ウクライナはロシアとの戦争に本当に勝てるのか?(National Security Journal)
BBC
要点と概要 –ロバート・ファーリー博士は、トランプ大統領のロシア・ウクライナ戦争に関する突然のレトリック転換を分析。キーウを「脆弱」と位置づけていた姿勢から、ロシアを「経済的に脆い」と規定しウクライナを「回復可能」と描く構図へ転換した。言葉は重要だ:米国の強硬なトーンはロシアの士気と交渉力を損なう可能性がある。
-しかしファーリーは、ワシントンが依然として欧州にさらなる負担を押し付けつつ、経済的圧力を強化する制度的基盤を欠いていると警告する。
ウクライナ戦車。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ。
-戦場の現実は双方にとって依然として厳しい。
–著者の結論:持続的な平和には、ロシアが戦争目的を達成できないと確信させる必要がある——軍事的・経済的圧力の継続こそが紛争を短縮する、矛盾した信号にならない。
ウクライナ戦争:次に何が起こるか?
トランプ大統領は昨日、ロシア・ウクライナ戦争の将来に関する劇的な方針転換と見られる発言で全員を驚かせた。
数ヶ月間、モスクワの強さと目的意識を称賛することで戦争終結を図ってきたトランプは昨日、ロシア経済が危機に瀕しており、ウクライナがこれまでに失った領土を奪還する可能性が高いと宣言した。現時点では変化は修辞的なものに過ぎないが、戦争においては修辞が重要だ。
この変化が紛争の行方をどう変えるだろうか?
ウクライナ:勝利は可能か?
2025年1月の視点から見れば、この言説の転換は衝撃的だった。大統領職に復帰して以来、トランプはロシア・ウクライナ戦争の終結を主張し、ウクライナの脆弱性を繰り返し強調していた。
ゼレンスキー大統領との今や悪名高い記者会見では、ウクライナ指導者に和平条件を受け入れさせるため、「君には切り札がない」と繰り返し迫った。
しかし今、トランプは自らの発言と矛盾しているように見える。ロシア経済の弱さを強調し、ウクライナが失った領土を取り戻す可能性について好意的に発言するというトランプの決定は、副大統領の発言とも直接矛盾している。J.D. ヴァンスはかねてより、ウクライナはキーウとモスクワの間の根本的な物質的格差のため敗北する運命にあると主張してきた。
ヴァンスが、大統領の主張とより整合性のある発言に調整するかどうかはまだ不明である。
トランプ大統領は、数か月にわたる証拠を経て、ウクライナとゼレンスキー大統領が戦争終結の主な障害ではないという結論にようやく達したようだ。トランプ大統領は、キーウよりモスクワの非妥協的な姿勢に苛立ちを感じていた。
キーウがロシアの反応を確信していたかどうかに関わらず、米国の停戦条件の大部分を受け入れたことは、ウクライナ側にとって間違いなく賢明な戦略的動きだった。トランプはロシアへの怒りを転嫁し、今や戦争の行方が決して決まったものではないと公言するに至っている。
レトリックの重要性…
米国のレトリックは、ロシア人とウクライナ人の士気に確かに影響を与える。
勝利目前と信じる軍隊が戦い続けるのと、終結の見通しが立たないまま1平方キロメートルの領土のために血を流すのは別物だ。
ロシア人がトランプの姿勢転換を真剣に受け止めるなら、国内と戦線の双方で問題を引き起こす可能性がある。プーチン大統領が「トランプ氏はウクライナ支援を縮小する」と確信していたことは、交渉テーブルでのロシア側の要求を固め、ロシア軍の士気に関する懸念を回避したかもしれない。
絶望的な状況では絶望的な手段も許されるが、時間が経つにつれ、その継ぎ目が目立ち始める。ロシア政府の経済戦争への対応は、その効果性において依然として注目に値する。
深刻な負担にもかかわらず、ロシア経済は民間需要を満たしつつ、前線の軍隊への十分な物資供給を維持し続けている。
この手法の実施には一連の短期的な応急処置が必要であり、最終的にはロシアの経済見通しに長期的な損害をもたらすだろう。戦争の長期化は損害を増大させるだけでなく、脆弱な足場を露呈させる。
しかし、ここまでだ…
とはいえ、ウクライナが危機を脱したわけではない。実際、トランプのレトリック転換は、戦争責任のさらなる欧州への転嫁と、それに伴う米国の役割の軽視を予兆している可能性がある。
これは武器禁輸措置などの結果には繋がりそうにないが、米国を戦争とウクライナ支援からさらに遠ざける恐れがある。またトランプ政権が、ロシアに最も効果的に打撃を与え得る米政府機関の機能を骨抜きにした事実も否定できない。
米国政府に経済的脅威を実行する意思も能力もないなら、ほとんど役に立たない。最後に、トランプの転換にもかかわらず、ウクライナがロシアに奪われた領土を合理的なコストで実際に奪還できると信じる理由はほとんどない。ロシアの進軍を阻む要因は、ウクライナの進軍をも阻むのである。
今後の展開は?
ロシアに対する一貫した政策は、バイデン政権とトランプ政権の継続性を維持していたはずだ。そのような政策は、ロシアの戦争要求の規模と、軍事力と経済的強制力を組み合わせた手段でそれらの要求を抑制する必要性の両方を認識していただろう。
この政策は、米国とNATOがロシアの圧力に屈する可能性をモスクワに抱かせる余地をなくすことで、戦争の終結を早めることができたかもしれない。しかしトランプ大統領は、ロシアが繰り返し表明してきた要求を実際には望んでいないと説得しようとする無益な試みで数か月も優柔不断に過ごし、アラスカでの首脳会談という哀れな見せ物で頂点に達した。
信じがたいかもしれないが、トランプ大統領が、ロシアの野望は戦場での敗北によってのみ挫折させられると遅ればせながら気づいたことは、平和にとって良いことだ。ウクライナはロシアの要求を受け入れることはできず、それらの要求が緩和されない限り戦い続けるだろう。
平和への最善の道は、戦争では目的を達成できないとロシアに納得させることだ。トランプ大統領もこの現実を認め始めている。■
Can Ukraine Really Win the War Against Russia?
By
https://nationalsecurityjournal.org/can-ukraine-really-win-the-war-against-russia/
トランプのウクライナが領土を取り戻せるとの発言は、欺瞞と推定するが、ロシアが「経済的に脆い」のは事実だろう。
返信削除ロシアは、膨大な人的損失をこうむっているが、ウクライナも同様だろう。ウクライナがロシア占領地を奪い返そうとするなら、ロシア並みの損失を覚悟する必要があるが、ウクライナにそのような余裕はない。
他方、ロシア経済は、石油・ガス輸出に多くを依存しており、また、収益は、軍資金となる。ウクライナのロシアへの戦略的攻撃は、まだ初期の段階であるにも関わらず、ロシアは、悲鳴をあげている。ウクライナは、これから継続的な戦略的攻撃の規模を拡大して行うから、ロシア経済は破綻に向かい、社会は閉塞するだろう。攻撃対象も拡大するだろう。
そんな状態でもロシアは、負けを認めることはない。負けを認めれば、プーチンは、失脚する。しかし、和平に近づくことにはなるだろう。望ましいのは、引き分けだ。
そしてトランプは、未だプーチンに対する幻想を払拭しきれていないかもしれない。プーチンは、誰が見てもただの陰謀家で、詐欺師なのだが、トランプには、偉大な政治家に見えるのかもしれない。
このようなことを考えると、ウクライナ戦争終結まで、状況は二転三転するだろう。つまり、戦争はまだまだ続くと言うことだ。