2020年1月15日水曜日

中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに現実を直視できない日本

日本人にとってイスラエルの存在は理解しにくいようです。イランが自制しているのはトランプが怖いからではなく、イスラエルがいるからでしょう。その背後に核兵器があり、だからイランは核兵器開発に躍起となり、イスラエルは核の独占を破られるのを恐れ、イランを牽制しているではないでしょうか。核兵器を道徳上の悪と非難する向きがありますが、現実の世界では抑止力を生む核兵器は保険として有効です。ただし、保有していてもノーコメントを何十年も貫ける個性の強さがユダヤの強みなのでしょう。某半島の民族には無理ですね


2016年9月、元国務長官コリン・パウウェル陸軍退役大将がイスラエルが「核弾頭200発」を保有と電子メールでほのめかし大騒動になった。数字は誇張気味だが、噂は広がった。イスラエルの核兵器は通常戦での敗北を阻止し、核・化学・生物兵器による敵国の攻撃を抑止する働きをしている。目標は一つ。イスラエル崩壊を防ぐことだ。

イスラエルが核兵器開発を決めたのは1950年代のことだ。ベン-グリオン大統領は敵国に包囲されたイスラエルの生存の鍵は核兵器と執念を燃やしていたと言われる。貧しく生まれたばかりの小国イスラエルには過大な夢だったが、イスラエルに大国から安全保証はなかった。自力で、時にはブラックマーケットで通常兵器を調達してイスラエル国防軍の装備を整えた。迫害を経て自決の道に歩みだした同国民にとって核兵器は究極の保険手段だった。

ベングリオンは科学顧問エルネスト・ディヴィッド・バーグマンに極秘核開発をイスラエル原子力委員会から指揮するよう求めた。後に大統領、首相を歴任したシモン・ペレスはイスラエルに親近感を覚えるフランスへ接触し、大型重水炉がプルトニウム再処理工場と供与された。使用済み核燃料は核兵器の重要な材料となる。原子炉はネゲブ砂漠の中、ディモナに作られた。1960年代末の米国の評価ではイスラエルの核兵器装備は「ありえる」とあり、米国は核開発を遅らせようとし、イスラエルが核非拡散条約に加盟すれば動きがとれなくなると考えていた。1969年9月、ニクソン大統領はイスラエル首相ゴルダ・メイヤと秘密合意に至り米国は査察をやめ、イスラエルは非拡散に合意し、見返りにイスラエルは核兵器の保有宣言も核実験も公表しないという内容だったと言われる。

イスラエルにとって初の危険状況はすぐにやってきた。1973年のヨム・キッパ戦役でアラブ各国軍は奇襲攻撃に成功し、イスラエル地上部隊はシナイ砂漠、ゴラン高原の双方で敗走を強いられた。イスラエルの核爆弾が出撃体制に入り、ジェリコI対地ミサイル、F-4ファントムに搭載された。イスラエルの反抗の決意は固く、双方の戦線で状況を変えルノに成功したが、核兵器は使われなかった。

当時のイスラエル核兵器の実態は不詳だ。何発あったのか、威力はどれくらいだったのか。イスラエルは通常兵器では数の上は劣勢だが周囲に核保有国はなく、イスラエルが戦術核兵器数発でアラブ連合軍の戦車部隊、軍事基地、飛行場を破壊できたはずだ。イスラエルから周辺国への距離が短いため、カイロやダマスカスもネゲブ砂漠から狙えたはずだ。

イスラエルは核兵器保有を否定も肯定もしない。専門家は概ね同国が核兵器約80発を保有と見ており、規模はフランス、中国、英国より小さいが、依然として周囲の敵対国は保有していない。イスラエル版の「核三本柱」で陸海空の各軍が敵の奇襲核先制攻撃を抑止している。

イスラエル初の核兵器は重力落下式爆弾だったはずだ。F-4ファントムが初の核攻撃機材だった。その後の核爆弾が小型化され、F-15IやF-16Iで運用可能になった。ミサイル技術の進歩により重力落下式爆弾は時代遅れとの声もあるが、最後のぎりぎりで攻撃を中止し呼び戻せる有人戦闘機には利点もある。

イスラエル初の地上配備核兵器はジェリコIミサイルで、フランスと共同開発した。ジェリコIはすでに用途廃止と見られるが、その後ジェリコII、-IIIミサイルが加わった。ジェリコIIの射程は932マイルでジェリコIIIでは3,106マイルに伸び、イラン等の遠隔地に睨みをきかせる。イスラエルの弾道ミサイルの本数も不明だが、20発程度と見る向きもある。

その他核保有国と同様にイスラエル海軍も生存性が最も高い潜水艦に核兵器を搭載しているようだ。イスラエルはドイツ建造のドルフィン級潜水艦5隻を保有し、核巡航ミサイルを搭載しているといわれる。核巡航ミサイルはポパイ空対地ミサイルあるいはゲイブリエル対艦ミサイルが原型だろう。これにより「第二撃能力」が生まれ、潜水艦一隻でもパトロール中ならイスラエルが核攻撃を受けても核の反撃を行える。

核の三本柱を作り上げたのはイスラエルが核抑止力を真剣に考えている証拠だ。だが同国は核保有国と名乗りを上げる様子は当面ない。核兵器があるのか無いのかあいまいにすることが同国の利益にかなってきた。少なくとも数年先まではイスラエルは中東で唯一の核保有国のままだろう。だが、核合意が崩れればこの状況も一変しかねず、イスラエルの究極の保証は機能しなくなってしまう。


この記事は以下を参考にしています。

A Known Secret: Israel's Nuclear Arsenal Is Deadly And Ready
January 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaMilitaryTechnologyWorldIsrael





11 件のコメント:

  1. イスラエルの核戦略は敵国へ与える心理的プレッシャー、国際世論からの黙認という点で洗練されている。
    敵対国からすると、核を保有しているにも関わらず保有を宣言していないため攻撃を誘う、が通常兵器であっても小競り合い程度の戦闘ではイスラエル軍の装備・練度に敵わないことを過去の実戦で思い知らされている。核搭載の弾道ミサイル攻撃では問答無用に核報復を誘うため実行ができないという、膠着状態を造りだしている。
    核戦力保有を過度にアピールしないやり方は上手いと思う。
    もっとも、いざ使用が必要となった状況に陥ったら、躊躇なく使用するので敢えて言わないということか。
    核兵器保有は別にして、いざという時になっても困らないように、このやり方には学ぶところがあると思う。

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  2. 平和ボケの日本も見習ってほしい。

    日本が核武装した方が桁違いに安全で平和で戦争の危険が極端に少なくなる。
    3発目の原爆を落とされたくなければ是非考えてほしいですね。

    先の大戦も沖縄戦の前に核兵器を保有していて運搬能力
    (幻の爆撃機富岳で北米到達は無理か?潜水艦で奇襲の自爆しかないのか?効果はどれくらいか?ニューヨークビル街近くまで行けるか?サンディエゴ基地か?真珠湾には入れないかな?巨大風船爆弾は無理か?巨大飛行船に載せられないか?)
    があれば、沖縄で地上戦をすることもなく、東京大空襲も無く、原爆も落とされず、講和に持ち込めたでしょうね。

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  3. >イスラエルは核兵器保有を否定も肯定もしない。

    これが効果を発揮するのは、相手方が核含む大量破壊兵器の確実な保有・開発能力をもっていない場合に限られますな。現に、イランは大きなリスクを負って対抗核兵器開発を続けているわけですから。
    もし日本が同じ戦法を取ったとすると、効果を発揮しそうなのは対北朝鮮ぐらいのもので、中国・ロシアが考えるのは恐怖ではなく効率的な対日先制攻撃(核)でしょう。
    核兵器を持っているかもしれないし、持っていないかもしれない。そんな曖昧なスタンスは
    中露みたいな野蛮な国には通じませんよ。わけわからん事言ってたら、吹き飛ばされます。
    核実験により明確な核戦力を誇示してこそ、それらの国にも己の損害を想像させられる。
    まあ、今の日本には明確な核実験なんて不可能ですけどね。NATO式のレンタルなら有り?

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  4. >中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに現実を直視できない日本
    --
    ヤクザが「俺がこの街守ってんや!」などと言って居座るようなもの。
    --
    そういうヤクザにゴマをする軍事マニアは珍しくないようだね。

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  5. >中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに現実を直視できない日本
    --
    ヤクザが「俺がこの街守ってんや!」などと言って居座るようなもの。
    --
    そういうヤクザにゴマをする軍事マニアは珍しくないようだね。

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  6. 核実験をしなくても日本の技術なら自国で開発保有できるでしょう。
    そうしなくても米の承認さえあれば米の監視の下で核兵器を共同?運用できるでしょう。
    戦略原潜が難しいなら攻撃型原潜をグアムあたりに配備して運用は海自が主にするが、米のお目付け役が乗り組んでいて、核兵器のボタンは彼らがOKしないと発射できないようにするとか。
    バージニア級の最新型のように巡航ミサイル28本積んで9隻とか。
    そしてできたらステルス巡航ミサイルや極超音速巡航ミサイル等迎撃困難なミサイルにすべき。

    もちろん通常は対潜水艦作戦や諜報、特殊作戦、対艦船、等にも大いに利用する。

    グアムは暖かいし、リゾート地だし、官舎や待遇を海外勤務で米兵みたいに特別に良くし
    たり(それは無理かな?)すれば原潜なのでシャワーは使い放題だし、油臭くないし隊員も喜んで赴任するかもね。

    まあ原潜の教育課程やインフラ等を構築しないと駄目ですが。原潜は米から買うしかないのかな?日本で建造したいところですが・・・原子力アレルギーのお国柄ですからね、どうなんだか。
    原子炉関連は米から買うとかね。


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  7. ハハッ、御冗談を。
    世界がヤクザ程度の小悪党の論理で回ってたらどんなに平和だろうかね。
    ヤクザはそんなに簡単に人を殺さないが、
    中国・北朝鮮・シリア・イラン・ロシア、こういう国の政府は、
    命の価値を鴻毛ほどにも感じているのでしょうかね。
    心情左翼はリアリズム思考皆無だから、全く国民の支持が伸びないのだ

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    1. >世界がヤクザ程度の小悪党の論理で回ってたらどんなに平和だろうかね。
      --
      君は「イスラエルはヤクザより凶悪な大悪党」と言っている?

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  8. ぼたんのちから2020年1月17日 13:49

    核兵器による抑止力が作用するのは、国家間の戦争に対してである。しかし、1973年、中東で唯一の核保有国であるイスラエルに対し、エジプト等は正規軍による対称的戦争を仕掛けた。この戦争以後、国家間の戦争は起きていないが、それはイスラエルの軍事的優位であることの方がより重要なのでなかろうか。
    1973年の第4次中東戦争時にエジプトはイスラエルの核兵器保有を知っていたはずだ。そうであるにも拘わらずエジプトは正規軍戦を挑んだ。しかし、エジプトの攻勢はせいぜい旧領であったシナイ半島内までであり、イスラエル本土の国境線に迫ってもいない。この状況で核使用の選択肢はないであろう。
    記事に書かれているように核使用の一歩手前であったようだ。核の使用はエジプトに大きな被害をもたらし、一部の地域は壊滅するだろう。
    エジプトはそれを知りながらなぜ戦争を行ったのか。それは核を使用すればイスラエルが国際的に孤立するからである。米国もイスラエルを支持することは困難となるであろうし、多くない友好国は背を向け、そして世界に散らばるユダヤ人は迫害を受けただろう。世界の国々は、窮地に陥ったユダヤ人の救済に二の足を踏むだろう。
    国家を維持し、危機を打開するための核使用が、より重大な国家のみならず民族の危機を招くことになる。つまり、イスラエルは、核を使用してはならないと言うことであり、この状況は今も変わらないだろう。
    しかし、イスラエルの敵対国であるイランが核保有を目指している。もし、イランが核武装すれば、中東全体の危ういバランスが崩れ、サウジやトルコ等も核保有を試みるだろう。これらの国の中には核使用のハードルが低い国家があるかもしれず、国家間の緊張が核の応酬へと拡大するリスクが増大することになる。

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  9. 窮鼠猫を噛むのことわざがある。使いたくはないが日本も先の大戦時に核兵器を保有し世界平和を願う天皇陛下の許可が下りなかっただろうが、下りれば核兵器を使用していたでしょう。
    威嚇での使用もありえますね。
    威嚇なら陛下も許可したかもしれません。

    アメリカさん、今日のハワイ沖の核爆発見たでしょ?
    こっちも持ってるからもうこれ以上戦争は止めましょうとか。
    お互いに破滅したくないから講和となる。
    人間心理です。

    イスラエルも核兵器を保有している可能性があったからこそエジプト等周辺国はイスラエルを壊滅させることができないのは確か。

    その前にイスラエルは通常兵器でも今は優位に立っていると思いますが。
    核兵器無しで通常兵器が実に非力であれば周辺国から嫌われ者のイスラエルは占領されてもおかしくはない。
    核兵器と有力な通常兵器を保有していれば占領されずに小競り合いや限定的な紛争に終わる可能性が圧倒的に高くなる。

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  10. >中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに
    --
    誤:中東が戦火に包まれないのはイスラエルの核兵器のおかげなのに
    正:中東が戦火に包まれているのはイスラエルが原因なのに

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