2016年7月27日水曜日

★中国が新型水陸両用機の生産を開始。気になるUS-2との比較は?



中国が新型飛行艇の生産を開始した模様です。
まずDefense Newsの伝え方です。


China Kicks Off Production of New Amphibious Aircraft

Wendell Minnick, Defense News8:40 a.m. EDT July 26, 2016

636051190754469037-P1140414.JPG(Photo: Wendell Minnick)
TAIPEI —  中国がAG600水陸両用機を珠海生産開始した同機は生産中機体では世界最大の水陸両用機と中国メディアが伝えている
報道によればメーカーの中航通用飛機有限責任公司China Aviation Industry General Aircraft Co. (CAIGA)は同時に小型のH660の製造も手がけている。両機種は2014年の中国国際航空宇宙展(珠海航空ショー)で模型が公開されている。
AG600はショーで配布された資料によれば消火、捜索救難、貨物輸送、海上哨戒の4つの任務を実施できる。乗客50名を搭載し、毎時350マイル(約560キロ)で3,400マイル(約5,400キロ)まで飛行できる。
その性能だと海南島から南シナ海で中国軍が占拠するウッディ島までが実用行動範囲に入る。■

次にJane'sです。数字が一部違うのはご容赦ください。

China rolls-out indigenous flying boat

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
26 July 2016

  
The Aviation Industry Corporation of China (AVIC) AG600 amphibious aircraft was rolled out on 23 July. Source: Xinhua
中国が新型水陸両用機を中国航空工業(AVIC)の珠海工場で生産開始した国営通信が伝えている。
翼幅38.8メートル、全長37メートル、ターボプロップ4発のAG600は中国が製造する飛行艇として最大規模だ。
新華社通信によれば同機の最大離陸重量は53.5トン、最大巡航速度500キロで4,500キロの飛行距離を有し、飛行時間は最大12時間だ。離水には1,500メートル長、幅200メートル、深度2.5メートルの水域が必要だ。
新華社伝ではAG600は消火任務と海上救難任務に投入すると伝えている。■
参考 US-2の諸元 (Wikipediaより)
  • 全長 - 33.25m
  • 全幅 - 33.15m
  • 最大離着陸重量 - 47.7t
  • 巡航速度 - 260kt=M0.38(約470km/h)
  • 航続距離 - 4,700km(約2,500海里
  • 離水滑走距離 - 280m(43t時)

なるほどAG600はやや大きな機体ですが、離水能力は低いようですね。大きなモノ好きの中国らしくとにかく大型機を作ったということでしょうか。この機体が南シナ海でどう運用されるのかが注目ですね。



★発掘、ソ連のフランス攻略作戦案、核兵器多用で7日間で完了見込む




The National Interest


Russia's Cold War Plan to Crush France (In 7 Days)

Think nukes. Lots of nukes.

July 19, 2016

六週間でフランスを制圧したナチ・ドイツは軍事史上もっとも華々しい勝利のひとつとされた。
  1. ソ連が西側に1960年代初頭に開戦していたら、ソ連は電撃戦で一週間でフランスを制圧する計画だった。旧チェコスロヴァキアの軍事文書保管庫で発見されたワルシャワ条約軍1964年作戦案で判明した。
  2. 軍事力の裏付けがあったのかそれとも誇大妄想狂だったのか。神の存在を信じない制度の上に成り立つソ連の作戦案は奇跡を想定したものにほかならない。ソ連と東欧軍部隊はチェコスロヴァキアから攻勢を始めドイツ南部を通過し、ライン川を横断し、南部フランスへ進行する案だった。所要7日で完了する想定だった。
  3. ソ連案は野心的だ。チェコ第一軍第四軍で独仏国境を攻撃し、ソ連第八軍がその北方へ前進し、ハンガリー軍が南方を固める構想だった。落下傘部隊でネッカー川ライン川の主要通行地点を占拠し、ワルシャワ条約軍の戦車部隊・機械化歩兵部隊がチェコスロヴァキアからリヨン北東のブサンソンまで開戦後8日で700マイルを一気に突破する。さらにソ連軍はパリ北方へ前進し、英仏海峡の港湾を制圧するか、マルセイユなど地中海の港湾を占領する。
  4. チェコスロヴァキアからブサンソンまで赤軍は一日60マイル移動する必要がある。それまでの史上最速の移動はロンメルのアフリカ軍団の1942年6月事例で当時のドイツ機械化部隊は350マイルを10日で移動、つまり、一日35マイルだった。1940年の電撃戦でも同じロンメルの第七戦車師団は85マイルを移動するのに5日を要している。
  5. 障害は多かったはずだ。西側にはソ連軍は圧倒的な軍事力のイメージがあるが、モスクワはNATO軍への数的優位性は部分的にしか期待していなかった。ソ連軍、チェコ軍は数々の河川、丘陵、市街地が戦場として横断する必要があった。ワルシャワ条約軍は航空優勢を確立できず、1940年のドイツのような航空支援は実現しなかっただろう。
  6. ただしソ連にはロンメルの時代には存在しなかった兵器をあてにできた。赤軍の電撃作戦は核兵器を開戦初頭から投入することで突破口を創る構想だった。作戦案によれば「131発のミサイル、核爆弾が必要で、ミサイル96発、爆弾35個の内訳だ。まずミサイル29発、爆弾1個を投入する」とあった。
  7. この案は実行可能だったのだろうか。すべて予定通り機能すれば可能だっただろう。つまり米第七軍、ドイツ第二軍団、フランス第一軍がソ連の前進を食い止められければ、あるいは双方の核爆弾による地形変化や放射能でも前進が止まらなかった場合だ。.
  8. フランスが原子爆弾を初めて爆発させたのが1960年で、1964年にはフランス空軍は核爆弾を装備していた。ソ連報復を恐れてモスクワの原爆攻撃は思いとどまっただろう。だが、またもや国土を占領されるのかとの思いから「赤化より死ぬほうがまし」との短絡的反応になっていたかもしれない。
  9. どちらにせよ西欧は核攻撃で崩壊していたはずだ。

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.


UASの空中空母構想でハイテク飛行船を利用する構想が浮上



航続距離の不足をカバーするため、空中母機構想は過去に各種ありましたが実用化に至ったものは皆無でした。今回は温故知新ではないですが、技術進歩で空中空母を実現しようと言うたくましい企業のお話です。しかし飛行船でなくても太陽電池で分散推進手段を運用する無人長時間滞空機も母艦になりませんか。技術の進歩で今まで不可能と思われた構想が実現性を帯びてきます。それだけに発想力、企画力がもっと必要になりますね。

Aviation Week & Space Technology

Airship Carriers Could Extend Smaller UAS Capabilities

Jul 22, 2016 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
.
  1. 無人航空システム(UAS)の性能は向上し続けており、ペイロードは小型しつつ威力は増加している。だが欠点がある。航続距離だ。「太平洋地区でどうやって小型UASを運用したらよいでしょうか」とDARPA副長官スティーブ・ウォーカーがワシントンの会合で問いかけている。
  2. DARPAの回答はグレムリン構想で、既存大型機の輸送機や爆撃機から小型UASを多数発進回収し、各UASに航空優勢が確立できない空域に侵入させ協調運用する。
  3. 別の構想がサイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルコーポレーション(SAIC)とArcXeonから出たエアステーションAirStation構想で、飛行船をUASの空中空母に利用する。両社は軍事用途以外に物流配送作業にも転用できると説明。
  4. 空飛ぶ空母構想は以前にもあり、米海軍は飛行船USSエイクロン、USSメイコンを1930年代初頭に運用した。全長785フィートのメイコンは三日間飛行を続け、カーティスF9Cスパロウホーク偵察機を3機内部格納庫に搭載した。
  5. 複葉機は飛行船から空中ブランコを展開して発進回収し、飛行船の巡航速度は60ノットで偵察機の失速速度55ノットを僅かに上回る程度だった。二機の偵察機を使いメイコンは165,000平方マイル(約427千平方キロ)に及ぶ海域を探査できたとSAICのロン・ホチステラーは言う。 
  6. エイクロン、メイコンは飛行船と航空機の組み合わせで偵察能力を向上する狙いがあったが、グッドイヤーは1930年代末にもっと大型の空母飛行船構想を発表していた。だが陸上運用偵察機の性能が向上し、費用対効果で対抗できなかったとホチステラーは述べる。
  7. 飛行船を長時間監視手段にする提案がでは米陸軍と空軍がイラク・アフガニスタン戦真っ盛りの時期に企画したが結局キャンセルされている。同じ機能は小型あるいは中型UASの分散型、多機種で各種センサーを使った運用で実現した。
  8. だがUASには支援設備が必要で、「発進する地上拠点や艦船は容易に移動できないし、政治的な理由で運用が不可能な場所や洋上地点がある」とホチステラーは言う。
  9. 「最大限にUASの性能を活用するには移動と地理的制約から自由が必要であり、そのためUAS運用に特化した飛行支援記機材が必要です」
  10. DARPAのグレムリン構想では既存機種を母機とし、おそらくロッキード・マーティンC-130輸送機を使うだろうが、飛行船に比べれば滞空時間は短く、母機自体にも地上支援が必要だ。小型UASと大型ターボプロップ機の速度差も問題だとホチステラーは指摘する。

無人航空機隊を運用するUAS空母飛行船の概念図 Credit: SAIC/ArcXeon


  1. 「専用機材が必要です。小型中型UASの性能をフルに発揮させる機材が必要です。専用のUAS母機はほぼ全空域で活用でき、同時に維持費用は負担可能な範囲です」
  2. 空母飛行船は自動運転でUASを発進、回収、燃料補給し、再発進させる。ロボットアームとコンピュータ画像処理を応用する。飛行船は水平線超え通信中継機になり、UASと地上操作員が連絡しあうことが可能となる。
  3. 飛行船への空中給油も可能だと両社は主張しており、洋上で燃料を詰めた袋を拾い上げる案(1950年代に実証されており1990年代にも実施している)や飛行船にドッキングできる改装航空機による給油案が浮かび上がっている。
  4. 「UAS空母飛行船の傑出した価値は長時間飛行性能でUASを必要な期間に渡り該当空域に展開させることにあります」とホチステラーは説明する。「UAS空母を安全なスタンドオフ位置に待機させることも可能ですが統制、燃料補給、置換できるようUASの活動空域に接近させることも可能でしょう」
小型非硬式飛行船がInstituのスキャンイーグルUAS二機を搭載する運用構想があるCredit: SAIC/ArcXeon

  1. SAICは傘下のレイドスとともにスカイバス30K、80K無人飛行船を開発した経験があり、後者は米陸軍向けに制作しペイロード実証テストで飛行している。
  2. 大型商用飛行船を開発中の企業は数社あり、ロッキード・マーティンや英国のハイブリッド・エアヴィークルスがあるが、エアステーション構想をまとめた両社によれば各社の設計案を利用すればペイロード40トンのUAS空母が実現できるという。
  3. 「大型商用飛行船にUAS発進回収システムズを搭載したUAS空母は開発可能で、運用試験できると思います。その場合、各種UASの軍事用途に加え、民間商用運行も視野に入ってくるでしょう」(ホチステラー)■


2016年7月26日火曜日

★★リムパックで中国が海上自衛隊を慣例に反し冷遇していた

人民解放軍は党の軍であり国軍ではありません。政治的に思考行動する組織だとまた証明されましたね。

うーん、この報道も国内には見当たりませんね。シーマンシップという常識は中国にはないのか、解放軍自体に問題があるのか、中国人の思考自体に問題がありそうですね。にしても日本が叩きやすい相手と見られているのは心外ですね。大中国に小日本ですか。海のプロの世界では例外と思っていたのですが、建前でしか行動できないのが中国海軍だとするとこれからのつきあい方も考えたほうがいいと思いつつ、日本は国としての矜持、徳性を維持すべきでしょう。皆さんはどうお思いですか。

Chinese RIMPAC Delegation Snubs Japanese Sailors

July 25, 2016 6:28 PM

Chinese sailors aboard the People's Liberation Army Navy destroyer Xi'an pose on the flight deck in route to RIMPAC 2016 after crossing the International Dateline. Xinhua Photo
日付変更線通過を祝う逐艦西安艦上の中国海軍隊員。同艦はリムパック2016に
参加Xinhua Photo



リムオブザ・パシフィック演習に参加中の中国海軍が艦内視察を海上自衛隊に拒否したうえ、艦上レセプションには嫌々ながら海自関係者を招待したことをUSNI Newsが把握した。
  1. 複数筋によると参加各国が停泊中にレセプションが催す中、7月2日の日本主催レセプションを中国が欠席した。さらにPLANは当初は海自代表を自国レセプションに招待せず、米側から公表され慌てて招待した。
  2. 米太平洋艦隊司令官スコット・スイフト大将と第三艦隊司令官ノラ・タイソン中将は各国が共同作業に加わることがリムパック成功の鍵と強調しており、両提督は7月5日の演習初日の訓示でもこの点に触れている。

Adm. Scott Swift, Commander, U.S. Pacific Fleet, addresses attendees during a news conference at Joint Base Pearl Harbor-Hickam, Hawaii at Rim of the Pacific 2016 on July 5, 2016. US Navy Photo
スコット・スイフト太平洋艦隊司令官が報道陣にパールハーバー共用基地で答えている。2016年7月5日。 US Navy Photo

  1. 海上自衛隊の隊員が中国艦の公開日に視察しようとしたがPLANに拒否されたとUSNI Newsは複数筋から把握した。
  2. 中国は初めて招聘されたリムパック2014を知る関係者は前回はレセプションや公開日で立ち入り制限は一切なかったとUSNI Newsに語っている。

Vice Adm. Nora W. Tyson, Commander, U.S. 3rd Fleet, and Rear Admiral Koji Manabe, Commander, Escort Flotilla 3, prepare to break a traditional Japanese sake drum in the hangar bay of Japan Maritime Self-Defense Force destroyer helicopter ship JS Hyuga (DDH 181) during a reception for Rim of the Pacific 2016 on July 2, 2016. U.S. Navy Photo
ノラ・W・タイソン中将(第三艦隊司令官)と眞鍋 浩司海将補(第三護衛隊群司令)が日本伝統の鏡開きに臨む。海上自衛隊ヘリコプター駆逐艦JSひゅうがのヘリ格納庫内で開かれたレセプションの席上。2016年7月2日。
U.S. Navy Photo

  1. 二年おきに開催のリムパック演習は20余ヶ国の海軍関係者が一同に会し、各国主催艦上レセプションで親交を深め各国理解を深める機会でもある。レセプションは海上演習開始前に開かれる。
  2. 前回までのリムパックに参加経験のある海軍関係者からはライバル意識が韓国や日本にあるとしても社交行事ではしばし忘れられるものだとUSNI Newsに指摘している。
  3. 中国がリムパックで示したあからさまな日本冷遇は中国政府の外交姿勢の反映と各筋は見ている。
  4. 「中国側は他国を冷たくあしらうことで自国待遇への不快感不満感を表しているのだろう」とマイケル・フックス前国務副次官補がUSNI Newsに25日語っている。「中国にとって日本は格好の標的だ」
  5. 軍組織同士の交流でも中国が政府首脳の政治感情でいきなり予定を変更するのはよくあることとジェイムズ・ホームズ海軍大学校教授もUSNI Newsに語っている。

Sailors on the PLAN guided missile frigate Hengshui hoist the Chinese Flag after arriving at the Joint Base Pearl Harbor Hickam to participate in the multinational military exercise RIMPAC in Honolulu, Hawaii, on June 29, 2016. Xinhua Photo
PLAN 誘導ミサイルフリゲート艦衡水が共用基地パールハーバーに到着後
中国国旗を掲揚している。同艦はリムパック参加のためハワイに7月29日到着。 
Xinhua Photo

  1. 米国でも台湾向け武器販売を理由に中国が軍事交流を中断したことがあり、米空母の香港寄港が予告なしに取り消されている。
  2. 「こちら側が軍交流が大切だと示したのは過ちで、あちら側は軍交流行事を中止しこちら側に不快感を覚えていると意思表示して一撃を加えたつもりになのでしょう」(ホームズ)
  3. ステニス空母打撃群の香港寄港をいきなり拒否してきた今年5月の直前には南シナ海でアシュ・カーター国防長官が乗艦している。
  4. 2013年には中国は誘導ミサイル駆逐艦青島をオーストラリア国際観艦式に週末だけ参加させ、他国艦艇がその後数日間寄港したのと対照的だったとホームズはThe Diplomatに寄稿している。シドニー港で青島乗員は艦内にとどまり、一般公開はなかったという。
  5. ホームズはハワイ港内の態度とは違い、中国政府は演習参加を評価しているという。「南シナ海問題の展開を考えると中国が軍同士の交流を中止しなかったのは驚くべきことだ」
  6. リムパックは8月4日までの会期で「27カ国、艦艇45隻、航空機200機以上、25千人」の規模だと米海軍は説明。■


次期大統領選用ヘリVH-92Aが製造段階へ


共和党、民主党の全国大会を経て、いよいよ大統領選挙運動は本格的なステージに入りますが、この新型ヘリコプターの主になるのは誰なのでしょうか。国防や安全保障にグローバルな視点を持つ人に大統領になってもらいたいものです。

US Presidential Helo Moves to Production Phase

Critical Design Review Is Successful

Christopher P. Cavas, Defense News3:17 p.m. EDT July 25, 2016
VH-92A Sikorsky Presidential Helicopter(Photo: Lockheed Martin/Sikorsky)
WASHINGTON – VH-92A大統領専用ヘリコプター更新事業がペンタゴンの大きな試練をくぐったとロッキード・マーティン傘下のシコルスキーが本日発表した重要設計審査CDR)が完了し機体製造組立工程が開始される
シコルスキーと海軍航空システムズ本部(NAVAIR)合同によるVH-92Aヘリコプター開発チームは7月に政府、民間産業会の主要メンバーを招き詳細な設計審査を行ったとロッキードは発表している。
シコルスキーは米海軍から12.4億ドルの固定価格インセンティブ付き技術製造開発(EMD)契約を2014年5月に交付され、テスト用2機、運用型21機を製造する。新型ヘリコプターは現行のVH-3DおよびVH-60Nを更新する。大統領専用ヘリコプター機材は海兵隊が運用する。
「CDRが完了したことで同ヘリコプターシステムが海兵隊の要求内容を満たすことが判明し、合理的な価格で維持可能な同ヘリコプターが重要ミッションを実施できる」と海兵隊のロバート・プリジェン大佐(NAVAIR大統領専用ヘリコプター事業主管)が声明文を発表した。
ロッキードはシコルスキーのストラトフォード工場(コネチカット州)でテスト用機材が改修中と述べている。VH-92Aの初飛行は2017年、2023年度までに機体全部が供用される。
VH-92AはシコルスキーS-92が原型。同事業はマイルストーンBの審査を2014年3月に通過している。■


2016年7月25日月曜日

★イスラエル空軍の成功の鍵は柔軟な思考形式だ



国家存続を賭けて懸命に国防力整備を図っているイスラエルには日本も大いに参考になる要素が多いです。国際共同開発に道が開けたことでイスラエルとの可能性も増えましたね。やや違和感を覚える同国の行動は目的から考える思考が背景にあるのでしょう。ただその結果として日本もF-22導入をイスラエルとともに断念せざるを得なくなったのは皮肉ですが。

War Is Boring We go to war so you don’t have to

An IAF technician with her F-15 at Hatzerim Air Force Base. IDF photo

How Israel’s Air Force Dominates the Sky

The secret is flexibility

by ROBERT FARLEY
イスラエル国防軍(IDF)の航空部門(IAF)は1960年代から一貫して国防の中心だ。戦場を制圧し一般市民を空爆から守ることで戦力を発揮しイスラエル国防軍に優位性を大きく与えている。同時にIAFは遠距離攻撃能力を遠隔地に実施する能力を実証している。
  1. IAFの今日の姿は効果的な訓練、敵側の弱点、戦力整備と導入の柔軟な対応で実現した。長年に渡りイスラエルは空軍主力機の調達に各種の選択肢を使い、フランス、米国からの調達に加え国産化も希求してきた。結局、米国製機材と国産開発の2つに落ち着いており、これが功を奏している。
Israeli F-16I fighters fly in formation on May 10, 2011. IAF photo
  1. 建国間もないイスラエルは入手可能な武器は手当たり次第に確保していた。このためIDFは古色蒼然たる各種装備を取り混ぜて運用しており、大部分はヨーロッパ製だった。
  2. 1950年代末になるとイスラエルは武器調達の関係を英仏両国とka確立する。フランスとは関係を深め、ミラージュ戦闘機はじめ高性能装備の導入に成功し、核開発でもフランスの技術支援は大きかった。
  3. ミラージュはIAFの主力戦闘機として1967年の6日間戦争の開戦直後の数時間で隣国の空軍部隊を壊滅させている。
  4. ところがフランスが武器禁輸措置を1967年に適用しイスラエルは苦境に立たされた。IDFは戦闘機をもっと必要とし、ミラージュで限界を感じていたのは中距離対地攻撃能力だった。このため、イスラエルは古来からの戦法、必要な物は盗め、を実施しスパイ活動でミラージュの技術を入手する。おそらくフランス当局もある程度これを認めていたのだろう。
  5. ここから戦闘機二種類が生まれた。イスラエル航空宇宙工業(IAI)のネシェルNesher とクフィルKfir だ。後者は強力なアメリカ製エンジンを搭載し、IAFの主力戦闘機になった。
  6. 両機種とも輸出に成功し、ネシェルはアルゼンチンが、クフィルはコロンビア、エクアドル、スリランカが運用した。
A Nesher fighter, an Israeli-made version of the Mirage 5, in Argentina in 2010. Jorge Alberto Leonardi photo via Wikimedia
  1. 両機が国内航空宇宙産業の発展につながり、イスラエル経済全体に波及効果を産んだ。国家財政で軍事技術を開発しても民生技術にイノヴェーション効果が出るとは限らない。
  2. ただしイスラエルの場合は政府投資が民生技術の初期開発段階で大きな後押し効果を産んだ。クフィルの成功によりイスラエルも国内で航空宇宙技術を確立できるとわかり、海外依存を減らせた。
  3. それでもイスラエルは海外調達も大規模に続けた。IDFはF-4ファントムを1960年代末に導入し、1970年代中葉にはF-15イーグルを調達した。後者では最初の機材が安息日に到着したことで政治危機も生んだがその結果、イトザク・ラビン首相が誕生し、国産戦闘機開発に舵を切ったのだ。
  4. 米国やソ連の空軍部隊と同様にIAFもハイ・ローミックスの戦闘機整備を目指した。これがラヴィ Lavi軽量多用途戦闘機の開発につながり、F-15イーグルを補完する存在とされた。
A Lavi B-2 prototype Muzeyon Heyl ha-Avir, Israel. Photo via Wikimedia
  1. ラヴィはF-16ヴァイパーが独占することになる隙間需要に応える存在で、一部は米ライセンスを受け、外観はF-16に酷似しながら主翼構造が異なっている。
  2. だが軍事技術を取り巻く環境は変化して、ラヴィの開発には巨額の国家投資が必要でありながら、F-16をそのまま買ってきたのと比べて得られる優位性は僅かだと判明する。
  3. さらに米国の輸出規制体制はフランスより厳格であり、違反した場合は危険な結果につながるとわかった。
  4. ラヴィも輸出すれば成功するはずと楽観視されていたが、米国技術を多用した戦闘機を堂々と輸出するのを米国が黙認しないのは明らかだった。このためラヴィ商談を進めれば問題はこじれるのは必至だった。
  5. 1987年8月にイスラエル政府がラヴィ事業を終了させると、IAIや関連部門から抗議の嵐が生まれた。同機を復活させる政治工作も失敗し、F-16の大量導入に踏み切る。
  6. その後、ラヴィはF-22ラプター輸出の途も閉ざす結果を産んだ。イスラエルがラヴィ(F-16も含む)の技術を中国に提供したことでJ-10が生まれたので、米議会はF-22輸出を全面的に禁じた。イスラエルも他の数か国同様にラプター取得の可能性がなくなり、同機生産が短命になる結果を産んだ。
Israeli F-16Is in flight. U.S. Air Force photo

  1. 純国産戦闘機開発の代わりにイスラエルは米国機材の大幅改造が好みのようだ。F-15I「雷鳴」とF-15I「暴風」は大幅改修を受けイスラエル用に特化した機材になっている。
  2. 両機種とも航続距離が伸び、エイビオニクス性能が引き上げられ、IDFは本国から遠く離れた地点でも十分に戦果をあげられる。
  3. このうちF-15IはF-15Eストライクイーグルの派生型で、IAFの長距離攻撃機の中心だ。F-35も同様にイスラエル仕様に改造しており、ソフトウェアの高性能化がそのひとつだ。
  4. IAIは多大な成功をとげてきたが、戦闘機事業は例外だ。IAIの成功は国内外向けに航空機部品を開発し販売することで達成しており、弾薬類、エイビオニクスが代表例だ。
  5. IAIはUAV市場にも参入しており、国内外で大きな業績をあげている。ラヴィで失敗したがイスラエルのハイテク国防産業分野は概ね良好な業績で、民生分野へも波及効果がある。
  6. イスラエルの国家産業政策の目標はハイテク・イノヴェーションに資金投入し国防と経済成長を同時に進めることだ。
  7. 現在のイスラエル航空宇宙戦略では米国との良好な関係の維持が欠かせない。これは機材の面でも技術共同開発にもあてはまる。
  8. イスラエルに幸運なことに米イスラエル同盟関係が当面は安泰だ。F-22は機密情報保全の懸念で導入できなくなったが、それで両国関係全体が危機になったわけではない。
  9. 今後想定外の事態が発生して、あるいはイスラエルが米国以外の相手先を探す必要が生まれても、イスラエル産業の実力は相当のもので部品やシステム開発能力があり相手先が見つからない事態は想像しにくい。■


2016年7月24日日曜日

☆★米空軍が考えるA-10後継機調達の道のり



CAS機というとA-10の印象が強い中、この記事によれば次期機材は当面は既存機種の転用、長期的には新型機の投入も可能と時間稼ぎのようなことをいっていますがどちらも軽量機となるとのことです。ということはA-10の再来は期待できないということですね。スコーピオンは検討対象外なのでしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

A-10 Warthog Replacement: U.S. Air Force Considers Two-Step Approach

Jul 21, 2016 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

A-10s: USAF
米空軍はA-10ウォートホグの後継機でローエンド軽攻撃機「OA-X」と高性能版の「A-X2」の二機種で構想している。
  1. A-10退役を2018年に迎える中で空軍はまだCAS任務機開発の道筋を決めかねている。7月20日に外部関係者に最新動向を説明する機会で軽攻撃機種2つを並列開発し長期短期双方のニーズに対応する考えを紹介している。
  2. 説明では「OA-X」は防空体制の低い環境用だとマーク・ガンジンガー、戦略予算評価センターのアナリストが述べている。OA-Xはローエンド、低コストで開発工程の不要な機体で既存の米空軍軽攻撃態勢を補強する存在だという。
  3. OA-Xでは既存機種の転用を考え、A-29スーパートゥカーノあるいはAT-6練習機が候補とローレン・トンプソン、レキシントン研究所のアナリストが述べている。
  4. 空軍はOA-XはA-10後継機ではなく補完機材だとガンジンガーは強調している。
  5. 空軍が注目するのが「A-X2」で長期的にはウォートホグ後継機になると両アナリストは言う。A-X2は低度から中度の脅威環境で運用できる機体が理想で、つまり航空優勢が確保できない戦場にも投入可能な機体だ。A-X2を完全新型機にするか、既存機を利用するかは未定だが、価格と運用開始までのリードタイムが重要だという。
  6. 新型軽量攻撃機構想を進める空軍は予算制約に直面する一方で運用機材の即応体制でも問題がある。空軍は安価な既存機種改造策でCAS任務以外にパイロット訓練の実施と機体数追加も目論んでいるとレベッカ・グラント、IRIS独立研究所長は説明している。
  7. 「即応体制の問題では稼働機材を増やすのも解決策で、そのため二機種開発案が出てきたのだろう」とグラントは述べ、「新型機も欲しいと考えているのだろう」
  8. ガンジンンガーは空軍は早ければ2019年度の事業目的記述文書Program Objective Memorandum (POM)にこの事業を記載すると見ていると述べた
  9. 「CASという重要任務をどう継続するか真剣に考えているはずです。現行機種が老朽化し、規模縮小する中で即応体制の問題は予算とからんできます。今回の空軍のメッセージは地上兵員の男女を守ることを空軍が真剣に考えている証です」とガンジンガーは述べた。
  10. ただガンジンガーは補正戦争予算である海外緊急作戦Overseas Contingency Operations (OCO)費目で必要な資金を確保する可能性もあると指摘している
  11. ただトンプソンは空軍が二機種を同時追加して機材近代化を進めようとすれば反対に遭遇すると指摘。
  12. 「空軍が単純なA-10後継機と見ていない理由にA-10の高コストが指摘があります。ただ一度に二機種を追加する動きは予想外」とトンプソンは認めている。■


★★★海自イージス駆逐艦こんごう級、あたご級にSM-2搭載へ

これも目立たないニュースですが中身は重要です。例によって自衛隊の呼称護衛艦は駆逐艦としています。

Japan Secures SM-2 Missiles for Destroyers

     Kongo and Atago Destroyers To Be Outfitted



Wendell Minnick, Defense News8:12 a.m. EDT July 21, 2016


636046852971898780-SM-2-2.jpg(Photo: Raytheon)


TAIPEI, Taiwan —スタンダードミサイル-2(SM-2を日本のこんごう級およびあたご級駆逐艦6隻に246発821百万ドルで売却する案件を米国務省が承認した

  1. 海外向け軍事装備販売を取り仕切る国防安全保障協力庁(DSCA)が7月19日に公表した。主契約企業はレイセオンBAE
  2. 対象はレイセオンのRIM-66M-09 SM-2ブロックIIIBで、MK13MOD O 垂直発射装備のカニスターも含む。
  3. 「イージス戦闘システムと組み合わせるとSM-2ブロックIIIBはこれまでより高性能の面での防衛能力を実現し、東アジアと西太平洋の防空、海上交通路防衛を担う」とDSCAは声明を発表。「日本には中間レベル整備施設が二箇所あり、SM-2ブロックIIIBの保守管理を行う能力があることで新装備の導入は円滑に進むだろう」
  4. 日本はあたご級を改良したイージス駆逐艦二隻を建造中で、ブロックIIIBが最初から搭載され、別に日本製ミサイルも採用する。
  5. 日本が防空体制の強化に努めているのは北朝鮮のミサイル、核開発が続いているからで、中国も東シナ海で日本が実効支配する尖閣諸島で不穏な動きを示している。
  6. 弾道ミサイル対応では日本はSM-3ブロック1Aを導入済みで、宇宙空間でのミサイル迎撃に対応している。レイセオンによれば日本はSM-3の試射に三回連続して米海軍のミサイル試射水域(ハワイ沖)で成功している。2007年、2009年、2010年にそれぞれ海上自衛隊駆逐艦から発射され太平洋上60から100マイル地点で中距離弾道ミサイルを迎撃している。
  7. 「日本は東アジアで主要な政治力、経済力を有する国であり、西太平洋でも同様に米国の主要な民主同盟国であり域内の平和と安定を守っており、域内で緊急事態が発生すれば重要な役割を果たす同盟国であり、国際協力上も密接な関係を果たす合意形成ができている国だ」と7月19日付DSCA報道発表は述べている。「今回の売却は米外交政策や国家安全保障の目的と合致しており、1960年の相互防衛援助協定に準拠している」■