2025年12月10日水曜日

海上自衛隊試験艦で高エナジーレーザーシステムの搭載を確認(Naval News)

 

海上自衛隊試験艦で高エナジーレーザーシステムの搭載を確認(Naval News)

  • 公開日:2025年5月12日

  • 稲葉義弘


海上自衛隊試験艦「あすか」に搭載されたレーザー兵器システム。写真提供:⚓︎アルザス⚓︎(Xユーザー @Alsace_class)


2025年12月2日、海上自衛隊の試験艦「あすか」の後部甲板に、コンテナ化された高エナジーレーザーシステムのプロトタイプが設置されていることが確認された。

防衛省は、既存の防空システムと比較して低コストの迎撃手段として、防衛装備庁の主導のもと高エナジーレーザーシステムの開発を進めてきた。現在進行中のレーザーシステム研究開発計画は、大きく分けて車両搭載型高機動レーザーシステムと、大型の高出力レーザーシステムの二種類に分類される。

車載型レーザーシステムは2021年度から2024年度にかけて開発が進められており、小型無人機対策を主目的とした10kW級レーザーを装備した大型トラックに全サブシステムを統合する。三菱重工業(MHI)が製造契約を獲得し、トラック搭載実証機は2024年10月に完成・納入された。実機は2025年5月のDSEI Japanで公開された。本プログラムの結果を踏まえ、陸上自衛隊では運用可能なレーザーシステムの配備に向けた取り組みが進行中である。

第二のタイプである高エナジー「電動駆動高出力レーザーシステム」は、2018年度から2025年度にかけて開発が進められている。この計画は、国産10kW級ファイバーレーザーを組み合わせ、100kW級システムを実現することを目指す。全ての機能を単一トラックに集約した車載システムとは異なり、このシステムは40フィートコンテナ2基で構成される。川崎重工業(KHI)が製造契約を獲得し、試作システムは2023年2月に完成・納入された。試験では既に小型無人航空機や迫撃砲弾に対する破壊試験が実施されている

「あすか」に搭載されたレーザー兵器システム。写真提供:⚓︎アルザス⚓︎(Xユーザー @Alsace_class)

現在「あすか」艦上で確認できるのは、この電動駆動式高出力レーザーシステムで、甲板上の40フィートコンテナ形状で識別可能だ。その目的は、将来のミサイル迎撃用高エナジーレーザー兵器の実現可能性を評価することにある。主要評価項目には、小型UAVや迫撃砲弾に対する破壊効果、持続的交戦能力、目標捕捉・精密追跡性能、目標探索センサーとの統合性、各種環境条件下での運用性能が含まれる。

さらに、2025年12月3日、ATLAは海上射撃試験で使用する標的ドローンの運用に関する入札を公示した。これは、JSあすかへの搭載が単なる適合性試験に留まらず、実弾射撃試験を含む可能性を示唆している。2025年度は本システムの研究開発最終年度であるため、艦船の揺れが激しい過酷な海上環境下での精密目標捕捉を含む実射試験が、艦載システムを用いて実施される可能性が高い。

将来的に海上自衛隊は、無人航空機や対艦ミサイルに対抗可能な艦載レーザーシステムの実用化を目指している。現在の試験はその目標に向けた重要なデータを提供すると期待される。現時点では、主に電源装置と蓄電部品の大型化が原因で、システムサイズの縮小が大きな課題となっている。一般的に高出力レーザーのエナジー変換効率は約30%であり、100kW級レーザーには少なくとも300kWの電力供給が必要となる。将来の取り組みでは、民生技術の活用などによる小型化に注力し、艦艇への搭載を可能にすべきである。

さらに、2025年度よりATLAは、電気駆動高出力レーザーシステムの成果を海上自衛隊向け艦載レーザー兵器開発に応用する新研究プログラムを開始した。「艦載レーザーシステム研究」と題されたこの取り組みは、艦艇に接近する小型無人航空機や片道攻撃ドローンを無力化することを目的とする。ATLAはこのプログラムで達成すべき以下の目標を定めている:

1. レーザー交戦制御システム技術の獲得:

艦船搭載を目的としたレーザーシステムに必要な技術を確立する。具体的には:

  • 対空捜索レーダーデータやその他のセンサー入力に基づき、複数の同時目標に対してレーザーエナジーを識別・精密誘導する技術。

  • 360度の全交戦領域をカバーするため、複数のビームディレクター間で目標を転送する技術。

  • ビームディレクターを天頂方向に向ける技術。

  • 照射された目標に対するレーザー交戦の効果を評価する自動戦闘損傷評価技術。

2. 艦載適合性の達成:

艦船への搭載・運用に必要な技術を確立する。具体的には:

  • 艦船の揺れ、飛沫、その他の海洋環境に対する耐環境性を確保する技術。

  • 新規建造艦艇及び既存の海上自衛隊艦艇への両方の設置を可能にする技術。

研究試作装備は2025年度から2029年度中盤にかけて開発され、実証試験は2027年度から2030年度にかけて実施される予定である。■


稲葉義泰

稲葉義泰は、静岡県在住のフリーランスライターである。日本で数少ない若手軍事ライターの一人であり、現在は日本の大学院で国際法(特に自衛と武力行使)を研究している学生である。日本の陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に特に精通している。


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