2019年3月28日木曜日

台湾海峡を米海軍、沿岸警備隊が無害通航:中国が例によって猛烈抗議したが国際社会に受け入れられず

中国にとって国際規範、国際法、国際慣行は意味がないのでしょう。自国の権益、メンツがすべてなので平気で台湾海峡を無害通航する外国艦船に対して恫喝してくるのでしょう。沿岸警備隊が今回からこの地域に配備されてきたのは北朝鮮制裁の執行を強化する狙いがあり、北朝鮮はともかくシンパシーを全面に出す韓国にも状況は刻一刻と厳しくなってきたようです。

U.S. Navy Destroyer, Coast Guard Cutter Transit Taiwan Strait

米海軍駆逐艦、沿岸警備隊カッターが台湾海峡を通行


March 25, 2019 12:58 PM

USS カーティス・ウィルバー (DDG-54), USCGC バーソルフ (WSML-750)



海軍のアーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦、沿岸警備隊の大型カッター各一隻が3月25日台湾海峡を縦断した。同海峡の米艦船通行は半年で5回目。この動きに中国が即座に反応した。

USSカーティス・ウィルバー(DDG-54)と沿岸警備隊USCGCバーソルフ(WSML-750)が約110マイル幅の同海峡を月曜日早朝に航行したと The Japan Timesがまっさきに報じた。

第7艦隊報道官クレイ・ドス中佐は「台湾海峡通行を3月24日-25日(現地時間)に国際法に則り実施した。今回の台湾海峡通行は米国が進める自由で開かれたインド太平洋の堅持に向けた取組の一環」と発表。


2013年東シナ海を通行するUSS カーティス・ウィルバー (DDG 54). US Navy Photo



中国関係者は米艦船の台湾海峡通行に異議を唱えた。

「中国は事態を注視し米軍艦の台湾海峡をはじめから終わりまで監視した。我が国は米国内の代表部を通じ一つの中国原則および中米共同声明三原則の遵守を守り、台湾関連問題に対し慎重かつ適正な対応を求め、中米関係への悪影響を回避し両岸の平和安定を妨げないよう求めたところである」と中国外務省報道官耿爽Geng Shuangが月曜日の定例記者会見で述べたと同省英語公表資料にある。

国務省によれば中国の台湾関連の主張に米外交政策は異議を唱えていない。中国は外国海軍艦船の同海峡通行では事前通告を求めているが国際海洋法で根拠がない要求だ。


米海軍は艦船通行は国際法に則っており中国の要請は無視している。国際法では艦船は領海内でも軍事行為をしないかぎり通行を認めているからだ。

カーティス・ウィルバーは前方配備駆逐艦戦隊15に所属し、横須賀を母港としているバーソルフは母港カリフォーニア州アラメダから西太平洋に長期展開中だ。

バーソフルは一週間前に東シナ海哨戒を終えており、国連安保理決議に基づき北朝鮮向け物品の海上での船舶間移送を防止した。沿岸警備隊総監カール・シュルツ大将は沿岸警備隊年次活動報告で以下延べていた。

バーソフルの現地展開は「重要な国家活動で、国際的にも重要」とシュルツ総監は述べ、同カッターが米インド太平洋司令部のもとに活動する様子を伝えた。「海軍が活用している。暦年の2019年一杯は支援を続け、その後どうするかは別途お知らせする」とした。■

中国・ロシアに勝利できる米空軍の機材構成はどうあるべきか----シンクタンクCSBAの提言


シンクタンクCSBAの報告書の紹介です。予算法案を通過させながら外部シンクタンクに精査を依頼し提言に耳を傾けるのが米国式なら、国会で好き放題に空理空論を提示シアとは知らん顔というのが日本です。日本のシンクタンクも安全保障問題をしっかり提言出来る実力があると思うのですが、耳を傾ける度量が官庁にあるかが問題ですね。


What aircraft does the US Air Force need to beat China and Russia? This new study has an answer. 
中露に勝利すべく米空軍で必要な機体を新規報告書が提言


By: Valerie Insinna    
B-21は2020年代中頃までに実用化されるが極秘機材の詳細は不明のままだ(Design by Devan Feeny/Staff; Image by U.S. Air Force and Getty Images)


来の中国やロシアの脅威への対抗上386個飛行隊が必要と米空軍が昨年9月発表した。だが議会の求めで検討した結果ではこの規模では不十分と推定している。
シンクタンク戦略予算評価センター(CSBA)の検討結果をこのたびDefense Newsは独占的に入手し、新規技術としてステルス戦闘無人機、新型無人偵察機を敵領空に侵入可能な機体として、さらに全く新型の給油機の開発開始を空軍に提言していることを見つけた。
今回の検討結果は2018年国防方針法案我に求めていた調査機関MITRE Corp、CSBAとともに空軍にようる将来の戦力構造提言の一環だ。
CSBAは給油機、爆撃機、戦闘機、戦闘偵察無人機、指揮統制・情報収集監視偵察機が致命的な機材不足だとし、特に爆撃機、給油機、無人機で機数増加が必要と見ている。
爆撃機についてCSBAは現有の実戦飛行隊9個を24個体制に将来増やすべきとしている。(CSBA提言では特定年を上げていない。将来の空軍部隊の姿の仮定に空軍で想定しない機体が含まれるため)
戦闘機部隊は現行55隊を65隊に増やし、給油機は40隊を58隊にすべきとする。攻撃・偵察無人機はMQ-9リーパー中心の25隊を43に急増すべきとしている。
C2/ISR機は現在E-8JSTARS、RC-135各型、RQ-4グローバルホークの40飛行隊があるが33隊にできるという。ただしCSBAは老朽化している戦闘統制機材を各種システムで構成する高性能戦闘統制装備に統合し、対象範囲とリンクを拡大すべきとしている。
CSBAは議会審査前のためこれ以上詳細に触れられないとしている。
報告書は国防総省ウェブサイトで閲覧可能だったがその後削除されている。


米空軍が必要と(考える)内容とは


CSBA評価は空軍独自の分析と対照的だ。空軍は現状の312飛行隊の386への増加を中心に据えている。空軍による「必要な空軍像」はCSBA研究内容と異なり宇宙、サイバー、ミサイル、空輸、戦闘救難等のCSBAが触れていない機材を盛り込んだ。
空軍は爆撃機14個飛行隊、戦闘機62飛行隊、給油機54個飛行隊、無人攻撃偵察27飛行隊、C2/ISRで62飛行隊が2030年までに必要と独自検討ではじき出した。ただし空軍はこれを実現した場合の調達業務への影響や現行事業を継続して目標達成できるかは明示していない。
もう一つの相違点は空軍、CSBAが別々の脅威をもとに提言していることだ。空軍参謀総長デイヴ・ゴールドフェイン大将は386隊体制は「互角戦力を有する大国を打倒する一方でやや戦力の劣る脅威を抑止する」のに必要と述べた。


This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.来の戦力構造での提言内容。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.

対照的にCSBAは現実的かつ高い目標から空軍像を検討した。まず空軍は互角に近い相手との大規模戦闘に直面するはずとし、その例に「南シナ海での中国軍との大規模戦」を上げた。またその10ないし20日後に、別の互角に近い相手として「ロシアによるバルト海諸国侵攻」のような動きに対応を迫られると想定した。
将来のロシアや中国は手強い相手になり、現在でも対応が難しい状況が「高度なまで対応困難」になるとし、移動式かつ相互関連式の地対空ミサイル装備がパッシブセンサー他で米軍機を探知可能となる事態を想定した。
「こうした装備の威力が高まり、各地に配備されたところに新鋭戦闘機、電子戦機、サイバー攻撃他の脅威が加われば米軍機には全方面で多様な範囲で難易度が上がる」とある。
現時点ではこの想定に対応可能な機材は米空軍にないとCSBAは指摘している。B-21爆撃機の生産がノースロップ・グラマンにより始まったが実戦投入は2020年代なかごろの目標だ。
中国、ロシアが高性能かつ広範囲の防空体制を構築するなか、長距離ステルス爆撃機で防空網をかいくぐり、地対空ミサイル陣地を粉砕し重要施設を破壊し僚機に進入路をつくりスタンドオフ攻撃させさらに深部攻撃をさせることが米国で重要性を増している。
だがCSBA分析では空軍のB-21導入規模は不十分とある。
「空軍想定のB-21の100機配備では大国相手のハイエンド戦ひとつだけでも不足」とし、B-21レイダー288機の導入を提言した。
CSBAはB-21調達のペースを早め「年間生産を2020年代末で10ないし20機に増やせば2030年までに55機のB-21が揃う」としている。
一方でB-52およびB-2は維持し、B-1はB-21就役と交換で退役させるべきとある。
This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.2030年時点の米空軍機材整備提言。This data was collected from the Center for Strategic and Budgetary Assessments report.


戦闘機部隊


F-15Xをボーイングから調達すべきか


研究報告は明確に「ノー」とし、新規製造F-15に予算を使えば次世代戦闘機予算を消費する、空軍には新型機の早期実現の予算が必要だとする。
F-15Xは「第四世代プラス機材」で高性能だが将来の過酷な環境下で生存の可能性なしと評価し、「空軍はF-15C/Dの退役後はF-35A改装型を今後登場する航空優勢用のシステムファミリーへのつなぎとすべき」とする。
研究では第六世代戦闘機(侵攻型制空戦闘機PCA)の開発を優先すべきでF-35Aの年間70機調達を急ぐべきとしている。
PCAの実態は不明だが、極秘事業として開発は初期段階にある。研究では高速長距離性能のシステムファミリーとして敵領空深くに侵攻し防空体制を無力化し僚機に侵入口を開く機材と想定している。
PCA開発を促進すれば2030年までに最低50機の導入は可能で、B-21開発事業を範とすべきとする。「成熟技術を最大限活用し他機で開発ずみのミッションシステムを採用すれば時間と費用を短縮してPCAが実現できる」とあり、「同機の性能はいますぐにでも必要であり、開発に最高度の優先順位をつけるべき」としている。
CSBAはF-35の運用機数が増えることを前提にF-16の順次退役も提言する。またF-22ラプターおよびF-15Eの近代化改修も提言。A-10ウォートホッグ10個飛行隊は2030年代までに予定通り退役させるが近接航空支援の専用機材は整備すべきでないとしている。
「将来の精密攻撃可能な機材で近接航空支援能力も可能となるので空軍はA-10後継機として航空優勢が確保された環境でしか運用できない機材は開発すべきでない」


給油機


空軍の給油機457機で機齢平均が53年となっているように給油機は旧式化しており、将来の脅威環境に対応できない。そのため空軍は最新の給油機ボーイングKC-46調達を継続しKC-10の全機退役から始めKC-135も順次退役させるべきとCSBAは説明。
2030年までにKC-10は全機KC-46に置き換え、KC-135で最古参の50機を退役させる。KC-46が179機そろうと給油機は合計520機になる。
その時点でKC-46は改修し「通信状況認識中継点として多ドメイン運用の支援ならびに脅威への対抗手段機能の実施」を可能にすべきと提言している。
さらにKC-46に続く給油機を早期開発し630機体制を確立すべきとする。CSBAの考える将来の給油機は米国内でKC-46等有人機を運用し、国外では小型無人機を任意有人操縦機として厳しい空域で運用するもので戦闘機等の燃料需要に分散型の「オフロードポイント」を確保する。
小型無人給油機を制空権が未確保だが低脅威度の空域にも進出させれば「侵攻機の飛行距離を延長させ」つつパイロット等の人命を危険にしない方法が実現できると報告書は指摘。


ISR/軽攻撃無人機の将来像
2030年時点の米空軍はMQ-9リーパーを今日同様に供用するが、使用用途はかわり、本土防空任務にもあてる。だがCSBAは「喫緊の必要」としてステルス戦闘UAVのMQ-X開発をあげ、攻撃、電子攻撃、叡空任務をこなし他の無人機有人機との共同作戦もできる機体を想定する。


各種ステルスUCAVの開発が中途で挫折している。一例が海軍が進めていた空母運用型攻撃偵察機UCLASSで、2016年に中止となり、その後MQ-25給油無人機として復活した。
CSBAは空軍はこうした経験をもとに「敵の強固な防空体制の中に侵入し残存可能なUCAVをMQ-Xとして至急開発すべき」と述べている。MQ-Xは68機必要とし、すぐ開発開始すれば2030年頃には40機がそろうと述べた。
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)
An MQ-9 Reaper at Nigerien Air Base 101, Niger. (Joshua R. M. Dewberry/U.S. Air Force)


空軍はファミリー構成の無人機をMM-UASつまり多任務無人航空システムとして配備し現行無人機各種と2030年代に交代させるのがよいとCSBAは述べている。MM-UASは既存技術をもとにするか現行機材を発展させてもよいとある。
新型機は航空優勢が確保ずみ空域、未確保空域双方に投入され偵察、空爆、通信中継等各種ミッションをこなす。


ISR とBMC2 機材
空軍の全装備中でもISR機材および戦闘管理統制指揮機材ほど革新的変化が2030年代に必要となる機材はないとCSBAは考察。
U-2スパイ機、RQ-4グローバルホーク無人機、E-3早期警戒機はそれぞれ2030年まで運用を続けるべきとある。RC-135ファミリーの特殊任務機材リヴェットジョイント、コブラボール等は2040年代にかけ供用可能だ。ただしE-8CJSTARS地上監視機は2020年代中頃に退役が必要となり、そこで生まれる能力ギャップは他機種で埋めるべきと同シンクタンクは考えた。
CSBA予測で空軍に高性能戦闘管理システムが登場するのは2030年代初期とし、21組のシステム導入を提言。
空軍が考える高性能戦闘管理システムは各種システムの組み合わせファミリー構造で指揮統制機能だけでなく偵察監視機能を対地、対空で分散型で実現し、制空権の未確立空域への投入も想定する。ただし、空軍は統合するセンサー、機体、通信機器の種類を明示していない。
これに対しCSBA提言はは大きく異なり、敵地侵攻型ISR無人機P-ISR)を2030年代中に開発し、「空軍の状況認識機能の将来像として最大の優先順位をつけるべき存在」としている。
現時点で空軍にそのような機材の開発構想はない、少なくとも公表ずみの案はない。だがCSBA報告書は無人スパイ機が将来のロシア、中国との武力衝突で大きな役割を果たすと予見する。
「長距離侵攻型ISR機材は北大西洋条約加盟同盟国へ侵攻する装甲車両部隊等の阻止攻撃に不可欠になる」としロシア想定の戦闘を想定している。「また移動式地対空ミサイルの探知、把握、追尾、捕捉にも必要な装備となり、中国、ロシアの接近阻止領域拒否用ハイエンド装備への対応にもつながる」■

2019年3月27日水曜日

航自が東シナ海上空へ緊急発進 中国海軍KQ-200対潜哨戒機と初遭遇

コメントは下にあります。


Japanese jets intercept Chinese anti-submarine aircraft, says Tokyo

中国対潜哨戒機に空自戦闘機が緊急発進と日本が発表


By: Mike Yeo    

KQ-200の機体番号からPLAN東方戦域司令部東海艦隊第一航空師団所属の機体と判明。(Japanese Defense Ministry)

国海軍の対潜哨戒機が東シナ海上空にあらわれ航空自衛隊戦闘機が緊急発進していたことが判明した。同型機ではじめての遭遇となった。
防衛省統合幕僚監部が3月23日発表し、中国の「Y-9」哨戒機の2機編隊に日本が戦闘機隊を緊急発進させたとある。公開された写真を見ると陝西KQ-200対潜哨戒・海上監視機で潜水艦探知用の磁気異常探知装備のブームが特徴だ。
防衛省が公表した地図では中国機編隊は沖縄西方200マイル、尖閣諸島の北を飛行とある。
中国機尾翼の機体番号から人民解放軍海軍第一航空師団所属と判明した。同師団はPLAN東海艦隊隷下でKQ-200を2018年から受領しており上海に近い大廠Dachangが基地といわれる。
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More on the 2x PLAN KQ-200/Y-8Q/GX-6 MPA intercepted by the JASDF on 20MAR. Serial of aircraft photographed (82014) shows it is from the 1st Naval Air Div. of the PLAN East Sea Fleet/PLA Eastern Theatre Command based at Dachang in Shanghai https://www.mod.go.jp/js/Press/press2019/press_pdf/p20190320_01.pdf …
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2018年4月撮影の衛星写真ではKQ-200が2機同基地に駐機しているのがわかる。今回の2機の飛行経路を防衛省が発表しており、それによると上海から出発し帰還している。
KQ-200はY-8Qとも呼ばれ、陝西Y-8、Y-9ターボプロップ輸送機を改装したものだ。一部は早期警戒機、電子戦機材、情報収集機になっている。
KQ-200にはMAD以外に機首に海上捜索レーダーをつけている他、機内前方に兵装庫がある、通信装備を強化している。
KQ-200は試作型が2011年に完成し、量産型は2015年に目撃されているが、PLAN南方艦隊の海南島への配備が2017年5月判明した。
PLAN北海艦隊もKQ-200を受領している。遼寧省土城子Tuchengzi に6機が配備されているのが2019年2月に判明した。
日本は防空識別圏に接近する外国軍用機を探知した場合、戦闘機を緊急発進させ随行させている。中国軍用機が対象の緊急発進回数はここ数年増加している。■

中国機の活動はすべて日本にお見通しということですね。それにしても今回も沖縄からの発進と思うのですが、機材の寿命を削られているのは心痛いものがあり、航空自衛隊の機材運用のストレスが高まるのは心配です。統合幕僚監部の発表資料https://www.mod.go.jp/js/Press/press2019/press_pdf/p20190320_01.pdf は無味乾燥でしたのでこの記事の解説は参考になります。上ツイッター書き込みでは3月20日のこととわかります。南西方面の自衛隊部隊にはご苦労さまと言いたいです。

主張 仏独共同開発による次期戦闘機事業は失敗に終わる

(コメントは下にあります)

Aviation Week & Space Technology

Opinion: Why Franco-German Fighter Is A Very Bad Idea

仏独共同開発戦闘機事業が失敗する理由

Mar 19, 2019Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology
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ランス、ドイツ両国は65百万ユーロ(74百万ドル)の契約を先月調印し、共同開発戦闘機を次世代戦闘航空装備(FCAS)として最初の二年間分の実施にあたる。これまで半世紀に渡る実施形態からの離脱となる。ドイツは英国等と共同で戦闘航空機を製作し、フランスは独自開発の道を歩んできた。だが今回は英国のEU離脱がひきがねとなり、両国が同じ道を進むことで合意したのだ。
表面だけ見れば意味のある合意だ。ドイツ、フランス両国はエアバスの中核となっており、両国の軍がヨーロッパでは英国除けば戦闘機需要の大部分を占める。フランスの軍需産業は欧州最強である。ただ共同事業そのものに実は欠陥があり、この欠陥はかなり深刻なため同機開発そのものが立ち行かなる可能性がある。
まず、両国の外交政策、武器輸出の実態で方向性が異なる。ドイツは自国武器の購入者に注意を払う。BAEシステムズからユーロファイターのサウジアラビア向け第二次販売の発表が2月にあったが、サウジがイエメンで戦闘を展開しているためドイツは同国を独自に武器禁輸の対象にしている。


ドイツはエアバスA330-多任務給油輸送機、C-295輸送機、H145ヘリコプターの輸出も禁止している。退任迫るエアバスCEOのトム・エンダースは「エアバスにとってドイツが独自に販売禁止措置をとっていることで気が休まらない。フランスで生産したヘリコプターでドイツ製部品が入っているから輸出禁止といってくる」と La Tribune紙上で述べている。
外交政策の違いはBAEや英国にとっても問題だが、もっと影響を受けるのがフランスでありダッソーだ。このフランスの航空宇宙企業は輸出依存度が特に高いのは国内市場の規模が小さいためである。ミラージュIII/V、ミラージュF1、ミラージュ2000の各事業は輸出比率が65%にも達している。ヨーロッパ全体で生産したトーネードでは輸出は一国のみ、ユーロファイターでさえ輸出比率は24パーセントしかない。
フランス機の仕向先は大きく異なる。ミラージュF1の最大の顧客はサダム・フセインのイラクだった。アパルトヘイトの南アフリカ、カダフィのリビヤも主要顧客で、ラファールではアラブの春を経たエジプトが最初の導入国になった。ドイツならこうした各国に武器輸出を認めるとは到底考えにくい。
次に仏独共同開発とはいうもののフランス企業がめだつことだ。ダッソーが機体製造を主導し、同社はエアバスとの協力で良好な記録を残しておらず、エンジンはサフランが中心となるもののMTUに作業がゆくか不明だ。レーダー含むエイビオニクスではタレスが主契約企業になるのは確実だがここでもドイツ企業の参画ははっきりしない。
1980年代初頭にフランスは五番目のユーロファイター共同開発国になるや作業量46パーセント相当を要求したが当然ながら受け入れられなかった。
端的に言えば、FCAS事業に残る意味がドイツにあるのだろうか。わずか25パーセント相当の作業量に多大な経費負担の価値はあるのか。貢献度が小さいにもかかわらずフランスはドイツを招いて輸出ビジネスをわざわざ複雑にするのか。
2つとも解決不能かもしれない。だが欧州には次期軍用機の開発で協力の必要がある。上のグラフのように既存事業は受注量が減っていく。Saabグリペンおよびラファールは2020年代も大丈夫だが、ユーロファイターやA400Mは2020年代中に生産終了となる。Teal Group予測ではヨーロッパの軍用機生産は10年後までに6割超減少する。欧州の防衛産業は新規事業がないと大打撃を受ける。
解決は単純だ。FCASはブレグジットの悪夢から生まれた発作反応と見るればよい。ブレグジット問題が落ちつけば、歴史は普通のコースに戻り、イタリアやスウェーデンも加わるだろう。フランスについて言えば単独で事業を進めるのが良いことは歴史が証明しているとおりだ。■
Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.  
The views expressed are not necessarily shared by Aviation Week.

ヨーロッパがどんどんだめになっていく気がするのですが、こと軍用機に関する限りアメリカ製装備を排除したくて独自に開発するものの結果として非常に高価なのに使えない機体ばかり作っている気がするのですが。ヨーロッパの理屈でしか使えない機材を整備してそれでいいのでしょうか。そういえばF-35導入を主張しドイツ空軍制服組トップが更迭されていましたが、ヨーロッパ優先を唱える政治家の餌食になったのですね。

2019年3月26日火曜日

今の米国で中国、ロシアと同時に戦えるのか、日本はどう対処すべきか

ファーレイ教授は意外に日本が米国政策を支援しない可能性を想定していますね。ま、たしかに国際政治では大国の政策に盲従することは考えにくいので極めて現実的な認識でしょう。要は国益をどこまで認識しているかと言う問題ですが、日本が黙っていられない状況に国際貿易の自由が脅かされることがあり、この国の去就を握るのは海上交通路であることはどこまで理解されているのでしょうね。米国主導の国際秩序の維持には有志連合であり、共通の価値観を認識できる国家群が集結するしかありません。NATOに比べ、こっち側の状況は相当遅れているようです。



War Nightmare: Could America Fight Russia and China Simultaneously? 

ロシア、中国を相手の同時開戦はアメリカの悪夢か。

Let's find out.



国は誤解されがちだった「二方面戦」方針を2000年代末に放棄した。これは2つの戦域での継戦戦力の実現が狙いだった。北朝鮮へ抑止力をきかせながらイランやイラクのどちらかと戦う構想をもとに国防総省は調達、補給、基地配備の戦略を冷戦後に模索してきた。前提としてソ連の脅威が消えたことがあった。米国がこの考え方を放棄した理由に国際環境の変化があり、中国軍事力の台頭、テロリスト勢力のネットワーク拡大があった。
だがこの瞬間に二方面作戦を米国が強いられたら、しかも北朝鮮やイラン以外の相手の場合どうなるか。中国やロシアが協調し太平洋と欧州で同時開戦したらどうなるか。
政治協調
そもそも北京とモスクワが調整のうえ危機的状況を発生させ米軍に二方面で挑む事態は発生するのだろうか。可能性はあるが高くない。両国とも目指す目標が別であり自国の大日程がある。より可能性が高いのは一方が発生中の危機状況を利用して自国の権益を伸ばそうとすることだ。たとえば米国が南シナ海で動きがとれない間にモスクワがバルト海諸国に圧力をかけることだ。
いずれにせよ、戦火を開くのはロシアあるいは中国だ。米国は両方の地域で現状維持から利益を享受する側であり、政治目標達成には外交経済面の手段を選ぶのが普通だ。米国が有事に至る状況をつくれば、ロシアあるいは中国が引き金をひくだろう。
柔軟対応力


良い面は欧州、太平洋の戦闘に必要条件が重複することだ。第二次大戦事例のように米陸軍が欧州防衛にあたり、米海軍を太平洋に集中すればよい。米空軍は両戦線の支援役にまわる。
ロシアには北大西洋でNATOを打ち負かす戦力がないし、政治的にもこれを試す度胸はないだろう。つまり米国とNATO同盟国はロシアを海上で脅かすべく資源を割り振るればロシア海軍への担保とできる。米海軍は太平洋に主力を集中できる。戦闘期間や事前警告の有無にも左右されるが、米国は米陸軍装備を欧州に大量に運びこみ戦闘力を増強できる。
一方で空母、潜水艦、水上艦の大群を太平洋からインド洋に展開し、中国のA2/AD体制を崩し、中国の海洋交通路を狙い撃ちする。長距離航空戦力としてステルス爆撃機の投入が両方面で必要になるだろう。
少なくとも片方の戦域で可能な限り迅速に勝利を掴む圧力を米軍は感じるはずだ。このため米国は空、宇宙、サイバーの各領域の装備を重視して戦略的かつ政治的な勝利を確立し、残る装備をもう一方の戦域に集中するはずだ。欧州内同盟各国の軍事力を考えると米国はまず太平洋に中心をおきそうだ。
同盟関係
太平洋での米同盟国の構造は欧州と大きく異なる。欧州では一部同盟国の取り組み方に懸念が残るものの、米国としてはNATO同盟関係の維持を除けば欧州でロシアに対して戦闘を行う理由がない。もし米国が戦えば、ドイツ、フランス、ポーランド、英国が続くはずだ。通常戦シナリオの大半では欧州同盟国だけでも中期的にはロシアへ優位に立てる。ロシアがバルト海諸国を占拠してもNATO空軍力の前に相当の被害を受け占領地も長く維持できないだろう。この関連でUSN、USAFともに支援役にまわりロシア軍を打ち破る優位性をNATO同盟各国に確保する。米核戦力がロシアの戦術、戦略核兵器投入への担保となるはずだ。
だが太平洋で米国の状況はより困難だ。日本あるいはインドが南シナ海に権益を感じても参戦してくれる保証にならないし、中立に回る可能性もある。同盟国が戦列に加わるかは有事の個別条件で変わる。フィリピン、ヴィエトナム、韓国、日本あるいは台湾が中国の主要標的だ。残る各国は米国の圧力は別としても様子見にまわりそうだ。これにより西太平洋における優位性の確立が米国単独では課題になる。
結論
米国には同時に二方面で勝利することも可能だが、それにはロシアあるいは中国が大きな賭けに出てこないことが条件となる。米国にこれが可能なのは世界最強の軍事力を維持し、ずば抜けて強力な軍事同盟を率いているためだ。さらにロシアや中国による軍事課題がそれぞれ異なるため、米国は軍事力を一方に割り振り残りをもう一方に配分できる。


とはいえ、今の状況が永久に続く保証はない。米国も優位性を無期限に維持できず、長期的にはより慎重に対応策の選択を迫られそうだ。同時に米国が形成した国際秩序から世界有数の各国が繁栄を享受しているので当面はそうした各国を頼りにできる。■
Robert Farley , a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government.