRQ-170センティネルにより競作に参加する見込みだ。
  3. RQ-170はフルモーションビデオ撮影能力があり、昨年からアフガニスタンに投入されており、オサマ・ビン・ラディン殺害作戦にも参加したと考えられている。
  4. 「今回の成功のもとは2009年のザルカウィ抹殺にむすびついた空中ISRによる情報収集能力の優位性そのものです。遠隔操縦による航空機の存在が今回の作戦に役立った知識ベースの形成につながっています」(元情報機関関係者)
  5. ファ ントムレイについては情報が統制されており、初期テストデータの解析が完了する5月4日以後に解禁される見込み。ファントムレイはボーイングのファントム ワークス製X-45Cの発展形であり、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機と同様の兵装を搭載出来る設計になっている。
  6. 同機はボーイングのセントルイス工場からエドワーズに12月4日にNASAスペースシャトル運搬機により搬送された。その後はドライデンフライト研究センター内に移動していた。

antom Ray Under Way In First Flight

aviationweek.com May 3, 2011

秘密のベールに隠されたボーイングのX-45Cファントムレイ無人実証機だが、4月27日にエドワーズ空軍基地で初飛行を実施した模様。
  1. ボーイングは初飛行の実施の事実のみ認め、その他は保安体制解除まで発表できないとしている。ファントムレイは米海軍のUclass無人ステルス艦載攻撃機開発の第一歩と言われる。
  2. X-45Cはファントムレイ実証計画の試作機であり、その他にジェネラルアトミックスのアヴェンジャー(プレデターC)がある。ノースロップ・グラマンのX-47Bも2月4日に29分間の初飛行を同じくエドワーズ基地で実施している。ロッキード・マーティンもポールキャットおよびRQ-170センティネルにより競作に参加する見込みだ。
  3. RQ-170はフルモーションビデオ撮影能力があり、昨年からアフガニスタンに投入されており、オサマ・ビン・ラディン殺害作戦にも参加したと考えられている。
  4. 「今回の成功のもとは2009年のザルカウィ抹殺にむすびついた空中ISRによる情報収集能力の優位性そのものです。遠隔操縦による航空機の存在が今回の作戦に役立った知識ベースの形成につながっています」(元情報機関関係者)
  5. ファ ントムレイについては情報が統制されており、初期テストデータの解析が完了する5月4日以後に解禁される見込み。ファントムレイはボーイングのファントム ワークス製X-45Cの発展形であり、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機と同様の兵装を搭載出来る設計になっている。
  6. 同機はボーイングのセントルイス工場からエドワーズに12月4日にNASAスペースシャトル運搬機により搬送された。その後はドライデンフライト研究センター内に移動していた。

ビン・ラディン襲撃にステルスヘリが投入されていた

Bin Laden Raid May Have Exposed Stealth Helo

aviationweek.com May 3, 2011


オサマ・ビン・ラディン殺害に成功した米特殊部隊が極秘ステルスヘリコプターを使用していた可能性が浮上している。
  1. 実 際の機種は不明だが、おそらくH-60ブラックホークの改造型だろう。写真および報道記者によると同機にはステルス性を考慮したテールローターとハブフェ アリングがあった他、ローターは5枚ないし6枚でカバーが付いていたという。また外部塗装は赤外線反射を抑えるもので、V-22と類似している。写真は AviationWeek.com/aresで見られる。
  2. 同機はミッション途中で損傷を受け放棄された。ミッションチームが機体大部分を破壊したが、 同機のテール部分は目標地点の壁の外に着地し破壊されなかった。
  3. ステルスヘリの技術は以前からあり、ボーイング/シコルスキーRAH-66コマンチに広く使われていたが、同機は2004年に開発中止になっている。固定翼機の場合と異なるのは騒音と赤外線特徴対策に重点が置かれている点。
  4. このうち騒音を下げるため、メインローター、テイルローターそれぞれ枚数を増やすことが有効だ。空力特性の改善と飛行制御の効率性向上でローター回転数を下げる他、赤外線探知を下げる事が必要だ。コマンチでは排気ダクトと空気取り入れ口で工夫されていた。
  5. レーダー断面積RCSの削減には機体側面を滑らかにし、かつ傾斜をつける、降着装置を引き込み式にする、ローターハブにフェアリングを付けるのが有効だ。固定翼機と同じステルス性はヘリでは実現不可能だが、ヘリは通常は低高度飛行し、地表面の乱反射を利用できる。

2011年5月2日月曜日

電子戦で米国は一層の努力が必要, F-35は重要なEW機材

Pentagon Taps EW For Second Wind

aviationweek.com Apr 27, 2011

  1. 米国は電子戦に遅れを取っている。しかも20年前から。
  2. これがオバマ政権が国防予算の削減を求める中で電子戦(EW)にその他ごくわずかの分野とともに予算増加を認める根拠だとフランク・ケンドール国防次官補(国防装備調達・技術担当)は説明する。
  3. 「EWへの支出を増強する必要があります。今後はEWを重視します」とし、国防予算からの資金捻出を図る動きだ。
  4. 米 空軍はEF-111EW兼戦術ジャミング機を1998年に退役させており、これがEW実戦力の退潮のはじめだったとされる。その後わずか数ヶ月でイラク北 部上空を飛行中のU-2はイラク防空網の脅威に直面している。同国の防空網の改善は海軍が指摘していたが、空軍にそれが伝わらなかったのは空軍のEW部門 が分散してしまいEWの効能を説得できる高位の将官がいなかったためと言われる。
  5. EF-111退役とEW任務の海軍移管は表裏一体だが、ケンドール次官補はそれだけが理由ではないという。
  6. 「これまで我が国はEWでこれまでよりも実戦力があると信じてきましたが、能力面でも優位性でも衰退しています。これを脱するためにも現実の直視が必要です」
  7. 「80 年代90年代からEW部門が国防総省にあり、開発中の技術は豊富にありましたが、戦闘の様相が変化を示す中、われわれも進歩を続ける必要があるのですが、 唯我独尊になっていました。その理由の一つに国防力の統合再編成があったのかもしれません。今やEWを再活性化するべき時期です。」
  8. 指向性エネルギー兵器として高密度レーザーや高出力マイクロ波があるが近い将来に実戦レベルになるとは見られていない。
  9. 「指 向性エネルギーはいつも5年先の技術です。80年代には私は陸軍でミサイル防衛に携わっておりましたが、当時すでに指向性エネルギーは話題になっており、 数年先に実用化となると見ていました。たしかに研究は大きく進歩しましたが、実用的な兵器にするためには研究課題が残っています。EWの再活性化案は情報 監視偵察(ISR)、指向性エネルギー、サイバー作戦、電磁戦場管理EMBMが交差するところで出てきた構想です。バクダッドの例ですが、電子汚染は相当 のもので、ある装置の電源を入れると他の装置で必ず誤動作が起きるほどです。アフガニスタンも改善はありますが基本的に同じ状況です。」
  10. 「電 子干渉の問題ではバグダッドで作戦開始した2003年当時からは相当の進展があります。サイバーは作戦立案の一部であり、サイバー空間上の各組織の作戦で も干渉を防止する必要があります。過去はこのような運用の統合は避ける傾向がありました。今や各組織とも電子的に溝を埋める動きに出ており、アフガニスタ ンで兵力を構築する際は状況は改善されていました。」と語るのはデイブ・デプチュラ空軍中将(退役)、米空軍情報収集ISR担当(当時)だ。
  11. 空軍が進めようとしているのは既存の航空宇宙システムをリンクさせて新しい効果を生むこと。このリンクにより各機体のもつ技術を統合させることができ、特化した機体を多数使う運用形態を回避できる。
  12. 「低 視認性の第五世代機に高性能ISR機能を装備すれば今まで不可能だった任務が可能となります。たとえば各機のネットワーク化で一部の機体を喪失しても全体 の戦力は維持できます。サイバー作戦が戦闘司令官の通常手段になれば、中央軍の指揮命令系統から離れれば、技術の応用の巾が大きく広がります。」(デプ チュラ)
  13. ただ技術各種をうまく組み合わせるのは大きな課題だ。米海軍は空対空戦闘の場合と同じように電子戦を成立させるEMBMを研究中だ。
  14. 「EMBM には複雑な構造は必要ありません。必要なことを実施する、ただし一定の構造を成立させるためにも航空作戦の中心となる考え方をもう一度見直す必要がありま す。すでに20年以上が経過しています。従来型の大規模、中央統制型施設を分散させた指揮命令系統に分解してより柔軟かつ利用可能な装備を有効利用する仕 組みを作る必要があるのです」(デプチュラ)
  15. 「すべての構成要素を調整することになり、実現したい効果を生むために統合も必要です。F-22のような航空機はセンサーと電子戦装備の搭載で利用価値が大きい機種です。第五世代機は全部リンクして各機の機能を蜂の巣状に組み合わせる必要があります」(デプチュラ)
  16. 情報科学とロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機は、ともに国防予算削減の標的になっており政治論争を呼ぶ対象になるのは必至だ。
  17. 「購入規模は縮小しています。どれを断念すべきなのかという点で、厳しい決断を迫られる局面にあり、受け入れるべきリスク、今後実行を縮小するミッションはどれか、世界規模の作戦展開で何をすべきかを考えねばなりません」(ケンドール)
  18. F-35については大規模な範囲でその見直しが近日中に予定されており、その結果次第で国防予算並びに部隊編成全般に影響がでるだろう。
  19. ケ ンドールは会計検査院と話し合いをもち、費用上昇を同評価するかを議論したいという。ケンドールは会計検査院の初期発注内容分析は大雑把な数量把握に基づ いていると考える。予算規模そのものが議論を呼んでしまったが、その後の会計検査院自身による評価結果は無視されているという。
  20. 「ある計画がつまずくと非難攻撃の対象になりやすいものです。だからといってその価値がなくなるわけではありません。」(ケンドール)
  21. JSFには問題があったことをケンドールも認める。短距離離陸垂直着陸(Stovl)型が問題の中心であるが、ミッションソフトウェアも同じく問題なのだ。ただしケンドールは同機は最高度の優先順位であることも強調する。
  22. そこで選択手段としては性能を低くした機体として受容するかどうかで、その場合運用上のリスクは増える。計画中止はこれまでの投資を無駄にして再度やり直しを意味するだけだ。
  23. 「F- 35では進展もありますが、期待していたほどではありません。Stovl型には大きな疑問があり、設計構造に問題があると見ています。ただ計画全体は成熟 度をあげています。実際に飛行も開始していますが、楽観視は許されないでしょう。とはいえ、F-35の全体をまとめきれていないのが現状です」
  24. 情報科学分野には費用見積もりで問題がある。
  25. 「着任して省内で各種システムを理解している者を探したのですが、古典的な問題でものごとを効率的にこなせる専門性が不足しているのです。また規模の経済にも限界があることがわかりました。ある程度の規模になるとどうしても複雑性も産んでしまいます。」
  26. 政 府による規制事項も複雑さを生んでいるという。「ITシステムひとつに17万事項の要求がありソフトウェアに反映する必要があります。出来合いの製品を 持ってきて使うのは不可能です。最大の問題は一度にあまりにも多くのことをあまりにも短期間にしようとすることであり、業務を管理できない規模のままでコ ストは管理しろ、というのでは性格な予測は不可能だという。

ntagon Taps EW For Second Wind

aviationweek.com Apr 27, 2011

  1. 米国は電子戦に遅れを取っている。しかも20年前から。
  2. これがオバマ政権が国防予算の削減を求める中で電子戦(EW)にその他ごくわずかの分野とともに予算増加を認める根拠だとフランク・ケンドール国防次官補(国防装備調達・技術担当)は説明する。
  3. 「EWへの支出を増強する必要があります。今後はEWを重視します」とし、国防予算からの資金捻出を図る動きだ。
  4. 米 空軍はEF-111EW兼戦術ジャミング機を1998年に退役させており、これがEW実戦力の退潮のはじめだったとされる。その後わずか数ヶ月でイラク北 部上空を飛行中のU-2はイラク防空網の脅威に直面している。同国の防空網の改善は海軍が指摘していたが、空軍にそれが伝わらなかったのは空軍のEW部門 が分散してしまいEWの効能を説得できる高位の将官がいなかったためと言われる。
  5. EF-111退役とEW任務の海軍移管は表裏一体だが、ケンドール次官補はそれだけが理由ではないという。
  6. 「これまで我が国はEWでこれまでよりも実戦力があると信じてきましたが、能力面でも優位性でも衰退しています。これを脱するためにも現実の直視が必要です」
  7. 「80 年代90年代からEW部門が国防総省にあり、開発中の技術は豊富にありましたが、戦闘の様相が変化を示す中、われわれも進歩を続ける必要があるのですが、 唯我独尊になっていました。その理由の一つに国防力の統合再編成があったのかもしれません。今やEWを再活性化するべき時期です。」
  8. 指向性エネルギー兵器として高密度レーザーや高出力マイクロ波があるが近い将来に実戦レベルになるとは見られていない。
  9. 「指 向性エネルギーはいつも5年先の技術です。80年代には私は陸軍でミサイル防衛に携わっておりましたが、当時すでに指向性エネルギーは話題になっており、 数年先に実用化となると見ていました。たしかに研究は大きく進歩しましたが、実用的な兵器にするためには研究課題が残っています。EWの再活性化案は情報 監視偵察(ISR)、指向性エネルギー、サイバー作戦、電磁戦場管理EMBMが交差するところで出てきた構想です。バクダッドの例ですが、電子汚染は相当 のもので、ある装置の電源を入れると他の装置で必ず誤動作が起きるほどです。アフガニスタンも改善はありますが基本的に同じ状況です。」
  10. 「電 子干渉の問題ではバグダッドで作戦開始した2003年当時からは相当の進展があります。サイバーは作戦立案の一部であり、サイバー空間上の各組織の作戦で も干渉を防止する必要があります。過去はこのような運用の統合は避ける傾向がありました。今や各組織とも電子的に溝を埋める動きに出ており、アフガニスタ ンで兵力を構築する際は状況は改善されていました。」と語るのはデイブ・デプチュラ空軍中将(退役)、米空軍情報収集ISR担当(当時)だ。
  11. 空軍が進めようとしているのは既存の航空宇宙システムをリンクさせて新しい効果を生むこと。このリンクにより各機体のもつ技術を統合させることができ、特化した機体を多数使う運用形態を回避できる。
  12. 「低 視認性の第五世代機に高性能ISR機能を装備すれば今まで不可能だった任務が可能となります。たとえば各機のネットワーク化で一部の機体を喪失しても全体 の戦力は維持できます。サイバー作戦が戦闘司令官の通常手段になれば、中央軍の指揮命令系統から離れれば、技術の応用の巾が大きく広がります。」(デプ チュラ)
  13. ただ技術各種をうまく組み合わせるのは大きな課題だ。米海軍は空対空戦闘の場合と同じように電子戦を成立させるEMBMを研究中だ。
  14. 「EMBM には複雑な構造は必要ありません。必要なことを実施する、ただし一定の構造を成立させるためにも航空作戦の中心となる考え方をもう一度見直す必要がありま す。すでに20年以上が経過しています。従来型の大規模、中央統制型施設を分散させた指揮命令系統に分解してより柔軟かつ利用可能な装備を有効利用する仕 組みを作る必要があるのです」(デプチュラ)
  15. 「すべての構成要素を調整することになり、実現したい効果を生むために統合も必要です。F-22のような航空機はセンサーと電子戦装備の搭載で利用価値が大きい機種です。第五世代機は全部リンクして各機の機能を蜂の巣状に組み合わせる必要があります」(デプチュラ)
  16. 情報科学とロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機は、ともに国防予算削減の標的になっており政治論争を呼ぶ対象になるのは必至だ。
  17. 「購入規模は縮小しています。どれを断念すべきなのかという点で、厳しい決断を迫られる局面にあり、受け入れるべきリスク、今後実行を縮小するミッションはどれか、世界規模の作戦展開で何をすべきかを考えねばなりません」(ケンドール)
  18. F-35については大規模な範囲でその見直しが近日中に予定されており、その結果次第で国防予算並びに部隊編成全般に影響がでるだろう。
  19. ケ ンドールは会計検査院と話し合いをもち、費用上昇を同評価するかを議論したいという。ケンドールは会計検査院の初期発注内容分析は大雑把な数量把握に基づ いていると考える。予算規模そのものが議論を呼んでしまったが、その後の会計検査院自身による評価結果は無視されているという。
  20. 「ある計画がつまずくと非難攻撃の対象になりやすいものです。だからといってその価値がなくなるわけではありません。」(ケンドール)
  21. JSFには問題があったことをケンドールも認める。短距離離陸垂直着陸(Stovl)型が問題の中心であるが、ミッションソフトウェアも同じく問題なのだ。ただしケンドールは同機は最高度の優先順位であることも強調する。
  22. そこで選択手段としては性能を低くした機体として受容するかどうかで、その場合運用上のリスクは増える。計画中止はこれまでの投資を無駄にして再度やり直しを意味するだけだ。
  23. 「F- 35では進展もありますが、期待していたほどではありません。Stovl型には大きな疑問があり、設計構造に問題があると見ています。ただ計画全体は成熟 度をあげています。実際に飛行も開始していますが、楽観視は許されないでしょう。とはいえ、F-35の全体をまとめきれていないのが現状です」
  24. 情報科学分野には費用見積もりで問題がある。
  25. 「着任して省内で各種システムを理解している者を探したのですが、古典的な問題でものごとを効率的にこなせる専門性が不足しているのです。また規模の経済にも限界があることがわかりました。ある程度の規模になるとどうしても複雑性も産んでしまいます。」
  26. 政 府による規制事項も複雑さを生んでいるという。「ITシステムひとつに17万事項の要求がありソフトウェアに反映する必要があります。出来合いの製品を 持ってきて使うのは不可能です。最大の問題は一度にあまりにも多くのことをあまりにも短期間にしようとすることであり、業務を管理できない規模のままでコ ストは管理しろ、というのでは性格な予測は不可能だという。