2025年7月25日金曜日

ドナルド・トランプの日本協定が米国経済にもたらすもの(The National Interest)—どう考えてもこの協定は米国に一方的に有利で、日本にとってどんなメリットがるのか不明です。とてもWin Winとはいえません


Image Credit: Shutterstock/Joshua Sukoff.


発表は安堵をもたらしたが、トランプ大統領が緊密な同盟国との間でも高い関税障壁を構想していることを示す格好となった


日発表された日本との貿易協定には良いニュースもあれば悪いニュースもある。良いニュースは、主要貿易相手国とようやく貿易協定が結ばれたことだ。日本との協定は、トランプ大統領が日本に25%の関税を課す脅しの実行を阻止し、日本を不況から救うだろう。

 悪いニュースは、この協定が15%という高い基本関税水準で結ばれたことだ。これは、トランプ大統領が第二次世界大戦以降で最も高い平均輸入関税水準を維持するつもりであることに疑いの余地はない。これは米国のインフレと経済成長の見通しにとって良いことではない。また、世界の他の国々、特に日本のような輸出集約型経済にとっても良いことではないはずだ。

 4月2日、トランプ大統領はすべての貿易相手国に相互輸入関税を課すと脅し、貿易相手国は米国と交渉のテーブルに着かざるを得なくなり、間もなく200の貿易取引が成立することになると示唆した。それから4カ月近くが経過したが、トランプ大統領が最終合意にこぎ着けた貿易協定はわずか5件に過ぎず、多くはまだ交渉中である。これらの貿易協定には、イギリス、日本、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの協定が含まれる。トランプ大統領は、8月1日までに残りの貿易相手国との貿易協定が交渉されなければ、それらの国々に対して一方的に懲罰的な輸入関税を発表する意向を示している。

 トランプ大統領が、有害なほど高い輸入関税水準を恒久的に維持しようとしていることは、もう明らかだ。8月1日までに貿易協定を結んでいない多くの国々は、4月初旬の「解放の日」の関税発表でトランプ大統領が脅した高い関税水準に直面することになる。例えば欧州連合(EU)は、貿易協定を結ばなければ一律30%の関税を課すと脅されている。

 しかし、これまでの貿易協定から判断すると、仮に残りの国々が貿易協定を確保したとしても、彼らが直面する関税は比較的高い水準にとどまる可能性が高い。日本の貿易協定は基本関税が15%である。インドネシアとフィリピンの基本関税は19%である。一方、ベトナムには20~40%の輸入基本関税が課せられている。

 米国の平均関税水準が歴史的に高いままであると考える理由は他にもある。中国は現在55%の輸入関税を課せられており、米国との貿易交渉に進展の兆しはほとんどない。一方で、非常に高いレベルの分野別関税が山ほどある。鉄鋼、アルミニウム、銅の輸入品にはすべて50%の関税がかかり、自動車と自動車部品には25%の関税がかかる。加えて、医薬品、デジタルサービス、外国映画、玩具についても現在調査が進められており、これらすべてが懲罰的な高関税の対象となる可能性がある。

 今回の関税発表以前にも、イェール大学予算研究所は、米国の平均輸入関税水準は約20%に上昇したと推定していた。彼らの見解によれば、このような関税水準はインフレ率を1.7%ポイント上昇させ、長期的には経済成長率を0.4%、2025年には0.8%低下させるという。 今回の関税率のさらなる引き上げにより、物価水準と成長見通しへの悪影響は、同予算研究所の予測より高くなる可能性があるようだ。 

 年初来、ドル安が10%以上進行していることを考えれば、なおさらであろう。 ドル安が続けば、関税によるインフレ効果が増幅される。

 これらの関税の悲しい点は、インフレを助長し、経済成長を鈍化させると同時に、貿易赤字の削減がほとんど進まないことである。実際、貿易赤字は来年にかけて拡大する見込みだ。貿易赤字が拡大する主な要因は、トランプ大統領の Big Beautiful Bill.「美しい大型法案」である。この法案は財政赤字を拡大させ、投資を奨励すると予想されている。その結果、貿易赤字の主要因である貯蓄と投資の不均衡が悪化する。

 非常に高い関税をかけた最後の実験は1930年のスムート・ホーリー法で、これは一般に大恐慌を長引かせたと考えられている。まだ結論は出ていないが、トランプ大統領の関税政策が歴史上で評価されることはないだろう。


What Donald Trump’s Japan Deal Means for the US Economy

July 23, 2025

By: Desmond Lachman

https://nationalinterest.org/feature/what-donald-trumps-japan-deal-means-for-the-us-economy


著者について デズモンド・ラクマン

デズモンド・ラクマンはアメリカン・エンタープライズ研究所のシニアフェローで、国際通貨基金(IMF)の政策開発・審査部副部長、ソロモン・スミス・バーニーのチーフ新興市場経済ストラテジストでもある。




3 件のコメント:

  1. ぼたんのちから2025年7月25日 11:51

    今回の日米関税交渉で明らかになったことは、常識を外れたトランプの強引なやり方や関税の高さではなく、不健康な米国資本主義とその経済と、その構造の疲弊である。
    製造業が、一部の先端産業を除き、衰退し、しかも残存している産業の多くの生産性が低下している。これでは、CCP中国に対抗できない。製品輸入や貿易赤字だけを問題とすれば、CCP中国に出し抜かれるとの危機感がある。さらに戦時になったら、装備の調達でCCP中国に後れを取ると予想されている。
    と言うことで、米国は、日本には多額の投資要求のみならず、米国経済の欠陥部分を補い、産業の再活性化の手伝いを期待している。投資金額の多さや、その利益の90%をとると言うトランプが喜ぶ虫の良い話はさておき、実利をとるのは日本でなくてはならない。
    そして関税戦争の主戦場は、米中交渉であり、トランプの意図が明確になるだろう。
    また、小役人に都合の良い話を語るオールドメディアや、貶日の経済学者や評論家の意見を鵜呑みにしてはいけません。彼らは、正しいことを言うつもりはありません。
    かつて日本は、自動車輸出で今以上の苦境に陥ったものの、その後の新たな日米間のルール下で日本の自動車会社は奮闘し、トヨタは世界一の自動車製造会社になったではないか! 今こそそれを思い出すべきだろう。

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    1. ずーっとトヨタや大手企業かよ。日本にもテスラみたいな。新しい車企業が世界を席巻できるような。そう言う国になれよ。

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  2. 日本側で得したのはこれで政権維持できると思ってる石破執行部と消費税を守りきったと思ってる輸出企業の馬鹿経営者と財務省でしょ。

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